(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】鉄の製造
(51)【国際特許分類】
C21B 13/12 20060101AFI20220629BHJP
C22B 5/10 20060101ALI20220629BHJP
C22B 1/245 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C21B13/12
C22B5/10
C22B1/245
(21)【出願番号】P 2019542756
(86)(22)【出願日】2017-10-24
(86)【国際出願番号】 AU2017051163
(87)【国際公開番号】W WO2018076048
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-08-24
(32)【優先日】2016-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】519148208
【氏名又は名称】テクノロジカル リソーシーズ プロプライエタリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Technological Resources Pty.Limited
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】バックリー,マイケル
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-184718(JP,A)
【文献】特開昭64-052028(JP,A)
【文献】米国特許第04822410(US,A)
【文献】特表2009-528449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 13/12
C22B 5/10
C22B 1/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体状態の鉄鉱石を直接還元するための連続方法であって、
鉄鉱石
破片及びバイオマス
のブリケットを予備加熱チャンバーを通して移送し、鉄鉱石及びバイオマスが前記チャンバーを通って移動する間に、
少なくとも400℃の温度まで鉄鉱石及びバイオマスを予備加熱すること;
予備加熱された
ブリケットを無酸素環境を有する
反応チャンバーを通して移送し、
ブリケットが前記チャンバーを通って移動する間に、
ブリケット中の鉄鉱石及びバイオマスを
無酸素条件下でマイクロ波エネルギーの形態での電磁エネルギーに曝露
して、鉄鉱石内部に熱を発生させることを含み、バイオマスは、還元剤として作用して、固体状態の鉄鉱石を還元する、連続方法。
【請求項2】
マイクロ波エネルギーが、前記バイオマス内部に熱を発生させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
鉄鉱石の金属化が発生する範囲内の温度まで鉄鉱石が加熱されるようにプロセス運転条件を制御することを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ヘマタイトの場合、前記ヘマタイトの金属化のための800~950℃の範囲内の温度まで鉄鉱石が加熱されるようにプロセス運転条件を制御することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
鉄鉱石が必要とされる金属化度まで還元され、固体金属鉄製品が形成されるようにプロセス運転条件を制御することを含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項6】
400~900℃の範囲内の温度まで鉄鉱石及びバイオマスを予備加熱することを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記ブリケットが、1~10cmの最大長さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記最大長さが、2~10cmである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記最大長さが、2~6cmである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ブリケットが、略立方体状である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記鉄鉱石が、ヘマタイト又はゲーサイトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
固体状態の鉄鉱石を直接還元するための装置であって、当該装置が、
鉄鉱石の破片およびバイオマスのブリケット中の鉄鉱石の破片およびバイオマスを400~900℃の範囲の温度に予熱するための予備加熱炉と、
前記予備加熱炉からのブリケット用の還元アセンブリと、
を有しており、前記還元アセンブリは、
反応チャンバーと、マイクロ波エネルギーの形態での電磁エネルギー源と、還元剤として作用するバイオマスとともに前記予備加熱炉からのブリケット中の鉄鉱石を加熱および還元するためのマイクロ波エネルギーを前記チャンバーに移送するための導波路と、不活性ガス源と、不活性ガスをチャンバーに供給して前記チャンバーを無酸素条件下に維持するための配管と、前記チャンバー内で生成されるオフガス及び何らかの残留粒子を排出するための出口部とを含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄を製造するための鉄鉱石の還元に関する。
【背景技術】
【0002】
直接還元鉄(DRI)法は、高炉法に代わる鉄の製造経路である。DRI法では、液体の鉄が形成される高炉法とは異なり、ヘマタイト、ゲーサイト、及びマグネタイトなどの酸化鉄鉱物が、鉄の融点よりも低い温度で、固体状態で還元される。
【0003】
DRI法は、典型的には、800℃~1050℃で、通常はH2及びCOである還元剤との相互作用によって行われる。これらの還元ガスは、天然ガス又は石炭から得られ、全世界のDRIプラントの能力の80%超が天然ガスを用いている(例:MIDREX及びHYLプラント)。高いガス温度及び要求されるスループットのために、DRIプラントは、大スケールの加圧反応器の工学技術が必要であり、典型的には、シャフト反応器、流動床反応器、又は回転炉である。
【0004】
多くの既存のDRI法における原材料の要件は厳しく、システムは、典型的には、入手可能性及び鉱石の適切性に応じて、ペレットの形態又は固い天然の塊の形態でのフィードを必要とし、このことは、還元プロセスの前に著しい材料の選鉱が必要とされることを意味している。プラントのフットプリント、高さ、及び複雑さが大きい結果として、設備投資が高く、運転及びメンテナンスコストが多大となり、天然ガスをベースとするプロセスにおける典型的なエネルギー消費は、DRI1トンあたり10~11GJである。
【0005】
鉄及び鉄鋼産業は、最大のエネルギー使用者の1つであり、全世界のエネルギーのおよそ7%を消費している。世界における鋼鉄の需要は、2050年までに50%増加すると予想されており、一方厳しい気候変動の目標を達成するために、温室効果ガスの排出は削減しなければならない。
【0006】
排出されたCO2を取り込み、貯蔵する効率的な方法が存在しないことから、産業にとって、エネルギー使用を削減し、持続可能性を高め、運転のフレキシビリティ及びスケーラビリティを向上させることは重要である。
【0007】
上記の考察は、オーストラリア又は他所における共通の一般的知識であることを承認するものとして見なされるべきではない。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、還元剤としてのバイオマス及びエネルギー源としての電磁エネルギーを用いて、無酸素条件下で固体状態の鉄鉱石を直接還元するための方法である。
【0009】
本発明は、還元剤としてのバイオマスの使用及びエネルギー源としての電磁エネルギーの使用が、効果的で効率的な金属鉄の製造の機会を提供するという認識に基づいている。
【0010】
本発明の方法の有益性は、電磁エネルギーが材料を体積加熱する能力に基づいている。例えば、ヘマタイト及びゲーサイトなどの酸化鉄、並びにバイオマスは、約400~600℃超において、マイクロ波エネルギーの形態の電磁エネルギーを強く吸収する。本出願者は、エネルギーの吸収の結果として鉱石及びバイオマスの中に熱を直接発生させることができ、鉄鉱石を高いレベルの金属化まで還元することが可能となることを認識した。本出願者は、この機会が、特に、鉱石及びバイオマスが密に接触している場合に、例えば、ブレンド中、又はブリケットの形態で一緒に凝集されている場合に当てはまることを認識した。本発明によって、従来の処理における熱移動の制限を最小限に抑えることができ、その結果、加熱速度が大きく増加される。加熱時間が大きく削減される結果、反応時間が速くなり、Midrex(高さ130m超であり得る)などの従来のDRI法における炉のサイズと比較して、炉のサイズを大きく低下させることが可能となり、水平炉を構築可能となり、同時に大量のガスを加熱する必要がなくなる。電磁エネルギーの吸収の結果として、鉄鉱石を高いレベルの金属化まで還元することが可能となる程度まで鉱石及びバイオマスの内部に直接熱を発生させることができることは、天然ガスの燃焼から熱を発生させる必要がないことを意味する。このことは、DRI法において必要とされる程度までペレット化する必要性を排除する機会を提供し、プロセス制御を高めるものである。これらの因子は、一緒になって、設備投資を削減すると同時に、運転性及びメンテナンス性を向上する機会を提供する。
【0011】
上記に加えて、及び潜在的には、本発明の最も著しい有益性は、還元剤としての天然ガス及び石炭をバイオマスで置き換えることによって、製鋼運転におけるネットでのCO2排出を削減し、さらには化石燃料への依存を断ち切る機会も提供されることである。
【0012】
この方法は、鉄鉱石及びバイオマスを電磁エネルギーに曝露することを含み得るものであり、鉄鉱石とバイオマスとは、無酸素条件下で接触した状態にあり、電磁エネルギーは、鉄鉱石内部に熱を発生させ、バイオマスは、還元剤として作用して、固体状態の鉄鉱石を還元する。
【0013】
この方法は、電磁エネルギーが、鉄鉱石内部及びバイオマス内部に熱を発生させることを含み得る。
【0014】
この方法は、鉄鉱石の金属化が発生する範囲内の温度まで鉄鉱石が加熱されるように運転条件を制御することを含み得る。
【0015】
ヘマタイトの場合、この方法は、ヘマタイトの金属化のための800~1200℃の範囲内の温度まで鉄鉱石が加熱されるように運転条件を制御することを含み得る。
【0016】
鉄鉱石は、少なくとも800℃、典型的には少なくとも900℃の温度まで加熱され得る。
【0017】
鉄鉱石は、1200℃未満、典型的には1100℃未満の温度まで加熱され得る。
【0018】
好ましくは、鉄鉱石は、850~950℃の範囲内の温度まで加熱される。
【0019】
この方法は、鉄鉱石が必要とされる金属化度まで還元され、固体金属鉄製品が形成されるように運転条件を制御することを含み得る。
【0020】
必要とされる金属化度は、鉄製品の最終的な用途などの様々な因子に依存する。
【0021】
典型的には、100%の金属化がターゲットである。しかし、本発明は、100%の金属化を実現するようにこの方法を行うことに限定されない。
【0022】
例えば、この方法は、鉄鉱石の少なくとも80%、典型的には少なくとも90%の金属化が行われるように運転条件を制御することを含み得る。
【0023】
この方法は、鉄鉱石及びバイオマスを無酸素環境を有する加熱/還元チャンバーを通して移送すること、並びに鉄鉱石及びバイオマスがチャンバーを通って移動する間に、鉄鉱石及びバイオマスを電磁エネルギーに曝露することを含む連続方法であってよい。
【0024】
チャンバー中での滞留時間は、1つのプロセス制御オプションであり得る。
【0025】
この方法は、チャンバーに不活性ガスを供給することによって無酸素環境を作り出すことを含み得る。
【0026】
不活性ガスは、窒素などの適切ないかなる不活性ガスであってもよい。
【0027】
この方法は、鉄鉱石及びバイオマスを予備加熱することを含み得る。
【0028】
この方法は、900℃未満、典型的には800℃未満の温度まで鉄鉱石及びバイオマスを予備加熱することを含み得る。
【0029】
この方法は、少なくとも400℃、典型的には少なくとも500℃の温度まで鉄鉱石及びバイオマスを予備加熱することを含み得る。
【0030】
この方法は、400~900℃の範囲内の温度まで鉄鉱石及びバイオマスを予備加熱することを含み得る。
【0031】
この方法は、鉄鉱石及びバイオマスを予備加熱チャンバーを通して移送し、鉄鉱石及びバイオマスがチャンバーを通って加熱/還元チャンバーへ移動する間に、鉄鉱石及びバイオマスを予備加熱すること;鉄鉱石及びバイオマスを無酸素環境を有する加熱/還元チャンバーを通して移送し、鉄鉱石及びバイオマスがチャンバーを通って移動する間に、鉄鉱石及びバイオマスを電磁エネルギーに曝露することを含み得る。
【0032】
この方法は、バッチ方法であってもよい。
【0033】
この方法は、鉄鉱石及びバイオマスを密に接触させるための適切ないかなるオプションを含んでいてもよい。これらのオプションとしては、例えば、鉄鉱石及びバイオマスのブレンドを形成すること、又は鉄鉱石及びバイオマスを一緒に凝集させることが挙げられる。
【0034】
この方法は、鉄鉱石破片及びバイオマスのブレンドを、無酸素条件下で電磁エネルギーに曝露すること、並びにバイオマスが還元剤源を提供して、破片中の固体状態の鉄鉱石の還元を引き起こす熱を鉄鉱石破片内部に発生させることを含み得る。
【0035】
この方法は、典型的には微粉の形態である鉄鉱石破片及びバイオマスのブリケットを、無酸素条件下で電磁エネルギーに曝露すること、並びにブリケット中の固体状態の鉄鉱石の還元を引き起こす熱をブリケット内部に発生させることを含み得るものであり、バイオマスが還元剤源を提供する。
【0036】
鉄鉱石破片及びバイオマスのブリケットは、鉄鉱石とバイオマスとを接触させるための都合の良いオプションである。
【0037】
「ブリケット」の用語は、本明細書において、複数の鉄鉱石破片の凝集物を記述するための一般的用語として用いられる。この用語は、ペレットとして記述され得る凝集物も含むことを意図している。この用語は、凝集物を製造する特定のいかなる方法にも限定されない。
【0038】
「破片」の用語は、本明細書において、鉄鉱石の適切ないかなるサイズの断片をも意味するものと理解される。当業者であれば、「破片」の用語は、本明細書で用いられる場合、より良好には「粒子」又は「微粉」として記述されるものと理解され得る。意図するところは、用語を同義語として用いることである。
【0039】
ブリケットは、適切ないかなるサイズ及び形状であってもよい。
【0040】
例として、ブリケットは、1~10cm、典型的には2~10cm、より典型的には2~6cm、より典型的には2~4cmの主寸法を有し得る。
【0041】
例として、ブリケットは、略立方体状、すなわち、6つの面を有し、面の間の角度がすべて直角である箱形状であってよい。
【0042】
ブリケットは、適切ないかなる相対量の鉄鉱石及びバイオマスを含んでいてもよい。
【0043】
ブリケットは、20~45質量%、典型的には30~45質量%のバイオマスを含んでいてよい。
【0044】
いかなる任意の状況においても、鉄鉱石及びバイオマスの好ましい割合は、鉄の種類(例:ヘマタイト、ゲーサイト、又はマグネタイト)及び特性(破片サイズ及び鉱物学)、バイオマスの種類及び特性、プロセス運転の制限、並びに材料取り扱いに関する考慮事項を含むがこれらに限定されない様々な因子に依存する。
【0045】
ブリケットは、他の成分を含んでいてもよい。
【0046】
1つの考え得る追加の成分は、例えばブリケットがこの方法における材料取り扱い要件のために必要とされる構造的特性を有するように、ブリケット同士の保持を促進するためのバインダーである。
【0047】
鉄鉱石は、材料が採掘された後に粉砕及びサイズ分離が施された粗鉱材料であってよい。
【0048】
例として、鉄鉱石は、微粉の形態であってよい。
【0049】
「微粉」の用語は、本明細書において、8mm未満の破片を意味するものと理解される。
【0050】
「無酸素」の用語は、本明細書において、酸素が非常に不足しているか、又は酸素が完全に欠乏していることを意味するものとして理解される。
【0051】
「バイオマス」の用語は、本明細書において、生きている、又は最近まで生きていた有機物を意味するものと理解される。具体的なバイオマス製品としては、例として、林業製品(製材所残渣を含む)、農業製品、藻などの水性環境で生産されたバイオマス、藁、オリーブ核、及び木の実の殻などの農業残渣、動物の排泄物、都市及び工業的残余物が挙げられる。
【0052】
バイオマスは、適切ないかなる形態の適切ないかなるバイオマスであってもよい。
【0053】
本出願者にとっての対象である1つの特定のバイオマスは、一般名がレッドアゾラ(Red Azolla)及びファーニーアゾラ(Ferny Azolla)であるアゾラピンナタ(Azolla pinnata)を含むアゾラ属を含む水生シダ類である。アゾラは、小さい自生の浮遊性シダであり、6種類しかいない浮遊性水性シダ種のうちの1種である。それは、幅1cm~2.5cmまで成長し、明るい緑色である。太陽に曝されるとその色が深赤色に変わることから、レッドアゾラの名称がある。アゾラは、密なパッチ状に水路に繁殖し、それは、緑色又は赤色のカーペットのように見える場合がある。遠くから見ると、有害な水草であるサルビニア(Salvinia)、又は青緑色の藻類ブルームの浮きかすと混同され得る。アゾラは、ススキなどの他のバイオ燃料作物の最大で2倍である高いドライバイオマス率を得ることができる低コストの水性淡水シダである。それは、必要な窒素肥料が従来の作物よりも非常に少なく、水耕システムを、農業に用いられていない耕作限界地に構築することができる。アゾラはまた、水質も改善し、同時に、重金属の生体内蓄積を通して汚染を緩和する。
【0054】
対象である他のバイマスとしては、限定されないが、様々なモロコシ、スイッチグラス、及びミスカンサス・ギガンテウス(Miscanthus Giganteus)、さらにはサトウキビバガスなどのエネルギー作物が挙げられる。おが屑は、対象のバイオマスである。バイオマスは、単独の還元剤源として用いられてよく、又はブレンドされてもよい。
【0055】
本発明は、特定のいかなる種類の電磁エネルギーにも限定されない。
【0056】
本出願者が現時点で注目しているのは、電磁エネルギースペクトルのマイクロ波エネルギー帯にある。
【0057】
しかし、無線周波数エネルギー及びx線エネルギーは、本出願者にとっての対象である電磁エネルギースペクトルの様々なオプションの中の他の2つのオプションである。
【0058】
電磁エネルギーは、連続又はパルスであってよい。
【0059】
マイクロ波エネルギーは、300MHz~300GHz、300MHz~30GHz、300MHz~3GHz、400~5800MHz、900~3500MHz、915~2450MHzの範囲内の周波数など、適切ないかなるマイクロ波周波数を有していてもよい。特定のマイクロ波周波数は、現行の工業周波数、2450MHz又は915MHzである。
【0060】
無線周波数エネルギーは、1MHz~10GHzの範囲内の周波数など、適切ないかなる周波数を有していてもよい。
【0061】
鉄鉱石は、ヘマタイト、ゲーサイト、及びマグネタイトなどの適切ないかなる種類であってもよい。
【0062】
方法は、鋼鉄製品などの最終用途製品を形成するための固体金属製品の下流処理を含み得る。
【0063】
本発明はまた、無酸素条件下で鉄鉱石及びバイオマスを電磁エネルギーに曝露するための曝露チャンバーを含む、鉄鉱石を直接還元するための装置も提供する。
【0064】
鉄鉱石及びバイオマスは、ブリケット、ペレット、又は鉄鉱石及びバイオマスのブレンドを含む他の適切な製品形状の形態であってよい。
【0065】
この装置は、鉄鉱石及びバイオマスを予備加熱するための予備加熱炉を含んでいてよい。典型的には、炉は、鉄鉱石及びバイオマスを、所定の時間及び所定の時間にわたって400~900℃の範囲内の温度まで加熱するように構成される。
【0066】
この装置は、鉄鉱石微粉及びバイオマスを処理するための、特に、鉄鉱石微粉を加熱、還元して金属化製品を形成するための還元アセンブリを含んでよい。
【0067】
このアセンブリは、鉄鉱石微粉が加熱、還元される反応チャンバー、マイクロ波エネルギー(又は他の適切ないずれかの電磁エネルギー)の形態での電磁エネルギー源、マイクロ波エネルギーをチャンバーに移送するための導波路、窒素などの不活性ガス源、不活性ガスをチャンバーに供給して、チャンバー中での鉄鉱石微粉及びバイオマスの処理時にチャンバーを無酸素条件下に維持するための適切な配管、並びにチャンバー中での処理時に発生するオフガス及び何らかの残留粒子を排出するための出口部を含んでよい。
【0068】
加熱/還元チャンバーからのオフガスは、化学エネルギー及び熱エネルギーを有し得る。化学エネルギーは、一酸化炭素の形態が支配的であり得る。オフガスのエネルギーは、有益には:
(a)電気を供給するために発電所で燃焼され得るか;
(b)オフガスの残りの部分から分離されて、方法の効率を高め、バイオマスの必要性を低減するために、加熱/還元チャンバーを通して再循環され得るか;又は
(c)エネルギーをエタノールなどのバイオ燃料に変換することができる施設(例:LanzaTech(商標)プロセス)に提供され得る。
【0069】
二酸化炭素が加熱/還元チャンバーのオフガスから分離される場合、それは、恒久的に地層貯留(炭素隔離貯留としても知られる)されてよく、それによって、方法におけるネットでの炭素排出が負になる結果となり得る。
【0070】
本発明を、単なる例として:
(a)以下で述べる本発明に関連するフィジビリティスタディに関する
図1~13、及び
(b)本発明の実施形態のブロック図である
図14
を参照してさらに記載する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】
図1は、20℃、周波数2450MHzでの様々な工学材料及び鉱物の誘電特性を様々な温度での水と共に示すグラフである。
【
図2】
図2は、フィジビリティスタディにおいて20~1000℃での材料の誘電特性を測定するために用いた空洞共振器摂動法を示す図である。
【
図3】
図3及び
図4は、フィジビリティスタディで試験した20~1000℃での2450MHz及び915MHzにおけるPBF/バイオマスのブレンドしたブリケットのグラフである。
【
図4】
図3及び
図4は、フィジビリティスタディで試験した20~1000℃での2450MHz及び915MHzにおけるPBF/バイオマスのブレンドしたブリケットのグラフである。
【
図5】
図5は、フィジビリティスタディで試験した測定温度の関数としての、ブレンドしたPBF/バイオマスブリケットの侵入深さのプロットである。
【
図6】
図6は、窒素中、フィジビリティスタディで試験した20~1000℃での鉄鉱石及びPBF/バイオマスのブレンドしたブリケットに対するDSC温度-熱流曲線のプロットである。
【
図7】
図7は、フィジビリティスタディで試験した20~1200℃の温度での質量の変化を示している対応するTGA曲線と共に示すブレンドしたPBF/バイオマスブリケットに対するDSC熱流曲線のプロットである。
【
図8】
図8は、フィジビリティスタディで用いた全マイクロ波処理システムの模式図である。
【
図9】
図9は、窒素下、フィジビリティスタディで試験した20~1200℃でTGAを用いて特定されたPBF/バイオマスのブレンドしたブリケットの質量-温度曲線のプロットである。
【
図10】
図10は、10回のマイクロ波処理に対するXRDスペクトルのプロットである。
【
図11】
図11は、フィジビリティスタディで試験したマイクロ波エネルギー入力の関数としてのXRDピーク比のグラフである。
【
図12】
図12は、フィジビリティスタディで試験したPBF/アゾラブレンド及び未処理鉱石微粉と比較したPBF/糖ブレンドに対するXRDスペクトルを示す。
【
図13】
図13は、フィジビリティスタディで試験した未処理鉱石微粉と比較した3つの糖処理に対するXRDスペクトルを示す。
【
図14】
図14は、本発明に従う固体状態の鉄鉱石を直接還元するための方法及び装置の1つの実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
広い意味で、本発明の方法は、鉄鉱石及びバイオマスを電磁エネルギーに曝露することを含み、鉄鉱石とバイオマスとは、無酸素条件下で接触した状態にあり、電磁エネルギーは、鉄鉱石内部に熱を発生させ、バイオマスは、還元剤として作用して、固体状態の鉄鉱石を還元する。
【0073】
フィジビリティスタディ
上述のフィジビリティスタディは、鉄鉱石及びバイオマスのための加熱源としてマイクロ波エネルギーを用いてアゾラバイオマスとブレンドした鉄鉱石(本出願者の関連企業の製品ピルバラブレンド鉄鉱石微粉(PBF)の形態)の金属化を実現する技術的フィジビリティを特定するために行った。
【0074】
鉄鉱石、バイオマス、及び鉄鉱石/バイオマスのブレンドしたブリケットの誘電特性並びに熱特性を特性決定し、評価した。
このスタディの目的は、以下の通りであった。
【0075】
- PBF、バイオマス、及びPBF/バイオマスのブレンドしたブリケットの誘電特性を測定して、工業的に使用されている周波数2450MHz及び915MHzにおける温度(20~1000℃)と複素誘電率(マイクロ波吸収特性)との間の関係を定量すること。
【0076】
- 20~1000℃でPBF及びブレンドしたブリケットの示差走査熱量測定を行って、窒素下での還元プロセスにおける重要な材料変化を識別し、温度と金属化との間の関係を特定し、ブレンドしたブリケットのマイクロ波エネルギーを用いた金属化に必要とされる予想温度を識別すること。
【0077】
- 窒素下、20~1000℃でPBF及びブレンドしたブリケットの熱重量分析を行って、還元プロセスの過程での温度と質量減少との間の関係を特定し、マイクロ波エネルギーを用いて金属化されたブレンドしたブリケットの予想残留質量を識別すること。
【0078】
- 無酸素条件下の2.45GHzで、ブレンドしたブリケットのマイクロ波加熱試験を行って、金属化に対するマイクロ波電力密度(1又は2kWの印加電力)、合計印加エネルギー(75GJ/t-製品まで)、及び処理時間(1~16分間)の影響を特定すること。
【0079】
- PBF、ブレンドしたブリケット、及びすべてのマイクロ波処理サンプルの半定量的XRD分析を行って、すべての鉄含有相を識別し、マイクロ波処理条件と実現された金属化度との間の関係を特定すること。
【0080】
- 35%、50%、及び65%のスクロース(質量基準)とブレンドしたPBFのマイクロ波処理を行って、金属化度に対するバイオマスの種類及びバイオマスの含有量の影響を特定すること。
【0081】
- 最大エネルギーでの処理後に耐火レンガ処理容器の外部温度を測定し、サンプルから容器への熱喪失を推定して、マイクロ波処理エネルギーバランス及び熱喪失を最小限に抑えた最適化された工業プロセスにおける考え得る効率を特定すること。
【0082】
1.材料の特性決定(ワークプログラム1)
このセクションは、PBF、アゾラバイオマス、及びPBF/バイオマスのブレンドしたブリケットの特性決定の理論、方法、並びに結果を提示するものであり、この特性決定は、ワークプログラム2での試験マトリックスを開始する前にマイクロ波エネルギーとのこれらの基本的な相互作用を理解するために行った。
【0083】
1.1 誘電性の特性決定
1.1.1 誘電性理論
適用された電磁場によって材料が吸収し、続いて加熱する能力は、材料の電気特性及び磁気特性に依存し、具体的には、誘電率(ε)、透磁率(μ)、及び導電率(σe)である。ほとんどの材料において、支配的な相互作用は、電場とのものであり、誘電特性は、この相互作用の尺度である。均質な材料の誘電特性は、式1に示されるように、複素比誘電率によって記載され:
式中、ε
*=複素比誘電率;ε’=誘電定数;ε’’=誘電正接;j=√-1である。
【0084】
誘電定数(誘電率の実数部)、ε’は、外部電場によって材料が分極される能力の尺度であり、すなわち、電荷及び双極子が分極される能力である。誘電正接(誘電率の虚数部)、ε’’は、蓄えられたエネルギーを材料が熱として散逸する能力の尺度である。材料の誘電特性は、組成、水分含有量、温度、周波数、及び密度に応じて変動し得る。
図1は、20℃の様々な工学材料及び鉱物の周波数2450MHzでの誘電特性を、様々な温度での水と共に示すプロットである。
【0085】
1.1.2 複素誘電率測定
誘電特性測定は、PBF及びアゾラバイオマス成分の両方、さらにはブレンドしたブリケットに対しても行った。これらの1000℃までの温度との関係を定量した。この知見は、プロセスの機構の理解を提供し、さらには、WP2における試験方法及びフルスケールシステムの開発に対する可能性に関する考察の両方に極めて重要な情報をもたらすものである。これらの測定は、工業的に使用されているマイクロ波周波数2450及び915MHzで行った。
【0086】
空洞共振器摂動法(
図2参照)を用いて、20~1000℃での材料の誘電特性を測定した。空洞共振器は、ベクトルネットワークアナライザに接続された円筒状の銅の空洞から成り、サンプルが導入された場合の空の共振空洞に対する周波数シフト及び品質係数の変化を測定する。微細に粉砕されたサンプル(<100μm)を、石英管に充填し(空気の侵入を最小限とするために、セラミックウールをサンプルの下に置き、上部を開放)、従来のように加熱した炉中、温度の設定点に到達するまで空洞上に保持した。次に、管を空洞の中に移動させ、工業的に使用されているマイクロ波周波数2450MHz及び915MHzで特性を特定した。空洞及び炉はいずれも実験室に対して開放されていたため、無酸素条件で(すなわち、窒素下で)誘電性の特性決定を問題なく行うことは不可能であったことには留意されたい。
【0087】
2450MHz及び915MHz、20~1000℃でのPBF、アゾラバイオマス、及びPBF/バイオマスのブレンドしたブリケットの誘電特性測定の結果をプロットした。
図3及び4は、2450MHz及び915MHz、20~1000℃でのPBF/バイオマスのブレンドしたブリケットのグラフである。各グラフにおいて、温度を横軸にプロットし、誘電定数を左側の縦軸に(青色線)、誘電正接を右側の縦軸に(赤色線)プロットしている。2450MHzでの測定は、実験室スケールの試験で一般的に用いられる周波数に関連し、一方915MHzでの測定は、50kWを超える電力レベルでのほとんどの工業的処理システムで現在用いられている周波数に関連する。
【0088】
PBFは、20~600℃で比較的一定の誘電特性を有することが見出された。100℃付近及び300~400℃での僅かな変曲点は、それぞれ、遊離水及びゲーサイトのヒドロキシル基の除去に起因していた。600℃より上では、PBFは、誘電特性の上昇を呈しており、温度依存性の酸化鉄の相変化に起因するものと思われた。
【0089】
アゾラバイオマスは、およそ150℃未満、及び500℃超でマイクロ波エネルギーを強く吸収することが見出された。100~200℃での誘電特性の低下は、遊離水の除去に起因していた。500℃超での上昇は、揮発性物質を放出して炭素質の炭化物及び灰を残すバイオマスの熱分解に起因していた(管の不完全な密封によって、完全な無酸素条件が実現された可能性は低い)。
【0090】
PBF及びバイオマスそれぞれの上記の結果から考えると驚くべきことではないが、PBF/バイオマスのブレンドしたブリケットに対する測定結果は、鉄鉱石及びバイオマスの両方の特性を呈した。100~200℃及び300~400℃の変曲点は、鉄鉱石及びバイオマスの両方からの遊離水の除去、並びにゲーサイトのヒドロキシル基の除去に起因していた。500~700℃での上昇は、ここでも、開放された管によって完全な還元雰囲気が不可能であったことから、バイオマスの燃焼に起因していた。700℃超での低下は、酸化鉄の進行する還元に起因していた。
【0091】
全体として、PBF及びアゾラバイオマスの両方、並びにPBF/バイオマスのブレンドしたブリケットは、2450MHz及び915MHzの両方において、測定した全温度範囲にわたって、特に200℃未満及び700℃超でマイクロ波エネルギーを強く吸収した。
【0092】
1.1.3 侵入深さ
電磁エネルギー波が誘電材料中を進む場合、材料中での電力吸収に起因して、その振幅は減少する。場強度及び電力は、材料表面からの深さと共に指数関数的に低下する。材料中への電磁エネルギーの侵入深さDpは、電力フラックスがその表面値の1/e(0.368)に低下する深さとして定義される。
【0093】
材料の侵入深さは、材料中で均一な加熱が実現される可能性の良好な指標である。侵入深さは波長に比例し、周波数が高い程、表面加熱が起こりやすく、一方低周波数では、体積加熱がより容易に達成される。侵入深さは、材料の体積加熱が必要とされる場合に重要である。電場がゼロに達するのは侵入深さのある程度後ろの点であることから、定義される侵入深さを超えてある程度の加熱が発生することには留意されたい。材料の寸法が侵入深さよりも非常に大きくはならないことを確保するために、適切な周波数を選択することが重要であり、したがって、それは、プロセス設計及びスケールアップを考慮する場合に重要な設計パラメータである。
【0094】
ブレンドしたPBF/バイオマスブリケットの侵入深さを算出し、測定温度の関数として
図5にプロットする。ブレンドしたブリケットは、遊離水の除去に起因して、100~200℃で侵入深さの増加を呈した。侵入深さは、その後、ヒドロキシル基の除去に起因して、350℃付近で僅かな変曲点を有しながら300℃付近で減少した。500℃超では、侵入深さは、比較的一定に維持された。915MHzでの侵入深さは、2450MHzと比較して高かった(500℃超で、それぞれ、およそ5cm及び2cm)。全体として、侵入深さは、ブレンドしたブリケットの寸法に類似のスケールであった。このことは、マイクロ波加熱の観点から、915MHzにおいて、5~10cmの連続充填の体積加熱を実現することが可能であることを示唆している。
【0095】
1.2 熱的特性決定
熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量測定(DSC)を、PBF及びPBF/バイオマスのブレンドしたブリケットに対して無酸素条件下(窒素下)で行い、これらの1000℃までの温度との関係を定量した。
【0096】
DSCでは、加熱プロセスの過程での熱挙動のマッピング及び「熱イベント」の識別が可能である。
【0097】
TGAは、マイクロ波処理プロセスの過程でブリケットの質量がどのように変化するのかに関する機構的な理解を提供する。熱挙動データと組み合わせると、処理後に測定したマイクロ波処理サンプルの質量減少に基づいて、「金属化範囲」の予測が可能となる。
【0098】
図6は、窒素中、20~1000℃での鉄鉱石及びPBF/バイオマスのブレンドしたブリケットの両方に対するDSC温度-熱流曲線のプロットである。これらの曲線から、DSC条件下、バイオマスの存在下での鉄鉱石の直接還元の過程で発生する3つの熱イベントを識別することができる。第一は、僅かに100℃を超えたところでのブリケットのバイオマス画分からの遊離水の除去である。第二の熱イベントは、ゲーサイトのヒドロキシル基の除去及びヘマタイトへの変換であり、このピークは、ブリケットサンプルでは僅かにシフトしている。これは恐らく、バイオマスからの熱分解生成物に起因すると思われ、ゲーサイトのヘマタイトへの変換が発生する温度を低下させている。識別される最後の熱イベントは、ブリケットサンプルでの850℃付近での金属化の開始である。
【0099】
図7には、20~1200℃の温度での質量の変化を示している対応するTGA曲線と共に、ブレンドしたPBF/バイオマスブリケットに対するDSC熱流曲線をプロットしている(ブリケットに対する温度測定範囲は、金属化の終点を識別するために1000℃から広げた)。データから、DSC条件下において、金属化の開始点は、850℃付近であり、終点は、およそ950℃であることが示唆される。
【0100】
金属化の終点では、ブリケットの温度による重量変化は、平衡状態となり始める。この温度でのDSC-TGAサンプルの残留質量は、57%であった。このことは、マイクロ波処理条件が特性決定の場合の条件と同じである場合、元の質量の57%未満の重さである処理サンプルは、ほとんど又はまったく酸化鉄が存在していない金属化された状態であるはずであることを示唆している。
【0101】
1.3 ワークパッケージ1概要
- PBF、バイオマス、及びPBF/バイオマスのブレンドしたブリケットの誘電特性を、20~1000℃で、工業的に使用されている周波数2450MHz及び915MHzでの空洞摂動法を用いて測定した。結果は、測定した全範囲にわたって、すべての材料が強いマイクロ波吸収特性を呈することを示している。500℃超では、侵入深さは、比較的一定である(2450MHzでは約2cm、915MHzでは約5cm)。このことは、915MHzでは、定義された侵入深さを超えてある程度の加熱は発生するものの、5~10cm厚の連続充填の体積加熱を実現することが可能であることを示している。これらの結果は、ワークパッケージ2で提案されるすべての金属化実験を通して、材料がすべてマイクロ波エネルギーを強く吸収するはずであることを示している。
【0102】
- 20~1000℃でのPBF及びPBF/バイオマスのブレンドしたブリケットの示差走査熱量測定を用いて、窒素下での還元プロセスにおける重要な材料変化を識別し、温度と金属化との間の関係を特定し、マイクロ波エネルギーを用いてのブレンドしたブリケットの金属化に必要とされる予想温度を識別した。ブリケットの金属化における重要な範囲は、850~950℃であると識別された。
【0103】
- 窒素下、20~1000℃でPBF及びブレンドしたブリケットの熱重量分析を行って、還元プロセスの過程での温度と質量減少との間の関係を特定し、マイクロ波エネルギーを用いて金属化されたブレンドしたブリケットの予想残留質量を識別した。950℃での金属化されたサンプルの示唆される質量は、還元前のその質量の約57%であった。このことは、DSC-TGA及びマイクロ波処理が同等の還元雰囲気を提供する場合、約57%の質量を有するワークプログラム2で処理されたサンプルは、金属化を呈するはずであることを示唆している。
【0104】
2.マイクロ波概念実証試験(ワークプログラム2)
このセクションは、無酸素雰囲気下でのマイクロ波エネルギーを用いたPBF/アゾラのブレンドしたブリケットの加熱によって完全な金属化を実現する技術的フィジビリティを特定するためのマイクロ波加熱実験の実験方法及び結果を提示する。
【0105】
行った試験は、エネルギー入力、電力密度、処理時間、及び製品の金属化度の間の関係を定量する。各異なるマイクロ波処理の結果を、半定量的X線回折(XRD)によって評価し、未処理ブリケットと比較して実現された金属化度を特定した。
【0106】
2.1 実験方法及び処理システム
様々な実験室用の及び特注のマイクロ波システムが、概念実証マイクロ波処理のために利用可能であった。ワークプログラム1で行った誘電特性測定から、鉄鉱石/バイオマスブレンドが強いマイクロ波吸収特性を有することが示された。
【0107】
寸法が540×425×425mmである実験室スケールのマルチモードシステム(空洞を横切る高及び低電場の範囲)を選択した。マイクロ波処理は、小スケールの実験室試験に最適である2450MHzの割り当てられた周波数で行った。
【0108】
行った各処理において、材料のおよそ27g(約4つのブリケット)のサンプルを秤量し、マルチモード空洞内部のムライト耐火レンガ容器中に置いた。この材料は、ブリケットと比較してマイクロ波エネルギーに対して本質的に透過性であり、したがって、実際には弱いマイクロ波加熱及びブリケットからの熱移動の両方によってこの相へのエネルギーの散逸は起こったであろうが、印加したエネルギーはすべてサンプルによって吸収されたものと仮定した。この容器は、処理の過程でのサンプル表面からの熱喪失を低減するために用いた。
【0109】
マイクロ波処理の前及び過程で、システムを25リットル毎分の流量の窒素で反転させて無酸素条件を得た。
【0110】
次に、選択された電力及び処理時間でサンプルを処理した。
【0111】
マイクロ波処理の過程において、空気の抽出を用いて、ブリケットのバイオマス画分の熱分解の過程で発生したいずれのガス及び粒子をも除去した。
【0112】
処理の過程で、充填物によって吸収されたエネルギーをモニタリングし、自動チューナー及びPCを用いて制御した。
【0113】
【0114】
最も高いマイクロ波線量において、耐火レンガへの熱の散逸、したがって、エネルギーバランスの推定が可能となるように、マイクロ波処理直後の耐火レンガの外側の温度を赤外線ガンを用いて測定した。
【0115】
材料が冷えた後、それを耐火レンガ容器から回収し、再秤量して処理の過程で減少した質量を特定し、次にXRDによる特性決定のために微粉末に粉砕した。
【0116】
2.2 マイクロ波処理の結果
エネルギー入力及び電力密度/処理時間の金属化度に対する影響を特定するために、以下の表1に示されるように、11の処理のマトリックスを完了した。
【0117】
表1 フィジビリティスタディ試験のマトリックス
*このサンプルは、溶融し、ムライト耐火レンガ容器を透過し、繰り返し行った処理でも同じ結果を得た。したがって、他の処理と比較するXRD分析及びエネルギーバランス推定のための清浄なサンプルを回収することができなかった。
【0118】
印加電力は、1kW又は2kWのいずれかに設定し、1~16分間の処理時間を用いた。自動チューナーを用いて、反射電力を最小限に抑え、印加エネルギーのうちの>95%が確実に吸収されるようにした。これらの処理の結果、1000~11300kWh/t-ブリケットのマイクロ波エネルギー入力が得られ、これは、5~74GJ/t-製品と同等である(回収された処理材料の質量に基づく)。
【0119】
未処理及びマイクロ波処理ブリケットサンプルの粉砕後の目視検査から、鉄鉱物の還元のレベルに起因して、エネルギー入力の増加と共に、赤色のヘマタイトから灰色の金属鉄まで明らかな漸進的な色の変化が示された。
【0120】
図9は、窒素下、20~1200℃でTGAを用いて特定されたPBF/バイオマスのブレンドしたブリケットの質量-温度曲線のプロットである。
【0121】
ワークパッケージ1で行ったブレンドしたブリケットのDSC特性決定から、還元プロセスの予想される終点は(DSC条件下)、およそ950℃であった。この温度において、TGAでの残留サンプル質量は、57%であった。
図9において、マイクロ波処理サンプルの残留質量をマイクロ波エネルギー入力に対してプロットし、処理曲線を1kW及び2kWの印加電力についてフィッティングすることによって、残留質量に基づいて予測金属化範囲を特定することが可能であった。この予測では、マイクロ波処理サンプルからのすべての残留質量が回収されること、及びDSC-TGA及びマイクロ波処理における還元条件が同等であることを仮定した。
【0122】
このことに基づいて、マイクロ波処理サンプルのうちの4つ(
図9の黄色領域中にハイライト)が、著しい又は完全な金属化を示した。これらの曲線はまた、用いた非最適化システムにおける約38GJ/t-製品のマイクロ波エネルギー線量が、57%の残留質量に基づいて、金属化の実現に充分であろうことも示差していた。
【0123】
図10は、全残留サンプル質量が回収可能であった10回のマイクロ波処理におけるXRDスペクトルを、未処理ブリケットに対するXRDスペクトルと共に示すプロットである。ラベルは、サンプル中に存在する鉄鉱物の各々に対する主ピークを表す(鉱物識別ソフトウェアによっていくつかの小ピークは識別されなかった)。
【0124】
XRDの結果から、マイクロ波エネルギー入力/処理時間の増加と共に、ヘマタイトから金属鉄への変換レベルの明らかな増加が示される。高い金属化度を有する可能性が高いとして
図10で識別される4つのサンプルのうち、3つ、すなわち、1kWの12分、1kWの16分、及び2kWの8分は、金属鉄の著しいピークを有している。
【0125】
中間処理エネルギーにおけるスペクトルでは、他の2つの酸化鉄還元生成物、マグネタイト及びウスタイトの存在も明らかである。これらの中間体の存在は、無酸素条件下での以下の金属化経路を示唆している。
Fe2O3→Fe3O4→FeO→Fe
ヘマタイト→マグネタイト→ウルスタイト(wurstite)→鉄
【0126】
高い金属化度のサンプルにおけるXRDスペクトルは、副反応も明らかにしており、これは、高温で石英とマグネタイトとの間で発生するもので、ファヤライト(オリビン)及びさらなる酸素が生成する。
2Fe2O3+3SiO2→3Fe2SiO4+O2
【0127】
このフィジビリティスタディで行った試験から、中間体及び副生物の生成が、エネルギー入力/処理時間によるものか、又はマイクロ波処理の過程で存在する酸素のレベルによるものかを判断することはできなかった。
【0128】
高いバイオマス含有量の結果としてサンプルがアモルファスを含有することに起因して、各サンプル中に存在する鉄及び酸化鉄の量に関する定量的な結果を得ることはできなかった。還元反応がヘマタイトから鉄へと進行すると考えると、金属化度を推定することができた。各サンプルにおいて、主要な鉄ピーク(44.2<2θ<45.0)及び主要なヘマタイトピーク(32.3<2θ<33.7)のピーク下面積を特定した。
図11は、マイクロ波エネルギー入力の関数としてのこれらのピーク比のプロットである。
【0129】
12GJ/t-製品未満の処理エネルギーでは(2400kWh/t-ブレンドしたブリケットと同等)、電力密度の増加が金属化度を高めた。
図11は、印加電力2kWでは、1kWと比較して、同等のエネルギー入力で質量減少がより高いことを示している。このことは、より速い加熱速度に起因し得ると考えられ、これは、処理時間が短くなると、さらに顕著である。この効果は、
図10のXRDスペクトルによって確認され、
図10では、1kWで4分のサンプルにゲーサイトが存在するが、2kWで4分のサンプルには存在しないことが示されており、このことは、低い方の電力では、処理エネルギーが同じであっても、ゲーサイトの脱ヒドロキシル化温度(300~400℃)を超えなかったことを示唆している。
【0130】
2.4 追加の糖処理の結果
バイオマスを食卓用白グラニュー糖、すなわち、スクロース、C12H22O11に置き換えて、追加の処理を行った。
【0131】
12グラムのスクロースを、5mlの水と一緒に18グラムのPBFと混合して、粘度の高いペーストを形成した。このサンプルを、ブリケットと同じ方法を用い、2kWで8分間処理した。
【0132】
図12は、PBF/アゾラブレンド及び未処理鉱石微粉と比較したPBF-糖ブレンドに対するXRDスペクトルを示す。糖サンプルは、同等のマイクロ波エネルギー入力において、アゾラと比較して低い金属化レベルを呈した。XRDは、糖を用いた場合に、より高い割合の中間体酸化鉄、マグネタイト及びウスタイトが形成されたことも示している。これは、処理容器の透過性を低下させるために高温パテを用いたことから、耐火レンガ中への糖の喪失に起因するものではないと思われる。
【0133】
ここでの重要な所見は、直接還元プロセスに用いられるバイオマスの種類を変化させることによって、形成される中間体酸化物の割合を制御する機会が提供されるということである。
【0134】
50質量%及び70質量%の糖含有量で糖を用いた2つのさらなる処理も行った。
【0135】
図13は、未処理鉱石微粉と比較した3つの糖処理におけるXRDスペクトルを示す。糖含有量がより高いサンプルは、より高い金属化度を呈し、残った中間体酸化鉄のレベルはより低かった。このことは、存在する還元ガスの割合が高い方が、より良好な金属化に繋がることを示唆している。
【0136】
2.5 エネルギーバランス
妥当なマイクロ波エネルギー入力の推定から、バイオマスとブレンドした鉄鉱石の金属化は、見積もられる合計よりも著しく低いマイクロ波エネルギー入力で実現可能であり、非最適化システムでの実験室スケールであっても、最も性能の良い商業的DRIプロセスで用いられる妥当なDRIエネルギー(ガス系のシステムにおいて約2GJ/トン)と潜在的に同じオーダーであることが示された。
【0137】
より詳細には、マイクロ波処理の過程での熱喪失の基本的な推定によるエネルギーバランスから、小バッチスケールでのマイクロ波加熱を用いた鉄鉱石の直接還元が、1.6GJ/t-製品のエネルギー入力で実現されたことが示された。熱喪失の推定なしの場合、これは、およそ32GJ/t-ブレンドしたブリケットのフィード、又は74GJ/t-製品と同等である。
【0138】
熱喪失を最小限に抑えた最適化された工業的システムでは、この値を大きく低下させることが可能であるはずである。
【0139】
スケールアップの経験から、良好に設計され最適化された工業的プロセスの連続運転の場合と比較して、小さく最適化されていない実験室スケールのバッチシステムの場合、著しくより高いエネルギー入力、多くの場合数桁分大きいエネルギー入力が必要であることが示される。
【0140】
2.6 ワークパッケージ2概要
- 非最適化システムを用いた2450MHzでの実験室スケールのマイクロ波処理、及びそれに続く半定量的XRD分析を行い、マイクロ波エネルギーを用いて高いレベルの金属化を実現可能であることが実証された。従来の炉を用いて処理した35%及び40%のバイオマス含有量(質量基準)のブリケットのXRD特性決定の分析から、バイオマスの種類及び量の最適化は、還元雰囲気及びその雰囲気内での鉄の付随する反応を制御することによって、還元プロセスを向上させ得ることが示唆される。
【0141】
- この傾向は、35%、50%、及び70%の糖含有量でブレンドしたPBFに対するXRDスペクトルでも観察され、同等の全体マイクロ波エネルギー入力において、糖充填量の高い方が、より完全な金属化、及び中間体酸化鉄の割合の減少という結果となった。
【0142】
3.結論形態ワークパッケージ1及び2
フィジビリティスタディから、熱源としてマイクロ波エネルギーを用いて、バイオマスとブレンドした鉄鉱石の金属化を実現することが可能であることが示された。測定した誘電特性から、PBF(鉄鉱石微粉)、アゾラバイオマス、及びブレンドしたブリケットはすべて、工業的に使用されている周波数2450MHz及び915MHzでのマイクロ波エネルギーと強く相互作用を起こしたことが示される。500℃超、915MHzで得られた5cmのマイクロ波侵入深さから、マイクロ波加熱の観点より、5~10cm厚の連続充填の体積加熱を実現することが可能であることが確認された(もっとも、定義された侵入深さを超えてある程度の加熱は発生した)。500℃超及び30GJ/t-製品のマイクロ波エネルギー入力において、金属化度に対する電力密度(1kW~2kW)の明確な効果は見られなかった。しかし、材料に全体加熱を与えることができる能力は、熱移動の限界を克服する機会を提供する。このことは、より速い加熱速度及びより短い滞留時間に繋がり、その結果、考え得る利点として、より小さいプラントサイズ、焼結微粉の直接の使用、設備投資の削減、及びより高いプロセス制御が得られる可能性がある。異なるバイオマス充填に対して中間体酸化鉄(マグネタイト及びウスタイト)及び副反応生成物(ファヤライト)の生成が変動することは、バイオマス含有量を変化させ、還元雰囲気を制御することによって、還元及び金属化プロセスを最適化する機会が存在することを示しており、より低いマイクロ波エネルギー入力での金属化に繋がる。最後に、エネルギーバランスからは、非最適化システムでのフィジビリティ試験における熱喪失がほぼ90%であると推定された。したがって、約2GJ/t-製品のMWエネルギー入力での金属化が、熱喪失を最小限に抑えた最適化された工業的プロセスで実現可能であり得る。
【0143】
【0144】
図14のブロック図を参照すると、本発明の1つの実施形態では、選択された比率の鉄鉱石微粉及びバイオマスのブレンドのブリケットが、フィード材料として予備加熱炉3に供給され、所定の時間にわたって400~600℃の範囲内の温度まで予備加熱される。
【0145】
予備加熱炉3は、バッチベースで運転されるように設計される。
【0146】
予備加熱されたブリケットは、次に、還元アセンブリ5に移され、還元アセンブリ5の中で、鉄鉱石微粉は加熱され、還元される。
【0147】
アセンブリ5も、バッチベースで運転されるように設計される。
【0148】
アセンブリ5は、ブリケットのためのチャンバー、マイクロ波エネルギー源、2450MHz又は他の適切な周波数であるマイクロ波エネルギーの形態の電磁エネルギーをチャンバーに移送するための導波路、窒素などの不活性ガス源、不活性ガスをチャンバーに供給して、チャンバー中でのブリケットの処理時にチャンバーを無酸素条件下に維持するための適切な配管、並びにチャンバー中での処理時に発生するガス及び何らかの残留粒子を排出するための出口部を含む。
【0149】
使用時、チャンバーが無酸素条件下に維持されている間、マイクロ波エネルギーは、鉄鉱石微粉及びバイオマスを加熱して、ブリケットの両成分の内部に熱を発生させ、その結果、ブリケット内部のバイオマスによって固体状態の鉄鉱石微粉が還元されて、固体金属化製品が形成される。
【0150】
この方法は、選択された温度まで、温度での選択された滞留時間にわたって鉄鉱石が加熱されるように、運転条件を制御するための制御システムを含む。ヘマタイトの場合、この方法は、ヘマタイトを金属化するための800~1100℃の範囲内の温度までヘマタイトが加熱されるように運転条件を制御することを含む。
【0151】
固体金属化製品は、保存され、他のプラントに移送されて、最終用途の鋼鉄又は他の製品とするために必要に応じて処理されてよい。
【0152】
図14に関連して記載される実施形態は、バッチ方法として記載されるが、本発明が、それに限定されるものではなく、予備加熱及び還元の両工程において連続方法として運転可能であることは容易に理解することができる。
【0153】
加えて、
図14に関連して記載される実施形態は、マイクロ波エネルギーを用いて運転されるとして記載されるが、本発明が、それに限定されるものではなく、適切ないかなる電磁エネルギーによっても運転可能であることは容易に理解することができる。