(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】コンポジット構造からポリマーを分離する方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/08 20060101AFI20220629BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20220629BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
B09B3/40
(21)【出願番号】P 2019531493
(86)(22)【出願日】2017-08-24
(86)【国際出願番号】 AU2017050896
(87)【国際公開番号】W WO2018035565
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-06-08
(32)【優先日】2016-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】521131502
【氏名又は名称】ピー・ヴイ・シー セパレーション ホールディングス プロプライエタリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PVC SEPARATION HOLDINGS PTY.LTD.
【住所又は居所原語表記】112 Aspect Parade,Alfredton,Victoria 3350,AUSTRALIA
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コリンズ,デニス マーティン
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-103223(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0118691(US,A1)
【文献】特開2015-196773(JP,A)
【文献】特開2002-307046(JP,A)
【文献】特表2003-534956(JP,A)
【文献】特開平09-193156(JP,A)
【文献】特開2004-089791(JP,A)
【文献】特開2011-004511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/00-28
B09B 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーコンポジット構造の少なくとも一部を集合的に形成する、異なる材料の基材に結合されたポリマーの分離を促進する方法であって、以下を含む方法:
(1)ポリマーコンポジット構造を、
ポリマーまたはポリマーおよび基
材に吸収される有機溶媒を含む組成物と接触させる工程であって、有機溶媒を含む組成物は、ポリマーまたは基材のいずれも溶解しない、工程、および
(2)工程(1)で提供されるポリマーコンポジット構造を、(i)工程(1)で使用される有機溶媒を含む組成物の沸点より高い温度を有し、かつ(ii)ポリマーまたは基材のいずれも溶解しない液体と接触させる工程であって、その動作がポリマーと基材との間の分離を促進する、工程。
【請求項2】
前記基材が、前記ポリマーのポリマーマトリックス内に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーコンポジット構造がラミネートを含み、ポリマーおよび基材がラミネートの層を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーコンポジット構造が、前記基材がポリマーの2つの層の間に位置するラミネートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーが、ポリハロゲン化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、スチレン系ポリマー、ゴム、これらの組み合わせおよびコポリマーを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記基材が、金属、ポリマー、ガラス繊維、炭素繊維、紙、厚紙、およびそれらの組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記基材が、ポリハロゲン化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、スチレン系ポリマー、ゴム、これらの組み合わせおよびコポリマーから選択されるポリマーを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーコンポジット構造が、ポリ塩化ビニルの2つの層の間に位置するポリエステル層を含むラミネートである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーコンポジット構造が、金属箔またはワイヤを含む基材に結合されたポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリ塩化ビニリデンの層を含むラミネートである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマーコンポジット構造が、紙、厚紙、またはそれらの組み合わせに結合されたポリエステルまたはポリオレフィン層を含むラミネートで請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程(1)で使用される有機溶媒を含む組成物が、脂肪族炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、アルデヒド、アルコール、エーテル、エステル、シアノアルカン、ハロゲン化アルカン、ハロゲン化アルケンおよびそれらの組み合わせから選択される有機溶媒を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程(2)で使用される液体が、有機溶媒、水、天然または合成油、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程(2)によって提供されるポリマーコンポジット構造体を剪断および/または粉砕するさらなる工程(3)を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程(2)によって提供されるポリマーコンポジット構造体を剪断および/または粉砕し、次いでポリマーおよび基材を別々の成分として単離するさらなる工程(3)を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーおよび基材が、フロートタンク、渦電流またはサイクロンを使用して、別々の成分として分離される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(1)で使用される有機溶媒を含む組成物がアセトンを含み、工程(2)で使用される液体が水を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
工程(2)で使用される液体が、工程(1)で使用される組成物の沸点よりも少なくとも20℃高い温度を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、コンポジット構造からポリマーを分離することに関する。特に、本発明は異なる材料の基材に結合されたポリマーの分離を促進する方法に関し、その集合体は、ポリマーコンポジット構造の少なくとも一部を形成する。この分離を促進することによって、ポリマーは、後続のリサイクルのためにコンポジット構造からより容易に単離することができる。
【背景技術】
【0002】
ポリマーは、現代社会において野生的に使用されている。このような広範な利用に鑑みて、廃ポリマーを効果的かつ効率的にリサイクルするための技術の開発にかなりの努力が払われてきた。
【0003】
現在、多くの異なるタイプまたはクラスの廃棄ポリマー(例えば、一般にボトルなどの容器の形態であるポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレン(PE))をリサイクルするための十分に開発された技術が存在する。
【0004】
従来のリサイクル方法論は、典型的には廃ポリマー供給原料を供給することを含む。廃棄物原料が2つ以上の異なるポリマーおよび潜在的に非ポリマー材料を含有することは珍しいことではない。
【0005】
ポリマーをリサイクルするために適用される方法論が廃棄ポリマー供給原料を異なる材料に分離して、異なるポリマータイプまたは非ポリマー材料で「汚染」されていないポリマーストリームを与えることは、しばしば決定的に重要である。次いで、単離された「清澄な」ポリマーストリームを販売し、リサイクル製品に加工することができる。
【0006】
「清澄な」ポリマーストリームを製造することは、ポリマーが異なるポリマーまたは非ポリマー材料のような異物を含有する場合、ポリマーのリサイクル製品へのその後の加工が悪影響を受ける可能性があるので、特に重要であり得る。特に、各クラスのポリマー(例えば、PETおよびPE)は異なる化学組成を有し、その結果、異なる特性を有する。これらの相違は、典型的にはポリマー混合物を、一緒に加工してリサイクル製品にするのに不適合にする。
【0007】
その結果、ポリマーリサイクルは、典型的には混合廃棄物供給原料から標的ポリマーを単離するための方法論を含む。例えば、様々なセンサを用いて、混合廃棄物原料を異なるクラスのポリマーにバルク仕分けするのを助けることができる。さらに、そのようなバルク選別プロセスを経た後、得られた廃棄原料は、典型的には粉砕され、次いで、あらゆる残留汚染を除去するためのさらなる加工に供される。このようなさらなる加工は、典型的には「湿式」または「乾式」技術として分類される。フロートタンクは粉砕された材料が密度(すなわち、沈むか浮くか)に基づいて分離される最も一般的な湿式技術である。サイクロン技術は、おそらく、粉砕された材料が遠心力を受けて材料を重量に応じて分離するのに使用される最も一般的な乾式技術である。
【0008】
廃棄ポリマーのリサイクルは現在一般的な場所であるが、使用される方法論は典型的には廃棄供給原料中の他の部品/汚染物質から容易に物理的に分離することができる標的ポリマーを含有する廃棄ポリマー供給原料に依存する。
【0009】
しかし、多くのポリマー製品は、ポリマー成分が異なる基材材料に結合され、その基材材料から容易に分離および単離することができない場合に製造される。例えば、ポリマーが異なる組成の基材材料に結合される多様な範囲のポリマーコンポジット構造が存在する。このようなポリマーコンポジット構造は例えば、積層ポリマーコンポジット構造を含む。
【0010】
ポリマーが異なる基材材料に結合されるポリマーコンポジット構造体をリサイクルすることが望ましいが、従来のリサイクル方法はその仕事に非常に困難を有し、その結果、廃棄ポリマーコンポジット構造体はしばしば、埋め立てに至る。
【0011】
要するに、積層ポリエステル/ポリ塩化ビニルコンポジット構造体は、トレーラーサイドカーテン、ロール点防水シート、バナー、日よけ、マット、および一般的なカバーとして広く使用されている。このいわゆる「PVC織物」のかなりの量が毎年生産される。このようなコンポジット構造体のポリエステルおよびポリ塩化ビニル成分の一方または両方をリサイクルすることが望ましいが、ポリマー成分の一方または両方を分離および単離することは依然として問題である。したがって、大量のこのようなポリマーコンポジット構造体は、埋立地に転用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、リサイクルを容易にするためにポリマーコンポジット構造体からポリマーを分離するための方法論を開発する機会が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ポリマーコンポジット構造の少なくとも一部を集合的に形成する、異なる材料の基材に結合されたポリマーの分離を促進する方法を提供する:
(1)ポリマーコンポジット構造を、ポリマーおよび基材の一方または両方に吸収される有機溶媒を含む組成物と接触させる工程であって、有機溶媒を含む組成物は、ポリマーまたは基材のいずれも溶解しない、工程、および
(2)工程(1)で提供されるポリマーコンポジット構造を、(i)工程(1)で使用される有機溶媒を含む組成物の沸点より高い温度を有し、かつ(ii)ポリマーまたは基材のいずれも溶解しない液体と接触させる工程であって、その動作がポリマーと基材との間の分離を促進する、工程。
【0014】
驚くべきことに、ポリマーおよび基材の一方または両方の中に有機溶媒を含む組成物を最初に吸収し、次いで得られたポリマーコンポジット構造物を組成物の沸点より高い温度を有する液体と接触させることによって、ポリマーコンポジット構造物の少なくとも一部を集合的に形成する異なる材料の基材に結合されたポリマー間の分離を促進することが可能であることが見出された。
【0015】
理論によって制限されることを望むものではないが、工程(2)における、ポリマーコンポジット構造体を、ポリマーおよび基材の一方または両方に吸収される組成物よりも高い沸点を有する液体と接触させる動作は組成物を急速に気化させ、コンポジット構造体内に有意な内圧を誘発すると考えられる。その誘起された内圧は、分離されるべき少なくともポリマーに対する組成物の可塑化効果とおそらく結合して、ポリマーを気泡、ブリスター、または発泡させ、少なくとも部分的に基材から分離させることができる。
【0016】
本方法を実施した後、分離されるべきポリマーが基材から完全に分離されていない場合、例えば、加工されたポリマーコンポジット構造を剪断および/または粉砕に供することによって、完全な分離を達成することができる。次いで、分離されたポリマーは、フロートタンク、渦電流またはサイクロンのような当該技術分野で公知の技術を用いて単離することができる。
【0017】
一実施形態では、ポリマーが非ポリマー基材に結合される。このような非ポリマー基材の例としては金属(例えば、金属箔またはワイヤ)、ガラス繊維、炭素繊維、紙、厚紙、およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
別の実施形態では、ポリマーがポリマー基材に結合される。その場合、本発明の方法によれば、そのポリマー基材は、基材に結合したポリマーとは異なるポリマーである。
【0019】
さらなる実施形態では、ポリマーがポリマー基材に直接結合され、そのポリマー基材は次に、非ポリマー基材に結合される。したがって、ポリマーは複合基材(すなわち、非ポリマー基材に結合されたポリマー基材の集合体)に結合されていると説明することができる。
【0020】
一実施形態では、異なる材料の基材に結合されたポリマーがコンポジット構造のポリマーマトリックスの一部を形成し、基材はそのポリマーマトリックス内に位置する。例えば、基材は、ポリマーのポリマーマトリックスによって封入されてもよい。
【0021】
さらなる実施形態では、ポリマーコンポジット構造がラミネートであり、ポリマーおよびそれが結合される基材はラミネートの層を形成する。
【0022】
さらに別の実施形態では、ポリマーコンポジット構造が基材がポリマーの2つの層の間に位置するラミネートである。
【0023】
一実施形態では、この方法は、工程(2)で提供されたポリマーコンポジット構造を剪断力および/または粉砕に供し、次いでポリマーおよび基材を別々の成分として単離するさらなる工程(3)を含む。その実施形態では、ポリマーおよび基材構成要素がフロートタンク、渦電流またはサイクロンを使用して隔離されてもよい。
【0024】
ポリマーは、ポリハロゲン化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、スチレン系ポリマー、ゴム、これらの組み合わせおよびコポリマーから選択され得る。具体例としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ナイロン、天然ゴム、合成ゴムが挙げられる。
【0025】
基材は、金属、ポリマー、ガラス繊維、炭素繊維、紙、厚紙、およびそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0026】
基材は、異なる材料に結合された1つの材料から構成されるという点で、それ自体がコンポジット構造であってもよい。
【0027】
基材がポリマーであるか、またはポリマーを含む場合、そのポリマーは、本明細書に記載のポリマーから選択することができる。
【0028】
工程(1)で使用される組成物は、脂肪族炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、アルデヒド、アルコール、エーテル、エステル、シアノアルカン、ハロゲン化アルカン、ハロゲン化アルケン、およびそれらの組み合わせから選択される有機溶媒を含んでもよい。
【0029】
使用することができる有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトアルデヒド、エタノール、メタノール、ジエチルエーテル、アセトニトリル、1,1,1-トリクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0030】
工程(2)で使用される、工程(1)で使用される組成物の沸点より高い温度を有する液体は、前述の有機溶媒、水、天然または合成油、およびそれらの組合せから選択され得る。
【0031】
本発明のさらなる態様および実施形態を、以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明は、以下の非限定的な図面を参照して説明される:
【
図1】
図1は、ポリ塩化ビニル/ポリエステル/ポリ塩化ビニルラミネート構造を有するラミネートの形式の、本発明による利用に適したポリマーコンポジット構造を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の方法に従って加工された、
図1に示すポリマーコンポジット構造を示す図である。ラミネート構造の外側ポリ塩化ビニル層は発泡/バブリングされ、少なくとも部分的に内側ポリエステル層から分離されている。
【
図3】
図3は、ポリエステル(左側)およびポリ塩化ビニル(右側)をポリマーコンポジット構造から分離するためにサイクロンによる粉砕および分離を受けた
図2に示すポリマーコンポジット構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明による方法は、ポリマーと、ポリマーが結合される基材との間の分離を促進する。ポリマーと基材との間の「分離を促進する」とは、基材に結合されたポリマーの表面積の少なくとも一部が基材から分離し、もはや基材に結合されないことを意味する。ほんの一例として、本発明の方法を実施することにより、基材に結合されたポリマーを発泡、ブリスター、または気泡させ、それにより、基材に結合されたポリマーの表面積の少なくとも一部を結合解除することができる。
【0034】
分離されるポリマーが異なる材料の基材に「結合」されるとは、ポリマーが基材材料に物理的および/または化学的に接着されることを意味する。
【0035】
ポリマーは、基材に直接または間接的に結合されてもよい。ポリマーが基材に間接的に結合される場合、その結合は、接着層を介して起こり得る。
【0036】
ポリマーの基材材料への結合は単に、基材材料に適用される溶融ポリマー、または溶媒中のポリマーによって起こり得る。
【0037】
所与の基材に結合させることができるポリマーの性質に関しては、特に制限はない。適切なポリマーの例としてはポリハロゲン化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、スチレン系ポリマー、ゴム、これらの組み合わせおよびコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。より具体的な例としてはポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ナイロン、天然ゴムおよび合成ゴムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
基材に結合されるポリマーは、熱可塑性であってもよい。基材がポリマーであるか、またはポリマーを含む場合、そのポリマーは熱可塑性であってもよい。
【0039】
一実施形態では、基材に結合されたポリマーは熱可塑性である。
【0040】
当業者であれば、熱可塑性ポリマーは、熱硬化性ポリマーよりも、有機溶媒を含む吸収性組成物を受け入れることができることを理解するであろう。
【0041】
ポリマーは、異なる材料の基材に結合される。「異なる材料の」基材とは、ポリマーに直接結合される基材の材料がそのポリマーと同じ材料ではないことを意味することが意図される。それにもかかわらず、基材は、依然としてポリマーであってもよく、またはポリマーを含んでもよい。基材は、それ自体がコンポジット構造であってもよい。例えば、本発明は、(i)異なるポリマー基材に結合されたポリマー、(ii)非ポリマー基材に結合されたポリマー、および(iii)複合基材に結合されたポリマーを含むポリマーコンポジット構造を使用することを包含することが意図される。
【0042】
ポリマーを基材に結合させることができれば、基材の物理的または組成的形式は特に制限されない。例えば、基材は、連続シート材料(ポリマーシート/フィルムまたは金属箔など)、金属線、繊維または繊維の集合体(糸、紙、厚紙または布など)の形態であってもよい。基材はまた、それが結合されるポリマー内に含まれるか、またはそれによって封入されてもよい。
【0043】
一実施形態では、基材が金属、ポリマー、ゴム、ガラス繊維、炭素繊維、紙、厚紙、およびそれらの組合せから選択される。
【0044】
別の実施形態では、基材が金属箔、例えばアルミニウム箔、または金属線を含む。
【0045】
さらに別の実施形態では、基材がポリマーであるか、またはポリマーを含む。基材がポリマーである場合、そのポリマーは、基材に結合されたポリマーとは異なるポリマーである。特に、本発明は、ポリマーを異なる基材材料から分離することを意図する。基材に結合されたポリマーが基材と同じポリマーである場合、集合コンポジット構造は、実際には同じポリマーから作られ、ポリマーを基材材料から分離する実際的な理由はない可能性が高い。適切なポリマー基材としては、基材に結合されるポリマーについて本明細書に記載されるものが挙げられる。
【0046】
さらなる実施形態では、基材はペーパーおよび/または厚ペーパーを含む。
【0047】
基材に結合されるポリマーは、ポリマーコンポジット構造の少なくとも一部を形成する。このようなポリマーコンポジット構造は、当業者に周知である。
【0048】
例えば、ポリマーコンポジット構造は、それが結合されるポリマーのポリマーマトリックス内に位置する基材を含んでもよい。その場合、基材は、ポリマーの補強材料として使用されることが多い。
【0049】
一実施形態では、ポリマーコンポジット構造の基材がそれが結合されるポリマーのポリマーマトリックス内に位置する。
【0050】
あるいは、ポリマーコンポジット構造がポリマーおよび基材がラミネートの層またはシートを形成するラミネートであってもよい。その場合、基材は、ポリマーのための補強材料として使用することもできる。
【0051】
一実施形態では、ポリマーコンポジット構造がポリマーがやはり層の形態である基材に結合された層の形態であるラミネートである。
【0052】
さらなる実施形態では、基材が金属箔層、ポリマー層、紙層、厚紙層、またはそれらの組合せの形態であるか、またはそれらを含む。
【0053】
別の実施形態では、基材がポリマー層に結合された金属箔層を含む複合材料である。
【0054】
ポリマーコンポジット構造は、基材がポリマーの2つの層の間に位置する層であるラミネートであってもよい。例えば、ポリマーコンポジット構造はA/B/A構造を有するラミネートであってもよく、ここで、Aはポリマーを表し、Bは基材を表す。
【0055】
ポリマーコンポジット構造は、ポリマーがコンポジット基材層に結合された層であるラミネートであってもよい。例えば、ポリマーコンポジット構造はA/B/C構造を有するラミネートであってもよく、ここで、Aは複合基材B/Cに結合されたポリマーを表す。その場合、Bはポリマー層Cに結合された非ポリマー層(CがポリマーAと同じであっても異なっていてもよい)であってもよい。BがポリマーAと異なっていれば、ポリマー層であってもよい。その場合、Bは、ポリマーまたは非ポリマー層Cに結合されたポリマー層であってもよい。
【0056】
一実施形態では、ポリマーコンポジット構造体がポリハロゲン化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、スチレン系ポリマー、ゴム、これらの組み合わせおよびコポリマーを含むラミネートである。
【0057】
さらなる実施形態ではポリマーコンポジット構造がA/B/C積層構造を含むラミネートであり、ここで、Aはポリ塩化ビニルまたはポリ塩化ビニリデンを表し、Bはポリエチレンまたはポリプロピレンを表し、Cは金属箔を表す。
【0058】
別の実施形態では、ポリマーコンポジット構造が基材がポリマーの2つの層の間に位置するラミネートである。その場合、2つのポリマー層は同じであってもよく、それぞれが基材の対向する側面に結合される。基材に結合された2つのポリマー層の各々は同じであってもよいが、基材自体はこれら2つのポリマー層の一方または両方とは異なる材料である。
【0059】
ポリマー複合体が基材がポリマーの2つの層の間に位置するラミネートである場合、2つのポリマー層の一方または両方が有機溶媒を含む組成物を吸収してもよい。さらに、基材は、有機溶媒を含む組成物を吸収することもできる。
【0060】
基材に結合されたポリマーは、コンポジット構造の少なくとも一部を形成する。いくつかの実施形態では、基材およびそれに結合されたポリマーがポリマーコンポジット構造全体を表す。例えば、ポリマーコンポジット構造は、ポリマーが金属箔基材に結合されたラミネートの形態であってもよい。あるいは、ポリマーコンポジット構造が2つのポリマー層が基材の対向する側、例えばポリマー基材層に結合されるラミネートの形態であってもよい。
【0061】
ポリマーコンポジット構造体はまた、基材がそれに結合されたポリマーのポリマーマトリックス内に位置するチューブの形態であってもよい。
【0062】
さらなる実施形態では、ポリマーコンポジット構造が紙または厚紙に結合されたポリマーを含むラミネートである。
【0063】
別の実施形態では、ポリマーコンポジット構造がA/B積層構造を含むラミネートであり、ここで、Aはポリオレフィンまたはポリエステルを表し、Bはペーパーおよび/または厚ペーパー基材を表す。
【0064】
さらなる実施形態では、ポリマーコンポジット構造がポリマー繊維および/または金属線に結合されたゴムを含むタイヤである。
【0065】
別の実施形態では、ポリマーコンポジット構造がポリマー被覆金属ワイヤである。
【0066】
本発明の方法に従ってポリマーコンポジット構造体を加工することができれば、用いることができるポリマーコンポジット構造体のサイズに特に制限はない。この方法で使用されるポリマーコンポジット構造のサイズは、実際に提供されるポリマーコンポジット構造のサイズおよび使用される加工装置の性質に依存することが多い。必要であれば、ポリマーコンポジット構造体は本発明の方法で使用される前に、当該技術分野で公知の機器を使用して粉砕することができる。
【0067】
本発明による方法は、ポリマーコンポジット構造を、有機溶媒を含む組成物と接触させることを含む。この文脈における「接触」とは、ポリマーコンポジット構造が組成物と直接物理的に接触して配置されることを意味する。例えば、ポリマーコンポジット構造は構造を組成物内に沈めるように、組成物を含む容器内に配置することができる。あるいは、ポリマーコンポジット構造体を容器に入れ、組成物をコンポジット構造体に適用して、構造体を組成物内に沈めることもできる。
【0068】
ポリマーコンポジット構造を組成物と接触させることは、もちろん、基材および基材に結合されたポリマーを組成物と接触させることを含む。
【0069】
組成物は有機溶媒を含む。本明細書で使用される「有機溶媒」という表現は、当技術分野内でその従来の意味をとることが意図される。
【0070】
組成物は一般に、50重量%、または60重量%、または70重量%、または80重量%、または90重量%、または95重量%より多い量の有機溶媒を含む。
【0071】
組成物に使用される有機溶媒が水と混和性である場合、組成物は水をまた含有してもよい。使用される場合、水は一般に、50重量%、または40重量%、または30重量%、または20重量%、または10重量%、または5重量%未満の量で組成物中に存在する。
【0072】
一実施形態では、組成物は実質的に水を含まない。
【0073】
別の実施形態では、組成物は本質的に有機溶媒からなる。
【0074】
組成物に使用される有機溶媒は、異なる有機溶媒の混合物であってもよい。
【0075】
組成物は、脂肪族炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、アルデヒド、アルコール、エーテル、エステル、シアノアルカン、ハロゲン化アルカン、ハロゲン化アルケン、およびそれらの組み合わせから選択される有機溶媒を含み得る。
【0076】
使用され得る有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトアルデヒド、エタノール、メタノール、ジエチルエーテル、アセトニトリル、1,1,1-トリクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
本明細書で使用される有機溶媒を含む組成物は、ポリマーおよび/または基材内に吸収される。ポリマーおよび基材の一方または両方内に「吸収される」とは、組成物の分子がポリマーおよび/または基材のマトリックス材料内に取り込まれることを意味する。ポリマーまたは基材のマトリックス材料内に組成物を収容するために、ポリマーまたは基材は、典型的には体積の増加を受ける。当技術分野では、そのプロセスがしばしば、組成物と共に「膨潤され」または「膨潤する」ポリマーまたは基材と呼ばれる。
【0078】
当業者は、組成物がポリマーまたは基材材料内に吸収されるためにはその組成物がそのような吸収を促進するためにポリマーまたは基材材料と適切に互換性であるべきであることを理解するのであろう。例えば、非極性基材またはポリマーは、極性組成、成分情報を、たとえあったとしても、ほとんど吸収しない。換言すれば、極性組成、成分情報は、非極性基材またはポリマーの膨潤を、全く誘導しないとしても、ほとんど誘導しない。
【0079】
ポリマーの文脈において、当業者は、ポリマー鎖から形成されるポリマーマトリックスを本質的に含もうことを理解するのであろう。したがって、ポリマー内に吸収された組成物は、ポリマーのポリマーマトリックス内およびポリマーマトリックス全体に位置することになる。
【0080】
当業者は組成物がそのマトリックス材料内に吸収されることを確実にするために、所与のポリマーまたは基材と共に使用するための適切な組成物を選択することができるのであろう。組成物が所与の材料内に吸収されるかどうかを指示するパラメータは当技術分野で周知であり、例えば、組成物の極性、材料の極性、および温度を含む。例えば、アセトンは、ポリ塩化ビニルまたはポリエステルのポリマーマトリックス内に吸収される組成物として選択することができる。換言すれば、アセトンは、ポリ塩化ビニルおよびポリエステルを膨潤させることが知られている。
【0081】
基材がポリマーであるか、またはポリマーを含む場合、基材およびポリマー基材に結合したポリマーの一方または両方は、本明細書に記載の組成物を吸収することができる。
【0082】
本発明の重要な特徴は、有機溶媒を含む組成物がポリマーも基材も溶解しないことである。換言すれば、組成物がポリマーまたは基材のいずれかを溶解する状況は、本発明の適用範囲の一部であることを意図しない。
【0083】
当業者がポリマーまたは基材内に吸収される有機溶媒を含む組成物を選択することができるように、それらはまた、ポリマーまたは基材を溶解しないような組成物を選択することができる。
【0084】
所与の組成物が所与の材料を溶解するかどうかを指示するパラメータは当技術分野で周知であり、例えば、組成物の極性、材料の極性、および温度を含む。
【0085】
したがって、当業者はポリマーおよび/または基材材料内に吸収するだけでなく、ポリマーまたは基材のいずれも溶解しないことを確実にするために、本発明に従って使用する有機溶媒を含む適切な組成物を選択することができるのであろう。これに関連して、当業者は当然ながら、本発明が実施される温度を認識するのであろう。例えば、ポリマーに対する有機溶媒を含む組成物の動作(膨潤または溶解)は、当業者に周知である。
【0086】
ポリマーコンポジット構造体を有機溶媒を含む組成物と接触させる工程は、周囲温度で行うことができる。
【0087】
有機溶媒を含む十分な組成、成分情報が本発明を実施するために、ポリマーおよび基材の一方または両方の中に吸収されていれば、ポリマー複合体が組成、成分情報と接触したままである時間枠は特に制限されない。十分な吸収を達成するのに必要な時間枠は組成物の性質、ポリマーコンポジット構造の性質(例えば、厚さ)および温度などのパラメータに依存する。
【0088】
例えば、ポリマーコンポジット構造は、少なくとも10秒間、または少なくとも20秒間、または少なくとも40秒間、または少なくとも1分間、または少なくとも5分間、または少なくとも10分間、または少なくとも20分間、または少なくとも30分、または少なくとも40分、または少なくとも50分、または少なくとも1時間、または少なくとも3時間、または少なくとも5時間、または少なくとも7時間、または少なくとも9時間、または少なくとも10時間、または少なくとも11時間、または少なくとも12時間、または少なくとも13時間、または少なくとも14時間、有機溶媒を含む組成物と接触したままであり得る。
【0089】
一実施形態では、ポリマーコンポジット構造が約10秒~約1分の範囲の時間、有機溶媒を含む組成物と接触したままである。
【0090】
別の実施形態では、ポリマーコンポジット構造が約30分~約2時間の範囲の時間、有機溶媒を含む組成物と接触したままである。
【0091】
さらなる実施形態では、ポリマーコンポジット構造が約6時間~約12時間の範囲の時間、有機溶媒を含む組成物と接触したままである。
【0092】
必要であれば、ポリマーコンポジット構造体は、工程(1)が行われる前に前処理工程にかけられてもよい。例えば、ポリマーコンポジット構造体がポリマー/紙ラミネートの形態である場合、余剰紙を水に浸すことによって構造体から除去することが望ましい場合がある。
【0093】
工程(1)を行った後、得られたポリマーコンポジット構造は一般に、有機溶媒を含む組成物から除去される(過剰の組成物が使用される場合)。例えば、ポリマーコンポジット構造は組成物から物理的に除去されてもよく、または組成物はコンポジット構造から歪んで離れてもよい。
【0094】
一実施形態では工程(2)を実施する前に、ポリマーコンポジット構造はポリマーおよび基材の一方または両方に吸収されない有機溶媒を含む過剰な組成物から単離される。
【0095】
本発明の方法によれば、工程(1)で提供されるポリマーコンポジット構造体は、工程(1)で使用される有機溶媒を含む組成物の沸点より高い温度を有する液体と接触される。この文脈における「接触」とは、ポリマーコンポジット構造が液体と直接物理的に接触して配置されることを意味する。例えば、ポリマーコンポジット構造は液体内に構造を沈めるように、液体を含む容器内に配置されてもよい。あるいは、ポリマーコンポジット構造体を容器内に配置し、液体をコンポジット構造体上に適用して、構造体を液体内に沈めることもできる。
【0096】
ポリマーコンポジット構造体を液体と接触させることは、当然ながら、基材および基材に結合されたポリマーを液体と接触させることを含む。
【0097】
工程(2)で使用される、工程(1)で使用される有機溶媒を含む組成物の沸点より高い温度を有する液体によって、工程(2)で使用される液体は、工程(1)で使用される有機溶媒を含む組成物と同じではないことが理解される。
【0098】
本発明の重要な特徴は、工程(2)で使用される液体がポリマーも基材も溶解しないことである。言い換えれば、液体がポリマーまたは基材のいずれかを溶解する状況は、本発明の適用範囲の一部であることを意図しない。
【0099】
工程(2)で使用される液体は工程(1)で使用される有機溶媒を含む組成物の沸点よりも高い温度を有し、ポリマーも基材も溶解しない限り、その液体の組成は特に限定されない。
【0100】
工程(1)で使用される有機溶媒を含む組成物の文脈で本明細書で議論されるように、当業者は、工程(2)で使用される液体であって、ポリマーまたは基材のいずれも溶解しない液体を容易に選択することができる。
【0101】
工程(2)で使用するのに適した液体を選択する際に、当業者はまた、工程(1)で使用される有機溶媒を含む組成物の沸点を容易に決定することができ、それによって、使用される液体がその組成物の沸点より高い温度を有することを確実にする。
【0102】
例えば、工程(1)で使用される有機溶媒を含む組成物が単一の有機溶媒のみである場合、その溶媒の沸点は、容易に決定されるか、または公知である。工程(1)で使用される有機溶媒を含む組成物が1つ以上の他の成分と組み合わされた有機溶媒を含む場合、その組成物溶媒の沸点は、それを測定することによって、または沸点図を使用することなどの従来の手段によって決定され得る。工程(1)で使用される有機溶媒を含む組成物が1つ以上の他の成分と組み合わせて有機溶媒を含み、そしてその組成物が決定され得る平均沸点を有さない場合、その組成物の沸点は、最高体積%で存在する液体の沸点とみなされるべきである。例えば、組成物が80体積%アセトンおよび20体積%酢酸エチルを含み、かつその混合物が、測定することができる平均沸点を提供しない場合、沸点をアセトンの沸点とみなすべきである。このような溶媒混合物が等しい体積%の成分を含んでいた場合、沸点は最高沸点を有する成分の沸点とみなすべきであり、50体積%アセトンと50体積%酢酸エチルの混合物の場合、それは酢酸エチルの沸点であろう。
【0103】
工程(1)で使用される有機溶媒を含む組成物の沸点は、大気圧で測定される沸点であるべきである。
【0104】
工程(2)で使用される液は、工程(1)で使用される有機溶剤を含む配合物の沸点よりも少なくとも10℃、少なくとも15℃、少なくとも20℃、少なくとも25℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃または少なくとも45℃高い。
【0105】
例えば、工程(1)で使用される有機溶剤を含む成分がアセトン(沸点56℃)である場合、工程(2)で使用される液は、少なくとも75℃、または少なくとも80℃、または少なくとも90℃、または約100℃の温度を有する水であってもよい。
【0106】
工程(2)で使用することができる液体の好適な例は、本明細書に記載の有機溶媒、水、天然または合成油、およびそれらの組合せから選択することができる。
【0107】
一実施形態では、工程(2)で使用される液体は水である。
【0108】
さらなる実施形態では、工程(2)で使用される液が少なくとも75℃、または少なくとも80℃、または少なくとも85℃、または少なくとも90℃、または少なくとも95℃の温度を有する水である。
【0109】
工程(1)で提供されるポリマーコンポジット構造を、工程(1)で使用される組成物の沸点より高い温度を有する工程(2)で使用される液体と接触させる動作は、ポリマーと基材との間の分離を促進する。この液体の主要な機能はコンポジット構造内に吸収された有機溶媒を含む組成物の蒸発を促進するように、コンポジット構造に熱を迅速に伝達することである。
【0110】
理論によって制限されることを望むものではないが、ポリマーコンポジット構造体を、ポリマーおよび基材の一方または両方に吸収された有機物を含む吸収された組成物よりも高い沸点を有する液体と接触させる動作は組成物を急速に気化させ、コンポジット構造体内に有意な内圧を誘発すると考えられる。その誘起された内圧は、おそらく、分離されるべき少なくともポリマーに対する吸収された組成物の可塑化効果と組み合わされて、ポリマーを気泡、ブリスター、または発泡させ、少なくとも部分的に基材から分離させることができる。
【0111】
工程(2)で使用される、ポリマーまたは基材を溶解しない液体に加えて、液体は、少なくとも基材に結合されたポリマーによっても吸収されないタイプのものであることが好ましいことがある。
【0112】
理論によって制限されることを望むものではないが、工程(1)で使用される組成物は少なくとも基材に結合されたポリマーに吸収され、そのポリマーに可塑化効果を与えることができると考えられる。工程(2)で使用される液体がコンポジット構造体に適用される場合、その液体からの熱は吸収された組成物の揮発を促進し、可塑化効果と相まって、基材に結合されたポリマーは、より容易に泡立ち/膨れ/泡立ち、基材から離れることができる。基材からのこのような分離は次に、ポリマーを基材から分離することを容易にする。
【0113】
再び、理論によって制限されることを望むものではないが、工程(2)で使用される液体は単に、基材から分離されるポリマー中の吸収された組成物の揮発を促進するための単なる熱源として機能するとは考えられない。特に、本発明による方法の工程(1)のみを実施し、次いで、得られたコンポジット構造体を、例えば、対流または電子レンジ中で、吸収された組成物の沸点より高い温度に加熱することは、基材に結合されたポリマーの分離を促進しないことが見出された。したがって、工程(2)で使用される液体は、コンポジット構造への熱の迅速な伝達を提供するだけでなく、基材からのポリマーの分離を容易にする一定の溶媒効果をコンポジット構造に付与すると考えられる。
【0114】
工程(2)を行った後、得られたポリマーコンポジット構造体を洗浄および/または放置して、工程(2)で使用した残留液体または工程(1)で使用した組成物を除去することができる。
【0115】
工程(2)を行った後、得られたポリマーコンポジット構造体は、発泡/膨れ/泡立った形態を有するコンポジット構造体の少なくとも1つのポリマー成分を提示することができる。この形態は基材からのポリマーの分離を提供し、それによって、ポリマーがポリマーコンポジット構造からより容易に単離され、その後のリサイクルのために収集されることを可能にする。
【0116】
必要であれば、基材からのポリマーのさらなる分離を促進するために、工程(2)で得られたポリマー複合材料を剪断および/または粉砕にかけてもよい。
【0117】
本明細書で使用される「剪断」または「剪断している」という用語は、ポリマーコンポジット構造に作用する整列していない力を意味することが意図される。
【0118】
本明細書で使用される「粉砕された」または「粉砕」という用語は、ポリマーコンポジット構造をより小さな断片に破砕することを意味することを意図する。
【0119】
ポリマーコンポジット構造体の剪断および/または粉砕は当業者に周知の機器、例えば、破砕、破砕および切断機器を用いて行うことができる。
【0120】
したがって、一実施形態では、この方法が工程(2)で提供されるポリマーコンポジット構造体を剪断および/または粉砕するさらなる工程(3)を含む。
【0121】
工程(2)で提供されるポリマーコンポジット構造体を剪断および/または粉砕した後、ポリマーコンポジット構造体のポリマーおよび基材は一般に、実質的に物理的に分離されるが、物理的混合物として残ることができる。その形態では、分離されたポリマー成分が当該技術分野で公知の技術を用いて基質成分から容易に単離することができる。例えば、ポリマーと基質との混合物は、フロートタンク、渦電流またはサイクロンを用いて分離することができる。
【0122】
したがって、別の実施形態では、この方法が工程(2)で提供されるポリマーコンポジット構造体を剪断および/または粉砕し、分離されたポリマーおよび基材を別々の成分として単離するさらなる工程(3)を含む。この実施形態では、分離されたポリマー部品および基材部品がフロートタンク、渦電流またはサイクロンを使用して分離されてもよい。
【0123】
ポリマーコンポジット構造が3つ以上の成分を含み、そのうちの2つが分離されるべき異なるポリマーである場合、ポリマーコンポジット構造は2つ以上の異なるポリマーを分離するために、本発明の方法を使用して2回以上加工される必要があり得る。例えば、ポリマーコンポジット構造はA/B/C積層構造を含むラミネートであってもよく、ここで、Aは複合基材B/Cに結合されたポリマー層を表し、BはAとは異なるポリマー層を表し、Cは非ポリマー層を表す。その場合、本発明の方法はポリマーAをポリマーコンポジット構造から分離および単離し、また、単離された複合基材B/Cを提供するために、初めて実施されてもよい。次いで、単離された複合基材B/Cは本明細書に記載されるように、非ポリマー基材Cに結合されたポリマーBを分離するために、本発明の方法を2回目に実施する際にポリマーコンポジット構造として使用されてもよい。
【0124】
あるいは、本発明による方法が有利にはそのようなA/B/C積層構造の3つの成分すべてを1回のパスで分離することを可能にすることができる。
【0125】
本発明の方法をポリマーコンポジット構造体に複数回適用することは、ポリマーコンポジット構造体が少なくとも3つの異なる材料を含み、そのうちの2つが異なるポリマーである場合に、一般に有用である。特に、異なるポリマーの各々は、有機溶媒を含む異なる組成物を用いて最もよく分離され得る。その場合、本発明の方法はコンポジット構造から1つのポリマーを分離および単離するために、初めて実施されてもよい。次いで、この方法は(i)第1の方法パスから得られたポリマーコンポジット構造、および(ii)第1の方法パスで使用されたものとは異なる有機溶媒を含む組成物を使用して、コンポジット構造から第2のポリマーを分離および単離するために、2回目に実行されてもよい。
【0126】
以下、本発明を、以下の非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0127】
(一般的な方法)
実施例を実施するために、ポリマーコンポジット構造体を、扱いやすいサイズの断片に切断し、本実施例でのそれは、約3cm×2cmであった。
【0128】
次いで、ポリマーコンポジット構造体を、有機溶媒を含む組成物を含む容器に、特定の期間入れた。
【0129】
浸漬期間の後、有機溶媒を含む組成物を排出し、有機溶媒を含む組成物の沸点よりも高い温度を有する液体を、容器内に位置するポリマーコンポジット構造上に注いだ。ポリマーコンポジット構造上に液体を注ぐ動作は、基材に結合したポリマーの分離を促進した。ほとんどの場合、分離は、コンポジット構造表面の泡立った、膨れた、または発泡した形状の形成を通して観察された。
【0130】
次いで、液体をポリマーコンポジット構造体から排出し、得られた生成物を回転金属破砕ブレードを用いて剪断/粉砕した。
【0131】
剪断/粉砕は、ポリマーと基材との混合物を提供する基材材料からポリマーを実質的に分離するのに役立った。
【0132】
次いで、この混合物をサイクロン、渦電流またはフロートタンク中で加工することによって、ポリマーおよび基質を互いに単離した。
【0133】
(実施例1)
ポリ塩化ビニル/ポリエステル/ポリ塩化ビニルラミネートコンポジット構造(
図1参照)を用いて、上記に概説した一般的な手順に従った。アセトンは、アセトンの沸点より高い温度を有する液体として、80℃、90℃および100℃の温度で有機溶媒および水を含む組成物として使用した。積層コンポジット構造体試料を最初にアセトンに約12時間浸漬した。アセトン浸漬コンポジット構造体に水を適用すると、コンポジット構造体は、その外面上に泡立った/膨れた/泡立った形状を呈した(
図2参照)。次いで、得られた処理済みコンポジット構造体を乾燥させ、次いで粉砕して、分離されたポリエステルとポリ塩化ビニルとの混合物を得た。次に、ポリエステルとポリ塩化ビニルの混合物をサイクロンを用いて個々のポリマー成分に単離した(ポリエステルが左側に存在し、ポリ塩化ビニルが右側に存在する
図3参照)。
【0134】
(実施例2)
有機溶媒を含む組成物としてクロロホルムを使用し、クロロホルムの沸点より高い温度を有する液体として100℃の温度の水を使用したことを除いて、実施例1で概説したのと同じ一般的な手順に従った。ポリマーコンポジット構造体が首尾よく加工され、ポリ塩化ビニルおよびポリエステルが単離された。
【0135】
(実施例3)
有機溶媒を含む組成物として酢酸エチルを使用し、酢酸エチルの沸点よりも高い温度を有する液体として100℃の温度の水を使用したことを除いて、実施例1と同じ一般的な手順に従った。ポリマーコンポジット構造体が首尾よく加工され、ポリ塩化ビニルおよびポリエステルが単離された。
【0136】
(実施例4)
組成物混合物の沸点より高い温度を有する液体として、100℃の温度の有機溶媒および水を含む組成物として、アセトン、クロロホルムおよび酢酸エチルの体積比10:1:1の混合物を使用したことを除いて、実施例1で概説したのと同じ一般的な手順に従った。ポリマーコンポジット構造体が首尾よく加工され、ポリ塩化ビニルおよびポリエステルを単離された。
【0137】
(実施例5)
アセトンの沸点よりも高い温度を有する液として、100℃の温度のカノーラ油を使用したことを除いて、実施例1に概説したのと同じ全般的な方法に従った。ポリマーコンポジット構造体が首尾よく加工され、ポリ塩化ビニルおよびポリエステルを単離された。
【0138】
(実施例6)
ポリマーコンポジット構造がポリ塩化ビニルのポリマーマトリックス内にポリエステル補強を有するポリ塩化ビニルから作製された管状ホースの形態であり、100℃の温度の水が、アセトンの沸点よりも高い温度を有する液体として使用されたことを除いて、実施例1で概説されたのと同じ一般的な手順に従った。ポリマーコンポジット構造体が首尾よく加工され、ポリ塩化ビニルおよびポリエステルを単離された。
【0139】
(実施例7)
ポリマーコンポジット構造が未知のポリマー(ポリ塩化ビニルではない)に結合されたポリ塩化ビニルを含む積層構造を有するブリスターパックの形態であり、未知のポリマーがアルミニウム箔(すなわち、A=ポリ塩化ビニル、B=未知のポリマー、およびC=アルミニウム箔であるA/B/C積層構造を有する)に結合され、100℃の温度の水がアセトンの沸点より高い温度を有する液体として使用されたことを除いて、実施例1で概説されたのと同じ一般的な手順に従った。この手順により、単離されたポリ塩化ビニル(A)およびポリマー複合基材(B/C)が得られた。
【0140】
次いで、単離されたポリマー複合基材(B/C)を、クロロホルムを有機溶媒を含む組成物として使用したことを除いて、実施例1に概説したのと同じ一般的な手順で使用した。この手順により、単離された未知のポリマー(B)および単離されたアルミニウム箔(C)が得られた。成分(B)および(C)を、渦電流分離器を用いて単離した。
【0141】
(実施例8)
ポリマーコンポジット構造がポリプロピレン/ポリエチレンコンポジット基材に結合されたポリ塩化ビニルを含む積層構造(すなわち、A=ポリ塩化ビニル、B=ポリプロピレン、およびC=ポリエチレンであるA/B/C積層構造を有する)の形態であることを除いて、実施例1で概説したのと同じ一般的な手順に従い、100℃の温度の水を、アセトンの沸点より高い温度を有する液体として使用し、アセトン中の浸漬時間は1時間であった。この手順により、分離したポリ塩化ビニル(A)、ポリプロピレン(B)およびポリエチレン(C)の混合物を得た。成分(A)、(B)および(C)をフロートタンクを用いて単離した。
【0142】
(実施例9)
ポリマーコンポジット構造がビニル床積層構造の形態であり、100℃の温度の水をアセトンの沸点より高い温度を有する液体として使用し、アセトン中の浸漬時間を1時間としたことを除いて、実施例1で概説したのと同じ一般的な手順に従った。この手順は剪断/粉砕のいかなる形態も受ける必要なしに、積層構造の4つの分離された成分の混合物を与えた。
【0143】
(実施例10)
ポリマーコンポジット構造体が自動車タイヤの形態であり、90℃の温度の水がアセトンの沸点より高い温度を有する液体として使用され、アセトン中の浸漬時間が1時間であったことを除いて、実施例1で概説したのと同じ一般的な手順に従った。アセトンに浸漬したタイヤを熱水と接触させると、ゴムの膨れまたは発泡は観察されなかった。しかし、気泡がタイヤ表面から放出されることが分かった。ポリマーコンポジット構造が首尾よく加工され、ゴムクラム、金属線、およびポリマー繊維が単離された。
【0144】
(実施例11)
ポリマーコンポジット構造体がポリマー被覆銅線の形態であり、90℃の温度の水がアセトンの沸点より高い温度を有する液体として使用され、アセトン中の浸漬時間が30分であったことを除いて、実施例1で概説したのと同じ一般的な手順に従った。アセトン浸漬コンポジット構造体に水を適用すると、コンポジット構造体は、その外面に泡立った/膨れた/発泡した形状を呈した。ポリマーコンポジット構造が首尾よく加工され、ポリマーおよび銅線が単離された。
【0145】
(実施例12)
ポリマーコンポジット構造がポリマー/紙積層カップ(コーヒーカップ、ソフトドリンクカップなど)の形態であること、90℃の温度の水をアセトンの沸点より高い温度を有する液体として使用したこと、およびアセトン中の浸漬時間が15秒であったことを除いて、実施例1で概説したのと同じ一般的な手順に従った。コンポジット構造体をアセトンに浸漬する前に、それを水に10分間浸漬することによって前処理した。この前処理により、紙の外層をカップから容易に除去することができ、内部ポリマー/紙積層構造を残すことができた。次いで、この内部ポリマー/紙積層構造をアセトンに浸漬した。アセトン浸漬コンポジット構造体に水を適用すると、ポリマー層は紙層から実質的に分離した。ポリマーコンポジット構造が首尾よく加工され、ポリマーおよびペーパーが単離された。
【0146】
(比較例1)
アセトン浸漬ポリマーコンポジット構造を、アセトンの沸点より高い温度を有する水と接触させなかったことを除いて、実施例1で概説したのと同じ一般的な手順に従った。代わりに、アセトン浸漬ポリマー複合体を、(i)200℃の温度を有するオーブン中に120秒間、および(ii)高温の電子レンジ中に60、90、120および150秒間置いた。いずれかのオーブン中で加熱した後、得られたポリマー複合体は、基材からのポリマーの目に見える分離を示さなかった。電子レンジの場合、試料は炭化の徴候を示した。加熱後、得られたポリマー複合体を、回転金属細断ブレードを用いて剪断/粉砕に供した。しかし、基材からのポリマーの分離は観察されなかった。
【0147】
(比較例2)
アセトン浸漬ポリマーコンポジット構造体をアセトンの沸点より高い温度を有する水と接触させなかったことを除いて、実施例10で概説したのと同じ一般的な手順に従った。代わりに、アセトン浸漬ポリマー複合体を、回転金属細断ブレードを用いて剪断/粉砕に供した。しかし、基材からのポリマーの分離は観察されなかった。
【0148】
(比較例3)
実施例12で使用したのと同じカップを、回転金属細断ブレードを使用して剪断/粉砕に直接供した。基材材料からのポリマーの分離は、たとえあったとしてもほとんど起こらなかった。
【0149】
本明細書において、あらゆる先行する刊行物(またはそれに由来する情報)または既知のあらゆる事項への言及は、先行する刊行物(またはそれに由来する情報)または既知の事項が本明細書が関連する努力の分野における共通の一般知識の一部を形成するという承認または承認または提案の形態として解釈されるべきではなく、解釈されるべきではない。
【0150】
本明細書および以下の特許請求の範囲全体を通して、文脈が他に必要としない限り、「含む(comprise)」という用語、ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などの変化は記載された整数もしくは工程、または整数もしくは工程のグループの包含を意味するが、他の整数もしくは工程、または整数もしくは工程のグループの排除を意味しないことが理解されるであろう。