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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】レール踏頂面粗さ測定装置
(51)【国際特許分類】
   B61K 9/08 20060101AFI20220629BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20220629BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B61K9/08
G01B11/30 Z
G01B11/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019145031
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2021024460
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 輝之
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-093543(JP,A)
【文献】特表2002-500762(JP,A)
【文献】特開2017-101392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61K 9/08
G01B 11/00-11/30
G01B 21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに沿って走行可能な走行体と、
前記走行体が走行した距離を検出するエンコーダと、
前記走行体に支持されたフレームと、
前記フレームに支持され、前記レールの踏頂面に対して前記レールの長手方向に延びるライン状のレーザ光を上方から照射するレーザ変位センサと、
前記レーザ変位センサの検出データの処理を行う演算装置と、を備え、
前記レーザ変位センサは、前記踏頂面におけるライン状のレーザ照射領域に含まれて前記長手方向に並んだ少なくとも3つの検出点での鉛直方向の変位を検出し、
前記演算装置は、前記レーザ変位センサで検出された前記少なくとも3つの検出点の鉛直方向の変位を用いて偏心矢法により前記踏頂面の粗さを算出する、レール踏頂面粗さ測定装置。
【請求項2】
前記演算装置及び前記レーザ変位センサに供給される電力を蓄電し、前記フレームに支持されたバッテリを更に備え、
前記演算装置は、前記フレームに支持され、
前記演算装置及び前記バッテリは、前記長手方向に直交する枕木方向の両側に分かれて前記フレームに搭載されている、請求項1に記載のレール踏頂面粗さ測定装置。
【請求項3】
前記レーザ変位センサを保持する保持部材を更に備え、
前記フレームは、前記レーザ変位センサを上方から支持する支持板を有し、
前記支持板には、前記長手方向に直交する枕木方向に延び板厚方向に貫通するスリットが形成され、
前記保持部材は、前記支持板の上方に配置された本体部と、前記本体部から下方に延び前記スリットを通って前記支持板の下方の前記レーザ変位センサに接続される接続部と、を有し、
前記接続部が前記スリットに案内されて前記枕木方向に移動することにより、前記レーザ変位センサが前記枕木方向に移動する、請求項1または2に記載のレール踏頂面粗さ測定装置。
【請求項4】
前記フレームは、
前記レーザ変位センサを上方から支持する支持板と、
前記支持板の上面に取り付けられるスペーサと、
前記スペーサの上面に取り付けられる上板と、を更に有する、請求項1または2に記載のレール踏頂面粗さ測定装置。
【請求項5】
前記フレームは、
前記支持板の上面に取り付けられるスペーサと、
前記スペーサの上面に取り付けられる上板と、を更に有し、
前記保持部材または前記支持板は、前記レーザ変位センサの前記長手方向に直交する枕木方向の位置を上方から確認できるセンサ位置表示部を有し、
前記上板は、透明である、請求項3に記載のレール踏頂面粗さ測定装置。
【請求項6】
前記少なくとも3つの検出点は、第1検出点、第2検出点、前記第1検出点と前記第2検出点との間の第3検出点、及び前記第1検出点と前記第2検出点との間であって前記第3検出点とは異なる第4検出点を含み、
前記演算装置は、
前記レーザ変位センサで検出された前記第1検出点、前記第2検出点及び前記第3検出点の鉛直方向の変位を用いて偏心矢法により前記踏頂面の第1粗さを算出し、
前記レーザ変位センサで検出された前記第1検出点、前記第2検出点及び前記第4検出点の鉛直方向の変位を用いて偏心矢法により前記踏頂面の第2粗さを算出し、
前記第1粗さと前記第2粗さとの平均である平均粗さを算出する、請求項1から5のいずれか1項に記載のレール踏頂面粗さ測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールの踏頂面の粗さを測定するレール踏頂面粗さ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レールの踏頂面の凹凸を測定する装置として特許文献1に開示されたものがある。特許文献1には、レールの踏頂面に対してレーザ光を照射し、踏頂面で反射した反射光を受光する変位センサによって検出された鉛直方向の変位を用いて偏心矢法によってレールの踏頂面の凹凸を算出するレール凹凸測定装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5960954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたレール凹凸測定装置では、梁のレールの長手方向の異なる3つの点にそれぞれ別々に変位センサが取り付けられ、3つの変位センサによって検出された鉛直方向の変位を用いて偏心矢法によってレールの踏頂面の凹凸が算出される。変位センサは、それぞれレールの踏頂面に対してレーザ光を照射する照射部とレールの踏頂面で反射したレーザ光を受光する受光部とを有している。
【0005】
そのため、レールの踏頂面の凹凸を測定する際に凹凸測定装置がレール上で走行すると、変位センサの取り付けられた梁が振動あるいは回転する場合がある。その場合、梁の3つの点で別々に取り付けられた変位センサの間で、相対的な変位が生じる。レールの踏頂面の凹凸を測定している間に変位センサの間で相対的な変位が生じると、それによって算出されるレールの踏頂面の凹凸の精度が低下する。
【0006】
また、それぞれの変位センサのレール長手方向の寸法上、レーザ光の照射部同士を近づけるのに限界がある。照射部同士の間には、ある程度の間隔が生じることになり、その間隔よりも小さな波長のレールの踏頂面の凹凸については算出することができない。そのため、レールの踏頂面での波状摩耗のような波長の長い凹凸については算出することはできるが、レールの踏頂面の表面粗さのような微小な波長の凹凸については算出することができない。
【0007】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、より小さな波長の凹凸についても算出することにより、レールの踏頂面での波長の長い凹凸だけでなく、レールの踏頂面の微小な波長である表面の粗さについても算出することのできるレール踏頂面粗さ測定装置を提供することを目的としている。また、レール踏頂面粗さを算出する際に、変位センサの間の相対的な変位が生じることが抑えられ、精度の高いレール踏頂面粗さを算出することのできるレール踏頂面粗さ測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のレール踏頂面粗さ測定装置は、レールに沿って走行可能な走行体と、前記走行体が走行した距離を検出するエンコーダと、前記走行体に支持されたフレームと、前記フレームに支持され、前記レールの踏頂面に対して前記レールの長手方向に延びるライン状のレーザ光を上方から照射するレーザ変位センサと、前記レーザ変位センサの検出データの処理を行う演算装置と、を備え、前記レーザ変位センサは、前記踏頂面におけるライン状のレーザ照射領域に含まれて前記長手方向に並んだ少なくとも3つの検出点での鉛直方向の変位を検出し、前記演算装置は、前記レーザ変位センサで検出された前記少なくとも3つの検出点の鉛直方向の変位を用いて偏心矢法により前記踏頂面の粗さを算出する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成のレール踏頂面粗さ測定装置は、ライン状のレーザ光を照射してレーザ変位センサが変位を検出するので、レールの踏頂面の鉛直方向の変位を検出する検出点同士のレールの長手方向の間隔を小さくすることができる。これにより、波長に応じてレール踏頂面粗さを算出する際に、小さな波長の粗さについても算出することができる。また、ライン状のレーザ光を照射してレーザ変位センサが変位を検出するので、レーザ光を照射する部分同士の相対的な変位が生じ難い。従って、より正確なレールの踏頂面の粗さを算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るレール踏頂面粗さ測定装置についての斜視図である。
図2図1のレール踏頂面粗さ測定装置についての正面図である。
図3図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4図3のレール踏頂面粗さ測定装置におけるレーザ変位センサについての模式的な斜視図である。
図5図1のレール踏頂面粗さ測定装置において、フレームの上板にパソコンが搭載された状態について示した斜視図である。
図6】(a)及び(b)は、図1のレール踏頂面粗さ測定装置において、保持部材を支持板に取り付ける際の、支持板及び保持部材についての斜視図である。
図7図1のレール踏頂面粗さ測定装置において、保持部材を支持板に取り付けたときの保持部材及び支持板を下方から見た平面図である。
図8図6(a)の保持部材において、センサ位置表示部について拡大して示した平面図である。
図9図1のレール踏頂面粗さ測定装置の制御構成について示したブロック図である。
図10図1のレール踏頂面粗さ測定装置によってレールの踏頂面の粗さが算出される際に、レーザ変位センサによる鉛直方向の変位の検出位置の変化について示した説明図である。
図11図1のレール踏頂面粗さ測定装置によってレールの踏頂面の粗さが算出される際に、異なる検出位置についての粗さの平均値を取る場合の、レーザ変位センサによる鉛直方向の変位の検出位置について示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係るレール踏頂面粗さ測定装置1について、添付図面を参照して説明する。図1は、レール踏頂面粗さ測定装置1についての斜視図である。図2は、レール踏頂面粗さ測定装置1について正面から見た正面図である。図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。レール2は、レール踏頂面粗さ測定装置1によって踏頂面2aについての粗さが測定される測定対象である。
【0012】
本実施形態では、レール2における長く延びた方向のことを長手方向というものとし、レール2における長手方向に直交し、1対のレール同士が対向する方向のことを枕木方向というものとする。また、長手方向において、レール踏頂面粗さ測定装置1によるレール2の踏頂面2aの粗さの測定の際に、レール踏頂面粗さ測定装置1の進む方向を進行方向というものとする。レール踏頂面粗さ測定装置1の進行方向をD1とし、また、枕木方向をD2とする。
【0013】
レール踏頂面粗さ測定装置1は、レール2に沿って走行可能な走行体3を備えている。本実施形態では、走行体3は、進行方向前側の前側走行体3aと進行方向後側の後側走行体3bとを有している。前側走行体3a及び後側走行体3bは、それぞれ円柱状の形状を有している。前側走行体3a及び後側走行体3bは、レール2の踏頂面2a上で転がることにより、レール2に沿って走行可能に構成されている。
【0014】
レール踏頂面粗さ測定装置1は、フレーム4を備えている。フレーム4は、走行体3によって支持されている。フレーム4は、走行体3の側方に配置された側面フレーム4a及び4bを有している。側面フレーム4a及び4bは、走行体3を挟んで枕木方向D2に対向するように配置されている。走行体3は、側面フレーム4a及び側面フレーム4bに対し回転可能に取り付けられている。また、フレーム4は、進行方向D1の前方の位置で側面フレーム4aと側面フレーム4bとの間の空間を覆うように、側面フレーム4aと側面フレーム4bとに対し取り付けられた前側フレーム4cを有している。また、フレーム4は、進行方向D1の後方の位置で側面フレーム4aと側面フレーム4bとの間の空間を覆うように、側面フレーム4aと側面フレーム4bとに対し取り付けられた後側フレーム4dを有している。また、フレーム4は、側面フレーム4a、側面フレーム4b、前側フレーム4c及び後側フレーム4dによって囲まれた空間の上方を覆い、後述するレーザ変位センサを上方から支持する支持板4eを有している。また、フレーム4は、支持板4eの上面に取り付けられるスペーサ4fを有している。また、フレーム4は、スペーサ4fの上面に取り付けられた上板4gを有している。
【0015】
支持板4eの上面にスペーサ4fが取り付けられ、スペーサ4fの上面に上板4gが取り付けられるので、支持板4eと上板4gとの間にスペースSが形成される。
【0016】
レール踏頂面粗さ測定装置1は、エンコーダ5を備えている。エンコーダ5は、走行体3が走行した距離を検出することが可能に構成されている。本実施形態では、エンコーダ5は、フレーム4に取り付けられている。エンコーダ5は、側面フレーム4a、側面フレーム4b、前側フレーム4c及び後側フレーム4dによって囲まれ、レール2の踏頂面2a上に当接する位置に配置される。エンコーダ5は、踏頂面2a上で回転可能に構成された車輪5aと、車輪5aが回転したときの車輪5aの回転の量を検出する検出部5bとを有している。検出部5bは、検出部5bによって検出された車輪5aの回転量に基づいて、走行体3の走行した距離を検出することが可能に構成されている。
【0017】
レール踏頂面粗さ測定装置1は、レーザ変位センサ6を備えている。図4に、レーザ変位センサ6についての模式的な斜視図を示す。レーザ変位センサ6は、レール2の踏頂面2aに対してレール2の長手方向に延びるレーザ光Lを上方から照射するレーザ照射部6aを有している。また、本実施形態では、例えば、レーザ変位センサ6が、レール2の踏頂面2aで反射したレーザ光Lを受光するレーザ受光部6bを有している。レーザ変位センサ6は、支持板4eによって上方から支持されている。本実施形態では、レーザ照射部6aは、レール2の長手方向に長く延びたライン状のレーザ光Lを照射する。
【0018】
レーザ変位センサ6は、レーザ照射部6aから照射されたレーザ光Lを用いてレール2の踏頂面2aからの鉛直方向の変位を検出することが可能に構成されている。本実施形態では、例えば、レーザ受光部6bが、レール2の長手方向の複数の位置でレーザ光Lの反射光を受光することが可能に構成されている。例えば、レーザ受光部6bは、レール2の長手方向に照射されたレーザ光Lを200分割し、200個の位置でレーザ光Lの反射光を受光することができる。
【0019】
本実施形態では、レーザ照射部6aと、レーザ受光部6bとは、枕木方向D2に隣接して配置されている。レーザ照射部6aは、照射されるレーザ光Lが、レール2の長手方向に沿って長く延びるように構成されている。レーザ受光部6bは、レーザ照射部6aから照射されてレール2の踏頂面2bで反射したレーザ光Lの反射光を受光することが可能なように構成されている。本実施形態では、レーザ変位センサ6は、レーザ受光部6bによって受光されたレーザ光Lを検出することにより、レール2の踏頂面2aからの鉛直方向の変位を検出することができる。
【0020】
図5に、フレーム4における上板4g上にパソコン7bが配置された状態のレール踏頂面粗さ測定装置1の斜視図を示す。レール踏頂面粗さ測定装置1は、演算装置7を備えている。本実施形態では、演算装置7は、フレーム搭載演算装置7a及びパソコン(PC)7bを有している。本実施形態では、レール踏頂面粗さ測定装置1は、フレーム搭載演算装置7a及びパソコン7bの両方を有するように構成されている。演算装置7の一部として、フレーム搭載演算装置7aが、フレーム4に搭載されている。フレーム搭載演算装置7aは、支持板4eの下方で側面フレーム4aよりも枕木方向の外側の位置に配置され、側面フレーム4a及び支持板4eによって支持されている。また、本実施形態では、演算装置7の一部として、パソコン7bが、レール踏頂面粗さ測定装置1に搭載されている。
【0021】
フレーム搭載演算装置7a及びパソコン7bは、それぞれ別々に演算処理を行うように構成されていてもよいし、互いに協働して同じ演算処理を行うように構成されていてもよい。なお、演算装置7は、フレーム搭載演算装置7aあるいはパソコン7bのいずれかが、単独で演算装置7として構成されていてもよく、レール踏頂面粗さ測定装置1が、フレーム搭載演算装置7aあるいはパソコン7bのいずれか一方のみを有するように構成されていてもよい。
【0022】
演算装置7は、レーザ変位センサ6の検出データの処理を行うように構成されている。演算装置7は、レーザ変位センサ6によって検出された鉛直方向についての変位に基づいて、レール2の踏頂面2aの粗さを算出することができる。
【0023】
図6(a)及び(b)に、保持部材8の支持板4eへの取り付けの際の、支持板4e及び保持部材8の斜視図を示す。レール踏頂面粗さ測定装置1は、レーザ変位センサを保持する保持部材8を備えている。本実施形態では、保持部材8は、支持板4eの上面に着脱可能に取り付けられている。図6(a)に示されるように、支持板4eには、スリット4hが形成されている。スリット4hは、支持板4eを板厚方向に貫通し、枕木方向に延びて形成されている。
【0024】
保持部材8は、支持板4eの上方に配置される本体部8aを有している。また、保持部材8は、本体部8aの長手方向における進行方向の後方側の端部から進行方向後方側へ突出すると共に、本体部8aから下方に延びるように設けられた2つの接続部8bを有している。また、保持部材8は、進行方向の前方側で、支持板4eの一部を本体部8aとの間に挟み込むように構成された挟持部8cを有している。挟持部8cは、本体部8aにおける長手方向の進行方向D1の前方側で、下方に向けて延び、そこから進行方向の後方側に延び、そこからさらに進行方向の前方側に向けて延びるように屈曲されて形成されている。
【0025】
保持部材8を支持板4eに取り付ける際には、図6(b)に示されるように、スリット4hに2つの接続部8bを挿入する。また、本体部8aと挟持部8cとの間に、支持板4eの一部を挟み込む。こうすることにより、図6(b)に示されるように、保持部材8が支持板4eに取り付けられる。
【0026】
図7に、保持部材8がレーザ変位センサ6を保持している部分について、支持板4eの下方から見た平面図を示す。保持部材8を支持板4eに取り付ける際には、接続部8bがスリット4hを通って支持板4eの下方に配置される。レーザ変位センサ6は、進行方向の前方側に、接続部8bに当接して、接続部8bと接続される当接部6cを有している。本実施形態では、当接部6cが、枕木方向D2の両方の外側の位置から接続部8bによって挟み込まれて接続される。接続部8bは、支持板4eの下方でレーザ変位センサ6に接続されており、本体部8aから延びた接続部8bは、スリット4hを通って支持板4eの下方のレーザ変位センサ6に接続される。また、接続部8bは、スリット4hに案内されて枕木方向D2に移動可能に構成されているので、レーザ変位センサ6が、枕木方向に移動可能に構成されている。
【0027】
また、接続部8bが、スリット4hに案内されて枕木方向D2に移動可能に構成されているので、接続部8bがスリット4hの枕木方向D2の端部4iで支持板4eに当接したところで接続部8bの枕木方向D2の移動が止まる。そのため、スリット4hの枕木方向D2の端部4iで接続部8bの移動を規制することができる。結果的に、レーザ変位センサ6の枕木方向D2の移動を、スリット4hの枕木方向D2の端部4iで規制することができる。これにより、レーザ変位センサ6が枕木方向D2に移動し過ぎて、レーザ変位センサ6がレール2の踏頂面2aから外れることを防ぐことができる。
【0028】
図8に、保持部材8を上側から見た平面図を示す。本実施形態では、保持部材8は、センサ位置表示部8dを有している。図8に示されるように、本実施形態では、保持部材8における本体部8aの上側の面にセンサ位置表示部8dの目盛が付されている。支持板4eに基準となる基準位置が表示されていれば、支持板4eの基準位置に対する保持部材8の位置を確認することができる。なお、支持板4eがセンサ位置表示部を有し、保持部材8に基準位置についての表示があってもよい。支持板4eと保持部材8との間の枕木方向についての相対的な位置が確認できるのであれば、どちらにセンサ位置表示部が付されていてもよく、またどちらに基準位置が付されていてもよい。また、本実施形態では、上板4gは、透明となるように構成されている。
【0029】
レール踏頂面粗さ測定装置1は、バッテリ9を備えている(図2)。バッテリ9は、フレーム4に支持されている。本実施形態では、バッテリ9は、支持板4eの下方で側面フレーム4bの枕木方向の外側の位置に配置され、側面フレーム4b及び支持板4eによって支持されている。バッテリ9は、演算装置7及びレーザ変位センサ6に供給される電力を蓄電している。また、本実施形態では、バッテリ9は、エンコーダ5に供給される電力等、他の電力を蓄電していてもよい。
【0030】
また、前述したように、フレーム搭載演算装置7aは、側面フレーム4a及び支持板4eによって支持されている。本実施形態では、図2に示されるように、フレーム搭載演算装置7aと、バッテリ9とが、枕木方向の両側に分かれてフレーム4に搭載されている(図2)。従って、レール2を挟んで枕木方向の一方側でフレーム搭載演算装置7aがフレーム4に搭載され、枕木方向の他方側でバッテリ9がフレーム4に搭載されている。
【0031】
また、本実施形態では、側面フレーム4a及び4bの内側の位置に、レール2の枕木方向の外側でレール2と当接するように車輪10が設けられている。車輪10は、レール2の枕木方向についての両方の外側に設けられ、2つの車輪10によってレール2の側面を枕木方向に挟むように構成されている(図2)。車輪10は、レール踏頂面粗さ測定装置1における進行方向の前方及び後方の端部付近の位置にそれぞれ設けられている。本実施形態では、車輪10は、バネによってレール2の側面を押す方向に付勢されている(図3)。
【0032】
また、本実施形態では、側面フレーム4a及び4bの内側で車輪10よりも下方の位置に、レール2のフランジ部の枕木方向の外側でレール2と当接するように下側車輪11が設けられている。下側車輪11についても、レール2のフランジ部の枕木方向についての両方の外側に設けられ、2つの下側車輪11によってレール2のフランジ部の側面を枕木方向に挟むように構成されている(図2)。下側車輪11は、レール踏頂面粗さ測定装置1における進行方向の前方及び後方の端部付近の位置にそれぞれ設けられている(図3)。
【0033】
次に、レール踏頂面粗さ測定装置1の制御構成について説明する。図9に、本実施形態のレール踏頂面粗さ測定装置1の制御構成についてのブロック図を示す。
【0034】
演算装置7は、レーザ変位センサ6のレーザ照射部6aに対しレーザ光を照射させることが可能であると共に、レーザ受光部6bによって受光したレーザ光の検出データを受け取ることが可能に構成されている。また、演算装置7は、レーザ変位センサ6から受け取った検出データの処理を行うことが可能に構成されている。演算装置7は、レーザ変位センサ6から受け取った検出データに基づいて、レール2の踏頂面2aの粗さを算出することができる。
【0035】
また、演算装置7は、エンコーダ5が検出した走行体3の走行距離を受け取ることができる。演算装置7は、エンコーダ5が検出した走行体3の走行距離に基づいて、所定の間隔ごとにレーザ変位センサ6によるレール2の踏頂面2aの鉛直方向の変位の検出を行うことができる。
【0036】
本実施形態では、レール踏頂面粗さ測定装置1は、人の手によって押されることで移動する形式である。なお、レール踏頂面粗さ測定装置1は、自走式であってもよい。その場合、走行体3は、それぞれ円柱状の形状を有した前側走行体3a及び後側走行体3bの回転を駆動させる駆動源を有していてもよい。また、演算装置7は、駆動源の制御を行うことにより、レール踏頂面粗さ測定装置1の移動の制御を行うように構成されていてもよい。
【0037】
次に、レール2の踏頂面2aの粗さの算出について説明する。本実施形態では、レール2の踏頂面2aの粗さは、公知の偏心矢法によって算出が行われる。図10に、レール踏頂面粗さ測定装置1によってレール2の踏頂面2aの粗さが算出される際に、レーザ変位センサ6による鉛直方向の変位の検出位置の変化について示した説明図を示す。
【0038】
レール2の踏頂面2aの粗さの算出が行われる際には、まずレーザ照射部6aから単一のライン状のレーザ光が照射される。ライン状のレーザ光が照射されると、レーザ光が踏頂面2aで反射し、反射光がレーザ受光部6bで受光される。本実施形態では、レーザ受光部6bが反射したレーザ光を受光可能な複数の位置のうち、任意の3つの検出点で、それぞれの検出点でのレーザ変位センサ6からの鉛直方向の変位が検出される。
【0039】
本実施形態では、レーザ受光部6bの反射したレーザ光を受光可能な位置のうちの進行方向の最も後方の位置を第1検出点x1とし、進行方向の最も前方の位置を第2検出点x2とし、長手方向についての第1検出点x1と第2検出点x2との間の位置を第3検出点x3とする。また、レーザ変位センサ6における第1検出点x1に対応する位置をP1とし、第2検出点x2に対応する位置をP2とし、第3検出点x3に対応する位置をP3とする。また、レール2の踏頂面2a上における第1検出点x1に対応する位置をR1とし、第2検出点x2に対応する位置をR2とし、第3検出点x3に対応する位置をR3とする。また、第1検出点での鉛直方向の変位をZ1とし、第2検出点での鉛直方向の変位をZ2とし、第3検出点での鉛直方向の変位をZ3とする。また、レーザ変位センサ6上における第1検出点の位置P1と第3検出点の位置P3との距離をaとし、第3検出点の位置P3と第2検出点P2の距離をbとする。
【0040】
このとき、踏頂面2a上の点R1と点R2とを結んだ直線からR3までの距離Z(x)を、
Z(x)=(b/(a+b))Z1+(a/(a+b))Z2-Z3
として算出する。
【0041】
算出された点R1と点R2とを結んだ直線からR3までの距離Z(x)の値が、検出値として用いられる。そこでの検出値としてZ(x)が算出されると、図10に示されるように、レール踏頂面粗さ測定装置1を進行方向D1に向かって移動させる。
【0042】
レール踏頂面粗さ測定装置1を進行方向D1に移動させながら、所定の間隔ごとにZ(x)の値を算出することにより、進行方向D1に沿ったZ(x)の分布を算出することができる。こうして算出された進行方向D1に沿ったZ(x)の分布について、例えば高速フーリエ変換(FFT)を行うことによって、波長(周波数)と振幅との関係を算出することができ、波長(周波数)に応じた踏頂面2aの粗さについての算出を行うことができる。
【0043】
偏心矢法によって踏頂面2aの粗さを算出する際には、隣り合う検出点同士の間の距離よりも小さな波長の粗さについては算出できない。レール2の踏頂面2aの算出可能な粗さは、レーザ変位センサ6上における第1検出点x1に対応する位置P1と第3検出点x3に対応する位置P3との間の距離aあるいは第3検出点x3に対応する位置P3と第2検出点x2に対応する位置P2との間の距離bによって決まる。第1検出点x1の位置P1と第3検出点x3の位置P3とを近づける、あるいは、第3検出点x3の位置P3と第2検出点x2の位置P2とを近づけることにより、微小な波長の粗さについても算出することができるようになる。
【0044】
本実施形態では、レーザ照射部6aは、レール2の長手方向に長く延びたライン状のレーザ光を照射している。レーザ照射部6aがライン状のレーザ光を照射してレーザ変位センサ6が変位を検出し、レーザ光を分割した位置を検出点にできるので、踏頂面2aの鉛直方向の変位を検出する検出点同士のレールの長手方向の間隔を小さくすることができる。これにより、踏頂面2aについての、小さな波長の粗さについても算出することができる。
【0045】
本実施形態では、波長に応じてレール踏頂面粗さを算出する際に、より小さな波長の粗さについても算出することができるので、レール踏頂面のより細かい粗さを算出することができる。
【0046】
また、本実施形態では、レーザ照射部6aがライン状のレーザ光を照射してレーザ変位センサ6が変位を検出するので、レーザ照射部6aは、単一の照射部によって一度にレーザ光を照射することができる。従って、踏頂面2aの粗さの算出を行う際に、レーザ光を照射する部分同士の相対的な変位が生じ難い。これにより、より正確なレールの踏頂面の粗さを算出することができる。
【0047】
また、本実施形態では、レール踏頂面粗さ測定装置1において、フレーム搭載演算装置7a及びバッテリ9が、枕木方向の両側に分かれてフレーム4に搭載されているので、枕木方向の両側に重量物が搭載されることになり、枕木方向の一方側と他方側との間でバランス性を向上させることができる。従って、枕木方向D2の重量バランスが安定した状態でレール2の踏頂面2aの粗さの算出を行うことができる。
【0048】
また、本実施形態では、保持部材8の接続部8bがスリット4hを通って支持板4eの下方のレーザ変位センサ6に接続されるので、接続部8bがスリット4hに案内されて、レーザ変位センサ6が枕木方向D2に移動することができる。従って、枕木方向D2について異なる位置についての踏頂面2aの粗さを算出することができる。
【0049】
また、本実施形態では、支持板4eと上板4gとの間にスペースSが形成されているので、スペースSに物を収納することができる。本実施形態では、上板4g上にはパソコン7bが配置される。そのため、パソコン7bに接続された配線を、スペースSに配置することができる。これにより、配線の取り回しを容易に行うことができ、レール踏頂面粗さ測定装置1の使い勝手を良くすることができる。
【0050】
また、本実施形態では、保持部材8がセンサ位置表示部8dを有し、上板4gが透明に構成されているので、センサ位置表示部8dを上板4gの上方から視認できる。従って、保持部材8が支持板4eに対し枕木方向に移動したときに、保持部材8の枕木方向についての支持板4eに対する相対的な位置を上方から確認することができる。なお、支持板4eがセンサ位置表示部を有している場合についても、上板4gが透明に構成されているので、センサ位置表示部を上板4gの上方から視認できる。従って、保持部材8が支持板4eに対し枕木方向に移動したときに、保持部材8の枕木方向についての支持板4eに対する相対的な位置を上方から確認することができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、第1検出点x1、第2検出点x2及び第1検出点x1と第2検出点x2との間の第3検出点x3で検出された鉛直方向の変位を用い、偏心矢法を用いて踏頂面2aの粗さの算出を行う方法について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。第1検出点x1と第2検出点x2との間であって第3検出点x3とは異なる第4検出点x4での鉛直方向の変位を検出し、第1検出点x1、第2検出点x2及び第3検出点x3での鉛直方向の変位を用いて偏心矢法を用いて算出を行った第1粗さと、第1検出点x1、第2検出点x2及び第4検出点x4での鉛直方向の変位を用いて偏心矢法を用いて算出を行った第2粗さとの平均である平均粗さの算出が行われてもよい。また、例えば、平均粗さを用いてレールの品質の確認が行われてもよい。
【0052】
図11を用いて、第1検出点x1、第2検出点x2及び第3検出点x3での鉛直方向の変位を用いた第1粗さと、第1検出点x1、第2検出点x2及び第4検出点x4での鉛直方向の変位を用いた第2粗さとの平均である平均粗さの算出を行う場合について説明する。まず、第1検出点x1、第2検出点x2及び第1検出点x1と第2検出点x2との間の第3検出点x3で検出されたそれぞれの位置での鉛直方向の変位を用い偏心矢法を用いて第3検出点x3でのZ(x)を算出し、これを第1距離Z(1)とする。同様に、第1検出点x1、第2検出点x2及び第1検出点x1と第2検出点x2との間であって第3検出点x3とは異なる第4検出点x4で検出されたそれぞれの位置での鉛直方向の変位を用い偏心矢法を用いて第4検出点でのZ(x)を算出し、これを第2距離Z(2)とする。
【0053】
最初の位置で第1距離Z(1)及び第2距離Z(2)が算出されると、レール踏頂面粗さ測定装置1を進行方向D1に向かって移動させながら、所定の間隔ごとに第1距離Z(1)及び第2距離Z(2)が算出される。これにより、進行方向D1に沿った第1距離Z(1)及び第2距離Z(2)の分布を算出することができる。進行方向D1に沿った第1距離Z(1)及び第2距離Z(2)の分布が算出されると、第1距離Z(1)及び第2距離Z(2)について、例えば高速フーリエ変換(FFT)を行うことによって、第1距離Z(1)についての波長と振幅との関係及び第2距離Z(2)についての波長と振幅との関係を算出することができる。これにより、踏頂面2aの第1粗さ及び第2粗さを算出することができる。第1粗さ及び第2粗さが算出されると、第1粗さと第2粗さとの平均である平均粗さが算出される。
【0054】
このように、第1検出点x1、第2検出点x2及び第3検出点x3についての鉛直方向の変位を用いて偏心矢法によって算出した第1粗さと、第1検出点x1、第2検出点x2及び第4検出点x4についての鉛直方向の変位を用いて偏心矢法によって算出した第2粗さと、の平均である平均粗さを算出するので、誤差の少ない粗さを算出することができる。従って、より正確にレール2の踏頂面2aの粗さを算出することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 レール踏頂面粗さ測定装置
2 レール
2a 踏頂面
3 走行体
4 フレーム
4e 支持板
4f スペーサ
4g 上板
4h スリット
5 エンコーダ
6 レーザ変位センサ
7 演算装置
7a フレーム搭載演算装置
7b パソコン
8 保持部材
8b 接続部
8d センサ位置表示部
x1 第1検出点
x2 第2検出点
x3 第3検出点
x4 第4検出点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11