(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】基板に所定の物理的特性を与えるために基板上にナノ構造を形成するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/268 20170101AFI20220629BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20220629BHJP
B29C 64/236 20170101ALI20220629BHJP
B29C 64/232 20170101ALI20220629BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220629BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220629BHJP
【FI】
B29C64/268
B29C64/112
B29C64/236
B29C64/232
B33Y10/00
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2019043532
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2022-03-11
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ジェイ・クラーク
(72)【発明者】
【氏名】イーイー・グアン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ピー・ヘルロスキ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・シー・ジュハス
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-174284(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1676738(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0165914(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元(3D)物体プリンタであって、
プラテンと、
複数のプリントヘッドであって、前記複数のプリントヘッドのうちの少なくとも1つのプリントヘッドが、前記プラテンに向かって造形材料の液滴を射出して、前記プラテン上に物体を形成するように構成される、複数のプリントヘッドと、
前記プラテンに動作可能に接続された複数のアクチュエータであって、前記複数のアクチュエータにおける前記アクチュエータが、前記プラテンを3つの直交軸に沿って双方向に移動させるように、かつ前記プラテンを前記直交軸のうちの2つを中心に双方向に回転させるように構成され、前記プラテンが回転する中心である前記2つの直交軸が、前記プラテンに平行な平面内にある、複数のアクチュエータと、
表面処理モジュールであって、レーザ源、集束レンズ、発散レンズを含み、前記表面処理モジュールは、前記レーザ源を前記レーザ源がレーザビームを前記発散レンズを通過しない第1の経路に沿って前記集束レンズに導く第1の位置に移動させ、前記3D物体プリンタによって形成されている前記物体の層上の少なくとも1つの位置に、パルス集束レーザビームを形成し、前記レーザ源を前記レーザ源が前記レーザビームを前記集束レンズを通過しない第2の経路に沿って前記発散レンズに導く第2の位置に移動させ、前記レーザビームを広げて前記パルス集束レーザビームを受け取った前記少なくとも1つの位置より大きい前記物体の前記層の一部を硬化させるためのビームを形成するように構成される、表面処理モジュールと、
前記複数のアクチュエータ、前記複数のプリントヘッド、および前記表面処理モジュールに動作可能に接続されたコントローラであって、3つの直交軸のうちの2つが前記プラテンに平行な前記平面内にある状態で、前記3つの直交軸に沿って双方向に前記プラテンを移動させるように、前記複数のアクチュエータのうちの前記アクチュエータを操作すること、前記プラテンに向かって前記造形材料の液滴を射出して、前記プラテン上に前記物体を形成するように、前記複数のプリントヘッドのうちの前記プリントヘッドを操作すること、および前記アクチュエータの少なくとも1つを操作して、前記表面処理モジュール中の前記レーザ源を前記第1の位置に移動させ、前記パルス集束レーザビームを前記物体の前記層上の前記少なくとも1つの位置に形成するように前記レーザ源を操作し、前記少なくとも1つの位置にある前記層の物理的性質を改変し、前記物体の前記層の前記一部を硬化させる前記ビームを形成するために前記表面処理モジュール中の前記レーザ源を前記第2の位置に移動させること、を行うように構成されている、コントローラと、を備える、三次元(3D)物体プリンタ。
【請求項2】
前記レーザ源が、
紫外線(UV)レーザ源であって、約200nm~約400nmの波長を有するパルスUVレーザビームを生成するように構成されている、UVレーザ源であり、
前記表面処理モジュールは、
前記UVレーザ源から前記UVレーザビームを受け取り、パルス集束UVレーザビームを形成するように前記UVレーザビームを前記集束レンズに導くように構成された、前記第1の経路に沿って位置する走査ミラーシステム、をさらに備え、
前記コントローラが、前記走査ミラーシステムに動作可能に接続されており、前記コントローラが、前記集束レンズによって形成された前記パルス集束UVレーザビームを、前記3D物体プリンタによって形成されている前記物体の前記層上の所定の位置に移動させるように、前記走査ミラーシステムを操作するようにさらに構成されている、請求項1に記載の3D物体プリンタ。
【請求項3】
前記走査ミラーシステムが、微小電気機械システム(MEMS)走査ミラーシステムである、請求項2に記載の3D物体プリンタ。
【請求項4】
前記走査ミラーシステムが、ガルボ走査ミラーシステムである、請求項2に記載の3D物体プリンタ。
【請求項5】
前記集束レンズが、約0.5~約1.0の範囲の開口数を有する、請求項2に記載の3D物体プリンタ。
【請求項6】
前記コントローラが、
前
記UVレーザ源と前記集束レンズとの間の距離、および前記UVレーザビームのパルス幅を改変するようにさらに構成されている、請求項5に記載の3D物体プリンタ。
【請求項7】
3D物体プリンタのための表面処理モジュールであって、
パルスレーザ源と、
集束レンズと、
発散レンズと、
前記パルスレーザ源に動作可能に接続された複数のアクチュエータと、
前記複数のアクチュエータおよび前記パルスレーザ源に動作可能に接続されたコントローラであって、前記パルスレーザ源を第1の位置に移動させ、前記パルスレーザ源を操作してレーザビームを前記発散レンズを通過しない第1の経路に沿って前記集束レンズに導いてパルス集束レーザビームを形成し、前記パルス集束レーザビームを3D物体プリンタによって生成されている物体の層上の所定の位置に移動させるように前記複数のアクチュエータのうちの前記アクチュエータ及び前記パルスレーザ源を操作するように、かつ前記所定の位置にある前記層の物理的性質を改変し、前記パルスレーザ源を第2の位置に移動させ、前記パルスレーザ源を操作してレーザビームを前記集束レンズを通過しない第2の経路に沿って前記発散レンズに導き、前記パルス集束レーザビームを受け取った前記所定の位置のいずれかより大きい前記物体の前記層の一部を硬化させるビームを形成する、構成されている、コントローラと、を備える、3D物体プリンタのための表面処理モジュール。
【請求項8】
前記パルスレーザ源が、紫外線(UV)レーザ源であり、前記UVレーザ源が、約200nm~約400nmの波長を有するパルスUVレーザビームを生成するように構成され、前記表面処理モジュールが、
前記UVレーザ源から前記パルスUVレーザビームを受け取るように構成された、前記第1の経路に沿って位置する走査ミラーシステム、をさらに備え、
前記コントローラが、前記走査ミラーシステムに動作可能に接続されており、前記コントローラが、前記集束パルスUVレーザビームを、前記3D物体プリンタによって形成されている前記物体の前記層上の前記所定の位置に移動させるように、前記走査ミラーシステムを操作するようにさらに構成されている、請求項7に記載の表面処理モジュール。
【請求項9】
前記走査ミラーシステムが、微小電気機械システム(MEMS)走査ミラーシステムである、請求項8に記載の表面処理モジュール。
【請求項10】
前記走査ミラーシステムが、ガルボ走査ミラーシステムである、請求項8に記載の表面処理モジュール。
【請求項11】
前記集束レンズが、約0.5~約1.0の範囲の開口数を有する、請求項8に記載の表面処理モジュール。
【請求項12】
前記コントローラが、
前
記UVレーザ源と前記集束レンズとの間の距離、および前記パルスUVレーザビームのパルス幅の量を改変するようにさらに構成されている、請求項11に記載の表面処理モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、三次元(3D)物体上の表面の物理的性質を改変するためのシステムに関し、より具体的には、レーザを使用して物理的性質を改変する、そのようなシステムに関する。
【0002】
様々な材料の表面処理は、材料にコーティングを加えることなく、材料が水をはじく、水を引き付ける、または他の物理的性質の能力を増強することが既知である。すべての既知の処理は、既存の物体の表面に行われる多段階プロセスまたは化学的表面改質を必要とする。さらに、物体の表面の選択的処理は、物体の特定の目的に適合するように、表面上に改変または増強された性質をパターニングすることを可能にする。
【0003】
3D物体プリンタとしても既知であるいくつかの付加製造システムでは、物体を形成するために使用される造形材料は、表面の性質を改変する構造を形成するために造形材料の非常に小さな液滴を射出するように正確に制御され得る。この精密制御は、システムにある程度の複雑性を付加し、ミクロおよびマクロの特徴を適切に形成するのを促進するために異なるサイズの液滴を射出する多数のエジェクタを必要とし得る。したがって、より単純であり、かつ物体のために改変または増強された物理的性質を生成させるために選択的表面処理を施す、表面処理システムおよび3Dプリンタは有益と考えられる。
【0004】
新しいプリンタは、付加製造品の形成中に個々の層を処理することを可能にする表面処理システムと、層内の領域の選択的処理とを含む。プリンタは、プラテンと、複数のプリントヘッドと、プラテンに向かって造形材料の液滴を射出して、プラテン上に物体を形成するように構成された複数のプリントヘッドのうちの少なくとも1つのプリントヘッドと、プラテンに動作可能に接続された複数のアクチュエータであって、複数のアクチュエータにおけるアクチュエータが、3つ直交軸に沿って双方向に移動するように、かつプラテンを直交軸のうちの2つを中心として双方向に回転させるように構成され、プラテンが回転する中心である2つの直交軸が、プラテンに平行な平面内にある、複数のアクチュエータと、表面処理モジュールであって、3D物体プリンタによって形成されている物体の層上の少なくとも1つの位置に、パルス集束レーザビームを移動させるように構成された表面処理モジュールと、複数のアクチュエータ、複数のプリントヘッド、および表面処理モジュールに動作可能に接続されたコントローラと、を含む。コントローラは、3つの直交軸のうちの2つがプラテンに平行な平面内にある状態で、その3つの直交軸に沿って双方向にプラテンを移動させるように、複数のアクチュエータのうちのアクチュエータを操作することと、プラテンに向かって造形材料の液滴を射出して、物体上に物体を形成するように、複数のプリントヘッドのうちのプリントヘッドを操作することと、パルス集束レーザビームを物体の層上の少なくとも1つの位置に当て、少なくとも1つの位置にある層の物理的性質を改変するように、表面モジュールを操作することと、を行うように構成される。
【0005】
表面処理システムを操作する方法は、付加製造品の形成中の個々の層の処理、ならびに層内の領域の選択的処理を可能にする。この方法は、3つの直交軸のうちの2つの直交軸がプラテンと平行な平面内にある状態で、3つの直交軸に沿って双方向にプラテンを移動させるように、複数のアクチュエータのうちのアクチュエータをコントローラで操作することと、UV硬化性造形材料および支持材料の液滴をプラテンに向かって射出して、プラテン上に物体を形成するように、複数のプリントヘッドのうちのプリントヘッドを操作することと、集束パルスUVレーザビームを、3D物体プリンタによって形成されている物体の層上の所定の位置に移動させて、所定の位置にある造形材料を硬化させ、かつ所定の位置にある層の物理的性質を改変することと、を含む。
【0006】
新しい表面処理モジュールは、付加製造品の形成中の個々の層の処理、ならびに層内の領域の選択的処理を可能にする。表面処理モジュールは、パルス集束レーザビームを生成するように構成されたパルスレーザ源と、パルスレーザ源に動作可能に接続された複数のアクチュエータと、複数のアクチュエータおよびパルスレーザ源に動作可能に接続されたコントローラと、を含む。コントローラは、パルスレーザ源を3D物体プリンタによって作製されている物体の層上の所定の位置に移動させるように複数のアクチュエータのうちのアクチュエータを操作するように、かつ物体の層上の所定の位置にパルス集束レーザビームを当てて、所定の位置にある層の物理的性質を改変するように、パルスレーザ源を操作するように、構成される。
【0007】
付加製造品の形成中の個々の層の処理、および層内の領域の選択的処理を可能にする表面処理システムおよび表面処理システムの操作方法の前述の態様および他の特徴は、添付の図面に関連して示された、以下の記述において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】集束レーザビームと走査ミラーシステムを使用して表面領域を選択的に処理する、表面処理システムの概略図である。
【
図2】物体が印刷されている際に、物体の個々の層の処理を可能にする、
図1の表面処理システムを含む、三次元(3D)物体印刷システムのブロック図である。
【
図3】
図1の表面処理システムを操作するためのプロセスを描写する。
【0009】
図1は、表面処理システム100のブロック図である。システム100は、パルス紫外線(UV)レーザ源104、走査ミラーシステム108、および集束レンズ112を含む。UVパルスレーザ源104は、約200nm~約400nmの範囲の波長を有するパルスレーザビームを放射する。ビームパルスの持続時間は、コントローラ116からの信号を参照して設定される。走査ミラーシステム108は、微小電気機械システム(MEMS)またはガルボ走査ミラーシステムである。これらの走査ミラーシステムは、当該技術分野において既知である。走査ミラーシステム108は、光源104からレーザビームを受け取り、基板120上の特定の位置にパルスレーザビームを方向付けて基板上の位置を表面処理するように、コントローラ116によって動作させることができる。走査ミラーシステム108と基板120との間には、集束レンズ112がある。レンズ112によって生成され得るレーザビームの回折限界スポットの直径dは、式d=0.61*λ/NAによって近似的に計算され得、ここで、NAは、集束レンズの開口数である。集束レンズ112は、UV波長レーザに対して約0.5から約1.0の範囲の開口数を有する。例えば、0.65の開口数を有する集束レンズを通過する約300nmの波長を有するレーザビームは、約0.28μmのスポットサイズを生成する。
【0010】
3Dプリンタで形成されている物体の未硬化または部分的に硬化した層上のUV硬化レーザの集束スポットは、その部位において突起またはピラーなどのミクロまたはナノ構造を生成する。これらの変化は、そのスポットにおいて層の物理的性質に影響を及ぼし、影響を受けた領域の水をはじくかまたは引き付ける能力を増強する。さらに、レーザビームの他の特性は、ビームによって生成される構造に影響を与えるように変えられ得る。レーザスポットのサイズは、UVパルスレーザ源とレンズとの間の距離を、焦点距離を超えてまたは短く変更することによって、改変され得る。さらに、UVレーザスポットの効果は、スポットがその領域に保持される時間量によって影響を受ける可能性がある。この露光時間は、レーザのパルス幅を設定するコントローラ204によって調整される。移動、パルスUVレーザ源とレンズとの間の距離、および対象物の層上でのUVレーザビームのパルス持続時間を制御することによって、コントローラ116は、層の構造的特徴に応じて様々にパルスレーザビームを生成することができる。したがって、例えば、コントローラは、処理される材料の種類および構造を形成するために使用されるビームの特性に応じて、そうでなければ疎水性である領域に様々な水路を形成するか、またはそうでなければ親水性である領域に水バリアを生成することができる。層の残りの部分は、ミクロ構造およびナノ構造の完全性に悪影響を及ぼすことなく、より広い放射線ビームによって硬化され得る。
【0011】
図1に示す表面処理システム100を組み込んだ3D物体印刷システム200が、
図2に示される。3D物体プリンタ200は、プリンタの構成部品を操作するためのコントローラ204を含む。3D物体プリンタ200は、1つ以上のアクチュエータ208、プリントヘッドアレイ212、プラテン216、および表面処理モジュール100を含む。アクチュエータ208、表面処理モジュール100、およびプリントヘッドアレイ212は、コントローラ204に動作可能に接続されている。プリントヘッドアレイ212は、材料源に流体的に接続され、かつ、プラテン216に向かってこれらの材料の液滴を射出して、1層ずつ物体220を形成するように構成された、複数のプリントヘッドを有する。本文書内で使用されるように、「プリントヘッド(printhead)」という用語は、UV硬化材料の液滴を射出するように構成された、複数のエジェクタを有する構成部品を意味する。エジェクタによって射出される材料は、エジェクタが流体的に接続される材料源に依存する。プリンタ200では、1つ以上のプリントヘッドが造形材料の液滴を射出するように構成され、1つ以上のプリントヘッドが支持材料の液滴を射出するように構成される。当該技術分野において既知であるように、造形材料は、形成されている3D物体の一部を維持する材料であり、一方、支持材料は、物体の製造中に物体特徴の重量を支える材料であるが、物体が完全に形成された時点で除去される。コントローラ204は、プリントヘッドアレイ212に動作可能に接続され、かつアレイ212のプリントヘッド内のエジェクタを動作させ物体を層ごとに形成するために製造される物体に対応するデータを使用するプログラムされた命令で構成される。製造される物体に対応するデータは、物体のCADデータなどであり得る。
【0012】
プリンタ200のコントローラ204はまた、アクチュエータ208を動作させるために製造されるべき物体に対応するデータを使用する、プログラムされた命令で構成される。アクチュエータは、プラテン216に動作可能に接続されて、プラテンを、
図1の平面に出入りする方向にかつプリントヘッドアレイ212に対して接近および離反する双方向に延在するX-Y平面内で動かす。これらの自由度により、プラテンおよびプラテン上の物体は、プラテン216の上面に平行な平面内で互いに直角であるX軸およびY軸を有する直交方向X、Y、およびZに双方向に移動され得る。
【0013】
1つの代替の実施形態では、アクチュエータ208は、プリントヘッドアレイが上述の自由度で動くことを可能にするようにプリントヘッドアレイ212に動作可能に接続されて、プリントヘッドのエジェクタがUV硬化材料液滴を物体220の部分に射出できるようにする。別の実施形態では、プリントヘッドアレイ212とプラテン216の両方は、アクチュエータ208に動作可能に接続されて、物体220の印刷のためにコントローラが印刷ヘッドアレイ内のプリントヘッドとプラテンの両方を移動させることを可能にする。別の代替の実施形態では、プリントヘッドアレイは、マルチノズル押出機である。マルチノズル押出機では、各ノズルに独立して材料を供給して、構築材料、支持材料、導電性材料および電気絶縁材料を押し出して、物体220を製造し、物体上に電気回路を形成することができる。
【0014】
コントローラ204はまた、アクチュエータ208を作動させて、プリントヘッドアレイ212と表面処理モジュール100の動きを調整するように構成される。3D物体プリンタ200が物体を形成しているとき、層の表面処理が必要とされ得る。そのような処理を実行するために、コントローラ204は、アクチュエータ208を作動させてプリントヘッドアレイ212を物体220から離し、表面処理システム100を物体220の反対側に移動させ、表面処理システム100のパルスUVレーザ源104を作動させる。コントローラ204は、光源104からのレーザビームのパルス特性を設定し、UVレーザ源104とレンズ112との間の距離を調整するための信号を生成するように構成される。コントローラ204は、走査ミラーシステムを作動させて、物体220の露光された未硬化または部分的に硬化された層上の所定の位置に、パルスUVレーザビームを方向付ける。さらに、集束レンズ112は、マイクロメートルまたはナノメートルの範囲内にあるレーザビームのためのスポットサイズを生成する開口数を有する。コントローラ204はさらに、走査ミラーシステム108を動作させて、物体220の露出層に沿ってパルスビームを移動させ、親水性または疎水性の領域などの層上にマイクロメートルまたはナノメートル構造を形成する。表面処理が終了した時点で、コントローラ204は、表面処理システム100を物体220から離し、プリントヘッドアレイ212を物体220の反対側の位置に戻し、かつUV放射線源104を無効にし、それによって、物体内の次の層の形成を開始することができるように、アクチュエータ208を操作することができる。さらに、コントローラ204が、層を硬化させるべきであると判定した場合、層を硬化させるために物体220の反対側に移動される別のUV放射線源が設けられ得る。代替的に、コントローラ204は、窓228が物体220に対向するように、表面処理システム100を回転させるようにアクチュエータ208を操作して、次いで、パルスUVレーザ源104を回転させて、それによって、層を硬化させるように、パルスUVレーザは、窓228を通して方向付けられる。この実施形態では、UVレーザ源104の動作モードが、このレーザが定常ビームを生成するように変更され、場合によっては、200nm~400nmの範囲のパルスビームが、未硬化または部分的に硬化した材料を硬化させるのに長い時間がかかることがあるので、ビームの周波数も変更される。この実施形態では、UVレーザのビームは、窓228内の発散レンズ230を通過するので、レンズ112によって生成されるビームよりも広い。このより広いUVビームは、層の未硬化領域を硬化させるように、層の未硬化領域上に移動される。層が硬化した後、表面処理モジュール100は、層の反対側から取り除かれ、プリントヘッドアレイ212は、次の物体層の形成のために物体220の反対側の位置に戻される。この次の層またはそれに続くいくつかの層は、異なる表面処理特性を与えるために表面処理を必要とすることがある。いくつかの物体では、1つの層の処理領域は他の層の処理領域と流体連通することができ、それによって、流体を物体の層全体にわたって移動させることができる物体を形成することができる。
【0015】
図2の3D物体プリンタを操作するためのプロセスは、
図3に示される。プロセスの説明において、プロセスがいくつかのタスクまたは機能を果たしているという記述は、コントローラまたは汎用プロセッサが、コントローラまたはプロセッサに動作可能に接続された非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納された、データを巧みに処理するために、または、タスクもしくは機能を果たすようにプリンタ内の1つ以上の構成部品を操作するためにプログラムされた命令を実行することを指す。上述されたコントローラ204は、そのようなコントローラまたはプロセッサであり得る。代替的に、コントローラは、2つ以上のプロセッサ、ならびに関連付けられた回路および構成部品を伴って実装され得、その各々は、本明細書で説明された1つ以上のタスクまたは機能を形成するように構成される。さらに、本プロセスのステップは、図に示される順序または処理が説明される順序に関わらず、任意の実現可能な時系列順序で実行されてもよい。
【0016】
図3は、表面処理されるべきプリンタによって形成されている物体の様々な層に対して、3D物体プリンタ200を操作するプロセス300の流れ図である。プロセス300は、プリンタ200が形成されるべき物体に対応するデータを受信することから始まる(ブロック304)。コントローラ204は、アクチュエータ208およびプリントヘッドアレイ212を操作して、材料の液滴を射出してプラテン216上に物体220を形成する(ブロック308)。物体220の層が所定の領域内の層の物理的性質を改変または増強するために表面処理を必要とする場合(ブロック312)、プロセスは、プリントヘッドアレイを物体から離し、表面処理システムを物体の反対側に移動させ、集束パルスUVレーザスポットを生成するために表面処理システム100内のパルスUVレーザ源104を作動させる(ブロック316)。このプロセスは、UVビームが集束レンズ112によって集束された後に、走査ミラーシステム108を操作して、UVビームを物体の露出層上の所定の位置に移動させる(ブロック320)。露出層上の所定の位置が集束レーザビームによって処理された後(ブロック324)、プロセスは、印刷層を続行するか、または現在の層を硬化するかを判定する(ブロック326)。印刷を再開することになると、プリントヘッドアレイは物体の反対側の位置に戻され、UV放射線スポット源は停止され(ブロック328)、それにより、物体の形成が続く(ブロック308)。そうでなければ、パルスUVレーザビーム源は、モジュールの拡散窓を通してビームを方向付けるように移動され、それにより、幅広いビームが未硬化材料を硬化させるか、または幅広いビームを有する別のUV硬化レーザを使用して層の硬化を終了する(ブロック336)。次いで、表面処理モジュール100は、層から離され(ブロック338)、プリントヘッドアレイは、物体と反対側の位置に戻され、それにより、層の印刷を続けることができるようになる(ブロック332)。層構造、および、必要な場合、表面処理は、物体が完成されるまで続けられ(ブロック308~310)、プリンタおよび表面処理システムの動作が終了され、それにより、物体を3Dプリンタから取り除くことができる(ブロック332)。