(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】楽器の反対側にある二枚のサウンドボードから音を発生させる楽器
(51)【国際特許分類】
G10D 3/02 20060101AFI20220629BHJP
G10D 1/08 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
G10D3/02
G10D1/08
(21)【出願番号】P 2020079121
(22)【出願日】2020-04-28
(62)【分割の表示】P 2018097466の分割
【原出願日】2018-05-21
【審査請求日】2020-06-23
(32)【優先日】2017-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518178914
【氏名又は名称】ロバート エル オバーグ
【氏名又は名称原語表記】Robert L. Oberg
【住所又は居所原語表記】9 Hillside Lane North,Syosset,New York 11791-4110,United States Of America
(74)【代理人】
【識別番号】100091926
【氏名又は名称】横井 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エル オバーグ
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-044339(JP,A)
【文献】特表2002-507290(JP,A)
【文献】実開昭49-062420(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0345441(US,A1)
【文献】中国実用新案第206907459(CN,U)
【文献】特開2001-134263(JP,A)
【文献】特開平07-295557(JP,A)
【文献】山田伸志,おもしろサイエンス 音と振動の科学,株式会社日刊工業新聞社,2015年01月,p.8-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 1/00-3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホローまたはセミホローのボディと、
フロントおよびリアサーフェスと、
中空の前記ボディのフロントサーフェスまたはリアサーフェスのいずれか一方となる少なくとも一つのサウンドボードと、
音を放出するサウンドホールと、 中空の前記ボディのフロントサーフェスとリアサーフェスとを相互に接続する一枚または複数のパネルと、
中空の前記ボディへ伸長する少なくとも一つのチューニングされたサウンドポートと、を有し、
前記サウンドポートを通じて音が存在することが可能であり、
前記パネルは、前記サウンドポートと前記サウンドホールとの間に位置するように配置され、
前記パネルには第1の端部と前記第1の端部の他方側にある第2の端部があり、前記第1の端部は、前記サウンドポートに隣接する前記ボディの側壁に接触し、前記第2の端部は、何にも接触することなく、前記サウンドホールに隣接している楽器。
【請求項2】
チューニングされた前記サウンドポートは、前記楽器の前記ボディに形成された開口部に挿入される中空部材を有し、
前記中空部材は、所定の形状の中央開口部を有し、かつ、チューニングされた前記サウンドポートが挿入される孔から一定の距離を伸長する長さを有している請求項1に記載の楽器。
【請求項3】
前記中央開口部は円形であり、
前記中空部材は、円筒形状を有していて、前記中央開口部の直径の1/4から1/2の長さのプラスマイナス20%の範囲を最小の距離として、前記ボディに形成された前記開口部から所定距離で伸長している請求項2に記載の楽器。
【請求項4】
前記パネルは曲線形状または/および平坦形状を有している請求項1~3のいずれか1項に記載の楽器。
【請求項5】
前記楽器は弦楽器である請求項1~4のいずれか1項に記載の楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホローまたはセミホローのボディを有し、楽器の向かい側に離れて配置された二つのサウンドボードから、各サウンドボード上のブリッジを相互に接続する単一の組の弦を使用して、前記楽器のホロー内部を通して、音が生成され、かつ制御されるギター、バイオリン、バンジョーなどの弦楽器と、ホローまたはセミホローのボディを有し、楽器の向かい側に離れて配置された二つのサウンドボードから、各サウンドボード上のブリッジを相互に接続する単一の組の弦を使用して、前記楽器のホロー内部を通して、音が生成されて制御される弦楽器を構築する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホローまたはセミホローのボディを有する従来の弦楽器では、楽器の構造的なフロントに対応するサウンドボードに取り付けられたブリッジおよびサドル上に張られている弦をかきならしたり、爪弾きしたりすることによって楽音が生成される。
弦の振動により生成され、サウンドボードの上に取り付けられているブリッジ組立体からボディ全体に伝達する音は、一般的に構造的なフロントのサウンドボード上に位置し、一般的には、弦の下方に位置している楽器のサウンドホールから放出される。
【0003】
アコースティックギターでは、ボディのホロー内部は、サウンドボードで発生する音を高め、かつ増幅させる音響共鳴エンクロージャーを形成する。楽器のサウンドボードは、従来、楽器の上部または前部であると考えられている。
ギターの背部または後部は、楽器から発生する音全体に対しての影響が少ないか、もしくは影響がないと考えられており、そのため、ギターのリアボードの製作に用いる木材についてはほとんど注意が払われていない。
フロントボードとリアボードは、楽器の側面に沿ってボディに接続されて、ホロー内部の周囲を囲むボディを完全に閉じている。
【0004】
上記説明のとおり、フロントボードは、アコースティックギターのサウンドボードであると認識されていて、トウヒやレッドシダーなどの高価なトーンウッドにより構成されており、その一方で、リアボードは、一般的に安価な木材や他の素材によって構成されている。
従来のアコースティックギターのフロントボードおよびリアボードには、通常、ギターの内部に面するように、各ボードの内側にリブが存在し、各ボードの構造的な強度をそれぞれで高めている。しかし、多くの場合、従来のアコースティックギターでは、フロントボードとリアボードとの間の支えは、フロントボードとリアボードとを接続している側面を除いて存在していない。
【0005】
本発明によれば、一組の弦を用いてフロントサウンドボードとリアサウンドボードとをギターの内部を通じて相互に接続することにより、ギターのフロントサウンドボードとリアサウンドボードとの両方を含むサウンドボードが同時に使用されてそれぞれで独立して音が発生し、それにより、弦楽器で生成される音を向上させることが可能になる、という発見がされた。
【0006】
本発明では、デュアルのブリッジおよびサドル組立体を用いることによりこれが実現される。デュアルのブリッジおよびサドル組立体は、楽器のフロントサウンドボードに取り付けられた第1のサドルおよびブリッジと、リアサウンドボードに取り付けられた第2のサドルおよびブリッジとを含んでおり、前記第1ブリッジと前記第2ブリッジは、一組の弦によってギターのホロー内部を通じて相互に接続されている。デュアルのブリッジおよびサドル組立体は、さらに、支柱を備えていることが好ましい。支柱は、ギターの内部で第1ブリッジと第2ブリッジとに接続されて、追加的にフロントサウンドボードとリアサウンドボードとの間を構造的に支え、デュアルブリッジが存在することによって弱い部分を支える。
【0007】
二枚のサウンドボードの間に伸びる一組の共通の弦を振動させることにより、楽器のフロントとリアのサウンドボードの両方から楽器の内部全体に音が伝達して、多層の音響音が生成される。生成される音の強度および周波数の範囲は、ギター弦がフロントボードのみに接続されている他のアコースティックギターよりも広い強度および周波数範囲となる。さらに、各サウンドボードを、それぞれ別個の(前段)増幅器および/または増幅器に結合することで、各サウンドボードから生成される音を独立して個別に制御することが可能となり、音が更に向上する。
【0008】
本発明においては、必須ではないが、サウンドボードのうちの少なくとも一つ、好ましくはフロントサウンドボードに、従来のサウンドホールに加えて、サウンドホールとは独立してギターからの音を放出する少なくとも一つのサウンドポートを有することが好ましい。サウンドポートは、サウンドホールの周辺に位置させることができる。さらに、サウンドポートは所望の形状の中空部材を有していて、中空部材の形状としては、いずれかのサウンドボード、好ましくはフロントサウンドボード上に形成された開口部への挿入に適合したチューブであることが好ましい。
【0009】
中空部材は、フロントサウンドボードとリアサウンドボードとの間の距離の5%から95%と等しい長さで、フロントサウンドボードからホロー内へ伸長しており、さらに、所望のサイズ寸法の、好ましくは幾何学状の一周する開口部が、フロントサウンドボードを通るように形成されている。ギター等の内部へのサウンドポートの伸長長さを変化させることにより、すなわち、目標とする音に基づいて所望の長さ範囲を決めて、この所望の範囲内の様々な異なる長さの中から所望の長さを選択することにより、ギターの共振周波数と比例した所望の周波数範囲にサウンドポートをチューニングすることができる。例えば、サウンドホールから放出される音の周波数スペクトルとは異なり、サウンドポートからの音は、トレブルやバスの音範囲に相当する高い周波数または/および低い周波数を持たせることができる。これにより、楽器によって生成される周波数のダイナミックレンジを広くすることができる。
【0010】
そして、特に、サウンドポートが楽器に追加される場合には、フロントサウンドボードとリアサウンドボードとを接続する一枚または複数枚のパネルを楽器のボディ内部に設けて、音をサウンドポートへ集めるようにすることが好ましい。パネルは、各サウンドポートとサウンドホールとの間に位置するように配置され、通常はギターのアッパーバウトに設けられるが、これに限定されるものではない。また、パネルは、ギターのネックまで伸長することが好ましいが、ギターのネック付近で、他のパネルと相互に接続していてもよい。この配置では、パネルによって各サウンドポートに向かって音が集められるため、サウンドホールから出る音に加えて、サウンドポートからも音が放出される。また、パネルはフロントサウンドボードとリアサウンドボードとに接続されているため、パネルは本質的にギターのフロントとリアの板の間を構造的に支えており、これにより、パネルは、デュアルのブリッジおよびサドル組立体の支柱による支持とともに、従来の標準やフロントおよび/またはリアのサウンドボードに付けられたリブの代わりとして機能している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の楽器のうち第1の形態は、
ホローまたはセミホローのボディと、
フロントおよびリアサーフェスと、
中空の前記ボディのフロントサーフェスまたはリアサーフェスのいずれか一方となる少なくとも一つのサウンドボードと、
中空の前記ボディのフロントサーフェスとリアサーフェスとを相互に接続する複数のパネルと、を有する。
他の形態の楽器は、前記形態の楽器において、前記楽器の中空の前記ボディへ伸長する少なくとも一つのチューニングされたサウンドポートをさらに有し、前記サウンドポートを通じて音が存在することが可能であり、
チューニングされた前記サウンドポートは、前記楽器の前記ボディに形成された開口部に挿入される中空部材を有し、
前記中空部材は、所定の形状の中央開口部を有し、かつ、チューニングされた前記サウンドポートが挿入される孔から一定の距離を伸長する長さを有している。
他の形態の楽器は、前記形態の楽器において、前記開口部は円形であり、
前記中空部材は、円筒形状を有していて、プラスマイナス20%の範囲内で、前記サウンドポート開口部の直径の1/4と1/2の間と等しい一定の最小距離で前記開口部から伸長している。
他の形態の楽器は、前記形態の楽器において、前記パネルは曲線形状または/および平坦形状を有している。
他の形態の楽器は、前記形態の楽器において、前記楽器は弦楽器である。
他の形態の発明は、前記形態の楽器において、
前記楽器のフロントのサウンドボードに付けられたブリッジサドル組立体をさらに備え、
前記ブリッジサドル組立体は、前記楽器の弦からの振動を電気信号に変換する少なくとも一つの従来のトランスデューサピックアップを含む。
他の形態の楽器は、前記形態の楽器において、少なくとも一つのトランスデューサピックアップは、前記ブリッジサドル組立体のサドルに埋め込まれている。
【0012】
他の形態の弦楽器は、
弦楽器の前面となる第1サウンドボードと、前記弦楽器の背面となる第2サウンドボードと、前記第1サウンドボードと前記第2サウンドボードとの間で伸長する、共通のホローまたはセミホローの内部と、前記第1サウンドボードと前記第2サウンドボードとの間で伸長するデュアルのブリッジおよびサドル組立体と、を備えるボディ有し、
前記デュアルのブリッジおよびサドル組立体は、前記第1サウンドボードに取り付けられた第1ブリッジおよびサドルと、前記第2サウンドボードに取り付けられた第2ブリッジおよびサドルと、当該楽器のホロー内部を通って前記デュアルのブリッジおよびサドル組立体の前記第1ブリッジと前記第2ブリッジとを相互に接続する一組の弦と、を有する。
他の形態の弦楽器は、前記形態の弦楽器において、前記デュアルのブリッジおよびサドル組立体は、さらに、当該楽器のホロー内部を通って前記第1サウンドボードを前記第2サウンドボードに接続する支柱を有する。
他の形態の弦楽器は、前記形態の弦楽器において、前記支柱は、円柱形状、直方体形状、および立方体形状からなる群から選択されるいずれかの形状を有している。
他の形態の弦楽器は、前記形態の弦楽器において、前記第1ブリッジは、前記一組の弦を横切る方向に配列されて前記一組の弦が通される複数の孔を有し、
前記第2ブリッジは、二組の孔を有していて、前記二組の孔に含まれる孔の合計数は、前記第1ブリッジ上に存在する孔の数の二倍であり、
前記一組の弦は、前記第2ブリッジにおける前記二組の孔のうちの片方の組に固定されている。
他の形態の弦楽器は、前記形態の弦楽器において、複数のペグ部材をさらに有し、
前記複数のペグ部材は、前記一組の弦におけるそれぞれの弦を前記第2ブリッジに固定するために、前記第2ブリッジ上の前記二組の孔のうちの一組へ挿入されるように適合されている。
他の形態の弦楽器は、前記形態の弦楽器において、前記第1ブリッジに接続される第1サドルアセンブリと、前記第2ブリッジに接続される第2サドルアセンブリと、をさらに有し、
各サドルアセンブリは、サドルと、従来型の収音装置と、ワイヤーコードおよび出力ジャックと、を有し、前記ワイヤーコードおよび出力ジャックは、前記第1および第2サドルアセンブリにおける前記収音装置を当該楽器に取り付けられた別個のプリアンプに接続するためのものである。
他の形態の弦楽器は、前記形態の弦楽器において、前記第1および第2ブリッジは、前記各サドルアセンブリの前記サドルを受け入れるスロットを含む。
他の形態の弦楽器は、前記形態の弦楽器において、前記第1および第2サドルアセンブリの両方における各サドルが、本体部と、前記本体部から外側へ伸長する細い部分とを有し、前記細い部分が、各ブリッジにおける前記スロットの幅と略一致した幅を有する略直方体の形状を有することで、前記サドルが、前記デュアルのブリッジおよびサドル組立体の第1および第2ブリッジのスロット内に密に嵌合している。
他の形態の弦楽器は、前記形態の弦楽器において、前記第1および第2サドルアセンブリのうちの少なくとも一つは、前記サドルアセンブリの前記本体部内に前記収音装置が組み込まれた一体型ユニットである。
他の形態の弦楽器は、前記形態の弦楽器において、前記第1および第2サドルアセンブリのそれぞれの前記本体部は、前記一組の弦を係合するための頂点を有する円すい型の形状と、前記一組の弦を係合する曲線状の表面を有する半円柱状形状と、からなる群から選択される幾何学的形状を有する。
他の形態の弦楽器は、前記形態の弦楽器において、前記楽器は、さらに、音を放出するサウンドホールと、前記サウンドホールとは別個の少なくとも一つのサウンドポートと、をさらに有し、
前記サウンドポートは、前記フロントサウンドボードまたは前記リアサウンドボードのいずれかに形成されたホールに挿入可能な部材を含み、
前記部材は、所定の寸法の開口を有し、かつ、前記フロントサウンドボードと前記リアサウンドボードとの間の距離の5%から95%に等しい固定距離で前記楽器の前記内部へ伸長する長さを有する。
他の形態の弦楽器は、前記形態の弦楽器において、前記サウンドポート内の前記部材は、円形状の開口部を中央に有するチューブからなり、
前記チューブは、前記フロントサウンドボードとリアサウンドボードとの間の距離の5%と95%との間の長さと等しい一定の距離で前記楽器の前記内部へ伸長する長さを有している。
他の形態の弦楽器は、前記形態の弦楽器において、前記楽器は、さらに、前記フロントサウンドボードまたは前記リアサウンドボードのいずれかに、前記サウンドホールの近くの位置に形成された少なくとも一つのサウンドポートを有する。
他の形態の弦楽器は、前記形態の弦楽器において、前記フロントサウンドボードと前記リアサウンドボードとの間に接続された少なくとも一つのパネルをさらに有し、
前記パネルは、音を前記サウンドポートに向けて一方向に集めるように、前記サウンドポートと前記サウンドホールとの間に延在して配置されている。
他の形態の弦楽器は、前記形態の弦楽器において、複数のパネルをさらに備え、
各パネルは、前記フロントサウンドボードと前記リアサウンドボードとを接続するストレート状のパネルであって、前記フロントまたはリアサウンドボード上のブリッジの比較的近くの位置から前記楽器のネックの近くの位置まで伸長していて、各サウンドポートとサウンドホールとの間に位置している。
他の形態の弦楽器は、前記形態の弦楽器において、各パネルは、前記フロントサウンドボードを前記リアサウンドボードに接続する曲線状のパネルであって、"S"字形の蛇行形状を有している。
他の形態の弦楽器は、前記形態の弦楽器において、各プリアンプは、単一の増幅器に共通接続されているか、または別々の増幅器に接続されている。
他の形態の弦楽器の製作方法は、ホローまたはセミホローの内部と、前記ホローの内部の両側に配置されたフロントおよびリアサウンドボードと、一組の弦と、前記フロントサウンドボードに取り付けられた第1ブリッジ、および前記リアサウンドボードに取り付けられた第2ブリッジを含むデュアルのブリッジおよびサドル組立体と、を有するボディを備える弦楽器の製作方法であって、
前記デュアルのブリッジおよびサドル組立体の第1ブリッジに第1サドルアセンブリを取り付ける工程と、
前記デュアルのブリッジおよびサドル組立体の第2ブリッジに第2サドルアセンブリを取り付ける工程と、
前記楽器のホローの内部を通じて前記第1ブリッジと前記第2ブリッジとを相互に接続して各サウンドボードのそれぞれから音を発生させるように、前記第1サドルアセンブリと前記第2サドルアセンブリとの間で前記弦楽器に前記一組の弦を張る工程と、を有する。
他の形態の弦楽器の製作方法は、他の形態の弦楽器の製作方法において、前記デュアルのブリッジおよびサドル組立体の前記第1ブリッジと前記第2ブリッジとをホローの前記内部を通して相互に接続する支柱をさらに備え、前記支柱は、前記フロントサウンドボードを前記リアサウンドボードに構造的に支持するためのものである。
他の形態の弦楽器の製作方法は、他の形態の弦楽器の製作方法において、サウンドホールと、前記サウンドホールの近傍に位置する少なくとも一つのサウンドポートと、を有し、
前記サウンドポートは、前記フロントサウンドボードまたは前記リアサウンドボードを貫通する中空部材を有する弦楽器の制作方法であって、
前記中空部材の長さは、ギターの共振周波数に比例した所望の周波数範囲に前記サウンドポートをチューニングするために、前記フロントサウンドボードと前記リアサウンドボードとの間の距離の5%から95%の間に等しい一定距離で楽器の前記内部へ伸長するように選択される。
他の形態の弦楽器の製作方法は、他の形態の弦楽器の製作方法において、前記中空部材の長さは、ギターの共振周波数に比例した所望の周波数範囲に前記サウンドポートをチューニングするために、前記フロントサウンドボードと前記リアサウンドボードとの間の距離の20%から80%と等しい一定の距離を前記楽器の前記内部へ伸長するように選択される。
他の形態の弦楽器の製作方法は、他の形態の弦楽器の製作方法において、前記サウンドポートとサウンドホールとの間に、前記サウンドポートに音を集めて放出するためのパネルを設ける工程をさらに含む。
他の形態の弦楽器の製作方法は、他の形態の弦楽器の製作方法において、前記パネルは、ストレート状のパネルまたは蛇行形状を有する曲線状のパネルである。
他の形態の楽器は、ホローまたはセミホローの内部と、フロントサーフェスおよびリアサーフェスと、を有し、中空体の構造的な前記フロントサーフェスまたは構造的な前記リアサーフェスのいずれかとなるサウンドボードを有するか、または、前記フロントサーフェスおよび前記リアサーフェスの両方が前記楽器のサウンドボードとして機能しているボディを有し、
前記ボディは、前記楽器の内部へ伸長する少なくとも一つのチューニングされたサウンドポートを有し、前記楽器はチューニングされた前記サウンドポートを通して音が存在することが可能であり、
チューニングされた前記サウンドポートは、前記楽器に形成された孔に挿入される中空部材を有し、
前記中空部材は、所定の形状の中央開口部を有し、チューニングされた前記サウンドポートが挿入されるホールから一定の距離で伸長する長さを有している楽器。
他の形態の楽器は、前記形態の楽器において、前記楽器は、弦楽器であり、
チューニングされた前記サウンドポートは、少なくとも前記楽器の構造的なフロントまたはリアのサウンドボードに形成された孔に挿入されており、
前記中空部材は、フロントとリアのサウンドボードの間の距離の5%と95%の間の距離と等しい一定の距離で前記楽器の前記内部へ伸長している請求項24に記載の楽器。
他の形態の楽器は、前記形態の楽器において、チューニングされた前記サウンドポートが通って伸長する前記孔は、円形であり、前記中空部材は、円柱または円すい形状を有している。
他の形態の楽器は、前記形態の楽器において、前記中空部材は、プラスマイナス20%の範囲内で、前記ポート開口部の直径の1/4と1/2の間の最小距離と等しい一定の距離で前記サウンドボードから前記楽器の前記内部へ伸長する長さを有する。
他の形態の楽器は、前記形態の楽器において、前記フロントおよびリアのサウンドボードを相互に接続する複数のパネルをさらに有する。
他の形態の楽器は、前記形態の楽器において、前記パネルは平坦または曲線形状を有する。
他の形態の楽器は、前記形態の楽器において、前記パネルは、S字形の形状で、蛇行形状もしくは正弦曲線状の曲線形状を有する。
他の形態の楽器は、前記形態の楽器において、少なくとも、チューニングされた第2のサウンドポートをさらに有し、
チューニングされた各サウンドポートは、少なくとも一つのチューニングされたサウンドポートを通じて音を集めるように、対称的に配置されている。
他の形態の楽器は、前記形態の楽器において、チューニングされたサウンドポート以外に、前記サウンドホールの両側に対称的に配置された前記パネルに第2のサウンドホールを有している。
他の形態の楽器は、前記形態の楽器において、前記パネルは、前記楽器の両方の側から、および、前記側部の端部から対称的に伸長する。
他の形態の楽器は、前記形態の楽器において、デュアルブリッジ構成をさらに備え、
前記デュアルブリッジ構成は、前記正面サウンドボードに取り付けられた第1ブリッジと、前記リアボードに取り付けられた第2ブリッジと、前記第1ブリッジと前記第2ブリッジとを相互に接続する音波構造の支柱と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の他の利点は、以下の本発明の詳細な説明を添付図面と併せて読むことにより明らかになるであろう。
【
図1】本発明のデュアルのブリッジおよびサドル組立体を用いて製作されたアコースティックギターの構造的な正面図である。
【
図3】
図1に示す本発明のギターの構造的な左側面図である。
【
図4】
図1に示すギターの構造的な右側面図である。
【
図5】ヘッドストックの先端から見た
図1のギターの構造的なヘッドストックの端面図である。
【
図6】ギターの下端部に相当するロウアーバウトから見た
図1のギターの構造的なボトムエンドの端面図である。
【
図7】
図1に示される本発明のギターの構造的な斜視図であり、点線により、それぞれのサウンドポートとサウンドホールとの間のパネルの配置を図式的に示し、さらに、点線を用いて、ギターの片側に取り付けられている二つのプリアンプを示すとともに、デュアルのブリッジおよびサドル組立体の各ブリッジに取り付けられた収音装置とそれぞれのプリアンプとの間の接続、および、二つのプリアンプのそれぞれと増幅器との間の外部接続を示している。
【
図8A】
図7に示すライン8A-8Aに沿った本発明のギターの構造的な断面図である。
【
図8B】
図7に示すギターをリア側から見た構造的分解図であり、二等分したギターと、ギターの各半分から離間させたデュアルのブリッジおよびサドル組立体とを示し、さらに、ギターの各半分のそれぞれの逆側にあるサウンドポートと、各サウンドポートに音を集めて放出するために各サウンドポートとサウンドホールとの間に設けた直線状のパネルと、を示している。
【
図9A】
図8Bに示す本発明のギターの別の構造的な分解図であって、
図8Bに示す本発明のパネルの別の形態として、直線状ではなくS字形状を有するパネルを示す。
【
図9B】
図8Bおよび
図9Aにおけるデュアルのブリッジおよびサドル組立体の構造的な分解斜視図であり、デュアルのブリッジおよびサドル組立体の各ブリッジ間でギターの内部を通るように一組の弦を張った状態を示すとともに、本発明のデュアルのブリッジおよびサドル組立体の各ブリッジにおける、ギター弦が掛けられたサドルの配置および形状を示している。
【
図10】
図9Bのデュアルのブリッジおよびサドル組立体への取り付けに適合した一つのサドル組立体の好ましい形態を示す斜視図であり、サドルと、サドルに埋め込まれた収音装置と、を含む一つの一体化ユニットを形成したサドル組立体を示している。
【
図11】
図10に示されていた一体化されたサドルと、埋め込まれた収音装置とを示す図であり、
図10のライン11-11に沿った断面図である。
【
図12】
図8Bに示す本発明のデュアルのブリッジおよびサドル組立体の他の立体分解図であり、ギターのリアサウンドボードに取り付けられた第2ブリッジに対して一組のギター用弦に含まれるそれぞれの弦を固定する方法を示し、かつ、リアサウンドボードの第2ブリッジとフロントサウンドボードの第1ブリッジとを相互に接続するように一組のギター弦を張る方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
全ての図面は本発明の好ましい形態に関するものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、本発明における選択されたバージョンを強調するものである。
【0015】
本発明の楽器は、本発明の楽器の好ましい形態を表す、
図1~9全体で示されるアコースティックギター10によって示されている。アコースティックギター10は、
図1に示すフロントサウンドボード12と、
図2に示すリアサウンドボード16と、
図8A、8B、9A、9B、12において詳細に示されるデュアルのブリッジおよびサドル組立体14と、を含むボディ11を有している。デュアルのブリッジおよびサドル組立体16は、ボディ11のホローまたはセミホローの内部18を通って、ギター10のフロントサウンドボード12からリアサウンドボード14にかけて伸長している。ギター10は、
図3、4、6に示すように、フロントサウンドボード12とリアサウンドボード14とを接続してギター10のボディを完全に囲む側面13を有している。
【0016】
図8Aに示すデュアルのブリッジおよびサドル組立体16は、フロントサウンドボード12とリアサウンドボード14との間で伸長していて、フロントサウンドボード12に取り付けられた第1ブリッジ20と、リアサウンドボード14に取り付けられた第2ブリッジ22と、第1ブリッジ20と第2ブリッジ22とを相互に接続する支柱23、24と、
図9Bに示すように第1ブリッジ20のスロット34に挿入可能なサドル組立体30と、第2ブリッジ22のスロット40に挿入可能なサドル組立体31と、を有している。
【0017】
あつらえの、または延長された長さの一組の弦33は、ギター10の先端となるヘッドストック19から、ギター10のネック17に沿って、フロントサウンドボード12上に取り付けられた第1ブリッジ20に伸長し、第1ブリッジ20から、ギター10のボディ11内のホールの内部18を通って、リアサウンドボード14に取り付けられた第2ブリッジ22まで伸長している。一組のギター弦33におけるそれぞれの弦の一方端は、ヘッドストック19のチューニングノブ15に接続され、一組の弦33におけるそれぞれの弦の他端は、第2ブリッジ22にペグで固定されており、これにより、一組の弦33は、ギター10のホールの内部18を通って第1ブリッジ20と第2ブリッジ22とを相互に接続している。一組の弦33は、好ましくは、リアサウンドボード14上の第2ブリッジ22にペグで固定された位置を始点として、第2ブリッジ22に挿入されたサドル48を超えて、そして第1ブリッジ20に挿入されたサドル44を超えて第1ブリッジ20まで張られ、第1ブリッジ20からは、ギター10のネック18に沿って、チューニングノブ15まで伸びるように張られる。詳細については、
図9Bおよび12を用いて後述する。
【0018】
デュアルのブリッジおよびサドル組立体16の支柱23、24は、フロントまたはリアのサウンドボード12、14がギター弦33の張りによる過大な張力によって崩壊しないように、ギター10の上側のサウンドボード12をリアサウンドボード14に支持して固定するように機能する。しかし、支柱23、24の使用は好ましいが、本発明にとって重大ではないことを理解されたい。その理由は、デュアルのブリッジおよびサドル組立体16の支柱23、24とは独立した別の支持部材をフロントサウンドボード12とリアサウンドボード14との間に用いることにより、フロントサウンドボード12とリアサウンドボード14とがお互いに対して相対的に崩壊することを防ぐための構造的な支えを得ることが可能であるからである。別の支持部材としては、例えば、後述するように、サウンドポート70、72の使用に伴って組み込まれたパネル80、82を用いることができる。デュアルのブリッジおよびサドル組立体16の支柱23、24は、
図8Aに示すように、フロントサウンドボード12とリアサウンドボード14との間に傾斜角を有して配置されていることが好ましく、上側のサウンドボード12の位置が、リアサウンドボード14の位置に対して、ギター10のネック17に向かって僅かに前方にあることが好ましい。この配置により、ギター10のチューニングの際に一組のギター弦33の張力を幾分弱めることができる。支柱23、24は、所望の素材、好ましくは、木材、または木材の代わりとなる組成物によって造ることが可能であり、その形状は、例えば、直方体形状、立方体形状、円柱形状を含む所望の幾何学的形状とすることが可能である。
【0019】
図1および
図9Bに示すデュアルのブリッジおよびサドル組立体16の第1ブリッジ20は、サドルアセンブリ30が挿入されるスロット34を有し、さらに、ギター弦33を通して張るための複数の開口部35を含んでいる。開口部35の数は、ギター弦33の数に対応しており、例えば、ギター10が6本のギター弦33を有するときには、第1ブリッジ20は6つの開口部35を有している。開口部35は、略水平な平面上において、一組のギター弦33を横切る方向に配列される。第1ブリッジ20のスロット34は、
図1に示すように、水平方向に対して鋭角をなすように配置されることが望ましく、これにより、ギターの特定の音調の調整を容易、かつ/または可能にする。第1ブリッジ20の形状および寸法は、デュアルのブリッジおよびサドル組立体16の第2ブリッジ22の形状および寸法と、幅方向の寸法を除いて一致していてもよい。
【0020】
第1ブリッジ20は一組の開口部35のみを収容するのに対し、第2ブリッジ22は、ギター弦33用の二組の開口部38、39を収容するため、第2ブリッジ22は、
図2に示すように、第1ブリッジ20の幅よりも広い幅dを有することが好ましい。第2ブリッジ22における一組の開口部39は、各ギター弦33の一方端をペグでしっかりと固定するために使用される。二組の開口部38、39は、第2ブリッジ22のスロット40の両側において互いに平行に配置されるべきであり、合計で、第1ブリッジ20に存在する弦開口部35の数の二倍の開口部を含むべきである。
【0021】
図9Bおよび
図12に示すように、弦33は、ペグ部材42を用いて第2ブリッジ22の開口部39に固定されている。ペグ部材42は、それぞれの弦33の一端を係合して開口部39へ挿入され、これにより、各ペグ部材42は開口部39内でそれぞれの弦33を係合して、弦の係合された端部を開口部39の一つへ強固に固定している。その後、
図9Bおよび
図12に示すように、ギター弦33は、開口部39に固定された端部から、第2ブリッジ22における対応する開口部38を通過して、サドルアセンブリ31のサドル48を超えるように張られ、そして、第1ブリッジ20の開口部35を通過して、そこからサドルアセンブリ31のサドル44上に掛けられて、ギター10のネック17に沿って、ギター10の先端19におけるチューニングノブ15まで張られる。
【0022】
サドルアセンブリ30は、デュアルのブリッジおよびサドル組立体16の第1ブリッジ20におけるスロット34へ挿入可能であり、
図9Bに示すように、サドル44と、ピックアップ45と、ワイヤーコード46と、出力ジャック47とを含んでいる。ピックアップ45は、従来の素子であり、例えば、ワイヤーコイル内に設けた圧電シールド磁気素子などの収音タイプからなる。ワイヤーコード46から伸びるジャック47は、
図7に示すように、ギター10の側面13に取り付けられたプリアンプ60にピックアップ45を接続できるように適合されている。
【0023】
同様に、サドルアセンブリ31は、デュアルのブリッジおよびサドル組立体16の第2ブリッジ22におけるスロット40に挿入可能であり、サドル48と、ピックアップ50と、ワイヤーコード51と、出力ジャック52とを含んでいる。出力ジャック52は、ギター10の同じ側面13に取り付け可能な別のプリアンプ52にピックアップ50を接続することができるように、ワイヤーコード51から伸長している。二つのプリアンプ60、62は、
図7に示すように、ギター10の側面13に取り付けられた出力ジャック63、64通してアンプ65に接続されていてもよい。この際は、例えば、従来のY接続66を用いて接続してもよく、もしくは、その代わりに、各プリアンプからの音を個別に制御するために、それぞれのプリアンプ60、62を別個のアンプ(図示なし)に接続してもよい。
【0024】
各サドルアセンブリ30、31は、サドル44、48と、ピックアップ45、50とをそれぞれ有している。サドル44、48は、フロントおよびリアのサウンドボード12、14上にある第1および第2ブリッジ20、22上で一組のギター弦33をそれぞれ支持するように機能している。各サドル44、48は、サドルアセンブリ30、31において各ピックアップ45、50から別個に独立した部品であってもよい。もしくは、その代わりに、一方または両方のサドルアセンブリ30、31がサドルアセンブリ30、31と一体化されたピックアップを有することで、サドルとピックアップの両方を組み込んだ一体化ユニットを形成していてもよい。本発明のギターでは、サドルアセンブリ31のピックアップ50は、サドル48内に形成された開口部57への挿入に適合しており、これにより一体化したユニットが形成される。一方で、サドルアセンブリ30のピックアップ45は、サドル44と一体化して一つのユニットを形成していてもよいが、そうでなくてもよい。したがって、
図9Bに示すように、サドルアセンブリ30のピックアップデバイス45は独立した部品であるため、ピックアップ45を第1ブリッジ20のスロット34に単独で挿入して、その後に、ピックアップ45の上からサドル44をスロット34に挿入しなければならないが、それに対し、ピックアップ50と結合されたサドル48は、一体化されたユニットとして第2ブリッジ22のスロット40に挿入される。
【0025】
一つまたは両方のサドルアセンブリ30、31が、サドルとピックアップとの両方を含む一体化したユニットを形成するように製作されているどうかに拘わらず、各サドルアセンブリ30、31におけるサドルコンポーネント44、48は、本体部53、55と、本体部53、55から外側に伸長する細い部分54と、を含む構成を有するべきである。細い伸長部分54は、略直方体の形状を有しているべきである。これは、各サドル44、48の断面をT字状とするためであり、これにより細い伸長部分54が”T”字の垂直側となり、本体部53、55が”T”字の水平側となる。さらに、各サドル44、48から伸長する細い部分54は、その幅が、第1および第2ブリッジ20、22のそれぞれのスロット34、40の幅と一致しているべきである。かつ、細い部分54は、細い部分54の伸長する始点である本体部53、55の幅よりも、はるかに細い幅を有しているべきである。サドル44の本体部53は、やや尖った頂点56へ伸長する円すい形状を有していてもよく、その頂点56は、フロントサウンドボード12においてギター弦33を係合するように構成される。その一方で、サドル48は、リアサウンドボード14においてギター弦33を係合するために、丸い半円柱形状の構成を単純に有していてもよい。
【0026】
本発明のギター10は少なくとも一つのサウンドポートを有しているが、
図1、7、8Aに示すように、二つのサウンドポート70、72を有すること好ましく、両方のサウンドポート71、72は、フロントサウンドボード12上で、ギター10のサウンドホール13の両側に形成されることが好ましい。サウンドホール13は、ギター10のボディ11に、好ましくはフロントサウンドボード12に位置している。サウンドホール13は、ギター弦33の下であって、かつ、各サウンドポート70、72の間で対称的に配置されることが好ましい。各サウンドポート70、72は、所望の形状を有する部材77、78を有していることが好ましい。サウンドボードのいずれか、好ましくはフロントサウンドボードには、部材77、78を収容できるように作られた開口部が形成されており、部材77、78の形状は、開口部への挿入に適合した中空のチューブ形状を有していることが好ましい。各部材77、78は、ギター10のフロントサウンドボード12からギターの中空内部18内の位置まで伸長していて、その長さは、ギターのフロントサウンドボード12とリアサウンドボード14との間の距離の5%から95%までの長さに等しいことが望ましい。また、部材77、78は、各部材77、78を通って伸長する開口部73、74を有しているべきである。開口部73、74は、所望の形状およびサイズを有していて、好ましくは円形であり、これにより、各部材77、78が放物線状もしくは円筒状の形状を形成していることが好ましい。開口部73、74のサイズと、ギター10の内部18内における各サウンドポート70、72の伸長長さと、の一方または両方を変化させることにより、ギターの共振周波数に比例する所望の周波数範囲に、サウンドポート70、72を個別にチューニングすることができる。最適条件は、サウンドポート70、72が、各部材77、78と同一サイズの円形の開口部73、74を有していて、各部材77、78が、フロントサウンドボード12からリアサウンドボード14までの距離の20%から80%までの長さに相当する長さを有することであり、これにより大多数のアコースティックギターのチューニング性が向上する。しかしながら、各サウンドポート70、72の各部材77、78の長さやサイズ寸法は同一である必要はない。
【0027】
各サウンドポート70、72は、フロントサウンドボード12とリアサウンドボード14との間に接続された、幾何学的直線形状のパネル80、82を伴うことが望ましい。パネル80、82は、各サウンドポート70、72とサウンドホール13との間に配置され、ギター10のロウアーバウトの比較的近傍の位置から、ギター10のネック17付近の位置まで伸長するか、もしくはギター10のネック17の付近において直線状の各パネル80、82がお互いに交差するように伸長している。これにより、音をサウンドポート80、82に集めて放出することが可能となる。なお、二枚のパネル80、82のみが示されているが、追加のパネルを用いてギターボディ11の内部18に音響迷路を形成してもよい。
【0028】
図9に、直線状のパネル80、82の使用の代替となるものを示しており、ここでは、フロントサウンドボード12とリアサウンドボード14との間に接続された各パネルが、"S"字状の蛇行した曲線形状を有している。
【0029】
以上説明したように、パネル80、82がフロントサウンドボード12とリアサウンドボード14との間に接続されているため、パネル80、82は、支柱23とともに使用された場合であっても支柱23を使用しない場合であっても、弦の張力が非常に強い際に、フロントサウンドボードおよび/またはリアサウンドボードが崩壊するのを防ぐための構造的な支えとして機能する。