(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】距離決定の方法
(51)【国際特許分類】
G01S 11/08 20060101AFI20220629BHJP
G01S 11/06 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
G01S11/08
G01S11/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018206427
(22)【出願日】2018-11-01
【審査請求日】2021-05-10
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508223789
【氏名又は名称】スティヒティング・イメック・ネーデルラント
【氏名又は名称原語表記】Stichting IMEC Nederland
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ヤック・ロンメ
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0033919(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0006942(US,A1)
【文献】国際公開第2008/102686(WO,A1)
【文献】中村 僚兵,超広帯域ステップドFM方式を用いた屋内侵入者検知センサシステムの研究,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2014年07月22日,第114巻 第158号,Pages: 89-94,ISSN: 0913-5685
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - 5/14
11/00 - 11/16
19/00 - 19/55
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の無線信号送受信機と第2の無線信号送受信機との間の距離を決定する方法であって、前記方法は、
受信機が、第1の測定結果セットと第2の測定結果セットとを受信するステップ(2)を含み、
前記第1の測定結果セットは、前記第2の無線信号送受信機から送信された信号に基づいて、前記第1の無線信号送受信機によって取得され、
前記第2の測定結果セットは、前記第1の無線信号送受信機から送信された信号に基づいて、前記第2の無線信号送受信機によって取得され、
前記第1の測定結果セットは、複数の周波数
を有する複数の無線信号の各々について、位相測定値と信号強度測定の測定対を含み、
前記第2の測定結果セットは位相測定値を含み、
もしくはオプションで位相測定値及び信号強度測定値の測定対を含み、
前記方法は、
処理ユニットが、前記複数の周波数
を有する複数の無線信号の各々に対して、前記第1の測定結果セット
の測定対及び前記位相測定値
に基づいて、もしくはオプションで前記第2の測定結果セット
の測定対に基づいて、一方向周波数領域チャネル応答に比例する値の予備推定値を計算するステップ(4)と、
前記処理ユニットが、各隣接周波数対が前記複数の周波数のうちの互いに隣接する周波数対である隣接周波数対
を有する無線信号の各々に対して、前記第1の無線信号送受信機によって使用されるクロックと
前記第2の無線信号送受信機によって使用されるクロックとの間での、時間同期オフセットに比例する値の
隣接推定値を計算するステップ(6)とを含み、
前記時間同期オフセットに比例する値の
隣接推定値は、
前記隣接周波数対
を有する無線信号の各々について、一方向周波数領域チャネル応答に比例する値の計算された予備推定値の位相及び
前記位相測定値に基づいており、
もしくはオプションで
前記第1の測定結果セット
の測定対に基づいており、及びオプションで、
前記隣接周波数対における周波数間の周波数差に基づいており、
前記方法は、
前記処理ユニットが、前記複数の周波数
を有する複数の無線信号の各々に対して、前記時間同期オフセットに比例する値の予備推定値及び隣接推定値に基づいて、前記一方向周波数領域チャネル応答に比例する値の最終推定値を決定するステップ(8)と、
前記処理ユニットが、前記最終推定値に基づいて前記第1の無線信号送受信機と前記第2の無線信号送受信機との間の距離を決定するステップ(10)とを含む方法。
【請求項2】
前記一方向周波数領域チャネル応答に比例する値の予備推定値の計算するステップ(4)は、
前記処理ユニットが、前記第1の測定結果セット
の測定対及び前記位相測定値
に基づいて、
もしくはオプションで前記第2の測定結果セット
の測定対に基づいて、双方向周波数領域チャネル応答に比例する値の推定値を計算するステップと、
前記処理ユニットが、前記双方向周波数領域チャネル応答に比例する値の推定値に基づいて、前記一方向周波数領域チャネル応答に比例する前記予備推定値を計算するステップとを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定対の各測定対は、複素数として表し、
前記複素数の絶対値は信号強度測定値に対応する振幅を表し、前記複素数の偏角は位相測定値を表し、
前記予備推定値及び前記最終推定値はそれぞれ複素数で表し、前記複素数の絶対値が振幅応答を表し、前記複素数の前記偏角が位相応答を表す請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記双方向周波数領域チャネル応答に比例する値の推定値を計算するステップは、前記第1の測定結果セット
の測定対を表す複素数に、前記第2の測定結果セット
の測定対を表す複素数を乗算することを含み、
もしくは含むものとして表す
、
請求項2を引用する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記双方向周波数領域チャネル応答に比例する値の推定値に基づいて、前記一方向周波数領域チャネル応答に比例する値の予備推定値を計算するステップ(4)は、前記双方向周波数領域チャネル応答に比例した推定値の複素数平方根をとるステップを含み、
もしくは含むものとして表す、
請求項2を引用する請求項3、もしくは請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記平方根を取っているときに、-π/2とπ/2との間の位相を有する解が選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記隣接周波数対に対する時間同期オフセットに比例する値の
隣接推定値を計算するステップ(6)は、
前記処理ユニットが、前記隣接周波数対
を有する無線信号の各々について、前記第1の測定結果セット
の測定対を表す複素数と、予備推定値を表す複素数の複素共役との積の偏角を取るステップと、
前記処理ユニットが、前記偏角の差を計算するステップと、
前記処理ユニットが、前記偏角の差を、前記隣接周波数対における周波数間の周波数差の2π倍で除算するステップとを含む請求項3~6のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記一方向周波数領域チャネル応答に比例する値の最終推定値を決定するステップ(8)は、
前記処理ユニットが、前記時間同期オフセットに比例する値の各
隣接推定値について、前記時間同期オフセットに比例する値の隣接推定値に関して、所定の値によって決定される度合いまで、前記時間同期オフセットに比例する値の
隣接推定値が異なるかどうかを判定ステップと、
そのような差が判定されたときに、
前記処理ユニットが、前記予備推定値の位相を反転させる前記最終推定値を形成するステップとを含む請求項1~7のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記所定の値は、時間同期オフセットに関連して表されるときに、前記周波数差の逆数の半分である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の無線信号送受信機と前記第2の無線信号送受信機との間の距離を決定するステップは、IFFT及び/又は超分解能アルゴリズムに基づいて決定される請求項1~8のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記処理ユニット上で実行されるとコンピュータプログラム製品は、
前記処理ユニットに対して、請求項1~10のうちのいずれか1つに記載の方法を実行させるコンピュータ可読媒体。
【請求項12】
第2の無線信号送受信機との距離を決定するように構成された無線信号送受信機であって、
前記無線信号送受信機は、
前記第2の無線信号送受信機から送信された信号に基づいて、複数の周波数
を有する複数の無線信号の各々について、位相測定値と信号強度測定値との測定対を含む第1の測定結果セットを取得する(2)ように構成された測定ユニットと、
第1の無線信号送受信機から送信された信号に基づいて、前記第2の無線信号送受信機によって取得された第2の測定結果セットを受信するように構成された受信機とを備え、
前記第2の測定結果セットは、複数の周波数
を有する複数の無線信号の各々について、位相測定値を含み、
もしくはオプションで位相測定値及び信号強度測定値の測定対を含み、
前記無線信号送受信機は、
処理ユニットを備え、
前記処理ユニットは、
前記複数の周波数
を有する複数の無線信号の各々に対して、前記位相測定値に基づいて、
もしくはオプションで
前記第1の測定結果セット
の測定対と、
前記第2の測定結果セット
の測定対とに基づいて、一方向周波数領域チャネル応答に比例する値の予備推定値を計算し(4)、
各隣接周波数対が前記複数の周波数のうちの互いに隣接する周波数対である隣接周波数対
を有する無線信号の各々に対して、
前記第1の無線信号送受信機によって使用されるクロックと
前記第2の無線信号送受信機によって使用されるクロックとの間での時間同期オフセットに比例する値の
隣接推定値を計算し(6)、
前記時間同期オフセットに比例する値の
隣接推定値は、
前記隣接周波数対
を有する無線信号の各々について、一方向周波数領域チャネル応答に比例する値の計算された予備推定値の位相及び
前記位相測定値に基づくものであり、
もしくはオプションで
前記第1の測定結果セット
の測定対に基づくものであり、及びオプションで
前記隣接周波数対における周波数間の周波数差に基づくものであり、
前記処理ユニットは、
前記複数の周波数
を有する複数の無線信号の各々に対して、前記時間同期オフセットに比例する値の予備推定値及び
前記隣接推定値に基づいて、前記一方向周波数領域チャネル応答に比例する値の最終推定値を決定し(8)、
前記最終推定値に基づいて前記第1の無線信号送受信機と前記第2の無線信号送受信機との間の距離を決定する(10)無線信号送受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の概念は、第1の無線信号送受信機と第2の無線信号送受信機との間の距離を決定する方法に関する。本発明はまた、処理装置上で実行されるときコンピュータプログラム製品は処理装置に方法を実行させるコンピュータ可読命令を格納するコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品に関し、さらに、第2の無線信号送受信機との距離を決定するように構成された無線信号送受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの無線送受信機(トランシーバ)間の距離を決定するための狭帯域測距方法は、従来技術において知られている。多くの場合、狭帯域システムは受信信号強度を使用する。しかし、同様に、あるいは代替的に、いくつかの異なるキャリア(マルチキャリア位相差)の位相測定値を備える方法が例えば非特許文献1に記載されている。
【0003】
最終的な距離(範囲)決定のために、このような測定の結果は、例えば、非特許文献2,3及び4に記載されているように、逆高速フーリエ変換(IFFT)アルゴリズム又はいわゆる「超分解能アルゴリズム」に供給されてもよい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Kluge: Ranging with IEEE 802.15.4 Narrow-Band PHY, Response to Call for Final Proposals, IEEE P802.15, November 2009.
【文献】Schmidt: IEEE Transactions on Antennas and Propagation, Vol AP-34, No. 3, pp. 276-280, March 1986.
【文献】Sakar: IEEE Antennas and Propagation Magazine, Vol. 37, No. 1, pp. 48-55, February 1995.
【文献】Roy: IEEE Transactions on Acoustics, Speech, and Signal Processing, Vol. 37, No. 7, July 1989.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の概念の目的は、2つの無線送受信機間の距離を決定するための改良された狭帯域測距方法を提供することである。
【0006】
本発明のこれらの目的及び他の目的は、独立請求項に定義される本発明によって少なくとも部分的に満たされる。好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の概念によれば、第1の無線信号送受信機と第2の無線信号送受信機との間の距離を決定する方法であって、前記方法は、
第1の測定結果セット及び第2の測定結果セットを受信するステップを含み、
前記第1の測定結果セットは、前記第2の無線信号送受信機から送信された信号に基づいて、前記第1の無線信号送受信機によって取得され、
前記第2の測定結果セットは、前記第1の無線信号送受信機から送信された信号に基づいて、前記第2の無線信号送受信機によって取得され、
前記第1の測定結果セットは、複数の周波数の各々について、位相測定値と信号強度測定値の第1の測定対とを含み、
前記第2の測定値セットは位相測定値を含み、又はオプションとして、位相測定値及び信号強度測定値の第2測定対を含み、
前記方法は、
前記複数の周波数の各々に対して、第1の測定結果セットと位相測定値からの測定対に基づいて、又はオプションとして前記第2の測定結果セットから前記測定対に基づいて、一方向周波数領域チャネル応答に比例する値の予備推定値を計算するステップと、
隣接周波数対に対して、前記第1の無線信号送受信機によって使用されるクロックと前記第2の無線信号送受信機によって使用されるクロックとの間での、時間同期オフセットに比例する値の推定値を計算するステップとを含み、
前記時間同期オフセットに比例する値の推定値は、隣接周波数対における各周波数について、一方向周波数領域チャネル応答に比例する値の計算された予備推定値の位相と、前記位相測定値とに基づくものであり、又はオプションとして、第1の測定結果セットからの測定対に基づくものであり、及びオプションとして、隣接周波数対における周波数間の周波数差に基づくものであり、
前記方法は、
前記複数の周波数の各周波数に対して、前記時間同期オフセットに比例する値に対する、予備推定値及び隣接推定値に基づいて、一方向周波数領域チャネル応答に比例する値の最終推定値を決定するステップと、
前記最終推定値に基づいて前記第1無線信号送受信機と前記第2無線信号送受信機との間の距離を決定するステップとを含む。
【0008】
信号強度測定という用語は、受信信号の電力又は振幅のいずれかに比例する任意の測定をカバーすると理解されるべきである。
【0009】
測定結果の受信は、別の装置から送信された結果を受信する装置、又は装置にすでにローカルに保存されている測定結果を使用する装置のいずれかと理解する必要がある。
【0010】
この方法は、距離決定が一方向周波数領域チャネル応答に基づくことを可能にする。そうでなければ、一方向周波数領域チャネル応答は、2つの送受信機でのクロック間のタイミング同期によってもたらされる位相の曖昧さのために、明確に再構成することが困難である。この曖昧さは、上記のように時間同期オフセットに比例する値の推定値を計算することによって解決される。
【0011】
2つのクロック間のタイミング同期オフセットは、測定間でゆっくりと変化すると予想される。従って、タイミング同期オフセットに隣接推定値を使用すると、上記のように一方向周波数領域チャネル応答に比例した値の予備推定値を補正するために使用できる余分な情報が得られる。時間同期オフセットに比例した値の推定値の計算すること、とりわけ予備推定値に基づいて計算することで、予備推定値の位相曖昧性に関する誤った選択に敏感になる時間同期オフセットに比例する値の推定値を生成し、最終的な推定のために予備的推定の位相を反転させるべきであることを通知することができる。
【0012】
一方向周波数領域チャネル応答に基づいて距離判定を実行することにより、双方向周波数領域チャネル応答は一方向伝播モードの多数の交差積を含むので、マルチパス伝搬からの干渉に対して敏感でなくなる結果を生成し、伝播モードの数の2乗で成長する。従って、感度の低い距離測定方法が提供され、すなわち、マルチパス効果に対してよりロバストである。
【0013】
第1の測定結果セットと第2の測定結果セットの両方を使用して距離を計算するために、他の送受信機からの測定結果を受信する方法は、送受信機のうちの1つで実行されてもよい。しかし、この方法は、任意の装置で実行されてもよく、例えば、場合によっては第1及び第2の送受信機よりも処理能力が高い外部装置で実行されてもよい。次いで、外部装置は、それぞれの送受信機から第1及び第2の測定結果セットを受信し、それらの間の距離を決定することができる。外部装置はさらに、送受信機がそれらの間の距離を知ることができるように、決定された距離を送受信機に通信で通知することができる。
【0014】
一実施形態によれば、前記一方向周波数領域チャネル応答に比例する値の予備推定値の前記計算は、
第1の測定結果セットからの測定対と第2の測定結果セットからの測定対とに基づいて、双方向周波数領域チャネル応答に比例する値の推定値を計算するステップと、
前記双方向周波数領域チャネル応答に比例する値の推定値に基づいて、前記一方向周波数領域チャネル応答に比例する予備推定値を計算するステップとを含む。
【0015】
前記測定対に基づいて双方向周波数領域チャネル応答に比例する値をまず計算することは、ある2つの送受信機間の時間同期オフセットが自然に相殺されるという利点を有する。このことは、所定周波数において、一方の方向におけるこのオフセットに起因する測定された位相シフトが、他方の方向と反対の符号で作用するからである。
【0016】
一実施形態によれば、前記測定対の各測定対は複素数として表すことができ、前記複素数の絶対値は信号強度測定値に対応する振幅を表し、前記複素数の偏角は位相測定値を表し、そして前記予備推定値及び前記最終推定値はそれぞれ複素数で表すことができ、前記複素数の絶対値が振幅応答を表し、前記複素数の偏角が位相応答を表す。
【0017】
当該分野での慣習として確立されているように、複素数表現は、周期的に変化する信号に関連する便利な表記法及び便利な計算を提供し、ここでもまた、確立された慣例に従って、実際の物理的実数値信号は、対応する複素数の実数部によって表される。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、実際の計算を実行するときは任意の他の適切な表現が使用されてもよい。特に、計算が1つ以上の複素数を含む演算として「表現されてもよい」と述べられている場合、使用された実際の表現に関係なく、数学的に等価な計算をカバーすることが理解されるであろう。
【0018】
一実施形態によれば、前記双方向周波数領域チャネル応答に比例する値の推定値の前記計算は、前記第1の測定結果セットからの前記測定対を表す複素数に、前記第2の測定結果セットからの前記測定対を表す複素数を乗算することを含み、又は含むものとして表してもよい。
【0019】
一実施形態によれば、双方向周波数領域チャネル応答に比例する値の推定値に基づいており、一方向周波数領域チャネル応答に比例する値の予備推定値の前記計算は、双方向周波数領域チャネル応答に比例する推定値の複素数平方根を取ることを含み、又は含むものとして表してもよい。複素数平方根をとることは、固有のπ(180度)の位相曖昧性を持ち、2つの可能な解のうちの1つを選択する必要がある。例えば、一実施形態によれば、前記平方根をとるとき、-π/2とπ/2との間の位相を有する解が選択されてもよく、すなわち、実数部が正の解が選択されてもよい。
【0020】
一実施形態によれば、隣接周波数対の時間同期オフセットに比例する値の前記推定値の前記計算は、前記隣接周波数対における各周波数について、前記第1の測定結果セットからの前記測定対を表す複素数と前記予備推定を表す前記複素数の前記複素共役との積の偏角を取るステップと、前記偏角の差を計算するステップと、前記偏角の前記差を、前記隣接周波数対における前記周波数間の前記周波数差の2π倍で割るステップとを含む。
【0021】
一実施形態によれば、前記一方向周波数領域チャネル応答に比例する値の最終推定値の決定は、前記時間同期オフセットに比例する値の各推定値について、
前記時間同期オフセットに比例する値の前記推定値が、前記時間同期オフセットに比例する値の隣接推定値に対して、所定の値によって決定される程度に異なるかどうかを判定するステップと、
そのような差が決定されたときに、前記予備的推定値の位相を反転させるステップと、
及びオプションとして、前記最終推定値を形成するステップとを含む。
【0022】
時間同期オフセットに比例する値の隣接推定値に関して、所定の値によって決定される程度まで、時間同期オフセットに比例する値の推定値が異なるかどうかを判定することは、厳密には値の減算を含むものとして理解されるべきではなく、減算、除算、又は比較を含む任意の適切な方法を含むことが理解されるべきである。次いで、所定の値が、使用されるスキームと互換性があるように選択され、全てが本発明の範囲内である。
【0023】
一実施形態によれば、前記所定の値は、時間同期オフセットに関連して表される場合、前記周波数差の逆数の半分である。これは、仮推定のために間違った位相解が選択された場合、推定された時間同期オフセットが予想されるジャンプである。逆に、そのようなジャンプが観察されない場合、予備的な推定の修正は必要ない。従って、タイミングオフセットの隣接推定値の間の差に関連して表され、ゼロに近い差、又は周波数差の逆数の半分のオーダーの絶対値との差が予想され、測定の不確実性を考慮する。例えば、代わりに、タイミングオフセットの隣接推定値を除算することに関して表現される場合、1に近い値又は1/2又は2に近い値のいずれかが予想される。
【0024】
一実施形態によれば、第1の無線信号送受信機と第2の無線信号送受信機との間の距離の決定は、IFFT及び/又は超分解能アルゴリズムに基づくアルゴリズムを使用する。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、コンピュータ可読命令を格納するコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、処理ユニット上で実行されると、コンピュータプログラム製品は、処理ユニットに上記の方法を実行させるようにする。
【0026】
この第2の態様の効果及び特徴は、第1の態様に関連して上述したものと概ね類似している。第1の態様に関して述べた実施形態は、第2の態様と大きく互換性がある。
【0027】
本発明の第3の態様によれば、第2の無線信号送受信機との距離を決定するように構成された無線信号送受信機であって、
前記無線信号送受信機は、
第2の無線信号送受信機から送信された信号に基づいて第1の測定結果セットを取得するように構成された測定ユニットを備え、
第1の測定結果セットは、複数の周波数の各々について、位相測定値と信号強度測定値との測定対とを含み、
前記無線信号送受信機は、
前記第1の無線信号送受信機から送信された信号に基づいて、第2の無線信号送受信機によって取得された第2の測定結果セットを受信するように構成された受信機を備え、
前記第2の測定結果セットは、複数の周波数の各々について、位相測定値と信号強度測定値との測定対とを含み、
前記無線信号送受信機は処理ユニットを備え、
前記処理ユニットは、
前記複数の周波数の各周波数に対して、第1の測定結果セットからの測定対と第2の測定結果セットからの測定対とに基づいて、一方向周波数領域チャネル応答に比例する値の予備推定値を計算し、
隣接周波数対に対して、時間同期オフセットに比例する値の推定値を計算する第1の無線信号送受信機によって使用されるクロックと、第2の無線信号送受信機によって使用されるクロックとの間での、時間同期オフセットの推定値を計算し、
前記時間同期オフセットの推定値は、隣接周波数対における各周波数について、一方向性周波数領域のチャネル応答に比例する値の計算された予備推定値と、第1の測定結果セットからの測定対に基づいており、
及びオプションとして、隣接周波数対における周波数間の周波数差に基づき、
前記処理ユニットは、
前記複数の周波数の各周波数に対して、前記時間同期オフセットに比例する値の予備推定値及び隣接推定値に基づいて、一方向周波数領域チャネル応答に比例した値の最終推定値を決定し、
前記最終推定値に基づいて前記第1の無線信号送受信機と前記第2の無線信号送受信機との間の距離を決定する。
【0028】
この第3の態様の効果及び特徴は、第1及び第2の態様に関連して上述したものと概ね類似している。第1及び第2の態様に関連して述べた実施形態は、第3の態様と大きく互換性がある。
【0029】
従って、無線信号送受信機は、ロバストな方法で第2の無線信号送受信機との距離を決定することができる。測定を実行する一対の無線信号送受信機において、無線信号送受信機の1つは、送受信機間の距離を決定するために計算を実行することができる。次いで、この送受信機は、両方の送受信機がそれらの間の距離を知るように、決定された距離を他の送受信機に通信することができる。
【0030】
本発明の概念の上記の目的、追加の目的、特徴及び利点は、添付の図面を参照して、以下の例示的及び非限定的な詳細な説明によってよりよく理解されるであろう。図面において、特に断らない限り、類似の要素には同様の参照番号が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】局部発振器(LO)周波数及び送受信機A及びBの状態を時間で示した図である。
【
図3】この方法のステップを要約したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
この方法は、第1の無線信号送受信機、装置Aと第2の無線信号送受信機、装置Bとの間の距離の決定のための、マルチキャリア位相差(MCPD)測距の原理を使用して、第1の測定結果セットと第2の測定結果セットを入力として使用する。第1の測定結果セットは、装置Bのような第2の無線信号送受信装置から送信された信号に基づいて、装置Aのような第1の無線信号送受信機によって取得され、第2の測定結果セットは、第1の無線信号送受信機から送信された信号に基づいて、装置Bのような第2の無線信号送受信機によって取得される。各測定結果セットは、複数の周波数のそれぞれについて、位相測定値と信号強度測定値との測定対を生成する。
【0033】
測定結果の取得は、2つの装置A及びBが測距パラメータにおいて一致し、それらの周波数を整列調整させることから開始し(例えば、キャリア周波数オフセット(CFO)推定及び較正を使用して)、粗い時間同期を実現し、すなわち、AとBの両方がクロック(クロック)例えば、開始フレームデリミタ(Start Frame Delimiter;SFD)の送受信時に、両方の装置A及びBはローカルステートマシンを制御するために使用される。ステートマシンは、どの送受信機が何をしているかを制御する。
【0034】
図1に示すように、測定は、以下のステップで実行されてもよい。
0:装置A及び装置Bは、局部発振器LOを所定の周波数に設定し、ループカウンタk=0を設定する。
1:装置AはLOを送信し、装置Bは位相測定(φ
B[k])を実行する。さらに、装置Bは、受信信号強度指示測定RSSI
B[k](図示せず)を実行する。
2:装置A及びBは送信方向を変更し、LOを安定させるためのガード時間を可能にする。
3:装置BはLOを送信し、装置Aは位相測定を実行する(φ
A[k])。さらに、装置Aは、受信信号強度指示測定RSSI
A[k](図示せず)を実行する。
4:装置A及び装置BはLO周波数を所定の間隔Δ
fだけ増加させ、ステップ1に戻る。このループは所定回数(K
f)繰り返される。
【0035】
装置Aと装置Bの両方は、それぞれの局部発振器(LO)信号を生成するために連続的に動作する位相ロックループ(PLL)を備える。送信から受信又はその逆に切り替えるとき、PLLはオンのままであり、連続した位相信号を可能にする。
【0036】
図3は、この方法のステップを要約している。
図3のブロック2において、一旦測定が実行されると、距離を決定する方法はあまり時間的に重要ではない。従って、より多くの処理能力を有する第3の装置/エンティティ上で計算することができ、これは、例えば、クラウドの中で、エンティティが両方の送受信機からの測定データにアクセスできると仮定する。従って、この方法は、装置A及び/又はB上で実行されてもよいが、第3の装置C上で収集されてもよく、AとBの間の距離を計算することができ、装置Cがクラウド内に存在する可能性がある。装置が方法を実行しない場合、方法は、その方法を実行する装置に測定結果を送信するか、送信させる可能性がある。従って、例えば、装置Cが装置上で実行される場合、装置Bは、装置C(φ
B[0:K
f-1])にすべての位相測定値を有するフレームを送信し、装置Aは、すべての位相測定値を装置Cに送信する(φ
A[0:K
f-1])。同様に、RSSI測定値RSSI
A[0:K
f-1]及び、オプションでRSSI
B[0:K
f-1]は、この方法を実行する装置、例えば装置Cに送信される。従って、本方法を実施する装置は、φ
A[0:K
f-1]及びRSSI
A[0:K
f-1]を含む第1の測定結果セットと、φ
B[0:K
f-1]及びオプションでRSSI
B[0:K
f-1]を含む第2の測定結果セットとを含む。
【0037】
とって代わって、装置Aは方法を実行し、上記のように、装置Bのような第2の無線信号送受信装置から送信された信号に基づいて、第1の測定結果セットを取得するように構成された測定ユニットを備える。装置Aは、装置Aのような第1無線信号送受信機から送信された信号に基づいて、装置Bなどの第2の無線信号送受信機によって取得された第2の測定結果セットを受信するように構成された受信機をさらに備える。さらに、装置Aは、以下に説明するように、本方法のステップを実行するための処理ユニットを備える。
【0038】
各周波数及び測定のセットについて、一方向周波数領域応答に比例した複素数が形成され、ここで、その絶対値は信号強度測定値に対応する振幅を表し、前記複素数の偏角は位相測定値を表す。
【0039】
HA[k]=AA[k]exp(jφA[k])
【0040】
HB[k]=AB[k]exp(jφB[k])
【0041】
ここで、AA[k]及びAB[k]は、信号振幅に比例する値であり、例えば、対応するRSSI値の平方根をとることによって計算される。
【0042】
熱雑音又は位相雑音がない場合、k番目の周波数におけるこれらの測定された大きさ及び位相は、以下のように実際のチャネル応答H[k]に関連する。
【0043】
HA[k]∝H[k]exp(j2πf[k]Δt[k])
【0044】
ここで、Δt[k]は、k番目の周波数の測定中にAとBとの間の時間オフセットを示す記号∝は比例関係を示し、すなわち、a[k]∝b[k]は、kのすべての値に対してa[k]=c*b[k]であり、ここで、cは未知の複素値であり、すべてのkに対して同じである。タイミングオフセットΔt[k]は、クロックドリフト及びジッタのために測定ごとに変化することがあり、オフセットは測定から測定までゆっくりとしか変化しない。同様に、Bにおいて、我々は以下を測定する。
【0045】
HB[k]∝H[k]exp(-j2πf[k]Δt[k])
【0046】
図3のブロック4において、双方向周波数領域のチャネル応答に比例する値の推定値X[k]を形成することができる2つの値を乗算することによって、タイミングオフセットに関連する要因を相殺する。このことは、AとBにおける測定値が互いに直後に取られるので、デルタt[k]は変化しないと仮定することができるからである。
【0047】
X[k]=HA[k]HB[k]∝(H[k])2
【0048】
従って、双方向周波数領域チャネル応答に比例する値の推定値の計算は、第1の測定結果セットからの測定対と第2の測定結果セットからの測定対とに基づいて、さらに、前記計算は、前記第1の測定結果セットからの前記測定対を表す複素数に、前記第2の測定結果セットからの前記測定対を表す複素数を乗算することを含み、又は含むものとして表してもよい。
【0049】
とって代わって、X[k]は振幅に関して、次式のように、Aのみの測定値に基づいて計算することができる。
【0050】
【0051】
ここで、
【数2】
は絶対二乗演算子を表す。
【数3】
はRSSI
A[k]と等しいことに注意してください。
【0052】
従って、ここでは、双方向周波数領域チャネル応答に比例する値の推定値を計算することは、第1の測定結果セットからの測定対と、第2の測定結果セットからの位相測定値とに基づいている。
【0053】
以下では、一方向周波数領域チャネル応答H[k]は、捕捉された位相測定値φA[k]及びφB[k]からa)X[k]及びb)サイド情報を使用して再構成される。
【0054】
一方向周波数領域のチャネル応答H[k]の予備推定値Hsqrt[k]は、双方向周波数領域チャネル応答X[k]に比例した推定値の平方根をとることによって、次式のように計算される。
【0055】
【0056】
前記式は、上記の比例関係に基づく真の一方向周波数領域チャネル応答に関連し、ここで、c[k]は+1又は1のいずれかであり、複雑な平方根をとる固有の位相の曖昧さに起因する。c[k]の値を推定するために、時間オフセットが急激に変化することはないという事実を利用する。予備的な推定のために、-π/2とπ/2との間の位相を有する解を選択することができ、すなわち、正の実数部を選択することができる。曖昧さを解決するために、サイド情報を使用することが提案される。すなわち、AとBとの間の時間オフセットは、以下に説明するように、手順中にゆっくりと変化するだけである。
【0057】
従って、各周波数について、第1の測定結果セットと位相測定値とからの測定対に基づいて、又はオプションで第2の測定結果セットからの測定対に基づいて、一方向周波数領域チャネル応答に比例する値の予備推定値が計算される。
【0058】
図3のブロック6において、Δ
f
-1に等しい曖昧性を有する時間測定オフセットΔ
tの値を推定することができる。指数kを持つ周波数に対するΔtの推定値は、次のように計算される。
【0059】
【0060】
ここで、∠は複素数の偏角を取ることを示す。推定値
【数6】
は、すべてのkについて近似的に同じでなければならない。
【0061】
HAの偏角/位相のみが使用されるので、この値の大きさは、HAの偏角を使用して計算から除外することができる。例えば、周波数間隔が一定である場合には、除算を省略することもできる。従って、隣接周波数対に対して、第1の無線信号送受信機によって使用されるクロックと第2の無線信号送受信機によって使用されるクロックとの間での、時間同期オフセットに比例する値の推定値は、隣接周波数対における各周波数について、一方向周波数領域チャネル応答に比例する値の計算された予備推定値の位相及び位相測定値に基づいて、又はオプションでは、第1の測定結果セットからの測定対に基づいて、及びオプションで隣接周波数対における周波数間の周波数差に基づいている。さらに、前記推定値は、第1の測定結果セットから前記測定対を表す複素数と、前記予備推定値を表す複素数の複素共役との積の偏角を取り、前記偏角の差を計算することで計算され、及びオプションで、前記偏角の差を、隣接周波数対における周波数間の周波数差を2π倍した値で除算することで計算される。
【0062】
図3のブロック8において、推定値
【数7】
は、隣接周波数間で1/2Δ
f
-1のオーダーでジャンプするときに、このことは、予備推定値H
sqrt[k]における不正確な符号変化を示す。従って、k≧mであるすべての値H
sqrt[k]は-1を乗算しなければならない。2つのジャンプがmとnでm<nで観察されるときに、m≦k<nの間の値には-1を乗算し、剰余には(-1)
2=1を乗算する。3つ以上のジャンプの場合、手順は単純に拡張される。乗算の回数を制限するために、マスクを作成して、どの値を符号反転させ、どの値を反転させないかを追跡することができる。マスクは
【数8】
で示される。一方向周波数領域チャネル応答の最終推定値は次式になる。
【0063】
【0064】
従って、各周波数について、一方向周波数領域チャネル応答に比例する値の最終推定値は、時間同期オフセットに比例する値の予備推定値及び隣接推定値に基づいて決定される。さらに、時間同期オフセットに比例する値の各推定値について、それが異なるかどうかが判定され、時間同期オフセットに比例する値の隣接推定値に関して、所定の値によって決定される程度までそのような差異が判定された場合には、予備推定値と、オプションで後続の予備推定値とは反転されて、一方向周波数領域チャネル応答の最終推定値を形成する。
【0065】
最後に、
図3のブロック10において、第1の無線信号送受信機と第2の無線信号送受信機との間の距離は、最終推定値に基づいて決定されてもよい。例えば、それ自体が知られている逆高速フーリエ変換(IFFT)が使用されることができるだけでなく、より進んだ信号処理技術も、それ自体は周知のように、一般に超分解能アルゴリズムと呼ばれる。再構成された一方向周波数領域チャネル応答H[k]は、ほとんどの測距アルゴリズムがマルチパスからより多くの干渉を軽減することを可能にし、問題の順序/コンポーネントの数が減少するため、問題が発生する。マルチパスが存在する場合、見通し内(LOS)成分の遅延の推定に干渉する成分の数が減少し、測距及び位置特定がより正確になる。
【0066】
コンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読命令処理ユニット上で実行されると、コンピュータプログラム製品は、処理ユニットに上記の方法を実行させるようにする。
【0067】
この方法は、処理ユニット内で実行されてもよく、上記のように装置A、B又はCに配置することができる。
【0068】
処理ユニットは、ハードウェアで、又はソフトウェアとハードウェアの任意の組み合わせとして実装することができる。処理ユニットの機能の少なくとも一部は、例えば、汎用コンピュータ上で実行されるソフトウェアとして実現されてもよい。従って、システムは、1つ又は複数の処理ユニットを備えることができ、中央演算処理装置(CPU)所望の機能を実現するために1つ又は複数のコンピュータプログラムの命令を実行することができる。
【0069】
あるいは、処理ユニットは、例えば組み込みシステムにおいて、又は特別に設計された処理ユニットとして、特定用途向け集積回路(ASIC)又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のような、特定用途向け集積回路を含む。
【0070】
以下の議論は、双方向周波数領域チャネル応答(TWFDCR)X[k]が、一方向周波数領域チャネル応答であるマルチパス効果に対してより敏感である理由を示すのに役立つ。X[k]の問題は、それが無線コンポーネントだけではなく、多くのクロス積(外積)もある。この議論では、X[k]は以下のように定義される。
【0071】
X[k]=(H[k])2
【0072】
ここで、H[k]は次式で表される。
【0073】
【0074】
すなわち、TWFDCR X[k]は一方向周波数チャネル応答H[k]の2乗である。
【0075】
言い換えると、無線チャネルは、L成分(LOS及び反射/マルチパス)の合計であり、各成分は、ある複素振幅a1及び遅延τlを有する。一般性を失うことなく、l=0はLOS成分を表す。最終的には、LOS構成要素の遅延を推定することが目的であり、他の構成要素は推定に干渉する。これをX[k]の方程式に代入すると、次式を得る。
【0076】
【0077】
言い換えれば、X[k]はK<L2での複素指数の和である。ある程度単純化することはできるが、組み合わせの数は依然として約1/2L2である。換言すれば、推定に干渉する成分の数は、パス/成分の数と共に2の累乗で増加する。
【0078】
方法などのアルゴリズムの動作を説明するために、それは測定されたチャネルに適用された。チャネルは、周波数指数kに対応する1MHzの周波数ステップサイズを有する80個の異なる周波数で測定された。結果を
図2に示す。真の一方向周波数領域チャネル応答(1WFDCR)H[k]は実線で示され、予備推定値H
sqrt[k]が示されている。周波数インデックス(5-19,37-49,53,61-62,80)に対して、H[k]とH
sqrt[k]は異なる位相(右上の分図)を持つことに注意してください。左下の分図には、推定された時間オフセットΔ
t,estが示されている。推定された時間オフセットは、位相が正しくない区間が開始又は終了する場合を除き、一定であることに注意する。また、時間オフセットジャンプは、予想どおり0.5マイクロ秒に等しい大きさを有することにも留意されたい。
【0079】
上記の本発明の概念は、限られた数の例を参照して主に説明されている。しかし、当業者には容易に理解されるように、上述したもの以外の他の例も、添付の請求項によって定義される本発明の概念の範囲内で等しく可能である。