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特許7096775蓄電池評価装置、蓄電池評価方法及び蓄電池評価システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】蓄電池評価装置、蓄電池評価方法及び蓄電池評価システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20220629BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 Y
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019000285
(22)【出願日】2019-01-04
(65)【公開番号】P2020109720
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】波田野 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸洋
(72)【発明者】
【氏名】藤原 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 正剛
(72)【発明者】
【氏名】小林 武則
(72)【発明者】
【氏名】小倉 靖弘
(72)【発明者】
【氏名】三ッ本 憲史
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/158706(WO,A1)
【文献】特開2016-167928(JP,A)
【文献】特開2000-012102(JP,A)
【文献】特開2015-059933(JP,A)
【文献】特開2006-350730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電又は放電を指示する充放電指令値に応じて充放電する蓄電装置の稼働中の計測データに基づき、前記蓄電装置の充電量が閾値条件を満たす複数の時刻を検出し、検出した前記複数の時刻に基づき、複数の時間区間を選出する時間区間選出部と、
前記時間区間に属する前記充放電指令値に基づき、前記時間区間の充放電効率を算出する効率算出部と、
前記充放電効率の集合を複数のクラスタに分割し、前記充放電指令値及び前記計測データの少なくとも一方に基づき、前記クラスタの特徴情報を生成するクラスタリング部と、
前記クラスタに属する前記充放電効率の推移データと、前記クラスタの特徴情報とを表示するための出力データを生成する出力部と、
を備えた蓄電池評価装置。
【請求項2】
前記出力データを表示する表示部
を備えた請求項1に記載の蓄電池評価装置。
【請求項3】
前記閾値条件は、前記充電量が閾値に達すること、又は前記閾値に対して一定の範囲に入ることである
請求項1又は2に記載の蓄電池評価装置。
【請求項4】
前記閾値は、前記蓄電装置の充電量が前記蓄電装置の定格容量の所定割合である
請求項3に記載の蓄電池評価装置。
【請求項5】
前記時間区間選出部は、前記計測データに基づき前記充電量の分布を生成し、前記分布に基づき前記閾値条件を決定する
請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電池評価装置。
【請求項6】
前記推移データは、前記充放電効率を時刻と関連付けたデータを含む
請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電池評価装置。
【請求項7】
前記推移データは、前記充放電効率を前記蓄電装置の累積放電量又は累積充電量と関連づけたデータを含む
請求項1~6のいずれか一項に記載の蓄電池評価装置。
【請求項8】
前記クラスタリング部は、前記クラスタを近似する関数を計算し、
前記推移データは、前記関数のグラフを含む
請求項1~7のいずれか一項に記載の蓄電池評価装置。
【請求項9】
前記クラスタリング部は、前記時間区間に属する前記充放電指令値及び前記計測データの少なくとも一方の標準偏差を計算し、前記標準偏差の統計情報を、前記クラスタの特徴情報として生成する
請求項1~8のいずれか一項に記載の蓄電池評価装置。
【請求項10】
前記クラスタリング部は、前記クラスタの特徴情報として、前記クラスタを近似する直線の傾き情報を計算する
請求項1~9のいずれか一項に記載の蓄電池評価装置。
【請求項11】
前記時間区間選出部は、前記時刻間の時間差が所定値以上である区間を前記時間区間として選出する
請求項1~10のいずれか一項に記載の蓄電池評価装置。
【請求項12】
前記時刻間の時間差が所定値以上である区間は、前記計測データのサンプル数が前記所定値以上の区間である
請求項11に記載の蓄電池評価装置。
【請求項13】
前記時間区間選出部は、前記充放電指令値が前記充電及び前記放電のいずれも行わないことを指示している時間長さの合計が所定値以下である前記時刻間の区間を、前記時間区間として選出する
請求項1~12のいずれか一項に記載の蓄電池評価装置。
【請求項14】
前記時間区間選出部は、前記時刻間の充電量の平均値と、閾値との差が所定値以下である前記時刻間の区間を、前記時間区間として選出する
請求項1~13のいずれか一項に記載の蓄電池評価装置。
【請求項15】
前記閾値条件は、前記充電量が第1閾値又は第2閾値に達することであり、
前記第1閾値および前記第2閾値のそれぞれについて前記時間区間選出部、前記効率算出部、前記クラスタリング部、前記出力部の処理を行い、
前記第1閾値に基づく前記クラスタの特徴情報は前記第1閾値を特定する情報を含み、前記第2閾値に基づく前記クラスタの特徴情報は前記第2閾値を特定する情報を含む
請求項1~14のいずれか一項に記載の蓄電池評価装置。
【請求項16】
前記効率算出部は、前記充放電効率を、前記充放電効率が前記算出された前記時間区間に属する計測データが示す温度に応じて補正する
請求項1~15のいずれか一項に記載の蓄電池評価装置。
【請求項17】
充電又は放電を指示する充放電指令値に応じて充放電する蓄電装置の稼働中の計測データに基づき、前記蓄電装置の充電量が閾値条件を満たす複数の時刻を選出するステップと、
検出した前記複数の時刻に基づき、複数の時間区間を選出するステップと、
前記時間区間に属する前記充放電指令値に基づき、前記時間区間の充放電効率を算出するステップと、
前記充放電効率の集合を複数のクラスタに分割し、前記充放電指令値及び前記計測データの少なくとも一方に基づき、前記クラスタの特徴情報を生成するステップと、
前記クラスタに属する前記充放電効率の推移データと、前記クラスタの特徴情報とを表示するための出力データを生成するステップと、
を備えた蓄電池評価方法。
【請求項18】
充電又は放電を指示する充放電指令値に応じて充放電する蓄電装置と、
蓄電池評価装置とを備え、
前記蓄電池評価装置は、
前記蓄電装置の稼働中の計測データに基づき、前記蓄電装置の充電量が閾値条件を満たす複数の時刻を検出し、検出した前記複数の時刻に基づき、複数の時間区間を選出する時間区間選出部と、
前記時間区間に属する前記充放電指令値に基づき、前記時間区間の充放電効率を算出する効率算出部と、
前記充放電効率の集合を複数のクラスタに分割し、前記クラスタに属する前記計測データに基づき、前記クラスタの特徴情報を生成するクラスタリング部と、
前記クラスタに属する前記充放電効率の推移データと、前記クラスタの特徴情報とを表示するための出力データを生成する出力部と、
を備えた蓄電池評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄電池評価装置、蓄電池評価方法及び蓄電池評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池の劣化は、蓄電池の長期に渡る利用や充放電の繰り返しにより進む。蓄電池の劣化が進むと、蓄電池に定格電力量を充電できなくなる。したがって、蓄電池の劣化具合を随時把握しておかないと、予定量の充放電が行えず、システム全体の効率が低下する可能性がある。
【0003】
蓄電池の劣化状態を評価する方法として、時間をかけて完放電と満充電を行い、この間の測定結果に基づき、蓄電池の劣化状態を評価する方法がある。また、EV(Electric Vehicle)や携帯電話のような連続充電を行うときに測定を行い、測定結果に基づき蓄電池の劣化状態を評価する方法がある。これらの方法は、特殊な充放電を実行している時、またはオフライン時(蓄電池の非運転時)を前提としているものであった。
【0004】
一方、蓄電池の通常運転中の充放電電圧から評価を行う電圧標準偏差法もある。しかしながら、この方法は、事前に充放電電圧標準偏差と電池健全度とを対応づけるためのデータ収集が必要である。このため、蓄電池の診断を開始するまでに時間を要するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4668015号公報
【文献】特許第5017084号公報
【文献】特許第6134438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、通常稼働している蓄電システムから得られる情報を用いて蓄電装置を評価する蓄電池評価装置、蓄電池評価方法及び蓄電池評価システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の蓄電池評価装置は、充電又は放電を指示する充放電指令値に応じて充放電する蓄電装置の稼働中の計測データに基づき、前記蓄電装置の充電量が閾値条件を満たす複数の時刻を検出し、検出した前記複数の時刻に基づき、複数の時間区間を選出する時間区間選出部と、前記時間区間に属する前記充放電指令値に基づき、前記時間区間の充放電効率を算出する効率算出部と、前記充放電効率の集合を複数のクラスタに分割し、前記クラスタに属する前記計測データに基づき、前記クラスタの特徴情報を生成するクラスタリング部と、前記クラスタに属する前記充放電効率の推移データと、前記クラスタの特徴情報とを表示するための出力データを生成する出力部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る蓄電池評価システムの基本構成を示すブロック図。
図2】蓄電池の構成例を示す図。
図3】電池モジュールの構成の一例を示す図。
図4】データ記憶部に記憶された充放電履歴データの例を示す図。
図5】線形補間により充電量が閾値θになった時刻を特定する例を示す図。
図6】線形補間により充電量が閾値θになった時刻を特定する例を示す図。
図7】充放電効率を計算する具体例を示す図。
図8】充放電履歴データの他の例を示す図。
図9図8の充放電履歴データを、横軸を時刻、縦軸を充電量とする座標系に展開してグラフ表示した例を示す図。
図10】データを、時刻及び充放電効率を軸とする座標系にプロットした例を示す図。
図11】クラスタリングの例を模式的に示す図。
図12】長い測定期間で取得したデータをプロットした例を示す図。
図13】長い測定期間で取得したデータをプロットした例を示す他の図。
図14】閾値θとしてθ1とθ2を使った場合に表示される画面の例を模式的に示す図。
図15】本実施形態に係る蓄電池評価装置の動作の一例のフローチャート。
図16図12の各点の充放電効率を代表温度に応じて補正した例を示す図。
図17図13の各点の充放電効率を代表温度に応じて補正した例を示す図。
図18】探索開始時刻から探索終了時刻までの間の充電量のヒストグラムを模式的に示す図。
図19】本発明の実施形態に係る蓄電池評価装置のハードウェア構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る蓄電池評価システムの基本構成を示すブロック図である。蓄電池評価システムは、評価対象となる蓄電池を含む蓄電システム(ESS:Energy Storage System)101と、蓄電池を評価する蓄電池評価装置201とを備える。蓄電池は二次電池とも呼ばれる。以下では蓄電池に呼び方を統一する。
【0011】
蓄電システム101は、通信ネットワークを介して、SCADA301に接続されている。SCADA301(Supervisory Control And Data Acquisition)は、地域内に存在する様々な蓄電システム(ESS)を1つの大型ESSに見立て、個々のESSに、時間に応じて充電指令値及び放電指令値の少なくとも一方(以下、充放電指令値)を送る。充放電指令値には、充放電の実行時刻が付加されていてもよい。あらかじめ時刻同期がされている場合などは、充放電指令値に実行時刻を付加しない構成も可能である。SCADA301は、電力系統401に対する個々のESSの充電及び放電の少なくとも一方(以下、充放電)を制御する。SCADA301は、一例として、電力会社の中央給電指令所など、上位のエネルギー・マネジメント・システムからの指令、または下位の配電側の個々のエネルギー管理システム(Energy Management System)からの指令、またはこれらの両方等に基づき、個々のESSの充放電の制御を行う。
【0012】
蓄電システム101は、SCADA301からの充放電指令値に応じて、電力系統401との間で蓄電池の充放電を行う機能を有する。蓄電システム101は、制御部111と、蓄電池112と、交直変換機113とを備える。交直変換機113は、電力系統401に接続されている。交直変換機113と電力系統401との間に、変圧器が存在してもよい。
【0013】
蓄電システム101の制御部111は、SCADA301から充放電指令値を受信し、当該充放電指令値および蓄電池112の充電量に基づき、交直変換機113に対する実行可能な充放電指令値を生成する。SCADA301の充放電指令値と区別するため、便宜上、制御部111が生成した充放電指令値を、充放電命令と称する場合がある。制御部111は、生成した充放電命令に基づき交直変換機113を制御して、蓄電池112の充放電を行う。
【0014】
交直変換機113は、電力系統401と蓄電池112間を接続し、電力系統401側の交流電力と蓄電池112側の直流電力とを、双方向に変換する機能を有する。交直変換機113は、単一のAC/DCコンバータを含む構成でも良いし、AC/DCコンバータ、DC/DCコンバータ、AC/ACコンバータのうちの2種類以上のコンバータを任意に接続した構成でもよい。交直変換機113は、制御部111から提供される充放電命令に応じて、蓄電池112に放電指示又は充電指示を出力する。これにより、蓄電池112の充放電を行う。
【0015】
蓄電池112は、電気エネルギーを蓄積(充電)および放電可能な蓄電池である。蓄電池112に蓄積されている電力量を充電量又は電荷量と呼ぶ。
【0016】
蓄電池112は、1つ以上の電池盤を備え、各電池盤は、一例として、1つ以上の電池モジュールと、1つのBMU(Battery Management Unit:電池監視部)とを備える。各電池モジュールは、複数の単位電池(セル)を備える。
【0017】
蓄電池112は、交直変換機113から放電指示を受信した場合、セル群に蓄電している電力を交直変換機113に放電する。蓄電池112は、交直変換機113から充電指示を受信した場合、電力系統401から供給される電力をセル群に充電する。セル、電池モジュール、電池盤および蓄電池112は、それぞれいずれも、電気エネルギーを内部に蓄積する蓄電装置の一形態である。
【0018】
以下、蓄電池112の構成例について詳細に説明する。
【0019】
図2は、蓄電池112の構成例を示す図である。蓄電池112は、複数の電池盤11が並列に接続された電池アレイを含む。各電池盤11において、複数の電池モジュール12が直列に接続されている。各電池盤11は、BMU13を備えている。複数の電池モジュール12が並列に接続されてもよいし、複数の電池モジュール12が直並列に接続されてもよい。また、複数の電池盤が、直列または直並列に接続されていてもよい。BMU13は、蓄電池評価装置201と情報を送受信する通信部を備えていてもよい。当該通信部は、電池盤11の内部に配置されていても、電池盤11の外部に配置されていてもよい。
【0020】
図3は、各電池モジュール12の構成の一例を示す図である。電池モジュール12は、直並列に接続された複数のセル14を備える。複数のセル14が直列に接続された構成、並列に接続された構成、および直列と並列を組み合わせた構成も可能である。電池モジュール12がCMU(Cell Monitoring Unit:セル監視部)を備えていてもよい。各セル14は、充放電が可能な単位電池である。例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池などが挙げられる。
【0021】
各セル14に対して、電圧、電流、温度等のパラメータを計測する計測部(図示せず)が配置されている。同様に、各電池モジュール12に対して、電池モジュールの電圧、電流、温度等のパラメータを計測する計測部(図示せず)が配置されている。また、各電池盤11に対して、電池盤の電圧、電流、温度等のパラメータを計測する計測部(図示せず)が配置されている。また電池アレイに対して、電池アレイの電圧、電流、温度等のパラメータを計測する計測部(図示せず)が配置されている。ここでは、セル、電池モジュール、電池盤、および電池アレイのすべてに対して、電圧、電流、温度等を計測する計測部が配置されているとしたが、これらのうちの一部の種類にのみ配置されていてもよい。また、すべてのセルではなく、診断対象となる一部のセルにのみ計測部が配置されてもよい。このことは、セル以外の蓄電装置(電池モジュール、電池盤)についても同様である。また、各計測部は、電圧、電流、温度以外に、湿度など他のパラメータを計測してもよい。なお、計測部のサンプリング頻度は、充放電指令値の受信頻度により高くても、同じでもよい。
【0022】
蓄電池は、蓄電池に関する計測データを蓄電池評価装置201に送出する。計測データは、計測部により計測されたパラメータ(電圧、電流、温度等)および計測時刻を含む。計測時刻は、蓄電池112内又は蓄電システム101に時計を配置し、パラメータの取得時に当該時計の時刻を計測時刻として取得してもよい。なお、蓄電池評価装置201に時計を設け、蓄電池評価装置201が蓄電システム101から計測データを取得した時に、取得した計測データに、時計の時刻を関連づけてもよい。この場合、計測データに計測時刻を含めなくてもよい。また、本実施形態では、蓄電池112を評価対象とする例を示すが、ここでいう蓄電池112の評価とは、蓄電池112に含まれる電池セルすべての集合体を評価することであり、蓄電池に含まれる計測部や、セル監視部、コントローラを評価するのとは異なる。また、本実施形態は、セル単体から、セルが複数集まった集合が階層構造まで、計測値がある任意の階層に対して評価を行うことができる。本実施形態に係る蓄電装置の評価は、セル、電池モジュール(実際には電池モジュールに含まれるセルの集合体)、電池盤(実際には電池盤に含まれるセルの集合体)など、計測値のある電池セル集合単位を評価することに相当する。
【0023】
蓄電池評価装置201は、データ取得部211、データ記憶部212、時間区間選出部213、効率算出部214、クラスタリング部215、出力部216及び表示部217を備える。
【0024】
データ取得部211は、蓄電システム101から蓄電池の計測データを取得する。また、データ取得部211は、蓄電システム101の制御部111から充放電指令値(充放電の実行時刻が付加されているものとする)取得する。ここでいう充放電指令値は、制御部111がSCADAの充放電指令値と蓄電池112の充電量に基づき生成した充放電指令値(前述した充放電命令)に対応する。データ取得部211は、計測データ及び充放電指令値の取得を一定時間毎に行ってもよい。データ取得部211は、取得した計測データ及び充放電指令値をデータ記憶部212に格納する。
【0025】
データ記憶部212は、データ取得部211により取得された計測データ及び充放電指令値を含むデータを充放電履歴データとして内部に格納する。
【0026】
図4に、データ記憶部212に記憶された充放電履歴データの例を示す。時刻t1~tnまで、充放電指令値と、蓄電池の温度及び蓄電池の充電量が格納されている。時刻t1~tnはサンプル時刻に対応し、本実施形態では充放電指令値の実行時刻及びパラメータの計測時刻は一致するとする。
【0027】
P1,P2、・・・,Pnは充放電指令値である。P1、P2、・・・、Pnは符号付の数値である。一例として、正値は放電、負値は充電の指示を表すとするが、逆でもよい。
【0028】
Q1,Q2、・・・Qnは蓄電池112に蓄積されている電荷量(充電量)を表す。蓄電池112を放電すると、蓄電池112の充電量は減り、蓄電池112を充電すると蓄電池の充電量は増える。電力量を定格容量、すなわち劣化前の最大の充電量で除した割合をSOC(State of Charge)と呼ぶことにする。充電量をSOCで表してもよい。
【0029】
T1,T2、・・・Tnは、蓄電池112の温度を表す。
【0030】
例えば、時刻t2のデータは、充放電指令値P2、充電量Q2及び温度T2を含む。これは、充放電指令値P2の充放電が時刻t2で実行され、この結果、蓄電池112の充電量はQ2になり、またこのときの蓄電池112の温度がT2であることを意味する。他の時刻のデータも同様にして解釈される。
【0031】
時間区間選出部213は、データ記憶部212に格納されている充放電履歴データに基づき、充電量が閾値条件を満たす時刻を探索する。探索は、一例として、予め与えられた探索開始時刻から探索終了時刻までの時間範囲で行う。閾値条件は、一例として、充電量が閾値θに達することである。充電量が閾値θに達するとは、充電量が閾値θより大きい値から閾値θになる場合、充電量が閾値θより低い値から閾値θになる場合のいずれも含む。その他の例として、閾値を基準として一定の範囲(例えばθ-L以上かつθ+M以下の範囲)に充電量が入ること、つまり、一定の範囲外から一定の範囲内に充電量が入ることでもよい。閾値に基づく限り、ここで述べた以外の条件でもよい。
【0032】
以下では、閾値条件を、充電量が閾値θに達する場合を想定して説明を行う。この場合、充電量が閾値条件を満たす時刻は、一例として、充電量が閾値θになった時刻である。充電量が閾値θになった時刻がサンプル時刻に一致する場合は、サンプル時刻が、充電量が閾値θになった時刻である。充電量が閾値θになった時刻がサンプル時刻間の場合は、線形補間により閾値θになった時刻を算出することも可能である。または、充電量が閾値θになった直後(又は直前)のサンプル時刻を、充電量が閾値θになった時刻としてもよい。
【0033】
以下、図5及び図6を用いて、線形補間により充電量が閾値θになった時刻を特定する例を示す。
【0034】
図5に、時刻t(i)の充電量が閾値θよりも小さく、その次の時刻t(i+1)での充電量が閾値θよりも大きい場合の充放電履歴データの例を示す。充電量が閾値θになった時刻は、
t=(1-α)t(i)+αt(i+1)として算出できる。
また、α=(θ-Q(i))/(Q(i+1)-Q(i))である。
【0035】
図6に、横軸を時刻、縦軸を充電量とした座標系に、時刻t(i)とt(i+1)のデータをマッピングし、マッピングされた座標を通過する直線のグラフを記載した例を示す。この直線のグラフと、閾値θの直線とが交わる点の時刻が、充電量が閾値θになった時刻である。
【0036】
充電量が閾値θになった時刻における充放電指令値についても、線形補間により、
(1-α)P(i)+αP(i+1)として算出できる。
【0037】
同様に、充電量が閾値θになった時刻における温度についても、線形補間により、
(1-α)T(i)+αT(i+1)として算出できる。
【0038】
充電量が閾値θになった直後のサンプル時刻を、充電量が閾値θになった時刻とする場合、図5の例では、時刻t(i+1)が、充電量が閾値θになった時刻である。また、このときの充放電指令値及び温度は、P(i+1)及びT(i+1)である。
【0039】
閾値θの値は、予め与えられていてもよいし、予め与えられた閾値の値を調整したものでもよい。また、予め与えられた複数の閾値候補の中から選択することで、使用する閾値θを決定してもよい。
【0040】
時間区間選出部213は、探索により検出した時刻群を時間順に並べる。時間区間選出部213は、抽出条件を満たす時刻間の区間を、時間区間として選出する。時間区間は互いに重複しない(同じ区間を共有しない)とするが、重複を許容してもよい。
【0041】
ここで、抽出条件について具体的に説明する。第1時刻と第2時刻で、充電量Qが閾値条件を満たす時刻として特定されているとする。
【0042】
(第1の例)第1時刻と第2時刻間の時間差が、一定時間Δta以上である場合に、抽出条件が満たされる。この場合、第1時刻と第2時刻間の区間を、時間区間として選出する。時間差が一定時間Δta未満の場合は、抽出条件は満たされない。この場合、当該時間区間を選出しない。時間差としてデータサンプル数を用いてもよい。この場合、データサンプル数が所定値n以上である場合に、抽出条件が満たされ、所定値n未満の場合に、抽出条件が満たされない。
【0043】
(第2の例)第1時刻と第2時刻間の充放電指令値が0である時間帯の長さが一定時間Δtb以下である場合に抽出条件が満たされる。充放電指令値が0の場合としては、SCADA301からの充放電指令値が0であることにより制御部111が生成する充放電指令値(充放電命令値)も0であることがある。また、SCADA301からの充放電指令値が0ではないが、蓄電池112が満充電状態でこれ以上充電できない場合の充電指令、あるいは蓄電池112が完放電状態でこれ以上放電できない場合の放電指令に対して、制御部111が0の充放電指令値を生成する場合もある。このように充放電指令値が0である時間帯の長さが一定時間Δtb以下の場合に、第1時刻と第2時刻間の区間を、時間区間として選出する。一定時間Δtb以上の場合は、抽出条件は満たされない。この場合、当該時間区間を選出しない。
【0044】
(第3の例)第1時刻と第2時刻間の充電量の平均値μQと、閾値θとの差が所定値h以下である場合に抽出条件が満たされる。この場合、第1時刻と第2時刻間の区間を時間区間として選出する。所定値h未満の場合は、抽出条件は満たされない。この場合、当該時間区間を選出しない。
【0045】
(第4の例)
第1~第3の例の抽出条件を2つ以上組み合わせ、組み合わせた抽出条件が全て満たされた場合にのみ、第1時刻と第2時刻間の区間を時間区間として選出する。組み合わせた抽出条件のうちの少なくとも1つが満たされない場合は、第1時刻と第2時刻間の区間を選出しない。
【0046】
効率算出部214は、時間区間選出部213が選出した各時間区間について、放電指令値の総和と、充電指令値の総和とを計算する。効率算出部214は、放電指令値の総和と、充電指令値の総和との比により、充放電効率を評価指標として計算する。
【0047】
図7を用いて、充放電効率を計算する具体例を示す。図7は、ある充放電履歴データの一部を示す。充放電指令値の符号から、充放電指令値P1,P2,P4,P5,P6が放電指示であり、P3,P7,P8が充電指示である。充電量が閾値条件を満たした時刻としてt2,t5,t7が特定されている。これらのうち時刻t2とt7間の区間が抽出条件を満たすため、時間区間Aとして選出されている。時刻t5とt7間の区間は抽出条件を満たさないため、時間区間として選出されていない。
【0048】
この場合、時間区間Aにおいて放電指令値により指示された放電量の総和は、
|P2|(t2-t1)+|P4|(t4-t3)+|P5|(t5-t4)
である。
時間区間Aにおいて充電指令値により指示された充電量の総和は、
|P3|(t3-t2)+|P6|(t6-t5)+|P7|(t7-t6)である。
よって、時間区間Aの充放電効率rAは、以下の式で算出される。
充放電効率rA=
(|P2|(t2-t1)+|P4|(t4-t3)+|P5|(t5-t4))/(|P3|(t3-t2)+|P6|(t6-t5)+|P7|(t7-t6))
【0049】
充放電効率rAが大きいほど、蓄電池の使用効率が高いことを意味する。
【0050】
図8に、充放電履歴データの他の例を示す。時刻t1~t8までのデータは、図7と同じある。図8の充放電履歴データでは、図7のデータに加えて、時刻t9~t22のデータが含まれる。t13~t15では充放電が指示されていない(充放電指令値が0)。充電量が閾値条件を満たす時刻として、時刻t2,t5,t7に加えて、時刻t11,t16,t21が検出されている。これらの時刻に基づき、時間区間A(t2~t7)、時間区間B(t7~t11)、時間区間C(t16~t21)が、抽出条件を満たすとして選出されている。
【0051】
時間区間Aについては、前述した計算方法で充放電効率rAを算出する。時間区間B及び時間区間Cについても時間区間Aと同様の計算方法で、充放電効率rB及び充放電効率rCを算出する。
【0052】
図9に、図8の充放電履歴データを、横軸を時刻、縦軸を充電量とする座標系に展開してグラフを表示した例を示す。グラフが閾値θと交わる時刻が、充電量が閾値条件を満たした時刻に対応する。図8の充放電履歴データに対して特定された時間区間A、B、Cが記載されている。
【0053】
出力部216は、効率算出部214から得られる充放電効率を、時間区間を代表する時刻(代表時刻)と関連づけたデータを生成する。代表時刻は、一例として、充放電効率を算出する元となった時間区間の終了時刻である。当該データは、例えば(代表時刻、充放電効率)として表される。出力部216は、当該データを、時刻と充放電効率を軸とする座標系にプロットする。表示部217は、座標系にプロットされたデータの集合、すなわち充放電効率の推移データを画面に表示する。なお、当該データを出力部216が生成する代わりに、後述するクラスタリング部215が生成して、生成したデータを後述のクラスタ識別情報又はクラスタ特徴情報を付加して出力部216に提供してもよい。
【0054】
図8の充放電履歴データの場合、出力部216は、時間区間A、B、Cに対して計算された充放電効率rA,rB,rCを、それぞれの代表時刻tA,tB,tCと関連づけることにより、データ(tA,rA),(tB,rB),(tC,rC)を生成する。出力部216は、これらのデータを、時刻及び充放電効率を軸とする座標系にプロットする。
【0055】
図10に、これらのデータを、時刻及び充放電効率を軸とする座標系にプロットした例を示す。tA,tB,tCは、充放電効率rA,rB,rCを算出した時間区間の終了時刻である。すなわち、tA,tB,tCは、それぞれt7,t11,t21である。
【0056】
充放電効率を代表時刻ではなく、蓄電池112を使用し始めてから当該時間区間の終了時刻までの累積放電量又は累積充電量と関連付けることにより、データを生成してもよい。この場合、当該データを、充放電効率と、蓄電池の使用開始時からの累積放電量又は累積充電量をそれぞれ軸とする座標系にプロットすればよい。
【0057】
クラスタリング部215は、上記の座標系にプロットされたデータの集合をクラスタリングして、データの集合を複数のクラスタに分割する。クラスタリングの手法は、一例として、一般的に知られた階層的方法、又は凝縮法を用いることができる。階層的方法は、点群をトップダウンに分割していく方法、凝縮法は、予め任意の方法で細分化したクラスタを統合していく方法である。あるいは、特開2006-350730号公報に開示されたクラスタリング方法を用いることもできる。この公報に記載のクラスタリング方法では人間の直感に近いクラスタリングを可能としている。本実施形態で用いるクラスタリングの手法は特定のものに限らず、任意の手法を用いることができる。
【0058】
図11は、クラスタリングの例を模式的に示す図である。この例では横軸は時刻であるが、横軸が累積放電量又は累積充電量の場合も可能である。図示の座標系に、13個のデータがプロットされている。クラスタリング部215がこのデータの集合に対してクラスタリングを行う。この結果、2つのクラスタC1,C2が生成されている。クラスタリング部215は、クラスタC1,C2毎に、クラスタを近似する関数(近似関数)を計算する。各クラスタについて計算された近似関数のグラフが表示されている。この例では、1次関数(直線)によりクラスタを近似しているが、より高次の関数によりクラスタを近似してもよい。この場合は、近似関数は曲線(曲線のグラフ)になり得る。各クラスタに属するデータ、又は各クラスタを近似する関数のグラフは、各クラスタの充放電効率の推移データに対応する。クラスタC1,C2を近似する一次関数の傾きはそれぞれa1,a2である。これらの傾きの情報が表示部217に表示されている。また、クラスタC1,C2を識別する情報(クラスタ識別情報)として、各クラスタを囲む枠を表示してもよいし、クラスタC1,C2に属するデータの点の色又は背景色をクラスタごとに変えてもよい。
【0059】
クラスタリング部215は、各クラスタの特徴情報(クラスタ特徴情報)を生成する。クラスタ特徴情報は、一例として、クラスタに属する各点(各データ)の情報から算出される。クラスタリング部215は、生成したクラスタ特徴情報を、プロットしたデータの集合と同じ画面又は別の画面に表示する。各クラスタには、各クラスタ内で共通した蓄電池の使用条件の下で取得されたデータ(例えば電池温度、充放電指令値又はSOCなどの要因が類似しているデータ)が属しているといえる。つまり、クラスタ特徴情報は、当該クラスタに属しているデータが得られたときに共通している蓄電池112の使用条件を代表的に表しているといえる。前述した傾きの情報及びクラスタを識別する情報(クラスタ識別情報)は、クラスタ特徴情報の一例であるが、その他のクラスタ特徴情報の生成例を示す。
【0060】
第1の例として、クラスタに属する各データについて、充放電指令値の標準偏差を計算する。つまり各データが算出される元となった時間区間に含まれる充放電指令値の標準偏差を計算する。そして、これらの標準偏差の統計情報(平均、中央値、最大値、最小値等)を、当該クラスタのクラスタ特徴情報とする。クラスタC1のクラスタ特徴情報として、充放電指令値の標準偏差の平均値、クラスタC2のクラスタ特徴情報として、充放電指令値の標準偏差の平均値がある。充放電指令値の標準偏差の代わりに、充放電指令値の平均値又は分散等、他の値を計算し、計算した値の統計情報を、クラスタ特徴情報としてもよい。図11ではクラスタ数は2であるが、クラスタ数は3以上でもよい。
【0061】
第2の例として、クラスタに属する各データについて、各データが算出される元となった時間区間に含まれる温度の標準偏差を計算する。そして、これらの標準偏差の統計情報(平均、中央値、最大値、最小値等)を、当該クラスタのクラスタ特徴情報とする。温度の標準偏差の代わりに、温度の平均値又は分散等、他の値を計算し、計算した値の統計情報を、クラスタ特徴情報としてもよい。
【0062】
第3の例として、クラスタに属する各データについて、各データが算出される元となった時間区間に含まれる充電量(電荷量)の標準偏差を計算する。そして、これらの標準偏差の統計情報(平均、中央値、最大値、最小値等)を、当該クラスタのクラスタ特徴情報とする。充電量の標準偏差の代わりに、充電量の平均値又は分散等、他の値を計算し、計算した値の統計情報を、クラスタ特徴情報としてもよい。
【0063】
第4の例として、クラスタに属する各データについて、各データが算出される元となった時間区間の区間長(時間長)の標準偏差を計算する。そして、これらの標準偏差の統計情報(平均、中央値、最大値、最小値等)を、当該クラスタのクラスタ特徴情報とする。区間長の標準偏差の代わりに、区間長の平均値又は分散等、他の値を計算し、計算した値の統計情報を、クラスタ特徴情報としてもよい。
【0064】
上に記載したクラスタ特徴情報は一例に過ぎず、充放電指示値、充電量、温度、時刻等に基づく情報であれば、他の情報でもよい。
【0065】
蓄電池評価装置201のオペレータは、表示部217に表示された画面を参照することで、充放電効率の良い蓄電池の使用条件を把握できる。図11の例では、クラスタC1の充放電効率は、クラスタC2に比べて高いことが分かる。またクラスタC1の近似直線の傾きa1が、クラスタC2の近似直線の傾きa2よりも緩やかであることから、クラスタC1の方が劣化の速度も緩やかであると判断できる。そこで、オペレータは、蓄電池112の使用条件として、クラスタ特徴情報又はこれに近似した条件に従って充放電を行うことで、充放電の効率を高めることができ、かつ蓄電池112の劣化の進行も抑制できると判断できる。
【0066】
このような蓄電池の使用条件を特定する情報を、オペレータの指示により蓄電池評価装置201又は別のユーザデバイスから電力系統401側のサーバに送信してもよい。サーバ側ではこの情報に基づき、充放電効率が高くなるように充放電指令値を生成してもよい。一例として、蓄電池評価装置201からサーバにクラスタC1のクラスタ特徴情報を送信し、サーバ側では、クラスタ特徴情報が満たされるように充放電指令値を生成してもよい。
【0067】
図12は、図10又は図11の例よりも長い測定期間に基づくデータをプロットした例を示す。横軸は時刻、縦軸は充放電効率である。
【0068】
図13は、図10又は図11の例よりも長い測定期間に基づくデータをプロットした例を示す。図11と異なり、横軸は累積放電量、縦軸は充放電効率である。
【0069】
図12又は図13では、図10又は図11よりも多数のデータがプロットされている。いずれの場合も、図11を用いて説明したのと同様の方法によってデータのクラスタリングを行うことにより、複数のクラスタを生成する。そして、生成された各クラスタについて、クラスタを近似する関数の計算、及び、クラスタ特徴情報の生成を行う。
【0070】
上述した実施形態では閾値θは1つであったが、閾値θの個数は、複数でもよい。複数の閾値θを用いた場合、閾値θごとに、データのプロット及びクラスタリング等を行う。この場合、クラスタ特徴情報の一部として、閾値θの値を含めて、表示部217に表示してもよい。これにより、オペレータは、閾値θと充放電効率との関係の傾向も把握することができる。
【0071】
図14に、閾値θとして2つの閾値θ1とθ2を使った場合に表示される画面の例を模式的に示す。閾値θ1を用いた場合にクラスタC1,C2が生成され、閾値θ2を用いた場合にクラスタC3,C4が生成されている。なお、図14では近似直線の傾き等、その他の情報の表示は省略している。
【0072】
図15は、本実施形態に係る蓄電池評価装置201の動作の一例のフローチャートである。
【0073】
ステップS1において、データ取得部211が充放電指令値及び計測データ(電池温度、温、計測時刻等)を取得し、取得し充放電指令値及び計測データを充放電履歴データとしてデータ記憶部212に格納する。
【0074】
ステップS2において、時間区間選出部213が、充放電履歴データにおいて閾値条件を満たす時刻を検出する。時間区間選出部213が、検出した時刻に基づき、抽出条件を満たす時刻間の区間を時間区間として選出する。
【0075】
ステップS3において、効率算出部214は、選出した時間区間に対して充放電効率を計算する。
【0076】
ステップS4において、クラスタリング部215は、充放電効率と、時間区間の代表時刻(あるいは累積放電量、累積充電量)とを含むデータをクラスタリングして、複数のクラスタを生成する。クラスタリング部215は、各クラスタを近似する関数の計算、及び、クラスタ特徴情報の生成を行う。
【0077】
ステップS5において、出力部216は、クラスタリングされたデータを座標系にマッピングし、マッピングされたデータを表示部217に出力する。また、クラスタ特徴情報、近似関数のグラフ、各クラスタを近似する直線の傾きの情報等も、表示部217に出力する。表示部217は、出力部216から入力された各種の情報を画面に表示する。なお、座標系へのデータのマッピングと、データのクラスタリングの順序はどちらが先に行われてもよい。
【0078】
本実施形態によれば、通常稼働している蓄電システムから受信した計測データ及び充放電指令値に基づき、充電量が閾値条件を満たす時刻を特定し、抽出条件を満たす時刻間を時間区間として選出する。選出した時間区間ごとに充放電効率を評価指標として算出し、充放電効率をクラスタリングする。各クラスタの特徴情報を比較することで、充放電効率の良い蓄電池の使用条件(例えば電池温度、充放電指令値又はSOCなどの条件)を評価できる。また、通常稼働している蓄電システムから得られる計測データを利用するため、蓄電システムの評価のために、蓄電システムをオフラインにする必要はなく、特殊な充放電パターンの充放電を実行させる必要もない。充放電効率の変化を時間、累積放電量又は累積充電量を軸とする座標系にプロットすることで、蓄電池の健全性の時間変化を可視化できる。
【0079】
(変形例1)
充放電効率を、時間区間を代表する温度(代表温度)により補正してもよい。代表温度は、例えば、時間区間の平均温度、最高温度、最低温度等である。一般に蓄電池の内部抵抗は、電池温度が高くなると低くなる傾向がある。このため、稼働時の電池温度が高いと、温度が低い場合に比べて、算出される充放電効率が高くなることがある。そこで、予めある基準温度を決めておき、基準温度より低い場合は、充放電効率を高くなるように充放電効率を補正し、基準温度より高い場合は、充放電効率が低くなるように充放電効率を補正する。このために、事前に、温度と充放電効率との関係を試験又はシミュレーション等により取得しておく。そして、この関係を利用して、基準温度の充放電効率を基準として、充放電効率を正規化(補正)する。例えば、温度及び充放電効率を入力変数とし、補正された温度を出力変数とする式を作成しておく。この式に代表温度及び充放電効率を入力することで、充放電効率を補正する。
【0080】
図16に、図12の各点の充放電効率を代表温度に応じて補正し、補正した充放電効率をマッピングした例を示す。また、図17に、図13の各点の充放電効率を代表温度に応じて補正し、補正した充放電効率をマッピングした例を示す。
【0081】
充放電効率を補正した後の処理は、上述した実施形態と同様である。すなわち、補正した充放電指令値を代表時刻と関連づけたデータを生成し、データを座標系にマッピング及びクラスタリング等する。またクラスタを近似する関数を計算する。また、クラスタ特徴情報の生成を行う。
【0082】
(変形例2)
閾値θを決定する方法を示す。一例として、閾値θは、蓄電池の定格容量の所定割合の値とする。例えば、蓄電池の定格容量の1/2を閾値θとする。この場合、充電量をSOCで表すと、閾値θは50%となる。
【0083】
他の方法として、充電量の分布を作成し、作成した分布に基づき、閾値θを決定してもよい。
【0084】
図18は、探索開始時刻から探索終了時刻までの間の充電量Qのヒストグラムを模式的に示す。仮に閾値がヒストグラムの上限値より大きいθzである場合、充電量がこの閾値θzに達することはないから、閾値条件を満たす時刻を検出できない。従って、時間区間の選出もできない。そこで、ヒストグラムの上限と下限の間に閾値を設定する。例えば、図示のθx又はθy又はこれらの両方を設定する。ヒストグラムの中心又はその近くに閾値を設定することで、多くの時間区間を選出することが期待される。これにより、より多くの時間区間について充放電効率を計算でき、クラスタリングのためのサンプル数を増やすことができる。複数の閾値を設定した場合、閾値ごとに、閾値条件を満たす時刻の検出、時間区間の選出、充放電効率の計算、マッピング、クラスタリング、クラスタ特徴情報の生成等を行う。
【0085】
図19は、本発明の実施形態に係る蓄電池評価装置のハードウェア構成例を示す。図19のハードウェア構成はコンピュータ150として構成される。コンピュータ150は、CPU151、入力インタフェース152、表示装置153、通信装置154、主記憶装置155、外部記憶装置156を備え、これらはバス157により相互に通信可能に接続される。
【0086】
入力インタフェース152は、蓄電池で計測された計測データを配線等を介して取得する。通信装置154は、無線または有線の通信手段を含み、蓄電システム101と有線または無線の通信を行う。通信装置154を介して、計測データを取得してもよい。入力インタフェース152及び通信装置154は、それぞれ別個の集積回路等の回路で構成されていてもよいし、単一の集積回路等の回路で構成されてもよい。
【0087】
外部記憶装置156は、例えば、HDD、SSD、メモリ装置、CD-R、CD-RW、DVD-RAM、DVD-R等の記憶媒体等を含む。外部記憶装置156は、蓄電池評価装置の各処理部の機能を、プロセッサであるCPU151に実行させるためのプログラムを記憶している。また、データ記憶部212も、外部記憶装置156に含まれる。ここでは、外部記憶装置156を1つのみ示しているが、複数存在しても構わない。
【0088】
主記憶装置155は、CPU151による制御の下で、外部記憶装置156に記憶された制御プログラムを展開し、当該プログラムの実行時に必要なデータ、当該プログラムの実行により生じたデータ等を記憶する。主記憶装置155は、例えば揮発性メモリ(DRAM、SRAM等)または不揮発性メモリ(NANDフラッシュメモリ、MRAM等)など、任意のメモリまたは記憶部を含む。主記憶装置155に展開された制御プログラムがCPU151により実行されることで、蓄電池評価装置201の各処理部の機能が実行される。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
101:蓄電システム
111:制御部
112:蓄電池
113:交直変換機
201:蓄電池評価装置
211:データ取得部
212:データ記憶部
213:時間区間選出部
214:効率算出部
215:クラスタリング部
216:出力部
217:表示部
301:SCADA
401:電力系統
151:CPU
152:入力インタフェース
153:表示装置
154:通信装置
155:主記憶装置
156:外部記憶装置
157:バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19