(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】スイッチシステム
(51)【国際特許分類】
H01H 9/54 20060101AFI20220629BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220629BHJP
H02H 9/02 20060101ALI20220629BHJP
H01H 47/00 20060101ALI20220629BHJP
B60L 3/00 20190101ALN20220629BHJP
【FI】
H01H9/54 A
H02J7/00 P
H02J7/00 302A
H02H9/02 D
H01H47/00 K
B60L3/00 H
(21)【出願番号】P 2019021787
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 陽
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-185582(JP,A)
【文献】特開2002-163968(JP,A)
【文献】特開2014-56679(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0212627(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/54
H02J 7/00
H02H 9/02
H01H 47/00
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点をオンすることでバッテリと車載機器とを電気的に接続し、前記接点をオフすることで前記バッテリと前記車載機器との間を電気的に切り離すシステムメインリレーと、
前記システムメインリレーの前記接点の温度を検出する温度検出部と、
前記システムメインリレーの前記接点の温度が所定温度以上または温度の上昇量が所定上昇量以上となった場合、所定タイミングにおいて前記システムメインリレーに前記接点のオンオフを繰り返させる制御部と、
を備えるスイッチシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記接点のオンオフの繰り返し回数を、前記温度検出部で検出された温度に基づいて決定する請求項1に記載のスイッチシステム。
【請求項3】
前記システムメインリレーは、前記バッテリの第1電極に接続される第1システムメインリレーと、前記バッテリの第2電極に接続される第2システムメインリレーとを有し、
前記制御部は、前記第1システムメインリレーおよび前記第2システムメインリレーの一方について前記接点のオンオフの繰り返しを行う場合、他方をオフ状態に維持させる請求項1または2に記載のスイッチシステム。
【請求項4】
抵抗器と、
前記抵抗器に直列接続されるプリチャージリレーと、
をさらに備え、
前記抵抗器および前記プリチャージリレーは、前記システムメインリレーに並列接続され、
前記制御部は、前記所定タイミングにおいて前記接点のオンオフの繰り返しを行う前に、前記プリチャージリレーをオンさせる請求項1または2に記載のスイッチシステム。
【請求項5】
前記制御部は、前記接点のオンオフの繰り返しを行う期間中、前記プリチャージリレーをオン状態で維持させる請求項4に記載のスイッチシステム。
【請求項6】
前記所定タイミングは、前記スイッチシステムが適用される車両がイグニッションオフされたとき、または、前記バッテリの充電が完了したときである請求項1から5のいずれか1項に記載のスイッチシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリと車載機器との電気的な接続を切り替えるスイッチシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、インバータなどの車載機器がコンタクタ(リレー)を介して高電圧のバッテリと接続される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リレーの接点には、接点間の接触抵抗による抵抗値がある。接点間にアーク放電が生じたり、経年によりリレーが劣化すると、接点の抵抗値が増加することがある。接点の抵抗値が増加すると、接点間に流れる電流によって接点が発熱し、接点の温度が高くなる。接点の温度が過度に高くなると、接点間が溶着するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、接点における増加した抵抗値を減少させることが可能なスイッチシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のスイッチシステムは、接点をオンすることでバッテリと車載機器とを電気的に接続し、接点をオフすることでバッテリと車載機器との間を電気的に切り離すシステムメインリレーと、システムメインリレーの接点の温度を検出する温度検出部と、システムメインリレーの接点の温度が所定温度以上または温度の上昇量が所定上昇量以上となった場合、所定タイミングにおいてシステムメインリレーに接点のオンオフを繰り返させる制御部と、を備える。
【0007】
また、制御部は、接点のオンオフの繰り返し回数を、温度検出部で検出された温度に基づいて決定してもよい。
【0008】
また、システムメインリレーは、バッテリの第1電極に接続される第1システムメインリレーと、バッテリの第2電極に接続される第2システムメインリレーとを有し、制御部は、第1システムメインリレーおよび第2システムメインリレーの一方について接点のオンオフの繰り返しを行う場合、他方をオフ状態に維持させてもよい。
【0009】
また、抵抗器と、抵抗器に直列接続されるプリチャージリレーと、をさらに備え、抵抗器およびプリチャージリレーは、システムメインリレーに並列接続され、制御部は、所定タイミングにおいて接点のオンオフの繰り返しを行う前に、プリチャージリレーをオンさせてもよい。
【0010】
また、制御部は、接点のオンオフの繰り返しを行う期間中、プリチャージリレーをオン状態で維持させてもよい。
【0011】
また、所定タイミングは、スイッチシステムが適用される車両がイグニッションオフされたとき、または、バッテリの充電が完了したときであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、接点における増加した抵抗値を減少させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態によるスイッチシステムの構成を示す概略図である。
【
図2】第1システムメインリレーの構成を示す概略図である。
【
図3】オンオフ回数と接点の抵抗値との関係を示す図である。
【
図4】走行時の制御部の動作を説明するフローチャートである。
【
図5】温度判定制御の流れを説明するフローチャートである。
【
図6】抵抗値回復制御の流れを説明するフローチャートである。
【
図7】充電時の制御部の動作を説明するフローチャートである。
【
図8】第2実施形態による抵抗値回復制御の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態によるスイッチシステム1の構成を示す概略図である。
図1では、電気的な接続を実線で示し、制御信号の流れの方向を破線の矢印で示している。スイッチシステム1は、車両2に適用される。車両2は、例えば、モータ(図示略)を駆動源とした電気自動車である。なお、車両2は、モータと並行してエンジンが設けられたハイブリッド電気自動車であってもよい。以下では、第1実施形態に関係する構成や処理について詳細に説明し、第1実施形態と無関係の構成や処理については説明を省略する。
【0016】
スイッチシステム1は、バッテリ10、車載機器12、第1システムメインリレー14、第2システムメインリレー16、プリチャージリレー18、第1充電メインリレー20、第2充電メインリレー22、充電プリチャージリレー24、電流検出部26、コンデンサ28、第1温度検出部30、第2温度検出部32、抵抗器34、コンデンサ36、充電器38、スタートスイッチ40、制御部42を含む。
【0017】
以後、第1システムメインリレー14および第2システムメインリレー16を総称して、単にシステムメインリレーと呼ぶ場合がある。また、第1温度検出部30および第2温度検出部32を総称して温度検出部と呼ぶ場合がある。
【0018】
バッテリ10は、例えば、リチウムイオン電池などの二次電池である。バッテリ10は、後述する充電器38から供給された電力を充電(蓄電)する。また、バッテリ10は、車両2の加速時などにおいてモータに電力を供給する。バッテリ10は、モータに電力を供給するため、電圧が比較的に高電圧(例えば、200Vなど)となっている。また、モータは、車両2の減速時などにおいて発電機として機能し、発電した電力をバッテリ10に供給してもよい。
【0019】
車載機器12は、バッテリ10に接続され、バッテリ10との間で電力の授受を行う。車載機器12は、例えば、バッテリ10の直流電力を所望の周波数の交流電力に変換してモータに供給する駆動用のインバータである。なお、車載機器12は、駆動用のインバータに限らない。例えば、車載機器12は、車室内に冷風または暖風を送出するための圧縮媒体を生成するエアコンプレッサなどであってもよい。
【0020】
第1システムメインリレー14、第2システムメインリレー16、プリチャージリレー18、第1充電メインリレー20、第2充電メインリレー22、充電プリチャージリレー24は、同様の構成となっている。このため、第1システムメインリレー14の構成を説明し、その他のリレーの説明を省略する。
【0021】
図2は、第1システムメインリレー14の構成を示す概略図である。第1システムメインリレー14は、筐体50、第1固定接点52、第2固定接点54、可動接点56、電磁コイル58、第1端子60、第2端子62を含む。第1固定接点52、第2固定接点54および可動接点56を総称して接点64と呼ぶ場合がある。
【0022】
筐体50は、中空の箱状に形成される。第1固定接点52、第2固定接点54、可動接点56、電磁コイル58は、筐体50内に収容される。第1固定接点52、第2固定接点54および可動接点56は、金属で構成される。第1固定接点52および第2固定接点54は、互いに離隔した状態で、筐体50に固定される。第1固定接点52および第2固定接点54の形状は、
図2では球状に示されているが、球状に限らず、例えば、平板状であってもよい。
【0023】
第1端子60および第2端子62は、筐体50外に露出している。第1端子60は、第1固定接点52に繋がっており、第2端子62は、第2固定接点54に繋がっている。
【0024】
可動接点56は、例えば、平板状に形成される。可動接点56は、第1固定接点52から第2固定接点54に亘って延在する。可動接点56は、第1固定接点52および第2固定接点54に対向配置される。可動接点56は、第1固定接点52および第2固定接点54の対向方向に移動可能となっている。
【0025】
電磁コイル58は、電圧が印加されて電流が流れると、周囲に磁界を発生させ、電磁石として機能する。可動接点56は、電磁コイル58に電流が流れていない状態で、第1固定接点52および第2固定接点54から離隔している。この場合、第1固定接点52と可動接点56との間、および、第2固定接点54と可動接点56との間が電気的に切り離される(オフ状態となっている)。つまり、第1固定接点52と第2固定接点54との間が電気的に切り離される。
【0026】
電磁コイル58に所定電流以上の電流が流れると、電磁コイル58は、可動接点56を吸引する。そうすると、可動接点56は、第1固定接点52および第2固定接点54に向かって移動し、第1固定接点52および第2固定接点54に接触する。この場合、第1固定接点52と可動接点56との間、および、第2固定接点54と可動接点56との間が電気的に接続される(オン状態となる)。つまり、第1固定接点52と第2固定接点54との間が電気的に接続される。
【0027】
このように、第1システムメインリレー14は、接点64を電磁的にオンオフ(開閉)するノーマルオープンのリレースイッチ(具体的には、コンタクタなど)である。なお、第2システムメインリレー16等の他のリレーも同様に機能する。
【0028】
図1に戻って、第1システムメインリレー14の一端(例えば、第1端子60)は、電流検出部26を介してバッテリ10の第1電極70に接続される。第1電極70は、例えば、正極である。電流検出部26は、バッテリ10の入出力電流を検出する。第1システムメインリレー14の他端(例えば、第2端子62)は、車載機器12に接続される。
【0029】
第2システムメインリレー16の一端(例えば、第1端子60)は、バッテリ10の第2電極72に接続される。第2電極72は、例えば、負極である。第2システムメインリレー16の他端(例えば、第2端子62)は、車載機器12に接続される。
【0030】
つまり、システムメインリレーは、接点64をオンする(閉じる)ことでバッテリ10と車載機器12とを電気的に接続する。また、システムメインリレーは、接点64をオフする(開く)ことでバッテリ10と車載機器12との間を電気的に切り離す。
【0031】
なお、バッテリ10は、第1電極70が正極であり、第2電極72が負極である態様に限らず、第1電極70が負極であり、第2電極72が正極であってもよい。
【0032】
コンデンサ28の一方の電極は、第1システムメインリレー14と車載機器12とを繋ぐ線に接続される。コンデンサ28の他方の電極は、第2システムメインリレー16と車載機器12とを繋ぐ線に接続される。換言すると、コンデンサ28は、車載機器12に並列接続される。コンデンサ28は、車載機器12におけるバッテリ10側端の電圧を平滑にさせる。
【0033】
第1温度検出部30は、例えば、第1システムメインリレー14における第1端子60および第2端子62のいずれか一方に設けられる。第1温度検出部30は、第1端子60および第2端子62を通じて、第1システムメインリレー14における電気的な接続を切り替える接点64の温度を検出する。
【0034】
なお、第1温度検出部30は、第1端子60および第2端子62に設けられる態様に限らず、第1システムメインリレー14の第1固定接点52および第2固定接点54に直接的に設けられてもよい。つまり、第1温度検出部30は、第1システムメインリレー14の接点64の温度を検出可能であればよい。また、第1温度検出部30は、第1システムメインリレー14の接点64自体の温度に限らず、第1システムメインリレー14の接点64の近傍の温度を検出してもよい。
【0035】
第2温度検出部32は、例えば、第2システムメインリレー16における第1端子60および第2端子62のいずれか一方に設けられる。第2温度検出部32は、第1端子60および第2端子62を通じて、第2システムメインリレー16における電気的な接続を切り替える接点64の温度を検出する。
【0036】
なお、第2温度検出部32は、第1端子60および第2端子62に設けられる態様に限らず、第2システムメインリレー16の第1固定接点52および第2固定接点54に直接的に設けられてもよい。つまり、第2温度検出部32は、第2システムメインリレー16の接点64の温度を検出可能であればよい。また、第2温度検出部32は、第2システムメインリレー16の接点64自体の温度に限らず、第2システムメインリレー16の接点64近傍の温度を検出してもよい。
【0037】
また、スイッチシステム1では、第1温度検出部30と第2温度検出部32との両方が設けられている。しかし、スイッチシステム1では、少なくとも第1温度検出部30および第2温度検出部32のいずれか一方が設けられていればよく、両方設けられる態様に限らない。
【0038】
抵抗器34の一端は、第2システムメインリレー16のバッテリ10側端に接続される。抵抗器34の他端は、プリチャージリレー18の一端に接続される。プリチャージリレー18の他端は、第2システムメインリレー16の車載機器12側端に接続される。つまり、抵抗器34とプリチャージリレー18とは、直列接続されており、直列ユニット74を形成する。また、直列ユニット74は、第2システムメインリレー16に並列接続される。
【0039】
第1充電メインリレー20の一端は、第1システムメインリレー14のバッテリ10側端に接続される。換言すると、第1充電メインリレー20の一端は、電流検出部26を介してバッテリ10の第1電極70に接続される。第1充電メインリレー20の他端は、充電器38に接続される。
【0040】
第2充電メインリレー22の一端は、第2システムメインリレー16のバッテリ10側端に接続される。換言すると、第2充電メインリレー22の一端は、バッテリ10の第2電極72に接続される。第2充電メインリレー22の他端は、充電器38に接続される。
【0041】
コンデンサ36の一方の電極は、第1充電メインリレー20と充電器38とを繋ぐ線に接続される。コンデンサ36の他方の極は、第2充電メインリレー22と充電器38とを繋ぐ線に接続される。換言すると、コンデンサ36は、充電器38に並列接続される。コンデンサ36は、充電器38のバッテリ10側端(出力端)の電圧を平滑にさせる。
【0042】
充電プリチャージリレー24の一端は、抵抗器34のプリチャージリレー18側端(抵抗器34とプリチャージリレー18との接続ノード)に接続される。充電プリチャージリレー24の他端は、第2充電メインリレー22の充電器38側端に接続される。つまり、抵抗器34と充電プリチャージリレー24とは、直列接続されており、直列ユニット76を形成する。直列ユニット76は、第2充電メインリレー22に並列接続される。
【0043】
抵抗器34は、コンデンサ28の充電(プリチャージ)時およびコンデンサ36の充電(プリチャージ)時に利用される。抵抗器34は、コンデンサ28、36のプリチャージ時の突入電流を制限するための所定の抵抗値を有する。抵抗器34の抵抗値は、バッテリ10の電圧、コンデンサ28のプリチャージ時間、コンデンサ36のプリチャージ時間等から設定される。
【0044】
第1システムメインリレー14、第2システムメインリレー16、プリチャージリレー18、第1充電メインリレー20、第2充電メインリレー22、充電プリチャージリレー24、第1温度検出部30、第2温度検出部32および抵抗器34は、ジャンクションボックス78に収容される。ジャンクションボックス78は、耐久性の高い容器で形成される。このため、ジャンクションボックス78に収容されるシステムメインリレー等は、車両2に衝突事故などが生じても、安全な状態に維持される。
【0045】
充電器38は、車両2の外部から電力を受電し、受電した電力を、第1充電メインリレー20および第2充電メインリレー22を通じてバッテリ10に供給する。充電器38は、例えば、充電スタンドの充電プラグが接続されて、その充電プラグを介して電力の供給を受ける。また、充電器38は、車両2の停止中または走行中に、路面に設置された給電装置から非接触で電力の供給を受けてもよい。
【0046】
充電器38は、外部からの充電を要求する充電要求信号を制御部42に送信する。例えば、充電器38は、充電プラグが接続されていないときや、非接触で受電可能なエリアに車両2が存在しないときに、充電要求信号「オフ」を制御部に送信する。一方、充電器38は、充電プラグが接続されたときや、非接触で受電可能なエリアに車両2が進入したときに、充電要求信号「オン」を送信する。
【0047】
スタートスイッチ40は、車両2の搭乗者によるイグニッションオン(IG-ON)操作およびイグニッションオフ(IG-OFF)操作を受け付ける。IG-ON操作が行われると、スタートスイッチ40は、イグニッションオンを示すIG-ON信号を制御部42に送信する。また、IG-OFF操作が行われると、スタートスイッチ40は、イグニッションオフを示すIG-OFF信号を制御部42に送信する。
【0048】
制御部42は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路から構成される。制御部42は、IG-ON信号、IG-OFF信号および充電要求信号などに基づいて、各リレー(第1システムメインリレー14、第2システムメインリレー16、プリチャージリレー18、第1充電メインリレー20、第2充電メインリレー22、充電プリチャージリレー24)のオンオフ(開閉)を制御する。
【0049】
ところで、システムメインリレーの接点64間にアーク放電が生じたり、システムメインリレーが経年劣化すると、システムメインリレーの接点64の表面が荒れることがある。
【0050】
例えば、システムメインリレーがオン状態となっており、システムメインリレーを通じてバッテリ10と車載機器12との間で電流が流れているとする。この状態で、インバータ(車載機器12)に異常が生じると、制御部42は、システムメインリレーに電流が流れていたとしても、システムメインリレーをオフさせる。電流が流れている状態でシステムメインリレーがオフ(瞬断)されると、システムメインリレーの接点64間にアーク放電が生じることがある。
【0051】
アーク放電が生じると、接点64の表面に局所的なアーク痕が形成されることがある。アーク痕は、例えば、ミクロンオーダーの微細な窪みである。アーク痕は、アーク放電によって接点64の表面が局所的に高温となり、高温となった表面の材料が僅かに蒸発することで形成される。
【0052】
蒸発した接点64の材料は、例えば、ミクロンオーダーの微粒子である。蒸発した接点64の材料は、接点64間で拡散し、接点64(例えば、アーク痕が形成された接点64とは反対側の接点64)の表面に広がって付着する。そうすると、このような付着物が付着した分だけ、接点64の表面が局所的に突出する。換言すると、この付着物は、接点64における接触面を局所的に突出させる。アーク放電が生じると、このようにして接点64の表面が荒れる。
【0053】
また、システムメインリレーを使用し続けると、システムメインリレーを流れる電流による熱疲労などによって接点64の表面が局所的に歪むことがある。システムメインリレーが経年劣化すると、このようにして接点64の表面が荒れる。
【0054】
接点64の表面が荒れると、接点64間の接触抵抗による抵抗値が増加することがある。例えば、接触面を突出させる付着物を介して接点64同士が接触するため、接点64の抵抗値が増加する。
【0055】
接点64の抵抗値が増加すると、接点64間に流れる電流によって接点64が発熱し、接点64の温度が高くなる。上述のように、バッテリ10の電圧が高電圧であるため、システムメインリレーを流れる電流は、比較的大きい。このため、システムメインリレーでは、特に、接点64の温度が高くなり易い。
【0056】
接点64の温度が高くなり過ぎると、接点64間が溶着するおそれがある。接点64間が溶着すると、バッテリ10と車載機器12とを電気的に切り離すことができなくなる。また、接点64間が溶着すると、そのシステムメインリレーを交換修理しなければならない。
【0057】
そこで、スイッチシステム1の制御部42は、システムメインリレーの接点64の温度の所定時間内における上昇量が所定上昇量以上となった場合(すなわち、システムメインリレーの接点64の抵抗値が所定抵抗値以上となった場合)、所定タイミングにおいてシステムメインリレーに接点64のオンオフを繰り返させる。
【0058】
具体的には、制御部42は、第1温度検出部30で検出された温度、および、第2温度検出部32で検出された温度を取得する。制御部42は、第1温度検出部30による温度の所定時間内における上昇量および第2温度検出部32による温度の所定時間内における上昇量のいずれか一方または双方が、所定上昇量以上となった場合、システムメインリレーの接点64の温度の所定時間内における上昇量が所定上昇量以上となったと判断する。所定上昇量は、例えば、30℃などに設定され、接点64に100Aの電流を10秒流したとき第1温度検出部30による温度が60℃から90℃に上昇した場合に所定上昇量以上になったと判断されるが、この例に限らない。
【0059】
また、バッテリ10の入出力電流が安定していない場合、システムメインリレーの接点64の温度が正確に検出されない可能性がある。このため、制御部42は、バッテリ10の入出力電流が安定している場合のシステムメインリレーの接点64の温度に基づいて、システムメインリレーの接点64の温度についての判断を行う。
【0060】
具体的には、制御部42は、電流検出部26で検出された電流値を、所定期間に亘って連続的に取得する。制御部42は、電流検出部26による電流値が所定期間に亘って安定しているか否かを判断する。所定期間は、例えば、10秒などに設定されるが、この例に限らない。制御部42は、取得した所定期間分の電流値の平均値を導出し、平均値を中心とした電流値の偏差を、各時刻の電流値について導出する。制御部42は、電流値の偏差が所定期間に亘って所定偏差以内であれば、バッテリ10の入出力電流が安定していると判断する。一方、制御部42は、所定期間中、電流値の偏差が一度でも所定偏差を超えた場合、バッテリ10の入出力電流が安定していないと判断する。
【0061】
なお、制御部42は、バッテリ10の入出力電流が安定していないと判断した場合には、システムメインリレーの接点64の温度についての判断を行わない。
【0062】
このような接点64の温度の判断は、システムメインリレーに電流が流れる状態で行われる。具体的には、接点64の温度の判断は、車両2がIG-ON状態中(走行可能状態中)、および、充電器38を通じたバッテリ10の充電中に行われる。そして、接点64の温度の所定時間内における上昇量が所定上昇量以上であると判断されると、制御部42は、所定タイミングにおいてシステムメインリレーに接点64のオンオフを繰り返させる。
【0063】
接点64の温度の判断が車両2のIG-ON状態中に行われた場合、所定タイミングは、車両2のIG-OFF時である。また、接点64の温度の判断が充電中に行われた場合、所定タイミングは、充電完了時である。なお、所定タイミングは、IG-OFF時および充電完了時に限らず、例えば、ユーザによって指示された時であってもよい。
【0064】
制御部42は、システムメインリレーの接点64のオンオフの繰り返し回数を、温度検出部で検出された温度の所定時間内における上昇量に基づいて決定する。以下、システムメインリレーの接点64のオンオフの繰り返し回数を、オンオフ回数と呼ぶ。オンオフ回数は、オンおよびオフそれぞれ1回ずつの1周期で1回とする。
【0065】
制御部42は、例えば、第1温度検出部30による温度の所定時間内における上昇量、および、第2温度検出部32による温度の所定時間内における上昇量のうち高い方の温度(上昇量)に基づいて、オンオフ回数を決定する。制御部42は、温度の所定時間内における上昇量とオンオフ回数とが関連付けられたテーブルを参照して、オンオフ回数を決定する。なお、制御部42は、温度の所定時間内における上昇量とオンオフ回数とが関連付けた関係式を用いて、オンオフ回数を直接的に導出してもよい。
【0066】
温度の所定時間内における上昇量とオンオフ回数とは、例えば、温度の所定時間内における上昇量が高くなるほどオンオフ回数が増加するように関係付けられる。また、オンオフ回数は、温度に対して比例的に増加させてもよいし、2次関数的に増加させてもよい。
【0067】
接点64のオンオフの繰り返し周波数は、例えば、2~3Hzに設定されるが、この例に限らない。また、オンオフ回数は、例えば、10~1000回の間で温度に基づいて決定されるが、この例に限らない。
【0068】
なお、オンオフ回数は、システムメインリレーの接点64の温度に基づいて決定される態様に限らず、例えば、予め設定されていてもよい。
【0069】
制御部42は、温度によって決定されたオンオフ回数、または、予め設定されたオンオフ回数で、第1システムメインリレー14および第2システムメインリレー16の接点64をそれぞれ繰り返しオンオフさせる。
【0070】
なお、制御部42は、第1温度検出部30による温度に基づいたオンオフ回数で第1システムメインリレー14の接点64をオンオフさせ、第2温度検出部32による温度に基づいたオンオフ回数で第2システムメインリレー16の接点64をオンオフさせてもよい。
【0071】
システムメインリレーの接点64を繰り返しオンオフさせると、増加していた接点64の抵抗値が減少する。例えば、アーク放電によって接点64の表面に付着物が付着して抵抗値が増加していたとする。接点64を繰り返しオンオフさせると、接点64同士が互いに叩き付けられる。具体的には、第1固定接点52と可動接点56とが互いに叩き付けられ、第2固定接点54と可動接点56とが互いに叩き付けられる。そうすると、接点64の表面の付着物が、接点64間において扁平状に潰される。付着物が潰されると、付着物と接点64の表面との接触面積が増加する。つまり、接点64を繰り返しオンオフさせることで、接点64の表面を均すことができる。
【0072】
また、接点64の表面が局所的に歪んでいる場合などでも、接点64を繰り返しオンオフさせることで、接点64の表面を均すことができる。
【0073】
接点64の表面が均されると、接点の抵抗値が減少する。接点64の抵抗値が減少するということは、増加していた抵抗値が回復するということである。以後、システムメインリレーの接点64を繰り返しオンオフさせることを、単にシステムメインリレーのオンオフと呼ぶ場合がある。
【0074】
システムメインリレーのオンオフの際、制御部42は、第2システムメインリレー16をオフさせた状態で、第1システムメインリレー14の接点64を繰り返しオンオフさせる。第1システムメインリレー14のオンオフが終了した後、制御部42は、第1システムメインリレー14をオフさせた状態で、第2システムメインリレー16の接点64を繰り返しオンオフさせる。
【0075】
なお、制御部42は、第2システムメインリレー16のオンオフを第1システムメインリレー14のオンオフより先に行ってもよい。つまり、制御部42は、第1システムメインリレー14の接点64のオンオフの繰り返しタイミングと、第2システムメインリレー16の接点64のオンオフの繰り返しタイミングとを異ならせる。
【0076】
第1システムメインリレー14のオンオフのタイミングと第2システムメインリレー16のオンオフのタイミングが重ならないようにすると、バッテリ10と車載機器12(コンデンサ28)とを通電させずに、第1システムメインリレー14および第2システムメインリレー16をオンオフさせることができる。その結果、システムメインリレーのオンオフ期間中に、アーク放電が生じることを抑制できる。
【0077】
図3は、オンオフ回数と接点64の抵抗値との関係を示す図である。
図3において、丸印A1は、第1サンプルの実験結果を示し、四角印A2は、第2サンプルの実験結果を示している。また、実線B1は、丸印A1のデータを最小二乗法などで近似した線であり、一点鎖線B2は、四角印A2のデータを最小二乗法などで近似した線である。
【0078】
図3の実線B1および一点鎖線B2で示すように、システムメインリレーをオンオフさせることで、接点64の抵抗値を減少させることができる。また、
図2では、3万回近くまでオンオフを繰り返している。しかし、実際には、少なくとも複数回オンオフを繰り返すことで、接点64の抵抗値を減少させることができる。
【0079】
図4は、走行時の制御部42の動作を説明するフローチャートである。第1システムメインリレー14、第2システムメインリレー16、プリチャージリレー18、第1充電メインリレー20、第2充電メインリレー22、充電プリチャージリレー24は、初期状態においてオフ状態となっている。
【0080】
制御部42は、スタートスイッチ40からIG-ON信号を受信したか否かを判断する(S100)。IG-ON信号を受信していない場合(S100におけるNO)、制御部42は、IG-ON信号を受信するまで待機する。
【0081】
IG-ON信号を受信した場合(S100におけるYES)、制御部42は、第2システムメインリレー16をオフした状態で、第1システムメインリレー14およびプリチャージリレー18をオンさせて、コンデンサ28のプリチャージを行う(S110)。
【0082】
コンデンサ28のプリチャージが完了すると、コンデンサ28の電圧がバッテリ10の電圧と同程度となる。コンデンサ28のプリチャージが完了すると、制御部42は、第2システムメインリレー16をオンさせ、プリチャージリレー18をオフさせることで、車載機器12とバッテリ10とを電気的に接続させる(S120)。これにより、車両2は、走行が可能な状態となる。
【0083】
次に、制御部42は、スタートスイッチ40からIG-OFF信号を受信したか否かを判断する(S130)。
【0084】
IG-OFF信号を受信していない場合(S130におけるNO)、制御部42は、システムメインリレーの接点64の温度に関して判定する温度判定制御を行う(S140)。温度判定制御S140の流れについては、後述する。制御部42は、温度判定制御を行った後、ステップS130の処理に戻り、IG-OFF信号を受信したか否かを判断する。
【0085】
IG-OFF信号を受信した場合(S130におけるYES)、制御部42は、第1システムメインリレー14および第2システムメインリレー16をオフさせ、コンデンサ28を放電させる(S150)。
【0086】
次に、制御部42は、温度フラグがオンとなっているか否かを判断する(S160)。温度フラグは、システムメインリレーの接点64の温度の所定時間内における上昇量が所定上昇量以上であるか否かを示す。温度フラグは、温度判定制御において、温度の所定時間内における上昇量が所定上昇量以上であると判断された場合にオンとされる。温度フラグは、オフされるまでオン状態に維持される。
【0087】
温度フラグがオンとなっていない場合(S160におけるNO)、制御部42は、
図4の一連の処理を終了する。一方、温度フラグがオンとなっている場合(S160におけるYES)、制御部42は、システムメインリレーのオンオフを含む抵抗値回復制御を開始し(S170)、
図4の一連の処理を終了する。抵抗値回復制御の流れについては、後述する。
【0088】
図5は、温度判定制御S140の流れを説明するフローチャートである。制御部42は、バッテリ10の入出力電流が安定しているか否かを判断する(S200)。車両2の走行中では、モータの負荷が変化し易いため、バッテリ10の入出力電流が安定しないこともある。しかし、例えば、高速走行中などでは、モータの負荷の変化が小さく、バッテリ10の入出力電流が安定することがある。
【0089】
バッテリ10の入出力電流が安定していない場合(S200におけるNO)、制御部42は、
図5の一連の処理を終了する。すなわち、制御部42は、
図4のステップS130の処理に戻る。
【0090】
バッテリ10の入出力電流が安定している場合(S200におけるYES)、制御部42は、システムメインリレーの接点64の温度を取得する(S210)。具体的には、制御部42は、第1温度検出部30および第2温度検出部32から温度を取得する。
【0091】
次に、制御部42は、システムメインリレーの接点64の温度の所定時間内における上昇量が所定上昇量以上であるか否かを判断する(S220)。つまり、制御部42は、バッテリ10の入出力電流が安定して所定期間(例えば、10秒)電流が流れたときの接点64の温度の上昇量が所定上昇量以上となったかを判断する。なお、制御部42は、入出力電流の判断の前に、上昇前の基準温度を取得していてもよい。
【0092】
システムメインリレーの接点64の温度の所定時間内における上昇量が所定上昇量以上ではない場合(S220におけるNO)、制御部42は、
図5の一連の処理を終了する。
【0093】
システムメインリレーの接点64の温度の所定時間内における上昇量が所定上昇量以上である場合(S220におけるYES)、制御部42は、所定上昇量以上となったシステムメインリレーの接点64の温度(第1温度検出部30および第2温度検出部32から取得した温度)をレジスタなどに記憶する(S230)。
【0094】
次に、制御部42は、温度フラグをオンし(S240)、
図5の一連の処理を終了する。温度フラグがオンされると、車両2のIG-OFF時に抵抗値回復制御が行われることとなる。
【0095】
図6は、抵抗値回復制御S170の流れを説明するフローチャートである。制御部42は、温度検出部で検出された温度に基づいて、システムメインリレーにおけるオンオフ回数を決定する(S300)。具体的には、制御部42は、
図5のステップS230で記憶された温度を用いてオンオフ回数を決定する。なお、記憶された温度が複数ある場合、制御部42は、記憶された温度のうち最高温度を用いてオンオフ回数を決定する。
【0096】
次に、制御部42は、第2システムメインリレー16をオフした状態で、第1システムメインリレー14の接点64を、ステップS300で決定されたオンオフ回数だけオンオフさせる(S310)。オンオフ回数がステップS300で決定されたオンオフ回数に達すると、第1システムメインリレー14のオンオフ動作が完了する。
【0097】
第1システムメインリレー14のオンオフ(S310)の完了後、制御部42は、第1システムメインリレー14をオフした状態で、第2システムメインリレー16の接点64を、ステップS300で決定されたオンオフ回数だけオンオフさせる(S320)。オンオフ回数がステップS300で決定されたオンオフ回数に達すると、第2システムメインリレー16のオンオフ動作が完了する。
【0098】
第2システムメインリレー16のオンオフ(S320)の完了後、制御部42は、温度フラグをオフし(S330)、
図6の一連の処理を終了する。
【0099】
図6の抵抗値回復制御が行われると、接点64の抵抗値が減少し、その後のシステムメインリレーの接点64の温度は、抵抗値回復制御が行われる前より低下する。これにより、スイッチシステム1では、システムメインリレーの接点64間の溶着を回避できる。また、スイッチシステム1では、システムメインリレーの交換修理を回避することもできる。
【0100】
なお、システムメインリレーのオンオフを行っても、接点64の抵抗値が減少しきれていないこともある。この場合、システムメインリレーのオンオフが行われた後にIG-ONされた際(次回の走行サイクルの際)、システムメインリレーの接点64の温度の所定時間内における上昇量が所定上昇量以上となることがある。そうすると、次のIG-OFF時に、抵抗値回復制御が再度行われる。スイッチシステム1では、このように複数の走行サイクルに亘ってシステムメインリレーのオンオフを行うことで、より確実に接点64の抵抗値を減少させることができる。
【0101】
抵抗値回復制御は、IG-OFF時に行われるだけでなく、充電器38による充電完了後に行われてもよい。このため、以下では、充電時について説明する。
【0102】
図7は、充電時の制御部42の動作を説明するフローチャートである。制御部42は、充電要求信号がオンとなったか否かを判断する(S400)。充電要求信号がオンとなっていない場合(S400におけるNO)、制御部42は、充電要求信号がオンとなるまで待機する。
【0103】
充電要求信号がオンとなった場合(S400におけるYES)、制御部42は、ステップS410以降の処理を行う。まず、制御部42は、第2充電メインリレー22をオフした状態で、第1充電メインリレー20および充電プリチャージリレー24をオンさせて、コンデンサ36のプリチャージを行う(S410)。
【0104】
コンデンサ36のプリチャージが完了すると、コンデンサ36の電圧がバッテリ10の電圧と同程度となる。コンデンサ36のプリチャージが完了すると、制御部42は、第2充電メインリレー22をオンさせ、充電プリチャージリレー24をオフさせることで、充電器38とバッテリ10とを電気的に接続させる(S420)。これにより、車両2は、充電が可能な状態となる。
【0105】
制御部42は、充電器38にバッテリ10の充電を開始させる(S430)。次に、制御部42は、充電が完了したか否かを判断する(S440)。具体的には、制御部42は、バッテリ10のSOC(State of Charge)が所定SOC以上となった場合、充電が完了したと判断する。所定SOCは、例えば、95%などに設定されるが、この例に限らない。
【0106】
充電が完了していない場合(S440におけるNO)、制御部42は、温度判定制御を行う(S140)。温度判定制御では、
図5に示す一連の処理と同様の処理が行われる。
【0107】
制御部42は、温度判定制御を行った後、ステップS440の処理に戻り、充電が完了したか否かを判断する。つまり、制御部42は、温度判定制御において、入出力電流が安定していない場合(S200におけるNO)、温度の所定時間内における上昇量が所定上昇量以上ではない場合(S220におけるNO)、および、温度フラグをオンした後(S240)は、ステップS440の処理に戻る。
【0108】
なお、充電器38を通じた充電時には、電流値が大凡一定の電力がバッテリ10に供給される。このため、充電時におけるバッテリ10の入出力電流は、走行時に比べ、安定し易い。つまり、充電時では、走行時に比べ、温度判定制御を行い易い。
【0109】
充電が完了した場合(S440におけるYES)、制御部42は、第1充電メインリレー20および第2充電メインリレー22をオフさせ、充電器38側のコンデンサ36を放電させる(S450)。
【0110】
次に、制御部42は、温度フラグがオンとなっているか否かを判断する(S460)。温度フラグがオンとなっていない場合(S460におけるNO)、制御部42は、
図7の一連の処理を終了する。
【0111】
温度フラグがオンとなっている場合(S460におけるYES)、制御部42は、抵抗値回復制御を開始し(S170)、
図7の一連の処理を終了する。抵抗値回復制御では、
図6に示す一連の処理と同様の処理が行われる。
【0112】
以上のように、第1実施形態のスイッチシステム1では、システムメインリレーの接点64の温度の所定時間内における上昇量が所定上昇量以上となった場合、所定タイミングにおいてシステムメインリレーの接点64が繰り返しオンオフされる。これにより第1実施形態のスイッチシステム1では、システムメインリレーの接点64の表面を均すことができる。
【0113】
したがって、第1実施形態のスイッチシステム1によれば、接点64における増加した抵抗値を減少させることが可能となる。
【0114】
また、第1実施形態のスイッチシステム1の制御部42は、接点64のオンオフの繰り返し回数を、温度検出部で検出された温度に基づいて決定する。接点64の温度が高いほど、接点64の抵抗値が高く、接点64の表面が荒れている。制御部42は、接点64の温度が高いほど、すなわち、接点64の表面が荒れているほど、オンオフ回数を多くして、接点64の表面を均すことができる。このため、第1実施形態のスイッチシステム1では、より確実に抵抗値を減少させることが可能となる。
【0115】
また、第1実施形態のスイッチシステム1の制御部42は、車両2のIG-OFF時、または、バッテリ10の充電完了時に、システムメインリレーをオンオフさせる。つまり、制御部42は、システムメインリレーに電流が流れていない状態で、システムメインリレーの接点64を繰り返しオンオフさせる。このため、第1実施形態のスイッチシステム1では、システムメインリレーのオンオフ期間中、接点64にアーク放電が生じることを抑制できる。
【0116】
(第2実施形態)
第1実施形態では、第1システムメインリレー14のオンオフと第2システムメインリレー16のオンオフとが順番に行われた。しかし、第1システムメインリレー14およびプリチャージリレー18をオンさせた状態で、第2システムメインリレー16のオンオフが行われてもよい。
【0117】
図8は、第2実施形態による抵抗値回復制御の流れを説明するフローチャートである。
図8のフローチャートは、ステップS310およびステップS320に代えて、ステップS510~S540を有する点において
図6と異なる。このため、異なるステップについて詳述し、同様のステップについては、説明を省略する。
【0118】
オンオフ回数の決定後(S300)、制御部42は、第2システムメインリレー16をオフした状態で、第1システムメインリレー14およびプリチャージリレー18をオンさせる(S510)。つまり、制御部42は、抵抗器34を介してバッテリ10とコンデンサ28とを通電させる。そうすると、コンデンサ28が抵抗器34を介してプリチャージされる。
【0119】
次に、制御部42は、所定時間が経過したか否かを判断する(S520)。所定時間が経過していない場合(S520におけるNO)、制御部42は、所定時間が経過するまで待機する。このように所定時間の経過を待つのは、コンデンサ28のプリチャージによって、第2システムメインリレー16に対してバッテリ10側の電位と車載機器12側の電位との電位差を減少させるためである。
【0120】
所定時間が経過した場合(S520におけるYES)、制御部42は、第2システムメインリレー16の接点64を、ステップS300で決定されたオンオフ回数だけオンオフさせる(S530)。第2システムメインリレー16のオンオフの繰り返しを行うオンオフ期間中、制御部は、第1システムメインリレー14およびプリチャージリレー18をオン状態に維持させる。つまり、制御部42は、第2システムメインリレー16に対して両側の電位差が極力低い状態で、第2システムメインリレー16のオンオフを継続させることができる。このため、第2システムメインリレー16のオンによってバッテリ10と車載機器12とが接続されても、コンデンサ28の突入電流が抑制される。
【0121】
第2システムメインリレー16のオンオフ動作が完了すると、システムメインリレーは、オフ状態で維持される。次に、制御部42は、プリチャージリレー18をオフさせる(S540)。その後、制御部42は、温度フラグをオフし(S330)、
図8の一連の処理を終了する。
【0122】
なお、第2実施形態では、
図4において温度判定制御(S140)を行った後、ステップS130の処理を省略してステップS150以降の処理を行ってもよい。つまり、第2システムメインリレー16のオンオフをIG-ON状態で行ってもよい。この場合、第2システムメインリレー16のオンオフ動作の完了後、第2システムメインリレー16をオン状態に維持させる。
【0123】
また、第2実施形態では、
図4においてステップS150の処理を省略してステップS160以降の処理を行ってもよい。つまり、コンデンサ28を一旦放電させることなくプリチャージリレー18をオンすることで、放電にかかる時間を省略してもよい。
【0124】
以上のように、第2実施形態では、第2システムメインリレー16の接点64が繰り返しオンオフされるため、接点64における増加した抵抗値を減少させることが可能となる。
【0125】
また、第2実施形態で示すように、抵抗値回復制御(すなわち、システムメインリレーのオンオフ)は、システムメインリレーが通電状態でも行うことができる。システムメインリレーが通電状態であっても、システムメインリレーに対して両側の電位差を極力低くすることで、システムメインリレーのオンオフ期間中、接点64にアーク放電が生じることを抑制できる。
【0126】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0127】
例えば、上記各実施形態の制御部42は、接点64の温度の上昇量が所定上昇量以上となった場合にシステムメインリレーのオンオフを行っていた。しかし、制御部42は、接点64の温度が所定温度以上となった場合に、所定タイミングにおいてシステムメインリレーに接点64のオンオフを繰り返させてもよい。具体的には、制御部42は、第1温度検出部30で検出された温度および第2温度検出部32で検出された温度の少なくとも一方または双方が、例えば100度以上となった場合に、所定タイミングにおいてシステムメインリレーに接点64のオンオフを繰り返させる。
【0128】
また、制御部42は、システムメインリレーのオンオフ期間中における接点64同士が互いに叩き付けられる強さを、通常時(例えば、IG-ON時など)における接点64同士が互いに叩き付けられる強さよりも強くさせてもよい。具体的には、制御部42は、オンオフ期間中におけるシステムメインリレーの電磁コイル58に印加する電圧を、通常時におけるシステムメインリレーの電磁コイル58に印加する電圧よりも高くしてもよい。例えば、通常時には、バッテリ10よりも電圧が低い補器バッテリの電圧を電磁コイル58にそのまま印加し、オンオフ期間中には、補器バッテリの電圧を昇圧して電磁コイル58に印加してもよい。
【0129】
接点64同士が互いに叩き付けられる強さが強くなると、例えば、接点64の表面の付着物などが潰れ易くなり、接点64の表面が早く均される。このため、この態様では、システムメインリレーにおけるオンオフ回数を減少させることができ、より早く抵抗値を減少させることが可能となる。
【0130】
また、制御部42は、オンオフ期間中における接点64同士が互いに叩き付けられる速さを、通常時における接点64同士が互いに叩き付けられる速さよりも速くさせてもよい。例えば、制御部42は、オンオフ期間中における電磁コイル58に印加する電圧波形の立ち上がりを、通常時における電磁コイル58に印加する電圧波形の立ち上がりに比べ、急峻にさせてもよい。
【0131】
接点64同士が互いに叩き付けられる速さが速くなると、例えば、接点64の表面の付着物などが潰れ易くなり、接点64の表面が早く均される。このため、この態様では、システムメインリレーにおけるオンオフ回数を減少させることができ、より早く抵抗値を減少させることが可能となる。
【0132】
また、制御部42は、オンオフ期間中において、オン時の速さをオフ時の速さよりも速くさせてもよい。例えば、制御部42は、オンオフ期間中において、電磁コイル58に印加する電圧波形の立ち上がりを立ち下がりに比べ急峻にさせてもよい。接点64同士が離隔するオフ時の動作は、接点64の表面の付着物などを潰すことに寄与しない。つまり、スイッチシステム1では、オフ時の速さが遅くても、接点64の抵抗値を減少させることができる。このため、この態様では、システムメインリレーの接点64の抵抗値を効率よく減少させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、バッテリと車載機器との電気的な接続を切り替えるスイッチシステムに利用できる。
【符号の説明】
【0134】
1 スイッチシステム
2 車両
10 バッテリ
12 車載機器
14 第1システムメインリレー
16 第2システムメインリレー
18 プリチャージリレー
30 第1温度検出部
32 第2温度検出部
34 抵抗器
42 制御部
64 接点