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特許7096655本発明は紙幣識別分野に関し、特にサーマルプリントヘッドを備えた紙幣識別装置及び該紙幣識別装置の製造方法に関するものである。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】本発明は紙幣識別分野に関し、特にサーマルプリントヘッドを備えた紙幣識別装置及び該紙幣識別装置の製造方法に関するものである。
(51)【国際特許分類】
   G07D 7/15 20160101AFI20220629BHJP
   G07D 7/00 20160101ALI20220629BHJP
【FI】
G07D7/15
G07D7/00 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017183982
(22)【出願日】2017-09-25
(65)【公開番号】P2018113016
(43)【公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-01-31
(31)【優先権主張番号】201710025049.6
(32)【優先日】2017-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517337541
【氏名又は名称】山東華菱電子股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 哲
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 孝文
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-262327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 7/15
G07D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板上にクロムアルミニウム合金材質の一部が発熱抵抗体となる発熱抵抗体層を形成し、前記発熱抵抗体の温度係数の調節及び抵抗値を調整する略熱300~400℃の温度範囲で複数回熱処理し、前記発熱抵抗体層の抵抗値が、ジュール熱が引き起こす温度変化に伴い可逆的な変化を維持し、前記発熱抵抗体層とその上部に形成したアルミニウム導体電極層とをエッチングし、直線状に形成され、前記発熱抵抗体層が露出した領域を複数の前記発熱抵抗体とし、これらの発熱抵抗体を覆う領域の一端プリンタ電源に接続される共通電極とするとともに他端を第1駆動回路部を介して接地される個別電極とし、個別電極側から引き出した電極を引き出し線とした発熱基板と、この発熱基板の前記発熱抵抗体と紙幣とを押圧する押圧部を含み、前記紙幣を前記発熱抵抗体の列と直交する搬送方向に沿って逐次搬送する搬送経路部と、前記引き出し線から出した信号をスイッチングさせて選択的に処理する制御処理部とを有するサーマルプリントヘッドを備えた紙幣識別装置。
【請求項2】
プリンタ電源が前記共通電極を介してそれぞれN個の発熱抵抗体に給電し、各発熱抵抗体がそれぞれ駆動ICの第1駆動回路部を介して接地され、前記第1駆動回路部が、N個のスイッチを有し、各発熱抵抗体は、更にそれぞれ導線が引き出されて、駆動ICの第2駆動回路部及び基準抵抗を介して接地され、前記第2駆動回路部も、N個のスイッチを有し、前記紙幣識別装置の制御回路は、アナログデジタル変換器を更に含み、前記アナログデジタル変換器の個数は基準抵抗の個数に対応しており、前記第2駆動回路部の各スイッチと基準抵抗との間から更にそれぞれ導線が引き出されて、アナログデジタル変換器の1つの入力端に対応して接続され、アナログデジタル変換器の別の入力端は基準電圧源の正極に接続され、前記基準電圧源の負極は接地され、前記第1駆動回路部、第2駆動回路部は、前記制御処理部により制御され、前記アナログデジタル変換器の出力端は前記制御処理部に接続される請求項1に記載のサーマルプリントヘッドを備えた紙幣識別装置。
【請求項3】
絶縁性基板上にクロムアルミニウム合金材質の一部が発熱抵抗体となる発熱抵抗体層を形成する第1工程と、前記発熱抵抗体の温度係数の調節及び抵抗値を調整する略熱300~400℃の温度範囲で複数回熱処理する第2工程と、前記発熱抵抗体層上にアルミニウム導体電極層を形成する第3工程と、前記発熱抵抗体層の一部と前記アルミニウム導体電極層の所望領域をエッチングし、直線状に形成され、前記発熱抵抗体層が露出した領域を複数の前記発熱抵抗体とし、これらの発熱抵抗体を覆う領域の一端プリンタ電源に接続される共通電極とするとともに他端を第1駆動回路部を介して接地される個別電極とし、個別電極側から引き出した電極を引き出し線としたパターン化された発熱基板とする第4工程と、前記発熱抵抗体と紙幣とを押圧する押圧部を含み、紙幣を前記発熱抵抗体と直交する搬送方向に沿って逐次搬送する搬送経路部を構成する第5工程と、前記個別電極から引き出した信号線をスイッチングさせて選択的に処理する制御処理部に接続する第6工程とを有するサーマルプリントヘッドを備えた紙幣識別装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙幣識別分野に関し、特にサーマルプリントヘッドを備えた紙幣識別装置及び該紙幣識別装置を用いた紙幣識別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙幣、有価証券または小切手は、使用過程においてたびたび角欠け、亀裂などが生じるため、人々は常々テープを採用して欠損または亀裂した紙幣などを接着補修して、継続使用する。
【0003】
テープで補修された紙幣を識別する問題については、従来技術においてすでに一連の解決方法が公開されており、例えば、特許文献1では紙幣処理装置が公開されており、紙幣がテープで補修されているか否かを検出する具体的な案は以下の通りである。紙幣上にテープが貼着されている場合は、テープが貼着している部位において検知ローラの上昇量が基準量を超えて、検知ローラが変位センサに達するため、変位センサが検知ローラを検出し、検出されたことを示す検知ローラの情報を識別部に送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第101075363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した紙幣処理装置は構造が過度に複雑であるという問題があった。
【0006】
そこで、従来技術の問題を解決するため、本発明では、構造が簡単なサーマルプリントヘッドを備えた紙幣識別装置及び当該紙幣識別装置を用いた識別方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
サーマルプリントヘッドを備えた紙幣識別装置は、絶縁性基板上にクロムアルミニウム合金材質の一部が発熱抵抗体となる発熱抵抗体層を形成し、前記発熱抵抗体の温度係数の調節及び抵抗値を調整する略熱300~400℃の温度範囲で複数回熱処理し、前記発熱抵抗体層の抵抗値が、ジュール熱が引き起こす温度変化に伴い可逆的な変化を維持し、前記発熱抵抗体層とその上部に形成したアルミニウム導体電極層とをエッチングし、直線状に形成され、前記発熱抵抗体層が露出した領域を前記発熱抵抗体とし、これらの発熱抵抗体を覆う領域の一端プリンタ電源に接続される共通電極とするとともに他端を第1駆動回路部を介して接地される個別電極とし、、個別電極側から引き出した電極を引き出し線とした発熱基板と、この発熱基板の前記発熱抵抗体と紙幣とを押圧する押圧部を含み、前記紙幣を前記発熱抵抗体の列と直交する搬送方向に沿って逐次搬送する搬送経路部と、前記引き出し線から出した信号をスイッチングさせて選択的に処理する制御処理部とを備えたものである。
【0008】
前記紙幣識別装置の制御回路は以下の通りであり、プリンタ電源がそれぞれN個の発熱抵抗体に給電し、各発熱抵抗体がそれぞれ駆動ICの第1駆動回路部を介して接地され、前記第1駆動回路部が、N個のスイッチを有し、各発熱抵抗体は、更にそれぞれ導線が引き出されて、駆動ICの第2駆動回路部及び基準抵抗を介して接地され、前記第2駆動回路部も、N個のスイッチを有し、前記制御回路は、アナログデジタル変換器を更に有し、前記アナログデジタル変換器の個数は基準抵抗の個数に対応しており、前記第2駆動回路部の各スイッチと基準抵抗との間から更にそれぞれ導線が引き出されて、アナログデジタル変換器の1つの入力端に対応して接続され、アナログデジタル変換器の別の入力端は基準電圧源の正極に接続され、前記基準電圧源の負極は接地され、前記第1駆動回路部、第2駆動回路部は、前記制御処理部により制御され、前記アナログデジタル変換器の出力端は制御処理部に接続されることが好ましい。
【0009】
本発明は、他方において上記紙幣識別装置を用いた紙幣識別方法を提供しており、前記方法は、紙幣の第M行を搬送装置を介してサーマルプリントヘッドの発熱抵抗体箇所まで伝送するステップ1と、前記第1駆動回路部の各スイッチをオン状態とさせるステップ2と、予め設定された時間域が経過した後、前記第1駆動回路部の各スイッチをオフ状態とさせるステップ3と、前記基準抵抗の個数に応じて、前記第2駆動回路部の各スイッチを同時にまたは逐次オン状態とさせ、アナログデジタル変換器を介して、発熱抵抗体と基準抵抗との間の電位を収集するとともに、8bitのデジタル信号に変換するステップ4と、上記変換後のデジタル信号を記憶するステップ5と、ステップ1~5を繰り返し、紙幣の第(M+1)行から第(M+g)行までの情報を読み取るとともに、読み取った情報に対応するデジタル信号を逐次記憶するステップ6と、上記記憶されたデジタル信号において、連続領域のデジタル信号が200~255digitにあるか否かを判断するステップ7と、「はい」の場合は、当該紙幣はテープで補修された紙幣であると判定するステップ8と、「いいえ」の場合は、上記記憶されたデジタル信号アレイにおいて、偽造防止領域を選択するとともに、当該領域のデジタル信号に対して減量処理を実施するステップ9と、上記減量後のデジタル信号に対して二値化処理を実施するステップ10と、上記二値化処理後のデータと真の紙幣の偽造防止領域が形成する二値化処理後のデータとを対比するステップ11と、一致している場合は、当該紙幣は真の紙幣であると判定するステップ12と、を含む。
【0010】
前記ステップ4とステップ5との間に、デジタル比較回路を介して、上記変換後のデジタル信号とデジタル閾値とを比較し、上記変換後のデジタル信号がデジタル閾値よりも小さいか否かを判断するステップ41と、上記変換後のデジタル信号がすべてデジタル閾値よりも小さい場合は、ステップ2~41を繰り返すステップ42と、上記変換後のデジタル信号のうちの1つがデジタル閾値以上である場合は、前記第1駆動回路部のスイッチをオフ状態とさせるステップ43とを更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記サーマルプリントヘッドを備えた紙幣識別装置は構造が簡単であり、抵抗値が変化可能なサーマルプリントヘッドを利用して紙幣を識別し、識別精度を保証することを前提として、識別装置の構造が簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の紙幣識別装置の上面構造概略図。
図2】本発明の紙幣識別装置の断面構造概略図である。
図3】本発明のサーマルプリントヘッド発熱抵抗体の周辺断面図である。
図4】本発明の発熱抵抗体の温度係数変化図である。
図5】本発明の発熱抵抗体の抵抗値の、温度に伴う変化図である。
図6】本発明の紙幣識別装置の制御回路図である。
図7図6における1つの動作シーケンス図である。
図8図6における別の動作シーケンス図である。
図9】本発明の紙幣識別装置の加熱速度が上昇する動作シーケンス図である。
図10】紙幣の異なる透過領域がアナログデジタル変換器を経過した後に出力されるデジタル信号の説明図である。
図11】紙幣の偽造防止領域のデータ処理プロセス図である。
図12】テープで補修された紙幣の概略図である。
図13】補修テープ付きの紙幣がアナログデジタル変換器を経過した後に出力されるデジタル信号の説明図である。
図14】紙幣のテープ補修領域がアナログデジタル変換器を経過した後に出力されるデジタル信号の出力曲線の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に基づき本発明の具体的な実施形態について更に説明する。
【0014】
本発明のサーマルプリントヘッドを備えた紙幣識別装置は、主に紙幣、有価証券または小切手などの読取媒体の真贋を判別するために用いられるか、または紙幣、有価証券または小切手などの読取媒体のテープ補修の有無を判別するために用いられ、本実施例においては、紙幣を読取媒体として説明を行い、紙幣上には特性の異なる透過領域1aが存在している。
【0015】
図1、2に示されている通り、本発明のサーマルプリントヘッドを備えた紙幣識別装置は、金属ベース5dを有し、前記ベース5d上表面の両端部にそれぞれ給紙側収納カセット5a及び排紙側収納カセット5bが設けられ、前記ベース5d上表面の中間部にサーマルプリントヘッド3が設けられ、前記給紙側収納カセット5a箇所に導入ゴムローラ2cが設けられ、前記排紙側収納カセット5b箇所に導出ゴムローラ2dが設けられ、前記給紙側収納カセット5aとサーマルプリントヘッド3との間のベース5d上に給紙側ゴムローラ2aが設けられ、前記排紙側収納カセット5bとサーマルプリントヘッド3との間のベース5d上に排紙側ゴムローラ2bが設けられ、前記給紙側ゴムローラ2a、排紙側ゴムローラ2b、導入ゴムローラ2c及び導出ゴムローラ2dなどの搬送装置が、それぞれ固定材5cを介して前記ベース5d上に固定され、かつ、前記給紙側ゴムローラ2a、排紙側ゴムローラ2b、導入ゴムローラ2c及び導出ゴムローラ2dは、いずれもモータ(図中非表示)で駆動される。前記サーマルプリントヘッド3は、放熱板3eを有し、前記放熱板3e上に直線状発熱抵抗体により形成される発熱基板3a及び信号処理基板3bが配置され、前記発熱抵抗体は搬送方向と垂直であり、前記発熱基板3a及び信号処理基板3b上に駆動IC3cが配置され、駆動IC3cは樹脂接着剤3dにより封止保護される。前記発熱基板3a箇所に押圧部4が設けられ、前記押圧部4は、ゴムローラまたは円弧型弾性材により構成され、前記押圧部4もベース5d上に固定され、紙幣1が搬送通路から通過すると、押圧部4がそれを発熱基板3a上に押圧することにより、良好な接触効果が得られる。前記サーマルプリントヘッド3は、更に制御処理部15(図中非表示)に接続される。
【0016】
本発明のサーマルプリントヘッド3の発熱抵抗体の抵抗値は、ジュール熱が引き起こす温度変化に伴い可逆的な変化を発生することができ、具体的な前記サーマルプリントヘッド3発熱抵抗体周辺の断面図は図3に示されている通りであり、具体的な製造工程の流れは以下の通りである。
【0017】
ステップ1:セラミックスなどの絶縁性基板6上に、全面的または部分的な非結晶ガラスをプリントし、その後、1200℃~1300℃で焼結して下薬層7を形成する。
【0018】
ステップ2:前記絶縁性基板6の下薬層7の表面に、フィルムをスパッタリングする方式で、50~300nmの膜厚のクロムアルミニウム(Cr/Al)合金材質の発熱抵抗体層8を形成する。
【0019】
ステップ3:前記発熱抵抗体層8に、300℃~400℃、約10~20分間の熱処理を施す。
【0020】
ステップ4:前記絶縁性基板6、下薬層7及び発熱抵抗体層8上に、フィルムをスパッタリング加工することで、アルミニウム導体電極層を形成する。
【0021】
ステップ5:パターン化エッチング工程により、発熱抵抗体層8上のアルミニウム導体電極層の一部をエッチングで除去して、共通電極9a及び個別電極9bを形成し、発熱抵抗体層8を露出させるとともに、前記露出した発熱抵抗体層8にエッチングを施して独立した発熱抵抗体8aを形成し、発熱抵抗体8aの一端を共通電極9aに接続し、他端を個別電極9bに接続する。
【0022】
ステップ6:前記発熱抵抗体8a、共通電極9a及び個別電極9b上にスパッタリングまたはCVD(化学気相成長)法を採用して保護層10を形成する。
【0023】
前記発熱抵抗体8aは、個別電極9bの引き出し金属パターンを介して、金ワイヤボンディング方式またはフリップチップボンディング方式を採用してサーマルプリントヘッド3の駆動IC3cと電気的に接続される。
【0024】
また、前記発熱抵抗体層8に対する熱処理工程は、発熱抵抗体の温度係数を調整する第1熱処理工程及び発熱抵抗体の抵抗値を調整する第2熱処理工程に分けることができる。本発明の発熱抵抗体の温度係数変化図は図4に示されている通りであり、熱処理なしまたは約200℃の低温熱処理後、発熱抵抗体8aの温度係数(TCR)は比較的小さいが、約300℃~400℃の高温熱処理を施すと、発熱抵抗体8aは比較的大きな負の温度係数を示す。また、複数回の300℃の熱処理を採用すると、発熱抵抗体8aの温度係数も負に向けて増大する傾向を示す。
【0025】
本発明の発熱抵抗体8aの抵抗値の温度に伴う変化図は図5に示されている通り、熱処理なしまたは約200℃の低温熱処理後、発熱抵抗体8aの抵抗値は比較的小さいが、約300℃~400℃の高温熱処理を施すと、発熱抵抗体8aは比較的大きな抵抗値を示し、また、複数回の300℃の熱処理を採用すると、発熱抵抗体8aの抵抗値も増大する傾向を示す。
【0026】
発熱抵抗体8aは、上記の300℃~400℃の熱処理を施した後、比較的大きな温度係数(TCR)を形成することができ、発熱抵抗体8aの発熱温度が上昇すると、発熱抵抗体8aは抵抗値の下降程度が上昇する傾向を示すため、発熱抵抗体8aの抵抗値の変化をリアルタイムで検出することにより、紙幣1を識別することができる図5参照)
【0027】
図6には本発明の紙幣識別装置の制御回路図が示されている。プリンタ電源VTHがそれぞれ各発熱抵抗体8aに給電し、発熱抵抗体8aの個数はN個(Nは正の整数)と仮定されており、各発熱抵抗体8aがそれぞれ駆動IC3cの第1駆動回路部13に対応して接続され、前記第1駆動回路部13は、N個のNMOSトランジスタを有し、各発熱抵抗体8aはそれぞれ対応するNMOSトランジスタのドレインに接続され、そのソースはグランド(GND)に接続され、各NMOSトランジスタのドレインは、更にそれぞれ引き出された導線が第2駆動回路部17に接続され、前記第2駆動回路部17も、N個のNMOSトランジスタを有し、前記第1駆動回路部13の各NMOSトランジスタのドレインは、更にそれぞれ引き出された導線が第2駆動回路部17の各NMOSトランジスタのドレインに接続され、前記第2駆動回路部17の各NMOSトランジスタのソースは、基準抵抗部11に接続され、前記基準抵抗部11は、1つの基準抵抗を有することができ、N個の基準抵抗を有することもでき、本実施例においては、前記基準抵抗部11はN個の基準抵抗を有すると仮定されているため、前記第2駆動回路部17の各NMOSトランジスタのソースは、更にそれぞれ各基準抵抗を介してGNDに接地される。当該制御回路は、アナログデジタル変換器12を更に有し、前記アナログデジタル変換器12の個数は基準抵抗の個数に対応しており、前記第2駆動回路部17の各NMOSトランジスタのソースは、更にそれぞれ引き出された導線が各アナログデジタル変換器12の1つの入力端に対応して接続され、各アナログデジタル変換器12の別の入力端は、いずれも基準電圧源14の正極に接続され、前記基準電圧源14の負極はGNDに接地される。各NMOSトランジスタのゲート及び各アナログデジタル変換器12の出力端は、いずれも制御処理部15に接続され、前記制御処理部15は、前記第1駆動回路部13及び第2駆動回路部17のオン・オフを制御するために用いられ、かつ、各アナログデジタル変換器12からの信号を処理し、言及されている処理には、アナログデジタル変換器12のデジタル信号とデジタル閾値との比較、上記デジタル信号の記憶、減量化、二値化、参考情報との対比などの処理が含まれる。前記制御処理部15は、汎用のFPGA(Field-Programmable Gate Array)チップを採用することができ、例えば、型式番号がEP3C25F324C8NのFPGAを採用して上記機能を実現することができる。
【0028】
図7には図6の1つの動作シーケンス図が示されている。図6、7に示されている通り、前記制御処理部15中にN個の論理積ゲートを配置することができ、各論理積ゲートの出力端は、それぞれ前記第1駆動回路部13の各NMOSトランジスタのゲートに接続され、各論理積ゲートの入力信号には、データ信号(DATA1~n)、停止指示信号(STOP1~n)、及び交互パルス信号(SCLK)が含まれ、各信号がいずれも高レベルであると、第1駆動回路部13の各NMOSトランジスタがオン(ON)状態となる。
【0029】
本発明のサーマルプリントヘッドを備えた紙幣識別装置に基づく紙幣識別方法は、以下のステップを含む。
ステップ1:紙幣1の第M(Mは正の整数)行を、搬送装置を介してサーマルプリントヘッド3の発熱抵抗体8a箇所まで伝送する。
【0030】
ステップ2:前記第1駆動回路部13の各NMOSトランジスタをオン(ON)状態とさせる。
【0031】
交互パルス信号SCLKが高レベル区間にあり、かつ、データ信号DATAn及び停止指示信号STOPnも高レベルである場合、第1駆動回路部13の各NMOSトランジスタはオン(ON)状態にあり、その際、プリンタ電源VTHとアースGNDとの間は、発熱抵抗体8aを介して導通し、前記発熱抵抗体8aが発熱して、温度が上昇する。
【0032】
ステップ3:予め設定された時間域が経過した後、前記第1駆動回路部13の各NMOSトランジスタをオフ(OFF)状態とさせる。交互パルス信号SCLKが低レベル区間にあると、第1駆動回路部13の各NMOSトランジスタはオフ(OFF)状態となる。
【0033】
ステップ4:前記第2駆動回路部17の各NMOSトランジスタをオン(ON)状態とさせ、アナログデジタル変換器12を介して、発熱抵抗体8aと基準抵抗との間の電位を収集するとともに、8bit(256段階)のデジタル信号に変換する。
【0034】
前記基準抵抗部11が1つの基準抵抗を含む場合は、時分割サンプリングの制御方式を採用し、つまり、前記制御処理部15を介して、前記第2駆動回路部17の各NMOSトランジスタが逐次オン(ON)状態となるように制御し、更にアナログデジタル変換器12を介して、発熱抵抗体8aと基準抵抗との間の電位を収集するとともに、8bit(256段階)のデジタル信号に変換する。
【0035】
ステップ5:上記変換後のデジタル信号を記憶する。
【0036】
識別の精度を高めるため、ステップ4とステップ5との間に、更に以下のステップを含むことができる。
ステップ41:デジタル比較回路を介して、上記変換後のデジタル信号とデジタル閾値とを比較し、上記変換後のデジタル信号がデジタル閾値よりも小さいか否かを判断する。
【0037】
ステップ42:上記変換後のデジタル信号がすべてデジタル閾値よりも小さい場合は、ステップ2~41を繰り返す。
【0038】
ステップ43:上記変換後のデジタル信号のうちの1つがデジタル閾値以上である場合は、前記第1駆動回路部13の各NMOSトランジスタをオフ(OFF)状態とさせ、その際、停止指示信号STOPnは低レベルとなる。
【0039】
デジタル比較回路が上記変換後のデジタル信号とデジタル閾値とを比較する際、当該比較方法には2種類の方式を採用することができ、1つめの方式は、図7に示されている通りであり、毎回、常に発熱抵抗体8aと基準抵抗との間の電位を変換したデジタル信号とデジタル閾値とを比較する。2つめの方式は、図8に示されている通りであり、毎回、発熱抵抗体8aと基準抵抗との間の電位を変換したデジタル信号を加算して、当該加算値とデジタル閾値とを比較する。
【0040】
本発明のサーマルプリントヘッドを備えた紙幣識別装置が紙幣1の情報を読み取る際は、発熱抵抗体8aの抵抗値の変化のみを検出する必要があるため、データ信号DATAnは、通常、高レベルに設定および固定される。加熱速度を高めるために、図9に示されている通り、交互パルス信号SCLKのデューティ比を調整することができ、交互パルス信号SCLKの低レベル区間においては発熱抵抗体8aと基準抵抗との間の電位のみをサンプリングの目的としているため、短縮するように調整することができ、それにより発熱抵抗体8aの加熱速度を効果的に高めることができる。
【0041】
ステップ6:ステップ1~5を繰り返し、紙幣1の第(M+1)行から第(M+g)行までの情報を読み取るとともに、読み取った情報に対応するデジタル信号を逐次記憶する。
【0042】
紙幣1の異なる透過領域1aの起伏(凹凸)に変化が存在しているため、この種の凹凸変化が紙幣1に接触する発熱抵抗体8aの温度変化を引き起こすことにより、発熱抵抗体8aの抵抗値の変化を引き起こす。紙幣1に対して述べると、各種各様の印刷パターン及び文字が存在し、各異なる領域の印刷パターンまたは膜厚、凹凸などの熱に対する反応に差異が存在しているため、異なる差異変化を通して紙幣1の異なる領域を検知することにより、真贋または補修の識別を実施することができる。
【0043】
図10に示されている通り、紙幣1と発熱抵抗体8aとが接触すると、異なる色の透過領域1aに接触した発熱抵抗体8aと基準抵抗との間の電位が変換されたデジタル信号は異なるものとなり、例えば、白色透過領域に接触した発熱抵抗体8aと基準抵抗との間の電位が変換されたデジタル信号は、約50digit以下であり、紙幣1の黒色透過領域に接触した発熱抵抗体8aと基準抵抗との間の電位が変換されたデジタル信号は、約80digit以上である。
【0044】
ステップ7:上記記憶されたデジタル信号において、連続領域のデジタル信号が200~255digitにあるか否かを判断する。
【0045】
図12、13に示されている通り、テープで補修された紙幣1は、通常、断裂領域1bが補修テープ16を用いて補修されている。発熱抵抗体8aが発熱した後、紙幣1にテープ補修領域が存在している場合は、当該補修領域の局部的な厚み及び表面の起伏(凹凸)に変化が存在しており、この種の凹凸変化が紙幣1に接触する発熱抵抗体8aの温度変化を引き起こすことにより、抵抗値の変化を引き起こす。紙幣1のテープ補修領域に接触した発熱抵抗体8aと基準抵抗との間の電位が変換されたデジタル信号は、200~255digitに達する(図13においてはOV:Overと表記)。図14に示されている通り、一定時間の温度を累積した後、紙幣1のテープ補修領域に接触した発熱抵抗体8aと基準抵抗との間の電位が変換されたデジタル信号は、依然として200digit以上に達している。
【0046】
ステップ8:「はい」の場合は、当該紙幣1はテープで補修された紙幣であると判定する。
【0047】
ステップ9:「いいえ」の場合は、上記記憶されたデジタル信号アレイにおいて、偽造防止領域を選択するとともに、当該領域のデジタル信号に対して減量処理を実施する。図11(a)及び11(b)に示されている通り、本実施例においては、50digitを減量化の基準としている。
【0048】
ステップ10:上記減量後のデジタル信号に対して二値化処理を実施する。図11(c)に示されている通り、本実施例においては、30digitを二値化の閾値としている。
【0049】
ステップ11:上記二値化処理後のデータと真の紙幣の偽造防止領域が形成する二値化処理後のデータとを対比する。
【0050】
ステップ12:一致している場合は、当該紙幣1は真の紙幣であると判定する。
【0051】
本発明の紙幣識別方法は、紙幣の起伏(凹凸)の差異、または白色透過領域と黒色透過領域との伝熱効果の差異に基づき、紙幣と比較的大きな温度係数(TCR)を有するサーマルプリントヘッドとが接触することにより、発熱抵抗体8aの抵抗値の変化が引き起こされ、更に検出された画像情報に対して識別を実施するものであり、本発明は、その他の複雑な光学システムまたは磁気システムを必要とすることなく、紙幣の真贋及び補修されているか否かを識別する目的を達成することができる。紙幣の真贋及びテープで補修されているか否かを識別した後、更に分離装置を設置して上記識別後の紙幣を自動的に分離することができる。前記分離装置の構造は従来技術であるため、ここでは改めて詳述しない。
【符号の説明】
【0052】
1-紙幣、1a-透過領域、1b-断裂領域、2a-給紙側ゴムローラ、2b-排紙側ゴムローラ、2c-導入ゴムローラ、2d-導出ゴムローラ、3-サーマルプリントヘッド、3a-発熱基板、3b-信号処理基板、3c-駆動IC、3d-樹脂接着剤、3e-放熱板、4-押圧部、5a-給紙側収納カセット、5b-排紙側収納カセット、5c-固定材、5d-ベース、6-絶縁性基板、7-下薬層、8-発熱抵抗体層、8a-発熱抵抗体、9a-共通電極、9b-個別電極、10-保護層、11-基準抵抗部、12-アナログデジタル変換器、13-第1駆動回路部、14-基準電圧源、15-制御処理部、16-補修テープ、17-第2駆動回路部

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