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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20220629BHJP
   A61F 13/515 20060101ALI20220629BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A61F13/511 100
A61F13/515
A61F13/514 310
A61F13/514 321
A61F13/514 330
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020083982
(22)【出願日】2020-05-12
(65)【公開番号】P2021177882
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2020-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福元 淳生
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特許第5291233(JP,B1)
【文献】特開2019-208803(JP,A)
【文献】特開2005-237768(JP,A)
【文献】特開2005-177160(JP,A)
【文献】特開2004-216172(JP,A)
【文献】特開2017-064247(JP,A)
【文献】特開2012-245133(JP,A)
【文献】特開2005-218694(JP,A)
【文献】特開2006-181193(JP,A)
【文献】国際公開第2007/052428(WO,A1)
【文献】特開2011-050772(JP,A)
【文献】特開2019-025138(JP,A)
【文献】特開2012-070950(JP,A)
【文献】特開2011-056029(JP,A)
【文献】特表2017-526462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
A61L 15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向と幅方向を有し、トップシートとバックシートとこれらの間に配された吸収体とを有する吸収性物品であって、
前記トップシートは不織布から構成され、前記不織布がエンボスされた特定領域を有し、
前記特定領域は、吸収性物品の幅方向の中央部に、幅方向の長さが、吸収性物品の前後方向の中間部の最も幅狭な部分の幅方向の長さの1%以上20%以下となるように形成されるとともに、前記吸収体と重なる部分には形成されておらず、前記吸収体の前側端よりも前側および後側端よりも後側に形成されており、手触りに基づき、前記吸収性物品の前記前後方向の両端部を掴む目安となることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前後方向と幅方向を有し、トップシートとバックシートとこれらの間に配された吸収体とを有する吸収性物品であって、
前記トップシートは不織布から構成され、接着剤が面状に塗布された特定領域を有し、
前記特定領域は、吸収性物品の幅方向の中央部に、幅方向の長さが、吸収性物品の前後方向の中間部の最も幅狭な部分の幅方向の長さの1%以上20%以下となるように形成されるとともに、前記吸収体と重なる部分には形成されておらず、前記吸収体の前側端よりも前側および後側端よりも後側に形成されており、手触りに基づき、前記吸収性物品の前記前後方向の両端部を掴む目安となることを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
前後方向と幅方向を有し、トップシートとバックシートとこれらの間に配された吸収体とを有する吸収性物品であって、
前記トップシートは不織布から構成され、前記不織布が起毛加工された特定領域を有し、
前記特定領域は、吸収性物品の幅方向の中央部に、幅方向の長さが、吸収性物品の前後方向の中間部の最も幅狭な部分の幅方向の長さの1%以上20%以下となるように形成されるとともに、前記吸収体と重なる部分には形成されておらず、前記吸収体の前側端よりも前側および後側端よりも後側に形成されており、手触りに基づき、前記吸収性物品の前記前後方向の両端部を掴む目安となることを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
前記トップシートは、前記特定領域において、前記不織布が熱エンボスされてフィルム化されている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記トップシートは、前記特定領域において、前記バックシートとともにエンボスされている請求項1または4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記バックシートは外面側が不織布から構成され、前記不織布がエンボスされた第2特定領域を有し、
前記第2特定領域は、吸収性物品の幅方向の中央部に、幅方向の長さが、吸収性物品の前後方向の中間部の最も幅狭な部分の幅方向の長さの1%以上20%以下となるように形成されている請求項1~のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記バックシートは外面側が不織布から構成され、接着剤が面状に塗布された第2特定領域を有し、
前記第2特定領域は、吸収性物品の幅方向の中央部に、幅方向の長さが、吸収性物品の前後方向の中間部の最も幅狭な部分の幅方向の長さの1%以上20%以下となるように形成されている請求項1~のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記バックシートは外面側が不織布から構成され、前記不織布が起毛加工された第2特定領域を有し、
前記第2特定領域は、吸収性物品の幅方向の中央部に、幅方向の長さが、吸収性物品の前後方向の中間部の最も幅狭な部分の幅方向の長さの1%以上20%以下となるように形成されている請求項1~のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記バックシートはフィルム層の外面側に不織布層が積層されて構成され、前記フィルム層と前記不織布層の間に接着剤が面状に塗布されて前記第2特定領域が形成されている請求項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつや尿パッド等の吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつや尿パッド等の吸収性物品は、使用の際に尿等の排泄物の漏れが起こらないように、着用者の股間の適切な位置に装着することが求められる。例えばテープタイプの使い捨ておむつや、おむつの肌面側に載置して併用される尿パッドでは、装着の際に着用者の股間に対してずれた位置に設置されることが起こり得る。これに対して、特許文献1、2には、吸収性物品の肌面側から視認可能に設けられた表示部や目盛線を有する吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-24418号公報
【文献】特開2019-80672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に開示された吸収性物品では、表示部や目盛線を視認することにより吸収性物品の位置を把握することができるため、吸収性物品を着用者の股間の適切な位置に装着することができる。しかし、吸収性物品を装着する際の着用者の体勢や周囲の明るさ等によっては、吸収性物品の肌面側から表示部や目盛線を視認することが難しい場合がある。そのため、目視によらず吸収性物品の位置を把握できればより好ましい。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、装着の際、目視によらず幅方向の位置を検知することができる吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決することができた本発明の吸収性物品とは、前後方向と幅方向を有し、トップシートとバックシートとこれらの間に配された吸収体とを有する吸収性物品であって、トップシートは不織布から構成され、前記不織布がエンボスされた特定領域を有し、特定領域は、吸収性物品の幅方向の中央部に、幅方向の長さが、吸収性物品の前後方向の中間部の最も幅狭な部分の幅方向の長さの1%以上20%以下となるように形成されるとともに、少なくとも吸収体の前側端よりも前側および/または後側端よりも後側に形成されているところに特徴を有する。特定領域は、トップシートを構成する不織布に接着剤が面状に塗布されることにより形成されてもよく、トップシートを構成する不織布が起毛加工されることにより形成されてもよい。
【0007】
吸収性物品は、装着の際、前後方向の両端部を手で掴んで、前後方向に伸展させることで、吸収性物品を平面状に広げることができる。そして、この状態で吸収性物品を着用者の股間にセットすることで、吸収性物品を着用者の股間に好適にフィットさせることができる。このとき、吸収性物品は外面側よりも肌面側の方が広がるように前後方向に伸ばすことで、トップシートに歪みやしわが生じにくくなることから、吸収性物品の前後方向の両端部を掴む手は吸収性物品の外面側よりも肌面側の方がより密着して接しやすくなる。本発明の吸収性物品は、トップシートの前後方向の端部(すなわち、吸収体の前側端よりも前側および/または後側端よりも後側の部分)の幅方向の中央部に上記のように特定領域が設けられているため、吸収性物品の前後方向の両端部を手で掴んだ際に、特定領域の手触りに基づき、吸収性物品の幅方向の中央部を検知することができる。そのため、吸収性物品を装着する際、吸収性物品の幅方向の位置を適切に調整することが容易になる。
【0008】
特定領域がエンボスにより形成される場合、トップシートの不織布は、特定領域において熱エンボスされてフィルム化されていてもよい。これにより、吸収性物品の前後方向の両端部を手で掴んだときに特定領域を検知しやすくなる。同様の観点から、トップシートは、特定領域において、バックシートとともにエンボスされていてもよい。
【0009】
特定領域は、吸収体と重なる部分には形成されていない、または、吸収体の前側端よりも前側および/または後側端よりも後側に形成されるとともに、吸収体と重なる部分の前後方向の50%以下の範囲に形成されていることが好ましい。このようにトップシートに特定領域が設けられることにより、吸収性物品を着用した際に特定領域が着用者の肌に触れにくくなり、吸収性物品の着用感を良好にすることができる。
【0010】
バックシートは外面側が不織布から構成され、前記不織布がエンボスされた第2特定領域を有していてもよい。この場合、第2特定領域は、吸収性物品の幅方向の中央部に、幅方向の長さが、吸収性物品の前後方向の中間部の最も幅狭な部分の幅方向の長さの1%以上20%以下となるように形成されていることが好ましい。第2特定領域は、バックシートを構成する不織布に接着剤が面状に塗布されることにより形成されてもよく、バックシートを構成する不織布が起毛加工されることにより形成されてもよい。このようにバックシートに第2特定領域が設けられることにより、使用者等が吸収性物品の外面側を手で触れた際、バックシートの外面側の表面の手触りの違いからも吸収性物品の幅方向の中央部を検知できるようになる。
【0011】
第2特定領域が接着剤を塗布することにより形成される場合、バックシートはフィルム層の外面側に不織布層が積層されて構成され、フィルム層と不織布層の間に接着剤が面状に塗布されて第2特定領域が形成されていることが好ましい。これにより、バックシートの外面側の表面が第2特定領域において盛り上がって形成されやすくなり、使用者等がバックシートを手で触ったときに第2特定領域を検知しやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の吸収性物品は、トップシートの前後方向の端部の幅方向の中央部に特定領域が設けられているため、装着の際に吸収性物品の前後方向の両端部を手で掴むと、特定領域の手触りに基づき、吸収性物品の幅方向の中央部を検知することができる。そのため、吸収性物品を装着する際、吸収性物品の幅方向の位置を適切に調整することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の吸収性物品の一例を表し、吸収性物品を肌面側から見た平面図を表す。
図2図1に示した吸収性物品のII-II断面図を表す。
図3】本発明の吸収性物品の他の一例を表し、吸収性物品を肌面側から見た平面図を表す。
図4図3に示した吸収性物品を外面側から見た平面図を表す。
図5図3および図4に示した吸収性物品のV-V断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の吸収性物品は、トップシートとバックシートとこれらの間に設けられた吸収体を有する。本発明の吸収性物品は、使い捨ておむつや尿パッドに好適に適用できる。
【0015】
吸収性物品は、前後方向と幅方向とを有する。前後方向とは、吸収性物品を着用者が着用した際、着用者の股間の前後方向に延びる方向を意味する。幅方向とは、吸収性物品と同一面上にあり前後方向と直交する方向を意味し、吸収性物品を着用した際の着用者の左右方向に相当する。また、前後方向と幅方向から形成される面に対して垂直方向を厚み方向とする。さらに、吸収性物品を着用者が着用した際に、着用者に肌に向かう側を肌面側とし、その反対側を外面側とする。
【0016】
吸収性物品の形状は特に限定されない。吸収性物品が尿パッドである場合、吸収性物品の形状としては、略長方形、長円形、砂時計形、羽子板形等が示される。吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、例えば、前側部と後側部とこれらの間に位置し吸収体が備えられた中間部とから構成される。使い捨ておむつとしては、後側部の幅方向の両側にファスニングテープが設けられ、当該ファスニングテープにより着用時にパンツ形状に形成するテープタイプの使い捨ておむつが、本発明の吸収性物品に好適に適用される。
【0017】
トップシートは吸収体の肌面側に配されるシートであり、吸収性物品の着用の際に着用者の肌に面するように設けられる。トップシートは不織布から構成され、液透過性であることが好ましい。トップシートとしては、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布や;ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布であって、疎水性繊維の表面が界面活性剤により親水化されたもの等を用いることができる。
【0018】
バックシートは吸収体の外面側に配されるシートであり、吸収性物品の着用の際に着用者とは反対側に位置するように設けられる。バックシートは、液不透過性であることが好ましい。バックシートとしては、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布や、プラスチックフィルム等を用いることができる。またバックシートとして不織布とフィルムとの積層体を用いてもよく、例えばフィルム層の外面側に不織布層が設けられた積層体を用いることができる。
【0019】
トップシートやバックシートを構成する不織布としては、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、SMS不織布等を用いることができる。
【0020】
トップシートとバックシートは、吸収体の前側端よりも前方および後側端よりも後方に延在するように設けられることが好ましい。トップシートの幅方向の両側にサイドシートが設けられる場合は、サイドシートも吸収体の前側端よりも前方および後側端よりも後方に延在するように設けられることが好ましい。トップシートまたはサイドシートは、吸収体の幅方向の両側端よりも幅方向の外方に延在するように設けられることが好ましく、バックシートも、吸収体の幅方向の両側端よりも幅方向の外方に延在するように設けられることが好ましい。
【0021】
吸収体は、尿等の排泄物を吸収できる吸収性材料を含むものであれば特に限定されない。吸収体としては、例えば、吸収性材料を所定形状に成形した成形体を用いたり、あるいは当該成形体を紙シート(例えば、ティッシュペーパーや薄葉紙)や液透過性不織布シート等の被覆シートで覆ったものを用いることができる。吸収性材料としては、例えば、パルプ繊維等の親水性繊維や、ポリアクリル酸系、ポリアスパラギン酸系、セルロース系、デンプン・アクリロニトリル系等の吸水性樹脂等が挙げられる。また、吸水性材料には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維や、PET等のポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の熱融着性繊維が含まれてもよい。これらの熱融着性繊維は、尿等との親和性を高めるために、界面活性剤等により親水化処理がされていてもよい。
【0022】
吸収性材料は、尿等の吸収速度を高める点から、親水性繊維を含むことが好ましい。また、吸収容量を高める点から、吸収性材料は吸水性樹脂を含むことが好ましい。従って、吸収体は親水性繊維(特にパルプ繊維)と吸水性樹脂を含むことが好ましい。この場合、例えば、親水性繊維の集合体に吸水性樹脂を混合または散布したものを用いることが好ましい。
【0023】
吸収体は、シート状吸収体であってもよい。シート状吸収体としては、不織布間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないように形成されたものが挙げられる。このように形成されたシート状吸収体は、不織布間に吸水性樹脂を有するため、高い吸収容量を実現できる。また、シート状吸収体は不織布間にパルプ繊維を有しないため、嵩張らず薄型に形成することができる。
【0024】
シート状吸収体は、吸収性材料として吸水性繊維を用いてもよい。この場合もまた、シート状吸収体は嵩張らず薄型に形成される。吸水性繊維としては、プロトン化または塩形成したカルボキシル基を含有する繊維が挙げられる。例えば、アクリル繊維を加水分解して、アクリル繊維に含まれるニトリル基をカルボキシル基に変換することにより、吸水性繊維を得ることができる。このとき、吸水性繊維に含まれるカルボキシル基は、アルカリ金属塩またはアンモニア塩を形成していることが好ましい。また吸水性繊維は、親水性繊維をアクリル酸に浸漬し、繊維表面でアクリル酸を析出させることにより製造することができる。
【0025】
吸収体の形状(平面形状)は特に限定されない。吸収体の形状は、用途に応じて適宜決定すればよく、例えば、略長方形、砂時計形、羽子板形等が挙げられる。
【0026】
吸収性物品の肌面側には、幅方向の両側に立ち上がりフラップが設けられることが好ましい。立ち上がりフラップを設けることにより、尿等の横漏れが防止される。立ち上がりフラップは、トップシートの幅方向の両側に、前後方向に延在するサイドシートを接合し、サイドシートの幅方向の内方部分に弾性部材を設けることにより形成することができる。このようにサイドシートと弾性部材を設けることにより、弾性部材の収縮力によりサイドシートの幅方向の内方部分が着用者の肌に向かって立ち上がり、立ち上がりフラップが形成される。立ち上がりフラップまたはサイドシートは、液不透過性のプラスチックフィルムや液不透過性の不織布等により構成されることが好ましい。
【0027】
トップシートには、吸収性物品の幅方向の中央部であって、少なくとも吸収体の前側端よりも前側および/または後側端よりも後側の部分に特定領域が設けられる。特定領域は、使用者や介護者が吸収性物品を手で触れた際、手触りの違いから、吸収性物品の幅方向の中央部を検知できるようにするために設けられる。
【0028】
特定領域は様々な態様で設けることができ、例えば、トップシートを構成する不織布にエンボスを施したり、起毛加工を施すことにより特定領域を設けることができる。いずれの場合も、特定領域はトップシートの肌面側の表面が加工されることにより形成され、これにより、トップシートは特定領域とそれ以外の部分とで肌面側の表面の触感が異なるものとなる。不織布がエンボスされることにより形成される特定領域は、不織布表面に凹凸が形成されたり不織布がフィルム化されることにより、それ以外の領域と手触りが異なるものとなる。不織布が起毛加工されることにより形成される特定領域は、不織布表面が毛羽立って形成されることにより、それ以外の領域と手触りが異なるものとなる。不織布のエンボスは、不織布の構成繊維の融点未満で行ってもよく、不織布の構成繊維の融点以上で行う熱エンボスであってもよい。
【0029】
特定領域は、トップシートに接着剤を面状に塗布することにより形成することもできる。この場合、トップシートに塗布された接着剤が不織布の繊維間隙に入り込んだり、不織布上に接着剤層が形成されることによって、トップシートの特定領域における剛性を高めることができ、これにより、トップシートは特定領域とそれ以外の部分とで肌面側の表面の触感が異なるものとなる。この場合、トップシートは、特定領域における剛性がそれ以外の領域よりも高くなることが好ましい。トップシートの剛性は、例えばカンチレバー法により剛軟度を測定することにより求めることができる。
【0030】
特定領域は、吸収性物品の幅方向の中央部に、幅方向の長さが、吸収性物品の前後方向の中間部の最も幅狭な部分の幅方向の長さの1%以上20%以下となるように形成されるとともに、少なくとも吸収体の前側端よりも前側および/または後側端よりも後側に形成される。このように特定領域が設けられていれば、吸収性物品の装着の際、特定領域を目安にして吸収性物品の幅方向の中央部を検知することができ、吸収性物品の幅方向の位置を適切に調整することが容易になる。
【0031】
これについて詳しく説明すると、吸収性物品は装着の際、前後方向の両端部を手で掴んで、前後方向に伸展させることで、吸収性物品を平面状に広げることができる。そして、この状態で吸収性物品を着用者の股間にセットすることで、吸収性物品を着用者の股間に好適にフィットさせることができる。吸収性物品を補助的な尿パッドとして使用し、アウターとなる使い捨ておむつの肌面側に載置する場合も同様に、吸収性物品を平面状に広げて使い捨ておむつの肌面側にセットすることで、吸収性物品を着用者の股間に好適にフィットさせることができる。このとき、吸収性物品は外面側よりも肌面側の方が広がるように前後方向に伸ばすことで、トップシートに歪みやしわが生じにくくなることから、吸収性物品の前後方向の両端部を掴む手は吸収性物品の外面側よりも肌面側の方がより密着して接しやすくなる。そのため、特定領域をトップシートの前後方向の端部(すなわち、吸収体の前側端よりも前側および/または後側端よりも後側の部分)に設けることにより、吸収性物品の装着の際、特定領域に基づき吸収性物品の幅方向の中央部を検知しやすくなる。
【0032】
吸収性物品の幅方向の中央部とは、吸収性物品の幅方向の中心線(前後方向に延びる中心線)を含む部分を意味し、特定領域は吸収性物品の幅方向の中心線を含んで形成される。特定領域の幅方向の長さは、吸収性物品の前後方向の中間部の最も幅狭な部分の幅方向の長さの1%以上20%以下である。従って、吸収性物品の幅方向の中央部よりも幅方向の外方には、特定領域は設けられない。特定領域の幅方向の長さは、吸収性物品の前後方向の中間部の最も幅狭な部分の幅方向の長さの2%以上が好ましく、また15%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましい。特定領域は、吸収性物品の幅方向の中心線に対して略対称に設けられることが好ましい。
【0033】
吸収性物品の前後方向の中間部とは、例えば、吸収性物品の相対位置として前側端を0%とし後側端を100%したとき、25%~75%の範囲を中間部とすることができる。あるいは、吸収性物品が砂時計形の形状を有する場合は、砂時計形状のくびれ部分を含む前後方向の範囲を中間部としてもよい。この場合、吸収性物品は中間部が前側部と後側部よりも幅狭に形成されることとなるが、前側部と中間部と後側部は、例えば次のように区分することができる。すなわち、前側部の最も幅広な部分の幅方向の長さをWFとし、後側部の最も幅広な部分の幅方向の長さをWRとし、中間部の最も幅狭な部分の幅方向の長さをWMとしたとき、前側部と中間部の境界は幅方向の長さが(WF+WM)/2となる箇所とし、後側部と中間部の境界は幅方向の長さが(WR+WM)/2となる箇所とすることができる。特定領域の幅方向の長さは、吸収性物品の中間部の最も幅狭な部分の幅方向の長さに基づき規定されるが、例えば、吸収性物品が略長方形の形状を有する場合は、略長方形の幅方向の長さが、吸収性物品の中間部の最も幅狭な部分の幅方向の長さとなる。
【0034】
特定領域は、前後方向に対して、少なくとも吸収体の前側端よりも前側および/または後側端よりも後側に設けられ、好ましくは、少なくとも吸収体の前側端よりも前側および後側端よりも後側に設けられる。特定領域は、吸収体の前側端よりも前側および/または後側端よりも後側の部分のみに設けられてもよく、吸収体と重なる部分にも設けられてもよい。なお、吸収体と重なる部分に特定領域が設けられる場合も、特定領域は吸収性物品の幅方向の中央部に上記の幅方向の長さで設けられることが好ましい。
【0035】
特定領域は、前後方向に帯状に延びるように設けられることが好ましい。特定領域はまた、吸収体の前側端よりも前側および/または後側端よりも後側の部分を前後方向に縦断するように設けられることが好ましい。特定領域が不織布のエンボスによって形成される場合は、特定領域の全体がエンボスにより押圧されていることが好ましい。特定領域は、前後方向に対して連続的に設けられていてもよく、断続的に設けられていてもよいが、少なくとも吸収体の前側端よりも前側および/または後側端よりも後側の部分では連続的に設けられることが好ましい。
【0036】
特定領域は、吸収体と重なる部分にも形成されてもよく、この場合、特定領域は、吸収体の前側端よりも前側の部分から吸収体と重なる部分にかけて連続していることが好ましく、吸収体の後側端よりも後方の部分から吸収体と重なる部分にかけて連続していることが好ましい。なお特定領域は、吸収体と重なる部分にはあまり形成されないことが好ましく、これにより、吸収性物品を着用した際に特定領域が着用者の肌に触れにくくなり、吸収性物品の着用感を良好にすることができる。従って、特定領域は、吸収体と重なる部分には形成されていないことが好ましく、吸収体と重なる部分に形成される場合は、吸収体と重なる部分の前後方向の50%以下の範囲に形成されることが好ましく、40%以下の範囲に形成されることがより好ましく、30%以下の範囲に形成されることがさらに好ましい。
【0037】
特定領域はまた、吸収体の前後方向の中央50%の範囲(すなわち、吸収体の前後方向の相対位置として、吸収体の前側端を0%とし後側端を100%としたときの25%~75%の範囲)には形成されないことが好ましく、中央60%の範囲には形成されないことがより好ましく、中央70%の範囲には形成されないことがさらに好ましい。これにより、特定領域が着用者の排尿部に接しにくくなり、吸収性物品の着用感を良好にすることができる。特定領域が熱エンボスや接着剤の塗布によって形成される場合は、特定領域において尿等の吸収性能が低下するおそれがあるが、このように特定領域が形成されていれば、吸収性物品の尿等の速やかな吸収を実現できる。
【0038】
特定領域が不織布のエンボスによって形成される場合、特定領域のエンボスは、吸収性物品の肌面側から見て、凸エンボスであってもよく凹エンボスであってもよい。すなわち、トップシートの不織布は外面側から押圧されて肌面側に凸エンボスが形成されていてもよく、肌面側から押圧されて肌面側に凹エンボスが形成されていてもよい。好ましくは、トップシートを構成する不織布は、肌面側から見て、特定領域で凹エンボスされている。これにより、吸収性物品を着用した際に、特定領域が着用者の肌に当たっても、着用者が違和感を覚えにくくなる。
【0039】
エンボスは、トップシート単独でエンボスされてもよく、トップシートがバックシートとともにエンボスされてもよい。好ましくは、トップシートは、特定領域において、バックシートとともにエンボスされ、これにより、吸収性物品の前後方向の両端部を手で掴んだときに特定領域を検知しやすくなる。なおトップシートは、吸収体とはともにエンボスされていないことが好ましい。
【0040】
トップシートは、特定領域において、不織布が熱エンボスされてフィルム化されていてもよい。これにより、吸収性物品の前後方向の両端部を手で掴んだときに特定領域を検知しやすくなる。トップシートの不織布はバックシートとともに熱エンボスされてフィルム化されていてもよく、これにより、吸収性物品の前後方向の両端部を手で掴んだときに特定領域をさらに検知しやすくなる。不織布の熱エンボスは、不織布を発熱体と接触させて不織布の一部を溶融させたり(いわゆるヒートシール)、不織布を超音波振動子と接触させて不織布の一部を溶融すること(いわゆる超音波溶着)により行うことができる。
【0041】
特定領域が接着剤の塗布によって形成される場合、接着剤は特定領域においてべた塗りされてもよく、ビード状に塗布されたり、スパイラル状に塗布されたり、カーテンスプレー法により短繊維状に塗布されてもよい。このように接着剤を塗布することにより、接着剤が特定領域の略全体に塗布され、面状の接着剤塗布領域として形成することができる。接着剤は、特定領域においてある程度の厚み(例えば0.1mm以上2.0mm以下の厚み)で形成されることが好ましい。なお、接着剤としてはホットメルト接着剤を用いることが好ましい。
【0042】
特定領域は、発泡ホットメルト接着剤によって形成されてもよい。この場合、発泡ホットメルト接着剤が塗布された部分がそれ以外の部分よりも盛り上がって形成されるため、トップシートが盛り上がって形成された部分から特定領域の位置を容易に検知することができる。
【0043】
特定領域を形成する不織布としては、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、SMS不織布等が好ましく挙げられる。特定領域がエンボスにより形成される場合は、不織布としては、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布が好ましく用いられる。これらの不織布は、エンボスによって不織布表面に深い凹凸を形成しやすくなる。特定領域が接着剤の塗布によって形成される場合は、不織布としては、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布が好ましく用いられる。これらの不織布は、接着剤を塗布した際に接着剤が繊維間隙に入り込みやすく、トップシートの特定領域における剛性を高めやすくなる。特定領域が起毛加工により形成される場合は、不織布としては、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布が好ましく用いられる。これらの不織布は、不織布の構成繊維が熱溶着によって結合されるため、起毛加工をしても構成繊維が脱離しにくくなる。また、起毛加工によって不織布表面を容易に毛羽立たることができる。
【0044】
本発明の吸収性物品は、トップシートに特定領域が形成されるとともに、バックシートにも特定領域が形成されてもよい。なお、バックシートの特定領域を「第2特定領域」と称する。この場合、トップシートの特定領域を「第1特定領域」と称する場合がある。
【0045】
バックシートに第2特定領域が形成される場合、バックシートは外面側が不織布から構成され、当該不織布がエンボス、接着剤の塗布、または起毛加工されることにより第2特定領域が形成される。バックシートの第2特定領域は、吸収性物品の幅方向の中央部に、幅方向の長さが、吸収性物品の前後方向の中間部の最も幅狭な部分の幅方向の長さの1%以上20%以下となるように形成されることが好ましい。このようにバックシートに第2特定領域が形成されることにより、使用者等が吸収性物品の外面側を手で触れた際、バックシートの外面側の表面の手触りの違いからも吸収性物品の幅方向の中央部を検知できる。第2特定領域は、前後方向に対して、連続的に設けられてもよく、断続的に設けられてもよい。バックシートの第2特定領域の詳細(エンボス、接着剤の塗布、起毛加工、幅方向の長さ等)は、トップシートの特定領域に関する上記説明が参照される。
【0046】
バックシートの第2特定領域が不織布のエンボスにより形成される場合、バックシートは、不織布のみから構成されていてもよく、フィルム層の外面側に不織布層が積層されて構成されてもよい。第2領域のエンボスは、第2特定領域の全体が押圧されることにより形成されることが好ましい。
【0047】
バックシートの第2特定領域が接着剤の塗布により形成される場合、バックシートは、フィルム層の外面側に不織布層が積層されて構成され、フィルム層と不織布層の間に接着剤が面状に塗布されて第2特定領域が形成されていることが好ましい。これにより、バックシートの外面側の表面が第2特定領域において盛り上がって形成されやすくなり、使用者等がバックシートを手で触ったときに第2特定領域を検知しやすくなる。
【0048】
第2特定領域が接着剤によって形成される場合、上記に説明したように、接着剤は第2特定領域においてべた塗りしたり、ビード状に塗布されたり、スパイラル状に塗布されたり、カーテンスプレー法により短繊維状に塗布されてもよい。このように接着剤を塗布することにより、接着剤が第2特定領域の略全体に塗布され、面状の接着剤塗布領域として形成することができる。
【0049】
第2特定領域は、発泡ホットメルト接着剤によって形成されてもよい。この場合、発泡ホットメルト接着剤が塗布された部分がそれ以外の部分よりも盛り上がって形成することができるため、使用者等が吸収性物品の外面側を手で触れた際、バックシートが盛り上がって形成された部分から第2特定領域の位置を検知することができる。
【0050】
バックシートの第2特定領域が不織布の起毛加工により形成される場合、バックシートは、フィルム層の外面側に不織布層が積層されて構成されることが好ましい。この場合、バックシートの外面側に位置する不織布層の一部が起毛加工され、第2特定領域が形成される。不織布を起毛加工した場合、起毛加工された部分で耐水性が低下することが懸念されるが、バックシートの肌面側をフィルム層から構成することにより、バックシートの外面側の不織布層に起毛加工を施しても、バックシートの防漏性能を確保することができる。
【0051】
第2特定領域は、前後方向に対して、少なくとも吸収体の前側端よりも前側および/または後側端よりも後側に設けられることが好ましく、少なくとも吸収体の前側端よりも前側および後側端よりも後側に設けられることがより好ましい。このように第2特定領域が形成されることにより、使用者等が吸収性物品の前後方向の両端部を手で掴んだときに、吸収性物品の肌面側からも外面側からも吸収性物品の幅方向の中央部を検知しやすくなる。例えば、上記に説明したように吸収体の前側端よりも前側および/または後側端よりも後側において、トップシートがバックシートとともにエンボスされることによりトップシートに第1特定領域が形成される場合は、同時にバックシートに第2特定領域が形成されることとなる。
【0052】
バックシートの第2特定領域は、吸収体の前側端よりも前側および/または後側端よりも後側の部分のみに設けられてもよく、吸収体と重なる部分にも設けられてもよい。後者の場合、第2特定領域は、吸収体の前側端よりも前側の部分から吸収体と重なる部分にかけて連続していることが好ましく、吸収体の後側端よりも後方の部分から吸収体と重なる部分にかけて連続していることが好ましい。第2特定領域の前後方向の長さは特に限定されず、例えば吸収性物品の前後方向の長さの50%よりも長くてもよく、吸収性物品の前後方向の長さの60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上であってもよい。第2特定領域は、吸収性物品の前後方向の全体にわたって延在するものであってもよい。このように第2特定領域が設けられていれば、吸収性物品の前後方向の位置に関わらず、吸収性物品の幅方向の中央部を検知しやすくなる。
【0053】
トップシートの第1特定領域は、吸収体の前側端よりも前側の部分と吸収体の後側端よりも後側の部分の両方に設けられ、バックシートの第2特定領域は、吸収体の前側端よりも前側の部分または後側端よりも後側の部分の一方のみに設けられてもよい。あるいは、この逆も可能である。このように第1特定領域と第2特定領域が設けられていれば、使用者等が吸収性物品の前後方向の両端部を手で掴んだときに、吸収性物品の幅方向の中央部を検知することができるとともに、前後方向の前側端または後側端の一方のみに設けられた第1または第2特定領域に基づき吸収性物品の前後方向を検知することができる。
【0054】
トップシートの第1特定領域とバックシートの第2特定領域は、エンボス、接着剤の塗布、起毛加工のうち、ともに同じ方法により形成されていてもよく、互いに異なる方法により形成されていてもよい。例えば、トップシートとバックシートにおいて、吸収体の前側端よりも前側および/または後側端よりも後側に第1特定領域と第2特定領域が形成され、第1特定領域と第2特定領域が互いに異なる方法により形成されていれば、使用者等が吸収性物品の前後方向の両端部を手で掴んだときに、吸収性物品の幅方向の中央部を検知することができるとともに、手触りの違いから吸収性物品の肌面側と外面側を検知することができる。
【0055】
次に、本発明の吸収性物品の構成例について、図面を参照して説明する。なお本発明は、図面に示された実施態様に限定されるものではない。
【0056】
図1および図2には、本発明の吸収性物品として尿パッドの構成例を示した。図1は、尿パッドを肌面側から見た平面図を表し、図2は、図1と示した尿パッドのII-II断面図を表す。本願の図では、矢印xが幅方向、矢印yが前後方向を表し、矢印x,yにより形成される面に対して垂直方向が厚み方向zを表す。図1では、図面の上側が吸収性物品の前側に相当し、図面の下側が吸収性物品の後側に相当する。
【0057】
吸収性物品1(1A)は、トップシート2とバックシート3とこれらの間に設けられた吸収体4とを有する。トップシート2は吸収体4の肌面側に配され、バックシート3は吸収体4の外面側に配されている。トップシート2を透過した排泄物は、吸収体4により収容される。バックシート3は排泄物が外へ漏れるのを防いでいる。図面では、吸収体4は砂時計形に形成されている。
【0058】
トップシート2の幅方向xの両側には、前後方向yに延在する液不透過性のサイドシート5が接合されている。サイドシート5は、トップシート2と接合部6Aで接合され、接合部6Aよりも幅方向xの内方部分がトップシート2から起立可能に形成され、接合部6Aよりも幅方向xの外方部分がバックシート3に積層されている(図2を参照)。サイドシート5の幅方向xの内方部分が起立することにより立ち上がりフラップ6が形成され、これにより尿等の幅方向xの横漏れを防止することができる。なお、サイドシート5の幅方向xの内方部分がトップシート2から起立可能に形成されるために、サイドシート5には、接合部6Aよりも幅方向xの内方部分に前後方向yに延びる起立用弾性部材7が設けられることが好ましい。
【0059】
トップシート2は不織布から構成され、吸収体4の前側端よりも前側および後側端よりも後側に特定領域8が形成されている。特定領域8は、吸収性物品1Aの幅方向xの中央部に、幅方向xの長さが、吸収性物品1Aの前後方向yの中間部の最も幅狭な部分の幅方向xの長さの1%以上20%以下となるように形成されている。特定領域8は、トップシート2を構成する不織布にエンボスを施したり、接着剤を面状に塗布したり、起毛加工を施すことにより形成される。吸収性物品1Aは、このように前後方向yの両端部に特定領域8を設けることにより、装着の際に、使用者等が前後方向yの両端部を手で掴んで前後方向yに伸展させて平面状に広げる際に、特定領域8を目安にして吸収性物品1Aの幅方向xの中央部を検知することができる。そのため、吸収性物品1Aを装着する際、使用者等の視力が弱っているような場合でも、特定領域8を目安にして吸収性物品1Aの幅方向xの位置を適切に調整することが容易になる。
【0060】
図3図5には、本発明の吸収性物品としてテープタイプの使い捨ておむつの構成例を示した。図3は、テープタイプの使い捨ておむつを肌面側から見た平面図を表し、図4は、図3に示した使い捨ておむつを外面側から見た平面図を表し、図5は、図3図4に示した使い捨ておむつのV-V断面図を表す。図3および図4では、図面の上側が吸収性物品の前側に相当し、図面の下側が吸収性物品の後側に相当する。なお、下記において、図1および図2に示した吸収性物品1Aと重複する部分の説明は省略する。
【0061】
図3図5に示した吸収性物品1(1B)では、前後方向yの後側部の幅方向xの両側にファスニングテープ13が設けられ、前後方向yの前側部のバックシート3の外面側にターゲットテープ12が設けられている。ファスニングテープ13はテープ基材15に面ファスナーのフック部材14が設けられて構成されている。吸収性物品1Bは、着用者の股間に当てて、ファスニングテープ13のフック部材14を吸収性物品1Bの前側部のターゲットテープ12に止着することで、装着することができる。
【0062】
ファスニングテープ13において、フック部材14はテープ基材15の肌面側に設けられている。テープ基材15は、幅方向xの内方部がサイドシート5および/またはバックシート3に固定され、幅方向のxの外方部にフック部材14が取り付けられる。フック部材14は、基盤から係合素子が多数突出して形成される。係合素子の形状は特に限定されず、鉤形、錨形、きのこ形、柱形等が挙げられる。
【0063】
テープ基材15としては、不織布、織布、編布、樹脂フィルム、あるいはこれらの積層体等を用いることができる。なお、テープ基材15とサイドシート5および/またはバックシート3との接着性を高める点から、テープ基材15は、織布、編布、または不織布から構成されていることが好ましく、不織布から構成されていることがより好ましい。
【0064】
ターゲットテープ12は面ファスナーのループ部材から構成されることが好ましい。面ファスナーのループ部材は、基盤上に、フック部材14の係合素子と係合可能なループ部が設けられて構成される。ループ部は一部が基盤に固定され他部が基盤と非固定とされ、これによりフック部材の係合素子がループ部の基盤との非固定部分に係合することができる。各ループ部は、閉じた環を形成してもよく、環の一部が開いて形成され、隣接するループ部と接続して設けられていてもよい。また、基盤上に糸条による編組織が形成され、この編組織によってループ部が形成されるようにしてもよい。
【0065】
吸収性物品1Bの幅方向xの両側には、前後方向yに延びる脚用弾性部材10が設けられることが好ましい。脚用弾性部材10により、着用者の脚周りにギャザーを形成して脚周りのフィット性を高めたり、横漏れを防止することができる。
【0066】
吸収性物品1Bの前後方向yの端部には、幅方向xに延びるウェスト弾性部材11が設けられることが好ましい。ウェスト弾性部材11により着用者の腰周りに沿ったウェストギャザーが形成され、腹部や背部からの尿等の漏れが防止される。
【0067】
吸収性物品1Bにおいても、トップシート2が不織布から構成され、幅方向xの中央部であって前後方向yの両端部に特定領域8が形成されている。そのため、吸収性物品1Bの装着の際に、使用者等が前後方向yの両端部を手で掴んで前後方向yに伸展させて平面状に広げる際に、特定領域8を目安にして吸収性物品1Bの幅方向xの中央部を検知することができる。
【0068】
吸収性物品1Bでは、バックシート3にも、バックシート3を構成する不織布にエンボスを施したり、接着剤を面状に塗布したり、起毛加工を施すことにより形成された第2特定領域9が形成されている。第2特定領域9は、吸収性物品1Bの幅方向xの中央部に、幅方向xの長さが、吸収性物品1Bの前後方向yの中間部の最も幅狭な部分の幅方向xの長さの1%以上20%以下となるように形成されている。このようにバックシート3に第2特定領域9が形成されることにより、使用者等が吸収性物品1Bの外面側を手で触れた際、第2特定領域9を目安にして吸収性物品1Bの幅方向xの中央部を検知することができる。そのため、吸収性物品1Bを装着する際に、着用者の排尿部や肛門に吸収性物品1Bの幅方向xの中央部を当てることが容易になる。
【符号の説明】
【0069】
1,1A,1B:吸収性物品
2:トップシート
3:バックシート
4:吸収体
5:サイドシート
6:立ち上がりフラップ
7:起立用弾性部材
8:特定領域
9:第2特定領域
図1
図2
図3
図4
図5