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特許7096905電磁波シールドフィルム、電磁波シールドフィルムの製造方法及びシールドプリント配線板の製造方法
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  • 特許-電磁波シールドフィルム、電磁波シールドフィルムの製造方法及びシールドプリント配線板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】電磁波シールドフィルム、電磁波シールドフィルムの製造方法及びシールドプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20220629BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220629BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20220629BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20220629BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20220629BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20220629BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20220629BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20220629BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20220629BHJP
   C09J 177/00 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
H05K9/00 W
H05K9/00 R
H05K1/03 670Z
H05K1/03 650
B32B7/025
C09J7/35
C09J9/02
C09J133/00
C09J163/00
C09J167/00
C09J175/04
C09J177/00
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020556099
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2019043375
(87)【国際公開番号】W WO2020095919
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2018210569
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 祥久
(72)【発明者】
【氏名】上農 憲治
【審査官】赤穂 州一郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第6329314(JP,B1)
【文献】特開2018-166180(JP,A)
【文献】特開2018-056330(JP,A)
【文献】国際公開第2014/077406(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H05K 1/03
B32B 1/00 - 43/00
C09J 7/00 - 7/50
C09J 9/00 -201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤層と、前記接着剤層に積層されたシールド層と、前記シールド層に積層された絶縁層とを備えたシールドフィルム部と、
保護フィルムと、前記保護フィルムに積層された粘着剤層とからなる保護部と、を備えた電磁波シールドフィルムであって、
前記シールドフィルム部の前記接着剤層に前記保護部の前記粘着剤層が貼り合わされており、
前記接着剤層の、前記粘着剤層と接する側の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2~15μmであり、
前記粘着剤層を構成する樹脂の20℃での貯蔵弾性率が0.1~0.5MPaであることを特徴とする、電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
前記接着剤層は、Tgが0~100℃である樹脂を含む請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
前記粘着剤層は、Tgが-60~0℃である樹脂を含む請求項1又は2に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
前記接着剤層は、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含み熱硬化性である請求項1~3のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項5】
前記粘着剤層は、天然ゴム、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む請求項1~4のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項6】
前記接着剤層が導電性を有する接着剤層である請求項1~5のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項7】
前記絶縁層の前記シールド層が積層された面と反対側の面には、転写フィルムが設けられている請求項1~6のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項8】
シールド層として機能し、導電性を有する接着剤層と、前記接着剤層に積層された絶縁層とを備えたシールドフィルム部と、
保護フィルムと、前記保護フィルムに積層された粘着剤層とからなる保護部と、を備えた電磁波シールドフィルムであって、
前記シールドフィルム部の前記接着剤層に前記保護部の前記粘着剤層が貼り合わされており、
前記接着剤層の、前記粘着剤層と接する側の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2~15μmであり、
前記粘着剤層を構成する樹脂の20℃での貯蔵弾性率が0.1~0.5MPaであることを特徴とする、電磁波シールドフィルム。
【請求項9】
前記接着剤層は、Tgが0~100℃である樹脂を含む請求項8に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項10】
前記粘着剤層は、Tgが-60~0℃である樹脂を含む請求項8又は9に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項11】
前記接着剤層は、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含み熱硬化性である請求項8~10のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項12】
前記粘着剤層は、天然ゴム、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む請求項8~11のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項13】
前記絶縁層の前記接着剤層が積層された面と反対側の面には、転写フィルムが設けられている請求項8~12のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項14】
転写フィルムに絶縁層、シールド層、接着剤層を順次形成してシールドフィルム部を作製する工程と、
保護フィルムを、前記接着剤層に粘着剤層を介して貼り合わせる工程とを含む電磁波シールドフィルムの製造方法であって、
前記接着剤層の、前記粘着剤層と接する側の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2~15μmであり、
前記粘着剤層を構成する樹脂の20℃での貯蔵弾性率が0.1~0.5MPaであることを特徴とする、電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項15】
前記接着剤層に前記保護フィルムを貼り合わせる工程は、
前記接着剤層の表面に前記粘着剤層を形成し、
前記粘着剤層に前記保護フィルムを貼り合わせることにより行う請求項14に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項16】
前記接着剤層に前記保護フィルムを貼り合わせる工程は、
前記保護フィルムの表面に前記粘着剤層を形成し、
前記粘着剤層を前記接着剤層に向けて前記保護フィルムを貼り合わせることにより行う請求項14に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項17】
前記接着剤層に前記保護フィルムを貼り合わせる工程は、10~60℃で行う請求項14~16のいずれかに記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項18】
前記接着剤層に前記保護フィルムを貼り合わせる工程は、前記粘着剤層に含まれる樹脂のTgより高い温度で行う請求項14~17のいずれかに記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項19】
転写フィルムに絶縁層、導電性を有する接着剤層を順次形成してシールドフィルム部を作製する工程と、
保護フィルムを、前記接着剤層に粘着剤層を介して貼り合わせる工程とを含む電磁波シールドフィルムの製造方法であって、
前記接着剤層の、前記粘着剤層と接する側の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2~15μmであり、
前記粘着剤層を構成する樹脂の20℃での貯蔵弾性率が0.1~0.5MPaであることを特徴とする、電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項20】
前記接着剤層に前記保護フィルムを貼り合わせる工程は、
前記接着剤層の表面に前記粘着剤層を形成し、
前記粘着剤層に前記保護フィルムを貼り合わせることにより行う請求項19に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項21】
前記接着剤層に前記保護フィルムを貼り合わせる工程は、
前記保護フィルムの表面に前記粘着剤層を形成し、
前記粘着剤層を前記接着剤層に向けて前記保護フィルムを貼り合わせることにより行う請求項19に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項22】
前記接着剤層に前記保護フィルムを貼り合わせる工程は、10~60℃で行う請求項19~21のいずれかに記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項23】
前記接着剤層に前記保護フィルムを貼り合わせる工程は、前記粘着剤層に含まれる樹脂のTgより高い温度で行う請求項19~22のいずれかに記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項24】
請求項1~13のいずれかに記載の電磁波シールドフィルムを準備する工程と、
前記電磁波シールドフィルムから保護部を剥離する工程と、
前記保護部の剥離によって露出した接着剤層をプリント配線板に向けて接触させて、シールドフィルム部をプリント配線板に接着する工程と、を含むことを特徴とするシールドプリント配線板の製造方法。
【請求項25】
前記接着剤層が熱硬化性樹脂を含み、
前記接着剤層を前記プリント配線板に向けて接触させたのちに熱を加えて前記熱硬化性樹脂を硬化させて、前記シールドフィルム部と前記プリント配線板の接着を行う、請求項24に記載のシールドプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールドフィルム、電磁波シールドフィルムの製造方法及びシールドプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板は、小型化、高機能化が急速に進む携帯電話、ビデオカメラ、ノートパソコンなどの電子機器において、複雑な機構の中に回路を組み込むために多用されている。さらに、その優れた可撓性を生かして、プリンタヘッドのような可動部と制御部との接続にも利用されている。これらの電子機器では、電磁波シールド対策が必須となっており、装置内で使用されるフレキシブルプリント配線板においても、電磁波シールド対策を施したフレキシブルプリント配線板(以下、「シールドプリント配線板」とも記載する)が用いられるようになってきた。
【0003】
一般的なシールドプリント配線板は、通常、ベースフィルム上にプリント回路と絶縁フィルムを順次設けてなるプリント配線板と、接着剤層、接着剤層に積層されたシールド層、及び、シールド層に積層された絶縁層からなる電磁波シールドフィルムから構成される。
電磁波シールドフィルムは、接着剤層がプリント配線板と接するようにプリント配線板に積層され、接着剤層がプリント配線板と接着されることによりシールドプリント配線板が得られる。
【0004】
電磁波シールドフィルムをプリント配線板に接着する前には電磁波シールドフィルムそれ自体を流通させることがあるが、流通時に電磁波シールドフィルムの接着剤層を保護するために接着剤層に保護フィルムを貼り合わせた構成とすることがある。
特許文献1には、このような、接着剤層上に保護フィルム(剥離性シート)を備えた電磁波シールドフィルムの一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5861790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
接着剤層が熱硬化性樹脂を含み、熱硬化性樹脂の熱硬化によりプリント配線板との接着力を発揮する性質の層であるような場合には、接着剤層は常温ではあまり接着性を有しない層となってしまい、保護フィルムを熱硬化性樹脂にそのまま貼り合わせることは難しい。
一方、保護フィルムと接着剤層とを重ねて熱ラミネートを行うことにより、熱硬化性樹脂の接着力を発揮させて保護フィルムと接着剤層を貼り合わせることは可能だが、このようにすると本来プリント配線板との接着力を発揮させるための熱硬化が先に進んでしまうので、プリント配線板と接着させた際の接着性が低下する。
また、保護フィルムと接着剤層の剥離が難しくなるという問題もある。
【0007】
以上の背景を踏まえ、本発明は、常温での貼り合わせが可能で、流通時には接着剤層から剥がれることがなく、使用時には接着剤層から剥がしやすい特性を有する保護フィルムを備えた電磁波シールドフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、接着剤層の接着力を利用する常温での貼り合わせでは保護フィルムと接着剤層との接着力が不足することから、保護フィルムと接着剤層の間に粘着剤層を設けておき粘着剤層の粘着力により接着剤層と保護フィルムとの貼り合わせを行うことについて検討した。
そして、接着剤層の表面状態と粘着剤層の特性を定めることにより、保護フィルムを常温で貼り合わせることができ、使用時に保護フィルムを接着剤層から剥がしやすくすることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の電磁波シールドフィルムは、接着剤層と、上記接着剤層に積層されたシールド層と、上記シールド層に積層された絶縁層とを備えたシールドフィルム部と、
保護フィルムと、上記保護フィルムに積層された粘着剤層とからなる保護部と、を備えた電磁波シールドフィルムであって、
上記シールドフィルム部の上記接着剤層に上記保護部の上記粘着剤層が貼り合わされており、
上記接着剤層の、上記粘着剤層と接する側の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2~15μmであり、
上記粘着剤層を構成する樹脂の20℃での貯蔵弾性率が0.1~0.5MPaであることを特徴とする。
【0010】
保護部に粘着剤層を設けることにより、粘着剤層の粘着力を利用してシールドフィルム部の接着剤層と保護フィルムとの貼り合わせを行うことができる。
そして、粘着剤層と接する側の接着剤層の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2~15μmであり、粘着剤層を構成する樹脂の貯蔵弾性率が0.1~0.5MPaであるので、保護フィルムを常温で貼り合わせることができ、電磁波シールドフィルムの使用時に保護フィルムを含む保護部を接着剤層から容易に剥離することができる。
負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2μm未満であると、保護フィルムの貼り合わせはできるが、保護フィルムを剥がしにくくなる。また、負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが15μmを超えると、粘着剤層と接着剤層の密着性が保てなくなり、電磁波シールドフィルムを取扱う際に、保護フィルムが接着剤層から脱落し易くなる。
粘着剤層を構成する樹脂の貯蔵弾性率が0.1MPa未満であると粘着剤層を構成する樹脂が接着剤層から剥がれにくくなる。また、粘着剤層を構成する樹脂の貯蔵弾性率が0.5MPaを超えると、粘着剤層と接着剤層の密着性が保てなくなり、電磁波シールドフィルムを取扱う際に、保護フィルムが接着剤層から脱落し易くなる。
【0011】
本発明の電磁波シールドフィルムにおいて、上記接着剤層は、Tgが0~100℃である樹脂を含むことが好ましい。
接着剤層に含まれる樹脂のTgが上記範囲内であると、保護フィルムの貼り合わせ及び剥離がより容易になる。
接着剤層のTgが0℃未満であると粘着剤層が接着剤層から剥がれにくくなる。また、接着剤層のTgが100℃を超えると粘着剤層と接着剤層の密着性が保てなくなり、電磁波シールドフィルムを取扱う際に、保護フィルムが接着剤層から脱落し易くなることがある。
【0012】
本発明の電磁波シールドフィルムにおいて、上記粘着剤層は、Tgが-60~0℃である樹脂を含むことが好ましい。
粘着剤層に含まれる樹脂のTgが上記範囲内であると、保護フィルムの貼り合わせ及び剥離がより容易になる。
粘着剤層のTgが-60℃未満であると粘着剤層が接着剤層から剥がれにくくなる。また、粘着層のTgが0℃を超えると粘着剤層と接着剤層の密着性が保てなくなり、電磁波シールドフィルムを取扱う際に、保護フィルムが接着剤層から脱落し易くなることがある。
【0013】
本発明の電磁波シールドフィルムにおいて、上記接着剤層は、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含み熱硬化性であることが好ましい。
接着剤層が上記樹脂を含み熱硬化性であると、耐熱性が良好である。
【0014】
本発明の電磁波シールドフィルムにおいて、上記粘着剤層は、天然ゴム、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。
粘着剤層が上記樹脂を含むと、粘着性を発現する。
【0015】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記接着剤層が導電性を有する接着剤層であることが好ましい。
通常、プリント配線板の電子回路には、グランド回路も設けられる。本発明の電磁波シールドフィルムの接着剤層が、導電性を有する場合、電磁波シールドフィルムの接着剤層をグランド回路と接触させるように電磁波シールドフィルムをプリント配線板に配置することにより、これらが電気的に接続する。さらに、電磁波シールドフィルムの接着剤層と外部グランドとを電気的に接続させることにより、グランド回路と外部グランドとを電気的に接続させることができる。
【0016】
本発明の電磁波シールドフィルムにおいて、上記絶縁層の上記シールド層が積層された面と反対側の面には、転写フィルムが設けられていることが好ましい。
転写フィルムが設けられていると電磁波シールドフィルムの流通時に絶縁層を保護することができる。
【0017】
本発明の別の電磁波シールドフィルムは、シールド層として機能し、導電性を有する接着剤層と、上記接着剤層に積層された絶縁層とを備えたシールドフィルム部と、
保護フィルムと、上記保護フィルムに積層された粘着剤層とからなる保護部と、を備えた電磁波シールドフィルムであって、
上記シールドフィルム部の上記接着剤層に上記保護部の上記粘着剤層が貼り合わされており、
上記接着剤層の、上記粘着剤層と接する側の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2~15μmであり、
上記粘着剤層を構成する樹脂の20℃での貯蔵弾性率が0.1~0.5MPaであることを特徴とする。
【0018】
上記構成の電磁波シールドフィルムは、接着剤層が導電性を有しており、接着剤層がシールド層としても機能する。
このような接着剤層に対しても、保護部に粘着剤層を設けることにより、粘着剤層の粘着力を利用してシールドフィルム部の接着剤層と保護フィルムとの貼り合わせを行うことができる。
そして、粘着剤層と接する側の接着剤層の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2~15μmであり、粘着剤層を構成する樹脂の貯蔵弾性率が0.1~0.5MPaであるので、保護フィルムを常温で貼り合わせることができ、電磁波シールドフィルムの使用時に保護フィルムを含む保護部を接着剤層から容易に剥離することができる。
負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2μm未満であると、保護フィルムの貼り合わせはできるが、保護フィルムを剥がしにくくなる。また、負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが15μmを超えると、粘着剤層と接着剤層の密着性が保てなくなり、電磁波シールドフィルムを取扱う際に、保護フィルムが接着剤層から脱落し易くなる。
粘着剤層を構成する樹脂の貯蔵弾性率が0.1MPa未満であると粘着剤層を構成する樹脂が剥がれにくくなる。また、粘着剤層を構成する樹脂の貯蔵弾性率が0.5MPaを超えると、粘着剤層と接着剤層の密着性が保てなくなり、電磁波シールドフィルムを取扱う際に、保護フィルムが接着剤層から脱落し易くなる。
【0019】
本発明の別の電磁波シールドフィルムでは、上記接着剤層は、Tgが0~100℃である樹脂を含むことが好ましい。
接着剤層に含まれる樹脂のTgが上記範囲内であると、保護フィルムの貼り合わせ及び剥離がより容易になる。
接着剤層のTgが0℃未満であると粘着剤層が接着剤層から剥がれにくくなる。また、接着剤層のTgが100℃を超えると粘着剤層と接着剤層の密着性が保てなくなり、電磁波シールドフィルムを取扱う際に、保護フィルムが接着剤層から脱落し易くなることがある。
【0020】
本発明の別の電磁波シールドフィルムでは、上記粘着剤層は、Tgが-60~0℃である樹脂を含むことが好ましい。
粘着剤層に含まれる樹脂のTgが上記範囲内であると、保護フィルムの貼り合わせ及び剥離がより容易になる。
粘着剤層のTgが-60℃未満であると粘着剤層が接着剤層から剥がれにくくなる。また、粘着層のTgが0℃を超えると粘着剤層と接着剤層の密着性が保てなくなり、電磁波シールドフィルムを取扱う際に、保護フィルムが接着剤層から脱落し易くなることがある。
【0021】
本発明の別の電磁波シールドフィルムでは、上記接着剤層は、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含み熱硬化性であることが好ましい。
接着剤層が上記樹脂を含み熱硬化性であると、耐熱性が良好である。
【0022】
本発明の別の電磁波シールドフィルムでは、上記粘着剤層は、天然ゴム、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。
粘着剤層が上記樹脂を含むと、粘着性を発現する。
【0023】
本発明の別の電磁波シールドフィルムでは、上記絶縁層の上記接着剤層が積層された面と反対側の面には、転写フィルムが設けられていることが好ましい。
転写フィルムが設けられていると電磁波シールドフィルムの流通時に絶縁層を保護することができる。
【0024】
本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法は、転写フィルムに絶縁層、シールド層、接着剤層を順次形成してシールドフィルム部を作製する工程と、
保護フィルムを、上記接着剤層に粘着剤層を介して貼り合わせる工程とを含む電磁波シールドフィルムの製造方法であって、
上記接着剤層の、上記粘着剤層と接する側の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2~15μmであり、
上記粘着剤層を構成する樹脂の20℃での貯蔵弾性率が0.1~0.5MPaであることを特徴とする。
【0025】
シールドフィルム部の接着剤層と保護フィルムを粘着剤層を介して貼り合わせることによって、保護フィルムを備える電磁波シールドフィルムを製造することができる。
粘着剤層と接する側の接着剤層の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcと粘着剤層を構成する樹脂の貯蔵弾性率が好適な範囲に定められているので、貼り合わせにより保護フィルムが適度な接着強度で接着剤層の表面に設けられる。
また、電磁波シールドフィルムの使用時には保護フィルムを含む保護部を容易に接着剤層から剥離することができる。
負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2μm未満であると、保護フィルムの貼り合わせはできるが、保護フィルムを剥がしにくくなる。また、負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが15μmを超えると、粘着剤層と接着剤層の密着性が保てなくなり、電磁波シールドフィルムを取扱う際に、保護フィルムが接着剤層から脱落し易くなる。
粘着剤層を構成する樹脂の貯蔵弾性率が0.1MPa未満であると粘着剤層を構成する樹脂が剥がれにくくなる。また、粘着剤層を構成する樹脂の貯蔵弾性率が0.5MPaを超えると、粘着剤層と接着剤層の密着性が保てなくなり、電磁波シールドフィルムを取扱う際に、保護フィルムが接着剤層から脱落し易くなる。
【0026】
本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法において、上記接着剤層に上記保護フィルムを貼り合わせる工程は、
上記接着剤層の表面に上記粘着剤層を形成し、
上記粘着剤層に上記保護フィルムを貼り合わせることにより行うことが好ましい。
また、本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法において、上記接着剤層に上記保護フィルムを貼り合わせる工程は、
上記保護フィルムの表面に上記粘着剤層を形成し、
上記粘着剤層を上記接着剤層に向けて上記保護フィルムを貼り合わせることにより行うことが好ましい。
粘着剤層は接着剤層の表面に設けても、保護フィルムの表面に設けてもよく、いずれの場合であっても接着剤層と保護フィルムを粘着剤層を介して貼り合わせることができる。
【0027】
本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法では、上記接着剤層に上記保護フィルムを貼り合わせる工程は、10~60℃で行うことが好ましい。
また、上記接着剤層に上記保護フィルムを貼り合わせる工程は、上記粘着剤層に含まれる樹脂のTgより高い温度で行うことが好ましい。
接着剤層に保護フィルムを貼り合わせる工程が10~60℃で行われると、常温付近での作業になるのでシールドフィルム部を構成する接着剤層が熱硬化性樹脂からなる場合に接着剤層の熱硬化が進まず、接着剤層の接着性が失われないために好ましい。
また、接着剤層に保護フィルムを貼り合わせる工程が粘着剤層に含まれる樹脂のTgより高い温度で行われると、粘着剤層による粘着力が良好に発揮されるために好ましい。
【0028】
本発明の別の電磁波シールドフィルムの製造方法は、転写フィルムに絶縁層、導電性を有する接着剤層を順次形成してシールドフィルム部を作製する工程と、
保護フィルムを、上記接着剤層に粘着剤層を介して貼り合わせる工程とを含む電磁波シールドフィルムの製造方法であって、
上記接着剤層の、上記粘着剤層と接する側の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2~15μmであり、
上記粘着剤層を構成する樹脂の20℃での貯蔵弾性率が0.1~0.5MPaであることを特徴とする。
【0029】
上記製造工程では、転写フィルムに絶縁層と導電性を有する接着剤層を形成することでシールドフィルム部を作製する。
このような構成のシールドフィルム部の接着剤層と保護フィルムを粘着剤層を介して貼り合わせることによっても、保護フィルムを備える電磁波シールドフィルムを製造することができる。
粘着剤層と接する側の接着剤層の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcと粘着剤層を構成する樹脂の貯蔵弾性率が好適な範囲に定められているので、貼り合わせにより保護フィルムが適度な接着強度で接着剤層の表面に設けられる。
また、電磁波シールドフィルムの使用時には保護フィルムを含む保護部を容易に接着剤層から剥離することができる。
負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2μm未満であると、保護フィルムの貼り合わせはできるが、保護フィルムを剥がしにくくなる。また、負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが15μmを超えると、粘着剤層と接着剤層の密着性が保てなくなり、電磁波シールドフィルムを取扱う際に、保護フィルムが接着剤層から脱落し易くなる。
粘着剤層を構成する樹脂の貯蔵弾性率が0.1MPa未満であると粘着剤層を構成する樹脂が剥がれにくくなる。また、粘着剤層を構成する樹脂の貯蔵弾性率が0.5MPaを超えると、粘着剤層と接着剤層の密着性が保てなくなり、電磁波シールドフィルムを取扱う際に、保護フィルムが接着剤層から脱落し易くなる。
【0030】
本発明の別の電磁波シールドフィルムの製造方法において、上記接着剤層に上記保護フィルムを貼り合わせる工程は、
上記接着剤層の表面に上記粘着剤層を形成し、
上記粘着剤層に上記保護フィルムを貼り合わせることにより行うことが好ましい。
また、本発明の別の電磁波シールドフィルムの製造方法において、上記接着剤層に上記保護フィルムを貼り合わせる工程は、
上記保護フィルムの表面に上記粘着剤層を形成し、
上記粘着剤層を上記接着剤層に向けて上記保護フィルムを貼り合わせることにより行うことが好ましい。
粘着剤層は接着剤層の表面に設けても、保護フィルムの表面に設けてもよく、いずれの場合であっても接着剤層と保護フィルムを粘着剤層を介して貼り合わせることができる。
【0031】
本発明の別の電磁波シールドフィルムの製造方法において、上記接着剤層に上記保護フィルムを貼り合わせる工程は、10~60℃で行うことが好ましい。
また、上記接着剤層に上記保護フィルムを貼り合わせる工程は、上記粘着剤層に含まれる樹脂のTgより高い温度で行うことが好ましい。
接着剤層に保護フィルムを貼り合わせる工程が10~60℃で行われると、常温付近での作業になるのでシールドフィルム部を構成する接着剤層が熱硬化性樹脂からなる場合に接着剤層の熱硬化が進まず、接着剤層の接着性が失われないために好ましい。
また、接着剤層に保護フィルムを貼り合わせる工程が粘着剤層に含まれる樹脂のTgより高い温度で行われると、粘着剤層による粘着力が良好に発揮されるために好ましい。
【0032】
本発明のシールドプリント配線板の製造方法は、本発明の電磁波シールドフィルムを準備する工程と、
上記電磁波シールドフィルムから保護部を剥離する工程と、
上記保護部の剥離によって露出した接着剤層をプリント配線板に向けて接触させて、シールドフィルム部をプリント配線板に接着する工程と、を含むことを特徴とする。
【0033】
上記方法では、シールドフィルム部の接着剤層はプリント配線板に接触される直前まで保護部によって保護させておくことができる。そのため接着剤層にコンタミが侵入する等の不具合が防止され、シールドプリント配線板の信頼性を高めることができる。
また、保護部の剥離は容易に行うことができるので、作業性も良好である。
【0034】
本発明のシールドプリント配線板の製造方法では、上記接着剤層が熱硬化性樹脂を含み、
上記接着剤層を上記プリント配線板に向けて接触させたのちに熱を加えて上記熱硬化性樹脂を硬化させて、上記シールドフィルム部と上記プリント配線板の接着を行うことが好ましい。
【0035】
上記方法では、接着剤層の熱硬化性樹脂の硬化がプリント配線板との接着の際に行われるので、シールドフィルム部とプリント配線板が強固に接着し、信頼性の高いシールドプリント配線板とすることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、粘着剤層の粘着力を利用してシールドフィルム部の接着剤層と保護フィルムとの貼り合わせを行うことができる。
そして、粘着剤層と接する側の接着剤層の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2~15μmであり、粘着剤層を構成する樹脂の貯蔵弾性率が0.1~0.5MPaであるので、保護フィルムを常温で貼り合わせることができ、電磁波シールドフィルムの使用時に保護フィルムを含む保護部を接着剤層から容易に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムの断面の一例を模式的に示す断面図である。
図2図2A図2B図2C及び図2Dは、本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
図3図3A図3B図3C及び図3Dは、本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法の別の一例を模式的に示す工程図である。
図4図4A図4B及び図4Cは、本発明のシールドプリント配線板の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
図5図5は、本発明の第2実施形態に係る電磁波シールドフィルムの断面の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の電磁波シールドフィルム、電磁波シールドフィルムの製造方法及びシールドプリント配線板の製造方法について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0039】
本発明の電磁波シールドフィルムは、保護フィルムに粘着剤層を設けることにより、粘着剤層の粘着力を利用してシールドフィルム部の接着剤層と保護フィルムとの貼り合わせを行うことができる。
そして、粘着剤層と接する側の接着剤層の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2~15μmであり、粘着剤層を構成する樹脂の貯蔵弾性率が0.1~0.5MPaであるので、保護フィルムを常温で貼り合わせることができ、電磁波シールドフィルムの使用時に保護フィルムを含む保護部を接着剤層から容易に剥離することができる。
【0040】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムは、シールドフィルム部が接着剤層と、接着剤層に積層されたシールド層と、シールド層に積層された絶縁層の3層を備えている。
【0041】
図1は、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムの断面の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、電磁波シールドフィルム1は、シールドフィルム部10と保護部20を備えている。
シールドフィルム部10は、接着剤層11、シールド層12及び絶縁層13を備えている。
保護部20は、保護フィルム21及び粘着剤層22を備えている。
以下、電磁波シールドフィルム1の各構成について詳述する。
【0042】
(シールドフィルム部)
シールドフィルム部10は、電磁波シールド性を発揮させるための部分である。
接着剤層11は、プリント配線板に電磁波シールドフィルムを貼り付ける際にプリント配線板に対する接着力を発揮させるための層である。
接着剤層は熱硬化性樹脂を含む層であることが好ましく、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含み熱硬化性であることがより好ましい。
接着剤層が上記樹脂を含み熱硬化性であると、耐熱性が良好である。
【0043】
接着剤層は、そのTgが0~100℃である樹脂を含むことが好ましい。
本明細書における樹脂のTgは樹脂のガラス転移点であり、以下のようにして測定することができる。
まず、示差走査熱量分析計(例えば、セイコー電子工業株式会社製、商品名「DSC220型」)にて、測定試料5mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封する。次に、220℃で5分間維持して試料を完全に溶融させた後、液体窒素で急冷し、その後-150℃から250℃まで、20℃/分の昇温速度で加熱する。そして、横軸を昇温時間、縦軸を試料の温度とした座標に得られたデータをプロットして曲線を描く。当該曲線の変曲点をガラス転移点Tgとする。
【0044】
接着剤層は、粘着剤層と接する側の接着剤層の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2~15μmである。
また、粘着剤層と接する側の接着剤層の表面の算術平均粗さRaが0.7~1.2μmであることが好ましい。粘着剤層と接する側の接着剤層の表面の算術平均粗さRaが0.7μm未満であると、保護フィルムの貼り合わせはできるが、保護フィルムを剥がしにくくなる。また、粘着剤層と接する側の接着剤層の表面の算術平均粗さRaが1.2μmを超えると、粘着剤層と接着剤層の密着性が保てなくなり、電磁波シールドフィルムを取扱う際に、保護フィルムが接着剤層から脱落し易くなる。
接着剤層の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcは、ISO 25718-6(2010)で定められる3次元表面性状のパラメータである。また、接着剤層の表面の算術平均粗さRaは、JIS B 0601(2001)で定められる表面粗さパラメータである。
これらのパラメータは、コンフォーカル顕微鏡(Lasertec社製、OPTELICS HYBRID)等の表面形状測定機に付随する解析ソフトウェアを用いて測定することができる。
【0045】
本発明の電磁波シールドフィルムにおける接着剤層は、プリント配線板との接着力を発揮させるための硬化が進んでいない状態、すなわち未硬化状態であることが好ましい。
接着剤層のゲル分率を測定して接着剤層中のゲル分率が10~50質量%であれば接着剤層が未硬化状態であるといえるので、接着剤層のゲル分率が10~50質量%であることが好ましく、接着剤層のゲル分率が10~30質量%であることがより好ましい。
【0046】
なお、接着剤層の「ゲル分率」とは以下のようにして求めることができる。
100メッシュの金網を幅30mm、長さ100mmに裁断し、重量(W1)を測定する。続いて、10mm、長さ80mmの接着剤層を前述の金網で包み試験片とし、重量(W2)を測定する。作製した試験片をTHF(テトラヒドロフラン)中に侵漬させて、25℃で1時間振とう後、試験片をTHFから取り出し、150℃で10分間乾燥したあと、重量(W3)を測定する。下記計算式[2]を用いて、溶解せずに金網に残った成分の重量分率をゲル分率として算出する。
(W3-W1)/(W2-W1)×100 [%] [2]
【0047】
接着剤層には、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、粘度調節剤等が含まれていてもよい。
【0048】
また、接着剤層は、導電性を有する接着剤層(以下、導電性接着剤層ともいう)であることも好ましい。
接着剤層が導電性接着剤層であると、電磁波シールドフィルムの接着剤層と外部グランドとを電気的に接続させることにより、グランド回路と外部グランドとを電気的に接続させることができる。
接着剤層が導電性接着剤層である場合、導電性接着剤層は導電性粒子と樹脂から構成されていてもよい。
樹脂としては上記した樹脂を使用することができる。
【0049】
導電性粒子としては、特に限定されないが、金属微粒子、カーボンナノチューブ、炭素繊維、金属繊維等であってもよい。
【0050】
導電性粒子が金属微粒子である場合、金属微粒子としては、特に限定されないが、銀粉、銅粉、ニッケル粉、ハンダ粉、アルミニウム粉、銅粉に銀めっきを施した銀コート銅粉、高分子微粒子やガラスビーズ等を金属で被覆した微粒子等であってもよい。
これらの中では、経済性の観点から、安価に入手できる銅粉又は銀コート銅粉であることが望ましい。
【0051】
導電性粒子の形状は、特に限定されないが、球状、扁平状、リン片状、デンドライト状、棒状、繊維状等から適宜選択することができる。
導電性接着剤層は、異方導電性を有していても、等方導電性を有していてもよい。
【0052】
シールド層12は、導電性を有する層であり、金属からなることが好ましい。
シールド層は、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、スズ、パラジウム、クロム、チタン、亜鉛等の材料からなる層を含んでいてもよく、銅層を含むことが望ましい。
銅は、導電性及び経済性の観点からシールド層にとって好適な材料である。
なお、シールド層は、上記金属の合金からなる層を含んでいてもよい。
また、シールド層としては金属箔を用いてもよく、スパッタリングや無電解めっき、電解めっき等の方法で形成された金属膜であってもよい。
【0053】
また、シールド層が導電性接着剤層であってもよい。シールド層が導電性接着剤層である場合、接着剤層は絶縁性の接着剤層であってもよく、接着剤層も導電性接着剤層であってもよい。
シールド層及び接着剤層がいずれも導電性接着剤層である場合、その組成は同じであっても異なっていてもよい。
【0054】
絶縁層13は充分な絶縁性を有し、接着剤層11及びシールド層12を保護できれば特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、活性エネルギー線硬化性組成物等から構成されていることが望ましい。
上記熱可塑性樹脂組成物としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等が挙げられる。
【0055】
上記熱硬化性樹脂組成物としては、特に限定されないが、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、ウレタンウレア系樹脂組成物、スチレン系樹脂組成物、フェノール系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物及びアルキッド系樹脂組成物からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂組成物が挙げられる。
【0056】
上記活性エネルギー線硬化性組成物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物等が挙げられる。
【0057】
絶縁層は、1種単独の材料から構成されていてもよく、2種以上の材料から構成されていてもよい。
【0058】
絶縁層には、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、粘度調節剤、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
【0059】
絶縁層の厚さは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、1~15μmであることが望ましく、3~10μmであることがより望ましい。
絶縁層の厚さが1μm未満であると、薄すぎるので接着剤層及びシールド層を充分に保護しにくくなる。
絶縁層の厚さが15μmを超えると、厚すぎるので電磁波シールドフィルムが折り曲がりにくくなり、また、絶縁層自身が破損しやすくなる。そのため、耐折り曲げ性が要求される部材へ適用しにくくなる。
【0060】
シールドフィルム部においては、シールド層と絶縁層との間にアンカーコート層が形成されていてもよい。
アンカーコート層の材料としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0061】
(保護部)
保護部20は、保護フィルム21及び粘着剤層22を含み、流通時に電磁波シールドフィルムの接着剤層を保護するために接着剤層に貼り合わせられる部分である。
保護フィルム21としては、ポリエステルフィルム(PETフィルム等)、ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム等)、PENフィルム、PPSフィルム、ポリイミドフィルム等を使用することができる。
保護フィルムの厚さは10~125μmであることが好ましく、20~100μmがより好ましく、50~100μmがさらに好ましい。
【0062】
粘着剤層22は、シールドフィルム部の接着剤層に対して粘着剤層の粘着力により保護フィルムを貼り合わせるための層である。
保護フィルムの貼り合わせの作業性を向上させる観点から、粘着剤層は常温付近で粘着性を有していることが好ましい。
粘着剤層は、天然ゴム、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。
また、粘着剤層はTgが-60~0℃である樹脂を含むことが好ましい。
粘着剤層に含まれる樹脂のTgが上記範囲内であると、保護フィルムの貼り合わせ及び剥離がより容易になる。
【0063】
粘着剤層は、粘着剤層を構成する樹脂の20℃での貯蔵弾性率が0.1~0.5MPaである。
樹脂の貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(レオメーター)によって測定することができる。
また、粘着剤層の厚さは10~50μmであることが好ましく、15~30μmがより好ましい。
【0064】
(転写フィルム)
本発明の電磁波シールドフィルムにおいて、絶縁層のシールド層が積層された面と反対側の面(図1における絶縁層13の上側の露出面)には、転写フィルムが設けられていてもよい。
転写フィルムは、後述する本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法において電磁波シールドフィルムを構成する各層を積層する際のベースとなるフィルムである(図2A図2B図2C及び図2D参照)。
【0065】
転写フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリブテン、軟質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル等のプラスチックシート等、グラシン紙、上質紙、クラフト紙、コート紙等の紙類、各種の不織布、合成紙、金属箔や、これらを組み合わせた複合フィルムなどが挙げられる。
転写フィルムは片面又は両面に離型処理をされたフィルムであってもよく、離型処理方法としては、離型剤をフィルムの片面又は両面に塗布したり、物理的にマット化処理する方法が挙げられる。
【0066】
転写フィルムと絶縁層の間には転写フィルム用粘着剤層が設けられていてもよい。この場合転写フィルムは転写フィルム用粘着剤層により貼り合わせられた状態となる。転写フィルムは電磁波シールドフィルムの使用時には電磁波シールドフィルムから容易に剥離することができる必要があり、転写フィルム用粘着剤層は転写フィルムの剥離時に転写フィルム側に残るようにすることが好ましい。
【0067】
転写フィルム用粘着剤層としては、保護部において使用する粘着剤層と同様の材料を使用することができる。電磁波シールドフィルムにおいて保護部における粘着剤層と転写フィルム用粘着剤層は同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
【0068】
(電磁波シールドフィルムの製造方法)
次に、本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法について説明する。なお、本発明の電磁波シールドフィルムは、以下に示す方法で製造されたものに限定されない。
【0069】
図2A図2B図2C及び図2Dは、本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
まず、図2Aに示すように転写フィルムを準備する。図2Aには転写フィルムとして、転写フィルム30に転写フィルム用粘着剤層31が設けられたものを使用する例を示している。
【0070】
続いて、図2Bに示すように転写フィルム上に絶縁層13、シールド層12、接着剤層11を順次形成してシールドフィルム部10を作製する。
絶縁層の形成は、絶縁層を構成する樹脂組成物を塗布することにより行うことができる。
シールド層の形成は、シールド層が金属箔である場合は、金属箔の貼り付けにより行うことができ、シールド層が金属膜である場合は、スパッタリングや無電解めっき、電解めっき等の製膜方法により行うことができる。
また、樹脂付き銅箔のようなものを使用すれば、絶縁層の形成とシールド層の形成を同時に行うこともできる。
接着剤層の形成は、接着剤層を構成する材料を含む接着剤層用組成物を塗布することにより行うことができる。塗布方式としては、従来公知のコーティング方法、例えば、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等が挙げられる。
【0071】
接着剤層を形成する際又は接着剤層の形成後に、適切な処理を行うことにより、接着剤層の表面状態を調整して表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2~15μmになるようにする。
例えば、接着剤層用組成物中の樹脂成分の濃度を変更することにより接着剤層の表面状態を制御することができる。
また、接着剤層の厚さを変更することによって接着剤層の表面状態を制御することができる。
また、導電性粒子を含む接着剤層とする場合、導電性粒子の平均粒子径、導電性粒子の配合量を変えることによって接着剤層の表面状態を制御することができる。
さらに、導電性粒子に代えて、絶縁性粒子(シリカや樹脂粒子)等を使用してこれらの粒子の平均粒子径、配合量を変えることによっても接着剤層の表面状態を制御することができる。
【0072】
別途、図2Cに示すように保護部20となる保護フィルム21を準備する。図2Cには保護フィルム21の表面に粘着剤層22を形成した保護部を示している。
保護フィルム21の表面への粘着剤層22の形成は、接着剤層の形成方法として上記した公知の塗布方式により、粘着剤層を構成する樹脂を含む組成物を塗布することにより行うことができる。
また、粘着剤層としては粘着剤層を構成する樹脂の貯蔵弾性率が0.1~0.5MPaである樹脂を含む組成物を使用する。
【0073】
次に、図2Dに示すように、粘着剤層22を接着剤層11に向けて保護フィルム21を粘着剤層22を介して貼り合わせる。
上記工程により、転写フィルム30上に形成された電磁波シールドフィルム1を製造することができる。
【0074】
接着剤層に保護フィルムを貼り合わせる工程は、10~60℃で行うことが好ましい。
また、接着剤層に保護フィルムを貼り合わせる工程は、粘着剤層に含まれる樹脂のTgより高い温度で行うことが好ましい。
接着剤層に保護フィルムを貼り合わせる工程が10~60℃で行われると、常温付近での作業になるのでシールドフィルム部を構成する接着剤層が熱硬化性樹脂からなる場合に接着剤層の熱硬化が進まず、接着剤層の接着性が失われないために好ましい。
また、接着剤層に上記保護フィルムを貼り合わせる工程が粘着剤層に含まれる樹脂のTgより高い温度で行われると、粘着剤層による粘着力が良好に発揮されるために好ましい。
【0075】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、粘着剤層と接する側の接着剤層の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2~15μmであり、粘着剤層を構成する樹脂の貯蔵弾性率が0.1~0.5MPaであるので、保護フィルムを常温で貼り合わせることができる。
また、電磁波シールドフィルムの使用時に保護フィルムを含む保護部を接着剤層から容易に剥離することができる。
【0076】
ここまで、本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法の一例として、保護フィルムの表面に粘着剤層を形成し、保護フィルムを接着剤層に貼り合わせる工程を含む製造方法を説明したが、粘着剤層は接着剤層の表面に設けてもよい。以下、その方法について説明する。
【0077】
図3A図3B図3C及び図3Dは、本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法の別の一例を模式的に示す工程図である。
まず、図3Aに示すように転写フィルム30に転写フィルム用粘着剤層31が設けられたものを準備する。これは図2Aに示すものと同じである。
【0078】
次に、図3Bに示すように転写フィルム上に絶縁層13、シールド層12、接着剤層11を順次形成してシールドフィルム部10を作製する。ここまでは図2Bに示す工程と同じである。
そして、シールドフィルム部10の作製後、接着剤層11の表面に粘着剤層22を形成する。
接着剤層11の表面への粘着剤層22の形成は、接着剤層の形成方法として上記した公知の塗布方式により、粘着剤層を構成する樹脂を含む組成物を塗布することにより行うことができる。
【0079】
別途、図3Cに示すように保護フィルム21を準備する。この保護フィルム21には粘着剤層は設けられていない。
【0080】
次に、図3Dに示すように、粘着剤層22に保護フィルム21を貼り合わせて保護部20を形成する。
上記工程により、転写フィルム30上に形成された電磁波シールドフィルム1を製造することができる。
【0081】
(シールドプリント配線板の製造方法)
次に、本発明のシールドプリント配線板の製造方法について説明する。
本発明のシールドプリント配線板の製造方法では、本発明の電磁波シールドフィルムを使用する。
【0082】
図4A図4B及び図4Cは、本発明のシールドプリント配線板の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
図4Aには本発明の電磁波シールドフィルム1を示している。
まず、保護部20を電磁波シールドフィルム1から剥離する。
本発明の電磁波シールドフィルムでは、粘着剤層と接する側の接着剤層の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2~15μmであり、粘着剤層を構成する樹脂の貯蔵弾性率が0.1~0.5MPaであるので、保護フィルムを含む保護部を接着剤層から容易に剥離することができる。
【0083】
図4Bには保護部を剥離した電磁波シールドフィルム、すなわちシールドフィルム部10を示している。また、電磁波シールドフィルムを接着する対象となるプリント配線板の一例としてのプリント配線板40を示している。
プリント配線板40は、ベースフィルム41と、ベースフィルム41上に形成されたプリント回路42と、プリント回路42を覆うように形成されたカバーレイ43からなる。
【0084】
プリント配線板40を構成するベースフィルム41及びカバーレイ43の材料は、特に限定されないが、エンジニアリングプラスチックからなることが望ましい。このようなエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイドなどの樹脂が挙げられる。
また、これらのエンジニアリングプラスチックの内、難燃性が要求される場合には、ポリフェニレンサルファイドフィルムが望ましく、耐熱性が要求される場合にはポリイミドフィルムが望ましい。なお、ベースフィルム41の厚みは、10~40μmであることが望ましい。また、カバーレイ43の厚みは、10~30μmであることが望ましい。
【0085】
プリント配線板40を構成するプリント回路42は、特に限定されないが、導電性材料をエッチング処理すること等により形成することができる。
導電材料としては、銅、ニッケル、銀、金等が挙げられる。
【0086】
保護部の剥離によって露出した接着剤層11をプリント配線板40に向けて接触させて、シールルドフィルム部10をプリント配線板40に接着することで、図4Cに示すようなシールドプリント配線板50が得られる。
【0087】
接着剤層が熱硬化性樹脂を含む場合には、シールドフィルム部をプリント配線板に接触させた後に熱を加えて熱硬化性樹脂を硬化させてシールドフィルム部とプリント配線板の接着を行うことが好ましい。
上記工程により、本発明の電磁波シールドフィルムを使用してシールドプリント配線板を製造することができる。
【0088】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る電磁波シールドフィルムは、シールドフィルム部が、シールド層として機能し、導電性を有する接着剤層と、上記接着剤層に積層された絶縁層の2層を備えている。
シールドフィルム部以外の構成は本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムと同様である。
【0089】
図5は、本発明の第2実施形態に係る電磁波シールドフィルムの断面の一例を模式的に示す断面図である。
図5に示すように、電磁波シールドフィルム101は、シールドフィルム部110と保護部120を備えている。
シールドフィルム部110は、導電性を有する接着剤層111及び絶縁層113を備えている。
保護部120は、保護フィルム121及び粘着剤層122を備えている。
【0090】
導電性を有する接着剤層111は、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムの接着剤層と同様に、プリント配線板に電磁波シールドフィルムを貼り付ける際にプリント配線板に対する接着力を発揮させるための層である。
また、導電性を有するため、電磁波シールド性を発揮させるためのシールド層として機能する。
導電性を有する接着剤層の構成は、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムの接着剤層の説明において導電性接着剤層の構成として説明した構成を使用することができる。
【0091】
このような接着剤層に対しても、保護部に粘着剤層を設けることにより、粘着剤層の粘着力を利用してシールドフィルム部の接着剤層と保護フィルムとの貼り合わせを行うことができる。
そして、粘着剤層と接する側の接着剤層の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが2~15μmであり、粘着剤層を構成する樹脂の貯蔵弾性率が0.1~0.5MPaであるので、保護フィルムを常温で貼り合わせることができ、電磁波シールドフィルムの使用時に保護フィルムを含む保護部を接着剤層から容易に剥離することができる。
【0092】
絶縁層113、保護フィルム121及び粘着剤層122の構成は、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムにおいて絶縁層13、保護フィルム21及び粘着剤層22の構成として説明した構成を使用することができる。
また、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムと同様に、絶縁層の接着剤層が積層された面と反対側の面に転写フィルムが設けられていてもよい。転写フィルムの構成も本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムと同様とすることができる。
【0093】
本発明の第2実施形態に係る電磁波シールドフィルムは、上述した本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムの製造方法において、転写フィルムに絶縁層と導電性を有する接着剤層を順次形成してシールドフィルム部を作製することにより製造することができる。
接着剤層の形成の際に、接着剤層が導電性接着剤層になるように、導電性粒子と樹脂とを含む接着剤層用組成物を使用すればよい。
その他の工程は、シールド層を形成しない他は本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムの製造方法と同様にすることによって、本発明の第2実施形態に係る電磁波シールドフィルムを製造することができる。
【0094】
本発明の第2実施形態に係る電磁波シールドフィルムも、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムを使用する場合と同様にして、シールドプリント配線板の製造に使用することができる。
すなわち、本発明の第2実施形態に係る電磁波シールドフィルムから、保護部を剥離して接着剤層を露出させ、接着剤層をプリント配線板に向けて接触させてシールドフィルム部をプリント配線板に接着することによりシールドプリント配線板を製造することができる。
【実施例
【0095】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0096】
(実施例1)
まず、転写フィルムとして、片面に剥離処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。
次に、転写フィルムの剥離処理面にエポキシ樹脂を塗工し、電気オーブンを用い、100℃で2分間加熱し、厚さ5μmの絶縁層を作製した。
その後、絶縁層の上に、無電解めっきにより2μmの銅層を形成した。当該銅層は、シールド層となる。
【0097】
次に、アミド変性エポキシ樹脂100.0部(Tg:60℃)、銀コート銅粉(平均粒子径D50:15μm)49.6部、及び、有機リン系難燃剤(クラリアントケミカル製、OP935)49.6部を混合し、接着剤層用組成物を作製した。
この接着剤層用組成物を銅層の上に塗工し、電気オーブンを用い、100℃で2分間加熱し、厚さ15μmの接着剤層を作製した。
上記工程によってシールドフィルム部を作製した。
【0098】
接着剤層の表面の負荷面積率及び算術平均粗さをコンフォーカル顕微鏡(Lasertec社製、OPTELICS HYBRID、対物レンズ20倍)を用いて、電磁波シールドフィルムの絶縁層の表面の任意の5か所を測定した後、データ解析ソフト(LMeye7)を用いて表面の傾き補正を行い、ISO 25178-6:2010に準拠して表面性状を測定し、その算術平均を得た。なお、Sフィルタのカットオフ波長は0.0025mm、Lフィルタのカットオフ波長は0.8mmとした。その結果、負荷面積率Smr(c)が50%となる高さcが8.26μmであった。
【0099】
次に、保護フィルムとして、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。
保護フィルムに、20℃での貯蔵弾性率が0.232MPaであるアクリル系粘着剤(粘着剤A-1:Tg -20℃)を塗工して粘着剤層を形成した。
【0100】
粘着剤層を接着剤層に向けて保護フィルムを重ね合わせ、熱ロールラミネーターを用いて、温度40℃、圧力0.4MPaで保護フィルムの貼り合わせを行った。
上記工程により電磁波シールドフィルムを製造した。
【0101】
(実施例2~14)及び(比較例1~8)
保護フィルムの材質、粘着剤層に使用する粘着剤の材質、接着剤層用組成物に含有させる導電性粒子(銀コート銅粉)の平均粒子径、導電性粒子の配合量、接着剤層用組成物の狙い塗布厚みを表1に示すように変更して電磁波シールドフィルムを製造した。
使用した粘着剤の材質は下記の通りである。
粘着剤A-1:アクリル系粘着剤、貯蔵弾性率0.232MPa、Tg -20℃
粘着剤A-2:アクリル系粘着剤、貯蔵弾性率0.187MPa、Tg -20℃
粘着剤A-3:アクリル系粘着剤、貯蔵弾性率0.411MPa、Tg -25℃
粘着剤B-1:アクリル系粘着剤、貯蔵弾性率0.081MPa、Tg -40℃
粘着剤B-2:アクリル系粘着剤、貯蔵弾性率2.520MPa、Tg -5℃
使用した保護フィルムの材質は下記の通りである。
PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm)
OPP:2軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ100μm)
【0102】
各実施例及び比較例で製造した電磁波シールドフィルムにつき、各種評価を行った。結果はまとめて表1に示した。
【0103】
(保護フィルム貼り合わせの評価)
製造した電磁波シールドフィルムにおいて、保護フィルムが接着剤層に充分に貼り合わされている場合、評価を良好として表1に○と示した。保護フィルムが接着剤層から剥がれている場合、評価を不良として表1に×と示した。
【0104】
(保護フィルム剥離の評価)
製造した電磁波シールドフィルムの保護フィルムの端を手でつまみ、保護フィルムを剥離する方向に力を加えてスムーズに保護フィルムの剥離ができた場合、評価を良好として表1に○と示した。保護フィルムが接着剤層から剥離できなかった場合、評価を不良として表1に×と示した。
【0105】
【表1】
【0106】
表1に示すように、接着剤層の表面の負荷面積率Smr(c)が50%となる高さと粘着剤層を構成する樹脂の貯蔵弾性率が所定の範囲内となっていると、保護フィルムの貼り合わせと剥離を良好に行うことができることがわかる。
【符号の説明】
【0107】
1、101 電磁波シールドフィルム
10、110 シールドフィルム部
11、111 接着剤層
12 シールド層
13、113 絶縁層
20、120 保護部
21、121 保護フィルム
22、122 粘着剤層
30 転写フィルム
31 転写フィルム用粘着剤層
40 プリント配線板
41 ベースフィルム
42 プリント回路
43 カバーレイ
50 シールドプリント配線板
図1
図2
図3
図4
図5