IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ガス、テクノロジー、インスティチュートの特許一覧

特許7096887メタンおよび他の炭化水素を改質するための貴金属触媒およびプロセス
<>
  • 特許-メタンおよび他の炭化水素を改質するための貴金属触媒およびプロセス 図1A
  • 特許-メタンおよび他の炭化水素を改質するための貴金属触媒およびプロセス 図1B
  • 特許-メタンおよび他の炭化水素を改質するための貴金属触媒およびプロセス 図2
  • 特許-メタンおよび他の炭化水素を改質するための貴金属触媒およびプロセス 図3
  • 特許-メタンおよび他の炭化水素を改質するための貴金属触媒およびプロセス 図4
  • 特許-メタンおよび他の炭化水素を改質するための貴金属触媒およびプロセス 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】メタンおよび他の炭化水素を改質するための貴金属触媒およびプロセス
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/40 20060101AFI20220629BHJP
   C01B 32/40 20170101ALI20220629BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C01B3/40
C01B32/40
B01J23/63 M
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020527034
(86)(22)【出願日】2017-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 US2017061783
(87)【国際公開番号】W WO2019099001
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】591002016
【氏名又は名称】ガス、テクノロジー、インスティチュート
【氏名又は名称原語表記】GAS TECHNOLOGY INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーカー,テリー エル
(72)【発明者】
【氏名】リンク,マーティン ビー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンゲロー,ジム
(72)【発明者】
【氏名】オルティズ-トラル,ペドロ
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-007872(JP,A)
【文献】特開2009-242158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00- 6/34
B01J 21/00-38/74
C01B 32/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ガス生成物を生成するプロセスであって、メタン、CO およびH Oを含むガス状混合物をCO -スチーム改質反応機に供給させるステップを備え、
前記CO -スチーム改質反応機は、少なくとも80重量%の量の酸化セリウムを備える固体担持体上で、Pt、Rh、Ru、Pd、Ag、Os、IrおよびAuからなるグループから選択される少なくとも2つの貴金属を備える触媒を含み、
前記触媒は、前記少なくとも2つの貴金属および前記固体担持体の金属以外の金属を0.05重量%未満含み、
前記CO -スチーム改質反応機では、前記メタンの少なくとも80%が、酸化剤としてのCO およびH Oとの反応によって変換される、プロセス。
【請求項2】
前記少なくとも2つの貴金属はPtおよびRhである、請求項に記載のプロセス。
【請求項3】
前記Ptは、前記触媒の重量で0.05%~5%の量で存在する、請求項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記Ptは、前記触媒の重量で0.5%~2%の量で存在する、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記Rhは、前記触媒の重量で0.05%~5%の量で存在する、請求項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記Rhは、前記触媒の重量で0.5%~2%の量で存在する、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記H Oは、15mol%~70mol%の量で前記ガス状混合物中に存在する、請求項1から請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
メタン、CO およびH Oを含む前記ガス状混合物を前記CO -スチーム改質反応機に供給させる前に、さらに、
メタン含有原料とCO含有酸化剤とを組み合わせることで前記ガス状混合物を取得し、
前記ガス状混合物中の前記H Oは、最初に、前記メタン含有原料および/または前記CO 含有酸化剤中に存在する、請求項1から請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ガス状混合物は、さらに、少なくとも100mol-ppmの全硫黄を備える、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ガス状混合物は、さらに、1mol%~25mol%の合計量で芳香族炭化水素およびオレフィン系炭化水素を備える、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記メタン含有原料は、天然ガスまたは再生可能メタン供給源由来のメタンを備える、請求項に記載のプロセス。
【請求項12】
メタン、CO およびH Oを含む前記ガス状混合物を前記CO -スチーム改質反応機に供給させる前に、さらに、
前記ガス状混合物は、HO含有酸化剤、メタン含有原料、およびCO 含有酸化剤を組み合わせることで取得される、請求項から請求項11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記CO -スチーム改質反応機の条件は、前記合成ガス生成物を前記CO -スチーム改質反応機からの流出物として提供するために、0.1hr-1 ~2.5hr-1の単位時間当たりの重量時空間速度(WHSV)を含む、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記CO -スチーム改質反応機の条件、649℃(1200°F)~816℃(1500°F)の温度を含む、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
記条件は、0kPa~517kPa(75psig)のゲージ圧力をさらに含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記CO -スチーム改質反応機では、前記メタンの少なくとも85%が、大704℃(1300°F)の温度で変換される、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記合成ガス生成物は、前記ガス状混合物中に存在する前記メタンおよび前記H Oを含む、水素含有化合物の水素の少なくとも70%に相当する量でHを備える、請求項1から請求項16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記合成ガス生成物のH :COモル比は、1.5:1~2.3:1である、請求項1から請求項17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記ガス状混合物は、エタン、エチレン、プロパンおよびプロピレンからなるグループから選択される1つまたは複数の軽質炭化水素をさらに含む、請求項1から請求項18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記メタンは再生可能資源から得られる、請求項1から請求項19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記再生可能資源は、バイオマスである、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
合成ガス生成物を生成するプロセスであって、メタン、CO およびH Oを含むガス状混合物をCO -スチーム改質反応機に供給するステップを備え、
前記CO -スチーム改質反応機は、少なくとも80重量%の量の酸化セリウムを備える固体担持体上で、0.3重量%~3重量%のPtおよび0.3重量%~3重量%のRhを備える触媒を含み、
前記CO -スチーム改質反応機の改質条件は、0.1hr -1 ~4.0hr -1 の単位時間当たりの重量時空間速度(WHSV)、および0kPa~517kPaまでのゲージ圧を含み、
前記触媒は十分に活性であり、前記CO -スチーム改質反応機において、760℃の温度で酸化剤としてのCO およびH Oとの反応によって少なくとも95%の前記メタンの変換を達成する、プロセス。
【請求項23】
合成ガス生成物を生成するプロセスであって、メタン、CO およびH Oを含むガス状混合物をCO -スチーム改質反応機に供給するステップを備え、
前記CO -スチーム改質反応機は、少なくとも80重量%の量の酸化セリウムを備える固体担持体上で、少なくとも1つの貴金属を備える触媒を含み、
前記CO -スチーム改質反応機では、前記メタンの少なくとも80%が、酸化剤としてのCO およびH Oとの反応によって変換され、
前記ガス状混合物は、10mol-pmp~1mol-%の硫黄レベルを有し、前記硫黄レベルの決定に基づいて、前記CO -スチーム改質反応機の温度を調整するステップをさらに備える、プロセス。
【請求項24】
前記硫黄レベルは、100mol-ppm~1000mol-ppmである、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記硫黄レベルは、500mol-ppm~1000mol-ppmである、請求項24に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究または開発の記載
本発明は、米国エネルギー省補助金DE-EE-0007009に基く政府援助を得て実施された。政府は、当発明に特定の権利を有する。
【0002】
本発明の態様は、メタンおよび/または他の炭化水素を改質するための触媒およびプロセスに関し、より具体的には貴金属含有触媒の存在下で、そのような炭化水素(複数可)を、酸化剤としてのCOと反応させて、または酸化剤の組み合わせとしてのCOおよびHOの両方と反応させて、HとCOを備える合成ガス生成物を生成することに関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
炭化水素燃料の生成のための、原油の代替品を求める調査は、ますます多数の要因によって進められている。これには、石油埋蔵量の減少、エネルギー需要の増加予測、および再生不可能な炭素供給源に由来する温室効果ガス(GHG)排出に対する懸念の高まりが含まれる。天然ガスの埋蔵量ならびに生物供給源から取得されるガス流(バイオガス)の豊富さを考慮して、メタンは、液体炭化水素を提供する多数の可能なルートの焦点になっている。メタンを燃料に変換するための鍵となる商業プロセスには、合成ガス(シンガス(syngas))を生成する第1変換ステップと、それに続く第2の下流フィッシャー・トロプシュ(FT:Fischer-Tropsch)合成ステップが含まれる。この第2ステップにおいて、水素(H)と一酸化炭素(CO)の混合物を含有する合成ガスは、C-O結合の連続的開裂と、水素を取り込むC-C結合の形成と、を経る。このメカニズムは、炭化水素の形成を提供し、とりわけ直鎖アルカンの形成を提供し、FT反応条件と触媒特性を変更することで、ある程度制御され得る分子量の分布を伴う。そのような特性として、孔径および担持体材料のその他の特徴が含まれる。触媒の選択は、他の点に関してFT生成物収率に影響し得る。例えば鉄ベースのFT触媒は、オキシジェネートをより多く生成する傾向がある反面、活性金属としてのルテニウムは、もっぱらパラフィンを生成する傾向がある。
【0004】
第1変換ステップに関して、FTの上流でメタンからシンガスを生成する周知のプロセスには、酸素を用いたメタンの発熱酸化に基づく部分酸化改質および自己熱改質(ATR)が含まれる。一方、スチームメタン改質(SMR)はスチームを酸化剤として使用し、その結果熱力学が有意に相違するが、それはスチーム自体の生成がエネルギー投資を必要とし得るためばかりでなく、メタンと水を伴う反応が吸熱反応であるためである。最近では、メタンの酸化剤として二酸化炭素(CO)の使用も提案されており、その結果所望のシンガスは次式に従って、最酸化型の炭素と最還元型の炭素との反応によって形成される:
【数1】
【0005】
この反応はメタンの「乾式改質」と呼ばれており、高度に吸熱反応であるため、メタンの乾式改質の熱力学はATRに比較して、またはさらにSMRに比較しても好ましくない。しかし、メタン1モル当たりの二酸化炭素1モルの化学量論的消費は、液体燃料生成のカーボンフットプリント全体を減少させる可能性があり、メタンのより環境に優しい消費を提供する。この供給物の1モル当たりCO消費率は、高級炭化水素(例えばC-Cパラフィン)を改質する場合に上昇するが、この改質は例えば、水素生成(例えば精製プロセス用)が目的の場合に望ましい。いずれにしても熱力学的障壁は、それにもかかわらず大きな課題であり、COが完全に酸化されておりかつ非常に安定しておることから、酸化剤として活性化させるには大きなエネルギーが必要になるという事実に関する。これを鑑みると、メタンの乾式改質に対する活性化エネルギー障壁を克服するために多数の触媒系が研究されており、これは、例えば文献[Lavoie(Frontiers in Chemistry(Nov.2014)、Vol.2(81):1-17)のレビュ―]でまとめられており、この反応を実行する触媒アプローチに関して、不均一系触媒系が最も人気があると確認している。
【0006】
他方ニッケルベースの触媒は、前述の乾式改質反応のための活性化エネルギーを減少させることに有効性を示したが、これら触媒の炭素堆積(コーキング(coking))が高率で起こることも、Lavoieの文献で報告されている。メタンから元素状炭素への好ましくない変換は、一般にメタンの乾式改質に必要な反応温度で、メタン分解(CH→C+2H)またはブードワ反応(Boudouard reaction)(2CO→C+CO)を通して進行し得る。そのため、この反応はシンガス生成の有望なルートとして研究されてきたが、この技術の商業化は、ATRおよびSMRなどの他の改質技術と違い、依然として実現されていない。これは、今まで提案されてきた条件下で作動する乾式改質触媒系を使用する場合に見られるように、大部分、高い炭素形成率、およびコーキングを通して付随する触媒の失活のせいである。最後に、従来の他の改質技術は、経済的に実行可能であると実証されたが、このようなプロセス、およびとりわけSMRは、使用される触媒の硫黄および他の毒物を除去するために多大な上流投資(upstream capital)と操業費用を必要とすることが周知である。そうでなければ、所定の触媒装填からの商業的に許容し得る操業期間が実現され得ない。シンガスおよび/または水素を生成するための従来の炭化水素改質に関するこのような問題および他の問題の満足のゆく解決策は、探し求められてきたが、いまだ実現されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、メタンおよび/または他の炭化水素を、その炭化水素(複数可)の少なくとも一部分をCOと反応させることにより、合成ガス(つまりHとCOとを備えるガス状混合物)に変換する触媒およびプロセスの発見に関連する。好ましくは、CO-スチーム改質反応によれば、炭化水素(複数可)の少なくとも第2部分(例えば、第1部分と同じ炭化水素(複数可)を備える)はHO(スチーム)と反応し、それによってHOの存在しない「純粋」乾式改質と比較して、吸熱性(ΔH)および必要なエネルギー投入を減少させるという意味でプロセスの熱力学全体を改善する。代表的触媒は高活性を有益に有し、それによって慣習的に乾式改質に使用される温度を下回る温度で、有意レベルの炭化水素(例えばメタン)変換を実現し得る。このような高活性レベルは、任意選択的にHOの使用と併せて少なくとも酸化剤の一部分を提供して、全般的運転環境に貢献し、それによってコークス形成は減少し、有益な触媒の寿命が有意に延長され得る。
【0008】
さらに重要な利益として、ここで記載の触媒の耐硫黄性があり、それによってメタン含有供給原料(例えば天然ガス)または他の炭化水素含有供給原料の前処理は、好ましい実施形態によればHSおよび他の硫黄含有汚染物質の濃度を低下させるために必要なく、または少なくとも従来の改質技術におけるほど厳密ではない。また、HSを除くメルカプタンなどの硫黄含有汚染物質のすべてまたは少なくともかなりの部分が、ここで記載のように乾式改質反応またはCO-スチーム改質反応においてSOに酸化され得、それによって標準酸性ガス処理(例えばスクラブ(scrub))を下流硫黄除去として好適かつ比較的単純なオプションにすることを考慮すると、FT変換ステップなどの前に、そのような下流硫黄除去が望ましくあり得る場合、これは前処理は大幅に単純化され得る。
【0009】
概して、ここで記載のプロセスおよび触媒に関連する改良は、乾式改質プロセス、またはそうでなければCOおよびスチーム改質(つまりCO-スチーム改質)プロセスを、自己熱改質(ATR)およびスチームメタン改質(STR)などの従来の技術に対する経済的に実行可能な選択肢とする意味で商業的に重要である。さらに、このプロセスによる合成ガスは、フィッシャー・トロプシュ(FT)反応による下流加工にとって好ましいH:COモル比(例えば約2:1)で、または少なくとも、そのような好ましい値を実現するために容易に調整され得るモル比で生成され得る。
【0010】
本発明に関するこのようなおよび他の実施形態、態様、および利益は、以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の模範的実施形態のより完全な理解およびその利益は、添付の図を考慮し、以下の説明を参照することで取得され得るが、その図において同じ参照番号が同一の特性を同定するように使用されている。
図1A】ここで記載のように代表的な乾式改質、およびCO-スチーム改質プロセスを図示するフロースキームを示す。
図1B】ここで記載のように代表的な乾式改質、およびCO-スチーム改質プロセスを図示するフロースキームを示す。
図2】ここで記載のように触媒について、メタン変換に関する高活性を図示する。
図3】代表的なCO-スチーム改質プロセス場合における異なる反応温度で、反応機(組み合わせた供給物として)中の合成ガス生成物のH:COモル比と、ガス状混合物のHO/COモル比との間の関係を図示する。
図4】長期運転期間にわたるCO-スチーム改質プロセスにおいて、ここで記載のような触媒の長期的運転安定性を図示する。
図5】長期運転期間にわたるCO-スチーム改質プロセスにおいて、ここで記載のような触媒の長期的運転安定性を図示する。
【0012】
図面は、プロセス、および関連する特定の結果、ならびにパラメータ、および/または関連する原理の例示を提示していると理解すべきである。図1Aおよび図1Bは、説明および理解をスムーズにするため、単純化された概要を提供し、このような図面および要素は、必ずしも一定の縮尺で描かれていないと理解される。バルブ、器具、および本発明の様々な態様の理解に必須ではないその他の機器およびシステムは表示されていない。本開示の知識を有する当業者には容易に明らかなように、乾式改質あるいはCO-スチーム改質によるメタンなどの炭化水素の変換プロセスは、その特定用途によって部分的に決定される構成および要素を備える。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「wt%」および「mol%」という表現は、ここではそれぞれ重量パーセントとモルパーセントを指すために使用される。「wt-ppm」および「mol-ppm」という表現は、それぞれ重量百万分率およびモル百万分率を指す。理想的なガスについて、「mol%」および「mol-ppm」は、それぞれ体積パーセントおよび体積百万分率に等しい。
【0014】
用語「ガス状混合物」は、ここで記載のように触媒との接触によって乾式改質またはCO-スチーム改質(ガス状混合物中に水も存在する場合)を経る、少なくともメタンなどの炭化水素を備え、酸化剤としてCOも備える混合物を指す。用語「ガス状混合物」は概して、ここで記載のそのような反応に好適な温度および圧力を含む、乾式改質またはCO-スチーム改質に使用される条件下で、完全にまたは少なくとも大部分気相にあるこのような混合物を指す。用語「ガス状混合物」は、周囲温度および圧力の条件下で液体である、この混合物中の化合物(例えば、水)の存在を排除しない。そのような化合物は、ナフサおよびジェット燃料を含む液体燃料で見つかるような炭化水素、例えばC-C16炭化水素を含み得る。
【0015】
該発明の実施形態は、合成ガス生成物(シンガス)を生成するプロセスに関し、該プロセスは、(i)メタンおよび/または他の炭化水素(複数可)(例えばCH、C、C、C、C、C10、C、C12、C10、高分子量の炭化水素のうち任意のもの、およびその混合物)、および(ii)CO、を備えるガス状混合物を、酸化セリウムを備える固体担持体上で少なくとも1つ(例えば2つまたは2つを上回る)の貴金属を備える触媒に接触させるステップを備える。CO単独は、そのような炭化水素の乾式改質によってCOおよびHへのメタンおよび/または他の炭化水素(複数可)に対する酸化剤としての役割を果し得ることが可能であり、これは、例えばアルカンの場合に次のように一般化され得る:
【数2】
【0016】
好ましい実施形態、すなわちガス状混合物がHOをさらに備える実施形態では、COとHOの組み合わせは酸化剤の役割を果し得る。この場合の反応は「CO-スチーム改質反応」であり、これはメタンおよび/または他の炭化水素からシンガスを生成するルートとしてスチーム改質も含み、これは、例えばアルカンの場合に次のように一般化され得る:
【数3】

メタンの乾式改質から形成される合成ガス生成物の理論上のH:COモル比は1である反面、メタンのCO-スチーム改質におけるスチーム改質の追加は、このモル比を下流フィッシャー・トロプシュ合成のためのより好ましい値に上昇させる可能性を有益に提供して、次に従って液体炭化水素を生成する:
【数4】
【0017】
ここから、液体燃料または液体燃料の成分として望ましいC-C12炭化水素などのC 炭化水素は、2に近いH:COモル比で理想的に形成されることが観察され得る。重要なことに、COと組み合わせて酸化剤としてスチーム(HO)を使用することは、広範なCO-スチーム改質条件に合成ガス生成物のH:COモル比を調整するために、有益な「要領(handle)」または制御パラメータを提供する。実際、CO-スチーム改質反応とスチーム改質反応を組み合わせて実施される任意の所定のそのような条件セット(例えば、温度、圧力、単位時間当たりの重量空間速度、および触媒配合のように、反応機内の条件)について、ガス状混合物(例えば組み合わせた反応機供給物)のHO:COモル比と、合成ガス生成物(例えば反応機の流出物)のH:COモル比と、の間で関係が確立され得る。メタンを除く炭化水素の乾式改質およびスチーム改質はHとCOを他のモル比で生成する反面、CO-スチーム改質を経るガス状混合物中の酸化剤HOとCOの量を相対的に変更することで、生成物収率において指向的に同一のシフトまたは調整が達成され得る。したがって、本発明の実施形態は、CO-スチーム改質プロセスに関し、該プロセスは、合成ガス生成物のH:COモル比を決定するステップと、H:COモル比に基づいてガス状混合物のHO:COモル比を目標の合成ガス生成物のH:COモル比の方向に、例えば2:1という目標のH:COモル比の方向に、またはそうでなければ概して約1.5:1~約2.5:1の範囲、一般に約1.5:1~約2.3:1の範囲、およびしばしば約1.8:1~約2.2:1の範囲の目標のH:COモル比の方向に、調整するステップと、を備える。
【0018】
より具体的には、ガス状混合物のHO:COモル比は、目標のH:COモル比の方向に向かって、目標を下回る合成ガス生成物の観察されたH:COモル比を上昇させるように上昇し得る。逆に、ガス状混合物のHO:COモル比は、目標のH:COモル比の方向に向かって、目標を上回る合成ガス生成物の観察されたH:COモル比を下降させるように下降し得る。ガス状混合物のHO:COモル比への任意のそのような調整は、例えば、ガス状混合物(例えば組み合わせた供給物)の1つ以上の成分、例えばメタン含有供給原料(または概して炭化水素含有供給原料)、CO含有酸化剤、およびHO含有酸化剤の1つ以上の流量(複数可)を、そのような成分の1つ以上のその他の流量(複数可)に対して調整することで実施され得る。特定の実施例によれば、反応機への組み合わせた供給物のHO:COモル比は、(HO含有酸化剤としての)スチームの流量をそれぞれ上昇または下降させることで上昇または下降し得、それによってガス状混合物のHO:COモル比は結果としてそれぞれ上昇または下降し得る。
【0019】
合成ガス生成物のH:COモル比を好ましい範囲内の値に制御する能力を提供するだけでなく、COと組み合わせた酸化剤としてのスチーム(HO)を使用すれば、純粋乾式改質に比較して炭素(コークス)形成率をさらに驚くほど減少させ、それによってここで記載のように、触媒の寿命を延長させる。したがって、本発明のさらなる実施形態は、CO-スチーム改質プロセスに関し、炭素形成率(例えば、ここで記載のように触媒と組み合わせて、COとHO酸化剤の好適な比率または濃度/分圧を使用)は、ベースラインプロセス(つまりベースライン乾式改質プロセス)の炭素形成率未満であり、すべてのパラメータは同一に維持されるが、ガス状混合物(例えば組み合わせた反応機供給物)中のHOを等モル量のCOの酸素と置換(つまり、HOの1モルを1/2モルのCOと置換)することは除く。ベースラインプロセスに対して比較的低いこの炭素形成と相まって、合成ガス生成物はここで記載のようなH/COモル比(例えば約1.5:1~約2.3:1)を有し得る。
【0020】
ここで記載のように触媒はさらに驚くほどの耐硫黄性を示し、それは例えば、その供給源によっては有意な濃度(例えば、体積で数重量パーセント以上)のHSを含有し得る天然ガスを備えるか、またはその天然ガスに由来するメタン含有供給原料の場合に、特に有益である。この点では、従来のスチームメタン改質(SMR)プロセスは、触媒を硫黄被毒から保護するために、一般に全供給物硫黄含有量を1mol-ppm未満に減少させる前処理を必要とする。一方、本発明の代表的実施形態によれば、ガス状混合物またはその成分のうち任意のものは、特に炭化水素含有供給原料は、硫黄除去前処理ステップを減らないか、またはそうでなければ硫黄除去前処理ステップを受けたことがない。そのような実施形態は、好ましい触媒寿命を実現する必要に応じて、厳しい脱硫化要件および関連する費用の付いた周知のプロセスに対して実質的な経済的利益を提供する。そのような周知のプロセスとは対照的に、ここで記載のように乾式改質またはCO-スチーム改質プロセス中のガス状混合物は概して、硫黄除去の前処理を受けていないばかりでなく、低濃度の硫黄を有するガス状混合物の他の成分(例えばCO)と組み合わせられた場合に硫黄の希釈の原因となる天然ガスなどの炭化水素供給原料の供給源の代表的な任意の濃度で硫黄を備え得る。例えばガス状混合物は、概して少なくとも約1モル-ppm(例えば約1mol-ppm~約10mol%)の全硫黄(例えばHSおよび/または他の硫黄含有汚染物質として)を備え得る。ガス状混合物は、一般に少なくとも約10mol-ppm(例えば約10mol-ppm~約1mol%)およびしばしば少なくとも約100mol-ppm(例えば約100mol-ppm~約1000mol-ppm)の全硫黄を備え得る。例えば、約500mol-ppm~約1000mol-ppmの全硫黄は、特定の実施形態によれば、ここで記載のように改質触媒の安定性に対して、概して副作用を引き起こさないか、または少なくとも無視できる副作用のみ引き起こす。
【0021】
ここで記載の触媒の耐硫黄性について、本発明のさらなる態様は、ガス状混合物中の高レベル(濃度)の硫黄が反応温度、つまり反応機中に収容される、ここで記載の触媒床の温度を上昇させることで補償され得るという発見に関連する。すなわち、硫黄濃度の上昇は、他のすべての運転パラメータに変化がない場合に、ガス状混合物中のメタンおよび/または他の炭化水素(複数可)の変換減少によって測定したとき、触媒の活性に影響することが判明した。ただし、所望の変換レベルは、反応温度を上昇させることで回復され得る。例えば一部の運転条件下で、28℃(50°F)の上昇は、ガス状混合物中に硫黄の全くない触媒の活性と比較して、ガス状混合物中に濃度800mol-ppmのHSを伴う触媒の活性の損失を回復するのに十分であり得る。したがって、本発明の実施形態は、ここで記載のように乾式改質プロセスまたはCO-スチーム改質プロセスに関し、該プロセスは、メタンおよび/または他の炭化水素(複数可)の変換(例えば、組み合わせたC-C炭化水素または組み合わせたC-C炭化水素の変換)を決定すること、あるいはそうでなければガス状混合物または合成ガス生成物において、硫黄レベル(例えば、HSレベル)を決定すること、ならびに変換または硫黄レベルに基づいて、メタンおよび/または他の炭化水素(複数可)の変換目標、例えば少なくとも約75%の変換目標(例えば約75%~約100%範囲の任意の特定の変換値)、例えば少なくとも約85%の変換目標(例えば約85%~約99%範囲の任意の特定の変換値)に向かって反応温度を調整することを備える。
【0022】
しかし重要なことは、ガス状混合物における硫黄濃度の上昇を伴う、ここで記載の触媒の活性のそのような低下は、触媒の安定性における任意のかなりの損失はさらに伴わない。すなわち、ここで記載のように、高硫黄レベルを相殺する補償反応機温度の上昇は、長期間にわたって安定した運転性能を達成する触媒の能力に有意には影響しない。この発見は、従来の改質技術に基づく予想とは反対であり、その予想では、供給物中の小量(例えばmol-ppmレベル)の硫黄の存在でさえ、触媒の失活および高価な早期交換を防止するために回避しなければならない。ここで記載のように触媒の独特の耐硫黄性、または硫黄含有汚染物質の存在下での活性安定性は、標準試験に従って決定され得、その試験では5~100グラムの小さな触媒サンプルは固定床式反応機にロードされ、800mol-ppmHSの添加された、30mol%メタン、30mol%CO、および30mol%HOの供給物ブレンドと接触される。本標準試験では、0.7hr-1WHSVの流動条件、788℃(1450°F)の触媒床温度、および138kPa(20psig)の反応機圧力により、少なくとも85%および好ましくは95%のメタンの変換が、少なくとも50時間の運転の間、およびより一般には100時間の運転の間、またはさらに少なくとも400時間の運転の間、一定の触媒床温度で維持される。
【0023】
ここで記載の触媒の耐性つまり「堅牢性」は、コーキングを通して触媒の非活性化を引き起しやすいと通常見なされる反応性芳香族炭化水素および/またはオレフィン系炭化水素などの高分子量の炭化水素を含む、ガス状混合物中の他の化合物の存在下での失活に対する高安定性においてさらに明らかにされる。例えば、ガス状混合物は、概して少なくとも約1モル%(例えば約1mol%~約25mol%)、例えば少なくとも約3mol%(例えば約3mol%~約20mol%)、またはより具体的には少なくとも約5mol%(例えば約5mol%~約15mol%)の合計量において、芳香族炭化水素およびオレフィン系炭化水素を備え得る。そのようなレベルの芳香族炭化水素および/またはオレフィン系炭化水素において、触媒の安定性は、供給物ブレンドが、HSとは異なってその濃度の芳香族炭化水素および/またはオレフィン系炭化水素を含有することを除いて、耐硫黄性に関して上記に規定の同一活性安定性試験に従って示され得る。ここで記載のように硫黄および反応性炭化水素の両方に関する触媒のこの耐性は、以下で詳細に説明されるように原油精製から取得される様々な留分(例えばナフサおよびジェット燃料)を含む広範な炭化水素含有供給原料の改質を可能にする。
【0024】
より一般的には、ガス状混合物、および特にこの炭化水素含有供給原料成分は、メタンに加えて、天然ガスおよび/または他のメタン供給源中に存在し得るC、C、および/またはC炭化水素(例えばエタン、プロパン、プロピレン、ブタン、および/またはブテン)などの他の炭化水素を備え得る。代替的に、ここで記載のように触媒は、大部分またはただ単に、C炭化水素、C炭化水素、C炭化水素、C炭化水素、C炭化水素、C炭化水素、C10炭化水素、C11炭化水素、C12炭化水素、C13炭化水素、C14炭化水素、C15炭化水素、C16炭化水素、C17炭化水素、C18炭化水素、およびそれらの組み合わせからなるグループから選択された任意の1つ以上の化合物を備えるか、または任意選択的にそれからなる、ガス状混合物中の炭化水素の場合のような高分子量の炭化水素の乾式改質またはCO-スチーム改質に使用され得る。例えば、ガス状混合物中の炭化水素は、ナフサ沸点範囲炭化水素の乾式改質またはCO-スチーム改質(ナフサ改質)の場合に、C-C炭化水素またはC-C炭化水素を備え得るか、またはそれらからなり得る。別の例として、ガス状混合物中の炭化水素は、ジェット燃料沸点範囲炭化水素の乾式改質またはCO-スチーム改質(ジェット燃料改質)の場合に、C-C18炭化水素またはC-C14炭化水素を備え得るか、またはそれらからなり得る。そのようなナフサ沸点範囲炭化水素およびジェット燃料沸点範囲留分は、通常原油精製からの生成物として取得され、このような状況から、ガス状混合物中の硫黄含有汚染物質の供給源であり得る。代表的実施形態では、ガス状混合物は、概して約5mol%~約85mol%、一般に約10mol%~約65mol%、およびしばしば約20mol%~約45mol%の合計量において、メタンおよび/またはここで記載の炭化水素うち任意のものを備え得る。ガス状混合物は、概して約8mol%~約90mol%、一般に約15mol%~約75mol%、およびしばしば約20mol%~約50mol%の量のCOをさらに備え得る。CO-スチーム改質の場合、ガス状混合物は、概して約15mol%~約70mol%、一般に約20mol%~約60mol%、およびしばしば約25mol%~約55mol%の量のHOを備え得る。ガス状混合物の残部は、HSおよび/または前述のように他の硫黄含有汚染物質などの汚染物質を含み得る。
【0025】
メタンおよび/または軽質炭化水素(例えばC-CまたはC-C炭化水素)を備えるガス状混合物の場合、乾式改質またはCO-スチーム改質の合成ガス生成物は、前述のようにフィッシャー・トロプシュ合成を通して液体炭化水素燃料の下流生成において好ましいH:COモル比で有益に使用され得る。合成ガスは、従来のスチームメタン改質(SMR)に関連する他の下流適用に代替的に使用され得る。例えば文献[Tarun(International Journal of Greenhouse Gas Control I(2007):55-61)]は、SMRを伴う従来の水素生成プロセスについて説明している。ここで記載のように、水素生成において本発明の実施形態に従って乾式改質あるいはCO-スチーム改質が適用される場合、代表的プロセスは、(i)合成ガス生成物を1つ以上の水性ガスシフト(WGS)反応ステージにかけて水素含有量を増加させるステップ、および/または(ii)場合によっては、(例えば圧力スイング吸着(PSA)または膜分離により)WGSステージ(複数可)の流出物を分離して、またはそうでなければWGSステージ(複数可)を介在させることなく合成ガス生成物を分離して、水素濃縮生成物流および水素枯渇PSA排ガス流を提供するステップ、をさらに備え得る。次いで水素濃縮生成物流は、水素化処理プロセス(例えば、水素化脱硫、水素化分解、水素化異性化など)などの従来の精製プロセスにおいて使用され得る。次いで水素枯渇PSA排ガス流は、分離されて、水素を回収し得、かつ/または燃焼燃料として使用されて乾式改質またはCO-スチーム改質の加熱要件の少なくとも一部を満たし得る。なおさらなる実施形態では、COおよびH含有PSA排ガスは、アルコール(例えばエタノール)などの発酵生成物を生成するために生物学的発酵ステージに渡され得る。次に発酵ステージからのガス状流出物は、前述のように分離されて水素を回収し得、かつ/または燃焼燃料として使用され得る。従来の水素生成に関して、生物学的発酵ステージのさらなる統合は、例えば米国特許9,605,286;米国特許9,145,300;米国特許2013/0210096;および米国特許2014/0028598に記載されている。水素生成プロセスにおける統合に代わるものとして、ここで記載のように乾式改質またはCO-スチーム改質は、合成ガス生成物を提供するように使用され得、この生成物は、好適なカルボキシ栄養細菌(carboxydotrophic bacteria)(例えば、Clostridium autoethanogenumまたはClostridium ljungdahlii種)を使用した発酵生成物の下流生成において直接使用される。いずれの場合も、つまりそのような統合のある場合もない場合も、発酵に使用される微生物は耐硫黄性であり得るか、またはさらに細胞培養培地中に硫黄を必要とし得、その結果ここで記載のように触媒の耐硫黄性は、従来の改質触媒に対して、上流での硫黄除去中止に関するか、または少なくとも硫黄除去要件の緩和に関する両立性および費用節約の点から特に有益であり得る。
【0026】
このため本発明の態様は、合成ガス生成物(例えばHとCOの両方、ならびに任意選択的に未変換のCO、HO、および/または炭化水素などの他のガスを備える)を生成するための乾式改質プロセスおよびCO-スチーム改質プロセスに関する。代表的実施形態において、メタンおよび/または他の炭化水素(複数可)を備えるガス状混合物は、乾式改質プロセス(COをさらに備えるが水を備えない供給物またはガス状混合物の場合)またはCO-スチーム改質プロセス(COおよび水の両方をさらに含む供給物またはガス状混合物の場合)の反応機にバッチ式に提供され得、ただし好ましくは連続流れとして提供され得る。次いで合成ガス生成物は、反応機からバッチ式に取り出され得るが(ガス状混合物がバッチ式に提供される場合)、好ましくは、連続流れとして取り出され得る(ガス状混合物が連続流れとして提供される場合)。
【0027】
とCO、および任意選択的に他のガスに加えて、水(HO)も合成ガス生成物中に存在し得るが、蒸気形態で存在する水の少なくとも一部分は、例えば合成ガス生成物を液体炭化水素に変換するために使用されるフィッシャー・トロプシュ合成反応機(FT反応機)の上流で冷却/凝縮によって容易に分離され得る。合成ガス生成物中の水とCOのどちらも、H:COモル比に影響を与えず、前述のようにこの比は、FT反応機への直接供給流として合成ガス生成物の適性を決定する際に重要なパラメータである。
【0028】
代表的プロセスにおいては、メタンおよび/または他の軽質炭化水素(複数可)(例えばエタン、エチレン、プロパン、および/またはプロピレン)およびCOのみならず任意選択的にHOを備えるガス状混合物は、その炭化水素(複数可)の改質を実行するための活性を有する触媒と接触する。特に、そのような炭化水素(複数可)、例えばそのような炭化水素の大部分は、(i)乾式改質プロセスに従って一部または全部のCOのみと酸化を通して改質され得るか、または(ii)CO-スチーム改質プロセスに従ってCOの一部または全部ならびにHO(存在する場合)の一部または全部の両方と酸化を通して改質され得る。
【0029】
前述のように本発明の態様は、従来の改質触媒と比較して特に耐硫黄性および/または炭素形成(コーキング)率の低下に関して重要な利益を示す、そのような乾式改質およびCO-スチーム改質プロセスのための改質触媒の発見に関連する。次いでこのような特徴は、化学的および/または物理的に活性触媒部位をブロックする被毒メカニズムおよび/またはコーキングメカニズムを通して、触媒の失活率を低下させる。触媒の安定性におけるさらなる改良は、前述のようにメタンおよび/または他の炭化水素(複数可)の酸化剤としてのCOの使用に関連する実質的な活性化エネルギー障壁を必要に応じて低下させる場合、少なくとも部分的にはここで記載の触媒の高活性から生じる。この高活性は、運転(反応機または触媒床)温度が低い場合に現れ、これは、触媒面上の炭素堆積(コークス形成)率と、長期安定運転と、にさらに貢献する。特定の実施形態によれば、ここで記載の触媒を利用するプロセスは、例えば、少なくとも約100時間、少なくとも約300時間、またはさらに少なくとも約500時間の連続運転または場合によれば非連続運転の間、炭化水素変換(例えばメタンおよび/または他の炭化水素(複数可)の少なくとも約85%の変換)および/または合成ガス生成物のH/COモル比(例えば約1.5:1~約2.3:1)に関して、ここで記載のように安定した運転パラメータを維持し得る。これは、(i)例えば反応機内で触媒を固定床として利用する改質プロセスに従って、触媒が再生を経験しなく、かつ/または(ii)反応機または触媒床の温度が、開始時期と終了時期のしきい値温度差を超えて上昇しない運転期間であり得、このしきい値温度差は、例えば100℃(180°F)、50℃(90°F)、25℃(45°F)、10℃(18°F)、またはさらに5℃(9°F)である。
【0030】
メタンおよび/または他の炭化水素(複数可)とCOとの反応および任意選択的にHOとの反応を触媒するのに好適な代表的改質触媒は、固体担持体上で1つの貴金属を備え、場合によれば2つ以上の貴金属を備え得る。句「固体担持体上」は、活性金属(複数可)が担持体表面の上および/または担持体の多孔質内部構造内にある触媒を包含することを意図する。固体担持体は、好ましくは、特に興味深いことに酸化セリウムを含む金属酸化物を備える。酸化セリウムは、固体担持体の重量に基づいて(例えば固体担持体中の金属酸化物(複数可)の総重量(複数可)に対して)、少なくとも約80wt%、および好ましくは少なくとも約90wt%の量で存在し得る。固体担持体は、酸化セリウムのみ、または実質的に酸化セリウムのみ(例えば約95wt%より多い)備え得る。酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウムなどのその他の金属酸化物も、固体担持体中に存在し得、その合計量は、固体担持体の約50wt%未満、約30wt%未満、または約10wt%未満などの小量に相当する。他の実施形態では固体担持体は、そのような他の金属酸化物を単独で、または小量(例えば約50wt%未満または約wt30%未満)の酸化セリウムと組み合わせて備え得る。
【0031】
貴金属とは、酸化耐性のある金属元素のクラスを指すと理解される。代表的実施形態では、触媒の貴金属、例えば少なくとも2つの貴金属は、プラチナ(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、および金(Au)からなるグループから選択され得、用語「からなる」はただ単に、特定の実施形態に従ってグループメンバーを表わすために使用され、そこから貴金属(複数可)が選択されるが、概して他の貴金属および/または他金属の追加を排除するために使用されていない。したがって、貴金属を備える触媒は、少なくとも2つの貴金属を備える触媒だけでなく少なくとも3つの貴金属を備える触媒を包含し、同様に2つの貴金属と、促進剤金属(例えば遷移金属)などの第3の非貴金属を備える触媒と、を包含する。好ましい実施形態によれば、貴金属は、触媒の重量に基づいて約0.05wt%~約5wt%、約0.3wt%~約3wt%、または約0.5wt%~約2wt%の量で存在するか、または代替的に少なくとも2つの貴金属はそれぞれ無関係にその量で存在する。例えば代表的触媒は、2つの貴金属PtとRhを備え得、PtとRhは、このような範囲(例えば約0.05wt%~約5wt%)のうち任意の量で、互いに無関係に存在し得る。すなわち、Ptがその量で存在し得るか、またはRhがその量で存在し得るか、またはPtとRhの両方がその量で存在し得る。
【0032】
代表的実施形態では少なくとも2つの貴金属(例えばPtとRh)は、例えば他の任意の貴金属(複数可)が触媒の重量に基づいて約0.1wt%未満または約0.05wt%未満の量または合計量で存在するように、触媒中に存在する実質的に唯一の貴金属であり得る。さらなる代表的実施形態では、少なくとも2つの貴金属(例えばPtとRh)は、固体担持体中に存在する金属(例えば、固体担持体中に酸化セリウムとして存在するセリウムなど)を除いては、触媒中に存在する実質的に唯一の金属である。例えば、少なくとも2つの貴金属および固体担持体の金属以外の他の任意の金属(複数可)は、触媒の重量に基づいて約0.1wt%未満または約0.05wt%未満の量または合計量で存在し得る。貴金属(複数可)を含む、触媒中に存在する任意の金属は、概して約0.3ナノメートル(nm)~約20nmの範囲、一般に約0.5nm~約10nmの範囲、およびしばしば約1nm~約5nmの範囲の金属粒径を有し得る。
【0033】
貴金属(複数可)は、昇華、含浸、または乾式混合を含む触媒調製の周知の技法に従って、固体担持体中に組み込まれ得る。好ましい技法である含浸の場合、極性(水性)溶剤または非極性(例えば、有機)溶剤中の貴金属のうち1つ以上の可溶性化合物の含浸溶液は、好ましくは不活性雰囲気下で固体担持体と接触し得る。例えばこの接触は、窒素、アルゴン、および/またはヘリウムの周辺雰囲気中において、またはそうでなければ空気など非不活性雰囲気中において、好ましくは撹拌を用いて実施され得る。溶剤は次いで、例えば加熱、流動ガス、および/または真空の条件を使用して、固体担持体から気化され得、乾燥した貴金属含浸担持体を形成する。貴金属(複数可)は固体担持体中に含浸され得、例えば2つの貴金属が同時に含浸される場合、両方は同じ含浸溶液に溶解されるか、またはそうでなければ異なる含浸溶液および接触ステップを使用して別々に含浸される。いずれにしても貴金属含浸担持体は、余分の貴金属(複数可)および不純物の除去のための溶剤を用いる洗浄、さらなる乾燥、焼成などのさらなる調製ステップを経て、触媒を提供し得る。
【0034】
固体担持体自体は、押出して円筒状粒子(押出成形物)を形成する方法、オイル滴下方法、または噴霧乾燥して球状粒子を形成する方法などの周知の方法に従って調製され得る。固体担持体および出来た触媒粒子の特定の形状とは無関係に、前述のように触媒中に存在する貴金属(複数可)の量とは、(例えば、円筒状または球状などの任意の形状の)所定の触媒粒子中において、粒子内の貴金属の特定の分布とは無関係に、そのような貴金属(複数可)の重量の平均値を指す。この点では、調製方法が異なると、主として固体担持体の表面上またはその近くに貴金属(複数可)が堆積するか、または固体担持体の全体に貴金属(複数可)が一様に分布するなど、異なる分布を提供し得ることが理解され得る。概して、ここで記載の重量パーセントとは、固体担持体の重量に基づくか、またはそうでなければ触媒の重量に基づき、単一の触媒粒子における重量パーセントを指し得るが、一般にはここで記載のプロセスにおいて使用される触媒床を形成する反応機中の個数などの、多数の触媒粒子の重量パーセントの平均値を指し得る。
【0035】
乾式改質プロセスおよび任意選択的にCO-スチーム改質プロセス10の単純化した例示は図1A図1Bに示される。このようないずれかの実施形態において、1つ以上の炭化水素(例えばメタン)とCOを備えるガス状混合物4は、槽の形態で反応機5内に存在し得、この槽は、ガス状混合物4と触媒6が接触する改質条件下で、前述のように触媒6の床を収容するために使用される。図1Aで図示される実施形態によれば、ガス状混合物4は、炭化水素含有供給原料1のみから反応機5内に提供され得る。例えば、代表的な炭化水素含有供給原料はメタン含有供給原料であり、この供給原料は、水素添加ガス化または水素化熱分解を含むバイオマスのガス化または熱分解から取得され、COとHOをさらに備え得る。それによって、そのような炭化水素含有供給原料はそれ自体で、CO-スチーム改質プロセスのために自らガス状混合物4を提供し、このプロセス中ではCOおよびHOの両方がメタンの酸化剤として反応する。他の実施形態ではガス状混合物4は、液体炭化水素がナフサ沸点範囲炭化水素および/またはジェット燃料沸点範囲炭化水素を含む場合、またはそうでなければあるタイプの天然ガスの場合などのように、炭化水素含有供給原料1がCOをほとんど含有しない場合、炭化水素含有供給原料1を任意選択的なCO含有酸化剤2と組み合わせることから取得され得る。
【0036】
別のオプションとして、HO含有酸化剤3(例えばスチームとして)はまた、CO-スチーム改質プロセス用のCO酸化剤およびHO酸化剤の両方と、メタンと、を備えるガス状混合物4を形成するために組み合わせられ得る。しかし、やはりHOはまた、炭化水素含有供給原料1および/またはCO含有酸化剤2中に十分な量で存在し得、その結果HO含有酸化剤3は別に必要ではあり得ない。炭化水素含有供給原料1、CO含有酸化剤2、およびHO含有酸化剤3の間の両矢印付き破線で示されているように、これらのうち任意のものは反応機5に先立って(例えば上流で)組み合わせられ得ることは明らかである。特定の実施形態によれば、図1Bは、任意選択的なCO含有酸化剤2および任意選択的なHO含有酸化剤3と混合されて、反応機5に先立って(例えば上流で)、ならびにこの反応機内部に、ガス状混合物4を提供する炭化水素含有供給原料1を図示する。
【0037】
前述のように、ガス状混合物4がメタンおよびCOなどの1つ以上の炭化水素を備えるがHOは含まない実施形態において、該プロセスは「乾式改質」プロセスと見なし得る反面、ガス状混合物4が炭化水素(複数可)とCOを備え、COとの組み合わせにおいて、炭化水素(複数可)の酸化剤としての活性HOをさらに備える(その結果、例えばCOとHOの少なくともそれぞれの酸化剤部分は、炭化水素(複数可)の各反応物部分を酸化する)実施形態において、該プロセスは「CO-スチーム改質」プロセスと見なし得る。ここで記載のように触媒は、乾式改質およびCO-スチーム改質の両方において、前述のように活性と安定性の両方に関して有益な結果を提供する。反応機5中に提供された改質条件下で、ガス状混合物4は合成ガス生成物7に変換され、この生成物はガス状混合物4と比較して水素およびCOが濃縮され得(つまりその濃度が高まり得)、かつ/または当初ガス状混合物4中に存在していたCO、HO、メタンおよび/または他の炭化水素(複数可)が枯渇され得る(つまりその濃度が低下し得る)。
【0038】
重要なメタン含有供給原料は天然ガス、特にストランデッド(stranded)天然ガスであり、この天然ガスは周知のプロセスを使用しては経済的な方法で容易に合成ガス生成物に変換されない。従来のスチーム改質と対照的に、ここで記載のプロセスがCOの除去(例えばアミン溶液を用いてスクラブする)を必要とせず、実際反応物としてCOを利用することから、例えば少なくとも約10mol%、またはさらに少なくとも約25mol%の比較的高濃度のCOを備える天然ガスは、魅力的なメタン含有供給原料を象徴する。他のメタン含有供給原料は、石炭またはバイオマス(例えばリグノセルロースまたは炭化物)ガス化から取得されたか、またはバイオマス蒸解がまから取得されたか、または再生可能炭化水素燃料(バイオ燃料)生成プロセス(例えば、水素化熱分解プロセスまたは脂肪酸/トリグリセリド水素化変換プロセスなどの熱分解プロセス)からの流出物として取得された、メタンを備え得る。さらなるメタン含有供給原料は、ウェルヘッド(well head)から取得されたメタン、または石油精製プロセスの(製油所オフガスとしての)流出物、電力生産プロセスの流出物、鉄鋼製造プロセスの流出物、もしくは非鉄製造プロセスの流出物、化学物質(例えばメタノール)生成プロセスの流出物、もしくはコークス製造プロセスの流出物を含む産業プロセスの流出物を備え得る。概して、炭化水素(例えばC-C炭化水素)およびCOを含有することが知られている任意のプロセスガスは、ここで記載のようにガス状混合物のすべてもしくは一部、またはこの混合物の成分としてのメタン含有供給原料の少なくともすべてもしくは一部を提供し得る。メタン含有供給原料が、再生可能資源(例えばバイオマス)から取得されたメタンを備える場合、例えばGas Technology Instituteに譲渡されている米国特許第8,915,981号で記載のように、水素化熱分解によって取得されたプロセス流からのメタンを含む場合、ここで記載のプロセスは、再生可能合成ガス生成物(つまり再生可能COを備える)を生成するために使用され得、この生成物は次いで再生可能炭化水素含有燃料、燃料ブレンド成分、および/または化学物質を提供するためにさらに加工され得る。それゆえ、メタン含有供給原料は、再生不可能供給源(例えば天然ガス)に由来するメタンおよび/または再生可能供給源(例えばバイオマス)に由来するメタンを備え得、後者の供給源は合成ガス生成物および下流生成物に関連するカーボンフットプリントを全体として減少させる。ここで記載のように、天然ガスおよび/または他のメタン含有供給原料は、乾式改質またはCO-スチーム改質に先立ってHSおよび他の硫黄含有汚染物質を除去するよう前処理され得るが、必ずしも前処理する必要があるわけではない。
【0039】
代表的実施形態において、炭化水素とCOとを備えるガス状混合物4は、触媒6とバッチ式または非連続運転において接触され得るが、好ましくは、乾式改質またはCO-スチーム改質プロセスはガス状混合物4またはそれの成分(例えばここで記載のように、炭化水素含有供給原料1、CO含有酸化剤2、および/またはHO含有酸化剤3)の流動流を用いて連続的に実施されて、プロセス効率を改善する。例えば接触は、反応機5を通してガス状混合物4(例えば、このような成分のうち任意のものが組み合わせられた、組み合わせ反応機供給流として)と、好適な流量を含む改質条件(例えば、反応機槽内の条件、および槽の中に収容される触媒床内の条件)下で触媒6と、を連続的に流動させることで実施され得る。特定の実施形態では、改質条件は、概して約0.05hr-1~約10hr-1、一般に約0.1hr-1~約4.0hr-1、およびしばしば約0.3hr-1~約2.5hr-1の単位時間当たりの重量空間速度(WHSV)を含み得る。当業で理解されているように、WHSVは、ガス状混合物を反応機内の触媒の重量で除算した重量流量であり、毎時加工される供給流の等価触媒床の重量に相当する。WHSVは、反応機滞留時間の逆数に関する。触媒6は、固定床の形態で反応機5内に収容され得るが、連続的触媒再生を利用するプロセスに有益であり得る可動床および流動床システムなどの他の触媒系も可能である。
【0040】
乾式改質またはCO-スチーム改質に便利な他の改質条件には、概して約649℃(1200°F)~約816℃(1500°F)の温度が含まれる。ここで記載のプロセスは、酸化剤としてのCOの使用に必要な活性化エネルギー障壁の削減に関する触媒の高活性により、乾式改質またはスチーム改質に使用される従来の代表的な温度816℃(1500°F)に比較して有意に低い温度で、メタンおよび/または他の炭化水素を効果的に酸化させ得る。例えば代表的実施形態では改質条件は、約677℃(1250°F)~約788℃(1450°F)の範囲、または約704℃(1300°F)~約760℃(1400°F)の範囲の温度を含み得る。前述のようにHSおよび/または他の硫黄含有汚染物質の有意な量(例えば100~1000mol-ppm)の存在は、所望の変換レベル(例えば約85%超)を維持するために、例えば約732℃(1350°F)~約843℃(1550°F)の範囲、または約760℃(1400°F)~約816℃(1500°F)の温度上昇を保証し得る。なお他の改質条件は、周囲圧力を超える圧力、つまり絶対圧力101kPa(14.7psig)に対応する、0kPa(0psig)のゲージ圧力を上回る圧力を含み得る。改質反応は、反応物のモルに対して生成物のモル数を多くするため、相対的に低圧力での平衡状態が選好される。それゆえ改質条件は、概して約0kPa(0psig)~約517kPa(75psig)、一般に約0kPa(0psig)~約345kPa(50psig)、およびしばしば約103kPa(15psig)~約207kPa(30psig)のゲージ圧力を含み得る。
【0041】
有益なことに、触媒の高活性は、前述の任意の温度範囲内で、例えば当業者が本開示から得た知識を用いて認識するように、特定の反応機または触媒床温度、および/または他の改質条件(例えばWHSYおよび/または圧力)を調整することで、少なくとも約80%(例えば約80%~約99%)、少なくとも約85%(例えば約85%~約97%)、または少なくとも約90%(例えば約90%~約99%)のメタンおよび/または他の炭化水素(複数可)の変換(例えば、メタンの変換、組み合わせたC-C炭化水素の変換、組み合わせたC-C炭化水素の変換、ナフサ沸点範囲炭化水素の変換、ジェット燃料沸点範囲炭化水素の変換など)を実現し得る。有益なことに、ここで記載のように触媒は、最大約732℃(1350°F)、またはさらに最大約704℃(1300°F)の温度で安定的に、少なくとも約85%など有意な炭化水素(例えばメタン)変換を達成する活性が十分ある。酸化反応物について、COの代表的な変換は少なくとも約50%(例えば約50%~約75%)であり、HOの代表的な変換は、少なくとも約70%(例えば約70%~約90%)であり、変換レベルは炭化水素(複数可)についてここで記載されている。当業で理解されているように、任意の特定の化合物(例えばメタン)または組み合わせた化合物(例えばC-C炭化水素またはC-C炭化水素)の変換は、次の式に基づいて計算され得る:
【数5】

ここでX供給物は、反応機に提供されるガス状混合物(例えば組み合わせた反応機供給物)中の化合物(複数可)Xの総量(例えば総重量または総モル)であり、X生成物は反応機から除去される合成ガス生成物中の化合物(複数可)Xの総量である。連続プロセスの場合、この総量は、より好都合なことに流量または単位時間当たりの総量(例えば総重量/時間(hr)または総モル/時間(hr))で表現され得る。ここで記載のような触媒および改質条件を使用して実現され得る他の性能基準には、高い水素収率、または反応機に提供されガス状混合物中のメタン中および/または他の水素含有化合物中の水素全体(例えばC-C炭化水素またはC-C炭化水素などの炭化水素中の水素全体)の分率が含まれ、これは反応機から除去される合成ガス生成物中でHに変換される。代表的実施形態では、水素収率は少なくとも約70%(例えば約70%~約85%)である。変換について前述のように、反応機に提供される量、および反応機から除去される量は、流量で表現され得る。
【0042】
前述のように、改質プロセスおよび特にCO-スチーム改質プロセスに関連するさらなる利益は、ここで記載のように、合成ガス生成物中のH/COの好ましいモル比、ならびにこの比率を調節する能力が含まれる。これは、液体炭化水素の生成のためのフィッシャー・トロプシュによる下流加工にとって特に重要な含意がある。合成ガス生成物の正確な組成は、供給物(例えば組み合わせた反応機供給物)またはガス状混合物の組成、触媒、および改質条件によって左右される。
【0043】
代表的実施形態では合成ガス生成物は、特にCO-スチーム改質プロセスの場合に、有益なことに2:1に近いH:COモル比、例えば概して約1.5:1~約2.3:1の範囲、および一般に約1.8:1~約2.2:1の範囲のH:COモル比を有する。本生成物におけるHとCOの合計濃度は、概して少なくとも約35mol%(またはvol%)(例えば約35mol%~約85mol%)、一般に少なくとも約50mol%(約50mol%~約80mol%)、およびしばしば少なくとも約60mol%(約60mol%~約75mol%)である。前述のように、合成ガス生成物の残部は、そのようなプロセスの条件(例えば、温度、圧力、単位時間当たりの重量空間速度、および触媒配合などの反応機内の条件)と、反応が行われた供給物またはガス状混合物と、を含む特定の乾式改質またはCO-スチーム改質プロセスによって、実質的にまたはすべてがCOと水であり得る。代表的実施形態において、COは、概して約45mol%未満(例えば約5mol%~約45mol%)、および一般に約35mol%未満(例えば約10mol%~約35mol%)の濃度で合成ガス生成物中に存在する。水は、概して約20mol%未満(例えば約1mol%~約25mol%)、および一般に約15mol%未満(例えば約5mol%~約15mol%)の濃度で存在する。小量の未変換炭化水素はまた、合成ガス生成物中にも存在し得る。例えば、場合によればC-C炭化水素のみ含み得るC-C炭化水素の合計量(例えばメタン、エタン、プロパン、およびブタンの合計量)は、約5mol%未満の濃度、および一般に約2mol%未満の濃度で存在し得る。
【0044】
以下の実施例は、本発明の代表として提示される。このような実施例は、本発明の適用範囲を制限すると解釈されるべきではなく、他の同等の実施形態は、本開示および特許請求を考慮すると明確であろう。
【実施例1】
【0045】
パイロットプラント規模の実験を実施し、その中でガス状混合物を、酸化セリウム担持体上で1wt%のPtおよび1wt%のRhという組成物を持つ触媒粒子を収容する反応機に連続的に供給した。システムのCO-スチーム改質性能を、0.7hr-1WHSV、760℃(1400°F)という条件、および124kPa(18psig)~172kPa(25psig)のゲージ圧力範囲で試験した。試験された2種類のガス状混合物は、(1)メタン、エタン、プロパン、およびCO、さらにHOを含有し、かつバイオマスの水素化熱分解と水素化変換の組み合わせから取得されるものをシミュレーションする組成物(「再生可能タイプ」)、ならびに(2)高レベルのCOを有する一般的な天然ガス組成物(「天然ガスタイプ」)であった。このようなガス状混合物(組み合わせた供給物)と、このような供給物から取得された合成ガス生成物と、が次の表1にまとめられている。
【表1】
【0046】
これらの結果から、ほぼ2:1のH:COモル比を有し、それゆえフィッシャー・トロプシュ反応により、または少なくともこの比率を事前に(上流で)調整しないでも、後続の直接加工に好適な合成ガス生成物を、CO-スチーム改質触媒およびプロセスが提供し得ることが分かり得る。このような好ましい結果は760℃(1400°F)の反応温度でのみ取得されたのではあるが、触媒の高活性を考慮すると704℃(1300°F)などの低い温度も可能である。低い作動温度は、コークスを形成する副反応の速度を指向的に低下させ、これは触媒を失活させる。図2は、実施例1で試験された種類の供給物および触媒について温度とメタン変換との間の関係を図示し、特にこの図は、704℃(1300°F)で85%より大きいメタン変換と、760℃(1400°F)で95%より大きいメタン変換と、を達成する能力を図示する。図3は、実施例1で試験された種類の供給物および触媒についてガス状混合物のHO:COモル比が、704℃(1300°F)および760℃(1400°F)の両方の温度で、合成ガス生成物のH:COモル比にどのように影響を与えるかを図示する。所定の供給物、触媒、および運転条件セットについてこのようなパラメータ間の関係を確立する可能性を考慮すると、ガス状混合物組成は、目的の合成ガス生成物組成を達成するための便利な対照として役立ち得る。
【実施例2】
【0047】
実施例1に記載された一般的天然ガス組成物を、この実施例にも記載されているCO-スチーム改質にかける追加の実験を実施した。ただしこの場合は、ガス状混合物または組み合わせた供給物には800mol-ppmの濃度のHSを添加した。高レベルの硫黄汚染にもかかわらず、メタン変換のオフセットは、触媒床温度を760℃(1400°F)から約788℃(1450°F)に上昇させることで、容易に回復されたことが判明した。さらに触媒は意外にも、実施例1に関して前述のようにこの温度ならびにWHSVおよび圧力で、400運転時間(オン・ストリーム時間(hr))にわたって長期間の安定性を示した。相当な硫黄濃度にもかかわらず達成されたこの安定性は、スチームメタン改質に使用される従来の触媒の硫黄感度を考慮すると意外であった。
【実施例3】
【0048】
実施例1に「再生可能タイプ」として記載され、かつ表1で与えられた組成を有するガス状混合物を、長期運転期間にわたってCO-スチーム改質についてのシステム性能を評価するため、実施例1に記載の触媒および条件を使用して試験した。長期間の安定性試験では、取得された合成ガス生成物の組成が、このような一定条件下で500時間にわたる運転でも安定していたことが明らかになり、長期運転期間にわたって、基本的に改質触媒の失活がないことを実証した。図4は、この運転期間にわたって取得された、高レベルにメタンを変換する安定した合成ガス生成物組成を図示する。図5は、取得された合成ガス生成物の安定したH/COモル比を図示し、このモル比はほぼ比2であり、このため、液体炭化水素を生成するための下流FT合成反応の用途に最適であった。
【0049】
全体として本発明の態様は、メタンおよび/または他の炭化水素(複数可)の高変換を達成するための、そしてここで記載のようにH:COモル比を含む所望の特徴を持つ合成ガス生成物を生成するための、乾式改質またはCO-スチーム改質の使用に関する。さらなる態様は、硫黄含有汚染物質、ならびに/または芳香族炭化水素および/もしくはオレフィン系炭化水素などの反応性化合物、を備える供給物の場合であっても、COまたはCOとHOの両方の存在下で、少ししかないコークス堆積および高い触媒安定性によって、メタンおよび/または他の炭化水素(複数可)を変換する能力を持つ活性触媒を使用するそのような改質プロセスに関し、そのような汚染物質および化合物は従来の触媒系中では急速な失活に関連する。なおさらなる態様は、液体(C )炭化水素および/またはアルコールの生成のためのフィッシャー・トロプシュ合成、発酵によるアルコールの合成、または水素生成などの、さらなる加工ステージで直接使用するための直接的アプローチをも提供するような改質プロセスに関する。有益なことに該プロセスは、再生可能および再生不可能メタンの両方の供給源に存在する従来のCOを、好ましくはこのCOを除去することなく利用し得、かつ/または従来のメタンのスチーム改質と比較して水を利用するレベルを低くし得る。加えて、触媒の耐硫黄性は、必要に応じて単一の酸性ガス除去ステップを使用して、硫黄含有汚染物質を、容易に下流で管理されるSOおよびHSに変換する活性によってさらに証明される。本開示から得た知見を持つ当業者であれば、これらのおよび他の利益を実現する上で、本開示の適用範囲から逸脱することなくこのようなプロセスに様々な変更を加え得ることを認めるであろう。このような状況から、該開示の特徴は本開示の範囲から逸脱することなく変形および/または代替を受け取る余地があることを理解すべきである。本開示に図示および記載された特定の実施形態は、もっぱら説明する目的でのみ記述されており、添付の特許請求の範囲に提示された本発明を制限するためではない。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5