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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】光送受信器
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20220629BHJP
   H01L 31/02 20060101ALI20220629BHJP
   G02F 1/015 20060101ALI20220629BHJP
   G02F 1/025 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
G02B6/12 361
G02B6/12 301
H01L31/02 B
G02F1/015 505
G02F1/025
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018212647
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020079850
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-08-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513065077
【氏名又は名称】技術研究組合光電子融合基盤技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】臼杵 達哉
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/004850(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/107742(WO,A1)
【文献】特表2017-537348(JP,A)
【文献】特開平11-271546(JP,A)
【文献】特開2001-210841(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0039615(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12
H01L 31/02
G02F 1/00 - 1/125
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光デバイスとして少なくとも光変調器及び光検出器が同一の基板の上方に集積され、前記光変調器と前記基板の間及び前記光検出器と前記基板の間に絶縁層が設けられた光集積デバイスと、
前記光集積デバイスに接続され、グランド配線を含む電子回路を備える電子回路チップとを備え、
前記光集積デバイスは、前記光変調器と前記光検出器の間にシールド電極を備え、
前記シールド電極は、前記基板との間に前記絶縁層を挟んで設けられることによって容量を構成し、かつ、前記電子回路チップの前記グランド配線に接続されていることを特徴とする光送受信器。
【請求項2】
前記基板は、100Ωcm以上の抵抗率を有する基板であることを特徴とする、請求項1に記載の光送受信器。
【請求項3】
前記光検出器は、シグナル端子と、バイアス端子とを備え、前記シグナル端子が前記光変調器から遠い側に位置するように設けられており、
前記電子回路チップは、前記光検出器の前記バイアス端子に接続されるチップ側バイアス端子と、前記チップ側バイアス端子と前記グランド配線との間に設けられた容量素子とを備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光送受信器。
【請求項4】
前記電子回路チップは、前記光集積デバイスにフリップチップ実装されており、
前記シールド電極は、バンプを介して、前記電子回路チップの前記グランド配線に接続されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の光送受信器。
【請求項5】
前記シールド電極は、前記光集積デバイスの表面に設けられていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の光送受信器。
【請求項6】
前記シールド電極は、前記光集積デバイスの表面よりも前記基板に近くなるように前記光集積デバイスの内部に設けられており、
前記光集積デバイスは、前記シールド電極に接続され、前記光集積デバイスの表面まで延びるシールド配線を備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の光送受信器。
【請求項7】
前記光変調器は、差動信号によって駆動される光変調器であって、差動信号が入力される第1シグナル端子及び第2シグナル端子を備え、
前記光検出器は、シグナル端子と、バイアス端子とを備え、
前記光変調器の前記第1シグナル端子と前記第2シグナル端子は、前記光検出器の前記シグナル端子の中心を通る線に対して対称になるように設けられており、
前記シールド電極は、前記光検出器の前記シグナル端子の中心を通る線に対して対称になるように設けられていることを特徴とする、請求項1、2、4~6のいずれか1項に記載の光送受信器。
【請求項8】
前記光検出器は、前記シグナル端子が前記光変調器から遠い側に位置するように設けられており、
前記電子回路チップは、前記光検出器の前記バイアス端子に接続されるチップ側バイアス端子と、前記チップ側バイアス端子と前記グランド配線との間に設けられた容量素子とを備えることを特徴とする、請求項7に記載の光送受信器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送受信器に関する。
【背景技術】
【0002】
光送受信器に備えられる光集積デバイスには、例えば光変調器や光検出器などの複数の光デバイスが集積される。
このような光集積デバイスに備えられる光変調器や光検出器を駆動するためには、例えばドライバ回路や増幅回路などの電子回路が必要である。
このため、このような電子回路を備える電子回路チップを、光集積デバイスにフリップチップ実装して、光送受信器を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-207231号公報
【文献】特開2011-232567号公報
【文献】国際公開第2010/004850号
【文献】特開2012-249051号公報
【文献】特開2014-192510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光送受信器を構成する光集積デバイス(光集積回路素子)では、光変調器と光検出器が同一の基板の上方に集積され、光変調器と基板の間及び光検出器と基板の間には絶縁層(例えばSiO層)が設けられる(例えば図12参照)。
このため、光変調器と基板の間及び光検出器と基板の間に容量が生じ、光変調器と基板の間の容量、基板、光検出器と基板の間の容量を介してクロストークが生じて、受信特性を劣化させることがわかった(例えば図12参照)。
【0005】
本発明は、光変調器と基板の間の容量、基板、光検出器と基板の間の容量を介したクロストークを抑え、受信特性の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、光送受信器は、光デバイスとして少なくとも光変調器及び光検出器が同一の基板の上方に集積され、光変調器と基板の間及び光検出器と基板の間に絶縁層が設けられた光集積デバイスと、光集積デバイスに接続され、グランド配線を含む電子回路を備える電子回路チップとを備え、光集積デバイスは、光変調器と光検出器の間にシールド電極を備え、シールド電極は、基板との間に絶縁層を挟んで設けられることによって容量を構成し、かつ、電子回路チップのグランド配線に接続されている。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面として、光変調器と基板の間の容量、基板、光検出器と基板の間の容量を介したクロストークを抑え、受信特性の劣化を抑制することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態にかかる光送受信器の構成を示す断面図である。
図2】本実施形態にかかる光送受信器の構成を示す平面図である。
図3】本実施形態の具体的な構成例の光送受信器のTIA入力端子におけるクロストーク信号のシミュレーションによる計算結果を示す図である。
図4】シールド電極とバイパスコンデンサを設けないで、低抵抗Si基板(抵抗率約10Ωcm)を用いた場合と高抵抗Si基板(抵抗率約750Ωcm)を用いた場合の光送受信器のTIA入力端子におけるクロストーク信号のシミュレーションによる計算結果を示す図である。
図5】低抵抗Si基板(抵抗率約10Ωcm)を用い、バイパスコンデンサを設けないで、シールド電極を設けた場合とシールド電極を設けない場合の光送受信器のTIA入力端子におけるクロストーク信号のシミュレーションによる計算結果を示す図である。
図6】高抵抗Si基板(抵抗率約100Ωcm)を用い、バイパスコンデンサを設けないで、シールド電極を設けた場合とシールド電極を設けない場合の光送受信器のTIA入力端子におけるクロストーク信号のシミュレーションによる計算結果を示す図である。
図7】高抵抗Si基板(抵抗率約750Ωcm)を用い、バイパスコンデンサを設けないで、シールド電極を設けた場合とシールド電極を設けない場合の光送受信器のTIA入力端子におけるクロストーク信号のシミュレーションによる計算結果を示す図である。
図8】シールド電極を設け、バイパスコンデンサを設けないで、基板を低抵抗Si基板(抵抗率約10Ωcm)にした場合、基板を高抵抗Si基板(抵抗率約100Ωcm)にした場合、及び、基板を高抵抗Si基板(抵抗率約750Ωcm)にした場合の光送受信器のTIA入力端子におけるクロストーク信号のシミュレーションによる計算結果を示す図である。
図9】本実施形態の変形例にかかる光送受信器の構成を示す断面図である。
図10】本実施形態の変形例にかかる光送受信器の構成を示す平面図である。
図11】本実施形態の変形例の光送受信器のTIA入力端子におけるクロストーク信号のシミュレーションによる計算結果を示す図である。
図12】本発明の課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面により、本発明の実施の形態にかかる光送受信器について、図1図12を参照しながら説明する。
本実施形態にかかる光送受信器は、例えばデータセンタ内外での通信容量増大に対応するため、単一の基板上に光変調器と光検出器を集積した光集積デバイスを利用した、高性能かつ小型な光送受信器を実現するものである。
【0010】
本実施形態の光送受信器は、図1に示すように、光デバイス9として少なくとも光変調器1及び光検出器2が同一の基板3の上方に集積された光集積デバイス4と、光集積デバイス4に接続され、グランド配線5を含む電子回路6を備える電子回路チップ7とを備える。
ここで、光集積デバイス4では、光変調器1と基板3の間及び光検出器2と基板3の間に絶縁層8が設けられている。
【0011】
また、電子回路チップ7は、光集積デバイス4に備えられる光デバイス(集積光回路)9を駆動するものである。例えば、電子回路チップ7は、光変調器1を駆動するためにドライバ回路10を備え、光検出器2を駆動するためにTIA回路(増幅回路;受信回路)11を備える。
なお、光送受信器を集積光送受信器ともいう。また、光集積デバイス4を、光集積回路素子、集積光回路素子又は光集積回路チップともいう。また、電子回路チップ7を、電子回路素子ともいう。
【0012】
特に、本実施形態では、光集積デバイス4は、光変調器1と光検出器2の間にシールド電極12を備える。
また、シールド電極12は、基板3との間に絶縁層8を挟んで設けられることによって容量13を構成し、かつ、電子回路チップ7のグランド配線5に接続されている。
ここでは、シールド電極12は、図1図2に示すように、光集積デバイス4の表面に設けられている。
【0013】
また、シールド電極12は、離散的に設けられている。つまり、シールド電極12は、離散的な電極である。
なお、シールド電極12は、平面状に設けられていても良い。また、シールド電極12は、他の形状であっても良い。
また、シールド電極12は、光集積デバイス4に備えられる光デバイス(光素子)9に接続されていない電極である。例えば、シールド電極12は、光集積デバイス4に備えられる光デバイス9に接続される配線(例えばグランド配線)に接続されていない電極である。
【0014】
ここで、光集積デバイス4の基板3は、シリコン基板であり、絶縁層8は、SiO層である。また、シールド電極12は、例えばAl電極などの金属電極である。なお、Al電極をAlパッドともいう。また、金属電極を金属パッドともいう。
本実施形態では、図1に示すように、電子回路チップ7は、光集積デバイス4にフリップチップ実装されており、バンプ(金属バンプ)14を介して接合(バンプ接合)されている。
【0015】
そして、シールド電極12は、バンプ14を介して、電子回路チップ7のグランド配線5に接続されている。ここでは、シールド電極12は、電子回路チップ7内のグランド配線5に接続されたグランド端子15にバンプ14を介して接合されている。
なお、電子回路チップ7内のグランド配線5を、チップ内グランド配線ともいう。
上述のように、光変調器1と光検出器2の間の領域に、基板3との間に絶縁層8を挟んで、シールド電極12を設けることによって、光変調器1と光検出器2の間に意図的に容量13を設けることで、この容量13を介して、基板3を伝搬するクロストーク信号が光検出器2に到達する前に基板3から取り出されるようにしている。
【0016】
つまり、光変調器1と基板3の間の容量16を介して基板3に入力され、基板3を伝搬するクロストーク信号が、基板3とシールド電極12の間の容量13を介して基板3から取り出されるようにして、基板3を伝搬するクロストーク信号が光検出器2に到達してしまうのを抑制するようにしている。
なお、図1中、符号Xは、等価回路を示しており、符号Yは、クロストーク信号の伝搬経路を示している。
【0017】
そして、容量13を構成するシールド電極12を、電子回路チップ7のグランド配線5に接続することで、基板3とシールド電極12の間の容量13を介して基板3を伝搬するクロストーク信号が十分に基板3から取り出されるようにしている。
つまり、電子回路チップ7は、配線層数が多く、低抵抗なグランド配線5を形成することができる。
【0018】
このため、このような電子回路チップ7の低抵抗なグランド配線5にシールド電極12を接続することで、シールド電極12を確実にグランド電位又はその近傍の電位にすることができ、基板3とシールド電極12の間の容量13を介して基板3を伝搬するクロストーク信号が十分に基板3から取り出されるようにしている。
このようにして、光変調器1と基板3の間の容量16、基板3、光検出器2と基板3の間の容量17を介したクロストークを抑えることができ、受信特性の劣化を抑制することができる。
【0019】
なお、光集積デバイス4にグランド配線を設け、シールド電極12を光集積デバイス4のグランド配線に接続することも考えられる。
しかしながら、光集積デバイス4に低抵抗なグランド配線を形成するのは難しい。
このため、光集積デバイス4に設けられたグランド配線にシールド電極12を接続したとしても、シールド電極12をグランド電位又はその近傍の電位にするのが難しい。
【0020】
この結果、基板3とシールド電極12の間の容量13を介して基板3を伝搬するクロストーク信号が十分に基板3から取り出されず、光変調器1と基板3の間の容量16、基板3、光検出器2と基板3の間の容量17を介したクロストークを十分に抑制することができない。
また、一般に光集積デバイス(光集積回路)に用いられるSOI基板18においてSOI層(光導波路層)と支持基板の間に平面状の低抵抗なグランド配線を形成するのは作製プロセス上困難である。
【0021】
そこで、作製上困難なSOI基板上のグランド配線を用いることなく、上述のように、電子回路チップ7の低抵抗なグランド配線5を用いている。
なお、基板3を低抵抗化してグランド配線として機能させることも考えられるが、この方法では基板3から外部のグランド端子に至る経路の抵抗を十分に小さくできないため、光変調器1と基板3の間の容量16、基板3、光検出器2と基板3の間の容量17を介したクロストークを抑制するのは難しい。
【0022】
ところで、本実施形態では、光集積デバイス4の基板(支持基板)3は、約100Ωcm以上の抵抗率を有する基板(高抵抗基板)である。
つまり、光集積デバイス4の支持基板3として、一般的に用いられる約10Ωcmの低い抵抗率を有する低抵抗基板に代えて、約100Ωcm以上(例えば約750Ωcmなど)の高い抵抗率を有する高抵抗基板を用いている。
【0023】
ここでは、光集積デバイス4を、SOI基板18を用いて構成するため、SOI基板18の支持基板として、約100Ωcm以上の高い抵抗率を有する高抵抗Si基板を用いることになる。
このように、上述の電子回路チップ7のグランド配線5に接続されたシールド電極12を設けるとともに、支持基板3を高抵抗化することで、即ち、これらの手段を組み合わせることで、後述するように、優れたクロストーク抑制効果が得られ、良好な受信特性を実現することができる。
【0024】
また、本実施形態では、図1図2に示すように、光検出器2は、シグナル端子19と、バイアス端子20とを備え、シグナル端子19が光変調器1から遠い側に位置するように設けられている。
そして、電子回路チップ7は、光検出器2のバイアス端子20に接続されるチップ側バイアス端子21と、チップ側バイアス端子21とグランド配線5との間に設けられた容量素子(バイパスコンデンサ)22とを備える。
【0025】
つまり、電子回路チップ7において、チップ側バイアス端子22とグランド配線5は、容量素子22を介して接続されている。
なお、光検出器2のバイアス端子20及びこれに接続される電子回路チップ7のチップ側バイアス端子21は、光検出器2にバイアス電圧を供給するためのものである。
ここでは、バイパスコンデンサ22は、電子回路チップ7内(ここではTIA回路11内)のチップ側バイアス端子21の近傍に設けられている。
【0026】
つまり、バイパスコンデンサ22は、電子回路チップ7内のチップ側バイアス端子21の直近に集積し、チップ側バイアス端子21に接続している。
なお、バイパスコンデンサ22をチップ内バイパスコンデンサ又はチップ内容量素子ともいう。
これにより、チップ側バイアス端子21とグランド配線5の間に生じる寄生抵抗やインダクタンスの影響を極力排除し、より高いクロストーク抑圧効果を得ることが可能になる。
【0027】
このように、バイパスコンデンサ22は、電子回路チップ7のチップ側バイアス端子21に接続されるバイアス電源(図示せず)から供給されるバイアス電圧のノイズを防ぐために、電子回路チップ7の外側の周囲に実装され、チップ側バイアス端子21にワイヤ等で接続される別体のコンデンサとは異なる。
また、本実施形態では、光変調器1は、差動信号によって駆動される光変調器であって、図2に示すように、差動信号が入力される第1シグナル端子23及び第2シグナル端子24を備える。
【0028】
そして、光変調器1の第1シグナル端子23と第2シグナル端子24は、光検出器2のシグナル端子19及びバイアス端子20の中心を通る線(図2中、符号Xで示す線)に対して対称になるように設けられている。
また、シールド電極12は、光検出器2のシグナル端子19の中心を通る線(図2中、符号Xで示す線)に対して対称になるように設けられている。
【0029】
つまり、本実施形態では、差動信号によって駆動される光変調器1の差動電極となる第1シグナル端子23及び第2シグナル端子24は、離散的に設けられている複数のシールド電極12の中心位置及び光検出器1のシグナル端子19及びバイアス端子20の中心位置を通る線(図2中、符号Xで示す線)に対して、線対称になるように設けられている。
以下、具体的な構成例について説明する。
【0030】
この具体的な構成例では、図1に示すように、光変調器1と光検出器2が集積された光集積デバイス4と、ドライバ回路10とTIA回路11が集積された電子回路チップ7が、バンプ14を介して、フリップチップ実装されている。
光集積デバイス4は、支持基板3として約750Ωcmの高い抵抗率を有する高抵抗基板を用いたSOI基板18上に形成され、光変調器1と光検出器2を含む。
【0031】
光変調器1は、厚さ約220nmのSi層を加工したリブ光導波路25を備え、リブ光導波路25内は、適宜、イオン注入工程によって、p-Si及びn-Siにドーピングされてp-Si領域25A及びn-Si領域25Bが形成されており、入力される送信電気データ信号によって、伝搬する光信号の位相が変調される機能を有する。
配線(パッドを含む)は、1層のAl配線(Alパッドを含む)であり、Al配線(Al配線層)に含まれるAlパッド23、24、26、27がWプラグ28によってp-Si/n-Si領域25A、25Bに接続されている。
【0032】
なお、Al配線を金属配線ともいう。また、Alパッドを金属パッドともいう。また、Wプラグを金属プラグともいう。
光検出器2は、厚さ約220nmのp-Si層29上にGe光吸収層30を積層した構造であり、少なくともGe光吸収層30の上部はn-Geにドーピングされてn-Ge領域30Aが形成されており、PIN構造を形成している。
【0033】
Al配線に含まれるAlパッド19、20がWプラグ31(端子;金属端子)によってp-Si層29とn-Ge領域30Aにそれぞれ接続される。
そして、p-Si層29に接続されたAlパッド20は、光検出器2の高速動作に必要なバイアス電圧を印加するためのバイアス端子であり、n-Ge領域30Aに接続されたAlパッド19は、シグナル端子である。
【0034】
光変調器1と光検出器2の間の領域には、Alパッドによって構成され、Al配線に接続されていないシールド電極12が離散的に形成されている。
電子回路チップ7は、Si基板上に形成されたCMOS回路であり、ドライバ回路10とTIA回路11を含む。
各回路10、11への信号、電源、グランド入出力は、表面に設けたAlパッド21、32、33、34を介して行なわれる。
【0035】
なお、TIA回路11の一方のAlパッドがチップ側バイアス端子21であり、他方のAlパッドがチップ側シグナル端子(TIA入力端子)32である。
光集積デバイス4と電子回路チップ7は、SnAgバンプ14によって、対応するAlパッド間が接合されている。
そして、シールド電極12は、SnAgバンプ14及びAlパッド(グランド端子)15を介して、電子回路チップ7のチップ内に設けられた各回路共用のグランド配線5に接続されている。
【0036】
ここで、図2は、本実施形態にかかる光集積デバイス4を上方から見た図であって、光変調器1、シールド電極12、光検出器2のそれぞれのレイアウトを示している。
図2に示すように、光変調器1は、上述のリブ光導波路構造を一対用いたマッハツェンダ光変調器であり、グランド端子26、シグナル(P)端子(第1シグナル端子)23、シグナル(N)端子(第2シグナル端子)24、グランド端子27となる4つのAlパッドを介して、ドライバ回路10で生成した差動電気信号が入力されるようになっている。
【0037】
なお、図2中、符号36、37は光導波路を示している。
シールド電極12は、光変調器1と光検出器2の間に離散的に設けられており、いかなる光素子9にも接続されていない複数のAlパッドである。
光検出器2は、バイアス端子20とシグナル端子19となる2つのAlパッドに接続されている。
【0038】
また、光検出器2のシグナル端子19、即ち、電子回路チップ7に備えられるTIA回路11の入力端子(TIA入力;チップ側シグナル端子)に接続されるシグナル端子19(ここではn-Ge領域30Aに接続される端子であるAlパッド)は、より光変調器1から遠方に配置されている。
また、光変調器1の差動電極となるシグナル(P)端子23及びシグナル(N)端子24は、離散的に設けられている複数のシールド電極12の中心位置及び光検出器1の各端子の中心位置を通る線(図2中、符号Xで示す線)に対して、線対称になるように配置されている。
【0039】
このようなレイアウトを採用することで、光変調器1で発生する差動クロストーク信号は光検出器2のシグナル端子19に到達するまでに、差動クロストーク信号間で同じ減衰及び位相回転を受けるため、光検出器1のシグナル端子19において差動クロストーク信号が打ち消される効果を得ることができる。
このように構成される光送受信器において、光送受信器間のクロストーク経路は、図1中、符号Yで示した経路となる。
【0040】
図1中、符号Yで示すように、電子回路チップ7のドライバ回路10で生成され、光集積デバイス4の光変調器1に入力された送信信号は、容量結合によって、高抵抗Si基板3に入力され、入力されたクロストーク信号は高抵抗Si基板3内を光検出器2の方向へ伝搬する。
高抵抗Si基板3内を伝搬する際に、クロストーク信号は、容量結合されたシールド電極12を介して電子回路チップ7のグランド配線(チップ内GND)5に流入するため、大きく強度が減衰される。
【0041】
光集積デバイス4の光検出器2に到達したクロストーク信号は、容量結合によって、バイアス端子20とシグナル端子19に流入する。
そして、光検出器2のバイアス端子20は、バンプ14、電子回路チップ7のチップ側バイアス端子21を介して、電子回路チップ7内に設置されたバイパスコンデンサ(容量素子)22を介してチップ内GND5に接続されて接地されており、クロストーク信号はこの経路を通じてさらに減衰される。
【0042】
このようにして、光変調器1と基板3の間の容量16、基板3、光検出器2と基板3の間の容量17を介したクロストークを抑制することができ、良好な受信特性を実現することができる。
ここで、図3は、本実施形態の具体的な構成例の光送受信器についてシミュレーションしたTIA入力端子(シグナル端子)におけるクロストーク信号の計算結果を示している。
【0043】
なお、図3中、実線Aは、本実施形態の具体的な構成例の光送受信器におけるクロストーク信号の計算結果を示しており、実線Bは、同じレイアウトにてシールド電極とバイパスコンデンサを設けないで、支持基板として低抵抗Si基板(抵抗率約10Ωcm)を用いた場合(従来構造)のクロストーク信号の計算結果を示している。
図3に示すように、本実施形態の具体的な構成例の構成を採用することで、従来構造と比較して、クロストーク信号(クロストーク電流量)は1MHz~100GHzの非常に広い周波数領域に渡って最大1/1000に抑圧される。
【0044】
そして、本実施形態の具体的な構成例の構成を採用することで、光送受信器で想定される受信信号レベル(1μA~1mA)よりも十分に低く抑えることができる。これにより、光送受信器の送受信器間クロストークを解消し、良好な受信特性を実現することができる。
以下、この効果の詳細について、図4図8を参照しながら説明する。
【0045】
まず、図4は、本実施形態の具体的な構成例のレイアウトにおいて、シールド電極12とバイパスコンデンサ22を設けないで、基板3として低抵抗Si基板(抵抗率約10Ωcm)を用いた場合(従来構造)と高抵抗Si基板(抵抗率約750Ωcm)を用いた場合のクロストーク信号(クロストーク電流量)を比較した結果を示している。
なお、図4中、実線Aは、高抵抗Si基板を用いた場合のクロストーク信号の計算結果を示しており、実線Bは、低抵抗Si基板を用いた場合のクロストーク信号の計算結果を示している。
【0046】
図4に示すように、従来構造と比較して、基板を高抵抗化することで、クロストーク電流量は約10MHz以上の周波数領域で抑圧されるが、その度合いは約1/10にとどまり、クロストーク信号を光送受信器で想定される受信信号レベル(1μA~1mA)よりも十分に低く抑えることはできない。
支持基板3は抵抗率で決まる抵抗成分と誘電率で決まる容量成分の並列回路と考えられる。高抵抗Si基板を利用することで抵抗成分が上昇し、それを伝搬していたクロストーク成分は抑圧されるものの、基板の容量成分を通過するクロストーク成分については影響がないため、全体の抑圧比はあまり大きくならない。
【0047】
次に、図5は、本実施形態の具体的な構成例のレイアウトにおいて、基板3として低抵抗Si基板(抵抗率約10Ωcm)を用い、バイパスコンデンサ22を設けないで、シールド電極12を設けた場合とシールド電極12を設けない場合(従来構造)のクロストーク信号(クロストーク電流量)を比較した結果を示している。
なお、図5中、実線Aは、シールド電極12を設けた場合のクロストーク信号の計算結果を示しており、実線Bは、シールド電極12を設けない場合のクロストーク信号の計算結果を示している。
【0048】
図5に示すように、従来構造と比較して、シールド電極12を設けることで、クロストーク電流量は抑圧されるが、クロストーク信号を光送受信器で想定される受信信号レベル(1μA~1mA)よりも十分に低く抑えることはできない。
次に、図6は、本実施形態の具体的な構成例のレイアウトにおいて、基板3として高抵抗Si基板(抵抗率約100Ωcm)を用い、バイパスコンデンサ22を設けないで、シールド電極12を設けた場合とシールド電極12を設けない場合のクロストーク信号(クロストーク電流量)を比較した結果を示している。
【0049】
なお、図6中、実線Aは、シールド電極12を設けた場合のクロストーク信号の計算結果を示しており、実線Bは、シールド電極12を設けない場合のクロストーク信号の計算結果を示している。
図6中、実線Bで示すように、従来構造(例えば図5中、実線B参照)と比較して、基板3を高抵抗Si基板(抵抗率約100Ωcm)に変更しただけでは、クロストーク電流量は抑圧されるものの、クロストーク信号を光送受信器で想定される受信信号レベル(1μA~1mA)よりも十分に低く抑えることはできない。
【0050】
これに対し、図6中、実線Aで示すように、従来構造の基板3を高抵抗Si基板(抵抗率約100Ωcm)に変更し、かつ、シールド電極12を設けることで、クロストーク電流量は十分に抑圧することができ、約10GHzよりも低い周波数領域においてクロストーク信号を光送受信器で想定される受信信号レベル(1μA~1mA)よりも十分に低く抑えることができる。
【0051】
次に、図7は、本実施形態の具体的な構成例のレイアウトにおいて、基板3として高抵抗Si基板(抵抗率約750Ωcm)を用い、バイパスコンデンサ22を設けないで、シールド電極12を設けた場合とシールド電極12を設けない場合のクロストーク信号(クロストーク電流量)を比較した結果を示している。
なお、図7中、実線Aは、シールド電極12を設けた場合のクロストーク信号の計算結果を示しており、実線Bは、シールド電極12を設けない場合のクロストーク信号の計算結果を示している。
【0052】
図7中、実線Bで示すように、従来構造の基板3を高抵抗Si基板(抵抗率約750Ωcm)に変更したものと比較して、図7中、実線Aで示すように、従来構造の基板3を高抵抗Si基板(抵抗率約750Ωcm)に変更し、かつ、シールド電極12を設けることで、クロストーク電流量は十分に抑圧することができ、約10GHzよりも低い周波数領域においてクロストーク信号を光送受信器で想定される受信信号レベル(1μA~1mA)よりも十分に低く抑えることができる。
【0053】
次に、図8は、本実施形態の具体的な構成例のレイアウトにおいて、シールド電極12を設け、バイパスコンデンサ22を設けないで、基板3を低抵抗Si基板(抵抗率約10Ωcm)にした場合、基板3を高抵抗Si基板(抵抗率約100Ωcm)にした場合、及び、基板3を高抵抗Si基板(抵抗率約750Ωcm)にした場合のクロストーク信号(クロストーク電流量)を比較した結果を示している。
【0054】
なお、図8中、実線Aは、基板3を高抵抗Si基板(抵抗率約750Ωcm)にした場合のクロストーク信号の計算結果を示しており、実線Bは、基板3を高抵抗Si基板(抵抗率約100Ωcm)にした場合のクロストーク信号の計算結果を示しており、実線Cは、基板3を低抵抗Si基板(抵抗率約10Ωcm)にした場合のクロストーク信号の計算結果を示している。
【0055】
図8に示すように、シールド電極12を設けて、基板3を高抵抗化することで、クロストーク電流量は十分に抑圧することができ、約10GHzよりも低い周波数領域においてクロストーク信号を光送受信器で想定される受信信号レベル(1μA~1mA)よりも十分に低く抑えることができる。
また、図4と比較すると、シールド電極12を追加することによって広い周波数領域でクロストーク信号が抑圧されることがわかる。
【0056】
また、基板3を低抵抗Si基板(抵抗率約10Ωcm)にした場合と、基板3を高抵抗Si基板(抵抗率約750Ωcm)にした場合の抑圧比は約1/100に達し、図4で示した効果よりも約10倍大きくなることがわかる。
そして、シールド電極12の挿入によるクロストーク信号の抑圧効果が最も顕著に現れる周波数は、基板3を高抵抗Si基板(抵抗率約750Ωcm)にした場合、基板3を低抵抗Si基板(抵抗率約10Ωcm)にした場合(2GHz付近)よりもさらに低周波数領域(200MHz付近)にシフトし、より広い周波数領域にわたってクロストーク信号の抑圧が実現されることがわかる。
【0057】
これは、シールド電極12による個別効果と基板3を高抵抗基板にすることによる個別効果を足し合わせたものではなく、シールド電極12を設けることと基板3を高抵抗基板にすることを組み合わせたことで新たな効果が発現していることを示すものである。
このように、シールド電極12が存在する場合に基板3を高抵抗化すると、より顕著な効果が得られるのは、基板3からシールド電極12に通じる結合容量と基板3の抵抗成分で決まるRC周波数が基板3の高抵抗化によって低下し、より低域のクロストーク成分までシールド電極12を通じて電子回路チップ7のグランド配線(チップ内GND)5にバイパスできるようになるためである。
【0058】
なお、上述の本実施形態の具体的な構成例では、抵抗率約750Ωcmの高抵抗基板を用いる場合を例に挙げて示しているが、図8のクロストーク信号の計算結果に示すように、一般的な光送受信器の下限受信信号レベルである1μAに対して、クロストーク信号(クロストーク成分)を小さくするには、基板3の抵抗率を100Ωcm以上とすれば良い。
【0059】
また、図4図8では、光検出器2のバイアス端子(バイアス電極)20に接続されるバイパスコンデンサ22がない場合を例に挙げて説明しているが、バイパスコンデンサ22を設けることで、図3に示すように、約1GHz以上の高い周波数領域のクロストーク成分をさらに抑圧することが可能であり、約10MHz~約100GHzの非常に広い周波数領域にわたってクロストーク成分を光送受信器で想定される受信信号レベルよりも小さくすることができる。
【0060】
ところで、上述のように構成しているのは、以下の理由による。
例えば図12に示すように、シリコン基板又はSOI(Silicon on Insulator)基板上に形成する光集積回路素子には、送信する電気データ信号で変調された光信号を生成する光変調器と受信光信号を電気データ信号に復号する光検出器が複数集積される。
このような光集積回路素子は、一般の電子回路素子を製造するプロセス技術及び装置を利用して、高精度かつ安価に製造可能である。
【0061】
また、光集積回路素子内に形成された光変調器や光検出器を駆動するためには、ドライバ回路やトランスインピーダンス増幅器(TIA)回路といった電子回路が必要であり、これらの回路は、例えば別体のシリコン基板上に形成された電子回路素子として用意される。
このような光集積回路素子と電子回路素子は、例えば図12に示すように、フリップチップ実装を利用して近接実装され、光送受信器としての機能を実現する。
【0062】
このような光送受信器では、ドライバ回路及び光変調器で扱われる送信データとTIA回路と光検出器で扱われる受信データの漏話(クロストーク)を防止し、光受信器において良好な受信特性を実現することが肝要である。
しかし、図12に示すような光送受信器においては、光変調器と光検出器が同一のシリコン基板上に形成されているため、光集積回路素子の基板を介したクロストークが生じて、受信特性を劣化させることがわかった。
【0063】
具体的には、図12中、点線Xで示すように、ドライバ回路で生成された大振幅の送信電気データ信号によって光変調器を駆動する際に、光変調器とシリコン基板の間の容量を介して基板にクロストーク信号が入力される。
このクロストーク信号は、基板を伝搬した後、光検出器とシリコン基板の間の容量を介して光検出器からTIA回路に入力される受信電気データ信号に混入する。
【0064】
ここで、一般に光検出器で発生する受信データ信号は小さな振幅であるため、基板を介して混入してきたクロストーク信号成分は、TIA回路における受信特性を顕著に劣化させることがわかった。
そこで、光変調器と基板の間の容量、基板、光検出器と基板の間の容量を介したクロストークを抑え、受信特性の劣化を抑制するために、上述のような構成を採用している。
【0065】
したがって、本実施形態にかかる光送受信器は、光変調器1と基板3の間の容量16、基板3、光検出器2と基板3の間の容量17を介したクロストークを抑え、受信特性の劣化を抑制することができるという効果を有する。
なお、上述の実施形態では、シールド電極12は、光集積デバイス4の表面に設けられているが、これに限られるものではない。
【0066】
例えば図9図10に示すように、シールド電極12は、光集積デバイス4の表面よりも基板3に近くなるように光集積デバイス4の内部に設けられていても良い。
そして、光集積デバイス4は、シールド電極12に接続され、光集積デバイス4の表面まで延びるシールド配線35を備えるものとしても良い。
なお、その他の構成は、上述の実施形態のものと同様とすれば良い。なお、図9図10では、説明を分かり易くするために、説明に必要な符号を付し、それ以外の符号は省略しているが、省略した符号については、上述の実施形態の構成を示す図1図2に示した符号と同様である。
【0067】
例えば、光集積デバイス4が多層の配線層(例えばAl配線層;金属層)を備える場合、シールド電極12を、最下層のAl配線層に含まれ、最下層のAl配線層に含まれる他のAl配線に接続されていない平面状に設けられたAl層12Xによって構成すれば良い。
そして、この平面状に設けられたAl層12Xからなるシールド電極12が、上述の実施形態の離散的なシールド電極12を構成するAlパッドと同様に、光集積デバイス4の表面に離散的に設けられているAlパッド(金属パッド)35XにWプラグ(金属プラグ)35Yによって接続されるようにすれば良い。この場合、Alパッド35X及びWプラグ35Yによってシールド配線35が構成されることになる。
【0068】
この場合、例えば図10に示すように、シールド電極12は、表面に設けられた複数のAlパッド35Xにオーバーラップするように広い領域に設けられた平面状のAl層12Xとすれば良い。
これにより、シールド電極12と基板(支持基板)3の間の容量13を増大し、より低周波数領域にわたって大きなクロストーク抑制効果を得ることが可能となる。
【0069】
ここで、図11は、この変形例の構造についてシミュレーションしたTIA入力端子(シグナル端子)におけるクロストーク信号(クロストーク電流量)の計算結果を示している。
なお、図11中、実線Aは、本変形例の構造におけるクロストーク信号の計算結果を示しており、実線Bは、上述の実施形態(具体的な構成例)の構造におけるクロストーク信号の計算結果を示している。
【0070】
図11に示すように、上述の実施形態の構造の場合と比較して、シールド電極12と支持基板3を接続する容量(接続容量)13が大きいため、基板抵抗とのCR周波数が低くなり、約1GHz以下の低周波数領域におけるクロストーク抑圧効果をより強めることができる。
なお、この変形例では、シールド電極12を、平面状に設けられているものとしているが、上述の実施形態の場合と同様に、離散的に設けられているものとしても良い。また、シールド電極12は、他の形状であっても良い。
【0071】
なお、本発明は、上述した実施形態及び変形例に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
例えば、上述の実施形態及び変形例では、光集積デバイス4と電子回路チップ7をフリップチップ実装によるバンプ接合しているが、これに限られるものではなく、例えば、これらをワイヤーボンディングで接続するようにしても良い。
【0072】
以下、上述の実施形態及び変形例に関し、更に、付記を開示する。
(付記1)
光デバイスとして少なくとも光変調器及び光検出器が同一の基板の上方に集積され、前記光変調器と前記基板の間及び前記光検出器と前記基板の間に絶縁層が設けられた光集積デバイスと、
前記光集積デバイスに接続され、グランド配線を含む電子回路を備える電子回路チップとを備え、
前記光集積デバイスは、前記光変調器と前記光検出器の間にシールド電極を備え、
前記シールド電極は、前記基板との間に前記絶縁層を挟んで設けられることによって容量を構成し、かつ、前記電子回路チップの前記グランド配線に接続されていることを特徴とする光送受信器。
【0073】
(付記2)
前記基板は、100Ωcm以上の抵抗率を有する基板であることを特徴とする、付記1に記載の光送受信器。
(付記3)
前記基板は、シリコン基板であり、
前記絶縁層は、SiO層であることを特徴とする、付記1又は2に記載の光送受信器。
【0074】
(付記4)
前記光検出器は、シグナル端子と、バイアス端子とを備え、前記シグナル端子が前記光変調器から遠い側に位置するように設けられており、
前記電子回路チップは、前記光検出器の前記バイアス端子に接続されるチップ側バイアス端子と、前記チップ側バイアス端子と前記グランド配線との間に設けられた容量素子とを備えることを特徴とする、付記1~3のいずれか1項に記載の光送受信器。
【0075】
(付記5)
前記電子回路チップは、前記光集積デバイスにフリップチップ実装されており、
前記シールド電極は、バンプを介して、前記電子回路チップの前記グランド配線に接続されていることを特徴とする、付記1~4のいずれか1項に記載の光送受信器。
(付記6)
前記シールド電極は、前記光集積デバイスに備えられる前記光デバイスに接続されていない電極であることを特徴とする、付記1~5のいずれか1項に記載の光送受信器。
【0076】
(付記7)
前記シールド電極は、前記光集積デバイスの表面に設けられていることを特徴とする、付記1~6のいずれか1項に記載の光送受信器。
(付記8)
前記シールド電極は、前記光集積デバイスの表面よりも前記基板に近くなるように前記光集積デバイスの内部に設けられており、
前記光集積デバイスは、前記シールド電極に接続され、前記光集積デバイスの表面まで延びるシールド配線を備えることを特徴とする、付記1~6のいずれか1項に記載の光送受信器。
【0077】
(付記9)
前記シールド電極は、平面状に設けられていることを特徴とする、付記1~8のいずれか1項に記載の光送受信器。
(付記10)
前記シールド電極は、離散的に設けられていることを特徴とする、付記1~8のいずれか1項に記載の光送受信器。
【0078】
(付記11)
前記光変調器は、差動信号によって駆動される光変調器であって、差動信号が入力される第1シグナル端子及び第2シグナル端子を備え、
前記光検出器は、シグナル端子と、バイアス端子とを備え、
前記光変調器の前記第1シグナル端子と前記第2シグナル端子は、前記光検出器の前記シグナル端子の中心を通る線に対して対称になるように設けられており、
前記シールド電極は、前記光検出器の前記シグナル端子の中心を通る線に対して対称になるように設けられていることを特徴とする、付記1~3、5~10のいずれか1項に記載の光送受信器。
【0079】
(付記12)
前記光検出器は、前記シグナル端子が前記光変調器から遠い側に位置するように設けられており、
前記電子回路チップは、前記光検出器の前記バイアス端子に接続されるチップ側バイアス端子と、前記チップ側バイアス端子と前記グランド配線との間に設けられた容量素子とを備えることを特徴とする、付記11に記載の光送受信器。
【符号の説明】
【0080】
1 光変調器
2 光検出器
3 基板
4 光集積デバイス(光集積回路素子)
5 グランド配線(チップ内GND)
6 電子回路
7 電子回路チップ(電子回路素子)
8 絶縁層(SiO層)
9 光デバイス
10 ドライバ回路
11 TIA回路(増幅回路;受信回路)
12 シールド電極(Alパッド)
12X 平面状に設けられたAl層
13 容量
14 バンプ(金属バンプ;SnAgバンプ)
15 グランド端子(Alパッド)
16 容量
17 容量
18 SOI基板
19 シグナル端子(Alパッド)
20 バイアス端子(Alパッド)
21 チップ側バイアス端子(Alパッド)
22 容量素子(バイパスコンデンサ)
23 第1シグナル端子(シグナル(P)端子;Alパッド)
24 第2シグナル端子(シグナル(N)端子;Alパッド)
25 リブ光導波路
25A p-Si領域
25B n-Si領域
26、27 グランド端子(Alパッド)
28 Wプラグ
29 p-Si層
30 Ge光吸収層
30A n-Ge領域
31 Wプラグ
32 チップ側シグナル端子(TIA入力端子;Alパッド)
33、34 Alパッド
35 シールド配線
35X Alパッド
35Y Wプラグ
36、37 光導波路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12