(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】印刷装置およびインクジェットヘッドモジュール
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220629BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20220629BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/14 611
B41J2/175 503
B41J2/01 301
(21)【出願番号】P 2017228648
(22)【出願日】2017-11-29
【審査請求日】2020-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】久保田 睦
【審査官】立澤 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-246169(JP,A)
【文献】特開2001-277486(JP,A)
【文献】特開2007-001294(JP,A)
【文献】特開2001-301192(JP,A)
【文献】特開2010-030186(JP,A)
【文献】特表2001-510751(JP,A)
【文献】特開2007-112130(JP,A)
【文献】米国特許第05548311(US,A)
【文献】特開2011-230375(JP,A)
【文献】特開2003-191462(JP,A)
【文献】特開2006-198944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置本体に着脱されるインクジェットヘッドモジュールであって、インクを吐出する少なくとも1つのインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドと前記印刷装置本体の嵌合部とを接続する継手と、前記インクジェットヘッドモジュールを前記印刷装置本体に着脱する際に、ユーザによって操作される操作部材とを有するインクジェットヘッドモジュールと、
前記インクジェットヘッドモジュールを前記印刷装置本体に着脱する際の前記操作部材の動きに応じて、前記嵌合部を前記継手に対して移動させることによって、前記継手と前記嵌合部とを挿抜させる機構を有する印刷装置本体とを備えた印刷装置。
【請求項2】
印刷装置本体に着脱されるインクジェットヘッドモジュールであって、インクを吐出する少なくとも1つのインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドと前記印刷装置本体の嵌合部とを接続する継手と、前記インクジェットヘッドモジュールを前記印刷装置本体に着脱する際に、ユーザによって操作される操作部材とを有するインクジェットヘッドモジュールと、
前記インクジェットヘッドモジュールを前記印刷装置本体に着脱する際の前記操作部材の動きに応じて前記継手と前記嵌合部とを挿抜させるよう構成された印刷装置本体とを備え、
前記インクジェットヘッドモジュールが、ラック構造を有し、
前記操作部材の動きに応じて前記ラック構造が移動し、前記印刷装置本体側に設けられたピニオンギアが回転することによって、前記嵌合部が挿抜方向に移動する印刷装置。
【請求項3】
前記インクジェットヘッドモジュールが、前記各インクジェットヘッドからのインク吐出を制御する制御基板と、前記制御基板と前記印刷装置本体の本体側コネクタとを接続するモジュール側コネクタとを備え、
前記印刷装置本体が、前記操作部材の動きに応じて前記継手と前記印刷装置本体の嵌合部とを挿抜させ、かつ前記モジュール側コネクタと前記本体側コネクタとを挿抜させるよう構成された請求項1または2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記インクジェットヘッドモジュールが、
前記インクジェットヘッドに対してインクを供給するインク経路と、前記インク経路内の圧力を調整する圧力調整部
とを備え、
前記操作部材の動きに応じて前記圧力調整部が動作することによって前記インク経路内の圧力が加減される請求項1から3いずれか1項記載の印刷装置。
【請求項5】
前記操作部材が、前記インクジェットヘッドモジュールの持ち手である請求項1から4いずれか1項記載の印刷装置。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項記載の印刷装置における前記印刷装置本体に着脱されるインクジェットヘッドモジュールであって、
インクを吐出する少なくとも1つのインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドと前記印刷装置本体の嵌合部とを接続する継手と、前記インクジェットヘッドモジュールを前記印刷装置本体に着脱する際に、ユーザによって操作される操作部材とを備え、
前記操作部材が、前記インクジェットヘッドモジュールを前記印刷装置本体に着脱する際の前記操作部材の動きに応じて、前記継手と前記嵌合部とを挿抜させる機構を動作させる構造を有するインクジェットヘッドモジュール。
【請求項7】
印刷装置本体に着脱されるインクジェットヘッドモジュールであって、
インクを吐出する少なくとも1つのインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドと前記印刷装置本体の嵌合部とを接続する継手と、前記インクジェットヘッドモジュールを前記印刷装置本体に着脱する際に、ユーザによって操作される操作部材とを備え、
前記印刷装置本体に、前記嵌合部を前記継手に対して移動させることによって前記継手と前記嵌合部とを挿抜させる機構が設けられ、
前記操作部材が、前記インクジェットヘッドモジュールを前記印刷装置本体に着脱する際の前記操作部材の動きに応じて、前記継手と前記嵌合部とを挿抜させる機構を動作させる構造を有するインクジェットヘッドモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体に対してインクを吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置に用いられるインクジェットヘッドモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙またはフィルムなどからなる印刷媒体を搬送しつつ、インクジェットヘッドから印刷媒体に対してインクを吐出して印刷を施すインクジェット印刷装置が提案されている。
【0003】
たとえば特許文献1においては、印刷媒体を搬送する搬送ベルトの上方に設けられたヘッドホルダ内に複数のインクジェットヘッドを並べて配置し、その複数のインクジェットヘッドから印刷媒体にインクを吐出することによって印刷処理を行うインクジェット印刷装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、たとえば特許文献1に記載のような複数のインクジェットヘッドを備えるインクジェット印刷装置においてインクジェットヘッドの交換などのメンテナンスを行う際、インクジェットヘッド毎に、インクを供給するインクチューブを取り外すようにしたのでは、作業性が悪く、時間がかかってしまう。また、作業者によっては嵌合不良が発生する場合もある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、インクジェットヘッドを用いるインクジェット印刷装置において、インクジェットヘッドの交換などのメンテナンスの作業を容易に行うことができるとともに、作業時間を短縮することができ、これにより保守性を向上させることができるインクジェットヘッドモジュールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインクジェットヘッドモジュールは、インクを吐出する少なくとも1つのインクジェットヘッドと、そのインクジェットヘッドに対してインクを供給するインク経路と、インク経路と印刷装置本体の嵌合部とを接続する継手とを備えたインクジェットヘッドモジュールであって、インクジェットヘッドモジュールの印刷装置本体への着脱に応じて操作される操作部材と、操作部材の動きに応じて継手と印刷装置本体の嵌合部とを挿抜させる嵌合機構とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明のインクジェットヘッドモジュールによれば、インクを吐出する少なくとも1つのインクジェットヘッドと、そのインクジェットヘッドに対してインクを供給するインク経路と、インク経路と印刷装置本体の嵌合部とを接続する継手とを備え、インクジェットヘッドモジュールの印刷装置本体への着脱に応じて操作される操作部材と、その操作部材の動きに応じて継手と印刷装置本体の嵌合部とを挿抜させる嵌合機構とを備えるようにしたので、インクジェットヘッドの交換などのメンテナンスの作業を容易に行うことができるとともに、作業時間を短縮することができ、これにより保守性を向上させることができる。
【0009】
また、作業者のスキルによることなく、インクジェットヘッドモジュールの着脱動作を行うだけで、インクジェットヘッドモジュールの継手と嵌合部とを確実に嵌合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のインクジェットヘッドモジュールの一実施形態を用いたインクジェット印刷装置の概略構成を示す図
【
図2】本発明のインクジェットヘッドモジュールの一実施形態の構成を示す図
【
図5】インクジェットヘッドモジュール本体の取り付けにおける各機構の作用を説明するための図
【
図6】インクジェットヘッドモジュール本体の取り外しにおける各機構の作用を説明するための図
【
図9】本発明のインクジェットヘッドモジュールのその他の実施形態の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明のインクジェットヘッドモジュールの一実施形態を用いたインクジェット印刷装置について詳細に説明する。本実施形態のインクジェット印刷装置は、インクを吐出するインクジェットヘッドが複数設けられたインクジェットヘッドモジュールの構成に特徴を有するものであるが、まずは、インクジェット印刷装置全体の構成について説明する。
図1は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の概略構成図である。なお、
図1に矢印で示す上下が、実際のインクジェット印刷装置1における上下方向とする。
【0012】
本実施形態のインクジェット印刷装置1は、
図1に示すように、給紙部10と、画像形成部20と、排紙部30とを備えている。
【0013】
給紙部10は、紙またはフィルムなどの印刷媒体Pが積載される給紙台11と、給紙台11に積載された印刷媒体Pを上部より一枚ずつ繰り出して後述するレジストローラ15に向かって搬送し、レジストローラ15に突き当てる1次給紙ローラ12と、1次給紙ローラ12により送り出された印刷媒体Pを所定の用紙間隔を空けて画像形成部20へ引き渡すレジストローラ15とを備えている。
【0014】
1次給紙ローラ12は、ピックアップローラ13および給紙ローラ14を備えている。ピックアップローラ13および給紙ローラ14は、
図1における反時計回りに回転し、これにより給紙台11から繰り出された印刷媒体Pがレジストローラ15まで搬送される。そして、印刷媒体Pの先端がレジストローラ15に当接した後、予め設定されたタイミングでレジストローラ15が回転し、印刷媒体Pが画像形成部20に向けて搬送される。
【0015】
画像形成部20は、4つのインクジェットヘッドモジュール27と、搬送機構21とを備えている。
【0016】
各インクジェットヘッドモジュール27は、搬送機構21によって搬送される印刷媒体Pに対してインクを吐出して印刷を施すものである。4つのインクジェットヘッドモジュール27は、
図1に示すように、印刷媒体Pの搬送経路に沿って所定の間隔を空けて配列されている。4つのインクジェットヘッドモジュール27は、それぞれ異なる色(例えばブラック、シアン、マゼンタおよびイエロー)のインクを吐出するものである。
【0017】
4つのインクジェットヘッドモジュール27はヘッドホルダ28に設置される。
図2A~
図2Dは、インクジェットヘッドモジュール27の構成を示す図である。
図2Aに矢印で示す上下が、インクジェットヘッドモジュール27がインクジェット印刷装置1に設置された場合における上下方向である。
図2Aは、インクジェットヘッドモジュール27の正面図であり、
図2Bは、
図2Aに示すインクジェットヘッドモジュール27を矢印Pa方向から見た上面図であり、
図2Cは、
図2Aに示すインクジェットヘッドモジュール27を矢印Q方向から見た下面図であり、
図2Dは、
図2Aに示すインクジェットヘッドモジュール27を矢印R方向から見た側面図である。なお、
図2Dは、後述する嵌合部60の周辺の嵌合部支持部材52については、図示省略した図である。
【0018】
インクジェットヘッドモジュール27は、ヘッドホルダ28に着脱可能に設置されるインクジェットヘッドモジュール本体27aと、ヘッドホルダ28内に設けられる嵌合機構50とを備えている。
【0019】
インクジェットヘッドモジュール本体27aは、ラインヘッド29と、インク経路部40とを備えている。ラインヘッド29とインク経路部40は、支持部材43に設置されている。
【0020】
ラインヘッド29は、
図2Cに示すように、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向に3つのインクジェットヘッド29aが等間隔で配置されたヘッド列を2列有し、その2列のヘッド列が所定のノズル数だけオーバーラップするように千鳥状に配置されて構成されている。すなわち、本実施形態のインクジェットヘッドモジュール本体27aは、6つのインクジェットヘッド29aをモジュール化したものである。このように複数のインクジェットヘッド29aをモジュール化することによって、複数のインクジェットヘッド29aをまとめて着脱することができるので、インクジェットヘッド29aの交換の手間を省くことができる。
【0021】
インク経路部40は、6つのインクジェットヘッド29aに対してインクを供給するインク経路を有するものである。インク経路部40の一方の端部には、インク経路部40内のインク経路と、嵌合部60(本発明の印刷装置本体の嵌合部に相当する)とを接続する継手41が設けられている。
【0022】
嵌合部60には、インクチューブ61が接続されている。インクチューブ61は、図示省略したインクタンクに貯留されたインクを嵌合部60まで供給するものであり、インクチューブ61によって供給されたインクは、嵌合部60および継手41を経由してインク経路部40に供給される。継手41の構成としては、嵌合部60に対して着脱可能に接続されるものであれば如何なる構成でもよいが、たとえば逆止弁の付いたワンタッチ継手や、電磁弁などによって嵌合部60から外れた瞬間に閉止される継手などを用いることが望ましい。これにより継手41から嵌合部60が抜かれた際、継手41からインクが落ちるのを防止することができる。本実施形態においては、継手41は、
図2Dに示すように支持部材43に対して2つ設けられ、これに対応して2つの嵌合部60および2本のインクチューブ61が設けられている。
【0023】
なお、2つの継手41については、2つの継手41にインクを供給する構成としてもよいし、一方の継手41にインクを供給するとともに、他方の継手41からはインクを取り出し、インクタンクとインクジェットヘッドモジュール本体27aとの間でインクを循環させる構成としてもよい。また、循環させる構成としない場合には、継手41を1本としてもよい。
【0024】
また、インクジェットヘッドモジュール本体27aは、持ち手42(本発明の操作部材に相当する)を備えている。持ち手42は、ユーザがインクジェットヘッドモジュール本体27aを持つ際に握る部分であって、
図2Aに示すようにラインヘッド29の長さ方向に延びる持ち手本体42aと、持ち手本体42aの両端に設けられた持ち手本体支持部材42bとを備えている。また、持ち手本体42aの中央には、ユーザが握り易いようにグリップ部42cが形成されている。グリップ部42cは、たとえばその長さ方向に直交する方向の断面形状が円または楕円である柱状部材から形成される。
【0025】
持ち手本体支持部材42bは、持ち手本体42aと直角をなす方向に延設される部材である。ラインヘッド29およびインク経路部40が設けられた支持部材43には、持ち手本体支持部材42bが通過する通過孔43a(
図2C参照)が形成されており、持ち手本体支持部材42bは、通過孔43a内を上下方向に摺動可能に設けられている。また、継手41とは反対側の持ち手本体支持部材42bには、後述する圧力調整部70を伸縮させる圧力調整部支持部42dが形成されている。持ち手42が上下方向に移動することによって圧力調整部支持部42dも上下方向に移動し、これにより圧力調整部70が伸縮する。
【0026】
圧力調整部70は、たとえばベローズから構成されるものであり、圧力調整管71によってインク経路部40のインク経路に接続されている。上述したように持ち手42が上下方向に移動することによって圧力調整部70が伸縮し、これによりインク経路部40のインク経路内の圧力が加減される。圧力調整部70としては、ベローズに限らず、袋状またはダイヤフラム状の部材などを用いるようにしてもよい。
【0027】
また、継手41側の持ち手本体支持部材42bには、後述する円形ギア51と嵌合する凹凸部42e(
図7参照)が形成されており、継手41側の持ち手本体支持部材42bと円形ギア51とでラック・ピニオン構造が構成されている。
【0028】
また、2本の持ち手本体支持部材42bの下端の下方には、それぞれ下側バネ部材44が設けられている。下側バネ部材44は、2本の持ち手本体支持部材42bの下端によって押し縮められた際、持ち手42を付勢して上方に持ち上げるものであるが、その詳細な作用については、後で詳述する。なお、下側バネ部材44の下端は、ヘッドホルダ28の底面に接続されている。
【0029】
次に、嵌合機構50について説明する。嵌合機構50は、上述したようにヘッドホルダ28内に設置されるものであり、円形ギア51と、嵌合部支持部材52と、横バネ部材53とを備えている。
【0030】
円形ギア51は、継手41側の持ち手本体支持部材42bおよび嵌合部支持部材52に接する位置に設けられている。そして、上述したように継手41側の持ち手本体支持部材42bと円形ギア51とでラック・ピニオン構造が構成されるとともに、円形ギア51と嵌合部支持部材52とでラック・ピニオン構造が構成されている。
【0031】
嵌合部支持部材52は、U字形状で形成されており、その中央部分に、インクチューブ61が接続された嵌合部60が取り付けられる。そして、嵌合部支持部材52の下側の板状部分の円形ギア51と接する面には、円形ギア51と嵌合する凹凸部52b(
図7参照)が形成されている。また、嵌合部支持部材52の上側の板状部分の端部の上面には、支持部材43に形成された嵌合孔43b(
図2D参照)に嵌合する楔形状のラッチ部52aが形成されている。
【0032】
横バネ部材53は、一端が嵌合部支持部材52に接続され、他端がヘッドホルダ28に接続されている。そして、嵌合部支持部材52のラッチ部52aの支持部材43に対するラッチが解除された際に、嵌合部支持部材52をヘッドホルダ28側に引っ張るものである。
【0033】
なお、嵌合機構50の作用については、後で詳述する。
【0034】
次に、ヘッドホルダ28について説明する。
図3は、ヘッドホルダ28を斜め上方から見た斜視図であり、
図4は、ヘッドホルダ28の上面図である。
【0035】
ヘッドホルダ28は、
図3に示すように箱型の支持部材から構成されており、ヘッドホルダ28の底面には、各インクジェットヘッドモジュール本体27aが有する各インクジェットヘッド29a(
図4参照)が嵌め込まれて設置される複数の設置孔28aが形成されている。設置孔28aは貫通孔であって、各インクジェットヘッド29aのインク吐出面がヘッドホルダ28の底面外側に露出して配置されるように形成されている。
【0036】
図3に示す4つの点線四角は、各インクジェットヘッドモジュール本体27aが有する6つのインクジェットヘッド29aが配置される設置孔28aの範囲を示している。点線四角の範囲内の6つの設置孔28aに、各インクジェットヘッドモジュール本体27aの6つのインクジェットヘッド29aがそれぞれ配置される。また、ヘッドホルダ28内には、各インクジェットヘッドモジュール本体27aに対応する上述した嵌合機構50および2つの下側バネ部材44が設けられる。
【0037】
また、
図3に示すように、ヘッドホルダ28の印刷媒体Pの搬送方向に延びる2つの側面のうちの一方の側面には、インクチューブ孔28bが形成されている。インクチューブ孔28bは貫通孔であって、上述したインクチューブ61が配置される孔である。
【0038】
図1に戻り、搬送機構21は、搬送ベルト26、駆動ローラ25および従動ローラ22,23,24などを備えたものである。搬送機構21は、給紙部10から搬送された印刷媒体Pを搬送ベルト26に吸引吸着させた状態で、一定の速度を維持しながら搬送し、印刷媒体Pに対してインクジェットヘッドモジュール27により印刷が施された後、印刷済の印刷媒体Pを排紙部30まで搬送するものである。
【0039】
搬送ベルト26は、駆動ローラ25および従動ローラ22,23,24に掛け渡される環状の無端ベルトである。搬送ベルト26は、可塑性を有し、印刷媒体Pとの間に適度な摩擦力を発生させるゴムまたは樹脂などの材料により構成される。従動ローラ22,23,24は、駆動ローラ25とともに搬送ベルト26を支持するものであり、搬送ベルト26を介して駆動ローラ25に従動する。
【0040】
排紙部30は、排紙台31を備えており、画像形成部20において印刷の施された印刷済の印刷媒体Pを排紙台31に順次ストックするものである。
【0041】
次に、上述したインクジェット印刷装置1に設置されるインクジェットヘッドモジュール27の作用について、
図5~
図7を参照しながら説明する。
図5および
図6は、インクジェットヘッドモジュール本体27aの取り付けから取り外しまでの流れにおける各機構の作用を説明するための図であり、
図7は、嵌合機構50の作用を説明するための一部拡大図である。
【0042】
まず、
図5Aに示すように、インクジェットヘッド29aの交換などのメンテナンスを終えたインクジェットヘッドモジュール本体27aがインクジェット印刷装置1本体のヘッドホルダ28内に入れられる。
【0043】
そして、
図5Bに示すように、インクジェットヘッドモジュール本体27aの支持部材43が、ヘッドホルダ28内に設けられた嵌合部支持部材52の下側の板状部分の位置にくるまでインクジェットヘッドモジュール本体27aが挿入され、その位置で設置固定された状態で、持ち手42がユーザの手によって下側(矢印X1方向)に押し下げられる。
【0044】
次いで、
図5Cに示すように、持ち手本体支持部材42bが円形ギア51に接する位置まで持ち手42が押し下げられた場合には、
図7Aに示すように、持ち手本体支持部材42bに形成された凹凸部42eと円形ギア51とが嵌合し、持ち手本体支持部材42bが下側(矢印S1方向)に押し込まれるにつれて、円形ギア51が
図7Aにおける反時計回り(矢印T1方向)に回転する。そして、円形ギア51の回転に応じて、円形ギア51に嵌合する凹凸部52bを有する嵌合部支持部材52が、
図5Cおよび
図7Aにおける左方向(矢印Y1方向)に移動する。すなわち、嵌合部支持部材52に設置された嵌合部60が、インクジェットヘッドモジュール本体27aの継手41側に移動する。
【0045】
また、
図5Cに示すように、持ち手42に押し下げによって圧力調整部支持部42dも下方向(矢印Z1方向)に移動し、これにより圧力調整部70が圧縮される。圧力調整部70が圧縮された場合には、インク経路部40のインク経路内が加圧されることによって、インクジェットヘッド29aが有するノズルの先端に詰まった増粘インクや気泡が排出される。これにより、改めて排出動作を行わせる必要がなく、印刷効率を上げることができる。
【0046】
そして、
図5Cに示す位置から持ち手42がさらに押し下げられた場合には、嵌合部支持部材52がさらに左方向(矢印Y1方向)に移動し、インクジェットヘッドモジュール本体27aの継手41に対する嵌合部60の挿入が開始される。
【0047】
次いで、持ち手42がさらに押し下げられた場合には、
図5Dに示すように、継手41に対する嵌合部60の挿入が完了し、この際、嵌合部支持部材52に設けられたラッチ部52aが、支持部材43に形成された嵌合孔43bに嵌合してラッチされる。これによりインクジェットヘッドモジュール本体27aに対して嵌合部支持部材52を自動的に固定することができる。すなわち、インクジェットヘッドモジュール本体27aの継手41と嵌合部60との接続を自動的に固定することができる。なお、
図5Dに示すようにラッチ部52aが支持部材43の嵌合孔43bに嵌合してラッチされた状態においては、持ち手本体支持部材42bの下端が下側バネ部材44に当接するが、持ち手本体支持部材42bに対する下側バネ部材44の弾性力は働いていない状態とする。
【0048】
以上が、インクジェットヘッドモジュール本体27aをヘッドホルダ28(インクジェット印刷装置本体)に取り付ける際における各機構の作用の説明である。
【0049】
次に、インクジェットヘッドモジュール本体27aをヘッドホルダ28(インクジェット印刷装置本体)から取り外す際における各機構の作用を説明する。
【0050】
インクジェットヘッドモジュール本体27aをヘッドホルダ28から取り外す際には、
図6Aに示す状態からさらに持ち手42が下側(矢印X1方向)に押し下げられ、これにより持ち手本体支持部材42bによって下側バネ部材44が圧縮され、また、持ち手本体42aの端部によってラッチ部52aが下側に押し下げられる。なお、嵌合部支持部材52のラッチ部52aが設けられた板状部分は柔軟性を持つ材料から形成されており、この板状部分が変形することによってラッチ部52aが下側に押し下げられる。
【0051】
そして、ユーザが持ち手42から手を離した際、下側バネ部材44の弾性力が持ち手本体支持部材42bに働くことによって、持ち手42が上側(矢印X2方向)に飛び出すように移動する。そして、この持ち手42の移動と同時に、横バネ部材53によって嵌合部支持部材52が右方向(矢印Y2方向)に引っ張れることによって、支持部材43に対するラッチ部52aのラッチが解除され、
図6Bに示す状態となる。
【0052】
次いで、
図6Cに示すように、
図6Bに示す状態から持ち手42が上側(矢印X2方向)に持ち上げられた場合には、
図7Bに示すように、持ち手本体支持部材42bが上側(矢印S2方向)に移動することによって、円形ギア51が
図7Bの時計回り(矢印T2方向)に回転し、これにより嵌合部支持部材52が右方向(矢印Y2方向)にさらに移動し、継手41から嵌合部60が引き抜かれる。
【0053】
そして、この際、持ち手42の圧力調整部支持部42dも上側(矢印Z2方向)に移動することによって、圧力調整部70の上面も持ち上げられ、圧力調整部70が伸びることによってインク経路部40のインク経路内が負圧となる。このようにインク経路内を負圧にすることによって、インクジェットヘッドモジュール本体27aのインクジェットヘッド29aのノズルからインクが落ちるのを防止することができる。
【0054】
そして、
図6Dに示すように、持ち手本体支持部材42bの下端が支持部材43の底面の固定位置に移動するまで持ち手42が持ち上げられ、その後、インクジェットヘッドモジュール本体27aがヘッドホルダ28から取り出される。ヘッドホルダ28から取り出されたインクジェットヘッドモジュール本体27aは、インクジェットヘッド29aの交換など必要なメンテナンスが行われる。
【0055】
上記実施形態のインクジェットヘッドモジュール27によれば、インクを吐出する複数のインクジェットヘッド29aと、複数のインクジェットヘッド29aに対してインクを供給するインク経路部40と、インク経路部40とインクジェット印刷装置本体の嵌合部60とを接続する継手41とを備え、インクジェットヘッドモジュール27のインクジェット印刷装置本体への着脱に応じて操作される持ち手42と、その持ち手42の動きに応じて継手41と嵌合部60とを挿抜させる嵌合機構50とを備えるようにしたので、インクジェットヘッド29aの交換などのメンテナンスの作業を容易に行うことができるとともに、作業時間を短縮することができ、これにより保守性を向上させることができる。
【0056】
また、作業者のスキルによることなく、インクジェットヘッドモジュール27の着脱動作を行うだけで、インクジェットヘッドモジュール27の継手41と嵌合部60とを確実に嵌合させることができる。
【0057】
また、本実施形態のインクジェットヘッドモジュール27においては、持ち手42の動きに応じて継手41と嵌合部60とを挿抜させるようにしたので、インクジェットヘッドモジュール本体27aをヘッドホルダ28にセットする作業の流れおよびヘッドホルダ28から取り外す作業の流れの中で嵌合部60の挿抜動作を行うことができるので、より作業を簡略化することができる。
【0058】
ただし、持ち手42に限らず、その他のユーザによって操作される操作部材の動きに応じて継手41と嵌合部60とを挿抜させる構成としてもよい。たとえば持ち手42とは別に、嵌合機構50を動作させる操作部材を設けるようにしてもよい。
【0059】
また、上記実施形態のインクジェットヘッドモジュール27においては、嵌合機構50にラック・ピニオン構造を用いるようにしたので、より簡易な構成によって継手41への嵌合部60の挿抜を実現することができる。
【0060】
ただし、嵌合機構50の構成としてはラック・ピニオン構造に限らず、持ち手42の動きに応じて継手41と嵌合部60とを挿抜させる構成であれば、その他の構成を採用してもよい。具体的には、たとえば
図8Aおよび
図8Bに示すように、嵌合部支持部材52を回動軸90周りに回動可能に構成するとともに、嵌合部支持部材52の下側の板状部分の下面にバネ部材91を設けるようにしてもよい。
【0061】
図8Aに示す状態から持ち手42が下側に押し下げられた場合、持ち手本体支持部材42bの下端が嵌合部支持部材52の下側の板状部分に当接し、さらに持ち手42が押し下げられた場合、嵌合部支持部材52が回動軸90周りに
図8Aの矢印V方向に回動する。そして、
図8Bに示すように、嵌合部支持部材52の回動によって嵌合部60が継手41に挿入されて接続され、ラッチ部52aが支持部材43に形成された嵌合孔43bに嵌合してラッチされる。
【0062】
インクジェットヘッドモジュール本体27aを取り外す際には、持ち手42が下側に押し下げられ、これにより持ち手本体支持部材42bによって下側バネ部材91が圧縮され、また、持ち手本体42aの端部によってラッチ部52aが下側に押し下げられる。
【0063】
そして、ユーザが持ち手42から手を離した際、下側バネ部材91の弾性力が持ち手本体支持部材42bに働くことによって、持ち手42が上側(矢印X2方向)に飛び出すように移動する。そして、この持ち手42の移動と同時に、嵌合部支持部材52が自重によって矢印V方向とは逆方向に回動することにより、支持部材43に対するラッチ部52aのラッチが解除され、継手41から嵌合部60が引き抜かれて
図8Aに示す状態となり、インクジェットヘッドモジュール本体27aをヘッドホルダ28から取り出せる状態となる。
【0064】
また、上記実施形態のインクジェットヘッドモジュール27においては、
図9に示すように、各インクジェットヘッド29aからのインク吐出を制御する制御基板80をさらに設けるようにしてもよい。そして、このように制御基板80を設ける場合には、モジュール側コネクタ81を継手41に対して上下方向に並べて設け、かつ嵌合部支持部材52において、本体側コネクタ62を嵌合部60に対して上下方向に並べて設けることによって、持ち手42の上下方向の動きに応じて、継手41と嵌合部60とを挿抜させるとともに、モジュール側コネクタ81と本体側コネクタ62とを挿抜させるようにしてもよい。
【0065】
これにより制御基板80のモジュール側コネクタ81とインクジェット印刷装置本体側の本体側コネクタ62とを、インクジェットヘッドモジュール本体27aの取り付けに応じて自動的に挿抜することができ、ユーザの手間を省くことができる。なお、本体側コネクタ62に接続された配線は、インクジェット印刷装置本体が有するCPUなどから構成される制御部に接続される。また、その他の構成については、上記実施形態のインクジェットヘッドモジュール27と同様である。
【0066】
本発明のインクジェットヘッドモジュールに関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
【0067】
また、本発明のインクジェットヘッドモジュールにおいて、嵌合機構は、ラック・ピニオン構造を有することができ、操作部材の動きに応じて嵌合機構が動作することによって、嵌合部が挿抜方向に移動するようにできる。
【0068】
また、本発明のインクジェットヘッドモジュールにおいては、各インクジェットヘッドからのインク吐出を制御する制御基板と、制御基板と印刷装置本体の本体側コネクタとを接続するモジュール側コネクタとを備えることができ、嵌合機構は、操作部材の動きに応じて継手と印刷装置本体の嵌合部とを挿抜させ、かつモジュール側コネクタと本体側コネクタとを挿抜させることができる。
【0069】
また、本発明のインクジェットヘッドモジュールにおいては、インク経路内の圧力を調整する圧力調整部を備えることができ、操作部材の動きに応じて圧力調整部が動作することによってインク経路内の圧力が加減されるようにできる。
【0070】
また、本発明のインクジェットヘッドモジュールにおいて、操作部材は、インクジェットヘッドモジュールの持ち手とすることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 インクジェット印刷装置
10 給紙部
11 給紙台
12 1次給紙ローラ
13 ピックアップローラ
14 給紙ローラ
15 レジストローラ
20 画像形成部
21 搬送機構
25 駆動ローラ
22,23,24 従動ローラ
26 搬送ベルト
27 インクジェットヘッドモジュール
27a インクジェットヘッドモジュール本体
28 ヘッドホルダ
28a 設置孔
28b インクチューブ孔
29 ラインヘッド
29a インクジェットヘッド
30 排紙部
31 排紙台
40 インク経路部
41 継手
42 持ち手
42a 持ち手本体
42b 持ち手本体支持部材
42c グリップ部
42d 圧力調整部支持部
42e 凹凸部
43 支持部材
43a 通過孔
43b 嵌合孔
44 下側バネ部材
50 嵌合機構
51 円形ギア
52 嵌合部支持部材
52a ラッチ部
52b 凹凸部
53 横バネ部材
60 嵌合部
61 インクチューブ
62 本体側コネクタ
70 圧力調整部
71 圧力調整管
80 制御基板
81 モジュール側コネクタ
90 回動軸
91 バネ部材
P 印刷媒体