IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルエス産電株式会社の特許一覧

特許7096897低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置
<>
  • 特許-低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置 図1
  • 特許-低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置 図2
  • 特許-低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/22 20060101AFI20220629BHJP
   H01H 83/02 20060101ALI20220629BHJP
   H02H 3/05 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
H02H7/22 A
H01H83/02 E
H02H3/05 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020546465
(86)(22)【出願日】2018-11-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 KR2018014325
(87)【国際公開番号】W WO2019172504
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-09-04
(31)【優先権主張番号】10-2018-0026464
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス、エレクトリック、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LS ELECTRIC CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】127,LS-ro,Dongan-gu,Anyang-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】ハム、ソンジク
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-206008(JP,A)
【文献】特開2014-183664(JP,A)
【文献】特開平08-065898(JP,A)
【文献】特開2016-123203(JP,A)
【文献】特開平11-341706(JP,A)
【文献】特開平02-013236(JP,A)
【文献】国際公開第03/052897(WO,A1)
【文献】特開平07-087658(JP,A)
【文献】特開2002-291147(JP,A)
【文献】特開平02-250627(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0162741(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0078628(US,A1)
【文献】特開昭56-150919(JP,A)
【文献】米国特許第04335437(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1621653(KR,B1)
【文献】特表2013-537636(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0865361(KR,B1)
【文献】特開2011-120459(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0090480(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 7/22
H01H 83/02
H02H 3/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置において、
最上位電力回路と上位電力回路間の第1分岐回路に接続され、通信部を有する少なくとも1つの上位低圧回路遮断器と、
前記上位電力回路と下位電力回路間の第2分岐回路に接続され、通信部を有する少なくとも1つの中位低圧回路遮断器と、
前記下位電力回路と最下位電力回路間の第3分岐回路に接続され、通信部を有する少なくとも1つの下位低圧回路遮断器と、
前記上位低圧回路遮断器、前記中位低圧回路遮断器及び前記下位低圧回路遮断器を通信接続する通信線路とを含み、
前記上位低圧回路遮断器、前記中位低圧回路遮断器及び前記下位低圧回路遮断器は、トリップ動作時、予め定められた前記上位低圧回路遮断器、前記中位低圧回路遮断器及び前記下位低圧回路遮断器の少なくともいずれかに、前記通信線路を介して、トリップ動作状態を報告する通信パケットを送信する制御部を含み、
前記上位低圧回路遮断器、前記中位低圧回路遮断器及び前記下位低圧回路遮断器の少なくともいずれかに単方向通信のための開ループ状に追加接続され、外部の他の通信ネットワーク又は上位監視装置に通信接続される低圧回路遮断器をさらに含むことを特徴とする低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置。
【請求項2】
前記上位低圧回路遮断器、前記中位低圧回路遮断器及び前記下位低圧回路遮断器は、イーサネット通信線路により閉ループ状に互いに接続されるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置。
【請求項3】
前記上位低圧回路遮断器、前記中位低圧回路遮断器及び前記下位低圧回路遮断器は、高速デュアルリング通信ネットワークで接続されることを特徴とする請求項1に記載の低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置。
【請求項4】
前記制御部は、RSTP(Rapid Spanning Tree Protocol)アルゴリズムを格納するプログラム格納部を含むことを特徴とする請求項1に記載の低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置。
【請求項5】
前記通信パケットは、送信先回路遮断器の識別情報、送信先回路遮断器に対するトリップ指令情報又は送信元回路遮断器の状態情報、及び送信元回路遮断器の識別情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置。
【請求項6】
前記トリップ指令情報は、短限時遅延トリップ情報(short time delay trip information)、地絡遅延トリップ情報(ground fault delay trip information)及び長限時遅延トリップ情報(long time delay trip information)のいずれかで構成されることを特徴とする請求項に記載の低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置。
【請求項7】
前記送信元回路遮断器の状態情報は、前記送信元回路遮断器の動作状態情報及び自己診断情報を含むことを特徴とする請求項に記載の低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低圧系統における複数の上下位の回路遮断器間の効率的な保護協調のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術による低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置の構成を示すブロック図である図1を参照して説明する。
【0003】
図1に示すように、低圧系統は、上位電力線路PL2と下位電力線路PL1とを含む。
【0004】
ここで、上位電力線路PL2は送電側、すなわち電源側に近い電力線路であり、下位電力線路PL1は受電側、すなわち負荷側又は最終の電力使用者に近い電力線路である。
【0005】
図1において、符号DL1は、最上位電力線路(図示せず)と上位電力線路PL2間に接続され、前記最上位電力線路からの電力を上位電力線路PL2に供給する第1分岐線路である。
【0006】
図1において、符号DL2は、上位電力線路PL2と下位電力線路PL1間に接続され、上位電力線路PL2からの電力を下位電力線路PL1に供給する第2分岐線路であり、符号DL3及び符号DL4は、それぞれ下位電力線路PL1と複数の負荷(電力需要家)(図示せず)間に接続され、下位電力線路PL1からの電力を前記複数の負荷(電力需要家)に供給する第3分岐線路である。
【0007】
第1分岐線路DL1には、当該第1分岐線路DL1を開閉できるように、上位回路遮断器30が直列に接続される。
【0008】
第2分岐線路DL2には、当該第2分岐線路DL2を開閉できるように、中位回路遮断器20が直列に接続される。
【0009】
第3分岐線路DL3、DL4には、当該第3分岐線路DL3、DL4をそれぞれ開閉できるように、2台の下位回路遮断器10-1、10-2が直列に接続される。
【0010】
図1において、符号SL1は、上位回路遮断器30と中位回路遮断器20間の信号通信のための第1通信線路である。
【0011】
符号SL2は、中位回路遮断器20と下位回路遮断器10-1、10-2間の信号通信のための第2通信線路である。
【0012】
符号SL1aは、上位回路遮断器30又は中位回路遮断器20が信号通信のために第1通信線路SL1に接続するための第1接続信号線路であり、符号SL2aは、中位回路遮断器20又は下位回路遮断器10-1、10-2が信号通信のために第2通信線路SL2に接続するための第2接続信号線路である。
【0013】
符号CCLは、入力がないことを示すように入力端子と共通端子(コモン端子)を接続する共通接続線路である。
【0014】
それぞれの上位回路遮断器30、中位回路遮断器20及び下位回路遮断器10-1、10-2において、符号Z1は、共通端子であり、符号Z2は、故障区間の局地化のためのゾーン選択インタロック(Zone Selective Interlock)信号の出力端子であるゾーン選択インタロック信号出力端子であり、符号Z3は、共通端子であり、符号Z4は、ゾーン選択インタロック信号入力端子であり、符号Z5は、地絡専用入力端子である。
【0015】
前述した従来技術による低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置の動作について説明する。
【0016】
図1において、ポイントA{第2分岐線路DL2上の一地点であるA地点}で過電流、短絡電流、地絡などの故障が発生すると、第2分岐線路DL2上に接続された中位回路遮断器20は、その故障を検出して自動回路遮断(トリップ)動作を行うことにより、上位電力線路PL2から下位電力線路PL1への電源供給を遮断する。
【0017】
よって、下位電力線路PL1から電源が供給されていた下位回路遮断器10-1、10-2と当該下位回路遮断器10-1、10-2を介して電源が供給されていた負荷(図示せず)側は停電状態となる。
【0018】
それと同時に、中位回路遮断器20は、共通端子Z1及びゾーン選択インタロック信号出力端子Z2を介して故障区間の局地化のためのゾーン選択インタロック信号を出力する。
【0019】
すると、上位回路遮断器30は、共通端子Z3、ゾーン選択インタロック信号入力端子Z4及び地絡専用入力端子Z5を介してゾーン選択インタロック信号を受信し、中位回路遮断器20がトリップ動作した状態であると判断する。
【0020】
一方、中位回路遮断器20がトリップ動作に失敗した場合、ゾーン選択インタロック信号を受信した上位回路遮断器30は、トリップ動作を行うことにより、最上位電力線路(図示せず)から上位電力線路PL2への電源供給を遮断する。
【0021】
また、中位回路遮断器20が先にトリップ動作を試み、その後上位回路遮断器30がトリップ動作を行うように、中位回路遮断器20のトリップ設定時間(短限時又は長限時、0.2秒)を上位回路遮断器30のトリップ設定時間(0.3秒)より短くしてもよい。
【0022】
このとき、上位電力線路PL2から電源が供給されていた中位回路遮断器20、下位回路遮断器10-1、10-2及び当該下位回路遮断器10-1、10-2を介して電源が供給されていた負荷(図示せず)側は停電状態となる。
【0023】
図1において、ポイントB{第1分岐線路DL1上の一地点であるB地点}で過電流、短絡電流、地絡などの故障が発生すると、第1分岐線路DL1上に接続された上位回路遮断器30は、その故障を検出して自動回路遮断(トリップ)動作を行うことにより、最上位電力線路(図示せず)から上位電力線路PL2への電源供給を遮断する。
【0024】
しかし、前述した従来技術による低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置においては、上位の回路遮断器がトリップ動作した場合、上位の回路遮断器が下位の回路遮断器にゾーン選択インタロック信号を送信しないので、下位の回路遮断器とそれより下位の負荷側は何らの情報もなく停電するという問題、すなわち保護協調が下位から上位への一方向にのみ行われるという問題があった。
【0025】
また、前述した従来技術による低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置においては、上下位の回路遮断器間の保護協調のために、それぞれの回路遮断器に5つの信号端子と5本の信号線が配線されなければならないので、配線数が多くなり、配線占有空間と配線コストが増加し、配線作業に長時間かかるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
よって、本発明は、前述した従来技術の問題を解決するためになされたものであり、上位から下位へ又は下位から上位への双方向に保護協調を行うことができ、複数の上下位の回路遮断器間の保護協調のための配線数を最小限に抑えることができる、低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記目的を達成するために、本発明は、低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置において、最上位電力回路と上位電力回路間の第1分岐回路に接続され、通信部を有する少なくとも1つの上位低圧回路遮断器と、前記上位電力回路と下位電力回路間の第2分岐回路に接続され、通信部を有する少なくとも1つの中位低圧回路遮断器と、前記下位電力回路と最下位電力回路間の第3分岐回路に接続され、通信部を有する少なくとも1つの下位低圧回路遮断器と、前記上位低圧回路遮断器、前記中位低圧回路遮断器及び前記下位低圧回路遮断器を通信接続する通信線路とを含み、前記上位低圧回路遮断器、前記中位低圧回路遮断器及び前記下位低圧回路遮断器は、トリップ動作時、予め定められた前記上位低圧回路遮断器、前記中位低圧回路遮断器及び前記下位低圧回路遮断器の少なくともいずれかに、前記通信線路を介して、トリップ動作状態を報告する通信パケットを送信する制御部を含む、保護協調装置を提供する。
【0028】
本発明の好ましい一態様によれば、前記上位低圧回路遮断器、前記中位低圧回路遮断器及び前記下位低圧回路遮断器は、イーサネット通信線路により閉ループ状に互いに接続されるように構成される。
【0029】
本発明の好ましい他の態様によれば、前記上位低圧回路遮断器、前記中位低圧回路遮断器及び前記下位低圧回路遮断器は、高速デュアルリング(Dual Ring)通信ネットワークで接続される。
【0030】
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、前記制御部は、RSTP(Rapid Spanning Tree Protocol)アルゴリズムを格納するプログラム格納部を含む。
【0031】
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、本発明による保護協調装置は、前記上位低圧回路遮断器、前記中位低圧回路遮断器及び前記下位低圧回路遮断器の少なくともいずれかに単方向通信のための開ループ状に追加接続され、外部の他の通信ネットワーク又は上位監視装置に通信接続される低圧回路遮断器をさらに含む。
【0032】
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、前記通信パケットは、送信先(destination)回路遮断器の識別情報、送信先回路遮断器に対するトリップ指令情報又は送信元(source)回路遮断器の状態情報、及び送信元回路遮断器の識別情報を含む。
【0033】
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、前記トリップ指令情報は、短限時遅延トリップ情報(short time delay trip information)、地絡遅延トリップ情報(ground fault delay trip information)及び長限時遅延トリップ情報(long time delay trip information)のいずれかで構成される。
【0034】
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、前記送信元回路遮断器の状態情報は、前記送信元回路遮断器の動作状態情報及び自己診断情報(self diagnosis information)を含む。
【発明の効果】
【0035】
本発明による保護協調装置において、上位低圧回路遮断器、中位低圧回路遮断器及び下位低圧回路遮断器は、トリップ動作時、上位低圧回路遮断器、中位低圧回路遮断器及び下位低圧回路遮断器の少なくともいずれかに、通信線路を介して、トリップ動作状態を報告する通信パケットを送信する制御部を含むので、上位から下位へ又は下位から上位への双方向に保護協調を行うことができ、複数の上下位の回路遮断器間の保護協調のための配線が1線又は2線の通信線路で構成されるので、配線数を最小限に抑えることができるという効果がある。
【0036】
本発明による保護協調装置において、上位低圧回路遮断器、中位低圧回路遮断器及び下位低圧回路遮断器は、イーサネット通信線路により閉ループ状に互いに接続されるように構成されるので、上位低圧回路遮断器から下位低圧回路遮断器へ又は下位低圧回路遮断器から上位低圧回路遮断器への双方向通信を行うことができるという効果がある。
【0037】
本発明による保護協調装置において、上位低圧回路遮断器、中位低圧回路遮断器及び下位低圧回路遮断器は、高速デュアルリング通信ネットワークで接続されるので、上位低圧回路遮断器から下位低圧回路遮断器へ又は下位低圧回路遮断器から上位低圧回路遮断器への双方向通信を行うことができ、高速通信を行うことができるという効果がある。
【0038】
本発明による保護協調装置において、前記制御部は、RSTPアルゴリズムを格納するプログラム格納部を含むので、RSTPプロトコルに従って通信パケットを生成、送信、格納又は受信する処理を行うことができるという効果がある。
【0039】
本発明による保護協調装置は、上位低圧回路遮断器、中位低圧回路遮断器及び下位低圧回路遮断器の少なくともいずれかに単方向通信のための開ループ状に接続されるさらなる低圧回路遮断器を含むので、当該さらに接続される低圧回路遮断器をハブ又はネットワークスイッチに接続して前記閉ループ状のネットワークに関する情報を他の通信ネットワーク又は上位監視装置に送信することができるという効果がある。
【0040】
本発明による保護協調装置において、前記通信パケットは、送信先回路遮断器の識別情報、送信先回路遮断器に対するトリップ指令情報又は送信元回路遮断器の状態情報、及び送信元回路遮断器の識別情報を含むので、前記送信元回路遮断器の識別情報が回路遮断器自身を示すものである場合、受信した通信パケットを廃棄したり、前記送信先回路遮断器の識別情報が回路遮断器自身を示すものでない場合、受信した通信パケットを隣接する回路遮断器に転送することができるという効果がある。
【0041】
本発明による保護協調装置において、前記トリップ指令情報は、短限時遅延トリップ情報、地絡遅延トリップ情報及び長限時遅延トリップ情報のいずれかで構成されるので、短限時遅延トリップ、地絡遅延トリップ及び長限時遅延トリップのうち選択的保護協調によるトリップ動作を相手回路遮断器に要求することができるという効果がある。
【0042】
本発明による保護協調装置において、前記送信元回路遮断器の状態情報は、前記送信元回路遮断器の動作状態情報及び自己診断情報を含むので、前記送信先回路遮断器は前記送信元回路遮断器の動作状態及び自己診断結果を知ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】従来技術による低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の好ましい実施形態による低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明による通信パケットの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
前述した本発明の目的とそれを達成する本発明の構成及びその作用効果は、添付図面を参照する本発明の好ましい実施形態についての以下の説明によりさらに明らかになるであろう。
【0045】
図2は本発明の好ましい実施形態による低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置の構成を示すブロック図であり、図3は本発明による通信パケットの構成図である。
【0046】
図2に示すように、本発明の好ましい実施形態による保護協調装置は、少なくとも1つの上位低圧回路遮断器30、少なくとも1つの中位低圧回路遮断器20、少なくとも1つの下位低圧回路遮断器10-1、10-2及び通信線路DRを含む。
【0047】
本発明の好ましい実施形態によれば、上位低圧回路遮断器30、中位低圧回路遮断器20及び下位低圧回路遮断器10-1、10-2は、それぞれ制御部30a、20a、10-1a、10-2aを含む。
【0048】
図2において、符号PL2は上位電力回路を示し、符号PL1は下位電力回路を示す。
【0049】
ここで、上位電力回路PL2は送電側、すなわち電源側に近い電力線路であり、下位電力回路PL1は受電側、すなわち負荷側又は最終の電力使用者に近い電力線路である。
【0050】
図2において、符号UM PL(Uppermost Poser Line)は、最上位電力回路であり、送電側、すなわち電源側に最も近い電力線路を示し、符号LM PL(Lowermost Power Line)は、最下位電力回路であり、受電側、すなわち負荷側又は最終の電力使用者に最も近い電力線路を示す。
【0051】
上位低圧回路遮断器30は、最上位電力回路UM PLと上位電力回路PL2間の第1分岐回路DL1に接続される。
【0052】
上位低圧回路遮断器30は、開閉位置(すなわち、ON位置、OFF又はトリップ位置)によって、第1分岐回路DL1を接続(第1分岐回路を閉路状態にする)又は遮断(第1分岐回路を開路状態にする)することができる。
【0053】
上位低圧回路遮断器30は、通信部P1、P2を有する。
【0054】
また、上位低圧回路遮断器30は、制御部30aを含む。
【0055】
制御部30aは、マイクロプロセッサ又はマイクロコンピュータを含み、中央処理装置などの制御及び処理手段と、メモリなどのプログラム又はデータ格納手段とを含んでもよい。
【0056】
上位低圧回路遮断器30が接続された第1分岐回路DL1に過電流や短絡電流などの異常電流が発生して回路を自動遮断するトリップ動作を行う際に、制御部30aは、予め定められた中位低圧回路遮断器20及び下位低圧回路遮断器10-2の少なくとも一方に、通信線路DRを介して、トリップ動作状態を報告する通信パケットを送信する。
【0057】
本発明の好ましい一態様によれば、制御部30aは、RSTPアルゴリズム(RSTPプログラム)を格納するプログラム格納部を含み、前記通信パケットをRSTPプロトコルによる通信パケットとして生成して送信するようにしてもよい。
【0058】
本発明の好ましい他の態様によれば、制御部30aは、TCP(Transmission Control Protocol)アルゴリズムを格納するプログラム格納部を含み、前記通信パケットをTCPプロトコルによる通信パケットとして生成して送信するようにしてもよい。
【0059】
前記TCPプロトコルによる通信パケットは、送信対象低圧回路遮断器の身元情報を有する送信先フィールド、通信パケットの送信元の身元情報を有する送信元フィールド、シーケンス番号、確認応答番号(ACK番号)及び通信エラーチェックのためのチェックサムフィールドなどの構造を有するようにしてもよい。
【0060】
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、制御部30aは、UDP(User Datagram Protocol)アルゴリズムを格納するプログラム格納部を含み、前記通信パケットをUDPプロトコルによる通信パケットとして生成して送信するようにしてもよい。
【0061】
前記UDPプロトコルによる通信パケットは、送信対象低圧回路遮断器の身元情報を有する送信先フィールド、通信パケットの送信元の身元情報を有する送信元フィールド、及び通信エラーチェックのためのチェックサムフィールドの構造を有するようにしてもよい。
【0062】
中位低圧回路遮断器20は、上位電力回路PL2と下位電力回路PL1間の第2分岐回路DL2に接続される。
【0063】
中位低圧回路遮断器20は、開閉位置によって第2分岐回路DL2を接続又は遮断することができる。
【0064】
中位低圧回路遮断器20は、通信部P1、P2を有する。
【0065】
また、中位低圧回路遮断器20は、制御部20aを含む。
【0066】
制御部20aは、マイクロプロセッサ又はマイクロコンピュータを含み、中央処理装置などの制御及び処理手段と、メモリなどのプログラム又はデータ格納手段とを含んでもよい。
【0067】
中位低圧回路遮断器20が接続された第2分岐回路DL2に異常電流が発生して回路を自動遮断するトリップ動作を行う際に、制御部20aは、予め定められた上位低圧回路遮断器30及び下位低圧回路遮断器10-1の少なくとも一方に、通信線路DRを介して、トリップ動作状態を報告する通信パケットを送信する。
【0068】
制御部20aは、RSTPアルゴリズム(RSTPプログラム)を格納するプログラム格納部を含み、前記通信パケットをRSTPプロトコルによる通信パケットとして生成するようにしてもよい。
【0069】
本発明の好ましい他の態様によれば、制御部20aは、TCPアルゴリズムを格納するプログラム格納部を含み、前記通信パケットをTCPプロトコルによる通信パケットとして生成して送信するようにしてもよい。
【0070】
前記TCPプロトコルによる通信パケットは、送信対象低圧回路遮断器の身元情報を有する送信先フィールド、通信パケットの送信元の身元情報を有する送信元フィールド、シーケンス番号、確認応答番号及び通信エラーチェックのためのチェックサムフィールドなどの構造を有するようにしてもよい。
【0071】
本発明の好ましい他の態様によれば、制御部20aは、UDPアルゴリズムを格納するプログラム格納部を含み、前記通信パケットをUDPプロトコルによる通信パケットとして生成して送信するようにしてもよい。
【0072】
前記UDPプロトコルによる通信パケットは、送信対象低圧回路遮断器の身元情報を有する送信先フィールド、通信パケットの送信元の身元情報を有する送信元フィールド、及び通信エラーチェックのためのチェックサムフィールドの構造を有するようにしてもよい。
【0073】
下位低圧回路遮断器10-1、10-2は、下位電力回路PL1と最下位電力回路LM PL間の第3分岐回路DL3に接続される。
【0074】
下位低圧回路遮断器10-1、10-2は、開閉位置によって第3分岐回路DL3を接続又は遮断することができる。
【0075】
下位低圧回路遮断器10-1、10-2は、通信部P1、P2を有する。
【0076】
また、下位低圧回路遮断器10-1、10-2は、それぞれ制御部10-1a、10-2aを含む。
【0077】
制御部10-1a、10-2aは、マイクロプロセッサ又はマイクロコンピュータを含み、中央処理装置などの制御及び処理手段と、メモリなどのプログラム又はデータ格納手段とを含んでもよい。
【0078】
下位低圧回路遮断器10-1、10-2が接続された第3分岐回路DL3に異常電流が発生して回路を自動遮断するトリップ動作を行う際に、制御部10-1a、10-2aは、予め定められた中位低圧回路遮断器20及び下位低圧回路遮断器10-2の少なくとも一方又は上位低圧回路遮断器30及び下位低圧回路遮断器10-1の少なくとも一方に、通信線路DRを介して、トリップ動作状態を報告する通信パケットを送信する。
【0079】
すなわち、下位低圧回路遮断器10-1、10-2が第1下位低圧回路遮断器10-1である場合、制御部10-1aは、予め定められた中位低圧回路遮断器20及び第2下位低圧回路遮断器10-2の少なくとも一方に、通信線路DRを介して、トリップ動作状態を報告する通信パケットを送信する。下位低圧回路遮断器10-1、10-2が第2下位低圧回路遮断器10-2である場合、制御部10-2aは、予め定められた上位低圧回路遮断器30及び第1下位低圧回路遮断器10-1の少なくとも一方に、通信線路DRを介して、トリップ動作状態を報告する通信パケットを送信する。
【0080】
制御部10-1a、10-2aは、RSTPアルゴリズム(RSTPプログラム)を格納するプログラム格納部を含み、前記通信パケットをRSTPプロトコルによる通信パケットとして生成するようにしてもよい。
【0081】
本発明の好ましい他の態様によれば、制御部10-1a、10-2aは、TCPアルゴリズムを格納するプログラム格納部を含み、前記通信パケットをTCPプロトコルによる通信パケットとして生成して送信するようにしてもよい。
【0082】
前記TCPプロトコルによる通信パケットは、送信対象低圧回路遮断器の身元情報を有する送信先フィールド、通信パケットの送信元の身元情報を有する送信元フィールド、シーケンス番号、確認応答番号及び通信エラーチェックのためのチェックサムフィールドなどの構造を有するようにしてもよい。
【0083】
本発明の好ましい他の態様によれば、制御部10-1a、10-2aは、UDPアルゴリズムを格納するプログラム格納部を含み、前記通信パケットをUDPプロトコルによる通信パケットとして生成して送信するようにしてもよい。
【0084】
前記UDPプロトコルによる通信パケットは、送信対象低圧回路遮断器の身元情報を有する送信先フィールド、通信パケットの送信元の身元情報を有する送信元フィールド、及び通信エラーチェックのためのチェックサムフィールドの構造を有するようにしてもよい。
【0085】
通信線路DRは、上位低圧回路遮断器30、中位低圧回路遮断器20及び下位低圧回路遮断器10-1、10-2を通信接続する。
【0086】
本発明の好ましい一態様によれば、上位低圧回路遮断器30、中位低圧回路遮断器20及び下位低圧回路遮断器10-1、10-2は、イーサネット通信線路により閉ループ状に互いに接続されるように構成される。
【0087】
すなわち、通信線路DRは、上位低圧回路遮断器30、中位低圧回路遮断器20及び下位低圧回路遮断器10-1、10-2を閉ループ状に互いに接続するイーサネット通信線路で構成されてもよい。
【0088】
本発明の好ましい他の態様によれば、上位低圧回路遮断器30、中位低圧回路遮断器20及び下位低圧回路遮断器10-1、10-2は、高速デュアルリング通信ネットワークで接続される。
【0089】
すなわち、通信線路DRは、上位低圧回路遮断器30、中位低圧回路遮断器20及び下位低圧回路遮断器10-1、10-2を互いに接続する高速デュアルリング通信ネットワークで構成されてもよい。
【0090】
上位低圧回路遮断器30、中位低圧回路遮断器20及び下位低圧回路遮断器10-1、10-2が閉ループ状の高速デュアルリング通信ネットワークである通信線路DRに通信接続される構成であるので、上位低圧回路遮断器30、中位低圧回路遮断器20及び下位低圧回路遮断器10-1、10-2のいずれかの回路遮断器が送信する前記通信パケットは、通信線路DRに接続された上位低圧回路遮断器30、中位低圧回路遮断器20及び下位低圧回路遮断器10-1、10-2の全てに送信される。
【0091】
図2に示すように、本発明の好ましい実施形態による保護協調装置は、前記上位低圧回路遮断器、前記中位低圧回路遮断器及び前記下位低圧回路遮断器の少なくともいずれかに単方向通信のための開ループ状に追加接続される低圧回路遮断器5をさらに含んでもよい。
【0092】
低圧回路遮断器5も、前述した通信部P1、P2及び制御部5aを含んでもよい。
【0093】
上位低圧回路遮断器30、中位低圧回路遮断器20及び下位低圧回路遮断器10-1、10-2が互いに接続されて前記閉ループ状のネットワークが形成されるのに対して、低圧回路遮断器5は、ハブ又はネットワークスイッチ6に接続され、前記閉ループ状のネットワークを他の通信ネットワーク、又は例えば遠方監視制御装置やデータ取得装置(SCADA装置)などの上位監視装置に接続する。
【0094】
なお、本発明の好ましい一態様によれば、前記通信パケットは、図3に示すように、送信先回路遮断器の識別情報DID、送信先回路遮断器に対するトリップ指令情報又は送信元回路遮断器の状態情報ITS/ST、及び送信元回路遮断器の識別情報SIDを含んでもよい。
【0095】
本発明の好ましい一態様によれば、トリップ指令情報ITSは、短限時遅延トリップ情報、地絡遅延トリップ情報及び長限時遅延トリップ情報のいずれかで構成されてもよい。
【0096】
本発明の好ましい一態様によれば、送信元回路遮断器の状態情報STは、送信元回路遮断器のON又はトリップ/OFF動作状態情報及び自己診断情報を含む。
【0097】
一方、図2を参照して、前述した本発明による低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置の動作について説明する。
【0098】
図2において、ポイントA{第2分岐回路DL2上の一地点であるA地点}で過電流、短絡電流、地絡などの故障が発生すると、第2分岐回路DL2上に接続された中位回路遮断器20は、その故障を検出して自動回路遮断(トリップ)動作を行うことにより、上位電力回路PL2から下位電力回路PL1への電源供給を遮断する。
【0099】
よって、下位電力回路PL1から電源が供給されていた下位回路遮断器10-1、10-2と当該下位回路遮断器10-1、10-2を介して電源が供給されていた負荷(図示せず)側は停電状態となる。
【0100】
それと同時に、中位回路遮断器20は、通信部P1、P2を介して通信パケットを送信する。
【0101】
ここで、前記通信パケットは、保護協調動作を行う上位低圧回路遮断器30の身元情報(又はアドレス情報)と、中位回路遮断器20の身元情報(又はアドレス情報)と、トリップ指令情報(トリップ指令データ)ITSとして短限時遅延トリップ情報、地絡遅延トリップ情報及び長限時遅延トリップ情報のいずれかと、中位回路遮断器20の状態情報STとを含んでもよい。
【0102】
すると、上位回路遮断器30は、通信部P1、P2を介して前記通信パケットを受信して中位回路遮断器20がトリップ動作した状態であると判断し、トリップ指令情報ITSに基づいて遅延トリップ動作を行う。
【0103】
また、本発明による低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置においては、上位低圧回路遮断器30、中位低圧回路遮断器20及び下位低圧回路遮断器10-1、10-2が通信線路DRを介して閉ループ状に通信接続されるので、上位低圧回路遮断器30だけでなく、下位低圧回路遮断器10-1、10-2も、前記通信パケットを受信して予め格納されたプログラムに従って中位低圧回路遮断器20がトリップ動作した状態であると判断し、前記通信パケット全体又は予め定められた情報データ(例えば、中位低圧回路遮断器の状態情報)のみを選択的に格納することができる。
【0104】
さらに、下位低圧回路遮断器10-2に低圧回路遮断器5が開ループ状に追加接続され、低圧回路遮断器5は、ハブ又はネットワークスイッチ6を介して、前記通信パケットによる情報(状態情報、トリップ指令情報など)を他のネットワーク又は上位監視装置に送信して報告することもできる。
【0105】
一方、中位回路遮断器20がトリップ動作に失敗した場合も、前記通信パケットを受信した上位回路遮断器30が前記トリップ指令情報に基づく遅延トリップ動作を行い、最上位電力回路UM PLから上位電力回路PL2への電源供給を遮断することができる。
【0106】
このとき、上位電力回路PL2から電源が供給されていた中位回路遮断器20、下位回路遮断器10-1、10-2及び当該下位回路遮断器10-1、10-2を介して電源が供給されていた負荷(図示せず)側は停電状態となる。
【0107】
図2において、ポイントB{第1分岐回路DL1上の一地点であるB地点}で過電流、短絡電流、地絡などの故障が発生すると、第1分岐回路DL1上に接続された上位回路遮断器30は、その故障を検出して自動回路遮断(トリップ)動作を行うことにより、最上位電力回路UM PLから上位電力回路PL2への電源供給を遮断する。
【0108】
また、本発明による低圧系統における複数の回路遮断器の保護協調装置においては、上位低圧回路遮断器30、中位低圧回路遮断器20及び下位低圧回路遮断器10-1、10-2が通信線路DRを介して閉ループ状に通信接続されるので、中位低圧回路遮断器20だけでなく、下位低圧回路遮断器10-1、10-2も、前記通信パケットを受信して予め格納されたプログラムに従って上位低圧回路遮断器30がトリップ動作した状態であると判断し、前記通信パケット全体又は予め定められた情報データ(例えば、上位低圧回路遮断器の状態情報)のみを選択的に格納することができる。
【0109】
ここで、上位低圧回路遮断器30、中位低圧回路遮断器20及び下位低圧回路遮断器10-1、10-2は、バッテリ(図示せず)などの一時的な電源供給手段を備え、前記通信パケットを送信、転送、受信及び格納することができる。
【0110】
さらに、下位低圧回路遮断器10-2に低圧回路遮断器5が開ループ状に追加接続され、低圧回路遮断器5は、ハブ又はネットワークスイッチ6を介して、前記通信パケットによる情報(状態情報、トリップ指令情報など)を他のネットワーク又は上位監視装置に送信して報告することもできる。
【0111】
前述したように、本発明による保護協調装置において、上位低圧回路遮断器、中位低圧回路遮断器及び下位低圧回路遮断器は、トリップ動作時、上位低圧回路遮断器、中位低圧回路遮断器及び下位低圧回路遮断器の少なくともいずれかに、通信線路を介して、トリップ動作状態を報告する通信パケットを送信する制御部を含むので、上位から下位へ又は下位から上位への双方向に保護協調を行うことができ、複数の上下位の回路遮断器間の保護協調のための配線が1線又は2線の通信線路で構成されるので、配線数を最小限に抑えることができるという効果がある。
図1
図2
図3