(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】発現カセット
(51)【国際特許分類】
C12N 15/79 20060101AFI20220629BHJP
C12N 15/67 20060101ALI20220629BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20220629BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220629BHJP
C12N 15/65 20060101ALI20220629BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220629BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220629BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C12N15/79 Z
C12N15/67 Z
C12N15/85 Z
C12N15/13
C12N15/65 Z
C12N5/10
C12P21/02 C
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2019124927
(22)【出願日】2019-07-04
(62)【分割の表示】P 2017092184の分割
【原出願日】2012-12-05
【審査請求日】2019-08-02
(32)【優先日】2011-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510168852
【氏名又は名称】イクノス サイエンシズ エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(72)【発明者】
【氏名】ルーシェル,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】アビス-シェル-ガミー,クリステル
(72)【発明者】
【氏名】モレッティ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ベルトシンガー,マルタン
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05122458(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0181427(US,A1)
【文献】国際公開第2002/014509(WO,A1)
【文献】Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2004年,Vol.101, No.47,p.16501-16506
【文献】Proc. Natl. Acad. Sci. USA,1996年,Vol.93,p.3264-3268
【文献】村松正實ほか編,分細胞生物学事典, 第2版,株式会社東京化学同人,2008年10月,p.455,619-620
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロモーター、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、および発現増強エレメントを含む発現カセットであって、発現増強エレメントが、哺乳動物グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)プロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列を含み、前記ポリヌクレオチド配列によりコードされる前記ポリペプチドがGAPDHではなく、前記哺乳動物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、+1のヌクレオチド位置~+7000のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、前記ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、前記哺乳動物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列の長さが
200~
2800ヌクレオチドであり、
哺乳動物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列をさらに含み、前記哺乳動物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、前記哺乳動物GAPDHプロモーターの5’端~-3500のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、前記ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、前記哺乳動物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列の長さが
200~
2800ヌクレオチドである、発現カセット。
【請求項2】
哺乳動物GAPDHプロモーターまたはその断片を含まないという条件で、プロモーター、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、および哺乳動物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列を含む発現カセットであって、前記ポリヌクレオチド配列によりコードされる前記ポリペプチドがGAPDHではなく、前記哺乳動物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、前記哺乳動物GAPDHプロモーターの5’端~-3500のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、前記ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、前記哺乳動物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列の長さが
200~
2800ヌクレオチドであり、
哺乳動物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列をさらに含み、前記哺乳動物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、+1のヌクレオチド位置~+7000のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、前記ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、前記哺乳動物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列の長さが
200~
2800ヌクレオチドである、発現カセット。
【請求項3】
a)哺乳動物GAPDHプロモーターの上流および/もしくは下流の非翻訳ゲノムDNA配列
b)プロモーター
c)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列
d)ポリアデニル化部位
e)エンハンサー
f)哺乳動物GAPDHプロモーターの下流および/もしくは上流の非翻訳ゲノムDNA配列、または
a)哺乳動物GAPDHプロモーターの上流および/もしくは下流の非翻訳ゲノムDNA配列
b)エンハンサー
c)プロモーター
d)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列
e)ポリアデニル化部位
f)哺乳動物GAPDHプロモーターの下流および/もしくは上流の非翻訳ゲノムDNA配列、または
a)エンハンサー
b)哺乳動物GAPDHの上流および/もしくは下流の非翻訳ゲノムDNA配列
c)プロモーター
d)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列
e)ポリアデニル化部位
f)哺乳動物GAPDHの下流および/もしくは上流の非翻訳ゲノムDNA配列
を、
a)またはb)が、哺乳動物GAPDHの上流の非翻訳ゲノムDNA配列である場合は、f)が、哺乳動物GAPDHの下流の非翻訳ゲノムDNA配列であり、a)またはb)が、哺乳動物GAPDHの下流の非翻訳ゲノムDNA配列である場合は、f)が、哺乳動物GAPDHの上流の非翻訳ゲノムDNA配列であるという条件で、順に含む発現ベクターであって、
前記エンハンサーの組入れが任意選択であり、前記ポリヌクレオチド配列によりコードされる前記ポリペプチドがGAPDHではなく、前記哺乳動物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、+1のヌクレオチド位置~+7000のヌクレオチド位置にわたる領域内
の配列であり、前記ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、前記哺乳動物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、
200~
2800ヌクレオチドであり、前記哺乳動物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、哺乳動物GAPDHプロモーターの5’端~-3500のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、前記ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、前記哺乳動物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列の長さが
200~
2800ヌクレオチドである、発現ベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全てが、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる2011年12月7日に出願された米国仮出願第61/567,675号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を発現させるのに有用な発現カセットに関する。本発明はまた、発現カセットを含むベクターおよび宿主細胞、ならびにポリペプチドを宿主細胞から産生させるための発現カセットの使用も対象とする。
【背景技術】
【0003】
組換えポリペプチドを産生するための発現系は、現況の技術水準においてよく知られており、例えば、Marino MH(1989)、Biopharm、2:18~33;Goeddel DVら(1990)、Methods Enzymol、185:3~7;Wurm FおよびBernard A(1999)、Curr Opin Biotechnol、10:156~159により記載されている。医薬への適用において用いられるポリペプチドは、CHO細胞、NSO細胞、SP2/0細胞、COS細胞、HEK細胞、BHK細胞などの哺乳動物細胞内で産生させることが好ましい。この目的で用いられる発現ベクターの不可欠なエレメントは通常、原核生物の複製起点および原核生物の選択マーカーを含む、原核生物、例えばE.coli、のプラスミド増殖ユニットから選択されるが、任意選択で、真核生物の選択マーカーからも選択され、対象の(1または複数の)構造遺伝子を発現させるための1または複数の発現カセットは各々、プロモーター、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含み、任意選択で、ポリアデニル化シグナルを含めた転写ターミネーターも含む。哺乳動物細胞における一過性発現では、SV40 OriまたはSV40 OriPなど、哺乳動物の複製起点も組み入れることができる。プロモーターとしては、構成的プロモーターまたは誘導的プロモーターを選択することができる。転写を最適化するには、5’側非翻訳領域にコザック配列を組み入れることができる。mRNAのプロセシング、特に、mRNAのスプライシングおよび転写終結のためには、構造遺伝子の構成(エクソン/イントロン構成)に応じて、mRNAのスプライシングシグナルのほか、ポリアデニル化シグナルも組み入れることができる。遺伝子の発現は、一過性発現で行うか、または安定細胞系を用いて行う。産生細胞系における安定的で高度なポリペプチドの発現レベルは、組換えポリペプチド産生の全体的プロセスにとってきわめて重要である。タンパク質、とりわけ、抗体または抗体断片などの生物学的分子に対する需要は、最近数年間で著明に増大している。高額な費用および収率の低さは、生物学的分子の利用可能性における制限因子となっており、所望の生物学的分子の収率を産業的スケールで増大させる頑健なプロセスを開発することが、大きな課題となっている。したがって、組換えポリペプチドの産生において高度な発現を得るには、発現ベクターの効率を改善することが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は一般に、組換えポリペプチドの産生において発現の増大を得るのに用いうる、発現カセットおよび発現ベクターなどの発現系に関する。一態様では、本開示は、プロモーター、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、および真核生物グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)プロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列を含む発現カセットであって、ポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドが、GAPDHではなく、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、+1近傍のヌクレオチド位置~+7000近傍のヌクレオチド位置にわた
る領域内で開始され、ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、約100~約15000ヌクレオチドである発現カセットを提供する。
【0005】
さらなる態様では、本開示は、発現カセットが、真核生物GAPDHプロモーターまたはその断片を含まないという条件で、プロモーター、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、および真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列を含む発現カセットであって、ポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドがGAPDHではなく、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、真核生物GAPDHプロモーターの5’端近傍~-3500近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが100~約15000ヌクレオチドである発現カセットを提供する。さらなる態様では、本開示は、発現カセットおよび発現カセットまたは発現カセットを含む発現ベクターを含む宿主細胞を含む発現ベクターを提供する。
【0006】
なおさらなる態様では、本開示は、ポリペプチドを発現させるためのin vitro法であって、宿主細胞を、発現カセットまたは発現ベクターでトランスフェクトするステップと、ポリペプチドを回収するステップとを含むin vitro法、および哺乳動物の宿主細胞から異種ポリペプチドを発現させるための、発現カセットまたは発現ベクターの使用を提供する。
一態様において、本開示は、以下の発明を包含する。
[1] プロモーター、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、および発現増強エレメントを含む発現カセットであって、発現増強エレメントが、真核生物グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)プロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列を含み、前記ポリヌクレオチド配列によりコードされる前記ポリペプチドがGAPDHではなく、前記真核生物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、+1近傍のヌクレオチド位置~+7000近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、前記ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、前記真核生物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列の長さが約100~約15000ヌクレオチドである、発現カセット。
[2] 真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列をさらに含み、前記真核生物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、前記真核生物GAPDHプロモーターの5’端近傍~-3500近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、前記ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、前記真核生物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列の長さが約100~約15000ヌクレオチドである、[1]に記載の発現カセット。
[3] 真核生物GAPDHプロモーターまたはその断片を含まないという条件で、プロモーター、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、および真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列を含む発現カセットであって、前記ポリヌクレオチド配列によりコードされる前記ポリペプチドがGAPDHではなく、前記真核生物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、前記真核生物GAPDHプロモーターの5’端近傍~-3500近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、前記ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、前記真核生物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列の長さが100~約15000ヌクレオチドである、発現カセット。
[4] 真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列をさらに含み、前記真核生物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、+1近傍のヌクレオチド位置~+7000近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、前記ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、前記真核生物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列の長さが約100~約15000ヌクレオチドである、[3]に記載の発現カセット。
[5] 前記真核生物GAPDHプロモーターの下流および/または上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、前記ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されていない、[1]から[4]のいずれかに記載の発現カセット。
[6] ポリアデニル化部位をさらに含む、[1]から[4]のいずれかに記載の発現カセット。
[7] 前記真核生物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列の長さが約10ヌクレオチドであり、その最長の場合で、IFF01遺伝子の最後から2番目のイントロンまたはその一部まで伸びる、[1]または[4]に記載の発現カセット。
[8] 前記真核生物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、前記真核生物のGAPDHのポリアデニル化部位の下流で開始され、前記真核生物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、少なくとも約100ヌクレオチドであり、その最長の場合で、IFF01遺伝子の最後から2番目のイントロンまで伸びる、[1]または[4]に記載の発現カセット。
[9] 前記真核生物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、少なくとも約100ヌクレオチドであり、その最長の場合で、NCAPD2遺伝子の開始コドンまで伸びる、[2]に記載の発現カセット。
[10] 前記真核生物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、少なくとも約100ヌクレオチドであり、その最長の場合で、NCAPD2遺伝子の最後から3番目のイントロンまで伸びる、[2]に記載の発現カセット。
[11] 前記真核生物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、少なくとも100ヌクレオチドであり、その最長の場合で、NCAPD2遺伝子の開始コドンまで伸びる、[3]に記載の発現カセット。
[12] 前記真核生物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、少なくとも100ヌクレオチドであり、その最長の場合で、NCAPD2遺伝子の最後から3番目のイントロンまで伸びる、[3]に記載の発現カセット。
[13] 前記真核生物GAPDHプロモーターの下流および/または上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が哺乳動物に由来する、[1]から[4]のいずれかに記載の発現カセット。
[14] 前記真核生物GAPDHプロモーターの下流および/または上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が齧歯動物またはヒトに由来する、[13]に記載の発現カセット。
[15] 前記真核生物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、配列番号8および21またはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、[1]または[4]に記載の発現カセット。
[16] 前記真核生物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、配列番号8および21またはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を含む、[1]または[4]に記載の発現カセット。
[17] 前記真核生物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、配列番号8および21またはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%同一なヌクレオチド配列を含む、[1]または[4]に記載の発現カセット。
[18] 前記真核生物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、配列番号7、9、10、11、12、13、14、15、16、20、22、23、24、25、26、27、および28またはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、[2]または[3]に記載の発現カセット。
[19] 配列番号7、9、10、11、12、13、14、15、16、20、22、23、24、25、26、27、および28またはその断片からなる群から選択される前記ヌクレオチド配列が、5カ所以下の核酸修飾を含む、[18]に記載の発現カセット。
[20] 前記真核生物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、配列番号7、9、10、11、12、13、14、15、16、20、22、23、24、25、26、27、および28またはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を含む、[2]または[3]に記載の発現カセット。
[21] 前記真核生物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、配列番号7、9、10、11、12、13、14、15、16、20、22、23、24、25、26、27、および28またはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%同一なヌクレオチド配列を含む、[2]または[3]に記載の発現カセット。
[22] 前記プロモーターと、ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチド配列とが、作動的に連結されている、[1]から[4]のいずれかに記載の発現カセット。
[23] 前記真核生物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチド配列と同方向に配向している、[1]または[4]に記載の発現カセット。
[24] 前記真核生物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチド配列と逆方向に配向している、[1]または[4]に記載の発現カセット。
[25] 前記真核生物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチド配列と同方向に配向している、[2]または[3]に記載の発現カセット。
[26] 前記真核生物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチド配列と逆方向に配向している、[2]または[3]に記載の発現カセット。
[27] 前記プロモーターが、SV40プロモーター、MPSVプロモーター、マウスCMV、ヒトtk、ヒトCMV、ラットCMV、ヒトEF1アルファ、チャイニーズハムスターEF1アルファ、ヒトGAPDH、MYCプロモーター、HYKプロモーター、およびCXプロモーターを組み入れたハイブリッドプロモーターからなる群から選択される、[1]から[4]のいずれかに記載の発現カセット。
[28] 前記ポリペプチドが、抗体、抗体断片、または抗体誘導体からなる群から選択される、[1]から[4]のいずれかに記載の発現カセット。
[29] 前記ポリアデニル化部位が、BGH poly(A)およびSV40 poly(A)からなる群から選択される、[6]に記載の発現カセット。
[30] さらなるプロモーター、エンハンサー、転写制御エレメント、および選択マーカーからなる群から選択される遺伝子エレメントをさらに含む、[1]から[4]のいずれかに記載の発現カセット。
[31] 前記遺伝子エレメントが選択マーカーであり、前記選択マーカーをコードするポリヌクレオチド配列中に含有されるCpG部位の含量が45以下である、[30]に記載の発現カセット。
[32] [1]から[29]のいずれかに記載の発現カセットを含む発現ベクター。
[33] a)真核生物GAPDHプロモーターの上流および/もしくは下流の非翻訳ゲノムDNA配列
b)プロモーター
c)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列
d)ポリアデニル化部位
e)エンハンサー
f)真核生物GAPDHプロモーターの下流および/もしくは上流の非翻訳ゲノムDNA配列、または
a)真核生物GAPDHプロモーターの上流および/もしくは下流の非翻訳ゲノムDNA配列
b)エンハンサー
c)プロモーター
d)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列
e)ポリアデニル化部位
f)真核生物GAPDHプロモーターの下流および/もしくは上流の非翻訳ゲノムDNA配列、または
a)エンハンサー
b)真核生物GAPDHの上流および/もしくは下流の非翻訳ゲノムDNA配列
c)プロモーター
d)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列
e)ポリアデニル化部位
f)真核生物GAPDHの下流および/もしくは上流の非翻訳ゲノムDNA配列
を、a)またはb)が、真核生物GAPDHの上流の非翻訳ゲノムDNA配列である場合は、f)が、真核生物GAPDHの下流の非翻訳ゲノムDNA配列であり、a)またはb)が、真核生物GAPDHの下流の非翻訳ゲノムDNA配列である場合は、f)が、真核生物GAPDHの上流の非翻訳ゲノムDNA配列であるという条件で、順に含む発現ベクターであって、前記エンハンサーの組入れが任意選択であり、前記ポリヌクレオチド配列によりコードされる前記ポリペプチドがGAPDHではなく、前記真核生物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、+1近傍のヌクレオチド位置~+7000近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、前記ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、前記真核生物GAPDHプロモーターの下流の前記非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、約100~約15000ヌクレオチドであり、前記真核生物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列が、真核生物GAPDHプロモーターの5’端近傍~-3500近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、前記ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、前記真核生物GAPDHプロモーターの上流の前記非翻訳ゲノムDNA配列の長さが約100~約15000ヌクレオチドである、発現ベクター。
[34] 前記発現ベクターが、さらなるプロモーター、エンハンサー、転写制御エレメント、複製起点、および選択マーカーからなる群から選択される遺伝子エレメントをさらに含む、[32]または[33]に記載の発現ベクター。
[35] 前記発現ベクターが複製起点および選択マーカーをさらに含み、前記複製起点および前記選択マーカーをコードする前記発現ベクターのポリヌクレオチド配列中に含有されるCpG部位の含量が200以下である、[32]または[33]に記載の発現ベクター。
[36] [1]から[31]のいずれかに記載の発現カセット、または[32]から[35]のいずれかに記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
[37] 障害を処置するための医薬として用いられる、[1]から[31]のいずれかに記載の発現カセット、または[32]から[35]のいずれかに記載の発現ベクター。
[38] 遺伝子治療で使用するための、[1]から[31]のいずれかに記載の発現カセット、または[32]から[35]のいずれかに記載の発現ベクター。
[39] ポリペプチドを発現させるためのin vitro法であって、宿主細胞を、[1]から[31]のいずれかに記載の発現カセット、または[32]から[35]のいずれかに記載の発現ベクターでトランスフェクトするステップと、前記ポリペプチドを回収するステップとを含むin vitro法。
[40] 前記発現カセットまたは前記発現ベクターを、安定的にトランスフェクトする、[39]に記載の方法。
[41] 前記発現カセットまたは前記発現ベクターを、一過性にトランスフェクトする、[39]に記載の方法。
[42] 哺乳動物の宿主細胞から異種ポリペプチドを発現させるための、[1]から[31]のいずれか一項に記載の発現カセット、または[32]から[35]のいずれかに記載の発現ベクターの使用。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】マウスサイトメガロウイルスプロモーター(mCMV)、1番目のイントロンを含有するIgドナーアクセプター断片(IgDA)、IgG1抗体の軽鎖(IgG1 LC)、脳心筋炎ウイルスに由来する配列内リボソーム進入部位(IRES)、IgG1抗体の重鎖(IgG1 HC)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、およびサルウイルス40ポリアデニル化シグナル(poly(A))からなるレポーター発現構築物(REP)を示す図である。
【
図2】トランスフェクションの5日後のCHO-S細胞におけるIgG1抗体の一過性発現を示す図である(2回にわたる独立のトランスフェクションについて、IgG力価の平均をプロットする)。GAPDH_AベクターおよびGAPDH_Bベクター(GAPDH_AおよびGAPDH_B)、GAPDHの上流および下流のエレメントを伴わない同じベクター(AおよびB)、ならびに対照としてのpGLEX41ベクター(pGLEX41)を用いて、細胞にトランスフェクトした。Octet測定器(Fortebio、Menlo、CA、USA)を用いて、上清中に蓄積されたIgG1抗体の濃度を決定した。
【
図3】HEK293 EBNA細胞におけるIgG1抗体発現を示す図である。GAPDH_AベクターおよびGAPDH_Bベクター(GAPDH_AおよびGAPDH_B)ならびに対照としてのpGLEX41ベクター(pGLEX41)を用いて、細胞にトランスフェクトした。上清を採取し、トランスフェクションの10日後に、Octet測定器を用いて解析した。データは、TubeSpinベクター1つ当たりN=3の独立のトランスフェクションを表す。
【
図4】細胞プールを用いるバッチ産生についての発現レベル研究を示す図である。細胞にトランスフェクトし、GAPDH_AベクターおよびGAPDH_Bベクター(GAPDH_A(1)、GAPDH_A(2)、GAPDH_B(1)およびGAPDH_B(2))、GAPDHの上流および下流のエレメントを伴わない同じベクター(A(1)およびA(2))、ならびに対照としてのpGLEX41ベクター(pGLEX41)を用いて、安定細胞のプールを創出した。培養の7日後に、Octet測定器を用いて、上清中に蓄積された抗体について、上清を解析した。各プールについて、IgG力価の平均を示す(μg/ml)。データは、プール1つ当たりN=2のバッチを表す。
【
図5】安定的トランスフェクションおよび限界希釈により創出した集団についての発現レベル研究を示す図である。GAPDH_AベクターおよびGAPDH_Bベクター(GAPDH_AおよびGAPDH_B)、GAPDHの上流および下流のエレメントを伴わない同じベクター(AおよびB)、ならびに対照としてのpGLEX41ベクター(pGLEX41)を用いて、細胞にトランスフェクトした。クローンおよびミニプールにより安定的トランスフェクションから発現させたGFP蛍光の平均値は、トランスフェクションの14日後に読み取った。細胞は、96ウェルプレート内の選択圧下で培養した。データは、ベクター1つ当たりN=48のクローンまたはミニプールを表す。
【
図6】培地添加物であるインスリンおよびPMA(フォルボール12-ミリステート13-アセテート;フォルボールエステル)の、上清中のIgG1抗体発現に対する効果を示す図である。GAPDH_Aベクター(GAPDH_A)によるトランスフェクションおよび対照であるpGLEX41ベクター(pGLEX41)によるトランスフェクション後、細胞を、PowerCHO2培地、4mMのGln±インスリン;およびPowerCHO2、4mMのGln、PMA±インスリンのいずれかに希釈した。pGLEX41(黒色バー)またはGAPDH_A(白色バー)については、基準培地と比較した発現の差違を観察することができなかった。
【
図7】ヒトGAPDH遺伝子座についての概観を示す図である。GAPDH遺伝子は、遺伝子であるNCAPD2とIFFO1とに挟まれている。
【
図8】ヒトGAPDH遺伝子、GAPDHの上流の断片化研究の解析のために創出された、GAPDHの上流および下流のエレメントおよび断片についての詳細を示す図である。NruI制限部位は、クローニングステップを容易にするために導入されたものであり、ゲノムの5’側GAPDHの上流の配列の部分ではない(したがって、アステリスクを用いて強調される)。断片のサイズは、断片1(配列番号9):511bp、断片2(配列番号10):2653bp、断片3(配列番号11):1966bp、断片4(配列番号12):1198bp、断片8(配列番号13):259bp、断片9(配列番号14):1947bp、断片11(配列番号15):1436bp、および断片17(配列番号16):1177bpである。
【
図9】GAPDHの上流および下流のエレメントの断片化の発現結果を示す図である。発現結果は、トランスフェクションの10日後のCHO細胞における、一過性トランスフェクションにより得られた。定量化は、Octet測定器を用いて行った。ベクターであるpGLEX41は、陰性対照として用いられる。pGLEX41-ampiAはまた、GAPDHフランキングエレメントを伴わないベクターの基底の発現を示す陰性対照でもある。pGLEX41-up/downは、全長フランキング(上流および下流の)領域を含有し、陽性対照として用いられる。pGLEX41-upは、上流のフランキング領域だけを含有し、pGLEX41-downは、下流のフランキング領域だけを含有する。他の全ての構築物は、
図8において記載される断片を含有する。断片2および3は、IgG1 LCおよびIgG1 HCと同方向でクローニングされるか、またはIgG1 LCおよびIgG1 HCに対して逆方向でクローニングされた(AS)。
【
図10】トランスフェクションの8日後のCHO-S細胞におけるIgG1抗体の一過性発現を示す図である(3回の独立のトランスフェクションについて、IgG力価の平均をプロットする;エラーバー:SD±)。マウスCMVプロモーター(A_GAPDH_UP)またはチャイニーズハムスターGAPDHプロモーター(A_GAPDH_UP_PR)と組み合わせて、チャイニーズハムスターGAPDHの上流のエレメントを伴うベクターを用いて、細胞にトランスフェクトした。マウスCMVプロモーター(A)またはチャイニーズハムスターGAPDHプロモーター(A_PR)だけを伴うプラスミドを、対照としてトランスフェクトした。Octet QK測定器(Fortebio、Menlo、CA、USA)を用いて、上清中に蓄積されたIgG1抗体の濃度を決定した。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、プロモーター、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、および真核生物グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)プロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列を含む発現カセットおよび発現ベクターであって、ポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドがGAPDHではなく、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、+1近傍のヌクレオチド位置~+7000近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが約100~約15000ヌクレオチドである、発現カセットおよび発現ベクターに関する。
【0009】
本開示は、さらに、発現カセットが、真核生物GAPDHプロモーターまたはその断片を含まないという条件で、プロモーター、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、および真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列を含む発現カセットであって、ポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドがGAPDHではなく、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、真核生物GAPDHプロモーターの5’端近傍~-3500近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが100~約15000ヌクレオチドである、発現カセットに関する。
【0010】
本明細書で用いられる「発現カセット」という用語は、発現させるポリペプチドと、シス作用型転写制御エレメントの任意の組合せを含めた、プロモーター、任意選択で、エンハンサー配列など、その発現を制御する配列とをコードするポリヌクレオチド配列を包含する。遺伝子の発現、すなわち、その転写および転写産物の翻訳を制御する配列を一般に、調節単位と称する。調節単位の大部分は、遺伝子のコード配列の上流に位置し、それへと作動可能に連結されている。発現カセットはまた、ポリアデニル化部位を含む下流の3’側非翻訳領域も含有しうる。本発明の調節単位は、発現させる遺伝子、すなわち、転写単位に作動可能に連結されているか、または、例えば、異種遺伝子の5’側非翻訳領域によるなど、介在DNAによりそこから隔てられている。発現カセットのベクターへの挿入および/またはベクターからのその切出しを可能とするために、発現カセットを、適切な1または複数の制限部位で挟むことが好ましい。したがって、本発明に従う発現カセットは、発現ベクター、特に、哺乳動物の発現ベクターを構築するために用いることができる。本発明の発現カセットは、真核生物GAPDHプロモーターもしくはその断片の下流の、1もしくは複数の、例えば、2つ、3つ、もしくはこれをなお超える非翻訳ゲノムDNA配列、および/または真核生物GAPDHプロモーターもしくはその断片の上流の、1もしくは複数の、例えば、2つ、3つ、もしくはこれをなお超える非翻訳ゲノムDNA配列を含みうる。本発明の発現カセットが、真核生物GAPDHプロモーターまたはその断片の下流および/または上流の複数のDNA配列を含む場合、これらのDNA配列は、直接連結することができる、すなわち、リンカー配列、例えば、5’端および3’端に付けられ、配列またはその断片の容易な逐次的クローニングを可能とする、制限部位を含有するリンカー配列を含みうる。代替的に、真核生物GAPDHプロモーターまたはその断片の下流および/または上流のDNA配列を直接連結しない場合もある、すなわち、介在DNA配列と共にクローニングすることもできる。
【0011】
本明細書で用いられる「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列」という用語は、ポリペプチドを発現させる遺伝子、好ましくは、異種遺伝子をコードするDNAを包含する。
【0012】
「異種コード配列」、「異種遺伝子配列」、「異種遺伝子」、「組換え遺伝子」、また
は「遺伝子」という用語は、互換的に用いられる。これらの用語は、宿主細胞において、好ましくは、哺乳動物細胞において発現させ、採取することが求められる組換え産物、特に、組換え異種タンパク質産物をコードするDNA配列を指す。遺伝子産物は、ポリペプチドでありうる。異種遺伝子配列は、天然では宿主細胞内に存在せず、同じ種または異なる種の生物に由来し、遺伝子改変されている場合がある。
【0013】
「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、隣接する残基のアルファ-アミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合により他の残基に付けられる一連のアミノ酸残基を包含するように互換的に用いられる。
【0014】
本明細書で用いられる「非翻訳ゲノムDNA配列」という用語は、生物の遺伝情報を構成するDNAを包含する。ほとんど全ての生物のゲノムはDNAであり、唯一の例外は、RNAゲノムを有する一部のウイルスである。大半の生物におけるゲノムDNA分子は、染色体と呼ばれるDNA-タンパク質複合体へと組織立てられている。染色体のサイズ、数、およびゲノムDNAの性質は、異なる生物の間で変化する。ウイルスDNAゲノムは、一本鎖の場合もあり、二本鎖の場合もあり、直鎖状の場合もあり、環状の場合もある。他の全ての生物は、二本鎖DNAゲノムを有する。細菌は、単一の環状染色体を有する。真核生物では、大半のゲノムDNAが、サイズの異なる複数の直鎖状染色体として核内に配置される(核DNA)。真核細胞は、ゲノムDNAを、ミトコンドリアにもさらに含有し、植物および下等真核生物では、葉緑体にもさらに含有する。このDNAは通例環状分子であり、これらの細胞小器官内に複数のコピーとして存在する。非翻訳ゲノムDNA配列は通常、プロモーターに作動可能に連結されておらず、したがって、翻訳されない。非翻訳ゲノムDNA配列は、翻訳されない(1または複数の)遺伝子、したがって、例えば、発現しないタンパク質をコードする(1または複数の)遺伝子を含有する場合がある。
【0015】
本明細書で用いられる「真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列」という用語は、真核生物GAPDHプロモーターの3’側の非翻訳真核生物ゲノムDNAに対応する。真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は通常、+1近傍のヌクレオチド位置において、好ましくは、ヌクレオチド位置+1において開始され、ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、すなわち、GAPDHをコードする真核生物遺伝子の転写開始起点に照らした位置である。真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は通例、真核生物GAPDHプロモーターと同じ由来である。例えば、GAPDHプロモーターがヒト由来である場合、ヒトGAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列も同様にヒト由来であり、ヒトGAPDHプロモーターの下流の自然発生のヒトゲノムDNA配列に対応する。
【0016】
本明細書で用いられる「真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列」という用語は、真核生物GAPDHプロモーターの5’側の非翻訳真核生物ゲノムDNAに対応する。真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列は通常、真核生物GAPDHプロモーターの5’端近傍のヌクレオチド位置において、好ましくは、真核生物GAPDHプロモーターの5’端にすぐ後続するヌクレオチド位置において開始される。真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列は通例、真核生物GAPDHプロモーターと同じ由来である、例えば、GAPDHプロモーターがヒト由来である場合、ヒトGAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列も同様にヒト由来であり、ヒトGAPDHプロモーターの上流の自然発生のヒトゲノムDNA配列に対応する。
【0017】
本明細書で示される真核生物GAPDHプロモーター、真核生物GAPDHプロモーターの下流または上流の非翻訳ゲノムDNA配列、および他のDNA配列の位置は、GAP
DH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、例えば、とりわけ、別段に示されない限りにおいて、真核生物のGAPDHの転写開始起点に照らした位置である。
【0018】
「真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列が~まで伸びる」または「真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列が~まで伸びる」という用語は、真核生物GAPDHプロモーターの上流および/または下流の非翻訳ゲノムDNA配列の全長のうち、始点から特定の遺伝子エレメントまでの伸長部分、例えば、イントロンまでの伸長部分を定義するのに用いられる。この伸長部分は、遺伝子エレメント、例えば、イントロンまたはその一部をコードするDNA配列の全長を包含する。
【0019】
ヒト、ラット、およびマウスについては、真核生物GAPDHプロモーターならびにGAPDHプロモーターの上流および/または下流の真核生物ゲノムDNAを、NCBI公開データバンクにおいて見出すことができ(ヒト、マウス、ラット、およびチャイニーズハムスターのGAPDH遺伝子のエントリーは、それぞれ、Gene ID2597(mRNA:NM_002046.3)、Gene ID14433(mRNA:NM_008084.2)、Gene ID24383(mRNA:NM_017008.3)、およびGene ID100736557(mRNA:NM_001244854.2)である;National Center for Biotechnology Information(NCBI):http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)、ヒトGAPDH遺伝子については、
図7および8に例示的に示されている。
【0020】
真核生物GAPDHプロモーターは通例、GAPDH mRNAの転写開始点に照らして、bp -500近傍~+50近傍に及ぶと考えられている。ヒトGAPDHプロモーターは、第12染色体上に位置する。Gravenら(Gravenら(1999)、Biochimica et Biophysics Acta、147:203~218)は、断片化研究に基づき、ヒトGAPDHプロモーターが、GAPDH mRNAの転写開始点に照らして、bp -488~+20に及ぶと考えている。NCBI公開データバンクに従うと、ヒトGAPDHプロモーターは、NCBI公開データバンクにより定義されるGAPDH mRNAの転写開始点に照らして、bp -462~+46に及ぶ。とりわけ、別段に示されない限り、本明細書で言及されるヒトGAPDHプロモーターは、GAPDH mRNAの転写開始点に照らして、-462~+46位に及び、これは、配列番号17のbp 4071~4578に及ぶ配列に対応する。
【0021】
本明細書で言及されるヒト、マウス、およびラット由来のGAPDH遺伝子、IFF01遺伝子、およびNCAPD2遺伝子のDNAに用いられる番号付けは、NCBI公開データバンク(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)においてこれらの遺伝子に用いられる番号付けに対応する。
【0022】
本明細書で用いられる「プロモーター」という用語は、一般に遺伝子の上流に位置する調節DNA配列であって、RNAポリメラーゼをDNAに結合するように指示し、RNAの合成を誘発することにより転写の開始を媒介する、調節DNA配列を定義する。
【0023】
本明細書で用いられる「エンハンサー」という用語は、遺伝子の転写を強化するように作用するヌクレオチド配列であって、遺伝子の同一性、遺伝子に照らした配列の位置、または配列の配向とは独立のヌクレオチド配列を定義する。本発明のベクターは、任意選択で、エンハンサーを含む。
【0024】
「機能的に連結された」という用語と「作動可能に連結された」という用語とは、互換的に用いられ、2つ以上のDNAセグメント、特に、発現させる遺伝子配列とそれらの発現を制御する配列との間の機能的な関係を指す。例えば、それが適切な宿主細胞または他
の発現系におけるコード配列の転写を刺激または調節する場合は、シス作用型転写制御エレメントの任意の組合せを含めたプロモーター配列および/またはエンハンサー配列を、コード配列に作動可能に連結する。転写される遺伝子配列に作動可能に連結されたプロモーター調節配列は、転写される配列と物理的に隣接する。
【0025】
「配向」とは、所与のDNA配列におけるヌクレオチドの順序を指す。例えば、別のDNA配列に対して逆方向にあるDNA配列の配向とは、別の配列に照らした、配列の5’側~3’側の順序が、配列が得られたDNA中の基準点と対照して反転される配向である。このような基準点には、供給源であるDNAの他の指定されたDNA配列の転写方向、および/またはこの配列を含有する複製可能なベクターの複製起点が含まれうる。
【0026】
本明細書で用いられる「発現ベクター」という用語は、適切な宿主細胞へとトランスフェクションされると、宿主細胞内で高レベルの組換え遺伝子産物を発現させる単離DNA分子および精製DNA分子を包含する。組換え遺伝子産物をコードするDNA配列に加えて、発現ベクターは、宿主細胞系における、DNAコード配列のmRNAへの効率的な転写およびmRNAのタンパク質への効率的な翻訳に要請される調節性DNA配列を含む。
【0027】
本明細書で用いられる「宿主細胞」または「宿主細胞系」という用語は、任意の細胞、特に、培養物中で成長し、所望の組換え産物タンパク質を発現させることが可能な哺乳動物細胞を包含する。
【0028】
本明細書で用いられる「断片」という用語は、それぞれのヌクレオチド配列の部分、例えば、真核生物GAPDHプロモーターの下流および/または上流の非翻訳ゲノムDNA配列の部分、またはプロモーターなど、特定の遺伝子エレメントをコードするヌクレオチド配列の部分を包含する。真核生物GAPDHプロモーターの下流および/または上流の非翻訳ゲノムDNA配列の断片は、生物学的活性を保持することが可能であり、よって、プロモーターに作動可能に連結されたコード配列の発現パターンを変化させる、例えば、増大させることが可能である。真核生物GAPDHプロモーターの下流および/または上流の非翻訳ゲノムDNA配列の断片は、少なくとも約100~3000bp近傍、好ましくは約200~2800bp近傍、より好ましくは約300~2000bp近傍のヌクレオチド、特に、約500~1500bp近傍のヌクレオチドの範囲にわたりうる。真核生物GAPDHプロモーターの下流および/または上流の非翻訳ゲノムDNA配列の断片を、本発明の発現カセット内にクローニングするためには、容易なクローニングを可能とする制限部位を含有するリンカー配列を、断片の5’端および3’端に付けるのが通例である。
【0029】
本明細書で用いられる「ヌクレオチド配列の同一性」または「同一なヌクレオチド配列」という用語は、最大の配列同一性パーセントに達するように配列をアライニングし、必要な場合はギャップを導入した後における、例えば、真核生物GAPDHプロモーターの下流および/または上流の非翻訳ゲノムDNA配列のヌクレオチド配列と同一な、候補配列中のヌクレオチドの百分率を包含する。したがって、配列同一性は、2つのヌクレオチド配列のヌクレオチド位置の類似性を比較するのに一般に用いられる標準的な方法により決定することができる。通例、候補配列の、真核生物GAPDHプロモーターの下流および/または上流の非翻訳ゲノムDNA配列との、ヌクレオチド配列の同一性は、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、および100%を含め、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%であり、最も好ましくは、少なくとも95%、特定すると96%、より特定すると97%、なおより特定すると98%、最も特定すると99%である。
【0030】
本明細書で用いられる「CpG部位」という用語は、直鎖状の塩基配列中のその長さに沿って、グアニンヌクレオチドの隣にシトシンヌクレオチドが現れるDNAの領域を包含する。「CpG」とは、「-C-リン酸-G-」、すなわち、1つのリン酸だけで隔てられたシトシンおよびグアニンの略称であり、リン酸により、任意の2つのヌクレオシドが、DNA中で一体に連結されている。「CpG」という表記は、この直鎖状配列を、シトシンとグアニンとによるCG塩基対合から識別するのに用いられる。
【0031】
本明細書で用いられる「代替的なコドン使用」という用語は、CpG配列モチーフを回避するための、同じアミノ酸をコードする代替的なコドンの使用を包含する。この用語は、好ましくは、内部のCpG部位を有さないコドン(例えば、アラニンをコードし、CpG部位を含有するGCGは、GCT、GCC、またはGCAで置きかえることができる)を用いることのほか、2つのコドンが接続されて新たなCpG部位をもたらすのを回避することも包含する。
【0032】
DNA配列の長さに関して本明細書で用いられ、かつ、GAPDH mRNAの転写開始点に照らしたヌクレオチド位置、例えば、真核生物のGAPDHの転写開始起点に照らしたヌクレオチド位置に関しても本明細書で用いられる「約または近傍」という用語は、言明された値に対して最大で±50%、通例は最大で±10%の偏差を伴う値を包含し、例えば、「約3000ヌクレオチド」には、2700~3300ヌクレオチド、好ましくは2900~3100ヌクレオチド、より好ましくは2995~3005ヌクレオチドの値が含まれ、「約100ヌクレオチド」には、50~150ヌクレオチド、好ましくは90~110ヌクレオチド、より好ましくは95~105ヌクレオチドの値が含まれ、「約15000ヌクレオチド」には、13500~16500ヌクレオチド、好ましくは14500~15500ヌクレオチド、より好ましくは14990~15010ヌクレオチド、最も好ましくは14995~15005ヌクレオチドの値が含まれ、「約200ヌクレオチド」には、150~250ヌクレオチド、好ましくは190~210ヌクレオチド、より好ましくは195~205ヌクレオチドの値が含まれ、「約8000ヌクレオチド」には、7200~8800ヌクレオチド、好ましくは7500~8500ヌクレオチド、より好ましくは7990~8010ヌクレオチド、最も好ましくは7995~8005ヌクレオチドの値が含まれ、「約500ヌクレオチド」には、450~550ヌクレオチド、好ましくは475~525ヌクレオチド、より好ましくは490~510ヌクレオチド、最も好ましくは495~505ヌクレオチドの値が含まれ、「約5000ヌクレオチド」には、4500~5500ヌクレオチド、好ましくは4750~5250ヌクレオチド、より好ましくは4990~5010ヌクレオチド、最も好ましくは4995~5005ヌクレオチドの値が含まれ、「約1000ヌクレオチド」には、900~1100ヌクレオチド、好ましくは950~1050ヌクレオチド、より好ましくは990~1010ヌクレオチド、最も好ましくは995~1005ヌクレオチドの値が含まれ、「約4500ヌクレオチド」には、4050~4950ヌクレオチド、好ましくは4250~4750ヌクレオチド、より好ましくは4490~4510ヌクレオチド、最も好ましくは4495~4505ヌクレオチドの値が含まれ、「約1500ヌクレオチド」には、1350~1650ヌクレオチド、好ましくは1450~1550ヌクレオチド、より好ましくは1490~1510ヌクレオチド、最も好ましくは1495~1505ヌクレオチドの値が含まれ、「約4000ヌクレオチド」には、3600~4400ヌクレオチド、好ましくは3800~4200ヌクレオチド、より好ましくは3990~4010ヌクレオチド、より好ましくは3995~4005ヌクレオチドの値が含まれ、「約2000ヌクレオチド」には、1800~2200ヌクレオチド、好ましくは1900~2100ヌクレオチド、より好ましくは1990~2010ヌクレオチド、最も好ましくは1995~2005ヌクレオチドの値が含まれ、「約3500ヌクレオチド」には、3150~3850ヌクレオチド、好ましくは3300~3700ヌクレオチド、より好ましくは3490~3510ヌクレオチド、最も好ましくは3495~3505ヌクレオチドの値が含まれ、「
約2700ヌクレオチド」には、2430~2970ヌクレオチド、好ましくは2600~2800ヌクレオチド、より好ましくは2690~2710ヌクレオチド、最も好ましくは2695~2705ヌクレオチドの値が含まれ、「約3300ヌクレオチド」には、2970~3630ヌクレオチド、好ましくは3100~3500ヌクレオチド、より好ましくは3290~3310ヌクレオチド、最も好ましくは3295~3305ヌクレオチドの値が含まれ、「約3200ヌクレオチド」には、2880~3520ヌクレオチド、好ましくは3000~3400ヌクレオチド、より好ましくは3190~3210ヌクレオチド、最も好ましくは3195~3205ヌクレオチドの値が含まれ、+7000近傍または+7000位近傍には、+6300~+7700位、好ましくは+6700~+7300位、より好ましくは+6990~+7010位、最も好ましくは+6995~+7005位が含まれ、+1近傍または+1位近傍には、-10~+10位、好ましくは-5~+5位、より好ましくは-1~+2位が含まれ、-3500近傍または-3500位近傍には、-3150~-3850位、好ましくは-3300~-3700位、より好ましくは-3490~-5010位、最も好ましくは-3495~-3505位が含まれる。本明細書で言及されるヒト、マウス、およびラット由来のGAPDH遺伝子、IFF01遺伝子、およびNCAPD2遺伝子のDNAに用いられる番号付けに関して本明細書で用いられるか、またはある配列番号の配列内の位置に関して本明細書で用いられる「近傍」という用語は、最大で±500bp、好ましくは±100bp、より好ましくは±10bp、最も好ましくは±5bpの偏差を伴う値を包含する。
【0033】
一実施形態では、本開示は、プロモーター、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、および真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列を含む発現カセットであって、ポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドがGAPDHではなく、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、+1近傍のヌクレオチド位置~+7000近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが約100~約15000ヌクレオチドである、発現カセットを提供する。一実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、少なくとも約100ヌクレオチドであり、その最長の場合で、IFF01遺伝子の最後から2番目のイントロンまたはその一部まで伸びる。一実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、少なくとも約100ヌクレオチドであり、その最長の場合で、IFF01遺伝子の最後のイントロンまで伸びる。
【0034】
ヒトIFF01遺伝子は、第12染色体のbp 6665249~6648694近傍のヒトDNAに位置する(NCBIGene ID:25900)。一実施形態では、その最長の場合で、ヒトにおけるIFF01遺伝子の最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、その最長の場合で、ヒトにおけるIFF01遺伝子をコードする第12染色体のbp 6650677(+7021位)近傍まで及ぶ。一実施形態では、その最長の場合で、ヒトにおけるIFF01遺伝子の最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、その最長の場合で、ヒトにおけるIFF01遺伝子をコードする第12染色体のbp 6657230(+13574位)近傍まで及ぶ。その最長の場合で、それぞれ、ヒトにおけるIFF01遺伝子の最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列、およびヒトにおけるIFF01遺伝子の最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、第12染色体のbp 6657230~6639125を示す配列番号17に含まれている(NCBIGene ID:25900)。最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は、配列番号17により示されるヌクレオチド配列のbp 11553近傍まで
及び、最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は、配列番号17により示されるヌクレオチド配列のbp 18106近傍まで及ぶ。
【0035】
マウスIFF01遺伝子(NCBIGene ID:320678)は、第6染色体のbp 125095259~125111800近傍のマウスDNAに位置する。一実施形態では、その最長の場合で、マウスにおけるIFF01遺伝子の最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、その最長の場合で、マウスにおけるIFF01遺伝子をコードする第6染色体のbp 125109211(+6391位)近傍まで及ぶ。一実施形態では、その最長の場合で、マウスにおけるIFF01遺伝子の最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、その最長の場合で、マウスにおけるIFF01遺伝子をコードする第6染色体のbp 125103521(+12081位)近傍まで及ぶ。その最長の場合で、マウスにおけるIFF01遺伝子の、それぞれ、最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列、および最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、第6染色体のbp 125103521~125119832を示す配列番号18に含まれている(NCBIGene ID:320678)。マウスにおけるIFFO1遺伝子の最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は、配列番号18により示されるヌクレオチド配列のbp 10622近傍まで及び、マウスにおけるIFFO1遺伝子の最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は、配列番号18により示されるヌクレオチド配列のbp 16312近傍まで及ぶ。
【0036】
ラットIFF01遺伝子(NCBIGene ID:362437)は、第4染色体のbp 161264966~161282150近傍のラットDNAに位置する。一実施形態では、その最長の場合で、ラットにおけるIFF01遺伝子の最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、その最長の場合で、ラットにおけるIFF01遺伝子をコードする第4染色体のbp 161280937(+5154位)近傍まで及ぶ。一実施形態では、その最長の場合で、ラットにおけるIFF01遺伝子の最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、その最長の場合で、ラットにおけるIFF01遺伝子をコードする第4染色体のbp 161279451(+6640位)近傍まで及ぶ。
【0037】
その最長の場合で、それぞれ、ラットにおけるIFF01遺伝子の最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列、および最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、第4染色体のbp 161279451~161290508を示す配列番号19に含まれている(NCBIGene ID:362437)。IFFO1遺伝子の最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は、配列番号19により示されるヌクレオチド配列のbp 9572近傍まで及び、IFFO1遺伝子の最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は、配列番号19により示されるヌクレオチド配列のbp 11058近傍まで及ぶ。
【0038】
チャイニーズハムスターIFFO1遺伝子(NCBIGene ID:100753382)は、bp 3577293~3593683近傍のチャイニーズハムスターDNAに位置する。一実施形態では、その最長の場合で、チャイニーズハムスターにおけるIF
F01遺伝子の最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、その最長の場合で、チャイニーズハムスターにおけるIFF01遺伝子をコードするbp 3579014(+6883位)近傍まで及ぶ。一実施形態では、その最長の場合で、チャイニーズハムスターにおけるIFF01遺伝子の最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、その最長の場合で、チャイニーズハムスターにおけるIFFO1遺伝子をコードするbp 3585061(+12930位)近傍まで及ぶ。NCBIデータバンクでは、染色体の位置がいまだ注記されておらず、最新の配列情報も、多くの未知の塩基を含有する。したがって、境界についての精密な注記は、より正確な配列情報が入手可能となるのに従い変化する可能性がある。
【0039】
その最長の場合で、チャイニーズハムスターにおけるIFF01遺伝子のそれぞれ、最後のイントロンまで伸びる、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列、および最後から2番目のイントロンまで伸びる、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は、bp 3567932~3585061を示す配列番号29に包含される。IFFO1遺伝子の最後のイントロンまで伸びる、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は、配列番号29により示されるヌクレオチド配列のbp 11083近傍まで及び、IFFO1遺伝子の最後から2番目のイントロンまで伸びる、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は、配列番号29により示されるヌクレオチド配列のbp 17130近傍まで及ぶ。
【0040】
さらなる実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、真核生物のGAPDHのポリアデニル化部位において開始される、例えば、真核生物のGAPDHのポリアデニル化部位をコードする最初のヌクレオチドにおいて開始される。真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は、真核生物のGAPDHのポリアデニル化部位の下流で開始される、例えば、真核生物のGAPDHのポリアデニル化部位をコードする最後のヌクレオチドにすぐ後続して開始されることが好ましい。真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は、真核生物のGAPDHのポリアデニル化部位の下流で開始され、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さは、少なくとも約100ヌクレオチドであり、その最長の場合で、IFF01遺伝子の最後から2番目のイントロンまで伸びることがなおより好ましい。
【0041】
一実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、+3881近傍のヌクレオチド位置~+5000近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で、好ましくは+3931近傍のヌクレオチド位置~+5000近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で、より好ましくは+4070近傍のヌクレオチド位置~+5000近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置である。例えば、本発明で用いられる真核生物のGAPDHのポリアデニル化部位の下流で開始される真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は通例、+3931位近傍のヌクレオチド位置において、好ましくは+4070近傍のヌクレオチド位置において開始され、ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置である。
【0042】
ヒトでは、ヒトGAPDHポリアデニル化部位の下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、ヌクレオチド位置+3931の近傍(配列番号17に示されるbp 8463に対応するGAPDH mRNAの転写開始点に照らして)において開始される。GAPDHポリアデニル化部位の下流の非翻訳ゲノムDNA配列がヒトに由来する場合は、GAPDHポリアデニル化部位の下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、+3931近傍(配列番号17に示さ
れるbp 8463に対応するGAPDH mRNAの転写開始点に照らして)において開始され、その長さが、配列番号17に示されるbp 8463近傍~11819近傍の配列に対応する3357bp近傍であることが好ましく、GAPDHポリアデニル化部位の下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、+4070近傍(配列番号17に示されるbp 8602に対応するGAPDH mRNAの転写開始点に照らして)において開始され、その長さが、配列番号17に示されるbp 8602近傍~11819近傍の配列に対応する3218bp近傍であることがより好ましい。
【0043】
さらなる実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、配列番号8および21またはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0044】
さらなる実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、配列番号8および21またはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を含む。
【0045】
さらなる実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、配列番号8および21またはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%同一なヌクレオチド配列を含む。
【0046】
一部の実施形態では、配列番号8および21またはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列が、5カ所以下、好ましくは4カ所以下、より好ましくは3カ所以下、最も好ましくは2カ所以下、特に、1カ所の核酸修飾を含み、(1または複数の)核酸修飾は、核酸置換であることが好ましい。
【0047】
さらなる実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、好ましくは約200~約8000ヌクレオチド、より好ましくは約500~約5000ヌクレオチド、なおより好ましくは約1000~約4500ヌクレオチド、最も好ましくは約1500~約4000ヌクレオチド、特に、約2000~約3500ヌクレオチド、より特定すると約2700~約3300、なおより特定すると約3200、最も特定すると3218ヌクレオチドである。本明細書で規定される真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さには、非翻訳ゲノムDNA配列へと付加されるリンカー配列を組み入れない。
【0048】
さらなる実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列と同方向に配向している。
【0049】
さらなる実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列と逆方向に配向している。
【0050】
一部の実施形態では、プロモーター、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、および真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列を含む発現カセットが、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列をさらに含み、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、真核生物GAPDHプロモーターの5’端近傍~-3500近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、約100~約15000ヌクレオチドである。
【0051】
別の実施形態では、発現カセットが、真核生物GAPDHプロモーターまたはその断片
を含まないという条件で、発現カセットが、プロモーター、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、および真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列を含み、ポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドがGAPDHではなく、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、真核生物GAPDHプロモーターの5’端近傍~-3500近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが100~約15000ヌクレオチドである。
【0052】
一部の実施形態では、発現カセットが、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列をさらに含み、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、+1近傍のヌクレオチド位置~+7000近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが約100~約15000ヌクレオチドである。これらの実施形態では、用いられる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、例えば、前出で記載されている。
【0053】
一部の実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、好ましくは約200~約8000ヌクレオチド、より好ましくは約500~約5000ヌクレオチド、なおより好ましくは約1000~約4500ヌクレオチド、最も好ましくは約1500~約4000ヌクレオチド、特に、約2000~約3500ヌクレオチド、より特定すると約2700~約3300、なおより特定すると約3200、最も特定すると3158ヌクレオチドの長さである。本明細書で規定される真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さには、非翻訳ゲノムDNA配列へと付加されるリンカー配列を組み入れない。
【0054】
さらなる実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、少なくとも約100ヌクレオチドであり、その最長の場合で、NCAPD2遺伝子の開始コドンまで伸びる。さらなる実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、少なくとも約100ヌクレオチドであり、その最長の場合で、NCAPD2遺伝子の最後から3番目のイントロンまで伸びる。さらなる実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、少なくとも約100ヌクレオチドであり、その最長の場合で、NCAPD2遺伝子の最後から2番目のイントロンまで伸びる。さらなる実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、少なくとも約100ヌクレオチドであり、その最長の場合で、NCAPD2遺伝子の最後のイントロンまで伸びる。
【0055】
ヒトNCAPD2遺伝子(NCBIGene ID:9918)は、第12染色体のbp 6603298~6641132近傍のヒトDNAに位置する。一実施形態では、その最長の場合で、ヒトにおけるNCAPD2遺伝子の最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、その最長の場合で、ヒトにおけるNCAPD2遺伝子をコードする第12染色体の6640243bp(配列番号17におけるbp 1119に対応するGAPDH遺伝子の転写開始点に照らした-3414位)近傍まで及ぶ。
【0056】
一実施形態では、その最長の場合で、ヒトにおけるNCAPD2遺伝子の最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、その最長の場合で、ヒトにおけるNCAPD2遺伝子をコードする第12染色体の6639984bp(配列番号17におけるbp 860に対応するGAPDH
遺伝子の転写開始点に照らした-3673位)近傍まで及ぶ。
【0057】
一実施形態では、その最長の場合で、ヒトにおけるNCAPD2遺伝子の最後から3番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、その最長の場合で、ヒトにおけるNCAPD2遺伝子をコードする第12染色体の6639125bp(配列番号17におけるbp 1に対応するGAPDH遺伝子の転写開始点に照らした-4532位)近傍まで及ぶ。
【0058】
その最長の場合で、ヒトにおけるNCAPD2遺伝子の、それぞれ、最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列、最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列、および最後から3番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列は、第12染色体のbp 6657230~6639125を示す配列番号17に包含される(NCBIGene ID:9918)。
【0059】
マウスNCAPD2遺伝子(Gene ID:68298)は、第6染色体の125118025~125141604位近傍のマウスDNAに位置する。一実施形態では、その最長の場合で、マウスにおけるNCAPD2遺伝子の最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さ(転写開始点の上流において、500bpの長さであると推定される)が、その最長の場合で、マウスにおけるNCAPD2遺伝子をコードする第6染色体のbp 125118607近傍まで及ぶ。
【0060】
一実施形態では、その最長の場合で、マウスにおけるNCAPD2遺伝子の最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、その最長の場合で、マウスにおけるNCAPD2遺伝子をコードする第6染色体の125118880bp近傍まで及ぶ。
【0061】
一実施形態では、その最長の場合で、マウスにおけるNCAPD2遺伝子の最後から3番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、その最長の場合で、マウスにおけるNCAPD2遺伝子をコードする第6染色体の125119832bp近傍まで及ぶ。
【0062】
その最長の場合で、マウスにおけるNCAPD2遺伝子の、それぞれ、最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列、最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列、および最後から3番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列は、第6染色体のbp 125103521~125119832を示す配列番号18に包含される(NCBIGene ID:68298)。最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列は、配列番号18により示されるヌクレオチド配列のbp 1226(マウスGAPDH mRNAの転写開始点に照らした-3006)近傍まで及ぶ。最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は、配列番号18により示されるヌクレオチド配列のbp 953(マウスGAPDH mRNAの転写開始点に照らした-3279)近傍まで及ぶ。最後から3番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は、配列番号18により示されるヌクレオチド配列のbp 1(マウスGAPDH mRNAの転写開始点に照らした-4231)近傍まで及ぶ。
【0063】
ラットNCAPD2遺伝子(Gene ID:362438)は、第4染色体の161
288671~161310417位近傍の真核生物DNAに位置する。一実施形態では、その最長の場合で、ラットにおけるNCAPD2遺伝子の最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、その最長の場合で、ラットにおけるNCAPD2遺伝子をコードする第4染色体の161289191bp近傍まで及ぶ。一実施形態では、その最長の場合で、ラットにおけるNCAPD2遺伝子の最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、その最長の場合で、ラットにおけるNCAPD2遺伝子をコードする第4染色体の161289446bp近傍まで及ぶ。一実施形態では、その最長の場合で、ラットにおけるNCAPD2遺伝子の最後から3番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、その最長の場合で、ラットにおけるNCAPD2遺伝子をコードする第4染色体の161290508bp近傍まで及ぶ。
【0064】
その最長の場合で、ラットにおけるNCAPD2遺伝子の、それぞれ、最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列、最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列、および最後から3番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列は、第4染色体のbp 161279451~161290508を示す配列番号19に包含される(NCBIGene ID:362438)。最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列は、配列番号19により示されるヌクレオチド配列のbp 1318(ラットGAPDH mRNAの転写開始点に照らした-3101)近傍まで及ぶ。最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は、配列番号19により示されるヌクレオチド配列のbp 1063(ラットGAPDH mRNAの転写開始点に照らした-3356位)近傍まで及ぶ。最後から3番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は、配列番号19により示されるヌクレオチド配列のbp 1(ラットGAPDH mRNAの転写開始点に照らした-4418位)近傍まで及ぶ。
【0065】
チャイニーズハムスターNCAPD2遺伝子(Gene ID:100753087)は、3544184~3569879位近傍の真核生物DNAに位置する。NCBIデータベースでは、染色体の位置が検索可能でない。一実施形態では、その最長の場合で、チャイニーズハムスターにおけるNCAPD2遺伝子の最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、その最長の場合で、チャイニーズハムスターにおける3569380bp近傍まで及ぶ。一実施形態では、その最長の場合で、チャイニーズハムスターにおけるNCAPD2遺伝子の最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、その最長の場合で、チャイニーズハムスターにおける3569131bp近傍まで及ぶ。一実施形態では、その最長の場合で、チャイニーズハムスターにおけるNCAPD2遺伝子の最後から3番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、その最長の場合で、チャイニーズハムスターにおける3567932bp近傍まで及ぶ。
【0066】
その最長の場合で、チャイニーズハムスターにおけるNCAPD2遺伝子の、それぞれ、最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列、最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列、および最後から3番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列は、bp 3567932~3585061を示す配列番号29に包含される。最後のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列は、配列番号29により示されるヌ
クレオチド配列のbp 1449(チャイニーズハムスターGAPDH mRNAの転写開始点に照らした-2752)近傍まで及ぶ。最後から2番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は、配列番号29により示されるヌクレオチド配列のbp 1200(チャイニーズハムスターGAPDH mRNAの転写開始点に照らした-3001位)近傍まで及ぶ。最後から3番目のイントロンまで伸びる真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は、配列番号29により示されるヌクレオチド配列のbp 1(チャイニーズハムスターGAPDH
mRNAの転写開始点に照らした-4200位)近傍まで及ぶ。
【0067】
一部の実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列が通例、-500近傍のヌクレオチド位置~-3500近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で、好ましくは、-576近傍のヌクレオチド位置~-3500近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、ヌクレオチド位置は、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置である。
【0068】
一部の実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列が通例、-500位近傍のヌクレオチド位置において、好ましくは、-576近傍のヌクレオチド位置において開始され、ヌクレオチド位置は、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置である。
【0069】
ヒトでは、ヒトGAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、ヌクレオチド位置-463の近傍(配列番号17に示されるbp 4533に対応するGAPDH
mRNAの転写開始点に照らして)において開始される。GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列がヒトに由来する場合は、GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、-500近傍(配列番号17に示されるbp 4533に対応するGAPDH mRNAの転写開始点に照らして)において開始されることが好ましい。GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列がヒトに由来する場合は、GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、-576近傍(配列番号17に示されるbp 4533に対応するGAPDH mRNAの転写開始点に照らして)において開始され、その長さが、配列番号17に示されるbp 800近傍~3957近傍の配列に対応する約3158bpであることがより好ましい。
【0070】
さらなる実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、配列番号7、9、10、11、12、13、14、15、16、20、22、23、24、25、26、27、および28からなる群から選択されるヌクレオチド配列もしくはその断片、好ましくは、配列番号7、9、10、11、12、13、14、15、および16からなる群から選択されるヌクレオチド配列もしくはその断片、または配列番号20、22、23、24、25、26、27、28、および16からなる群から選択されるヌクレオチド配列もしくはその断片を含む。配列番号10、12、15、および16からなる群から選択されるヌクレオチド配列またはその断片、より好ましくは、配列番号10、12、15、および16からなる群から選択されるヌクレオチド配列またはその断片であって、配列番号10および/または16を含むヌクレオチド配列が、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に対して逆方向に配向し、配列番号12および/または15を含むヌクレオチド配列が、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列と同方向に配向しているヌクレオチド配列またはその断片がより好ましい。配列番号23、25、28、および16からなる群から選択されるヌクレオチド配列またはその断片、より好ましくは、配列番号23、25、28、および16からなる群から選択されるヌクレオチド配列またはその断片であって、配列番号23および/または16を含むヌクレオチド配列が、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に対して逆方向に配向し、配列番号25および/または28を含むヌクレオチド配列が、ポリペプチドをコードするポリ
ヌクレオチド配列と同方向に配向しているヌクレオチド配列またはその断片も同様により好ましい。
【0071】
さらなる実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、配列番号7、9、10、11、12、13、14、15、16、20、22、23、24、25、26、27、および28もしくはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列、好ましくは、配列番号7、9、10、11、12、13、14、15、および16もしくはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列、または配列番号20、22、23、24、25、26、27、28、および16もしくはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を含む。配列番号10、12、15、および16もしくはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列がより好ましい。配列番号23、25、28、および16もしくはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列も同様により好ましい。
【0072】
さらなる実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、配列番号7、9、10、11、12、13、14、15、16、20、22、23、24、25、26、27、および28もしくはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%同一なヌクレオチド配列、好ましくは、配列番号7、9、10、11、12、13、14、15、および16もしくはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%同一なヌクレオチド配列、または配列番号20、22、23、24、25、26、27、28、および16もしくはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%同一なヌクレオチド配列を含む。配列番号10、12、15、および16またはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%同一なヌクレオチド配列、より好ましくは、配列番号10、12、15、および16またはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%同一なヌクレオチド配列であって、配列番号10および/または16を含むヌクレオチド配列が、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に対して逆方向に配向し、配列番号12および/または15を含むヌクレオチド配列が、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列と同方向に配向しているヌクレオチド配列またはその断片がより好ましい。配列番号23、25、28、および16からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%同一なヌクレオチド配列またはその断片、より好ましくは、配列番号23、25、28、および16からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%同一なヌクレオチド配列またはその断片であって、配列番号23および/または16を含むヌクレオチド配列が、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に対して逆方向に配向し、配列番号25および/または28を含むヌクレオチド配列が、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列と同方向に配向しているヌクレオチド配列またはその断片も同様により好ましい。
【0073】
一部の実施形態では、配列番号7、9、10、11、12、13、14、15、16、20、22、23、24、25、26、27、および28もしくはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列が、5カ所以下、好ましくは4カ所以下、より好ましくは3カ所以下、最も好ましくは2カ所以下、特に、1カ所の核酸修飾を含み、(1または複数の)核酸修飾は、核酸置換であることが好ましい。
【0074】
一部の実施形態では、配列番号7、9、11、14、20、22、24、および27またはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列が、5カ所以下、好ましくは4カ所以下、より好ましくは3カ所以下、最も好ましくは2カ所以下、特に、1カ所の核酸修飾を含み、(1または複数の)核酸修飾は、核酸置換であることが好ましい。
【0075】
一部の実施形態では、配列番号7、9、11、14またはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列が、配列番号7、9、11、14のヌクレオチド配列の開始点に照らした16位において、1カ所の核酸置換を含む。ヌクレオチド配列の開始点に照らした16位におけるGを、Tで置きかえることが好ましい。
【0076】
一部の実施形態では、配列番号20、22、24、および27またはその断片からなる群から選択されるヌクレオチド配列が、配列番号20、22、24、および27のヌクレオチド配列の開始点に照らした13位において、1カ所の核酸置換を含む。ヌクレオチド配列の開始点に照らした13位におけるGを、Tで置きかえることが好ましい。
【0077】
さらなる実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列と同方向に配向している。
【0078】
さらなる実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列と逆方向に配向している。
【0079】
好ましい実施形態では、発現カセットが、プロモーター、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、ならびに前出で記載した真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列および真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列を含む。真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の由来と、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の由来とが同じである、すなわち、同じ種の由来であることが好ましい。真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の由来と、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の由来と、宿主細胞の由来とが、同じである、すなわち、同じ種の由来であることがより好ましい。例えば、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の由来と、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の由来と、宿主細胞の由来とが、同じ哺乳動物由来、例えば、ヒト由来である。
【0080】
一部の実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの下流および/または上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、1つの種に由来する非翻訳ゲノムDNA配列である場合、発現カセットのプロモーターは、同じ種に由来するGAPDHプロモーターではない。
【0081】
一部の実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの下流および/または上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、ヒト由来の下流および/または上流の非翻訳ゲノムDNA配列である場合、発現カセットのプロモーターは、ヒトGAPDHプロモーターではない。
【0082】
一部の実施形態では、発現カセットのプロモーターが、GAPDHプロモーターではない。一実施形態では、発現カセットが、プロモーター、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、および真核生物グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)プロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列を含み、ポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドがGAPDHではなく、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、+1近傍のヌクレオチド位置~+7000近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが約100~約15000ヌクレオチドであり、発現カセットが真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列をさらに含み、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、真核生物GAPDHプロモーターの5’端近傍~-3500近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、真核生物
GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが約100~約15000ヌクレオチドである場合、発現カセットのプロモーターは、真核生物GAPDHプロモーター、好ましくは、哺乳動物GAPDHプロモーター、より好ましくは、齧歯動物GAPDHプロモーターまたはヒトGAPDHプロモーターでありうる。この実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの5’端近傍~-3500近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始される、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、真核生物GAPDHプロモーターのすぐ上流に位置することが好ましく、この実施形態では、発現カセットが、真核生物GAPDHプロモーターを含み、-3500近傍のヌクレオチド位置まで伸びる自然発生のゲノムDNA配列を含むことがより好ましく、ヌクレオチド位置は、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置である。
【0083】
一部の実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの下流および/または上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、哺乳動物に由来する、例えば、真核生物GAPDHプロモーターが、哺乳動物GAPDHプロモーターであり、哺乳動物GAPDHプロモーターの下流および/または上流の非翻訳ゲノムDNA配列を、本明細書で記載される通りに用いる。
【0084】
一部の実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの下流および/または上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、齧歯動物またはヒトに由来する、例えば、真核生物GAPDHプロモーターが齧歯動物GAPDHプロモーターまたはヒトGAPDHプロモーターであり、齧歯動物GAPDHプロモーターまたはヒトGAPDHプロモーターの下流および/または上流の非翻訳ゲノムDNA配列を本明細書で記載される通りに用いる。
【0085】
真核生物GAPDHプロモーターの下流および/または上流の非翻訳ゲノムDNA配列は、ヒト由来の配列、ラット由来の配列、またはマウス由来の配列から選択されることが好ましく、ヒト由来の配列またはマウス由来の配列から選択されることがより好ましく、ヒト由来の配列から選択されることが最も好ましい。
【0086】
一部の実施形態では、真核生物GAPDHプロモーターの下流および/または上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に連結していない。
【0087】
一部の実施形態では、発現カセットが、ポリアデニル化部位を含む。ポリアデニル化部位は、SV40 poly(A)およびBGH(ウシ成長ホルモン)poly(A)からなる群から選択されることが好ましい。
【0088】
一部の実施形態では、発現カセットのプロモーターとポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列とが作動可能に連結している。
【0089】
一部の実施形態では、発現カセットのプロモーターが、SV40プロモーター、ヒトtkプロモーター、MPSVプロモーター、マウスCMV、ヒトCMV、ラットCMV、ヒトEF1アルファ、チャイニーズハムスターEF1アルファ、ヒトGAPDH、MYCプロモーター、HYKプロモーター、およびCXプロモーターを組み入れたハイブリッドプロモーターからなる群から選択される。
【0090】
一部の実施形態では、発現カセットによりコードされるポリペプチドが、非グリコシル化ポリペプチドおよびグリコシル化ポリペプチドでありうる。グリコシル化ポリペプチドとは、少なくとも1つのオリゴ糖鎖を有するポリペプチドを指す。
【0091】
非グリコシル化タンパク質の例は、例えば、非グリコシル化ホルモン;非グリコシル化酵素;神経成長因子(NGF)ファミリー、上皮成長因子(EGF)、および線維芽細胞
成長因子(FGF)ファミリーの非グリコシル化成長因子;ならびにホルモンおよび成長因子の非グリコシル化受容体である。
【0092】
グリコシル化タンパク質の例は、ホルモンおよびホルモン放出因子、凝血因子、抗凝血因子、ホルモンまたは成長因子の受容体、神経栄養因子、サイトカインおよびそれらの受容体、T細胞受容体、表面膜タンパク質、輸送タンパク質、ホーミング受容体、アドレッシン、調節タンパク質、抗体、イムノアドヘシンなどのキメラタンパク質、およびグリコシル化タンパク質のうちのいずれかの断片である。ポリペプチドは、抗体、抗体断片、または抗体誘導体(例えば、Fc融合タンパク質および二重特異的抗体など、特定の抗体フォーマット)からなる群から選択されることが好ましい。本明細書で用いられる抗体断片には、(i)ドメイン、(ii)Fab’およびFab’-SHを含めた、VLドメイン、VHドメイン、CLドメインまたはCKドメイン、およびCH1ドメインからなるFab断片、(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iv)単一の可変ドメインからなるdAb断片(Ward ESら(1989)、Nature、341(6242):544~6)、(v)連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片、(vi)2つのドメインが会合して抗原結合部位を形成することを可能とするペプチドリンカーにより、VHドメインとVLドメインとが連結された単鎖Fv分子(scFv)(Bird REら(1988)、Science、242(4877):423~6;Huston JSら(1988)、Proc Natl Acad Sci USA、85(16):5879~83)、(vii)遺伝子融合により構築される「ダイアボディー」または「トリアボディー」、多価断片または多重特異的断片(Holliger Pら(1993)、Proc Natl Acad Sci USA、90(14):6444~8;Holliger Pら(2000)、Methods Enzymol、326:461~79)、(viii)Fc領域へと融合させたscFv、ダイアボディー、またはドメイン抗体、および(ix)同じ抗体または異なる抗体へと融合させたscFvが含まれるがこれらに限定されない。
【0093】
一部の実施形態では、発現カセットが、さらなるプロモーター、エンハンサー、転写制御エレメント、および選択マーカー、好ましくは、動物細胞内で発現する選択マーカーからなる群から選択される遺伝子エレメントをさらに含む。転写制御エレメントは、例えば、コザック配列または転写ターミネーターエレメントである。
【0094】
一実施形態では、遺伝子エレメントが、選択マーカーであり、選択マーカーをコードするポリヌクレオチド配列中に含有されるCpG部位の含量が45以下、好ましくは40以下、より好ましくは20以下、特に、10以下、より特定すると5以下、最も特定すると0である(CpG部位は、完全に除去されている)。
【0095】
さらなる態様では、本開示は、発現ベクター、好ましくは、前出で記載した発現カセットを含む哺乳動物の発現ベクターを提供する。一部の実施形態では、発現ベクターが、少なくとも2つの個別の転写単位を含む。2つの個別の転写単位を伴う発現ベクターはまた、二重遺伝子ベクターとも称する。その例は、第1の転写単位が、抗体またはその断片の重鎖をコードし、第2の転写単位が、抗体の軽鎖をコードするベクターである。別の例は、2つの転写単位が、酵素などのタンパク質の2つの異なるサブユニットをコードする二重遺伝子ベクターである。しかしまた、本発明の発現ベクターが、2つを超える個別の転写単位、例えば、それらの各々が、異なるポリペプチド鎖をコードする異なるヌクレオチド配列を含む、3つ、4つ、またはこれをなお超える個別の転写単位を含むことも可能である。したがって、例は、それらの各々が、4つの異なるサブユニットからなる酵素の1つのサブユニットをコードする異なるヌクレオチド配列を含有する、4つの個別の転写単位を伴うベクターである。
【0096】
一部の実施形態では、発現ベクターが、さらなるプロモーター、エンハンサー、転写制御エレメント、複製起点、および選択マーカーからなる群から選択される遺伝子エレメントをさらに含む。
【0097】
一部の実施形態では、発現ベクターが、複製起点および選択マーカーをさらに含み、複製起点および選択マーカーをコードする発現ベクターのポリヌクレオチド配列中に含有されるCpG部位の含量が200以下、好ましくは150以下、特に、100以下、より特定すると50以下、最も特定すると30以下である。
【0098】
本発明の発現カセットまたは発現ベクターには、チミジンキナーゼ(tk)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ピューロマイシン、ネオマイシン、またはグルタミンシンセターゼ(GS)など、一般に使用される任意の選択マーカーを用いることができる。本発明の発現ベクターはまた、本発明の異種タンパク質を分泌させるための発現のカセットを挿入するのに有用な限定数の制限部位も含むことが好ましい。特に、一過性/エピソーム発現だけに用いる場合、本発明の発現ベクターは、真核生物の宿主細胞における自己複製/エピソーム維持のために、エプスタインバーウイルス(EBV)またはSV40ウイルスに由来するoriPなどの複製起点をさらに含みうるが、選択マーカーを欠いていてもよい。また、ベクターの複製を容易にする関与性の因子を欠く細胞における一過性発現も可能である。発現カセットを保有する発現ベクターは、蛍光マーカーをコードする発現カセット、ncRNAをコードする発現カセット、抗アポトーシスタンパク質をコードする発現カセット、または分泌経路の能力を増大させるタンパク質をコードする発現カセットをさらに含みうる。
【0099】
さらなる態様では、本開示は、a)またはb)が、真核生物GAPDHの上流の非翻訳ゲノムDNA配列である場合は、f)が、真核生物GAPDHの下流の非翻訳ゲノムDNA配列であり、a)またはb)が、真核生物GAPDHの下流の非翻訳ゲノムDNA配列である場合は、f)が、真核生物GAPDHの上流の非翻訳ゲノムDNA配列であるという条件で、
a)真核生物GAPDHプロモーターの上流および/もしくは下流の非翻訳ゲノムDNA配列
b)プロモーター
c)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列
d)ポリアデニル化部位
e)エンハンサー
f)真核生物GAPDHプロモーターの下流および/もしくは上流の非翻訳ゲノムDNA配列、または
a)真核生物GAPDHプロモーターの上流および/もしくは下流の非翻訳ゲノムDNA配列
b)エンハンサー
c)プロモーター
d)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列
e)ポリアデニル化部位
f)真核生物GAPDHプロモーターの下流および/もしくは上流の非翻訳ゲノムDNA配列、または
a)エンハンサー
b)真核生物GAPDHの上流および/もしくは下流の非翻訳ゲノムDNA配列
c)プロモーター
d)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列
e)ポリアデニル化部位
f)真核生物GAPDHの下流および/もしくは上流の非翻訳ゲノムDNA配列
を順に含む発現ベクターであって、エンハンサーの組入れが任意選択であり、ポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドが、GAPDHではなく、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列が、+1近傍のヌクレオチド位置~+7000近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、約100~約15000ヌクレオチドであり、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列が、真核生物GAPDHプロモーターの5’端近傍~-3500近傍のヌクレオチド位置にわたる領域内で開始され、ヌクレオチド位置が、GAPDH mRNAの転写開始点に照らした位置であり、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列の長さが、約100~約15000ヌクレオチドである発現ベクターを提供する。
【0100】
一部の実施形態では、本開示は、
a)真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列
b)プロモーター
c)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列
d)ポリアデニル化部位
e)エンハンサー
f)エンハンサーの組入れが任意選択である、真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列
を順に含む発現ベクターを提供する。
【0101】
さらなる態様では、本開示は、
a)真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列
b)エンハンサー
c)プロモーター
d)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列
e)ポリアデニル化部位
f)エンハンサーの組入れが任意選択である、真核生物GAPDHの下流の非翻訳ゲノムDNA配列
を順に含む発現ベクターを提供する。
【0102】
さらなる態様では、本開示は、
a)エンハンサー
b)真核生物GAPDHの上流の非翻訳ゲノムDNA配列
c)プロモーター
d)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列
e)ポリアデニル化部位
f)エンハンサーの組入れが任意選択である、真核生物GAPDHの下流の非翻訳ゲノムDNA配列
を順に含む発現ベクターを提供する。
【0103】
さらなる態様では、本開示は、
a)真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列
b)プロモーター
c)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列
d)ポリアデニル化部位
e)エンハンサー
f)エンハンサーの組入れが任意選択である、真核生物GAPDHプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列
を順に含む発現ベクターを提供する。
【0104】
さらなる態様では、本開示は、
a)真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列
b)エンハンサー
c)プロモーター
d)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列
e)ポリアデニル化部位
f)エンハンサーの組入れが任意選択である、真核生物GAPDHの上流の非翻訳ゲノムDNA配列
を順に含む発現ベクターを提供する。
【0105】
さらなる態様では、本開示は、
a)エンハンサー
b)真核生物GAPDHの下流の非翻訳ゲノムDNA配列
c)プロモーター
d)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列
e)ポリアデニル化部位
f)エンハンサーの組入れが任意選択である、真核生物GAPDHの上流の非翻訳ゲノムDNA配列
を順に含む発現ベクターを提供する。
【0106】
発現ベクターの、真核生物GAPDHの上流の非翻訳ゲノムDNA配列、エンハンサー、プロモーター、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、ポリアデニル化部位、および真核生物GAPDHプロモーターの下流の非翻訳ゲノムDNA配列は、例えば、前出で記載した通りである。
【0107】
さらなる態様では、本開示は、前出で記載した発現カセットまたは発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は、ヒト細胞の場合もあり、非ヒト細胞の場合もある。好ましい宿主細胞は、哺乳動物細胞である。哺乳動物宿主細胞の好ましい例には、ヒト胎児由来腎臓細胞(Graham FLら、J.Gen.Virol.36:59~74)、MRC5ヒト線維芽細胞、983Mヒト黒色腫細胞、MDCKイヌ腎臓細胞、Sprague-Dawleyラットから単離されたRF培養ラット肺線維芽細胞、B16BL6マウス黒色腫細胞、P815マウス肥満細胞腫細胞、MTl A2マウス乳腺がん細胞、PER:C6細胞(Leiden、Netherlands)、およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはCHO細胞系(Puckら、1958、J.Exp.Med.、108:945~955)が含まれるがこれらに制約されない。
【0108】
特定の好ましい実施形態では、宿主細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはCHO細胞系である。適するCHO細胞系には、例えば、CHO-S(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)、CHO Kl(ATCC CCL-61)、CHO pro3-、CHO DG44、CHO P12、またはdhfr-CHO細胞系であるDUK-BII(Chasinら、PNAS 77、1980、4216~4220)、DUXBI l(Simonsenら、PNAS 80、1983、2495~2499)、またはCHO-K1SV(Lonza、Basel、Switzerland)が含まれる。
【0109】
さらなる態様では、本開示は、ポリペプチドを発現させるためのin vitro法であって、宿主細胞に、前出で記載した発現カセットまたは発現ベクターをトランスフェクトするステップと、ポリペプチドを回収するステップとを含むin vitro法を提供
する。ポリペプチドは、異種ポリペプチド、より好ましくは、ヒトポリペプチドであることが好ましい。
【0110】
発現カセットまたは発現ベクターを、本発明に従う宿主細胞へとトランスフェクトするために、所与の宿主細胞型に適切であれば、当技術分野で周知のトランスフェクション法、例えば、電気穿孔、リン酸カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクション、リポフェクションなど、任意のトランスフェクション法を使用することができる。本発明の発現カセットまたは発現ベクターをトランスフェクトされた宿主細胞は、一過性にまたは安定的にトランスフェクトされた細胞系として見なされるべきことに注意されたい。したがって、本発明に従えば、本発現カセットまたは本発現ベクターは、エピソームとして維持する、すなわち、一過性にトランスフェクトすることもでき、宿主細胞のゲノム内に安定的に組み込む、すなわち、安定的にトランスフェクトすることもできる。
【0111】
一過性トランスフェクションは、ベクターが保有する選択マーカーについての選択圧の非適用を特徴とする。一般に、トランスフェクション後2~最大で10日間にわたり続く一過性発現実験では、トランスフェクトされた発現カセットまたは発現ベクターを、エピソームエレメントとして維持し、いまだゲノムには組み込まない。すなわち、トランスフェクトされたDNAは通例、宿主細胞ゲノムへと組み込まれない。一過性にトランスフェクトされた細胞プールを培養すると、宿主細胞は、トランスフェクトされたDNAを喪失し、トランスフェクトされた細胞を集団内で過剰成長させる傾向がある。したがって、発現は、トランスフェクション直後の時期において最も強く、時間と共に低減される。本発明に従う一過性トランスフェクト細胞は、選択圧の非存在下にある細胞培養物中で、トランスフェクションの2~10日後の時点まで維持される細胞として理解されることが好ましい。
【0112】
本発明の好ましい実施形態では、宿主細胞、例えば、CHO宿主細胞に、本発明の発現カセットまたは発現ベクターを安定的にトランスフェクトする。安定的トランスフェクションとは、ベクターDNAなど、新たに導入された外来DNAが、通例では、ランダムな非相同組換えイベントによりゲノムDNAへと組み込まれることを意味する。宿主細胞のDNAへの組込み後にベクター配列が増幅された細胞系を選択することにより、ベクターDNAのコピー数と遺伝子産物の量とを共時的に増大させることができる。したがって、このような安定的組込みは、遺伝子増幅についての選択圧のさらなる増大へと曝露されると、CHO細胞において、微細な二重染色体をもたらすことが可能である。さらに、安定的トランスフェクションは、例えば、ゲノムへと組み込まれると余分なものとなる細菌性のコピー数制御領域など、組換え遺伝子産物の発現と直接には関連しないベクター配列部分の喪失を結果としてもたらしうる。したがって、トランスフェクトされた宿主細胞のゲノムには、発現カセットまたは発現ベクターの少なくとも一部分または異なる部分が組み込まれている。
【0113】
さらなる態様では、本開示は、哺乳動物の宿主細胞に由来する異種ポリペプチドを発現させるための、前出で記載した発現カセットまたは発現ベクターの使用、特に、哺乳動物の宿主細胞に由来する異種ポリペプチドをin vitroにおいて発現させるための、前出で記載した発現カセットまたは発現ベクターの使用を提供する。
【0114】
タンパク質の発現および回収は、当業者に公知の方法に従い実行することができる。
【0115】
ポリペプチドを発現させるためには、前出で記載した発現カセットまたは発現ベクターの、真核生物GAPDHプロモーターの下流および/または上流の非翻訳ゲノムDNA配列と、前出で記載した宿主細胞とを用いるが、これらは通例は同じ由来である。驚くべきことに、発現の増大は、発現カセットまたは発現ベクターの、真核生物GAPDHプロモ
ーターの下流および/または上流の非翻訳ゲノムDNA配列と、宿主細胞とが異なる由来である場合、例えば、真核生物GAPDHプロモーターの下流および/または上流のヒトDNA配列が、CHO細胞において用いられる場合に得られることが見出されている。
【0116】
さらなる態様では、本開示は、前出で記載した発現カセットまたは発現ベクターの、障害を処置するための医薬を調製するための使用を提供する。
【0117】
さらなる態様では、本開示は、障害を処置するための医薬として用いられる、前出で記載した発現カセットまたは発現ベクターを提供する。
【0118】
さらなる態様では、本開示は、遺伝子治療で使用するための、前出で記載した発現カセットまたは発現ベクターを提供する。
【実施例1】
【0119】
発現ベクターのクローニング
I.材料および方法
I.1 プラスミド構築物
I.1.1.LB培養プレート
500mlの水を混合し、16gのLB寒天(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)(1リットルのLBは、10gのトリプトン、5gの酵母抽出物、および10gのNaClを含有する)と共に煮沸した。冷却後、それぞれの抗生剤を溶液へと添加し、次いで、これを播種した(アンピシリンプレートには100μg/mlで播種し、カナマイシンプレートには50μg/mlで播種した)。
【0120】
I.1.2.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
全てのPCRは、50μlの最終容量中に1μlのdNTP(各dNTPにつき10mM;Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)、2単位のPhusion(登録商標)DNAポリメラーゼ(Finnzymes Oy、Espoo、Finland)、25ナノモルのプライマーA(Mycrosynth、Balgach、Switzerland)、25ナノモルのプライマーB(Mycrosynth、Balgach、Switzerland)、10μlの5倍濃度のHF緩衝液(7.5mMのMgCl2;Finnzymes、Espoo、Finland)、1.5μlのジメチル
スルホキシド(DMSO、Finnzymes、Espoo、Finland)、および1~3μlの鋳型(1~2μg)を用いて実施した。用いられる全てのプライマーを、表1に列挙する。
【0121】
PCRは、98℃で3分間にわたる初期変性によって開始し、続いて、98℃で30秒間にわたる変性、プライマー特異的温度(CGの含量に従う)で30秒間にわたるアニーリング、および72℃で2分間にわたる伸長による35サイクルを行った。72℃で10分間にわたる最終伸長は、冷却および4℃における保存の前に実施した。
【0122】
【0123】
I.1.3.制限消化
全ての制限消化では、約1μgのプラスミドDNA(NanoDrop ND-1000 Spectrophotometer(Thermo Scientific、Wilmington、DE、USA)で定量化した)を、10~20単位の各酵素、4μlの対応する10倍濃度のNEBuffer(NEB、Ipswich、MA、USA)と混合し、無菌のH2Oで容量を40μlの満量とした。さらに表示しない限り、消化物は
、37℃で1時間にわたりインキュベートした。
【0124】
各骨格の調製的消化後、1単位のCalf Intestinal Alkaline
Phosphatase(CIP;NEB、Ipswich、MA、USA)を添加し、混合物を37℃で30分間にわたりインキュベートした。NEBuffer3(NEB、Ipswich、MA、USA)中で消化を行った場合は、この酵素が、この緩衝液中で強力な活性を有し、また、ヌクレオチドの一部も末端で消化しうるために、CIPを添加する前に、緩衝液を、NEB緩衝液4へと交換した。
【0125】
I.1.4.PCR産物の精製およびアガロースゲルによる電気泳動
I.1.4.1.PCR産物の清浄化
消化を可能とするために、制限消化の前に、製造元のマニュアルに従い、40μlの溶出緩衝液を用いるMacherey Nagel Extract IIキット(Macherey Nagel、Oensingen、Switzerland)を用いて、全てのPCR断片を除去した。このプロトコールはまた、DNA試料の緩衝液を交換するのにも用いた。
【0126】
I.1.4.2.DNAの抽出
ゲル電気泳動のために、UltraPure(商標)Agarose(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)および50倍濃度のTris Acetic
Acid EDTA緩衝液(TAE、pH8.3;Bio RAD、Munich、Germany)を用いて、1%のゲルを調製した。DNAを染色するために、1μlのGel Red Dye(Biotum、Hayward、CA、USA)を、100mlのアガロースゲルへと添加した。サイズマーカーとして、1kbのDNAラダー(NEB、Ipswich、MA、USA)2μgを用いた。電気泳動は、125ボルトで約1時間にわたり行った。対象のバンドをアガロースゲルから切り出し、製造元のマニュアルに従い、40μlの溶出緩衝液を用いるキットであるExtract II(Macherey-Nagel、Oensingen、Switzerland)を用いて精製した。
【0127】
I.1.5.ライゲーション
各ライゲーションのために、4μlの挿入配列を、10μlの容量中に1μlのベクター、400単位のリガーゼ(T4 DNAリガーゼ、NEB、Ipswich、MA、USA)、1μlの10倍濃度のリガーゼ緩衝液(T4 DNAリガーゼ緩衝液;NEB、Ipswich、MA、USA)へと混合した。混合物を、室温で1~2時間にわたりインキュベートした。
【0128】
I.1.6.ライゲーション産物のコンピテント細菌への形質転換
pGLEX41-[REP]をクローニングし、基準の複製起点を含有するpCR-Bluntベクターを伴う構築物を作製するために、TOP 10(One Shot(登録商標)TOP 10 Competent E.coli;Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)を用いた。
【0129】
R6K複製起点を含有するプラスミドの複製を開始させるには、PIR配列によりコードされるπタンパク質の発現が要請される。πタンパク質は、One Shot(登録商標)PIR1コンピテントE.coli(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)に発現させる。これらの細菌を、R6K配列を含有する全てのベクターに用いた。
【0130】
コンピテント細菌に、ライゲーション産物を形質転換するために、25~50μlの細菌を、氷上で5分間にわたり融解させた。次いで、3~5μlのライゲーション産物を、コンピテント細菌へと添加し、氷上で20~30分間にわたりインキュベートしてから、42℃で1分間にわたる熱ショックにかけた。次いで、チューブを介して、500μlのS.O.C培地(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)を添加し、撹拌下、37℃で1時間にわたりインキュベートした。最後に、細菌を、アンピシリンを伴うLBプレート(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)上に置き、37℃で一晩にわたりインキュベートした。pCR-Bluntベクターにおけるクローニングのためには、カナマイシンを伴うプレート(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)を用いた。
【0131】
I.1.7.小スケール(ミニ)および中程度スケール(ミディ)におけるプラスミドの調製
I.1.7.1.ミニプレパレーション
ミニプレパレーションのために、形質転換された細菌のコロニーを、2.5mlのLBおよびアンピシリンまたはカナマイシン中、37℃、200rpmで6~16時間にわたり成長させた。DNAは、提供されるマニュアルに従い、E.coli用のプラスミド精製キット(QuickPure、Macherey Nagel、Oensingen、Switzerland)により抽出した。
【0132】
ミニプレパレーションに由来するプラスミドDNAは、NanoDrop ND-1000 Spectrophotometer(Thermo Scientific、W
ilmington、DE、USA)で、260nmにおける吸光度を測定し、1.8~2の間でなくてはならないOD260nm/OD280nmの比を評価することにより、1回定量化した。対照の消化は、配列を確認するために、試料をFasteris SA(Geneva、Switzerland)へと送付する前に実施した。
【0133】
BAC抽出のためには、プロトコールを以下の通りに改変して、QuickPureキット(Macherey Nagel、Oensingen、Switzerland)を用いた。10mlのLBおよびクロラムフェニコール(12.5μg/ml)(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)に、pBACe3.6ベクターを含有する細菌を播種した。振とうプラットフォーム上、37℃で一晩にわたるインキュベーション後、培養物を、13300rpmで5分間にわたり遠心分離してから、500μlのA1緩衝液中に再懸濁させた。500μlのA2溶解緩衝液を添加し、溶液を、室温で5分間にわたりインキュベートした。次いで、溶液を、600μlのA3緩衝液で中和し、13300rpmで10分間にわたり遠心分離した。上清をカラムに投入し、このステップ以降、QuickPureミニプレップキットの標準プロトコールを用いた。
【0134】
I.1.7.2.ミディプレパレーション
ミディプレパレーションのために、形質転換された細菌を、200~400mlのLBおよびアンピシリン(またはカナマイシン)中、37℃で一晩にわたり成長させた。次いで、培養物を、725gで20分間にわたり遠心分離し、製造元のマニュアルにおいて提示される低量プラスミドプロトコールに従い、市販のキット(NucleoBond Xtra Midi;Macherey Nagel、Oensingen、Switzerland)を用いて、プラスミドを精製した。
【0135】
ミディプレパレーションに由来するプラスミドDNAを、NanoDrop ND-1000 Spectrophotometerで3回にわたり定量化し、制限消化により確認し、最後に、配列決定のために送付した(Fasteris SA、Geneva、Switzerland)。
【0136】
II.結果および考察
II.1.GAPDH発現カセットの上流および下流(GAPDHの5’側および3’側)におけるDNA領域のクローニング
BACクローンであるRPCIB753F11841Qを、Imagene(Berlin、Germany)で注文した。このクローンは、クロラムフェニコール耐性遺伝子を含有するpBACe3.6ベクター骨格内に、ヒトGAPDH配列を含有する。ミニプレパレーションによるDNAの抽出後、ベクター濃度を、Nanodropにより、27ng/μlと決定した。
【0137】
プロモーターの上流およびポリアデニル化部位の下流において、GAPDH発現カセットをじかに取り囲むDNA配列を、27ngの精製クローンであるRPCIB753F11841Qを鋳型として用いるPCRで増幅した。プロモーターの上流の3kbの断片は、プライマーGlnPr1171(配列番号1)およびGlnPr1172(配列番号2)で増幅して、配列番号5を伴う単位複製配列をもたらした。プライマーGlnPr1172(配列番号2)は、鋳型配列に照らした塩基変化(GからTへの)を保有するので、このPCR反応に由来する全ての配列もまた、この塩基変化を保有することになる。変化は、GAPDH遺伝子の転写開始点に照らした-3721位(配列番号17のbp 812、配列番号5の始点に照らした23位)に位置する。ポリアデニル化部位の下流の3kbの断片は、プライマーGlnPr1173(配列番号3)およびGlnPr1174(配列番号4)で増幅して、配列番号6を伴う単位複製配列をもたらした(表1)。これらのPCRに用いられたアニーリング温度は、72℃であった。
【0138】
5’側および3’側のGAPDH断片(配列番号5および6)は、市販のPCR産物クローニングベクターであるpCR-Blunt(pCR-Blunt、PCR Zero
Bluntクローニングキット、Invitrogen)内でクローニングした。ライゲーション産物は、TOP10コンピテント細菌へと形質転換し、カナマイシンLB寒天プレート上に播種した。コロニーを増幅し、プラスミドを、ミニプレップにより単離した。対照の消化を実施して、pCR-Blunt-5’GAPDH構築物およびpCR-Blunt-3’GAPDH構築物をもたらす陽性クローンを同定した。
【0139】
II.2.レポータータンパク質であるGFPおよび組換えIgG1モノクローナル抗体をコードするDNA断片(LC-IRES-HC-IRES-GFP)の調製
本研究において用いられるレポーター構築物(REP):IgG1モノクローナル抗体の軽鎖(LC)-IRES-IgG1モノクローナル抗体の重鎖(HC)-IRES-緑色蛍光タンパク質(GFP)は、ポリシストロニック遺伝子内に存在させた。脳心筋炎ウイルスに由来する配列内リボソーム進入部位(IRES)の存在(Gurtuら、Biochem Biophys Res Commun.、229(1):295~298、1996))は、3つのペプチドであるIgG1モノクローナル抗体の軽鎖(LC)、IgG1モノクローナル抗体の重鎖(HC)、およびGFPの翻訳を可能とする(
図1)。したがって、トランスフェクトされた細胞は、IgG1モノクローナル抗体を分泌し、細胞内GFPを依存的な形で蓄積することになる。しかし、真核細胞では、ポリシストロニックのmRNAが一般的でなく、それらの翻訳は、それほど効率的でなく、比較的低力価のIgG1およびGFPの発現をもたらす。
【0140】
REP構築物を含有するベクターは、制限酵素であるNheIおよびBstBIを用いて(BstBIは、65℃で用いる)消化した。発現構築物を含有するREP断片を切り出し、精製し、さらなるクローニングステップのために用いた。
【0141】
II.3.発現ベクターのクローニング
pcDNA3.1(+)に由来する発現ベクターであるpGLEX41ベクター(Invitrogen、Carlsbad、CA)を、安定的な細胞系を作製するために用いた。pGLEX41ベクターは、GAPDH配列を伴う第2世代のベクターAおよびGAPDH配列を伴わない第2世代のベクターBを創出するように改変された初期骨格として用いた。全てのベクターに、同じプロモーター-イントロンの組合せ(mCMVおよび1番目のイントロンをコードするドナー-アクセプター断片(IgDA))を用いた(Gormanら(1990)、Proc Natl Acad Sci USA、87:5459~5463)。
【0142】
中間体ベクターであるpGLEX41-HM-MCS-ampiAのクローニング:
pGLEX41から、新たなベクター世代の開発を開始した。アンピシリン耐性カセットを放出するために、このベクターを、制限酵素であるNruIおよびBspHIを用いて切断した。骨格断片は、CIP処理して、ゲル電気泳動により精製した。アンピシリン耐性遺伝子(blaプロモーターを含めた)のコドン最適化(E.coliにおける発現について)形をコードするDNA断片は、GeneArtから注文した。制限酵素であるNruIおよびBspHI(骨格のために用いた酵素と同じ酵素)を用いて、挿入配列を、GeneArtクローニングベクターである#1013237から切り出し、精製し、骨格へとクローニングした。制限消化により、ミニプレップを解析した。クローンであるpGLEX41-HM-MCS-ampiA#2は、予測される制限プロファイルを有し、適正な断片の組込みは、配列決定により確認した。
【0143】
中間体ベクターであるpGLEX41-MCS-R6K-ampiAのクローニング
ベクターであるpGLEX41-HM-MCS-ampiA#2の複製起点であるpUCを交換するために、ベクターを、PvuIおよびBspHIを用いて消化した。骨格断片は、CIP処理して、精製した。新たな挿入配列断片は、R6K複製起点と、発現カセットの部分としての、改変SV40 poly(A)配列とを含有する。SV40 poly(A)近傍の不要な細菌性骨格配列またはウイルス性骨格配列は取り除いた(下記の表2を参照されたい)。挿入配列断片は、GeneArtから注文し、酵素であるPvuIおよびBspHI(骨格のために用いた酵素と同じ酵素)を用いて、GeneArtクローニングベクターである#1013238から切り出し、精製し、骨格断片へとクローニングした。ミニプレップを調製し、配列解析により確認した。クローンであるpGLEX41-MCS-R6K-ampiA#1は、適正な配列を有した。
【0144】
【0145】
中間体ベクターであるpGLEX41-MCS-R6K-ampiBのクローニング
ベクターであるpGLEX41-MCS-R6K-ampiA#1を、制限酵素であるBspHIを用いて切断し、アンピシリン耐性カセットを放出するためにCIP処理した。新たな挿入配列断片は、E.coliにおける発現について最適化されたアンピシリン耐性コドンは含有するが、代替的なコドン使用により取り除くことのできた全てのCpG配列は置きかえられていた(上記の表2を参照されたい)。この断片は、GeneArtで注文した。挿入配列断片を放出するために、GeneArtクローニングベクターである#1016138を、BspHIを用いて消化した。挿入配列および骨格断片のいずれも、ゲル電気泳動により精製した後でライゲーションし、PIR1細菌へと形質転換した。ミニプレップは、配列決定のために直接送付した。pGLEX41-R6K-MCS-ampiB#1は、適正な配列を有し、さらなるクローニングステップのために用いられた。
【0146】
pGLEX41から導出された発現ベクターにおけるレポーター構築物のクローニング
レポーター構築物であるREPを、発現ベクターであるpGLEX41-MCS-R6K-ampiAおよびpGLEX41-MCS-R6K-ampiBにおいてクローニングするために、制限酵素であるNheIおよびClaIを用いて、ベクターを切断した。発現ベクターであるpGLEX41-HM-MCSを、制限酵素であるNheIおよびB
stBIを用いて切断した(65℃で)。消化後、全てのベクター骨格を、CIPで処理し、骨格を、ゲル電気泳動により精製した。骨格を、レポーター構築物であるREPをコードするNheI/BstBI(BstBIは、ClaIと適合性である)断片とライゲーションした。ライゲーション産物は、PIR1コンピテント細菌またはTOP 10コンピテント細菌へと形質転換し、アンピシリンLB寒天プレート上に播種した。コロニーを増幅し、プラスミドを、ミニプレップにより単離した。陽性クローンは、ミニプレップの制限消化およびFasteris SAによるその後の配列確認を介して同定することができた。
【0147】
pGLEX41から導出した発現ベクターにおけるGAPDHフランキング配列の付加
本段落の全ての制限消化は、80μlの最終容量中で実施し、37℃で一晩にわたりインキュベートした。
【0148】
5’側GAPDH配列(配列番号7)は、制限酵素であるNruIを用いて、pCR-Blunt-5’GAPDHから切り取られ、NruIを用いて直鎖化され、再環状化を回避するためにCIPで処理された発現ベクターである、pGLEX41-R6K-ampiA-[REP]およびpGLEX41-R6K-ampiB-[REP]においてライゲーションした。PIR1コロニー(ライゲーション産物の形質転換により得られる)の増幅後、制限消化により、ミニプレップを解析した。クローンであるpGLEX41-R6K-ampiA-5’GAPDH-[REP]#2およびpGLEX41-R6K-ampiB-5’GAPDH-[REP]#1は、制限解析において、予測されるサイズのバンドを示したが、これは、その後、配列決定により確認され、さらなるクローニングステップのために用いられた。次いで、これらの新たなベクターを、ScaIで切断し、CIPで処理した。3’側GAPDH断片(配列番号8)は、同じ酵素を用いてpCR-Blunt-3’GAPDHから切り取り、発現ベクターであるpGLEX41-R6K-ampiA-GAPDH-[REP]およびpGLEX41-R6K-ampiB-GAPDH-[REP]を創出するために、2つの骨格へとライゲーションした。
【0149】
クローンであるpGLEX41-R6K-ampiA-GAPDH-[REP]#2およびpGLEX41-R6K-ampiB-GAPDH-[REP]#8に対する対照の消化は、制限解析において、予測されるサイズのバンドを示した。適正な配向における3’側GAPDH断片の挿入は、その後、配列決定(Fasteris)により確認した。
【0150】
II.4.耐性ベクターのクローニング
耐性ベクターをクローニングするための出発点は、ベクターpGLEX-MCS-R6K-ampiA#1であった。耐性遺伝子の発現については、弱いプロモーターで十分であり、mCMVプロモーターを、SV40プロモーターで置きかえた。耐性遺伝子をコードする遺伝子は、GeneArt SA(Regensburg、Germany)から注文し、チャイニーズハムスターにおける発現について最適化(ピューロマイシン:puroAおよびネオマイシン:neoA)するか、または選択的コドン使用によりCpG含量を低減(ピューロマイシン:puroBおよびネオマイシン:neoB)した。
【0151】
pGLEX-R6K-AmpiA-PuroA/PuroBのクローニング:
発現カセットにおいてピューロマイシン耐性をクローニングするために、制限酵素であるNruIおよびXbaIを用いて、ベクターであるpGLEX41-MCS-R6K-ampiA#1を切断した後、CIPで処理した。挿入配列断片をGeneArtから注文し、GeneArtクローニングベクターである#1013239における挿入配列として用意した。挿入配列は、ピューロマイシン耐性のためのSV40プロモーターおよびコドン最適化遺伝子(CHO細胞によるコドン使用について)を含有する。挿入配列を、酵素であるNruIおよびXbaI(骨格のために用いた酵素と同じ酵素)を用いて、G
eneArtクローニングベクターから切り出し、精製し、骨格断片へとクローニングした。ミニプレップを調製し、制限消化により解析した。クローンであるpGLEX-MCS-R6K-ampiA-puroA#1は、適正なプロファイルを示し、これは、配列決定により確認することができた。
【0152】
このベクターを、SV40プロモーターはそのままにして、コード領域をピューロマイシン耐性遺伝子と交換することにより、ベクターであるpGLEX-MCS-R6K-ampiA-puroBをクローニングするために用いた。新たな挿入配列断片は、代替的なコドン使用のために取り除くことのできた全てのCpG配列が置きかえられた、ピューロマイシン遺伝子のコドン最適化形を含有する。断片は、GeneArtから注文し、クローニングベクターである#1016139内に送達した。挿入配列断片を放出するために、GeneArtベクターを、制限酵素であるXbaIおよびNotIを用いて消化した。挿入配列断片を、ゲル電気泳動により精製し、XbaIおよびNotIを用いる制限消化による、ピューロマイシンのオープンリーディングフレームを放出した後で、pGLEX-MCS-R6K-ampiA-puroAの骨格へとクローニングした後、CIPで処理した。結果として得られるベクターであるpGLEX-MCS-R6K-ampiA-puroB#1は、配列解析により直接確認した。
【0153】
ベクターであるpGLEX-R6K-ampiA-NeoAおよびpGLEX-R6K-ampiA-NeoBのクローニング
ネオマイシン耐性を、発現カセットにおいてクローニングするために、制限酵素であるXbaIおよびNotIを用いて、ベクターであるpGLEX-R6K-puroA#1を切断した後、CIPで処理した。挿入配列断片は、GeneArtから注文し、GeneArtクローニングベクターである#1013242(neoA)および#1026894(neoB)における挿入配列として用意した。挿入配列断片はそれぞれ、ネオマイシン耐性のための、CHO細胞によるコドン使用についてのコドン最適化遺伝子およびネオマイシン耐性のCpG低減形を含有する。挿入配列を、酵素であるXbaIおよびNotI(骨格のために用いた酵素と同じ酵素)を用いて、GeneArtクローニングベクターから切り出し、精製し、骨格断片へとクローニングした。ミニプレップを調製し、クローンを配列決定により確認した。
【0154】
ベクターであるpGLEX-R6K-ampiB-NeoBおよびpGLEX41-R6K-ampiB-puroBのクローニング:
ベクターであるpGLEX41-R6K-puroB#1を、制限酵素であるBspHIを用いて切断し、その後、CIP処理した。挿入配列断片は、E.coliにおける発現についてコドン最適化されたアンピシリン耐性遺伝子を含有する一方で、代替的なコドン使用のために取り除くことのできた全てのCpG配列が置きかえられていた。この断片は、GeneArtに注文され、クローニングベクターである#1016138により着荷した。挿入配列断片を放出するために、GeneArtクローニングベクターを、BspHIを用いて消化した。挿入配列および骨格断片のいずれも、ゲル電気泳動により精製した後でライゲーションし、PIR1細菌へと形質転換した。ミニプレップは、配列決定のために直接送付し、確認することができた(pGLEX41-ampiB-R6K-puroB#1)。
【0155】
骨格断片を創り出すために、制限酵素であるBspHIを用いて、pGLEX-R6K-neoB-ampiAを切断することにより、ベクターであるpGLEX-R6K-neoB-ampiBをもたらすクローニングを行った。同じ制限酵素の組合せを用いるpGLEX-R6K-ampiB-hygroBの消化により、ampiBをコードする挿入配列断片がもたらされた。ampiB挿入配列を、骨格であるpGLEX-R6K-neoB-ampiAへとクローニングした。
【0156】
II.5ヒトGAPDH遺伝子の上流および下流の配列の、耐性ベクターへの付加
5’側GAPDH挿入配列(3164bp)を得るために、ベクターであるpCR-blunt-5’GAPDHを、NruIで消化した。耐性遺伝子をコードするベクターをNruIで消化し、その後、骨格断片を調製するために、CIP(Calf Intestinal Phosphatase;NEB、Ipswich、MA)で処理した。4つの異なる骨格断片(pGLEX-R6K-neoA-ampiA、pGLEX-R6K-neoB-ampiB、pGLEX-R6K-puroA-ampiA、およびpGLEX-puroB-ampiB)を、3164bpの5’側GAPDH挿入配列とライゲーションし、PIR1コンピテント細菌へと形質転換した。ApalIを用いるミニプレップの制限消化は、クローンであるpGLEX-R6K-neoB-ampiB-5’GAPDH#5、pGLEX-R6K-neoA-ampiA-5’GAPDH#6、pGLEX-R6K-puroA-ampiA-5’GAPDH#16、およびpGLEX-puroB-ampiB-5’GAPDH#5の同定を可能とした。
【0157】
次いで、ライゲーションのための骨格を調製するために、これらの中間体ベクターを、制限酵素であるScaIで切断し、CIPで処理した。GAPDHの下流のフランキング領域である、挿入配列断片(3224bp)を放出するために、ScaIを用いて、第2の挿入配列断片であるpCR-Blunt-3’GAPDHを保有するベクターを切断した。4つの異なる骨格分子を、精製された3224bpの挿入配列断片とライゲーションし、PIR1コンピテント細胞へと形質転換した。制限消化により、ミニプレップを解析した。予測されるサイズの制限断片を示すクローンは、pGLEX-R6K-neoB-ampiB-GAPDH#8、pGLEX-R6K-neoA-ampiA-GAPDH#1、pGLEX-R6K-puroA-ampiA-GAPDH#1、およびpGLEX-puroB-ampiB-GAPDH#4であった。その後、クローンを配列決定解析により確認した(Fasteris、Geneva、Switzerland)。
【0158】
II.1.5.トランスフェクション用にクローニングされたプラスミドのミディプレパレーション
十分量のプラスミドをもたらすために、Macherey Nagelキット(NucleoBond Xtra Midi;Macherey Nagel、Oensingen、Switzerland)を用いて、ミディプレップを調製した。制限消化および配列決定による確認後、プラスミドを直鎖化し、CHO-S細胞におけるトランスフェクションのために用いた。表3は、ミディプレパレーションにおいて得られるプラスミドDNAバッチの濃度、トランスフェクション用に調製された直鎖化DNAプレップ、直鎖化のために用いた酵素、およびFasteris SAによる、それぞれのプラスミドの同一性および配列情報を確認する配列ファイルについてまとめる。全てのミディプレップは、配列決定により確認してから、トランスフェクション用に用いた。
【0159】
【実施例2】
【0160】
発現ベクターによる細胞のトランスフェクション:
1.材料および方法
CHO-S細胞およびHEK293細胞
哺乳動物細胞は、組換えタンパク質の適正なフォールディング、アセンブリー、および
転写後修飾が可能であるために、タンパク質を発現させるのに好ましい宿主である。十分に特徴付けられており、大半のヒト病原性ウイルスの宿主として用いられないことから、安定的な治療用タンパク質の産生のための比較的安全な宿主となっているために、CHO細胞系を用いた。チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO-S、Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)は、4mMのL-グルタミン(Applichem、Germany)を補充したPowerCHO-2 CD培地(Lonza、Verviers、Belgium)中に懸濁させて培養し、37℃、5%のCO2、および湿度
80%の振とう(2.5cmの環状ストロークを伴う200rpm)インキュベーター内でインキュベートした。HEK293細胞は、トランスフェクトするのが容易であり、組換えタンパク質の低グラム量までの迅速な産生を可能とするために用いる。用いられる細胞は、HEK293-EBNA細胞(ATCC、Manassas、VA)であり、Ex-cell 293培地(Sigma-Aldrich、St.Louis、MI)中に懸濁させて日常的に培養される。
【0161】
CHO-S細胞およびHEK293 EBNA細胞の継代培養は、新鮮な培地中に1ml当たり0.5×106個の生細胞の播種密度を用いて、3~4日間ごとに日常的に実行
した。細胞は、ガス交換を可能とする透過性フィルターを含有する50mlのバイオリアクターチューブ(TubeSpin Bioreactor 50;TPP、Trasadingen、Switzerland)内で10mlの培地を用いて培養した。細胞の生存可能性および細胞濃度は、トリパンブルー細胞除外法を用いて、Countess自動式細胞カウンター(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)により決定した。細胞濃度は、CHO-S細胞用のPCVチューブ(TPP、Trasadingen、Switzerland)を用いて、ヘマトクリット値(PCV)を決定することにより確認した。
【0162】
ヘマトクリット値(PCV)
PCV法は、ミニPCVチューブ(PCV Packed Cell Volume Tube;TPP、Trasadingen、Switzerland)内で、5000rpmで1分間にわたる、特定容量の培養液の遠心分離に基づく。遠心分離時において、細胞は、チューブ底部の目盛り付き毛細管内でペレット化する。次いで、ペレットの容量を、遠心分離された細胞培養物流体の量との関係で評価することにより、ヘマトクリット値の百分率を決定する。例えば、1%のPCVは、10μlの細胞ペレットが1mlの培養物流体中に存在することを示した。
【0163】
細胞に対して日常的な細胞カウンティングを施すため、200μlの各試料を、PCVチューブ内にピペティングし、対応するペレットの容量(μl単位)を、ルーラー(「読取りの容易な」測定デバイス;TPP、Trasadingen、Switzerland)で読み取った。この容量に5を乗じて、1mlに応じる値を求め、次いで、これに細胞特異的な相関係数を用いて乗算を施し、生細胞濃度の推定値(1ml当たりの細胞百万個の単位の)を得た。
【0164】
「自動式」細胞カウンティング
試料を同じ量のトリパンブルーと混合して、細胞濃度および細胞の生存可能性を、Countess(登録商標)自動式細胞カウンター(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)により決定した。次いで、溶液を、Countess(登録商標)のチャンバースライドへとピペティングしてから、測定器に読み取らせた。この測定器は、較正後に細胞の生存可能性ならびに死細胞および生細胞の濃度を決定するNeubauerチャンバーの自動式読取りを可能とする。
【0165】
フローサイトメトリー解析
フローサイトメトリーとは、個別の細胞の複数のパラメータを解析するための技法である。この技法は、互いと表現型的に異なる細胞、例えば、生細胞と異なる死細胞(細胞のサイズおよび粒度に従う)の定量的解析および定性的解析を可能とする。フローサイトメトリーはまた、GFPなど、対象のタンパク質を発現させる細胞の定量化も可能とする。細胞は、300μlの試料の無菌のピペティングにより培養物から回収し、488nmで発光する空冷式アルゴンレーザーを装備した蛍光活性化細胞分取(FACS)Caliburフローサイトメーター(Becton、Dickinson and Company、Franklin Lakes、NJ、USA)により解析した。解析は、CellQuestソフトウェアにより行った。GFPによる発光は、530/30nmのバンドパスフィルターを用いるFL-1により検出した。
【0166】
第1のゲートでは、細胞破砕物のほか、均等目盛り上のSSC/FSCドットプロット内の死細胞を解析から除外した。次いで、生細胞によるGFP蛍光を、対数目盛り上のヒストグラムに表した。蛍光分布の中央値を用いて、解析された細胞集団のGFP発現レベルを評価した。
【0167】
IgGの定量化法:OCTET QK
Octet QKシステム(ForteBio、Menlo Park、CA、USA)は、抗体、タンパク質、ペプチド、DNA、および他の生体分子に対する無標識の定量化を実行し、生体分子の結合相互作用についての速度論的特徴付けをもたらす。試料の結合率(nm)と蓄積されたIgG1濃度(μg/ml)との間の相関は、検量線によるIgG力価の定量化を可能とする。
【0168】
細胞試料を、300gで5分間にわたり遠心分離した。次いで、上清を、96ウェルプレート内でOctet緩衝液により希釈して(IgG1抗体について1/5)から、プロテインAバイオセンサー(Protein A DIP and READ(商標)Biosensor、ForteBio、USA)を用いるOctetにより解析して、ウェル1つ当たりの抗体濃度を得た。
【0169】
JetPEIを用いる一過性トランスフェクション
ポリエチレンイミン(PEI;JetPEI、Polyplus-transfection、Illkirch、France)を用いて、CHO-S細胞およびHEK293 EBNA細胞の一過性トランスフェクションおよび安定的トランスフェクションを実施した。PEIとは、DNAなど、負に帯電した分子と複合体化しうるカチオン性ポリマーである。正に帯電したDNA-PEI複合体は、負に帯電した細胞表面に結合し、エンドサイトーシスにより内部化される。DNA-PEI複合体は、リソソームコンパートメントに到達し、そこから溶解により核へと放出される。DNA-PEI複合体による高いトランスフェクション効率は、DNAをリソソーム分解から保護するPEIの能力に起因する。細胞は、製造元により提供されるマニュアルに従ってトランスフェクトした。
【0170】
全てのプラスミドは、直鎖化してから、安定的トランスフェクションにかけた(100μlのトリス-EDTA、pH7.5中に再懸濁させた100μgのDNA)。一過性トランスフェクションのためには、ミディプレパレーションDNAに由来する環状プラスミドを直接用いた。本研究では、一過性トランスフェクションを、50mlのバイオリアクターチューブ内で維持し、抗生剤は添加しなかった。
【0171】
IgG1を発現させる安定的なCHO-SクローンおよびGFPは、1つの発現ベクターと、2つの耐性ベクター(それぞれ、ピューロマイシン耐性またはネオマイシン耐性をコードする)を共トランスフェクトすることにより得た。
【0172】
安定プールおよび安定ミニプールの選択
フローサイトメトリー(BD FACS Caliburサイトメーター、#1293)を介して細胞内GFPの発現を解析することにより、トランスフェクションの24時間後におけるトランスフェクション効率を決定した。GPF陽性細胞の百分率が、20%より高い場合は、トランスフェクトされた細胞を、選択培地で希釈し、96ウェルプレート(単離安定ミニプールを創出する限界希釈のために)、またはT型フラスコ(安定プールを創出するために)へと分配した。用いられた選択培地は、異なる濃度のジェネティシンおよびピューロマイシンを補充した、PowerCHO-2、4mMのグルタミンであった。
【0173】
トランスフェクションの7日後、選択培地を細胞へと添加することにより、選択の厳密性を更新した。96ウェルプレート内のコロニーがコンフルエントになったらすぐに、蛍光リーダーを用いてプレートを読み取った。
【0174】
T型フラスコ内のプールは、抗生剤非含有PowerCHO-2、4mMのL-グルタミンを用いて、TubeSpinスケールまで増やした。それらの生存可能性および濃度は、Countess自動式細胞カウンター(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)により評価した。細胞密度によりそれが可能となったらすぐに、50mlのバイオリアクターチューブ内(5%のCO2、37℃、および湿度80%のシェーカ
ー(200rpm)内でインキュベートする)の10mlの培地中に、1ml当たりの細胞0.5×106個の密度で細胞を播種することにより、全てのプールについてシードト
レインを開始した。各シードトレインは、成長培地中に1ml当たりの細胞0.5×106個(PCV解析により細胞濃度を決定した)で細胞を播種することにより、毎週2回継
代培養した。シードトレインは、全ての生産実施(バッチ)の接種のために用いた。
【0175】
続く4~5週間にわたり、生産実施を、毎週1回2連で播種した。クローン集団について、プールの安定性を、上記の通り、FACSおよび IgG発現により評価した。
【0176】
生産実施(バッチ発酵)
バッチ実施の細胞プールを、接種のために、シードトレインを用いて、1ml当たりの細胞0.5×106個の濃度で播種し、次いで、Feed培地中で7日間にわたり細胞を
培養した。4および8日目において、200μlの細胞を、300gで5分間にわたり遠心分離し、Octetを用いて、上清を、蓄積されたIgGについて解析した。加えて、各バッチのGFP発現を、FACSにより解析した。
【0177】
2.結果
2.1 CHO細胞における一過性発現:
本研究で比較されるベクターは、主にそれらの骨格において異なる。発現カセットの全体(プロモーター、1番目のイントロン、発現構築物、poly(A))は、全てのベクターについて全く同じである。ベクターは、実施例1で記載される通り、ベクターであるpGLEX41から導出する。1つのベクターでは、アンピシリン耐性遺伝子を、E.coliにおける発現についてコドン最適化し、細菌骨格を最小限まで低減した:pGLEX41-R6K-AmpiA-[REP](Aと略称する)。第2のベクターでは、アンピシリン耐性遺伝子を、E.coliにおける発現についてコドン最適化したが、代替的コドンを用いる(可能な場合)ことにより、全てのCpG配列を回避した:このベクターを、pGLEX41-R6K-AmpiB-[REP]と呼ぶ(Bと略称する)。第3の改変には、ベクターであるpGLEX41-R6K-AmpiA-[REP]-GAPDH(GAPDH_Aと略称する)、およびpGLEX41-R6K-AmpiB-[REP]-GAPDH(GAPDH_Bと略称する)をもたらすベクターAおよびBの発現カセットの上流および下流においてクローニングされた、GAPDHフランキング配列の使
用を組み入れた。
【0178】
発現したレポータータンパク質の発現レベルを、異なるプラスミド骨格の文脈で比較するために、CHO-S細胞(Invitrogen)の一過性トランスフェクションを行った。トランスフェクション(2連の)は、50mlのバイオリアクターチューブ(TPP、Trasadingen、Switzerland)内で、10mlの最終培地容量を用いて実施し、トランスフェクションの5日後に、Octetにより解析した(
図2)。
【0179】
骨格を適正化された全てのベクター(AおよびB)は、対照ベクターであるpGLEX41よりわずかに高い発現レベルを示す。ベクターAとベクターBとの間には、わずかな差違しか見られない。骨格内の唯一の差違が、一過性発現に対して影響を及ぼさないはずのアンピシリン耐性であるために、これは予測されたことである。
【0180】
最も目覚ましい観察は、GAPDH配列の、発現に対する正の効果である。GAPDHフランキング配列を保有するプラスミドでは、GAPDH配列を伴わないプラスミドと比較して2倍の発現レベルが得られる。これは、A構築物およびB構築物のいずれにも当てはまる。pGLEX41ベクターと比較して、3倍の発現を観察することができる。プラスミドのサイズを考慮すると、これは、なおいっそう驚くべきことである。ベクターA(7048bp)は、ベクターであるGAPDH-A(13436bp)と比較してほとんど半分のサイズである。したがって、一過性トランスフェクションプロセスにおいて送達されるDNAの量が全てのプラスミドについて同じであると仮定すると、核へと送達されるのは、GAPDH-Aのモル量のうちの半分だけとなる。
【0181】
2.2 HEK293細胞における一過性発現
発現したレポータータンパク質の発現レベルを、異なるプラスミド骨格の文脈で比較するために、HEK293 EBNA細胞の一過性トランスフェクションを行った。トランスフェクション(2連の)は、50mlのバイオリアクターチューブ(TPP、Trasadingen、Switzerland)内で、10mlの最終培地容量を用いて実施し、トランスフェクションの10日後に、Octetにより解析した(
図3)。
【0182】
図3に示される結果は、HEK293 EBNA細胞内でGAPDHフランキング領域を用いて得ることのできる発現の有意な増大を示す。GAPDH-Bベクターが、発現の3倍の増大を示す一方、GAPDH-Aベクターは、なおより大きな、発現の5倍の増大を示す。これらのベクターは、oriPエレメントを含有せず、したがって、なおより大きな力価への潜在的可能性を有しうるであろう。
【0183】
2.3 安定CHO細胞系における発現
安定的にトランスフェクトされた細胞の確立
安定集団は、発現ベクターと耐性遺伝子をコードするベクターとを共トランスフェクトした後で、抗生剤により媒介される選択圧にかけることにより創出した。選択圧は、トランスフェクションの14日後に除去した。これらのステップにより、異なる構築物のレポータータンパク質(IgG1抗体、およびGFP)の発現レベルおよび発現の安定性を比較するための、生産実施において定期的な間隔で培養される安定ミニプールおよび安定プールの作製が可能となった。
【0184】
細胞プールを用いて行われる生産実施におけるレポータータンパク質発現研究
安定的トランスフェクションによりプールを創出した。選択手順時(トランスフェクション後の最初の14日間)に、FACSによりプールを解析した。GFP陽性細胞画分の増大を、培養物の生存可能性と併せて、時間経過にわたり観察することができた。抗生剤
により媒介される選択圧は、14日後にプールから除去した。この手法を用いても、「B」プラスミドをトランスフェクトされた細胞プールを得ることはできなかった。創出したプールの発現レベルは、50mlのバイオリアクターチューブ内で細胞を培養できたらすぐにアッセイした。バッチは、2連で行った。FACSにより、GFPの発現について細胞を解析し、発現の8日後に、Octetにより、上清中のIgGの蓄積についてアッセイした。
【0185】
プールのIgG力価とプールのGFP発現との間では、比例関係を観察することができた。したがって、
図4には、IgGデータだけを示す。GAPDH配列を含有するベクターをトランスフェクトされた全てのプールは、ベクターであるpGLEX41またはGAPDH配列を伴わない同じベクターと比較してより高度な発現を示す(AとA-GAPDHとの間で2.8倍である。Bプールは生存しなかったので、BとB-GAPDHとの間では、結論を引き出すことはできなかった)。A-GAPDHおよびB-GADPHにより行われたトランスフェクションは、pGLEX41によるトランスフェクション(バッチ2について)より高度な(それぞれ、2.7および3.5倍の)IgG発現を誘導した。したがって、プール内では、GAPDHフランキング配列が、タンパク質を産生させるのに好適であると考えられる。最後に、B-GADPHベクターにより行われたトランスフェクションは、A-GAPDHにより行われたトランスフェクションより高度なIgGの(1.25倍の)発現を誘導した。したがって、耐性遺伝子内のCpGの低減もまた、タンパク質の安定的な産生に好適であると考えられる。
【0186】
クローン集団についての発現レベル研究
クローン集団またはオリゴクローン集団を得るために、細胞にトランスフェクトし、96ウェルプレート内の選択培地中に分配した。7日後に、選択培地を細胞へと添加することにより、選択圧を更新した。GFPの発現は、トランスフェクションの14日後に、ELISA-プレートリーダーを用いることにより、評価した。結果を
図5に示す。
【0187】
細胞プール内で得られた結果を確認したところ、GAPDHフランキング配列を含有するベクターをトランスフェクトされた細胞は、GFPを、GAPDHの上流および下流の配列を伴わない同じ骨格(1.7~2倍)または対照として用いられた他のベクター(pGLEX41:2.5倍)より著明に発現させた(
図5)。加えて、CpGを低減した耐性配列を含有するベクター(B)を伴う集団は、コドン最適化だけを施された対応するベクター(A)より高度な発現を誘導した。(AとBとの間で1.5倍;BとB-GAPDHとの間で1.2倍)。
【0188】
発現研究からは、複数の結論を引き出すことができた。第1に、GAPDHの上流および下流の配列は、基準として用いられた基準ベクター(pGLEX41)より高度な発現を可能とする。また、細胞に、GAPDH配列を伴わない同じベクター骨格をトランスフェクトしたところ、低い発現レベルが得られることから、発現に対する有益な効果が、挿入されたGAPDHフランキング配列と関連することも確認される。加えて、発現プラスミドおよび選択プラスミドにおけるCpG数の低減もまた、発現にわずかに好適であると考えられる。
【実施例3】
【0189】
新たにデザインされたベクターをトランスフェクトされたCHO-S GMP細胞の一過性発現レベル
文献では、GAPDHプロモーターの5’側領域が、潜在的なインスリン応答エレメントのほか、フォルボールエステル応答エレメントを保有することが記載されている(Alexander-Bridgesら(1992)、Advan Enzyme Regul、32:149~159)。フォルボールエステル応答エレメント(-1040~-1
010bp)は、通例GAPDHプロモーター(-488~+20)と称する配列の上流に位置する。安定H35肝がん細胞系において実施された欠失研究において、著者らは、塩基対-1200~-488(転写開始点に照らした)の欠失の有意な効果を実証することができなかった。したがって、フォルボールエステル応答エレメントは、GAPDHプロモーターにより駆動される発現へと機能的に連結されていない可能性があろう。にもかかわらず、GAPDHフランキングエレメントを含有するプラスミドを用いて観察された一過性発現および安定的発現の増大における、インスリンおよびPMA(最も一般的なフォルボールエステルである、フォルボール-12-ミリステート-13-アセテート)の寄与を評価するために、一過性トランスフェクション実験を実施した。
【0190】
インスリン非含有成長培地を得るために、PowerCHO2を、粉末培地から調製し、インスリンは添加しなかった。PMAは、Sigma(St.Louis、MO)から購入し、PowerCHO2(インスリンを伴う/伴わない)中に1.6μMの最終濃度(Alexander-Bridgesにより、H35肝がん細胞系に対して用いられた濃度に対応する)で投与した。
【0191】
トランスフェクションは、既に記載されている通りに、50mlのバイオリアクターチューブ(TubeSpin、TPP、Trasadingen、Switzerland)内で実施した。インスリンの存在を回避するために、トランスフェクション培地を、4mMのGlnおよび25mMのHEPESを補充したRPMI1640(PAA、Pasching、Austria)へと交換した。トランスフェクション後、細胞を12ウェルプレート内に分配し、1mlずつの4つの異なる培地(PowerCHO2、4mMのGln、インスリンを伴う/伴わない;PowerCHO2、4mMのGln、1.6μMのPMA、インスリンを伴う/伴わない)を添加した。ここでもまた、2つのIRESを用いる、IgG1およびGFPを発現させるレポーター構築物(実施例2において記載した)を用いた。このベクターは、トランスフェクション効率の検証を可能とした。トランスフェクトされた細胞の百分率および生存可能性は、全ての4つの異なる培地調製物において同様であることが見出された。
【0192】
図6において示される通り、この実験では、インスリン枯渇および/またはPMA添加の有意な効果を観察することができなかった。発現のために用いられた全ての培地において、同様な力価が得られた。これは、GAPDH遺伝子の上流のフランキング配列に存在する潜在的なフォルボールエステル応答エレメントおよびインスリン応答エレメントが、一過性のトランス遺伝子の発現に影響を及ぼさないことを示唆する。
【実施例4】
【0193】
レポーター遺伝子の発現に対する効果を研究するための、プロモーターの上流にあり、かつ、polyA部位の下流にある、GAPDH発現カセットを挟むDNAについての断片化解析
ヒトGAPDH遺伝子座は、ヒトゲノムの第12染色体上に位置する。GAPDHは、グルコースの代謝において鍵となる役割を果たすので、哺乳動物に由来する全ての細胞において構成的に活性であることが記載されている。プロモーターの上流において、GAPDH遺伝子は、30000bp超にわたり及ぶ遺伝子であるNCAPD2と隣接する。ポリアデニル化部位の下流において、GAPDH遺伝子は、IFFO1と隣接する(詳細については、
図7を参照されたい)。
【0194】
GAPDHおよびプロモーターだけでなく、フランキング領域もまた、異なる種の間で十分に保存されている(表4を参照されたい)。
【0195】
【0196】
齧歯動物とヒトとの間のDNA相同性の比較は、DNA保存が最小の38%であることを示す。プロモーター領域または遺伝子をコードする領域の外側に保存されたDNAの連なりの存在は、細胞に対して、DNA配列を維持するか、または特定の変化/わずかな変化だけを可能とする選択圧がかかっている可能性があることを示す。本発明者らの特定の場合において、GAPDHフランキング領域は、それらがGAPDH遺伝子の高度な発現レベルを維持するために、細胞にとって重要でありうる。発現の低減をもたらすDNA配列の変化は、選択により排除されるであろう。
【0197】
上流および下流のGAPDHエレメントの、観察される発現の増大への寄与を評価するために、上流のGAPDHフランキング領域(配列番号7)、上流のGAPDHフランキング領域の断片、または下流のGAPDHフランキング領域(配列番号8)だけを含有する構築物を産生した。レポーターIgG1型抗体は、IRES構築物(軽鎖-IRES-重鎖)を介して発現させ、これにより、複数のプラスミドの共トランスフェクションを回避した。GAPDHの上流における断片の断片化についての詳細を
図8に示す。以下の上流におけるGAPDHフランキング領域の断片:断片1(配列番号9)、断片2(配列番号10)、断片3(配列番号11)、断片4(配列番号12)、断片8(配列番号13)、断片9(配列番号14)、断片11(配列番号15)、断片17(配列番号16)を用いた。
【0198】
用いられる上流のGAPDHフランキング領域(配列番号7)は、NruI制限部位の
2×3(合計で6)のヌクレオチドであって、そのうちの3つが、その5’端において、ゲノムDNAへと連結され、3つが、その3’端において、ゲノムDNAへと連結されるヌクレオチドを含有する。用いられる下流のGAPDHフランキング領域(配列番号8)は、ScaI制限部位の2×3(合計で6)のヌクレオチドであって、そのうちの3つが、その5’端において、ゲノムDNAへと連結され、3つが、その3’端において、ゲノムDNAへと連結されるヌクレオチドを含有する。それぞれの制限部位のヌクレオチドを伴わない、上流のGAPDHフランキング領域および下流のGAPDHフランキング領域を、配列番号20(制限部位を伴わない上流のGAPDHフランキング領域)、および配列番号21(制限部位を伴わない下流のGAPDHフランキング領域)に示す。用いられる上流のGAPDHフランキング領域の断片の各々は、その5’端および/またはその3’端において、ゲノムDNAへと連結された、それぞれの制限部位の3つずつのヌクレオチドを含有する(断片1は、その5’端において、NruI制限部位の3つのヌクレオチドを含有し;断片2は、その3’端において、NruI制限部位の3つのヌクレオチドを含有し;断片3は、その5’端において、NruI制限部位の3つのヌクレオチドを含有し;断片4は、その3’端において、NruI制限部位の3つのヌクレオチドを含有し;断片8は、その3’端において、NruI制限部位の3つのヌクレオチドを含有し;断片9は、その5’端において、NruI制限部位の3つのヌクレオチドを含有し、その3’端において、NruI制限部位の3つのヌクレオチドを含有し;断片11は、その3’端において、NruI制限部位の3つのヌクレオチドを含有する)。断片17は、制限部位のヌクレオチドを含有しない。それぞれの制限部位のヌクレオチドを伴わない、上流のGAPDHフランキング領域の断片を、配列番号22(制限部位を伴わない断片1)、配列番号23(制限部位を伴わない断片2)、配列番号24(制限部位を伴わない断片3)、配列番号25(制限部位を伴わない断片4)、配列番号26(制限部位を伴わない断片8)、配列番号27(制限部位を伴わない断片9)、配列番号28(制限部位を伴わない断片11)に示す。
【0199】
上清中に分泌されるIgG1の量を定量化するために、トランスフェクションの10日後に、Octet(Fortebio、Menlo、CA、USA)を用いて、上流および下流のGAPDHエレメントの発現に対する効果を評価した(
図9を参照されたい)。元のベクターであるpGLEX41は、骨格であるpGLEX41-ampiAにおいて用いられる、改善された新たなベクターデザインと比較して低度な発現結果(80%)を示している。元の骨格であるpGLEX41と比較して、新たなデザインでは、E.coliにおける、アンピシリン耐性カセットに必要なampiA遺伝子のコドン最適化、異なる複製起点(pUC複製起点ではなく、R6K複製起点)、および細菌由来の不要なリンカー(またはスペーサー)配列の除去が組み入れられている。いずれのベクターも、ほぼ同じサイズを有する。
【0200】
驚くべきことに、上流のエレメント(配列番号7)および下流のエレメント(配列番号8)を組み入れたpGLEX41-ampiA(発現結果を示す
図9では、pGLEX41-up/downと称する)は、上流および下流の配列を伴わない同じベクターと比較して、より高度な(1.5倍)発現を示している。サイズの差違(up/down断片は、プラスミドのサイズを6000bp近傍増大させる)を考慮し、したがって、トランスフェクション時において送達されるプラスミドコピーの差違を考慮する場合、効果は、プラスミド1つ当たりのベースでなおいっそう重要となりうる。
【0201】
上流の断片(up)だけを含有するベクターは、元の発現構築物であるpGLEX41-ampiAと同様な発現レベルを示している。下流の断片(down)だけを含有するベクターは、元の発現構築物であるpGLEX41-ampiAと比較した発現の有意な増大(1.2倍)を示している。上流および下流の断片の両方が存在する場合は、さらなる発現の増大を観察することができる。これは、上流の断片の断片化により確認される。
断片9およびプロモーター近位の断片8は、pGLEX41-ampiAと比較した発現の差違を示さない。断片1、11、および17は、発現の増大を示す。最高の増大は、断片4について観察された。プロモーター近位の断片8が、効果を示していないことを強調すべきである。したがって、発現の増大を、既に公表されている(Alexander-Bridgesら(1992)、Advan Enzyme Regul、32:149~159);Gravenら(1999)、Biochimica et Biophysics Acta、147:203~218)配列によって説明することはできない。
【0202】
興味深いことに、断片2および3は、有意な発現の低減をもたらす。これは、とりわけ、逆方向(
図9におけるアンチセンス(AS))でクローニングされたこれらの断片が、この効果を引き起こさないという事実に照らして予測外である。断片1、8、9、11、および17では、センス配向またはアンチセンス配向で組み込まれた断片(データは示さない)について発現の差違が観察されなかった。断片11は、断片2の部分であるが、この効果を示さない。したがって、発現にとって有害であると考えられる配列エレメントは、少なくとも部分的に、断片11を得るために、断片2において欠失させたBstBI-BstBI断片上にあるはずである。
【0203】
加えて、負のエレメントがBstBI-BstBI断片上に位置する(少なくとも部分的に)という仮説は、断片3(BstBI-BstBI断片を組み入れる)と断片1との間で観察される発現の増大により裏付けられている。
【0204】
この研究からは、負の効果を及ぼす断片(BstBI-BstBI)を位置特定することは容易であると考えられるが、断片2および3について観察されたこの負の効果が、完全な上流の断片において存在する配列エレメントによりいかにして補完されるのかは、それほど明らかでない。この負の効果が、断片1および断片4により観察された小さな正の効果(しかし、断片1で観察される発現の増大は、断片4の場合より小さい)により相殺されている可能性はあろう。にもかかわらず、断片4で観察される正の効果(1.25倍)は、負の効果(0.4倍)と比較してそれほど重要ではないと考えられる。さらに、BstBI-BstBI断片を伴わない上流の領域全体である断片9は、GAPDHの上流のフランキング領域全体と比較した発現の増大を示さない(にもかかわらず、断片9は、断片2および3の部分であるEcoRV-BstBI断片を組み入れ、発現に対して負の効果を及ぼしうるであろう)。
【0205】
観察された効果の背後の機構について可能なのは推測に限られる。断片2および3について観察された、発現に対する負の効果の配向依存性は、1つの配向だけの発現を誘発しうるプロモーターが周囲に存在しないために、同定されていないオープンリーディングフレームの発現(例えば、ncRNAの発現)を除外する。発現が基底レベルを下回って低減されるという事実は、正の効果(例えば、エンハンサー活性)の非存在だけでなく、配向依存的な負の効果の存在も示す。
【0206】
まとめると、上流および下流の両方のフランキング領域が発現プラスミド内に存在する場合は、CHO細胞における一過性発現の驚くべき増大が観察される。断片4は、発現に対する有意な正の効果を及ぼすと考えられるが、観察された発現の増大全体の原因となる単一の断片を同定することはできなかった。発現ベクターであるpGLEX41-ampiA(up/down)の発現の増大は、上流および下流のフランキング領域両方の総体的効果であると考えられる。
【実施例5】
【0207】
チャイニーズハムスターGAPDH遺伝子の上流の非翻訳ゲノムDNA配列およびチャイニーズハムスタープロモーターのクローニング
1.1 チャイニーズハムスターGAPDH遺伝子の上流の非翻訳ゲノムDNA配列の、発現ベクターへのクローニング
チャイニーズハムスターGAPDH遺伝子の上流の非翻訳ゲノムDNA配列を、CHO-S細胞(Life Technologies)のゲノムDNAから、PCRにより増幅した。ゲノムDNAは、実施例1で記載した通りに抽出した。構築物は、実施例1において記載したレポーター遺伝子構築物[REP]を発現させるための、マウスCMVプロモーターまたはチャイニーズハムスターGAPDHプロモーターを用いて調製した。
【0208】
チャイニーズハムスターGAPDH遺伝子の上流のゲノムDNA配列を、マウスCMVプロモーターと組み合わせてクローニングするために、実施例1において記載したPCRプロトコールを用いて3kbの断片(配列番号29のbp 672~3671)を増幅するためのプライマーGlnPr1896およびGlnPr1897を用いて、配列番号30を伴う単位複製配列をもたらした。単位複製配列は、チャイニーズハムスターGAPDH遺伝子の上流のゲノムDNA配列と、プライマーにより導入された5’側および3’側の制限部位とを含有する。
【0209】
チャイニーズハムスターGAPDH遺伝子の上流のゲノムDNA配列を、チャイニーズハムスターGAPDHプロモーターと組み合わせてクローニングするために、チャイニーズハムスターGAPDH遺伝子の上流のゲノムDNA配列と、GAPDHプロモーター(配列番号29のbp 672~4179)とを組み入れたゲノムDNA配列を含有する3508bpの断片を増幅するためのプライマーGlnPr1902およびGlnPr1905を用いて、配列番号31を伴う単位複製配列をもたらした。第2のPCRでは、プロモーター領域(配列番号29のbp 3672~4179)だけを含有する508bpの断片を増幅するためのGlnPr1901およびGlnPr1902を用いて、配列番号32をもたらした。ベクター「A」(実施例1において記載した)において用いられるイントロンは、プライマーGlnPr1903およびGlnPr1904を用いて増幅した。
【0210】
第1のフュージョンPCRは、配列番号32を伴う単位複製配列と、イントロン配列を伴う単位複製配列とを鋳型として用いるプライマーGlnPr1904およびGlnPr1901により実施した。単位複製配列は、プライマーにより導入された、チャイニーズハムスターGAPDHプロモーター、イントロン、ならびに5’側および3’側の制限部位を含有する。全てのプライマーを表5に示す。
【0211】
第2のフュージョンPCRは、配列番号31を伴う単位複製配列と、イントロン配列を伴う単位複製配列とを鋳型として用いるプライマーGlnPr1905およびGlnPr1904により実施した。単位複製配列は、プライマーにより導入された、チャイニーズハムスターGAPDH遺伝子の上流のゲノムDNA配列、チャイニーズハムスターGAPDHプロモーター、イントロン、ならびに5’側および3’側の制限部位を含有する。
【0212】
1%のアガロースゲル上における精製後、対象のバンドを切り出し、キットである「NucleoSpin Gel and PCR Clean-up」(Macherey
Nagel、Oensingen、Switzerland)を用いて精製した。精製された断片は、Zero Blunt PCRクローニングキット(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)を用いて、プラスミドであるpCR_Bluntへとクローニングした。ライゲーション産物は、コンピテントE.coli TOP10(One Shot(登録商標)TOP 10 Competent E.coli;Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)へと形質転換し、ミニプレップを制限解析することにより解析した。これにより、チャイニーズハムスターGAPDH遺伝子の上流のゲノムDNA配列を含有するプラスミドであるpCR_blunt[CHO
-upstreamGAPDH]、チャイニーズハムスターGAPDH遺伝子の上流のゲノムDNA配列と、GAPDHプロモーターと、ベクター「A」に由来するイントロンとを含有するpCR_Blunt[CHO-upstreamGAPDH_GAPDHプロモーター]、ならびにGAPDHプロモーター、およびベクター「A」に由来するイントロンを含有するpCR_Blunt[CHO-GAPDHプロモーター]がもたらされた。
【0213】
単位複製配列を、それらの分泌される遺伝子の発現に対する効果について評価するために、ベクター「A」(実施例1において記載した)を用いた。既に記載されている通り、このベクターにおいて用いられる発現カセットは、分泌されるIgG1およびGFPをコードするポリシストロニック遺伝子を含有する(実施例1を参照されたい)。したがって、トランスフェクトされた細胞は、IgG1モノクローナル抗体を分泌し、細胞内GFPを依存的な形で蓄積する。
【0214】
チャイニーズハムスターGAPDH遺伝子の上流のゲノムDNA配列を含有する3kbの挿入配列断片を放出するために、プラスミドpCR_Blunt[CHO-upstreamGAPDH]を、制限酵素であるNaeIを用いて消化した。この挿入配列を、「A」の骨格内にクローニングし、制限酵素であるNruIを用いて消化し、CIP処理した(CIP;NEB、Ipswich、MA、USA)。骨格と挿入配列とを、T4 DNAリガーゼ(T4 DNAリガーゼ、NEB、Ipswich、MA、USA)を用いて併せてライゲーションし、その後、コンピテントE.coli PIR1へと形質転換した。ミニプレップ調製およびその後の制限解析のためにクローンを採取した。結果として得られるプラスミドを、「A_GAPDH_UP」と称し、配列決定解析により確認し、NucleoBond Xtra Midiキット(Macherey Nagel、Oensingen、Switzerland)を用いて、ミディプレップスケールで産生した。
【0215】
チャイニーズハムスターGAPDHプロモーターを用いて、発現構築物をクローニングするために、制限酵素であるNheIおよびNruIを用いる消化により、挿入配列断片を、プラスミドpCR_Blunt[CHO-upstreamGAPDH_GAPDHプロモーター]およびpCR_Blunt[CHO-GAPDHプロモーター]から放出させた。結果として得られる断片をベクター「A」の骨格内にクローニングし、同じ酵素を用いて切断し、CIP処理した。T4 DNAリガーゼによるライゲーションおよびコンピテントE.coli PIR1への形質転換後、ミニプレップ制限解析のためにクローンを採取した。結果として得られるプラスミドを、「A_GAPDH_UP_Prom」(チャイニーズハムスターGAPDHおよびプロモーターの上流の非翻訳ゲノムDNA配列を伴うプラスミド)および「A_PR」(プロモーターだけを伴うプラスミド)と称し、配列決定解析により確認し、キットであるNucleoBond Xtra Midi(Macherey Nagel、Oensingen、Switzerland)を用いて、ミディプレップスケールで産生した。
【0216】
2.チャイニーズハムスターGAPDH遺伝子の上流の非翻訳ゲノムDNA配列のレポーター遺伝子構築物の発現に対する効果の評価
CHO-S細胞を、TubeSpinバイオリアクター内で、10mlの培地容量を用いてトランスフェクトした(実施例2で記載される通り)。トランスフェクトされた細胞は、37℃で、5%のCO2、および湿度80%の、200rpmの撹拌を伴う振とうインキュベーター内でインキュベートした。プロテインAバイオセンサー(Fortebio、Menlo Park、CA、USA)を伴うOctet QKシステムを用いて、細胞の上清を、IgG1の発現について解析した。結果を
図10に示す。
【0217】
マウスCMVプロモーターを含有するプラスミド(A)の発現レベルと比較して、GAPDHプロモーターを含有するプラスミド(「A_PR」)の発現レベルが50%低減されることから、チャイニーズハムスターGAPDHプロモーターは、ウイルス性プロモーターほど強力ではないことが示される。チャイニーズハムスターGAPDHプロモーターと組み合わせた、チャイニーズハムスターGAPDH遺伝子の上流の非翻訳ゲノムDNA配列を含有するプラスミド(「A_GAPDH_UP_Prom」)は、GAPDHプロモーターだけを有する構築物(「A_PR」)と比較して、発現の2倍の増大を示す。チャイニーズハムスターGAPDH遺伝子の上流の非翻訳ゲノムDNA配列と、マウスCMVプロモーターとを含有するプラスミド(「A_GAPDH_UP」)は、最高の発現を示し、マウスCMVプロモーターだけを含有するプラスミド(「A」)を40%超える増大を示す。これにより、チャイニーズハムスターGAPDH遺伝子の上流の非翻訳ゲノムDNA配列は、レポータータンパク質の発現に対するエンハンサー効果を有することが確認される。
【0218】
【配列表】