(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/535 20060101AFI20220629BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A61F13/535 100
A61F13/53 300
A61F13/535 200
(21)【出願番号】P 2018061582
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】村上 友朗
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-070499(JP,A)
【文献】特開2006-297078(JP,A)
【文献】特開2003-103677(JP,A)
【文献】特開2002-113800(JP,A)
【文献】特開2013-005880(JP,A)
【文献】特開2006-297077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリマーシートを備えた吸収性物品であって、
前記ポリマーシートは、不織布の肌側面の少なくとも着用者の体液排出部に対応する領域に、起毛処理によって基層と比べて相対的に繊維間空隙が大きく形成された起毛処理部と前記起毛処理を施さない非起毛処理部とがそれぞれ、装着時に着用者の前後方向に沿って連続する線状に延びるとともに、これと直交する方向に交互に配置され、少なくとも前記起毛処理部に高吸水性ポリマーが配置されている
とともに、前記起毛処理部に配置された高吸水性ポリマーの目付け量より低い目付け量で、前記非起毛処理部に前記高吸水性ポリマーが配置されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記起毛処理部は、着用者の体液排出部に対応する領域と、その前側領域及び後側領域との間において連続する線状に延びている請求項
1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記起毛処理部は、着用者の体液排出部に対応する領域にのみ配置され、前記起毛処理部から離間する少なくとも前側及び後側の領域にそれぞれ、高吸水性ポリマーが配置されないポリマー非配置領域が形成され
ている請求項
1記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記起毛処理部は、格子状に配置されている請求項1~
3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記不織布の少なくとも前記起毛処理部が形成された側の面に隣接して第2不織布が積層されている請求項1~
4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記不織布の前記起毛処理部が形成された側の面及びこれと反対側の面にそれぞれ隣接して第2不織布及び第3不織布が積層されている請求項1~
5いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつ、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に係り、詳しくは不織布の一方側面に起毛処理を施すことによりポリマー配置層が形成された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前記吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に、体液を吸収し保持する機能を備えた吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、前記吸収体としてパルプを用いた比較的嵩のある吸収性物品の場合には、身体のラインに影響して目立ちやすい、持ち運びに不便である、または収納性が悪いなどの問題があるとともに、物流の効率化や省資源化などの要請から、薄型の吸収体を用いた吸収性物品が好まれる傾向にある。
【0004】
前記薄型の吸収体としては、2層のシート間に粉粒状の高吸水性ポリマーが配置されたポリマーシートを備えたものが提案されている。前記ポリマーシートは、大量の体液を吸収して保持する点では優れているが、内部に粉粒状の高吸水性ポリマーの集合体が配設されているため、通液性が低く、吸収スピードが遅いという課題があった。このため、一度に大量の体液が排出されたとき、高吸水性ポリマーに吸水されずにポリマーシート上に体液があふれるおそれがあった。
【0005】
このようなポリマーシートを用いた吸収性物品としては、例えば下記特許文献1、2を挙げることができる。下記特許文献1においては、繊維材料及び高吸収性ポリマー粒子を含む吸収性シートであって、前記高吸収性ポリマー粒子は、前記繊維材料に保持された状態で前記吸収性シートの厚み方向に分散配置されており、前記吸収性シートの前記厚み方向における前記高吸収性ポリマー粒子が配置されている領域を、前記厚み方向と直交する面で複数の層状の領域に区分した場合、各該領域に配置されている前記高吸収性ポリマー粒子の平均粒径が、前記吸収性シートの一面側から他面側に向って、減少している吸収性シートが開示されている。
【0006】
また、下記特許文献2においては、繊維集合層に、粉粒体を担持可能なように分岐した多分岐状繊維が含まれ、上記多分岐状繊維は、加熱したときに、分岐部が粉粒体と融着可能な繊維である粉粒体担持シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-167193号公報
【文献】特開2005-307383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載された吸収性シートでは、繊維材料の全体に亘って高吸水性ポリマーが分散して配置されているため、高吸水性ポリマーの量を多くした場合には、高吸水性ポリマーが吸水して膨潤したとき、隣り合う高吸水性ポリマーの粒子同士が結合して、所謂「ゲルブロッキング」を生じ、所望の吸水力を発現できなくなるおそれがあった。また、高吸水性ポリマーの量を多くした場合には、繊維材料から抜け出たり、繊維材料の内部を移動して、高吸水性ポリマーの偏りを生じやすく、吸水前の高吸水性ポリマーがジャリ感(粒子感)を与えたり、吸水して膨潤した際に一部が大きく膨出するなどの装着感の低下を招くおそれがあった。
【0009】
また、上記特許文献2に記載された粉粒体担持シートでは、繊維集合層が加熱されることによって高吸水性ポリマーに熱融着しているため、高吸水性ポリマーの吸水能力が低下するおそれがあった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、ポリマーシートを備えた吸収性物品において、高吸水性ポリマーが移動しにくく、装着感の低下をきたさないとともに、ゲルブロッキングが生じにくく、吸水能力が維持できるようにした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、少なくともポリマーシートを備えた吸収性物品であって、
前記ポリマーシートは、不織布の肌側面の少なくとも着用者の体液排出部に対応する領域に、起毛処理によって基層と比べて相対的に繊維間空隙が大きく形成された起毛処理部と前記起毛処理を施さない非起毛処理部とがそれぞれ、装着時に着用者の前後方向に沿って連続する線状に延びるとともに、これと直交する方向に交互に配置され、少なくとも前記起毛処理部に高吸水性ポリマーが配置されているとともに、前記起毛処理部に配置された高吸水性ポリマーの目付け量より低い目付け量で、前記非起毛処理部に前記高吸水性ポリマーが配置されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、不織布の肌側面の少なくとも着用者の体液排出部に対応する領域に、所定の間隔を空けた起毛処理によって起毛処理部が形成され、この起毛処理部に高吸水性ポリマーが配置されたポリマーシートを備えているため、起毛処理によって大きくなった繊維間空隙に高吸水性ポリマーが埋没しやすくなり、高吸水性ポリマーが不織布に定着した状態が維持でき、高吸水性ポリマーが移動しにくくなる。このため、高吸水性ポリマーの偏りが防止でき、装着感が良好になる。また、前記起毛処理部が不織布の肌側面に形成されているため、起毛処理によって繊維間空隙が大きく形成された該起毛処理部を通じて、肌側から浸透した体液が不織布に吸収されやすくなる。更に、不織布に吸収された体液は、基層を通じて毛管作用により広い範囲に拡散するため、広範囲の高吸水性ポリマーに体液を接触させることができ、高吸水性ポリマーのゲルブロッキングを防止しつつ、効率よく吸水できるようになる。
【0013】
また、ポリマー配置層は、起毛処理部と非起毛処理部とが前後方向に沿って連続する線状に延び、これと直交する方向に交互に配置されているため、高吸水性ポリマーが吸水して膨潤するスペースが確保でき、ゲルブロッキングが生じにくく、所望の吸水能力が得られるようになる。
【0014】
さらに本発明では、前記起毛処理部に配置された高吸水性ポリマーの目付け量より低い目付け量で、前記非起毛処理部に前記高吸水性ポリマーが配置されている。すなわち、前記起毛処理部に高吸水性ポリマーを散布する際に一部が、前記非起毛処理部にも配置されるようにしている。これによって、非起毛処理部においてもある程度の吸水機能が付加できるようになる。ただし、高吸水性ポリマーの大部分は起毛処理部に配置されるので、非起毛処理部に配置された高吸水性ポリマーの目付け量は、起毛処理部に配置された高吸水性ポリマーの目付け量に比べて低くなっている。
【0015】
請求項2に係る本発明として、前記起毛処理部は、着用者の体液排出部に対応する領域と、その前側領域及び後側領域との間において連続する線状に延びている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記請求項2記載の発明では、前記起毛処理部を、前側領域から後側領域にかけて連続する線状に配置しているため、ほとんど全ての領域でゲルブロッキングを防止しつつ充分な吸水能力が得られるとともに、連続線状に起毛処理を施すことにより、不織布に対して連続的に回転刃を当てることで、確実に起毛させることができ、起毛処理部に対する高吸水性ポリマーの定着性が良好となる。
【0017】
請求項3に係る本発明として、前記起毛処理部は、着用者の体液排出部に対応する領域にのみ配置され、前記起毛処理部から離間する少なくとも前側及び後側の領域にそれぞれ、高吸水性ポリマーが配置されないポリマー非配置領域が形成されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項3記載の発明では、前記起毛処理部を着用者の体液排出部に対応する領域にのみ設け、これより前側及び後側の領域にそれぞれ、(1)ポリマー非配置領域を形成している。この形態では、前側領域及び後側領域に高吸水性ポリマーが配置されないため、不織布の柔軟性が維持でき、装着感に優れるようになる。
【0019】
請求項4に係る本発明として、前記起毛処理部は、格子状に配置されている請求項1~3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項4記載の発明では、起毛処理部を格子状パターンで配置することによって、ゲルブロッキングを防止しつつ、充分な吸水量が確保できる。
【0021】
請求項5に係る本発明として、前記不織布の少なくとも前記起毛処理部が形成された側の面に隣接して第2不織布が積層されている請求項1~4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項5記載の発明では、前記不織布の起毛処理部が形成された側の面に隣接して第2不織布が積層されているため、高吸水性ポリマーがポリマー配置層に配置された状態が維持しやすく、着用時に高吸水性ポリマーの異物感が感じにくくなるとともに、高吸水性ポリマーが吸水したとき前記第2不織布の高さにまで膨潤できるため、ポリマー配置層におけるゲルブロッキングが防止できるようになる。
【0023】
請求項6に係る本発明として、前記不織布の前記起毛処理部が形成された側の面及びこれと反対側の面にそれぞれ隣接して第2不織布及び第3不織布が積層されている請求項1~5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0024】
上記請求項6記載の発明では、前記不織布の両面をそれぞれ第2不織布及び第3不織布で積層しているため、着用時に高吸水性ポリマーの異物感が更に感じにくくなる。
【発明の効果】
【0025】
以上詳説のとおり本発明によれば、高吸水性ポリマーが移動しにくく、装着感の低下をきたさないとともに、ゲルブロッキングが生じにくく、吸水能力が維持できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係るパッド10の一部破断展開図である。
【
図6】不織布に高吸水性ポリマーを埋設する従来の方法を示す断面図である。
【
図7】ポリマーシート1の製造工程を示す断面図である。
【
図8】起毛処理部8の配置パターンを示す不織布2の平面図(その1)である。
【
図9】起毛処理部8の配置パターンを示す不織布2の平面図(その2)である。
【
図10】起毛処理部8の配置パターンを示す不織布2の平面図(その3)である。
【
図11】変形例に係るポリマーシート1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0028】
<パッドの基本構造の一例>
本発明に係るパッド10は、下着や紙おむつ等の肌当接面に取り付けて使用する尿とりパッド等のパッドであり、
図1~
図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる防漏シート11と、肌当接面をなし、尿などを速やかに透過させる表面シート12と、これら両シート11、12間に介装されたポリマーシート1と、パッド10の最外面(非肌当接面)を覆う外装シート13と、前記ポリマーシート1の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも着用者の排尿口部を含む前後方向の所定の区間内において肌側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSを形成するサイド不織布14、14とから主に構成され、かつポリマーシート1の周囲においては、その上下端縁部では防漏シート11、表面シート12及び外装シート13の外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部ではポリマーシート1よりも側方に延出している防漏シート11、表面シート12、外装シート13及びサイド不織布14がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合されている。
【0029】
前記防漏シート11は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年ではムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記防漏シート11としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0030】
次いで、前記表面シート12は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記表面シート12に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0031】
外装シート13は、防漏シート11を覆ってパッド10の外面を布のような外観、肌触りとするものである。外装シート13としては、不織布で形成するのが好ましい。素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法は、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いて製作することができる。但し、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好ましい。
不織布は一枚で使用する他、複数枚を重ねて使用することもでき、複数枚を重ねて使用する場合は、不織布相互をホットメルト等の接着剤を介して固定するのが好ましい。また、不織布を用いる場合は、その繊維目付けは10~50g/m2、特に15~30g/m2が好ましい。
【0032】
前記外装シート13の非使用面側(外面)に1または複数条の仮止め層(図示せず)を形成してもよい。前記仮止め層は設けても設けなくても良いが、前記仮止め層を設けることにより、身体への装着時にパッド10を下着や紙おむつ等に固定することができるようになる。前記仮止め層としては、機械接合式のフック材を用いてもよいし、粘着剤を用いてもよい。
【0033】
図示例では、外装シート13はポリマーシート1の幅よりも若干幅が広い程度とされ、両側部が防漏シート11及び表面シート12の側縁を巻き込むようにして表面シート12の肌側にまで延在され、表面シート12の幅方向外側は、この肌側に延在する外装シート13の外面側に表面シート12の両側部表面から延在するサイド不織布14、具体的には尿等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたサイド不織布14が配設されている。かかるサイド不織布14としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13~23g/m2として作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0034】
前記サイド不織布14の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1又は複数本の、図示例では3本の糸状弾性伸縮部材15、15…が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では
図3に示されるように、外側に1回折り返して積層された状態でポリマーシート1側に接着されることによって、少なくとも着用者の排尿口部を含む前後方向の所定の区間内において
図2に示されるように、肌側に起立する立体ギャザーBS、BSが左右対で形成されている。
【0035】
<ポリマーシート>
前記ポリマーシート1は、
図4及び
図5に示されるように、不織布2の肌側面の少なくとも着用者の体液排出部に対応する領域に、起毛処理によって基層3aと比べて相対的に繊維間空隙が大きく形成された起毛処理部8と、前記起毛処理を施さない非起毛処理部9とがそれぞれ、装着時に着用者の前後方向に沿って連続する線状に延びるとともに、これと直交する方向に交互に配置され、少なくとも前記起毛処理部8に高吸水性ポリマー4が配置されている。
図5において、所定の間隔を空けた起毛処理によって不織布2の基層3aより肌側に起毛した(膨出した)起毛処理部分をポリマー配置層3としている。前記ポリマーシート1は、
図5に示されるように、非肌側の基層3aと、肌側の前記ポリマー配置層3とからなる1枚の不織布2を含んで構成されている。前述の着用者の体液排出部に対応する領域とは、パッド10の装着時に着用者の股下に対応する長手区間における幅方向中央の領域であって、着用者の脚周りにフィットしやすくするため、ポリマーシート1の両側部を切り欠いた脚周りカットラインが設けられる場合には、その脚周りカットラインが設けられた幅方向中央の領域である。前記脚周りカットラインが設けられない場合には、ポリマーシート1を長手方向に3等分したときの中央の1/3区間の幅方向中央の領域である。なお、前述の幅方向中央の領域とは、概ねポリマーシート1を幅方向に5等分したときの両側の1/5区間を除いた中央の3/5区間である。
【0036】
図2及び
図3に示されるように、前記ポリマーシート1は、所定の起毛処理を施した起毛処理部8に高吸水性ポリマー4が配置された不織布2を単独で配置するのが好ましい。すなわち、前記ポリマーシート1が前記不織布2の1層からなり、前記不織布2の肌側に隣接して表面シート12が配置され、非肌側に隣接して防漏シート11が配置されるようにするのが好ましい。これにより、パッド10をより確実に薄型化でき、装着感に優れるようになる。また、表面シート12を浸透した体液が起毛処理部8…を通じて直接ポリマーシート1に吸水されるため、起毛処理によって繊維間空隙が大きくなった起毛処理部8…の初期の吸水能力が高い特性を充分に活用して、初期吸水能力を充分に高めることができるようになる。
【0037】
前記基層3aは、相対的に繊維間空隙が小さく形成された、前記起毛処理によって肌側に膨出しない層であり、起毛処理を施す前の不織布の厚みとほぼ同じ厚みを有する層である。前記ポリマー配置層3は、前記起毛処理によって前記基層3aと比べて相対的に繊維間空隙が大きく形成された起毛処理部8を備え、前記基層3aより肌側に膨出する層である。
【0038】
前記不織布2としては、有孔または無孔の不織布が用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、親水性のセルロース系繊維とすることができる。前記親水性のセルロース系繊維としては、綿繊維やパルプ繊維などの天然由来のものや、レーヨン繊維、アセテート繊維、リヨセル繊維などの人工セルロース系繊維が挙げられる。前記綿繊維としては、木綿の原綿、精錬・漂白した綿繊維あるいは精錬・漂白後、染色を施した綿繊維、精錬・漂白した脱脂綿繊維、さらには糸もしくは布帛になったものを解繊した反毛等、あらゆる綿繊維を使用できるが、不織布2における液の吸収スピード及び拡散性を高めるため、特に綿繊維の表面に付着しているコットンワックスの天然油脂を脱脂した脱脂綿を使用するのが好ましい。前記不織布の加工法は問わないが、高吸水性ポリマー4の脱落を防止するため、エアースルー法、スパンボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法など、得られる製品の繊維密度が大きくなる加工法とするのが好ましい。特に、嵩を大きくできるエアースルー法が望ましい。
【0039】
前記不織布2の目付けは、15g/m2以上であるのが好ましく、特に40~150g/m2であるのが好ましい。不織布の目付けが15g/m2未満では、嵩が小さく、充分な起毛処理を施すことができない。
【0040】
不織布に高吸水性ポリマーを分散配置する従来の技術としては、上記特許文献1(特開2007-167193号公報)に開示されるものが存在する。この従来の技術は、
図6(A)に示されるように、まず、高吸水性ポリマーを、乾燥状態にある不織布の一方の面の上方から散布し、次に
図6(B)に示されるように、高吸水性ポリマーが散布された不織布に振動を加える方法である。この従来の方法では、振動により、高吸水性ポリマー粒子は、不織布を構成する繊維同士が形成する隙間を、下方に移動する。小さな粒径の高吸水性ポリマーほど、下方に移動し易く、大きな粒径の高吸水性ポリマーほど、移動しにくくなっている。しかしながら、この従来の方法では、
図6(B)に示されるように、不織布を構成する繊維同士の隙間より大きな粒径の高吸水性ポリマーを不織布に埋設させることができないという課題があった。不織布の内部まで入り込ませるには、高吸水性ポリマーの平均粒径を100~300μmとしなければならず、500μm以上の粒径が大きなものは、埋没させることができなかった。また、不織布の内部に配置される高吸水性ポリマーの平均粒径がほぼ一定となるため、吸水して膨潤した際にゲルブロッキングを生じやすいという課題もあった。
【0041】
そこで、本発明に係るポリマーシート1では、前述の通り、不織布2に所定の間隔を空けた起毛処理を施すことにより、前記起毛処理部8を形成し、この起毛処理部8に高吸水性ポリマー4を配置している。
【0042】
前記不織布2に前記起毛処理部8を形成するには、以下に示される起毛処理が用いられる。前記起毛処理部8を形成する手段としては、
図7(A)に示されるように表面が平坦な不織布2に対して、
図7(B)に示されるように、周面に複数のカッター刃が備えられた回転刃7を、所定の間隔を空けて並列配置し、不織布2の一方側面に所定の深さで不織布2の構成繊維を傷付け、毛羽立ちや糸切れなどを生じさせる起毛処理を施すことにより所定の高さで起毛処理部8を形成する。前記回転刃7により起毛処理を施した部分は、繊維が毛羽立って相対的に突出した突部となる一方で、隣り合う回転刃7、7の間は、起毛処理が施されないが、隣接する起毛処理部8の起毛処理によって突出した繊維によって表面が覆われた非起毛処理部9となる。前記起毛処理部8が主として高吸水性ポリマー4が配置される領域となり、
図7(C)に示されるように、前記起毛処理部8に高吸水性ポリマー4を散布することにより、大きな粒径の高吸水性ポリマー4も起毛処理によって大きくなった繊維間空隙に配置できるようになる(
図7(D))。
【0043】
前記起毛処理部8の周囲は、必ず前記非起毛処理部9によって囲われ、起毛処理部8に配置された高吸水性ポリマー4が、直ぐにポリマーシート1の外部にこぼれ落ちるのを防止している。前記起毛処理部8に高吸水性ポリマー4を散布することにより、当該起毛処理部8に高吸水性ポリマー4が配置されるとともに、前記起毛処理部8の底部を構成する基層3aの繊維間に極く小さな粒径の高吸水性ポリマー4が埋設され、且つ、前記起毛処理部8からこぼれ落ちた高吸水性ポリマー4が隣接する起毛処理部8から突出した繊維間や前記非起毛処理部9の基層3aの繊維間にも埋設されるようになる。前記基層3aに埋設される高吸水性ポリマー4は、これらの繊維間空隙より小さな粒径のものである。
【0044】
上述の起毛処理により形成したポリマー配置層3は、
図7(C)に示されるように、起毛処理部8の上端に、切れた繊維の端部が表面に突出するようになる。このため、高吸水性ポリマー4を起毛処理部8に配置した後、この高吸水性ポリマー4の表面に起毛処理部8の表面に突出した繊維が覆い被さることにより、蓋のような役目を果たし、高吸水性ポリマー4が起毛処理部8に配置された状態が維持されやすくなる。
【0045】
図7(C)に示されるように、前記起毛処理部8の幅W1は任意であるが、高吸水性ポリマー4による吸水量を確保するとともに、ゲルブロッキングを防止する観点から、1~30mmが好ましい。この幅W1は、前記起毛処理を施す際の回転刃7の刃厚とほぼ一致するものである。前記起毛処理部8の幅W1は、起毛処理部8をほぼ垂直に横切る線で不織布2の切断面を作製し、デジタルマイクロスコープ(例えばキーエンス社製VHX-1000等)を用いて、この切断面の拡大写真を撮影し、この拡大写真に基づいて測定することができる。
【0046】
また、非起毛処理部9の幅(隣り合う起毛処理部8、8の間隔)W2は、高吸水性ポリマー4の吸水時におけるゲルブロッキングを防止する観点から、1~30mmが好ましい。この幅W2は、前述の起毛処理を施す際の隣り合う回転刃7、7の離隔幅とほぼ一致するものである。前記幅W1とW2の関係としては、W1とW2を同等又はいずれか一方を大きくすることができるが、起毛処理部8の幅W1を非起毛処理部9の幅W2より小さくするのが好ましい。これにより、隣り合う起毛処理部8、8同士で高吸水性ポリマー4が吸水して膨潤したときのゲルブロッキングが確実に防止できる。この場合においても、相対的に幅広となる非起毛処理部9においてもある程度の高吸水性ポリマー4が配置されるため、吸水性は充分に確保できる。
【0047】
一方、ポリマー配置層3の深さも任意であるが、前記起毛処理を施した後の前記基層3aとポリマー配置層3の合計厚みに対して、10~80%、好ましくは50~70%とするのがよい。
【0048】
前記ポリマー配置層3は、
図4に示されるように、前記起毛処理部8と非起毛処理部9とがそれぞれ装着時に着用者の前後方向に沿って連続する線状に延び、これと直交する方向に前記起毛処理部8と非起毛処理部9とが交互に配置されている。これによって、高吸水性ポリマー4の配置領域が複数条に亘って設けられるようになり、この高吸水性ポリマー4に体液が確実に吸収できるとともに、ゲルブロッキングが確実に防止できるようになる。この場合、不織布2の両側部からの高吸水性ポリマー4のこぼれ落ちを防止するため、不織布2の両側端にそれぞれ非起毛処理部9が位置し、幅方向中間部に前記起毛処理部8と非起毛処理部9とが交互に配置されるようにするのが好ましい。
【0049】
前記起毛処理部8は、不織布2の平面視で、不織布2の端縁まで達しない中間部に形成するのが好ましい。すなわち、不織布2の前後方向の両端部及び幅方向の両端部はそれぞれ、起毛処理部8が形成されない領域となっている。これにより、起毛処理部8から脱落した高吸水性ポリマー4が不織布2の外部にこぼれ落ちるのが防止できる。
【0050】
前記起毛処理部8は、任意の平面パターンで形成することができる。例えば、
図8に示されるように、前記起毛処理部8を、着用者の体液排出部に対応する領域Aと、その前側領域B及び後側領域Cとの間において、連続する線状に配置することができる。つまり、起毛処理部8が、前側領域Bから体液排出部に対応する領域Aを通って後側領域Cに至る間において、間欠することなく、前後方向に連続して延びる直線からなる線状又は帯状に形成されている。これによって、ポリマーシート1の前側領域Bから後側領域Cにかけて、ほとんど全ての領域でゲルブロッキングを防止しつつ充分な吸水能力が得られるようになる。また、連続線状に起毛処理を施すことにより、不織布2に対して連続的に回転刃を当てることで、確実に所定の部位を起毛させることができ、起毛処理部8に対する高吸水性ポリマー4の定着性が良好となる。
【0051】
前記起毛処理部8は、
図8(A)に示されるように、ほぼ等幅に形成され、かつほぼ等間隔で配置してもよいし、
図8(B)、(C)に示されるように、起毛処理部8の幅及び間隔(非起毛処理部9の幅)のいずれか一方又は両方を変化させても良い。例えば、
図8(B)に示されるように、幅方向外側に向かうに従って、徐々に、隣り合う起毛処理部8、8の離間距離が大きくなるように形成することができる。これにより、着用者の体液排出部が位置する幅方向中央部における高吸水性ポリマー4の密度が高くなり、吸水能力を高めることができる。また、
図8(C)に示されるように、幅方向外側に向かうに従って、徐々に、起毛処理部8の幅が小さくなるようにしてもよい。これにより、着用者の体液排出部が位置する幅方向中央部における吸水能力を維持しつつ、両側部における高吸水性ポリマー4の配置部位の幅を小さくすることにより、高密度で高吸水性ポリマー4が配置されることによる硬さが抑制でき、パッド等に使用した際に、脚の付け根の内側部分に対する抵抗感が軽減できる。
【0052】
また、前記起毛処理部8は、
図9に示されるように、着用者の体液排出部に対応する領域Aにのみ配置し、前側領域B及び後側領域Cにまで延びないようにしてもよい。この形態は、着用者の体液排出部に対応する領域でゲルブロッキングを防止できれば、不織布2に体液が吸収でき、一旦不織布2に体液が吸収されれば、不織布2の繊維間空隙を毛管作用によって拡散して、充分な吸水能力が得られるとの考えに基づくものである。前記起毛処理部8は、幅方向に対しても、着用者の体液排出部に対応する領域、すなわち幅方向中央領域にのみ配置すればよく、幅方向両側部には起毛処理部8を設けないのが好ましい。これによって、前記起毛処理部8…が着用者の体液排出部に対応する領域において肌側に膨出し、その外周部が相対的に肌側に低く形成されるため、前記起毛処理部8…の着用者の体液排出部に対する密着性も向上できる。
【0053】
図9(A)に示されるように、前記起毛処理部8…の少なくとも前側及び後側の領域にそれぞれ、高吸水性ポリマー4が配置されないポリマー非配置領域が形成されている。前記ポリマー非配置領域は、高吸水性ポリマー4が全く配置されないか、前記起毛処理部8に対する散布時にこぼれ落ちるなどして、若干量のポリマーが配置されるものの、前記非起毛処理部9に配置される量より少ない領域である。具体的には、ポリマーの目付け量が1g/m
2未満であるのが好ましい。非起毛処理部9とポリマー非配置領域との境界は必ずしも明確である必要はなく、起毛処理部8…の周囲に非起毛処理部9が形成されていて、その外側から不織布2の端縁にかけてがポリマー非配置領域となっている。図示例では明確ではないが、起毛処理部8…の前側及び後側の領域に加えて、起毛処理部8…の両側領域にも前記非起毛処理部9の外側に形成するのが好ましい。前記ポリマー非配置領域を形成することにより、不織布2の外縁部分の柔軟性が維持でき、脚の付け根や腹部又は臀部に対する肌当たりが柔らかなものとなり、装着感に優れるようになる。
【0054】
また、
図9(B)に示されるように、前記起毛処理部8…の少なくとも前側及び後側の領域、図示例ではこれに加えて起毛処理部8…の両側領域(図中の斜線を施した領域a)にそれぞれ、起毛処理によって基層3aと比べて相対的に繊維間空隙が大きく形成された第2の起毛処理部が形成され、前記第2の起毛処理部に高吸水性ポリマー4が配置されたポリマー配置領域が形成されるようにしてもよい。前記領域aは、起毛処理部8…から非起毛処理部9の幅に相当する所定の離隔距離を空けた不織布2の外縁まで達しない中間部分に形成されている。前記第2の起毛処理部においては、前記領域aを全面に亘って起毛処理してもよいし、幅方向に所定の間隔を空けて前後方向に沿う複数の線状パターンで起毛処理してもよい。前記領域aにおける高吸水性ポリマー4の目付け量は、この領域aにおける高吸水性ポリマー4による硬さの増加を抑えるため、前記起毛処理部8におけるそれと比較して低くするのが好ましい。低下の割合としては、起毛処理部8に散布する高吸水性ポリマー4の目付け量に対して1/10~1/30程度とするのがよい。また、それに従って、第2の起毛処理の深さも小さくするのが好ましい。第2の起毛処理を施して高吸水性ポリマー4を配置することにより、高吸水性ポリマー4が定着しやすく、かつ吸水能力を向上できる。
【0055】
また、前記領域aにおいて、起毛処理を施さない第2の非起毛処理部を形成し、この第2の非起毛処理部に高吸水性ポリマー4が配置されたポリマー配置領域を形成してもよい。前記第2の非起毛処理部においては、起毛処理を施さない不織布に直接高吸水性ポリマー4を散布し、振動などを加えることによって不織布に高吸水性ポリマー4を埋設させている。このポリマー配置領域においては、上記の第2の起毛処理を施した場合と同様に、起毛処理部8に散布する高吸水性ポリマー4の目付け量より小さくするのが好ましい。この形態では、起毛処理を施さずにポリマー配置領域を形成しているため、起毛処理工程がない分、製造工程が簡略化でき、かつ吸水能力が向上できる。
【0056】
図10に示されるように、前記起毛処理部8を格子状に配置してもよい。格子状パターンとすることにより、ゲルブロッキングを防止しつつ、充分な吸水能力が確保できるようになる。前記格子状パターンは、
図10(A)に示されるように、着用者の体液排出部に対応する領域Aと、その前側領域B及び後側領域Cとの間において連続して形成してもよいし、
図10(B)に示されるように、着用者の体液排出部に対応する領域Aにのみ形成してもよい。また、
図10(C)に示されるように、格子状パターンの起毛処理部8を着用者の体液排出部に対応する領域Aにのみ配置した上で、この起毛処理部8から離間する少なくとも前側及び後側の領域、図示例ではこれに加えて両側領域(領域a)にそれぞれ、上記と同様に、起毛処理によって第2の起毛処理部が形成され、この第2の起毛処理部に高吸水性ポリマー4が配置されたポリマー配置領域が形成されるか、起毛処理を施さない第2の非起毛処理部が形成され、この第2の非起毛処理部に高吸水性ポリマー4が配置されたポリマー配置領域が形成されるようにしてもよい。
【0057】
前記高吸水性ポリマー4とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸水性ポリマー4は、この種の吸収性物品に使用される粒径のものをそのまま使用でき、平均粒径が1000μm以下、好ましくは未吸収時の粒径が106μm以上のものが全体の99重量%以上、特に150~850μmのものが全体の99重量%以上であるのが望ましい。未吸収時の平均粒径は250~500μm程度であるのが好ましい。また、高吸水性ポリマー4は吸収後の平均粒径が未吸収時の平均粒径の3倍以上、具体的には500μm以上であることが望ましい。なお、未吸収時の高吸水性ポリマー4の平均粒径は、重量基準粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。この場合における重量基準粒度分布は、JISZ8815-1994に準拠して測定される。すなわち、内径150mm、深さ45mmの710μm、500μm、300μm、150μm及び106μmの目開きのふるいを、目開きの狭いふるいを下にして重ね、一番上の最も目開きの広い710μmのふるいの上に、測定試料50gを入れ、ふるい振動機にて10分間ふるい、各ふるいの上に残った測定試料の重量を測定し、最初の測定試料の重量に基づく各ふるいの上に残った測定試料の重量%を求めることによって測定される。
前記起毛処理部8における高吸水性ポリマー4の目付け量は、当該ポリマーシートの用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概にはいえないが、50~350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸水性ポリマーの過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0058】
前記高吸水性ポリマー4は、前記起毛処理部8にのみ配置してもよいが、
図5に示されるように、前記非起毛処理部9に前記起毛処理部8に散布された高吸水性ポリマー4の一部が埋設されるようにしてもよい。前記非起毛処理部9に配設される高吸水性ポリマー4は、起毛処理部8に散布した高吸水性ポリマー4の一部がこぼれ落ちるなどして配設されるものであり、起毛処理部8に配置された目付け量に比べて少なくなっている。この非起毛処理部9に配置される高吸水性ポリマー4の目付け量としては、ゲルブロッキングを防止する観点から、1~50g/m
2程度がよい。
【0059】
上記形態例では、ポリマーシート1が1枚の不織布2によって構成されていたが、
図11(A)に示されるように、前記不織布2の前記起毛処理部8が形成された側の面に隣接して、第2不織布5を積層してもよい。前記第2不織布5を積層することにより、高吸水性ポリマー4がポリマー配置層3に埋設された状態が維持しやすくなり、着用時に高吸水性ポリマー4の異物感が感じにくく、高吸水性ポリマー4が吸水したとき前記第2不織布5の高さにまで膨潤できるようになる。前記第2不織布5としては、前記不織布2と同様の素材を用いることができる。ポリマーシートの厚みが厚くならないように、前記第2不織布5は、不織布2より薄型のものを用いるのが好ましい。
【0060】
また、
図11(B)に示されるように、前記不織布2の起毛処理部8が形成された側の面及びこれと反対側の面にそれぞれ隣接して、第2不織布5及び第3不織布6を積層してもよい。これにより、着用時に高吸水性ポリマー4の異物感が更に感じにくくなる。ポリマーシート4を薄型化する観点から、前記第2不織布5及び第3不織布は、前記不織布2より厚みを薄く形成するのが望ましい。
【0061】
以上の構成からなるポリマーシート1では、不織布2の肌側面の少なくとも着用者の体液排出部に対応する領域に、所定の起毛処理によって起毛処理部8が形成され、この起毛処理部8に高吸水性ポリマー4が配置されているため、起毛処理によって大きくなった繊維間空隙に高吸水性ポリマー4が埋没しやすくなり、高吸水性ポリマー4が不織布2に定着した状態が維持でき、高吸水性ポリマー4の移動が防止できる。したがって、前記不織布2から高吸水性ポリマー4が抜け出たり、高吸水性ポリマー4の偏りを生じたりすることがなくなり、これによって装着感が良好になる。また、高吸水性ポリマー4が前記起毛処理を施した起毛処理部8に分散して配置されているため、高吸水性ポリマー4が吸水して膨潤するスペースが確保でき、ゲルブロッキングによる吸液障害が生じにくく、所望の吸水能力が得られるようになる。
【符号の説明】
【0062】
1…ポリマーシート、2…不織布、3…ポリマー配置層、3a…基層、4…高吸水性ポリマー、5…第2不織布、6…第3不織布、7…回転刃、8…起毛処理部、9…非起毛処理部、10…パッド、11…防漏シート、12…表面シート、13…外装シート、14…サイド不織布、15…糸状弾性伸縮部材