IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニッタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-道路橋用伸縮装置 図1
  • 特許-道路橋用伸縮装置 図2
  • 特許-道路橋用伸縮装置 図3
  • 特許-道路橋用伸縮装置 図4
  • 特許-道路橋用伸縮装置 図5
  • 特許-道路橋用伸縮装置 図6
  • 特許-道路橋用伸縮装置 図7
  • 特許-道路橋用伸縮装置 図8
  • 特許-道路橋用伸縮装置 図9
  • 特許-道路橋用伸縮装置 図10
  • 特許-道路橋用伸縮装置 図11
  • 特許-道路橋用伸縮装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】道路橋用伸縮装置
(51)【国際特許分類】
   E01C 11/02 20060101AFI20220629BHJP
   E01D 19/06 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
E01C11/02 A
E01D19/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018002026
(22)【出願日】2018-01-10
(65)【公開番号】P2019120091
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】特許業務法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮城 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】近藤 翼
(72)【発明者】
【氏名】辻本 博文
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-285884(JP,A)
【文献】特開2017-115496(JP,A)
【文献】実公昭59-031761(JP,Y2)
【文献】特開2016-075090(JP,A)
【文献】特開2009-138334(JP,A)
【文献】特開2006-125130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00-17/00
E01D 1/00-24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路橋桁の端部の遊間に設けられ、道路橋の橋軸直角方向に延在する道路橋用伸縮装置において、
前記道路橋の橋軸方向に互いに対向する一対の継手と、
下方に膨出するように湾曲した形状に成形され橋軸方向に弾性変形可能な樋部、及び前記継手の取付面に接触面を接する形状で前記樋部の橋軸方向の両端に一体に形成された一対の固定部を有し、前記接触面を前記取付面に接した状態にして前記一対の固定部が前記一対の継手に取り付けられ、前記一対の継手の間に設けられる止水部材とを備え、
前記止水部材は押出成形一体成型品であり、前記樋部は軟質樹脂または軟質ゴムで形成され、前記一対の固定部は硬質ゴムまたは硬質樹脂で形成され前記樋部よりも硬く、
前記取付面は、前記一対の継手の下部の対向する内面であることを特徴とする道路橋用伸縮装置。
【請求項2】
前記樋部は、両端部が上方に膨出した湾曲形状にされ橋軸方向に弾性変形可能であり、
前記一対の固定部は、前記樋部の前記両端部から下方に延びた形状に形成されていることを特徴とする請求項に記載の道路橋用伸縮装置。
【請求項3】
前記樋部は、前記両端部が前記一対の固定部の上端面から上方に膨出した湾曲形状にされていることを特徴とする請求項に記載の道路橋用伸縮装置。
【請求項4】
道路橋桁の端部の遊間に設けられ、道路橋の橋軸直角方向に延在する道路橋用伸縮装置において、
前記道路橋の橋軸方向に互いに対向する一対の継手と、
下方に膨出するように湾曲した形状に成形され橋軸方向に弾性変形可能な樋部、及び前記継手の取付面に接触面を接する形状で前記樋部の橋軸方向の両端に一体に形成された一対の固定部を有し、前記接触面を前記取付面に接した状態にして前記一対の固定部が前記一対の継手に取り付けられ、前記一対の継手の間に設けられる止水部材とを備え、
前記止水部材は押出成形一体成型品であり、前記樋部は軟質樹脂または軟質ゴムで形成され、前記一対の固定部は硬質ゴムまたは硬質樹脂で形成され前記樋部よりも硬く、
前記一対の継手は、下部の対向する内面から水平方向に突出して橋軸直角方向に延在するブラケットをそれぞれ有し、前記水平方向に突出している前記ブラケットが前記取付面となることを特徴とする道路橋用伸縮装置。
【請求項5】
前記一対の固定部は、前記樋部の端部から前記樋部の外側に向って水平方向に延びた形状であることを特徴とする請求項に記載の道路橋用伸縮装置。
【請求項6】
前記止水部材は、前記一対の継手と前記止水部材とが囲む空間の外側に前記一対の固定部が配置される形状であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の道路橋用伸縮装置。
【請求項7】
前記一対の固定部は、前記一対の継手に対してそれぞれリベット止めされていることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の道路橋用伸縮装置。
【請求項8】
前記一対の固定部は、橋軸直角方向に沿って形成されたリブを有することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の道路橋用伸縮装置。
【請求項9】
道路橋桁の端部の遊間に設けられ、道路橋の橋軸直角方向に延在する道路橋用伸縮装置において、
前記道路橋の橋軸方向に互いに対向する一対の継手と、
下方に膨出するように湾曲した形状に成形され橋軸方向に弾性変形可能な樋部、及び前記樋部よりも硬く、前記継手の取付面に接触面を接する形状で前記樋部の橋軸方向の両端に一体に形成された一対の固定部を有し、前記接触面を前記取付面に接した状態にして前記一対の固定部が前記一対の継手に取り付けられ、前記一対の継手の間に設けられる止水部材とを備え、
前記取付面は、前記一対の継手の下部の対向する内面であり、
前記樋部は、両端部が上方に膨出した湾曲形状にされ橋軸方向に弾性変形可能であり、前記一対の固定部は、前記樋部の前記両端部から下方に延びた形状に形成されており、
前記一対の固定部は、橋軸直角方向に沿って形成されたリブを有することを特徴とする道路橋用伸縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路橋用伸縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋桁の端部の遊間に設置され、気温の変化による橋桁の伸縮や車両の通行にともなう橋桁の変形等を吸収する道路橋用伸縮装置(以下、単に「伸縮装置」という)が知られている。伸縮装置が設置される橋桁の端部の遊間としては、橋軸方向に配置された橋桁同士の遊間、橋桁と橋台との間の遊間がある。例えば、鋼製の伸縮装置では、遊間の表面に、互いに噛合する櫛歯状の表面板をそれぞれ有する一対の継手を備えている。また、遊間からの雨水の侵入を防止するために、表面板の下側の一対の継手の間に弾性シール材が設けられている。さらに、近年では、遊間内に、弾性シール材から漏れ出た雨水を受ける止水部材(二次止水部材)が弾性シール材の下方に配置されることが多い。
【0003】
止水部材は、遊間の寸法の変化に追従しつつ雨水を受けるために、例えば長尺のゴムシートが用いられ、その幅方向の各端部を一対の橋桁の端部または橋桁の端部と橋台とにそれぞれ固定し、中央部を弛ませて樋状にしている。このような止水部材には、伸縮装置とは独立して設けられ、止水部材がアンカーボルト等で橋桁に直接に固定されるものが知られている(例えば特許文献1を参照)。一方、継手に止水部材が固定された止水部材内蔵型の伸縮装置も知られている。止水部材内蔵型の伸縮装置では、一対の継手の下部の内面に止水部材の端部が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-133591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような止水部材内蔵型の伸縮装置は、互いに独立した止水部材と伸縮装置とを組み合わせたもの(以下、セパレート構造という)よりも施工性が高いが、下記のような理由から、止水部材の耐久性を高め難いという問題があった。すなわち、止水部材内蔵型の伸縮装置では、弾性シール材を取り付けた一対の継手に対して止水部材の組み付けを行うため、継手の下側より止水部材の組み付け作業を行う必要があり、また止水部材の中央部を弛ませて下方に膨出するように湾曲させる必要がある。このため、止水部材の端部を継手の内面に下方に向ける状態に固定し、止水部材の中央部を自重で下方に膨出するように湾曲させている。しかしながら、止水部材となるゴムシートの厚みを大きくすると、その中央部が上述のように弛まず湾曲しない。このため、耐久性を高めるために止水部材としてのゴムシートの厚みを大きくすることが困難であった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、止水部材内蔵型のものであって止水部材の耐久性を高くすることができる道路橋用伸縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、道路橋桁の端部の遊間に設けられ、道路橋の橋軸直角方向に延在する道路橋用伸縮装置において、前記道路橋の橋軸方向に互いに対向する一対の継手と、下方に膨出するように湾曲した形状に成形され橋軸方向に弾性変形可能な樋部及び前記樋部よりも硬く、前記継手の取付面に接触面を接する形状で前記樋部の橋軸方向の両端に一体に形成された一対の固定部を有し、前記接触面を前記取付面に接した状態にして前記一対の固定部が前記一対の継手に取り付けられ、前記一対の継手の間に設けられる止水部材とを備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の道路橋用伸縮装置によれば、止水部材に橋軸方向に弾性変形可能にされた樋部とこの樋部の両端に樋部よりも硬い固定部を継手の取付面に接する形状で一体に設け、止水部材を使用状態と略同じ形状に成形されているので、止水部材の厚みが増大しても樋部としての湾曲形状が維持されるから、止水部材の厚みを増大させて止水部材の耐久性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る道路橋用伸縮装置の外観を示す斜視図である。
図2】道路橋用伸縮装置を遊間に設置した状態を示す断面図である。
図3】止水部材の取り付け状態を示す要部断面図である。
図4】樋部の各端部に逆L字状の固定部を一体に形成した止水部材の取り付け状態を示す要部断面図である。
図5】樋部の各端部に水平方向に延びた固定部を一体に形成した止水部材をブラケットの下面に取り付けた状態を示す要部断面図である。
図6】樋部の各端部に水平方向に延びた固定部を一体に形成した止水部材をブラケットの上面に取り付けた状態を示す要部断面図である。
図7】樋部の各端部に逆L字状の固定部を一体に形成した止水部材をブラケットの下面に取り付けた状態を示す要部断面図である。
図8】樋部の各端部に逆L字状の固定部を一体に形成した止水部材をブラケットの上面に取り付けた状態を示す要部断面図である。
図9】止水部材を腹板の外面に取り付けた状態を示す要部断面図である。
図10】樋部と固定部との接合面を厚み方向に対して傾いた斜面とした例の要部を拡大して示す断面図である。
図11】樋部と固定部との接合面をそれぞれの厚み方向に対して傾いた斜面とした例の要部を拡大して示す断面図である。
図12】固定部のリブと樋部の端部とを一体に形成した例の要部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1において、道路橋に設置される道路橋用伸縮装置(以下、単に「伸縮装置」)という)10は、止水部材内蔵型のものであり、一対の継手12、アンカー部材14、弾性シール材16、止水部材(二次止水部材)18を備える。一対の継手12及びアンカー部材14は、鋼製であって、一体に形成されている。各継手12は、橋軸方向(矢印X方向)と直交する橋軸直角方向(矢印Y方向、道路橋の幅方向)に延在する。弾性シール材16、止水部材18についても、同様に橋軸直角方向に延在する。アンカー部材14は、継手12にそれぞれ複数設けられており、継手12の橋軸直角方向に所定の間隔で固定されている。
【0011】
継手12は、逆L字形状の部材であり、道路橋の表面側に配置される表面板21と、この表面板21と一体に形成され、表面板21の一端から下方に向けて屈曲された腹板22とを有する。表面板21と腹板22とは、いずれも橋軸直角方向に長い略矩形状の板状である。一対の継手12は、互いに対向する表面板21の端部に凹凸が繰り返し形成され、それらの凹凸が互いに隙間23を形成した状態で噛合する。隙間23の橋軸方向の寸法は、橋桁24(図2参照)の伸縮等により増減する。
【0012】
図2に示すように、伸縮装置10は、橋軸方向に並べられた道路橋の橋桁24の遊間に設置される。なお、伸縮装置10は、橋桁と橋台との間の遊間に設置されるものでもよい。伸縮装置10は、表面板21の表面が道路橋の橋面(舗装面)と同一面をなし、床版24aの上に配したアンカー部材14が後打ちコンクリート24bで埋設して固定される。
【0013】
弾性シール材16は、一対の継手12の間に雨水の侵入を抑制する。この弾性シール材16は、例えば腹板22の内面22aに貼着されている。弾性シール材16は、弾性材料で構成され、隙間23の拡大及び縮小に追従して弾性変形する。止水部材18は、一対の継手12の間に設けられ、弾性シール材16よりも下側に配される。この止水部材18は弾性シール材16から漏れた水の下方への落下を遮断し、その水を排水パイプ(図示省略)に導く。
【0014】
図3おいて、止水部材18は、樋部31と、この樋部31の両端にそれぞれ一体に形成された一対の固定部32とから構成される。この例の止水部材18では、樋部31は、その中央部31aが下方に膨出するように円弧状に湾曲し、樋部31の端部31bが中央部31aの外側でそれぞれ上方に膨出するように湾曲した形状になっている。この樋部31では、その中央部31aが弾性シール材16から漏れた水を排水パイプに導く樋として機能する。固定部32は、端部31bから下方に向って直線的に延びている。止水部材18は、各固定部32をそれぞれ継手12の下部となる腹板22の内面22aに接した状態で固定される。この例では、固定部32には、剛性を高くするために、橋軸直角方向に延在するリブ33が一体に形成されている。
【0015】
上記のような形状の止水部材18は、一対の継手12と止水部材18とが囲む空間の外側に各固定部32の接触面が形成された部分がそれぞれ配置される形状である。もちろん、これらの接触面に対応する一対の継手12の取付面となる内面22aの部分も、当該空間の外側である。これにより、当該空間内に継手12の端部側から工具等を差し入れたりすることなく、止水部材18を継手12に固定することができる。
【0016】
中央部31a及び各端部31bをそれぞれ湾曲させた形状の樋部31は、可撓性に富んでおり、後述するように内面22aの間隔の変化に応答して弾性変形する際に破損し難く、また樋として機能する中央部31aの上下方向における位置の変化が小さいという利点がある。また、止水部材18は、中央部31aと固定部32との間を湾曲形状で接続しているため、内面22aの間隔の変化に応答して止水部材18が弾性変形する際の応力集中による破損が防止される。さらに、上記のように端部31bを湾曲した形状にすることより、樋部31と固定部32との接合部分にそれらを分離させる方向に作用する力を低減させ、止水部材18の破損を防止している。この例では、止水部材18における樋部31と各固定部32の接合面は、その厚み方向に対して平行な面になっている。なお、樋部31と固定部32との接合を分離させる力は、樋部31の重み、樋部31上の雨水の重み、一対の継手12の間隔の変化による樋部31の変形に起因して生じる。
【0017】
取り付け状態では、止水部材18は、腹板22の内面22aの間隔の変化に応じて樋部31が弾性変形する。すなわち、樋部31は、軟質材で形成されており、内面22aの間隔が変化したときに、それに追従して中央部31a及び端部31bの曲率半径を変化させるように弾性変形して、一対の固定部32の橋軸方向の間隔を変化することができるほどの可撓性を有している。一方、固定部32は、上記の樋部31よりも硬く、それ自体が樋部31や樋部31上の雨水の重み等で変形せず、樋部31を支持することができる硬さを有している。
【0018】
上記樋部31は、例えばゴムの硬度がA70未満のCR(chloroprene-rubber)やEPT(ethylene-propylene terpolymer)等の軟質ゴム、軟質塩化ビニールやTPO(オレフィン系エラストマー)、ポリウレタン等の軟質樹脂等の軟質材料で形成されている。また、固定部32は、ゴムの硬度がA70以上のCR(chloroprene-rubber)やEPT(ethylene-propylene terpolymer)等の硬質ゴム、硬質塩化ビニールやPP (Polyepropylene)、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂等の硬質樹脂等の硬質材料で形成される。上記ゴムの硬度は、いずれも日本工業規格JIS K 6253に準拠し、タイプAデュロメータで測定された硬さである。樋部31と固定部32とは、融着強度の観点から同質の軟硬質の組み合わせが好ましく、具体的には、例えば軟質ゴムと硬質ゴム、軟質PVCと硬質PVCの組み合わせが好ましい。その他としては樹脂同士の相性の良い材料としてTPOとPP、ポリウレタンとABS樹脂等があげられる。
【0019】
上記止水部材18は、押出成形により、樋部31と固定部32とが一体に形成される。止水部材18は、継手12への使用状態(取り付け状態)に近い形状に作製され、押出成形の際に継手12への使用状態に近い形状が付与される。すなわち、止水部材18は、上記のように所定の湾曲形状の樋部31と、この樋部31の両端に所定の形状で設けた各固定部32とが一体に成形される。このように作製される止水部材18は、樋部31を大きく弾性変形させることなく、固定部32の接触面が継手12の取付面に接する形状である。例えば、使用状態における一対の継手12の相互の間隔の変化範囲内、すなわち一対の継手12の最大の間隔と最小の間隔との間の任意の間隔、例えばそれらの中間の間隔を使用状態として、その使用状態において止水部材18の形状が決められ、その形状とほぼ同じになるように止水部材18が成形される。
【0020】
上記のように、止水部材18は、使用状態に近い形状に成形されているため、止水部材18の厚みを大きくしても中央部31aの湾曲形状が維持されるので、樋としての機能を確保しながら、止水部材18の厚みを大きくして耐久性を向上させることができる。なお、止水部材18は、厚みを3mm以上とすることが好ましく、この例では厚みを3mmとしている。
【0021】
また、止水部材18が使用状態に近い形状に成形されているため、それを継手12に取り付ける際に、止水部材18を大きく曲げる必要がなく、また使用状態においても止水部材18が大きく曲がることがない。このため、止水部材18に大きな曲げ応力が発生しないので、止水部材18の破損等が生じ難い。したがって、より耐久性を高めることができる。
【0022】
この例では、作業性を高めるために、固定部材としてリベット34を用いて止水部材18を継手12に固定している。リベット34としては、継手12の下側からの作業だけで止水部材18を固定できる、例えば樹脂製のプッシュリベットやアルミ製のドライブリベットを用いることができる。リベット34は、固定部32に設けた挿通孔35と腹板22の内面22aに設けた有底の穴22bに差し込んだ状態で、ロックピンの押し込みにより拡開した先端部が穴22bの内周面に係合することで、固定部32を腹板22に固定する。
【0023】
固定部材としてボルト等を用い、穴22bに螺合することもできるが、上記のようにリベット止めすれば、簡単な作業で止水部材18を継手12に固定することができる他、車両の走行に伴う振動によるボルトの緩みや脱落、ひいては止水部材18の脱落を防止することができる。なお、リベット34を引き抜いて止水部材18を交換することも可能である。
【0024】
ところで、例えば全体が薄いゴムシートからなる止水部材を用いた従来の構成では、その止水部材の端部を橋軸直角方向にわたって腹板22の内面22aに押し付けた状態で保持するための剛性の高い押え板が必要になる。しかしながら、この例における止水部材18は、上記のように樋部31と一体に形成された硬質の固定部32をリベット34で固定しているため、橋軸直角方向に延在する固定部32が内面22aから部分的に浮き上がることがないので、上記のような押え板は不要である。
【0025】
また、止水部材18は、上述のように使用状態に近い形状になっているため、例えば樋部31の中央部31aが上方に膨出するように変形することがない。したがって、これまでの伸縮装置のように、弾性シール材16に止水部材18が貼着することを防止する離型用部材を弾性シール材16と止水部材18との間に設ける必要がない。
【0026】
上記のように構成される伸縮装置10は、一対の継手12に止水部材18が取り付けられた状態で、図2に示されるように、道路橋の橋桁24の遊間に設置されて、床版24aの端部に固定される。降雨時等において、弾性シール材16から漏れ出て継手12の間に侵入した雨水等は、止水部材18によって遮断され、下方への落下が防止される。そして、遮断された雨水等は、止水部材18の湾曲した中央部31a上に集められて排水パイプに送られる(図3)。
【0027】
例えば、気温の上昇等により、橋桁24が橋軸方向に伸長した場合には、一対の継手12が互いに近づく方向に移動し、各腹板22の内面22aの間隔が狭くなる。この場合には、内面22aから固定部32を介して樋部31に圧縮する力が作用するから、樋部31は、中央部31a及び各端部31bの曲率半径を小さくするように弾性変形する。逆に気温の低下等により、橋桁24が橋軸方向に収縮した場合には、一対の継手12が互いに離れる方向に移動し、各腹板22の内面22aの間隔が広くなる。この場合には、内面22aから固定部32を介して樋部31にそれを伸長する力が作用するから、樋部31は、中央部31a及び各端部31bの曲率半径を大きくするように弾性変形する。
【0028】
上記のように一対の継手12の橋軸方向における相反する方向の移動にともない、止水部材18は、それに追従するように樋部31が弾性変形して、一対の固定部32の間隔が増減する。この弾性変形する際の止水部材18、特には樋部31の変形量は、成形時の予め湾曲した形状からの変形量となるので、あまり大きくならない。このため、止水部材18に大きな曲げ応力が生じることがなく、止水部材18の耐久性が向上する。また、上記のように止水部材18の端部31bを内面22aに押し付ける押え板がないため、止水部材18が押え板で擦れて破損するようなこともない。
【0029】
上記の止水部材の形状、取り付け手法は一例であり、それに限定されない。なお、図4ないし図9に示す例において、以下に説明する他は、上記の例と同様であり、実質的に同じ構成部材には同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0030】
図4に示す例の止水部材18Aは、樋部31Aの全体が下方に膨出するように円弧状に湾曲した形状であり、一対の固定部32Aがそれぞれ樋部31Aの端部から樋部31Aの外側に向って水平に延びた水平部分と水平部分から垂下した垂直部分を有する逆L字状であり、そのような形状に成形されている。この止水部材18Aは、接触面として固定部32Aの垂直部分の外側の面を腹板22の内面22aに接した状態にしてリベット34で継手12に固定されている。
【0031】
図5に示す例の止水部材18Bは、樋部31Bが下方に膨出するようにU字状に湾曲した形状であり、一対の固定部32Bは、それぞれ樋部31Bの端部から樋部31Bの外側に向って水平に延びた形状であり、そのような形状に成形されている。この例では、一対の腹板22には、内面22aから水平方向に突出し、橋軸直角方向に延在するブラケット37がそれぞれ設けられており、止水部材18Bは、接触面として固定部32Bの上面が取付面としてのブラケット37の下面に接した状態に固定される。この固定では、固定部32Bの挿通孔35とブラケット37の挿通孔37aにそれぞれ通したリベット38の先端をブラケット37の上面側で拡開させて固定している。なお、ブラケット37には、複数の挿通孔37aが橋軸直角方向に所定の間隔で形成されている。
【0032】
なお、図5に示す例におけるリベット38としては、プッシュリベット、ドライブリベットの他に、ブラインドリベットを用いることもできる。また、最初の例と同様にリベット38の先端をブラケット37に形成した穴内で拡開させて固定してもよい。さらに、図6に示す止水部材18Cのように、固定部32Cの下面を取付面としてのブラケット37の上面に接した状態にして継手12に固定してもよい。止水部材18Cの樋部31C、固定部32Cの形状は、図5の例のものと同様であるが、リブ33が固定部32Cの上面に形成されている。
【0033】
図7に示す止水部材18Dは、その全体的な形状が図5の止水部材18Bと同じ形状であるが、固定部32Dが逆L字状になっている。すなわち、一対の固定部32Dは、水平に延びた水平部分と、水平部分から垂下した垂直部分を有する形状であり、各垂直部分の下端の間に、下方に膨出するように湾曲した形状の樋部31Dが形成されている。この止水部材18Dは、図5の例と同様に、腹板22に一体に形成されたブラケット37の下面に、接触面としての固定部32Cの水平部分の上面が接した状態に固定される。なお、図8に示す止水部材18Eのように、固定部32Eの水平部分の下面をブラケット37の上面に接した状態にして継手12に固定してもよい。止水部材18Eの樋部31E、固定部32Eの形状は、図7の例のものと同様であるが、リブ33が固定部32Eの上面に形成されている。
【0034】
図9に示す止水部材18Fは、その固定部32Fが腹板22の外面22cから下面に沿ったL字状であり、取付面としての腹板22の外面22cに接触面としての固定部32Fの内面が接した状態に固定されて、一対の継手12の間に設けられる。外面22cには、リベット34が挿入される穴22dが形成されている。樋部31Fは、各固定部32Fの水平部分の端部間に、下方に膨出した形状に形成されている。この例では、樋部31Fは、一対の継手12の間の間隙の下方に配置される。
【0035】
なお、上記図4図5図7図9の各例における止水部材は、一対の継手と止水部材とによって囲む空間の外側に各固定部の接触面が形成された部分がそれぞれ配置される形状である。
【0036】
止水部材における樋部と各固定部の接合面は、それらの厚み方向に対して平行な面等とすることができるが、樋部と各固定部との分離を防止して耐久性を向上するために、厚み方向に対して傾いた斜面等として融着面積を大きくするのがよい。例えば、図10の例では、最初の例における止水部材18について、樋部31と固定部32との接合面41をそれらの厚み方向に対して傾いた斜面としている。また、図11の例では、止水部材18Bについて、樋部31Bと固定部32Bとの接合面42をそれぞれの厚み方向に対して傾いた斜面としている。なお、接合面をU字状、V字状や階段状等にして融着面積を大きくしてもよい。
【0037】
また、図12に示す止水部材18Gのように、固定部32Gの剛性を高めるリブ43と樋部31Gの端部とを結合した構造とすることもできる。この例では、止水部材18Gは、図5の例と同様に、ブラケット37の下面に固定部32Gが接した状態で固定される。止水部材18Gの固定部32Gには、リブ43が設けられ、このリブ43は橋軸直角方向に延在している。リブ43は、固定部32Gの樋部31G側の端部に下方に向って膨出する断面U字状に形成されている。樋部31は、リブ43と一体に形成されて、その端部がリブ43から下方に向って延びるように設けられている。リブ43の厚み(図中左右方向の最大長さ)は、樋部31の厚みと同じであり、樋部31の端部の内部にリブ43を入れ込んだ状態になっている。このような構成とすることで、リベット38とリブ43との干渉を防止することができる。また、固定部32Gと樋部31Gとの接合面45が断面U字状のリブ43の表面となるので、融着面積が大きくなり、樋部31Gと固定部32Gとの分離を防止して耐久性を向上する効果もある。
【符号の説明】
【0038】
10 伸縮装置
12 継手
18、18A~18F 止水部材
31、31A~31F 樋部
32、32A~32F 固定部
33 リブ
34、38 リベット

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12