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特許7096834熱可塑性ポリマー複合材部品を製造するための方法、及び前記方法により得られる物体
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  • 特許-熱可塑性ポリマー複合材部品を製造するための方法、及び前記方法により得られる物体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリマー複合材部品を製造するための方法、及び前記方法により得られる物体
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/02 20060101AFI20220629BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20220629BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B29C65/02
C08J5/04 CER
C08J5/04 CEZ
C08F265/06
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2019549444
(86)(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 FR2018050591
(87)【国際公開番号】W WO2018172657
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-12
(31)【優先権主張番号】1752046
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ボザック, ヴァージニア
(72)【発明者】
【氏名】クレダ, ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】グロタン, ミシェル
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/094008(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03112130(EP,A1)
【文献】特表2015-522690(JP,A)
【文献】特開2014-76565(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099971(WO,A1)
【文献】特開2013-43321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00-65/82
B29C 70/00-70/88
B29B 11/16,15/08-15/14
C08J 5/04- 5/24
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品から熱可塑性ポリマー複合材でできた物体を製造するための方法であって、前記熱可塑性ポリマー複合材が、繊維強化材及び熱可塑性ポリマーマトリックスを含み、前記方法が、
- 熱可塑性ポリマー複合材でできた二つの部品を、アセンブリ界面ゾーンに隣接して又は重ねて配置する工程、及び
- 溶接された界面を含む熱可塑性ポリマー複合材でできた物体を形成するために、前記アセンブリ界面ゾーンで熱可塑性ポリマーマトリックスを溶融するよう加熱する工
み、
熱可塑性ポリマー複合材でできた二つの部品の少なくとも一つが、溶接されることが意図される表面上に少なくとも0.5mmの厚さの(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの層を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品が、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー複合材でできた部品であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
繊維強化材及び(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリックスを含む、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品を製造する予備工程を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
繊維強化材が、単独で又は混合物中で、炭素繊維又はガラス繊維又はバサルト繊維又はポリマー系繊維又は植物繊維から選択される繊維を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
繊維強化材が、少なくとも1000のアスペクト比を有する繊維に基づくことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
加熱工程後に、熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品を一緒に溶接するために、界面で加圧する工程も含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーが、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)又はメチルメタクリレート(MMA)のコポリマー又はそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項2から6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーが、50℃から160℃のガラス転移温度(Tg)を有することを特徴とする、請求項2から7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリックスが一又は複数の添加剤又は充填剤も含むことを特徴とする、請求項2から8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品を製造する工程が以下のサブステップ:
- 液体(メタ)アクリル組成物での繊維強化材の含浸、
- 液体(メタ)アクリル組成物の重
含むことを特徴とする、請求項3から9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
液体(メタ)アクリル組成物が、(メタ)アクリルモノマー、前駆体(メタ)アクリルポリマー及びラジカル開始剤を含むことを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
液体(メタ)アクリル組成物が、(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーの混合物、前駆体(メタ)アクリルポリマーを含むことを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
液体(メタ)アクリル組成物又は液体(メタ)アクリルシロップ中の(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーの混合物が、少なくとも40重量%の量で液体(メタ)アクリル組成物中に存在することを特徴とする、請求項11又は12に記載の製造方法。
【請求項14】
液体(メタ)アクリル組成物又は液体(メタ)アクリルシロップ中の前駆体(メタ)アクリルポリマーが、少なくとも10重量%の量で液体(メタ)アクリル組成物中に存在することを特徴とする、請求項11又は12に記載の製造方法。
【請求項15】
液体(メタ)アクリル組成物又は液体(メタ)アクリルシロップ中の前駆体(メタ)アクリルポリマーが、最大60重量%の量で液体(メタ)アクリル組成物中に存在することを特徴とする、請求項11又は12に記載の製造方法。
【請求項16】
液体(メタ)アクリル組成物中に、化合物が以下の重量百分率:
・液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ中の(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリルモノマー及び(メタ)アクリルポリマーからなる組成物の40重量%から90重量%の割合で存在する
・液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ中の(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリルモノマー及び(メタ)アクリルポリマーからなる組成物の10重量%から60重量%の量で存在する
で包含されることを特徴とする、請求項11又は12に記載の製造方法。
【請求項17】
熱可塑性ポリマー複合材でできた部品が、150℃未満の温度で製造されていることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
熱可塑性ポリマー複合材でできた部品が、低圧射出成形、インフュージョン成形により、又は(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー複合材で予備含浸されたストリップを成形することにより製造されていることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
熱可塑性ポリマー複合材でできた二つの部品の少なくとも一つが、溶接されることが意図される表面上に少なくともmmの厚さの(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの層を含むことを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
加熱工程中、溶接界面の温度が160℃から300℃であることを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項21】
熱可塑性ポリマーマトリックスが、超音波溶接、誘導溶接、抵抗線溶接、摩擦撹拌溶接、レーザー溶接、赤外線若しくは紫外線放射による加熱から選択された技術により溶融されていることを特徴とする、請求項1から20のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項22】
熱可塑性ポリマー複合材でできた二つの部品の少なくとも一つが、アセンブリ界面に位置した少なくとも一つの抵抗フィラメントを含むことを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項23】
熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品から製造された熱可塑性ポリマー複合材でできた物体であって、前記熱可塑性ポリマー複合材が繊維強化材及び熱可塑性ポリマーマトリックスを含むことと、熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品が溶接界面により結合されていることと、熱可塑性ポリマー複合材でできた二つの部品の少なくとも一つが、溶接されることが意図される表面上に少なくとも0.5mmの厚さの(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの層を含むこととを特徴とする、物体。
【請求項24】
重量で50%超の熱硬化性ポリマーを含まないことを特徴とする、請求項23に記載のポリマー複合材でできた物体。
【請求項25】
重量で15%超の熱硬化性ポリマーを含まないことを特徴とする、請求項23に記載のポリマー複合材でできた物体。
【請求項26】
重量で10%超の接着剤を含まないことを特徴とする、請求項23、24又は25のいずれか一項に記載のポリマー複合材でできた物体。
【請求項27】
重量で6%超の熱硬化性接着剤を含まないことを特徴とする、請求項23、24又は25のいずれか一項に記載のポリマー複合材でできた物体。
【請求項28】
(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーが、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)又はメチルメタクリレート(MMA)のコポリマー又はそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項23から27のいずれか一項に記載のポリマー複合材でできた物体。
【請求項29】
複数のパネルからなるコーティング、手すり、ウインドウプロファイル、航空機の胴体、建築用補強材、クロスメンバー、自動車のホワイトボディ、ナセル、尾翼、フィン、スポイラー、フラップ、船舶用タービンブレード、船体、ブリッジ、ボート用隔壁、及び自動車用トリム(ボンネット)から選択されることを特徴とする、請求項23から28のいずれか一項に記載のポリマー複合材でできた物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリマー複合材でできた物体の分野に属する。より具体的には、本発明は、熱可塑性ポリマーマトリックスを含むポリマー複合材でできた部品を製造するための方法に関する。本発明は、特にそのような方法により生じる熱可塑性ポリマー複合材でできた物体にも関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリマーマトリックスに保持される繊維強化材を含む、ポリマー複合材に基づく物体は、全ての分野、特に建築、自動車、航空及び航空宇宙の分野においてますます使用されている。これは、これらの繊維強化ポリマー複合材が、高い強度/重量比と、外板、補剛材、クロスメンバー、ホワイトボディ、プロファイル要素、ナセル、ドア、尾翼、フィン、スポイラー又はフラップなどの物体の製造についてそれをますます一般的にする所望の機械的特性を有するためである。
【0003】
これらの物体の製造に使用されるポリマーは、熱可塑性ポリマーであることが多く、これらの物体を製造するための技術は、一般的に、低圧射出、含浸、注入成形、真空補助樹脂注入(VARI)、引抜成形、真空注入成形、加圧注入成形、樹脂トランスファー成形及びそれらの変化形、又はプリプレグの成形の方法により組み立てられるいくつかの部品の製造を含む。
【0004】
ポリマー複合材でできたこれらの部品を組み立てるために様々な技術が使用される。これらの取付け技術は、主に、機械的固定及び接着剤による接着結合(接着剤)を含む。リベットアセンブリは比較的高価(例えば労働力に関して)で実装が複雑であり、使用されるリベットは全体の重量を増加させる。接着結合(例えば、エポキシ又はポリエステル又はポリウレタン接着剤)も、接着結合される表面の特別な準備と、一般的に特定の硬化及び/又は装置の実装を必要とするため、高価で複雑である。さらに、最適ではない取り付け手段に加えて、これらの熱可塑性ポリマー複合材は、リサイクルが不可能である。
【0005】
これらの問題に対応するために、溶接技術により組み立てることができる熱可塑性材料でできた部品の製造が提案されてきた。溶接では、組み立てられる部品の温度はポリマーマトリックスの融点又は軟化点を超えて上昇し、部品は、樹脂が冷却されて組み立てられるエリアの機械的結合が得られるまで、組立位置に置かれる。
【0006】
したがって、熱可塑性ポリマーでできた物体が開発されてきた。それらは、一般的にリサイクル可能であり、溶接技術により取り付けることができる。しかし、熱可塑性ポリマーでできたこれらの物体は、熱可塑性ポリマー複合材でできた物体のために開発された機械には適合しない方法により形成される。加えて、このようなシステムは、組み立てられる部品の作成のために高温(一般的には100℃超)を用いることを必要とする。この制約は、大きなサイズの部品の製造を特に制限している。
【0007】
そのため、実装が容易であり、且つ熱可塑性ポリマー複合材でできた物体を構成する部品の製造のために高温を必要としない、既存の方法により生じた問題に対応することが可能な熱可塑性ポリマー複合材でできた物体を製造するための方法の必要性が存在する。
【0008】
技術的問題
本発明は、よって、先行技術の欠点を克服することを目的とする。特に、本発明の目的は、熱可塑性ポリマー複合材でできた部品を既存の方法よりも迅速に製造するための方法を提供し、迅速且つ容易な組立、修理又は調整も可能にすることである。
【0009】
本発明の別の目的は、主にリサイクル可能であり、物体がその使用中に供され得る機械的及び化学的応力に耐性がある、熱硬化性ポリマー複合材でできた従来の物体よりも迅速に製造することができる、熱可塑性ポリマー複合材でできた物体を提供することである。
【発明の概要】
【0010】
この目的のため、本発明は、熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品から熱可塑性ポリマー複合材でできた物体を製造するための方法であって、前記熱可塑性ポリマー複合材が、繊維強化材及び熱可塑性ポリマーマトリックスを含み、前記方法が、
- 熱可塑性ポリマー複合材でできた二つの部品を、アセンブリ界面ゾーンに隣接して又は重ねて配置する工程、及び
- 溶接された界面を含む熱可塑性ポリマー複合材でできた物体を形成するために、前記アセンブリ界面ゾーンで熱可塑性ポリマーマトリックスを溶融するよう加熱する工程
を含む、方法に関する。
【0011】
実際、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーを含む熱可塑性ポリマー複合材の使用は、特に従来使用される熱硬化性ポリマーと比較して、サイクル時間を減少させることを可能にする。よって、熱硬化性ポリマーを使用する従来の方法と比較して、製造時間を節約することが可能になる。
【0012】
さらに、本発明による製造方法から得られる熱可塑性ポリマー複合材でできた物体は、これらの分野で通常使用される熱硬化性ポリマーでできた物体とは異なり、容易にリサイクルすることができる。そして、溶接された界面の存在は、界面の温度上昇を介して、アセンブリを製造し、部品の位置調整を行い、又は特定の設備を必要とすることなく修理する可能性を示す。
【0013】
該方法の他の任意の特性によれば、
- 熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品は、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー複合材でできた部品である。さらに、該方法は、好ましくは、繊維強化材及び(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリックスを含む、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品を製造する予備工程を含む。実際には、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー複合材の使用に関連して、本発明による製造方法は、現在最も一般的に使用される産業機器(例えば、低圧射出成形、注入成形)を使用して実装することができ、したがって、ポリアミドなどの熱可塑性ポリマー複合材でできた部品とは異なり、本発明の様々な利用分野で現在使用される産業機器を改質することを必要としない。よって、この実施態様では、本発明による製造方法は、従来の熱可塑性ポリマー(例えばポリアミド)を使用する方法とは異なり、部品全体にわたって高温(例えば>200℃)への上昇を含まず、したがって、大きな寸法を有する部品の容易な組立を可能にする。
- 繊維強化材は、単独で又は混合物中で、炭素繊維又はガラス繊維又はバサルト繊維又はポリマー系繊維又は植物繊維から選択される繊維を含む。
- 繊維強化材は、少なくとも1000のアスペクト比を有する繊維に基づく。そのようなアスペクト比は、改善された機械的特性を有する熱可塑性ポリマー複合材でできた物体を得ることを可能にする。
- 熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品を製造する工程は、以下のサブステップを含む:
・液体(メタ)アクリル組成物での繊維強化材の含浸、
・液体(メタ)アクリル組成物の重合。
- 製造方法は、アセンブリ界面で加圧する工程をさらに含む。これは、強化された溶接界面と共に、熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品を溶接することを可能にする。
-(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーは、一般的に「シロップ」又は熱可塑性ポリマー樹脂と称される液体(メタ)アクリル組成物から得られる(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーから選択される。この液体(メタ)アクリル組成物は、繊維強化材に含浸させるために使用され、その後、重合される。重合語、液体(メタ)アクリル組成物は、ポリマー複合材のマトリックスを構成する。生産性を高めるために、重合は、良好な変換と共に迅速に(例えば30秒から3時間)行われる。(メタ)アクリルモノマー及び前駆体(メタ)アクリルポリマーを含む液体組成物又はシロップは、国際公開第2013/056845号及び同第2014/013028号に記載される。例えば、前駆体(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーは、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)又はメチルメタクリレート(MMA)のコポリマー、又はそれらの混合物から選択される。好ましくは、前駆体(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーは、メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマー、又は、重量で、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、有利には少なくとも90%、より有利には少なくとも95%のメチルメタクリレートを含むコポリマーから選択され得る。得られる(メタ)アクリルポリマー、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)又はメチルメタクリレート(MMA)のコポリマー、又はそれらの混合物は、ポリマー複合材でできた物体を製造するための既存の産業プロセスに特に適しており、ポリマー複合材でできた物体に満足した機械的及び化学的特性を与える。
-(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーは、50℃から160℃、好ましくは70℃から140℃、さらにより好ましくは90℃から120℃のガラス転移温度(Tg)を有する。加えて、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー又は(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの一部は、ISO 1133(230℃/3.8kg)に従って20g/10分未満のメルトフローインデックス(MFI)を有する。好ましくは、メルトフローインデックスは、18g/10分未満、より好ましくは16g/10分未満、有利には13g/10分未満である。これは、ポリマー複合材でできた物体の製造を促進することを可能にし、容易な組立、調整又は修理への道筋をつける。
-(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリックスは、一又は複数の添加剤又は充填剤も含む。全ての任意選択的な添加剤及び充填剤は、含浸及び/又は重合の前に液体(メタ)アクリルシロップに添加される。添加剤としては、耐衝撃性改良剤又はブロックコポリマー等の有機添加剤、熱安定剤、UV安定剤、潤滑剤及びそれらの混合物を含み得る。耐衝撃性改良剤は、エラストマーコア及び少なくとも一つの熱可塑性シェルを含む微粒子の形態であり、粒子の大きさは、一般的に1μmよりも小さく、有利には50から300nmである。耐衝撃性改良剤は、好ましくはエマルション重合により調製される。熱可塑性ポリマーマトリックス中の耐衝撃性改良剤の割合は、0から50重量%、好ましくは0から25重量%、有利には0から20重量%である。充填剤としては、カーボンナノチューブ又は鉱物ナノフィラー(TiO、シリカ)を含む鉱物充填剤が挙げられる。
- 熱可塑性ポリマー複合材でできた部品は、150℃未満、好ましくは120℃未満、さらにより好ましくは100℃未満の温度で製造される。実際には、ポリマー複合材でできた部品の製造中に使用される液体(メタ)アクリル組成物は、従来の熱可塑性物質の融点よりもはるかに低い温度で液体である。よって、これは、非常に大きな寸法の熱可塑性ポリマー複合材でできた部品の製造を、前記部品が高温に加熱される方法を実装することなく可能にする。
- 熱可塑性ポリマー複合材でできた部品は、低圧射出成形、注入成形により、又は(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー複合材で予備含浸されたストリップを成形することにより製造される。
- 熱可塑性ポリマー複合材でできた二つの部品の少なくとも一つは、溶接が意図される表面上に少なくとも0.5mm、好ましくは1mm、より好ましくは少なくとも2mmの厚さの(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの層を含む。これは、特に、溶接された界面に低濃度の樹脂を有するゾーンが出現するのを回避することを可能にし、これは、熱可塑性ポリマー複合材でできた物体の脆化をもたらすことがある。
- 加熱工程中、アセンブリ界面の温度は、160から300℃、好ましくは200から250℃である。
- 熱可塑性ポリマーマトリックス、好ましくは(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリックスは、超音波溶接、誘導溶接、抵抗線溶接、摩擦撹拌溶接、レーザー溶接、赤外線若しくは紫外線放射による加熱、好ましくは抵抗線による加熱から選択された技術により溶融される。
- 熱可塑性ポリマー複合材でできた二つの部品の少なくとも一つは、アセンブリ界面に位置する少なくとも一つの抵抗フィラメントを含む。
【0014】
本発明は、熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品から製造された熱可塑性ポリマー複合材でできた物体であって、前記熱可塑性ポリマー複合材が繊維強化材及び熱可塑性ポリマーマトリックス、好ましくは(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリックスを含むことと、熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品が溶接界面により結合されていることとを特徴とする、物体にさらに関する。
【0015】
該物体の他の任意の特性によれば、
- 熱可塑性ポリマー複合材でできた物体は、重量で、50%超、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、さらにより好ましくは20%以下、より有利には、15%以下、さらにより有利には10%の、エポキシ樹脂などの熱硬化性ポリマーを含まない。よって、本発明による熱可塑性ポリマー複合材でできた物体は、製造時間及びリサイクルされる容量の増加に関して非常に著しい進歩を有する。同様に、熱可塑性ポリマー複合材でできた物体は、10重量%超、好ましくは8重量%超、有利には7重量%超、より有利には6重量%超、さらにより有利には5重量%超の添加剤、好ましくは熱硬化性添加剤を含まない。
- 熱可塑性ポリマー複合材でできた物体は、複数のパネルからなるコーティング、手すり、ウインドウプロファイル、航空機の胴体、建築用補強材、クロスメンバー(特に車両用)、自動車のホワイトボディ、ナセル、尾翼、フィン、スポイラー、フラップ、船舶用タービンブレード、船体、ブリッジ、ボート用隔壁、及び自動車用トリム(ボンネット)から選択される。
【0016】
本発明の他の利点及び特徴は、添付の図面を参照して例示的かつ非限定的な例として示される以下の説明を読解することで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による製造方法の好ましい実施態様のフローチャートである。破線の工程は任意である。
図2A-E】熱可塑性ポリマー複合材でできた部品のアセンブリの概略断面図である。
図3A-B】本発明による方法に従って組み立てられたウインドウプロファイルの二つの部品の縦断面の上面図の簡潔化した二図である。
図4A-B】本発明による車両クロスメンバーの概略斜視図である。
図5】本発明による航空機の胴体部分の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の記載において、「溶接界面」は、部品又は部品の一部の間の溶接接合部に相当する。それは、溶融ゾーン、つまり、溶接作業中に液体状態になった熱可塑性ポリマーのゾーンを指す。本発明による溶接は、熱可塑性充填剤材料、特に(メタ)アクリル熱可塑性充填剤材料を提供して、又はそれを提供することなく、行われ得る。
【0019】
本発明の目的では、用語「抵抗フィラメント」とは、20℃で1×10-2Ωmm2/m超、例えば20℃で0.1Ωmm2/m超の抵抗率を有する材料を含むフィラメントを意味する。抵抗フィラメントは、例えば、金属又は金属合金又はカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェンに基づく導電性ポリマーフィルム若しくはワイヤなどの、炭素に基づく任意の他の有機導電素子を含み得る。好ましくは、抵抗フィラメントは、本発明による(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの軟化点又は流動点(例えばガラス転移温度)よりも高い融点を有する。抵抗性フィラメントの融点は、好ましくは300℃超、より好ましくは500℃超、例えば750℃超である。導電性ポリマーフィルム又はワイヤの場合、それは、熱可塑性ポリマー、好ましくは(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーと少なくとも等しい流動点を有する必要がある。
【0020】
本発明の目的では、「ポリマー複合材」という表現は、少なくとも一つの成分がポリマーであり、他方の成分が例えば繊維強化材であり得る、少なくとも二つの非混和性成分を含む多成分材料を意味する。
【0021】
本発明の目的では、「繊維強化材」又は「繊維基材」とは、複数の繊維、一方向ロービング若しくは連続フィラメントマット、布、フェルト又は不織布を意味し、これらはストリップ、ウェブ、編組、ストランド又は部品の形態であってもよい。
【0022】
「マトリックス」とは、繊維強化材へ力を移すことが可能である結合剤として機能する材料を意味する。「ポリマーマトリックス」は、ポリマーを含むが、他の化合物又は材料を含んでもよい。よって、「(メタ)アクリルポリマーマトリックス」は、アクリル及びメタクリルの両方のあらゆる種類の化合物、ポリマー、オリゴマー、コポリマー又はブロックコポリマーを指す。しかしながら、もし(メタ)アクリルポリマーマトリックスが、最大10重量%、好ましくは5重量%未満の、例えばブタジエン、イソプレン、スチレン、α-メチルスチレン又はtert-ブチルスチレンのような置換スチレン、シクロシロキサン、ビニルナフタレン及びビニルピリジンの群から選択される他の非アクリルモノマーを含む場合、これは本発明の範囲外ではない。
【0023】
「ポリマー」とは、コポリマー又はホモポリマーのいずれかを意味する。「コポリマー」は、複数の異なるモノマー単位を一緒にグループ化するポリマーを意味し、「ホモポリマー」は、同一のモノマー単位を一緒にグループ化するポリマーを意味する。「ブロックコポリマー」は、別個のポリマー物質のそれぞれの一又は複数の連続配列を含むポリマーを意味し、ポリマー配列は、化学的に互いに異なり、共有結合により互いに結合する。これらのポリマー配列は、ポリマーブロックとしても知られている。
【0024】
本発明の目的では、用語「ラジカル開始剤」とは、モノマー(複数可)の重合を出発/開始することができる化合物を意味する。
【0025】
本発明の目的では、用語「重合」は、モノマー又はモノマーの混合物をポリマーに転換する過程を意味する。
【0026】
本発明の目的では、用語「モノマー」とは、重合を受ける場合がある分子を意味する。
【0027】
本発明の目的では、「熱可塑性ポリマー」とは、結晶性、半結晶性又は非晶質であり得、温度上昇中、特にガラス転移温度(Tg)を通過した後に軟化し、高温で流れ、融点(Tm)(半結晶性の場合)を通過すると明らかな融解を呈する場合があり、融点未満且つガラス転移温度未満の温度へ低下中に再び固体になる一般的に室温で固体である材料を意味する。これは、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満の重量百分率で、(メタ)アクリレート「シロップ」の配合物中の多官能性モノマー又はオリゴマーの存在、例えば、軟化点を超えて加熱される場合に熱形成され得る1%未満又は0.5%未満の重量百分率の架橋剤によりわずかに架橋された熱可塑性ポリマーにも当てはまる。
【0028】
本発明の目的では、「熱硬化性ポリマー」とは、重合により不溶性ポリマーネットワークに不可逆的に変換されるプラスチック材料を意味する。
【0029】
「(メタ)アクリルモノマー」とは、任意の種類のアクリル及びメタクリルモノマーを意味する。
【0030】
「(メタ)アクリルポリマー」とは、(メタ)アクリルポリマーの少なくとも50重量%以上を占める(メタ)アクリルモノマーを本質的に含むポリマーを意味する。
【0031】
本発明の目的では、用語「PMMA」とは、メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマー及びコポリマーを意味し、PMMAにおけるMMAの重量比は、MMAコポリマーに対して少なくとも70重量%である。
【0032】
本明細書のこれ以降において、同じ参照が同じ要素を示すために使用される。
【0033】
第1の態様によれば、本発明は、熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品から熱可塑性ポリマー複合材でできた物体1を製造するための方法であって、前記熱可塑性ポリマー複合材が、図1に図示されるように、繊維強化材及び熱可塑性ポリマーマトリックスを含む、方法100に関する。好ましくは、本方法は、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品から出発して行われ、前記(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー複合材は、繊維強化材及び(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリックスを含む。
【0034】
この方法は、主に、
- 熱可塑性ポリマー複合材でできた二つの部品10を、アセンブリ界面ゾーン11に隣接して又は重ねて配置する工程120、及び
- 溶接された界面12を含む熱可塑性ポリマー複合材でできた物体1を形成するために、前記アセンブリ界面ゾーン11で熱可塑性ポリマーマトリックスを溶融するよう加熱する工程130
を含む。
【0035】
繊維強化材を伴うマトリックスの一部を形成する(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーは、ポリアクリレートなどのアクリル系のポリマー及びコポリマーから選択され得る。より具体的には、それらは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)若しくはその誘導体又はメチルメタクリレート(MMA)のコポリマー又はそれらの混合物から選択される。
【0036】
好ましくは、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリックスを形成する(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーは、50℃から160℃、好ましくは70℃から140℃、さらにより好ましくは90℃から120℃のガラス転移温度(Tg)を有し、これはポリアミンなどの他の熱可塑性ポリマーと比較して有利である。実際には、ポリアミンは、一般的には非常に高い融点、すなわち200℃以上を有し、本発明の方法による場合のように現場での組立てを促進しない。ガラス転移温度又は融点は、当業者によく知られた方法により測定され得る。好ましくは、これらの温度は、TgについてはISO規格11357-2/2013及びTmについてはISO規格11357-3/2011に明記される条件に従って示差走査熱量測定により測定される。加えて、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー又は(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの一部は、ISO 1133(230℃/3.8kg)に従って20g/10分未満のメルトフローインデックス(MFI)を有する。好ましくは、メルトフローインデックスは、18g/10分、より好ましくは16g/10分、有利には0.1gから13g/10分である。
【0037】
以下に詳述されるように、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリックスは、(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーの混合物、(メタ)アクリルポリマー及び少なくとも一つのラジカル開始剤を含む液体(メタ)アクリル組成物の重合から得ることができる。
【0038】
(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリックスは、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーから形成されるが、一又は複数の添加剤及び/又は一又は複数の充填剤をさらに含んでもよい。
【0039】
炭素質充填材は、特に、活性化炭素、天然無煙炭、合成無煙炭、カーボンブラック、天然グラファイト、合成グラファイト、炭素質ナノフィラー又はそれらの混合物であり得る。それらは、好ましくは、炭素質ナノフィラー、特にグラフェン及び/又はカーボンナノチューブ及び/又はカーボンナノフィブリル又はそれらの混合物から選択される。これらの充填剤は、電気及び熱を伝導することを可能にし、結果として、ポリマーマトリックスが加熱されるときにその潤滑を改善することを可能にする。その後、それらは、サイクル時間の減少を増加させ、又は取り付け部位で組立、調整又は修理を促進し得る。
【0040】
鉱物充填剤は、特に、金属水酸化物を含み、これは、より具体的には、アルミナ三水和物(Al(OH))又は水酸化マグネシウム(OH))の形態、及び炭酸カルシウム、二酸化チタン又はシリカなどの鉱物ナノフィラーである。
【0041】
添加剤としては、耐衝撃性改良剤又はブロックコポリマー等の有機添加剤、熱安定剤、UV安定剤、潤滑剤、粘度改良剤、pH改良剤(水酸化ナトリウム)、粒子サイズ改良剤(硫酸ナトリウム)、バイオサイド、及びそれらの混合物が挙げられる。これらの添加剤は、特に、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリックスのレオロジー特性、化学的特性及び接着特性を改善することを可能にする。
【0042】
(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリックスの総重量に対するすべての添加剤及び充填剤の重量百分率は、好ましくは30%未満、好ましくは10%未満である。
【0043】
繊維強化材とは、一般的に、複数の繊維、一方向ロービング若しくは連続フィラメントマット、布、フェルト又は不織布を意味し、これらはストリップ、ウェブ、編組、ストランド又は部品の形態であってもよい。より具体的には、繊維強化材は、一又は複数の繊維、一般的にはいくつかの繊維のアセンブリを含み、前記アセンブリは、異なる形態及び寸法;一次元、二次元又は三次元を有することができる。一次元の形態は、線形の長繊維に相当する。繊維は、不連続又は連続であり得る。繊維は、連続フィラメントの形態で、無作為に又は互いに平行に配置され得る。二次元の形態は、編組され得る、不織の補強材若しくは繊維マット、又は織られたロービング又は繊維束に相当する。二次元の形態が特定の厚さを有しており、結果的に、原則として三次元であるとしても、それは本発明によって二次元であると考えられる。三次元の形態は、例えば、積み重ねられたか若しくは折り畳まれた不織の繊維強化材又は繊維マット、又は積み重ねられたか若しくは折り畳まれた繊維束、又はそれらの混合物;三次元中の二次元形態のアセンブリに相当する。
【0044】
繊維は、不連続又は連続でありうる。繊維が連続的である場合、それらのアセンブリは織物を形成する。好ましくは、繊維強化材は、連続繊維に基づく。繊維は、繊維の長さと直径の比である、そのアスペクト比により定義される。本発明で使用される繊維は、連続繊維から得られる長繊維、又は連続繊維である。繊維は、少なくとも1000、好ましくは少なくとも1500、より好ましくは少なくとも2000、有利なことには少なくとも3000、より有利なことには少なくとも5000、さらにより有利なことには少なくとも6000、さらにより有利なことには少なくとも7500、最も有利なことには少なくとも10000のアスペクト比を有する。連続繊維は、少なくとも1000のアスペクト比を有する。繊維の寸法は、当業者によく知られた方法により測定され得る。好ましくは、これらの寸法は、ISO規格137に従って顕微鏡法により測定される。
【0045】
繊維強化材を構成する繊維の起源は、天然又は合成であり得る。天然の材料として、植物繊維、木質繊維、動物繊維、又は鉱物繊維を挙げることができる。植物繊維は、例えば、サイザル、ジュート、ヘンプ、リネン、木綿、ココナッツ、及びバナナ繊維である。動物繊維は例えば羊毛又は毛皮である。鉱物繊維は、また、特にタイプE、R、又はS2であるガラス繊維、バサルト繊維、炭素繊維、ホウ素繊維又はケイ素繊維から選択され得る。
【0046】
合成材料として、熱硬化性ポリマー繊維、熱可塑性ポリマー繊維又はそれらの混合物から選択されるポリマー繊維が挙げられる。ポリマー繊維は、ポリアミド(脂肪族又は芳香族)、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、及びビニルエステルからなり得る。
【0047】
好ましくは、本発明の繊維強化材は、単独で又は混合物中で、植物繊維、木質繊維、動物繊維、鉱物繊維、合成ポリマー繊維、ガラス繊維、バサルト繊維及び炭素繊維を含む。より好ましくは、本発明の繊維強化材は、炭素繊維及び/又はガラス繊維を含む。より好ましくは、本発明の繊維強化材は、天然繊維(植物若しくは木質繊維)、炭素繊維又はガラス繊維から本質的になる。
【0048】
繊維強化材の繊維は、例えば0.005μmから100μmの間、好ましくは1μmから50μmの間、より好ましくは5μmから30μmの間、かつ有利なことには10μmから25μmの間の直径を有する。
【0049】
好ましくは、本発明の繊維強化材の繊維は、一次元の形態については連続繊維から、又は繊維強化材の二次元若しくは三次元の形態については長繊維又は連続繊維から選択される。
【0050】
図1に示されるように、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品10を製造する工程110の第1の任意の工程は、以下のサブステップを含み得る:
- 液体(メタ)アクリル組成物での繊維強化材の含浸111、
- 前記繊維強化材の含浸による、液体(メタ)アクリル組成物の重合112。
【0051】
本発明の利点の一つは、熱可塑性ポリマー複合材でできた部品10が、150℃未満、好ましくは140℃未満、さらにより好ましくは125℃未満、有利には120℃未満、より有利には110℃未満、さらにより有利には100℃の温度で製造され得ることである。例えば、繊維強化材に液体(メタ)アクリル組成物を含浸させる工程は、150℃未満、好ましくは120℃未満、さらにより好ましくは100℃未満又は80℃未満の温度で行われる。実際には、熱可塑性ポリマー複合材でできた部品10の製造のために使用される液体(メタ)アクリル組成物は、従来の熱可塑性物質の融点よりもはるかに低い温度で液体である。よって、これは、非常に大きな寸法の熱可塑性ポリマー複合材でできた部品10の製造を、前記部品が高温に加熱される方法を実装することなく可能にする。よって、これらの部品を製造するために使用され得る方法は、従来の熱可塑性物質の場合がそうであったようには、高温で加熱する工程を必要としないことを理解されたい。
【0052】
熱可塑性ポリマー複合材でできた部品10を製造する工程110は、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの層13を堆積させるサブステップ113も含み得る。この堆積は、好ましくは、将来の溶接界面を形成することが意図されるアセンブリ界面ゾーンで生じる。あるいは、熱可塑性ポリマー複合材でできた部品10全体にわたって堆積がなされる。
【0053】
熱可塑性ポリマー複合材でできた部品10を製造する工程110に関して、これらの部品を製造するために異なる方法が使用され得る。真空補助樹脂注入(VARI)、引抜成形、真空注入成形、加圧注入成形、オートクレーブ成形、樹脂トランスファー成形(RTM)および(HP-RTM、C-RTM、I-RTMなど)のようなそれらの変化形、反応射出成形(RIM)、強化反応射出成形(R-RIM)及びそれらの変化形、プレス成形、圧縮成形、液体圧縮成形(LCM)又はシート成形(SMC)又はバルク成形(BMC)が挙げられる。
【0054】
熱可塑性ポリマー複合材でできた部品10を製造するための第1の好ましい製造方法は、液体(メタ)アクリル組成物が、金型への繊維強化材の含浸により繊維強化材上へ移される方法である。金型を必要とする方法は上に列挙され、成形という用語を含む。
【0055】
熱可塑性ポリマー複合材でできた部品10を製造するための第2の好ましい製造方法は、液体組成物が引抜成形プロセスに使用される方法である。繊維は、本発明による組成物を含む樹脂のバッチを介して誘導される。例えば、繊維強化材の形態の繊維は、一方向ロービング又は連続フィラメントマットの形態である。樹脂バッチへの含浸後、湿潤繊維は、加熱されたダイを通して引っ張られ、そこで重合が生じる。
【0056】
第3の好ましい製造方法は、真空補助樹脂注入(VARI)である。
【0057】
熱可塑性ポリマー複合材でできた部品10だけでなく機械的若しくは構造化部品又は製品を製造するための方法は、後形成の工程をさらに含み得る。後形成は、複合材部品の曲げ及び形状の変更を含む。熱可塑性ポリマー複合材でできた部品10を製造するための方法は、回転の工程をさらに含み得る。
【0058】
本発明による方法により得られる熱可塑性部品は、本発明の液体組成物の重合後に後形成され得る。形成は、複合材部品の曲げ及び形状の変更を含む。
【0059】
液体(メタ)アクリル組成物に関して、国際公開第2013/056845号及び同第2014/013028号に記載されるように、(メタ)アクリルモノマー、前駆体(メタ)アクリルポリマー及びラジカル開始剤が含まれ得る。
【0060】
加えて、含浸中、ポリマー複合材を調製する際、繊維強化材の各繊維を正確に含浸させるために、(メタ)アクリル組成物又は含浸シロップの粘度は、流体でありすぎず又は粘度が高くなりすぎないように調整及び適合される必要がある。シロップが流体でありすぎるか若しくは粘度が高すぎるために、湿潤が部分的であるとき、「裸の」ゾーン、つまり非含浸ゾーン、及びそれぞれ気泡形成の原因となるポリマーの液滴が繊維上に形成されるゾーンが現れる。これらの「裸の」ゾーン及びこれらの気泡は、ポリマー複合材でできた部品又はポリマー複合材でできた最終物体に欠陥の出現を引き起こし、これはとりわけ、ポリマー複合材でできた部品又はポリマー複合材でできた最終物体の機械的強度の損失の原因である。さらに、含浸なしで使用する場合、生産性を高めるために、良好な変換率で急速に重合する液体組成物を有することが望ましい。
【0061】
よって、前記液体(メタ)アクリル組成物は、好ましくは、25℃で10mPa*sから10000mPa*sの動的粘度を有する。液体組成物又は(メタ)アクリルシロップの動的粘度は、10mPa*sから10000mPa*s、好ましくは20mPa*sから7000mPa*s、有利には20mPa*sから5000mPa*sの範囲である。液体(メタ)アクリル組成物又は液体(メタ)アクリルシロップの粘度は、レオメータ又は粘度計を用いて容易に測定することができる。動的粘度は25℃で測定される。液体(メタ)アクリルシロップが、ニュートン挙動を示す(剪断減粘性がないことを意味する)とき、動的粘度は、レオメータ中の剪断又は粘度計中のスピンドルの速度から独立する。液体組成物が、非ニュートン挙動を示す(すなわち剪断減粘性がある)とき、動的粘度は、25℃で1s-1の剪断速度で測定される。
【0062】
液体(メタ)アクリル組成物は、少なくとも一つの(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーの混合物、前駆体(メタ)アクリルポリマーを含む。
【0063】
液体(メタ)アクリル組成物又は液体(メタ)アクリルシロップ中の(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーの混合物は、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも45重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、有利には少なくとも60重量%、より有利には少なくとも65重量%の量で液体(メタ)アクリル組成物中に存在する。
【0064】
液体(メタ)アクリル組成物又は液体(メタ)アクリルシロップ中の前駆体(メタ)アクリルポリマーは、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、有利には少なくとも18重量%、より有利には少なくとも20重量%の量で液体(メタ)アクリル組成物中に存在する。
【0065】
液体(メタ)アクリル組成物又は液体(メタ)アクリルシロップ中の前駆体(メタ)アクリルポリマーは、最大60重量%、好ましくは最大50重量%、有利には最大40重量%、より有利には最大35重量%の量で液体(メタ)アクリル組成物中に存在する。
【0066】
液体(メタ)アクリル組成物又はシロップ、シロップ化合物は、以下の重量%で包含される:
・液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ中の(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリルモノマー及び(メタ)アクリルポリマーからなる組成物の40重量%から90重量%、好ましくは45重量%から85重量%の割合で存在する。
・液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ中の(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリルモノマー及び(メタ)アクリルポリマーからなる組成物の10重量%から60重量%、有利には15%から55重量%の量で存在し;好ましくは、液体組成物中の(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリルモノマー及び(メタ)アクリルポリマーからなる組成物の18%から30%、より好ましくは20重量%から25重量%の量で存在する。
【0067】
(メタ)アクリルモノマー、モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアクリルモノマー、アルキルメタクリル系モノマー、ヒドロキシアルキルアクリルモノマー及びヒドロキシアルキルメタクリル系モノマー、及びそれらの混合物から選択される。
【0068】
好ましくは、(メタ)アクリルモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシアルキルアクリルモノマー、ヒドロキシアルキルメタクリル系モノマー、アルキルアクリルモノマー、アルキルメタクリル系モノマー、及びこれらの混合物から選択され、アルキル基は、1から22の直鎖状、分岐状又は環状炭素を含有し;好ましくは、アルキル基は、1から12の直鎖状、分岐状又は環状炭素を含有する。
【0069】
有利には、(メタ)アクリルモノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレート、及びこれらの混合物から選択される。
【0070】
好ましい実施形態によれば、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%の(メタ)アクリルモノマーはメチルメタクリレートである。
【0071】
第1のより好ましい実施態様によれば、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、有利なことには少なくとも80重量%、かつさらにより有利なことには90重量%のモノマーは、メチルメタクリレートと任意選択的に少なくとも一つの他のモノマーの混合物である。
【0072】
前駆体(メタ)アクリルポリマーに関しては、ポリアルキルメタクリレート又はポリアルキルアクリレートが挙げられる。好ましい実施態様によれば、(メタ)アクリルポリマーは、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)である。
【0073】
一実施態様によれば、メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマー又はコポリマーは、重量で、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、有利なことには少なくとも90%、より有利なことには少なくとも95%のメチルメタクリレートを含む。
【0074】
別の実施態様によれば、PMMAは、MMAの少なくとも一つのホモポリマーと少なくとも一つのコポリマーの混合物、又は異なる平均分子量を有するMMAの少なくとも二つのホモポリマー若しくは二つのコポリマーの混合物、又は異なるモノマー組成を有するMMAの少なくとも二つのコポリマーの混合物である。
【0075】
メチルメタクリレート(MMA)のコポリマーは、70%から99.7重量%のメチルメタクリレートと、0.3%から30重量%の、メチルメタクリレートと共重合できる少なくとも一つのエチレン性不飽和を含有する少なくとも一つのモノマーを含む。
【0076】
これらのモノマーはよく知られており、特に、アクリル酸、メタクリル酸、及びアルキル基が1から12個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。例として、メチルアクリレート及びエチル、ブチル若しくは2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられ得る。好ましくは、コモノマーは、アルキル基が1から4の炭素原子を有するアルキルアクリレートである。
【0077】
第1の好ましい実施態様によれば、メチルメタクリレート(MMA)のコポリマーは、重量で、80%から99.7%、有利なことには90%から99.7%、かつより有利なことには90%から99.5%のメチルメタクリレートと、重量で、0.3%から20%、有利なことには0.3%から10%、かつより有利なことには0.5%から10%の、メチルメタクリレートと共重合できる少なくとも一つのエチレン性不飽和を含有する少なくとも一つのモノマーとを含む。好ましくは、コモノマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート及びそれらの混合物から選択される。
【0078】
前駆体(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量(M)は高くあるべきであり、それは、50000g/molよりも大きく、好ましくは100000g/molよりも大きいことを意味する。重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定され得る。
【0079】
前駆体(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーの混合物に完全に溶ける。それにより、(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーの混合物の粘度が増加される。液体組成物又は得られる溶液は、一般的に「シロップ」又は「プレポリマー」と称される。液体(メタ)アクリルシロップの動的粘度の値は、10mPa.sから10000mPa.sである。シロップ剤の粘度は、レオメータ又は粘度計で容易に測定され得る。動的粘度は25℃で測定される。有利には、液体(メタ)アクリルシロップは、意図的に追加された追加の溶媒を含有しない。
【0080】
ラジカル開始剤に関しては、好ましくは、水溶性ラジカル重合開始剤又は脂溶性若しくは部分的に脂溶性のラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0081】
水溶性ラジカル重合開始剤は、特に、単独で、又はチオ硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、2-ヒドロキシ-2-スルフィノ酢酸の二ナトリウム塩の混合物、亜硫酸ナトリウム及び2-ヒドロキシ-2-スルホ酢酸の二ナトリウム塩、又はヒドロキシスルフィノ酢酸の二ナトリウム塩とヒドロキシスルホ酢酸の二ナトリウム塩の混合物などの還元剤の存在下で使用される過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム又は過硫酸アンモニウムである。
【0082】
脂溶性又は部分的に脂溶性のラジカル重合開始剤は、特に、アゾビスイソブチロニトリルの過酸化物又はヒドロペルオキシド又は誘導体である。過酸化物又はヒドロペルオキシドは、それらの活性化温度を下げるために、上記の還元剤と組み合わせて使用される。
【0083】
モノマー混合物の総重量に対する開始剤の重量百分率は、好ましくは、0.05重量%から3重量%、好ましくは0.1重量%から2重量%である。
【0084】
熱可塑性ポリマー複合材でできた二つの部品10を、アセンブリ界面ゾーン11に隣接して又は重ねて配置する工程120は、図2に示される。よって、図2Aは、アセンブリ界面ゾーン11に隣接して又は離れて位置する熱可塑性ポリマー複合材でできた二つの部品10を示す。熱可塑性ポリマー複合材でできた部品の端部は、アセンブリ界面ゾーン11を形成するために、隣接して位置する。図2Bに示されるように、端部は、横断溶接界面12を形成するために、熱可塑性ポリマー複合材でできた部品10の断面により形成され得る。
【0085】
図2Cから2Eに示されるように、熱可塑性ポリマー複合材でできた部品10はまた、重なり合うように配置され、したがって、これらの図に示されるように、将来の溶接界面12に相当するカバレージゾーンを作成し得る。
【0086】
加えて、熱可塑性ポリマー複合材でできた部品10は、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの層13を含み得る。先述のように、この層13は、好ましくは、将来の溶接界面12を形成することが意図されるアセンブリ界面ゾーンに位置する(図2D)。あるいは、層13の堆積は、図2Eに示されるように、熱可塑性ポリマー複合材でできた部品10全体にわたってなされる。前記堆積は、特に、溶接されることが意図される上面上少なくとも0.5mの厚さの(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの層13を得ることを可能にする。
【0087】
特に、溶接された又は溶接している界面12は、1mm以上、好ましくは2mm以上の厚さを有する。溶接された界面12の厚さは、従来の方法により、例えば前記溶接された界面12の縦断面から測定され得る。
【0088】
図2Aから2Eは、単に、溶接界面12の断面図を図示しているが、後者は、好ましくは、熱可塑性ポリマー複合材でできた部品10の長さにわたって延びる。よって、溶接界面12は、1メートル超、好ましくは5メートル超、さらにより好ましくは10メートル超の長さを有し得る。加えて、本発明による方法は、熱可塑性ポリマー複合材でできた大きな部品10に特によく適している。よって、好ましくは、熱可塑性ポリマー複合材でできた二つの部品10の少なくとも一つは、1メートル超、好ましくは2メートル超の寸法を含む。
【0089】
加熱工程130は、溶接界面12を含む熱可塑性ポリマー複合材でできた物体1を形成するために、前記アセンブリ界面ゾーン11で(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリックスを溶融することを可能にする。(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリックスは、超音波溶接、誘導溶接、抵抗線溶接、摩擦撹拌溶接、レーザー溶接、赤外線若しくは紫外線放射による加熱から選択された技術により溶融され得る。好ましくは、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリックスは、抵抗線溶接により溶融される。
【0090】
本発明による溶接は、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー充填剤材料を提供して、又はそれを提供することなく、行われ得る。実際には、加熱中、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー材料は、例えば、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーでできたロッドの形態で供給され得る。これは、熱可塑性ポリマー複合材でできた二つの部品を配置する工程120中に、中空又は空間が形成される場合に有利である。(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーでできたロッドを介した熱可塑性充填材材料の供給は、任意の中空又は空間を充填することを可能にする。
【0091】
好ましくは、加熱工程230中、アセンブリ界面11の温度は160℃から300℃である。この温度は、従来、赤外線温度計により測定することができる。
【0092】
図3A及び3Bは、本発明による方法に従って組み立てられたウインドウプロファイルの二つの部品20の縦断面の上面図の簡潔化した二図を示す。図3Aでは、熱可塑性ポリマー複合材でできたウインドウプロファイルの二つの部品20がホットプレート24により分離される。融点に達したとき、ホットプレート24は除去され、熱可塑性ポリマー複合材でできたウインドウプロファイルの二つの部品20は、溶接界面22を含む熱可塑性ポリマー複合材でできたウインドウプロファイル2を形成するために、互いに接触する(図3B参考)。
【0093】
加圧する任意の工程140は、アセンブリ界面11での圧力の生成を含む。加熱工程130の後に生成されるこの圧力は、溶接界面12を含む熱可塑性ポリマー複合材でできた物体を形成するために、ポリマー複合材でできた少なくとも二つに部品10間の溶接界面を強化することを可能にする。熱可塑性ポリマー複合材でできた二つの部品10はまた、所望の位置又は形態で固く結合されてもよく、且つ熱可塑性ポリマーマトリックスが冷却されるまで保持されてもよく、それにより、強固な溶接界面12が形成される。例えば、圧力は、熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品10のアセンブリ11のゾーンに部分的真空を適用することにより、生成され得る。圧力は、アセンブリ界面ゾーン11に実質的に垂直な力を加えることにより、例えば、熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品上へ鋳型を堆積させることにより、生成され得る。
【0094】
任意の冷却工程150は、溶接界面12の機械的特性を改善することを可能にする。この冷却工程150は、室温(例えば15℃から25℃)で、又は(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーのTg未満の温度で行われ得る。
【0095】
第2の態様によれば、本発明は、熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品10から製造された熱可塑性ポリマー複合材でできた物体に関する。上記のように、熱可塑性ポリマー複合材は、繊維強化材及び(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリックスを含み、熱可塑性ポリマー複合材でできた少なくとも二つの部品10は、溶接界面12により結合されている。本発明による熱可塑性ポリマー複合材でできた物体は、多くの分野で、好ましくは、建築、航空、航海、自動車、レジャー分野で使用され得る。よって、本発明による熱可塑性ポリマー複合材でできた物体は、好ましくは、複数のパネルからなるコーティング、手すり、ウインドウプロファイル、航空機の胴体、建築用補強材、クロスメンバー(特に車両用)、自動車のホワイトボディ、ナセル、尾翼、フィン、スポイラー、フラップ、船舶用タービンブレード、船体、ブリッジ、ボート用隔壁、及び自動車用トリム(ボンネット)から選択され得る。
【0096】
本明細書のこれ以降では、他の三つの物体の例が挙げられる。
【0097】
図4A及び4Bは、本発明による熱可塑性ポリマー複合材でできた物体3、4を示す。図4Aは、溶接界面32を含む本発明による熱可塑性ポリマー複合材でできた、自動車のためのバンパー補強タイプのクロスメンバー3を示す。熱可塑性ポリマー複合材でできたこれらの部品30は、車両用の構造要素を形成し、複数の溶接界面32によって結合される。本発明は、これらの特定の部品30に限定されず、例えば、図4Bに示すように、側面、床、翼、ドア、後部列車を接続するクロスメンバー40などの車体を構成する他の部品の製造においても実装され得る。
【0098】
図5は、熱可塑性ポリマー複合材でできたいくつかの胴体部分50(そのいくつかは(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの層53を含む)を含む航空機の胴体部分5を図示する。
【0099】
加えて、好ましくは、本発明による熱可塑性ポリマー複合材でできた物体1,2,3,4,5は、50重量%超、より好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、有利には20重量%以下、より有利には15重量%、さらにより有利には10重量%の熱硬化性ポリマー、例えばエポキシ又はポリエステル又はポリウレタン樹脂を含まない。しかし、これまで、熱硬化性ポリマーは、一般的に、ポリマー複合材でできた物体1の製造に使用されていた。同様に、好ましくは、本発明による熱可塑性ポリマー複合材でできた物体1は、10重量%超、より好ましくは9重量%以下、さらにより好ましくは8重量%以下、有利には7重量%以下、より有利には6重量%、さらにより有利には5重量%の接着剤、好ましくは熱硬化性接着剤を含まない。実際には、ポリマー複合材でできた異なる物体の部品の接着接合は、一般的に、エポキシ樹脂タイプの熱硬化性構造用接着剤を用いて行われる。
【0100】
好ましくは、本発明による部品10、20、30、40、50の熱可塑性ポリマー複合材は、例えば溶接されることが意図される表面上を少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも1mm、より好ましくは少なくとも2mmの厚さの(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの層で少なくとも部分的にカバーされる。ポリマー複合材は、より具体的には、将来の溶接界面12を形成することが意図されるアセンブリ界面ゾーンで、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーのこの層でカバーされる。これは、特に、低濃度の熱可塑性ポリマーを有するゾーンの出現を回避することを可能にする。あるいは、熱可塑性ポリマー複合材でできた部品10、20、30、40、50は、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの層でカバーされた少なくとも一つの面を有し得る。
【0101】
特に有利には、本発明によるポリマー複合材でできた物体1、2、3、4、5は、1メートル超、好ましくは5メートル超の長さを有する溶接界面12、22、32、42を含む。
【0102】
本発明に関連して、繊維強化材及び(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリックスを含む熱可塑性ポリマー複合材でできた部品10の使用は、ポリマー複合材でできた物体1、2、3、4、5に使用される熱硬化性ポリマーの量を有意に減少させ、熱可塑性ポリマー複合材でできた物体1、2、3、4、5の大部分をリサイクルするなど、熱硬化性物質では想像できない可能性を開き、且つ組立及び修理を容易にすることを可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5