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特許7096908シリコーンコーティングしたミネラルウール断熱材料、並びにそれらを製造する方法及び使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】シリコーンコーティングしたミネラルウール断熱材料、並びにそれらを製造する方法及び使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 25/40 20060101AFI20220629BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20220629BHJP
   F16L 59/02 20060101ALN20220629BHJP
【FI】
C03C25/40
D06M15/643
F16L59/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020558458
(86)(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 US2019027745
(87)【国際公開番号】W WO2019204353
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】62/658,547
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506207358
【氏名又は名称】サートゥンティード エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188857
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 智文
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サクセナ、ポウワン
(72)【発明者】
【氏名】ギャラガー、ケビン、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ボゼック、ジョン、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】セイラー、キャスリーン、エイチ.
【審査官】松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2001/0009834(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0038608(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1560158(CN,A)
【文献】米国特許第06562257(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0171201(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 25/00-25/70
D06M 13/00-15/715
F16L 59/00-59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンコーティングしたミネラルウールの非結合性のばら詰め断熱材を製造する方法であって、
ばらのミネラルウール繊維の集合体を含むばら詰めのミネラルウールを提供すること、
前記ばら詰めのミネラルウールにシリコーンを含む溶剤型コーティング組成物を適用することであって、前記シリコーンが少なくとも25kDaの数平均分子量を有する前記コーティング組成物を適用すること、及び
前記溶剤を蒸発させ前記シリコーンコーティングしたミネラルウールを提供すること、
を含み、
前記コーティング組成物の前記ミネラルウールへの適用速度が、ミネラルウール1グラム当たり0.1~3mgの範囲のシリコーンであり、
前記ミネラルウールが、前記溶剤型コーティング組成物でコーティングされるとき、前記ミネラルウールが、200~500℃の範囲の温度である、シリコーンコーティングしたミネラルウールの非結合性のばら詰め断熱材を製造する方法。
【請求項2】
前記ミネラルウールがグラスウールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ミネラルウールが、前記溶剤型コーティング組成物でコーティングされるとき、前記ミネラルウールが、285~500℃の範囲の温度である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ミネラルウールが、コーティングされる直前、前記ミネラルウールが、8~11の範囲の浸漬試験pHを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティング組成物の前記シリコーンが、少なくとも40kDaの数平均分子量を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記コーティング組成物の前記シリコーンが、少なくとも60kDaの数平均分子量を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記シリコーンがポリ(ジメチルシロキサン)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シリコーンが、ジメチルシロキサン及びメチルシロキサンなどのアルキルシロキサン、並びにフェニルメチルシロキサン、2-フェニルプロピルメチルシロキサン及びフェニルシロキサンなどのアリールシロキサン、並びに3-アミノプロピルメチルシロキサンなどの官能化シロキサン、の1種以上のポリマー又はコポリマーである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマー又はコポリマーが、3-アミノプロピルメチルシロキサンのような官能化シロキサンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティング組成物中の前記シリコーンの濃度が、0.01~5重量%の範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶剤型コーティング組成物の前記ミネラルウールへの前記適用により、前記ミネラルウールの温度が50℃~250℃の範囲に低下する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶剤型コーティング組成物の前記ミネラルウールへの適用後の前記繊維上のシリコーン量が、ミネラルウール1グラム当たり0.1~10mgの範囲のシリコーンである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ミネラルウールへ、有効量の帯電防止剤(例えば、第四級アンモニウム塩)を、及び/又は、前記ミネラルウールへ、前記ミネラルウールの重量に対して0.4~4重量%の範囲の量で除じん用油を適用することをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記コーティング組成物の前記ミネラルウールへの適用速度が、ミネラルウール1グラム当たり0.2~2mgの範囲のシリコーンである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
適用後の前記繊維上のシリコーン量が、ミネラルウール1グラム当たり0.2~1mgの範囲のシリコーンである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月16日に出願された米国仮特許出願第62/658547号に対する優先権の利益を主張するものであり、その全体が本明細書に参照として組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般的には、断熱材料並びに、それら断熱材料を製造する方法及び使用する方法に関する。本開示は、より詳細には、シリコーンコーティングしたミネラルウール断熱材料、特定のコーティング方法を使用してそれら断熱材料を製造する方法、及びそれら断熱材料を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
断熱材料、例えばバット、ロール及びブランケットタイプのミネラルウールなどは、通常、境界によって区切られる2つの領域間の伝熱速度を低減させるために使用される。例えば、屋根裏では、断熱材料は、ルーフデッキを介した熱の移動、すなわち家の外側から屋根裏への、又はその逆の熱の移動を遅らせるために、ルーフデッキの内側面に適用され得る。別の用途では、断熱材料は、外壁(例えば木製間柱の間など)に適用され、壁板で覆われ、外壁及び壁板を介した伝熱速度を遅らせる。また、断熱材料は、1つの空間から別の空間への、望ましくない空気の動き(例えば、対流通気)及びその結果として生じる水分の移動を防ぐことができる。
【0004】
ミネラルウール断熱材料は、多くの場合、マット状の構造体に形成され、個々の繊維はバインダーによって、不織布構造において緊密に絡み合っている。このような断熱材料は、例えばブランケット、バット又はロールの形態で提供され得るが、これらは建物表面沿いに接触して配置され、建物を断熱することができる。このような断熱材料は、通常、屋根裏内(例えば、天井若しくは床沿いに接触して)又は壁の中に配置され、断熱する。
【0005】
最近では、吹込み用ウール又はばら詰め断熱材の使用が流行している。ばら詰め断熱材は通常、大部分が非結合性の短いミネラルウール繊維で構成され、通常、除じん用油及び帯電防止化合物などの添加剤で処理される。ばら詰め断熱材は、通常、圧縮され、袋の中に梱包される。空気式の吹込み機を用いて、(例えば、屋根裏及び側壁の中への)ばら詰め断熱材の据付けが実施される。吹込みプロセスによって、望ましくは、ばら詰め断熱材を圧縮前の状態に復元し、望ましい低密度でのばら詰め断熱材を提供する。
【0006】
ばら詰め断熱材は、新規の構造物と既設建築の両方に容易にかつ迅速に適用できるため、断熱材施工業者にとっては一般的である。さらに、ばら詰め断熱材は、比較的低コストな材料であり、バット、ブランケット及びロール形態の材料と比較して据付けに要する人件費が少ない。しかし、ばら詰め断熱材は通常、特別な吹込み装置が必要なため、住宅所有者の代わりに、施工業者によって適用される。このような断熱材は、通常、例えば20~40lbの重さの大きな袋に梱包されている。
【0007】
ばら詰め断熱材が圧縮空気作用により適用されるとき、それらばら詰め断熱材は、据付作業者にとってダスト及び刺激作用の発生源となる可能性がある。このダストを制御するために、通常、ばら詰め断熱材の製造時に除じん用油が適用され、またダストへの暴露を低減させるために、据付作業者は防じんマスク及び防護服を着用するように勧められる。一方で、これらの除じん用油の有効性は、特に油の適用量が低い(例えば、約2重量%未満)場合、改善され得る。
【0008】
ミネラルウール断熱材料の繊維には、シリコーンが適用されることが多い。そうする1つの理由は、繊維と繊維の潤滑性を向上させるためである。ばら詰め断熱材では、この潤滑性は、吹込み中に材料が圧縮前の状態に戻るのを助け、材料の密度を比較的小さくし、それによって単位重量当たり比較的大きなカバー面積を提供する。シリコーンコーティングはまた、繊維表面に疎水性を付与し、吸水の防止を助け、鉱物材料を加水分解の攻撃から保護する。
【0009】
しかし、ミネラルウール断熱材料の改良が、依然として必要である。
【発明の概要】
【0010】
本開示の一態様は、シリコーンコーティングしたミネラルウールを製造する方法であって、
鉱物繊維の集合体を含むミネラルウールを提供すること、
ミネラルウールにシリコーンを含む溶剤型コーティング組成物を適用することであって、上記シリコーンが少なくとも20kDa(例えば、少なくとも25kDa)の数平均分子量を有するコーティング組成物を適用すること、及び
溶剤を蒸発させシリコーンコーティングしたミネラルウールを提供すること、
を含む、方法である。
【0011】
本開示の別の態様は、本明細書に記載される方法で製造される、シリコーンコーティングしたミネラルウールである。
【0012】
本開示の別の態様は、少なくとも20kDa(例えば、少なくとも25kDa)の数平均分子量を有するシリコーンを含むシリコーンコーティングを有する、ミネラルウール繊維の集合体を含むミネラルウールを含む、シリコーンコーティングしたミネラルウールである。
【0013】
本開示の別の態様は、内側面(例えば、壁、天井、床、屋根裏、基礎の表面又は別の建物表面)と、内側面沿いに接触して配置される本明細書に記載のシリコーンコーティングしたミネラルウールと、を有する断熱された構造体である。
【0014】
本開示の別の態様は、内側面及び外側面と、内側面と外側面の間の空間に配置される(例えば、部分的に又は実質的に空間を満たしている)本明細書に記載のシリコーンコーティングしたミネラルウールと、を有する断熱された構造体である。
【0015】
本開示の別の態様は、第1の表面及び第2の表面と、第1の表面と第2の表面との間に配置される本明細書に記載のシリコーンコーティングしたミネラルウールと、を有する断熱された空気層である。
【0016】
本開示のさらなる態様は、本明細書の開示から明白であろう。
【0017】
添付の図面は、本開示の方法及び装置への理解を深めるために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は必ずしも縮尺通りではなく、各種構成要素の寸法は、明確さのために変更されている場合がある。図面は本開示の1つ以上の実施形態を例示し、明細書と共に本開示の原理及び操作を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】各種シリコーン材料について測定されたピーク分子量を示す棒グラフである。
【0019】
図2】本開示の一実施形態による断熱された構造体の概略図である。
【0020】
図3】本開示の別の実施形態による断熱された構造体の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記のように、繊維間の潤滑性を向上させ、繊維に疎水性表面を提供するために、ミネラルウール材料は従来、シリコーンでコーティングされている。繊維表面が疎水性になることで、材料による水分吸収を防止するのに役立ち、繊維を加水分解性の攻撃から保護することができる。従来、このコーティングは比較的低分子量のシリコーンの水性エマルジョンを用いて実施され、繊維状材料がバルク材から紡糸又は引き出されて、まだ熱い間にコーティングが適用される。このような目的で使われる従来のシリコーンとしては、例えば、10~15kDaの範囲の数平均分子量を有するシリコーン、例えばダウコーニング(Dow Corning)DC 346及びワッカー・ケミ(Wacker Chemie)BS1052が挙げられる。
【0022】
本発明の発明者らは、従来のシリコーンコーティングプロセスでは、特にコーティング後の最初の1時間で、有益な性質が低減するという欠点を持つ被コーティング材料が提供されると、期せずして結論付けた。本発明の発明者らは、高分子量シリコーンを使用することで、シリコーンが分解する問題に対処できると結論付けた。また、理論に拘束されることを意図しないが、発明者らは、このような高分子量シリコーンは、低分子量シリコーンとおおよそ同じ反応速度で分解し得ると推測する。しかし、決定的に、得られた分解生成物は低分子量シリコーンの場合よりもはるかに高い分子量であり、したがって繊維上でより高品質なコーティングとして保持され得る。
【0023】
それゆえ、本開示の一態様は、シリコーンコーティングしたミネラルウール材料を製造する方法である。上記方法は、繊維の集合体を含むミネラルウールを提供することと、ミネラルウールにシリコーンを含む溶剤型コーティング組成物を適用することと、溶剤を蒸発させシリコーンコーティングしたミネラルウールを提供することと、を含む。特に、溶剤型コーティング組成物のシリコーンは、少なくとも20kDaの数平均分子量を有する。このようなプロセスで製造されるミネラルウール材料は、断熱材料として、例えば、ばら詰め断熱材料として特に有用であり得る。
【0024】
当業者であれば理解するであろうが、ミネラルウールは様々な材料から製造できる。例えば、本明細書に別に記載される特定の実施形態において、ミネラルウールはグラスウールである。グラスウールは、例えば、ほうけい酸ガラス、アルミノけい酸ガラス及びアルミノボロシリケートガラスなどのシリケートガラスなど、多種多様なガラスから製造できる。グラスウールは、当該技術分野において、「ガラス繊維」と呼ばれることが多い。その他の実施形態では、ミネラルウールはストーンウール(ロックウールとしても知られる)又はスラグウールである。
【0025】
ミネラルウールの繊維は、吹込みによって据付けできる材料を比較的低密度で提供し、それゆえに比較的大きな断熱度合いを提供できるように、望ましくは比較的細かいものである。したがって、本明細書に別に記載される特定の実施形態において、ミネラルウールの繊維の中位径(すなわち、繊維ごとに測定される、繊維長さに対して垂直方向に繊維を横切る最大距離としての直径)は、約100ミクロン以下、例えば約50ミクロン以下、又はさらに約20ミクロン以下である。比較的細かい繊維が所望される一方で、特定の実施形態において、吸入の危険性を作らないためには、必要以上に細すぎない繊維が望ましい。それゆえ、本明細書に別に記載される特定の実施形態において、ミネラルウールの繊維の中位径は、少なくとも500nm、例えば少なくとも1ミクロン又は少なくとも2ミクロンである。繊維の長さは、例えば、材料の所望される最終用途に応じて変わるであろう。本明細書に別に記載される特定の実施形態において、繊維集合体の長さ中央値は、500mm以下、例えば250mm以下、又は100mm以下である。例えば、ばら詰め断熱材用として製造される繊維は、一般的には比較的短いであろう。特定の実施形態において、繊維集合体の長さ中央値は、50mm以下、例えば25mm以下、又はさらに10mm以下である。
【0026】
ミネラルウール自体は、従来法を用いて、多くの異なる材料、例えばガラス、岩若しくは石(例えば、玄武岩若しくは輝緑岩、若しくはその他の火山岩若しくは準火山岩)、少なくとも部分的に精製した鉱物、スラグ又はこれらの混合物から製造され得る。通常、鉱物原料は溶かされ、多数の紡糸、遠心分離、延伸又はその他の採糸プロセスのいずれかを使用して繊維へと形成される。採糸プロセス自体で所望の長さの繊維を提供できる、又は繊維を所望の寸法に切断することもできる。得られた熱い鉱物繊維は、続いて繊維化装置から吐出される。繊維は、1種以上のコーティング又はその他の処理(本明細書に記載のシリコーンを含む)を適用されながら冷却され得る。このようなコーティング/処理の適用は、熱い鉱物繊維の冷却に役立ち得る。冷却された繊維は集められ、所望する場合、さらに処理され、その後梱包される。
【0027】
シリコーンは、溶剤型シリコーンの溶剤が蒸発し、繊維の冷却を助け、繊維表面上にシリコーンの層としてシリコーンコーティングを形成できるように、繊維がまだ比較的熱い間に添加され得る。当業者は、シリコーンの層は、特にスプレーの液滴から形成されると、単一の均一な厚みにはならない場合があり、むしろ個々の繊維上で、さらには個々の繊維の異なる領域上で、厚み及び被覆率に著しいばらつきを有し得ると理解するだろう。それにもかかわらず、繊維集合体上のシリコーンの量は、全体的な繊維質量の、重量%としてのシリコーン全体量によって特徴づけられ得る。本明細書に別に記載される特定の実施形態において、ミネラルウールは、溶剤型コーティング組成物でコーティングされるとき、200~500℃の範囲の温度である。このような特定の実施形態において、ミネラルウールは、溶剤型コーティング組成物でコーティングされるとき、200~465℃、又は200~430℃、又は240~500℃、又は240~465℃、又は240~430℃、又は285~500℃、又は285~465℃、又は285~430℃の範囲の温度である。コーティング組成物の溶剤は、コーティング後すぐに蒸発し始めることができる。この蒸発は、通常、より温度が低いコーティング組成物とともに、ミネラルウールを冷却し、ミネラルウールの繊維上のシリコーンコーティングを乾燥させる働きをする。所望により、ミネラルウールは、コーティング組成物の適用前に、シリコーン適用に向けてミネラルウールを所望の温度にするために(例えば、水のミストをスプレーすることにより)いくぶん冷却され得る。コーティング組成物の適用に際し、多量の溶剤の蒸発及び通常、より低い温度であるコーティング組成物によって、繊維の温度を、例えば50℃~250℃の範囲の温度に下げることができる。したがって、繊維はコーティング前ほど熱くない一方で、まだ依然として比較的熱い状態であり得る。
【0028】
理論に拘束されることは意図しないが、特にシリコーンの適用後しばらくの間は、繊維は通常比較的熱いままであるため、ミネラルウール繊維の表面の酸性度/塩基性度が最終的な材料特性の決定において重要な1つの要素であると、発明者は推測する。したがって、本明細書に別に記載される特定の実施形態において、ミネラルウール(すなわち、シリコーンによってコーティングされる前)は、高い表面塩基性を有する。表面塩基性は、ミネラルウールを(すなわち、プロセス中でミネラルウールがシリコーンでコーティングされる時点で)集め、冷却し、下記pH浸漬試験を実施することによって決定できる。ミネラルウール(50g)を、プラスチックジャグ中で脱イオン水1000gと混合する。ジャグに蓋をかぶせ、30秒間力強く振盪させる。グラスウール試料を絞り、ジャグ中に流体を排出させる。その後、ジャグ中の液体を250mLビーカーへろ過し、浸漬試験pHを提供するために、pHメータを用いて、ろ液のpHを測定する。本明細書に別に記載される特定の実施形態において、ミネラルウールは、コーティングされる直前、8~11の範囲の浸漬試験pHを有する。このような特定の実施形態において、ミネラルウールは、8.5~11、又は8.5~10.5、又は8.5~10、又は9~11、又は9~10.5、又は9~10の範囲の浸漬試験pHを有する。
【0029】
上記のように、本発明の発明者らは、特に本明細書に記載される温度及び/又は表面塩基性で、ミネラルウール繊維のコーティングに高分子量シリコーンを使用することは有益であり得ると結論付けた。それゆえ、本開示の特定の態様において、コーティング組成物のシリコーンは、少なくとも20kDaの数平均分子量を有する。本明細書に別に記載される特定の実施形態において、コーティング組成物のシリコーンは、少なくとも25kDa、又は少なくとも30kDa、又は少なくとも40kDa、又は少なくとも50kDa、又は少なくとも60kDaの数平均分子量を有する。当業者であれば、溶剤型コーティング組成物によって有効にコーティングできる限り、様々な高分子量材料を使用できると理解するだろう。
【0030】
本明細書に記載される方法及び材料には、様々なシリコーンを使用できる。例えば、特定の実施形態では、シリコーンはポリシロキサンであり、例えば、ジメチルシロキサン及びメチルシロキサンなどのアルキルシロキサン、並びにフェニルメチルシロキサン、2-フェニルプロピルメチルシロキサン及びフェニルシロキサンなどのアリールシロキサン、並びに3-アミノプロピルメチルシロキサン及びアミノエチルアミノプロピルメトキシシロキサンなどの官能化シロキサンのうち、1種以上のポリマー又はコポリマーである。特定の実施形態において、シリコーンはポリ(ジメチルシロキサン)である。シリコーンは、任意の都合のよい手段、例えばトリメチルシリル、ヒドロキシ基又は水素化物で末端処理され得る。
【0031】
溶剤型コーティング組成物は、溶剤中のシリコーンエマルジョンとして、又は溶剤中のシリコーン溶液としてなど、様々な様態で提供され得る(すなわち、溶剤は実際にはシリコーンを溶解する必要はなく、むしろ単に蒸発しやすい液体キャリアをシリコーンに提供するだけでよい)。特定の望ましい実施形態において、溶剤型コーティング組成物の溶剤は、水性流体、例えば水である。水は環境に優しく、高い熱容量及び気化熱を有し(それゆえ熱い鉱物繊維を効率的に冷却する)、可燃性でなく、多くの市販のシリコーン分散液の主成分である。しかし、場合によっては、その他の溶剤も使用できる。コーティング組成物中のシリコーン濃度は、例えば、0.01~5重量%の範囲であり得る。特定の実施形態において、コーティング組成物中のシリコーン濃度は、0.01~5重量%、又は0.01~3重量%、又は0.01~2重量%、又は0.01~1重量%、又は0.01~0.5重量%、又は0.05~5重量%、又は0.05~3重量%、又は0.05~2重量%、又は0.05~1重量%、又は0.05~0.5重量%、又は0.1~5重量%、又は0.1~3重量%、又は0.1~2重量%、又は0.1~1重量%、又は0.1~0.5重量%の範囲である。
【0032】
従来のコーティング方法を使用して、コーティング組成物をミネラルウールに適用できる。例えば、多くの従来の製造法において繊維は形成され、続いて冷却ゾーンを通って垂直に落下し収集される。ミネラルウール繊維が落下するとき、繊維にコーティング組成物をスプレーすることができる。繊維上に所望する量のコーティングを提供するために、スプレーの速度は繊維の形成速度に対して調整できる。当然のことながら、その他の適用方法も使用できる。ミネラルウールへの(例えば、スプレーを介する)コーティング組成物の適用速度(すなわち、任意の系統損を含む、ミネラルウールへスプレーが実施された量)は、例えば、ミネラルウール1グラム当たり0.1~10mgの範囲のシリコーン、例えば、ミネラルウール1グラム当たり0.1~5、又は0.1~3、又は0.1~2、又は0.1~1、又は0.2~10、又は0.2~5、又は0.2~3、又は0.2~2、又は0.2~1、又は0.5~10、又は0.5~5、又は0.5~3、又は0.5~2mgの範囲のシリコーンであり得る。
【0033】
当業者であれば、適用したコーティング組成物中のシリコーン全てが、最初から繊維上に保持されるわけではなく、通常、コーティング組成物の一部が繊維に捕捉されない系統損があると理解するだろう。スプレー後の繊維上のシリコーン量は、特定の実施形態において、例えば、ミネラルウール1グラム当たり0.1~10mgの範囲のシリコーン、例えば、ミネラルウール1グラム当たり0.1~5、又は0.1~3、又は0.1~2、又は0.1~1、又は0.2~10、又は0.2~5、又は0.2~3、又は0.2~2、又は0.2~1、又は0.5~10、又は0.5~5、又は0.5~3、又は0.5~2mgの範囲のシリコーンであり得る。
【0034】
一旦コーティング組成物が適用されると、溶剤を蒸発させ、シリコーンコーティングしたミネラルウールを提供することができる。多くの系で、溶剤を蒸発させるために特別な段取りがなされる必要はなく、コーティング時のミネラルウールの温度、系のその他の温度、及び装置を通る空気又はその他のプロセスガスの流れが溶剤を蒸発させるのに十分であると、当業者であれば理解するだろう。当然のことながら、その他の実施形態では、シリコーンコーティングしたミネラルウールは、溶剤を蒸発させるために加熱される、又は空気若しくはその他のプロセスガスの流れにさらされることができる。シリコーンコーティングしたミネラルウールは、当該技術分野において従来通り、例えば、コンベヤ上で収集され得る。
【0035】
当業者であれば、様々なその他の材料をミネラルウールへ適用できると理解するだろう。例えば、第四級アンモニウム塩などの帯電防止剤を、最終生成物において静電気の蓄積を防止するのに有効な量でミネラルウールに適用できる(例えば、水溶液からのスプレーによる適用)。
【0036】
同様に、多くの実施形態において、除じん用油(例えば、ブライトストック油)を適用して、最終生成物のダストを抑制することができる。油は、例えば、ミネラルウールの重量に対して0.5~4重量%の範囲の量、例えば、約2重量%で提供され得る。従来の油、例えば、エクソンモービル(Exxon-Mobil)からのTelura(商標)720E又はProrex100を使用できる。少量(例えば、約2重量%)の界面活性剤(例えば、モノ-、ジ-又はトリ-脂肪酸エステルなどの非イオン性又はカチオン性界面活性剤)が油に含まれ得る。
【0037】
当業者であれば、これらの及びその他の付加的な材料は、任意の望ましい順でミネラルウールへ適用できると理解するだろう。例えば、一実施形態では、ミネラルウールにシリコーン含有組成物が適用された後、ミネラルウールがまだ温かい間に帯電防止剤が適用され、ミネラルウールが冷えた後、油が適用される。しかし、その他の実施形態も可能である。特定の実施形態において、1種以上のこれらの及びその他の付加的な材料は、シリコーン含有コーティング組成物と同時に適用される(例えば、シリコーン含有コーティング組成物に混合される、又はシリコーン含有コーティング組成物と同時に適用される)。しかしながら、その他の実施形態では、実質的には他のいかなる材料も、シリコーンとともに適用されない(すなわち、シリコーン含有コーティング組成物は、シリコーン及び溶剤から本質的になる)。
【0038】
特定の実施形態において、シリコーンコーティングしたミネラルウールは、非結合性のばら詰め材料として形成される。すなわち、実質的にバインダーは、シリコーンコーティングしたミネラルウールに適用されない。このような材料は、従来のばら詰め断熱材工法を用いる据付け、例えば断熱材を建物の内側面沿いに接触して配置するために、ホースを介して断熱材を吹き込むなどの据付けに好適な、比較的短い繊維として提供され得る。
【0039】
本明細書に記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール材料は、例えば圧縮し、袋又はその他の密封容器などへ梱包することにより、梱包され得る。
【0040】
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるプロセスで製造される、シリコーンコーティングしたミネラルウールである。
【0041】
本開示の別の態様は、少なくとも20kDaの数平均分子量を有するシリコーンを含むシリコーンコーティングを有する、ミネラルウール繊維の集合体を含むミネラルウールを含む、シリコーンコーティングしたミネラルウールである。シリコーンの分子量は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化・飛行時間型二次イオン質量分析法(MALDI-TOF SIMS)によって決定できる。このような特定の実施形態において、シリコーンは、少なくとも25kDa、例えば、少なくとも30kDa、又は少なくとも40kDa、又は少なくとも50kDa、又は少なくとも60kDa、又は少なくとも70kDaの数平均分子量を有する。このような分子量を有するコーティング用シリコーンを備えた最終生成物を提供するために、特定の鉱物材料及び製造プロセスを考慮して、このようなミネラルウールの製造に使用するシリコーンの分子量を選択できる。コーティング組成物中に高分子量シリコーンを使用することで、実質的に高分子量のシリコーンコーティングを提供でき、したがって、従来のように低分子量シリコーンを使用するよりも実質的により高品質なシリコーンコーティングを提供できる。
【0042】
本開示のこの態様によるシリコーンコーティングしたミネラルウールは、上記に記載した方法に関して、実質的には別の方法でも上記に記載した通りであり得る。そして、特定の実施形態において、本開示のこの態様によるシリコーンコーティングしたミネラルウールは、本明細書に記載の方法によって製造できる。
【0043】
本明細書に記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール材料は、所望の最終用途に応じて様々な密度で提供され得る。例えば、断熱材料として使用するためには、シリコーンコーティングしたミネラルウール材料は、いくつかの実施形態において、0.1~20lb/ftの範囲の密度で提供され得る。各種実施形態では、シリコーンコーティングしたミネラルウール材料は、0.25~8lb/ft(例えば、ミネラルウールがグラスウールである場合)、又は0.25~2lb/ft(例えば、ミネラルウールが柔軟な構築用断熱材料の形態である場合)、又は0.25~0.75lb/ft(例えば、ミネラルウールが柔軟で、圧縮性の高い構築用断熱材の形態である場合)、又は0.25~0.510lb/ft(例えば、ミネラルウールがばら詰め断熱材の形態である場合)の範囲の密度を有する。
【0044】
本明細書に記載のミネラルウール材料は、建築構造体の断熱を含む様々な環境で、断熱材料として有利に使用できる。
それゆえ、本開示の別の態様は、断熱された構造体であり、断熱された構造体は、内側面(例えば、壁、天井、床、屋根裏、基礎の表面又は別の建物表面)と、内側面沿いに接触して配置される本明細書に記載のシリコーンコーティングしたミネラルウールと、を有する。そのような一実施形態は、図2に示すものである。ここで、断熱された構造体は住宅200であり、その屋根裏断面が詳細に示されている。内側面は、屋根裏220に面する天井表面210であり、本明細書に記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール230が、内側面沿いに接触して配置される。シリコーンコーティングしたミネラルウールと、内側面との間に、1つ以上のライナーの層が存在し得る。例えば、この実施形態では、シリコーンコーティングしたミネラルウールは、ライナー232(例えば、紙から形成される)がミネラルウールを包んでいる、断熱材バットの形態である。
【0045】
例えば、本明細書に記載のばら詰め材料は、いわゆる「BIB(blow-in-blanket)」施工で使用できる。この適用法では、ネット又はその他の布地が空気層(例えば、間柱の間)を取り囲み、ばら詰め断熱材料は取り囲まれた空気層に配置される。そのような実施形態は図3に示され、住宅300の外壁構造体が詳細に示されている。ここで、布地370は、部分的に外側面365(ここでは外装表面)によって区切られる空気層340を取り囲む。本明細書に記載のばら詰め用のシリコーンコーティングしたミネラルウール330は、布地によって区切られる空気層内に配置される。また、ばら詰め材料は、いわゆる「オープンブロー(open-blow)」施工において有利に使用できる。例えば、ばら詰め材料は、屋階上に又は構造体の天井の上に(例えば、上記の図2に関して記載されるものなどの上方に面している表面沿いに)バラバラの状態で配置される。
【0046】
本開示の別の態様は、内側面及び外側面と、内側面と外側面の間の空気層内に配置され、少なくとも部分的に空気層を充填する本明細書に記載のシリコーンコーティングしたミネラルウールと、を有する断熱された構造体(例えば、建物)である。空気層は、例えば、構造体の壁の中、構造体の天井の中又は構造体の床の中であり得る。そのような構造体は図3に示され、空気層は内側面360(ここでは、壁板表面)及び外側面365によって区切られている。このような特定の実施形態において、空気層は、実質的に(例えば、少なくとも90容量%)本明細書で記載されるばら詰め断熱材料によって充填される。そして本開示の別の態様は、第1の表面及び第2の表面と、第1の表面と第2の表面との間に配置される本明細書に記載のシリコーンコーティングしたミネラルウールと、を有する断熱された空気層である。
【0047】
したがって、本明細書に記載される材料は、構造体中の空気層に配置されることによって、様々な構造体の断熱に使用され得る。
【0048】
本明細書に記載されるばら詰め断熱材料は、比較的低密度で、例えば、0.25~0.510lb/ftで据え付けられ得る。本明細書に記載されるばら詰め断熱材料は、従来法を用いて、例えば吹込みによって据え付けられ得る。従来型の吹込み法を使用できる。例えば、特定の実施形態において、ばら詰め断熱材は、据え付けられる施工場所への接着の促進、及び/又はそこからの飛散を防ぐのに役立つ添加剤とともに提供され得る。例えば、ばら詰め断熱材は、材料を適切な位置に保持するために、吹込み作業の間、水(又はその他のなんらかの蒸発性液体)を伴って吹き込むことができる。液体は据付け後に蒸発し得る。その他の実施形態では、添加剤は、例えばより永続的な接着をもたらすために、接着剤又はバインダーであり得る。当業者は、そのような方法を実施する際に従来の材料を使用できる。
【0049】
本発明の発明者らは、本明細書に記載される、より高分子量のシリコーンの使用により多くの利点を観察した。例えば、ミネラルウール繊維は高い疎水性を有し得る。加えて、繊維をコーティングするのに用いるシリコーンが、本明細書に記載の高分子量シリコーンである場合、材料はより低密度で据え付けられ得る。低密度での据付けは、ばら詰め断熱材が置かれる環境においては特に重要である。このようなばら詰め断熱材は梱包のために圧縮され、吹込みプロセスを使用して、材料を所望の低密度の状態に戻す。後述のように、本発明の発明者らは、より高分子量のシリコーンを使用することで、材料が低分子量シリコーンで製造される比較用の材料よりも、より低密度で吹き込まれ得ることにつながると結論付けた。理論に拘束されることを意図しないが、発明者は、シリコーン被覆率の上昇により繊維の潤滑性が増大し、繊維が互いに対してより容易に摺動できるようになり、結果として、吹込みの間、材料がより広く展開されることにつながり、したがって、より低密度で据え付けられるためである、と仮定する。
【0050】
そして、驚くべきことに、これらの利益は、コーティング作業におけるシリコーンの使用量がはるかに少ないときでさえ観察され得る。本発明の発明者らは、後述のように、高分子量シリコーンでコーティングした材料の性能は、2倍の量の低分子量シリコーンでコーティングした材料よりも良好であり得ると結論付けた。
【実施例
【0051】
実験一式において、ガラスファイバーを、まだ熱い状態で(すなわち、紡糸ヘッドから落下する間、285~430℃の範囲の温度で)シリコーンの水性エマルジョンによってコーティングし、続いて第四級アンモニウム塩及び油で通常の処理を行い、続いて従来の31lbの袋に、約8lb/ftで圧縮し梱包した。コントロール用材料を、水中0.7重量%のエマルジョンから、繊維に合計0.14重量%の量のシリコーンをスプレーして、約13.7kDaの数平均分子量を有するポリ(ジメチルシロキサン)でコーティングした(「低分子量シリコーン」)。62.7kDaの名目数平均分子量を有するポリ(ジメチルシロキサン)を用いて、3つの実験用コーティングを実施した(「高分子量シリコーン1」)。コーティングを、コントロール中と同じ濃度(同一量のシリコーンを適用する)、半分の濃度(半分の量のシリコーンを適用する)、1.5倍の濃度(1.5倍量のシリコーンを適用する)のシリコーンを用いて実施した。異なる保管時間の後、材料を1フィートの深さで吹き込み、31lbの袋2つにつき、1フィート深さのカバー面積を測定した。この値は、平方フィートのカバー面積、及び密度に換算した数値(すなわち、式:
【数1】

)の両方で示される。下記の表は、製造した日(0日)、並びに製造後14日、36日、62日及び90日に吹き込まれた、コントロール用低分子量コーティング材料、及び3つの高分子量コーティング材料(すなわち、コントロールと比較して0.5倍、1.0倍及び1.5倍のコーティング量)の密度データを提供する。高分子量材料でのコーティングは、半分量のシリコーンを使用するときでさえ、材料の低密度での適用をもたらすと、データにより実証される。
【表1】
【0052】
別の実験一式を実施し、各種シリコーンコーティングしたミネラルウール上の、シリコーンコーティングの分子量を測定した。コーティングを、トルエン(ミネラルウール約60g当たり約450mLの溶媒)を用いて、一晩静置して抽出した。ろ過及び回転蒸発によるろ液乾燥後、浸透クロマトグラフィ用のテトラヒドロフラン10mL中に残留物を取り上げた。ポリスチレン標準を使用して、機器を較正した。示されるエラーバーは、クロマトグラフィシステムに同一材料を2回注入した標準偏差である。熱重量分析及び時間分解赤外分光により、全ての場合について、抽出物はシリコーンであったと確認した。実験試料として用いるために、繊維をコーティングするために用いるシリコーンエマルジョンもまた、エマルジョン溶媒の蒸発及びテトラヒドロフラン中への取り上げによって測定した。
【0053】
図1は、ゲル浸透クロマトグラフィで測定したコーティングの分子量(Mp、ピーク質量、Da)を示す棒グラフである(2回の平均、ポリスチレン標準による較正)。各試料の1回目のデータも、下表に提供する。
【表2】
【0054】
図1に、上記の最初の実験一式に記載の通りにコーティングした、3つの市販材料及び5つの実験用の試料についてのデータを提供する。高分子量シリコーン1を測定したところ、約67kDaのピーク分子量(Mp)を有した。高分子量シリコーン1でコーティングした、第1の施工場所及び第2の施工場所(施工場所A及び施工場所B)からの繊維材料は、約58kDaのMp値を有する抽出物を有した。高分子量シリコーン2、すなわちポリ(ジメチルシロキサン)シリコーンを測定したところ、約62kDaのMp値を有した。高分子量シリコーン2でコーティングした、第3の施工場所(施工場所C)からの繊維材料は、約50kDaのMp値を有する抽出物を有した。しかしながら、施工場所Bでは、抽出物が有したのはわずか約18kDaであった。低分子量シリコーンを測定したところ、約14kDaのピーク分子量が提供された。施工場所Cでの対応する繊維材料は、約10kDaのピーク分子量を有する抽出物を有した。
【0055】
別の実験一式では、コーティングした繊維を週単位(7日間隔での収集)で、施工場所B及び施工場所C、並びにさらに2つの施工場所、施工場所D及び施工場所Eから収集した。何週間か収集する間に、使用するシリコーンを、低分子量シリコーンからより高分子量シリコーンの1つに切り替えた。1回の収集で31lb袋2つ分の生成物を収集した。材料を1フィートの深さで吹き込み、31lb袋2つ当たり1フィートの深さでのカバー面積(平方フィート)を測定した。データを下記に提供する。
【表3】

【表4】

【表5】

【表6】
【0056】
これらの週単位のデータポイントは、一貫したカバー面積を有する生成物を供給するため、プロセスコントロールが連続的に設けられるという事実のために、混乱しがちな場合がある。変更時の効果を実証するために、1日に複数回にわたって材料を採取し試験した、施工場所Cでの、高分子量シリコーン2の10日分データを提供する。5日目と6日目の間に、低分子量シリコーンから高分子量シリコーン2にシリコーンを切り替えた。1~5日目の平均カバー面積は、157.6ftであり、一方で6~10日目の平均カバー面積は163.8ftであった。
【表7】
【0057】
加えて、高分子量シリコーンで製造される材料は、据付けのために取り扱うとき、低分子量シリコーンで製造される従来材よりも塊になる傾向がはるかに小さいことが見出された。この塊の減少は、より均一な被覆、据付け中のより良好な流れ、送達機械の閉塞の減少、及びそれによる材料据付け中の作業停止の減少など、結果として多くの作業上の利点となる。
【0058】
本開示の様々な態様を、以下の列挙した実施形態によって提供するが、これらの実施形態は、論理的に又は技術的に矛盾しない限り任意の数及び任意の組合せで組み合わせられ得る。
実施形態1:シリコーンコーティングしたミネラルウールを製造する方法であって、
ミネラルウール繊維の集合体を含むミネラルウールを提供することと、
ミネラルウールにシリコーンを含む溶剤型コーティング組成物を適用することであって、上記シリコーンが少なくとも25kDaの数平均分子量を有するコーティング組成物を適用することと、
溶剤を蒸発させシリコーンコーティングしたミネラルウールを提供することと、
を含む、方法。
実施形態2:ミネラルウールがグラスウールである、実施形態1に記載の方法。
実施形態3:ミネラルウールがストーンウール又はスラグウールである、実施形態1に記載の方法。
実施形態4:ミネラルウールの繊維の中位径(すなわち、繊維ごとに、繊維長さに対して垂直方向に繊維を横切る最大距離として測定される直径)が、約100ミクロン以下、例えば約50ミクロン以下、又はさらに約20ミクロン以下である、実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
実施形態5:繊維集合体の長さ中央値が、500mm以下、例えば250mm以下、又は100mm以下である、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
実施形態6:ミネラルウールが、溶剤型コーティング組成物でコーティングされるとき、200~500℃の範囲の温度である、実施形態1から5のいずれかに記載の方法。
実施形態7:ミネラルウールが、溶剤型コーティング組成物でコーティングされるとき、200~465℃の範囲、例えば200~430℃、又は240~500℃、又は240~465℃、又は240~430℃、又は285~500℃、又は285~465℃、又は285~430℃の範囲の温度である、実施形態1から5のいずれかに記載の方法。
実施形態8:ミネラルウールが、コーティングされる直前に、8~11の範囲の浸漬試験pHを有する、実施形態1から7のいずれかに記載の方法。
実施形態9:ミネラルウールが、8.5~11の範囲、例えば、8.5~10.5、又は8.5~10、又は9~11、又は9~10.5、又は9~10の範囲の浸漬試験pHを有する、実施形態1から7のいずれかに記載の方法。
実施形態10:コーティング組成物のシリコーンが、少なくとも30kDaの数平均分子量を有する、実施形態1から9のいずれかに記載の方法。
実施形態11:コーティング組成物のシリコーンが、少なくとも40kDaの数平均分子量を有する、実施形態1から9のいずれかに記載の方法。
実施形態12:コーティング組成物のシリコーンが、少なくとも50kDaの数平均分子量を有する、実施形態1から9のいずれかに記載の方法。
実施形態13:コーティング組成物のシリコーンが、少なくとも60kDaの数平均分子量を有する、実施形態1から9のいずれかに記載の方法。
実施形態14:コーティング組成物のシリコーンが、少なくとも70kDaの数平均分子量を有する、実施形態1から9のいずれかに記載の方法。
実施形態15:シリコーンがポリシロキサンである、実施形態1から14のいずれかに記載の方法。
実施形態16:シリコーンがポリ(ジメチルシロキサン)である、実施形態15に記載の方法。
実施形態17:シリコーンが、ジメチルシロキサン及びメチルシロキサンなどのアルキルシロキサン、並びにフェニルメチルシロキサン、2-フェニルプロピルメチルシロキサン及びフェニルシロキサンなどのアリールシロキサン、並びに3-アミノプロピルメチルシロキサンなどの官能化シロキサン、の1種以上のポリマー又はコポリマーである、実施形態15に記載の方法。
実施形態18:ポリマー又はコポリマーが、官能化シロキサン、例えば3-アミノプロピルメチルシロキサンを含む、実施形態17に記載の方法。
実施形態19:溶剤型コーティング組成物の溶媒が、水性溶媒、例えば水である、実施形態1から18のいずれかに記載の方法。
実施形態20:シリコーンが溶媒中のエマルジョンとして提供される、実施形態19に記載の方法。
実施形態21:コーティング組成物中のシリコーンの濃度が、0.01~5重量%の範囲である、実施形態1から20のいずれかに記載の方法。
実施形態22:コーティング組成物のミネラルウールへの適用速度が、ミネラルウール1グラム当たり0.1~10mgの範囲のシリコーンである、実施形態1から21のいずれかに記載の方法。
実施形態23:コーティング組成物のミネラルウールへの適用速度が、ミネラルウール1グラム当たり0.1~5の範囲、例えば、0.1~3、又は0.1~2、又は0.1~1、又は0.2~10、又は0.2~5、又は0.2~3、又は0.2~2、又は0.2~1、又は0.5~10、又は0.5~5、又は0.5~3、又は0.5~2mgの範囲のシリコーンである、実施形態1から22のいずれかに記載の方法。
実施形態24:溶剤型コーティング組成物のミネラルウールへの適用により、ミネラルウールの温度が50℃~250℃の範囲に低下する、実施形態1から23のいずれかに記載の方法。
実施形態25:スプレー後の繊維上のシリコーン量が、ミネラルウール1グラム当たり0.1~10mgの範囲のシリコーンである、実施形態1から24のいずれかに記載の方法。
実施形態26:スプレー後の繊維上のシリコーン量が、ミネラルウール1グラム当たり0.1~5の範囲、例えば、0.1~3、又は0.1~2、又は0.1~1、又は0.2~10、又は0.2~5、又は0.2~3、又は0.2~2、又は0.2~1、又は0.5~10、又は0.5~5、又は0.5~3、又は0.5~2mgの範囲のシリコーンである、実施形態1から24のいずれかに記載の方法。
実施形態27:ミネラルウールへ、有効量の帯電防止剤(例えば、第四級アンモニウム塩)を適用することをさらに含む、実施形態1から26のいずれかに記載の方法。
実施形態28:ミネラルウールへ、ミネラルウールの重量に対して0.4~4重量%の範囲の量で、除じん用油を適用することをさらに含む、実施形態1から27のいずれかに記載の方法。
実施形態29:シリコーンコーティングしたミネラルウールが、非結合性のばら詰め材料として形成される、実施形態1から28のいずれかに記載の方法。
実施形態30:シリコーンコーティングしたミネラルウールを圧縮すること及び密封容器に梱包することをさらに含む、実施形態1から29のいずれかに記載の方法。
実施形態31:少なくとも25kDaの数平均分子量を有するシリコーンを含むシリコーンコーティングを有する、ミネラルウール繊維の集合体を含むミネラルウールを含む、シリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態32:シリコーンが、少なくとも30kDaの数平均分子量を有する、実施形態31に記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態33:シリコーンが、少なくとも40kDaの数平均分子量を有する、実施形態31に記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態34:シリコーンが、少なくとも50kDaの数平均分子量を有する、実施形態31に記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態35:シリコーンが、少なくとも60kDaの数平均分子量を有する、実施形態31に記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態36:シリコーンが、少なくとも70kDaの数平均分子量を有する、実施形態31に記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態37:ミネラルウールがグラスウールである、実施形態31から36のいずれかに記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態38:ミネラルウールがストーンウール又はスラグウールである、実施形態31から36のいずれかに記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態39:ミネラルウールの繊維の中位径(すなわち、繊維ごとに、繊維長さに対して垂直方向に繊維を横切る最大距離として測定される直径)が、約100ミクロン以下、例えば約50ミクロン以下、又はさらに約20ミクロン以下である、実施形態31から38のいずれかに記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態40:繊維集合体の長さ中央値が、500mm以下、例えば250mm以下、又は100mm以下である、実施形態31から39のいずれかに記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態41:繊維集合体の長さ中央値が、50mm以下、例えば25mm以下、又は10mm以下である、実施形態31から39のいずれかに記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態42:シリコーンがポリシロキサン、例えばポリ(ジメチルシロキサン)である、実施形態31から40のいずれかに記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態43:シリコーンが、ジメチルシロキサン及びメチルシロキサンなどのアルキルシロキサン、並びにフェニルメチルシロキサン、2-フェニルプロピルメチルシロキサン及びフェニルシロキサンなどのアリールシロキサン、並びに3-アミノプロピルメチルシロキサンなどの官能化シロキサン、の1種以上のポリマー又はコポリマーである、実施形態42に記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態44:ポリマー又はコポリマーが、官能化シロキサン、例えば3-アミノプロピルメチルシロキサンを含む、実施形態43に記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態45:繊維上のシリコーンの量が、ミネラルウール1グラム当たり0.1~10mgの範囲のシリコーンである、実施形態31から44のいずれかに記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態46:繊維上のシリコーンの量が、ミネラルウール1グラム当たり0.1~10の範囲、例えば0.1~5の範囲、例えば、0.1~3、又は0.1~2、又は0.1~1、又は0.2~10、又は0.2~5、又は0.2~3、又は0.2~2、又は0.2~1、又は0.5~10、又は0.5~5、又は0.5~3、又は0.5~2mgの範囲のシリコーンである、実施形態31から44のいずれかに記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態47:有効量の帯電防止剤(例えば、第四級アンモニウム塩)をさらに含む、実施形態31から46のいずれかに記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態48:ミネラルウール上に、ミネラルウールの重量に対して、0.4~4重量%の範囲の量の除じん用油をさらに含む、実施形態31から47のいずれかに記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態49:シリコーンコーティングしたミネラルウールが、非結合性のばら詰め材料として形成される、実施形態31から48のいずれかに記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態50:圧縮され、密封容器に梱包される、実施形態31から49のいずれかに記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態51:実施形態1から30のいずれかに記載の方法により製造される、実施形態31から50のいずれかに記載のシリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態52:実施形態1から30のいずれかに記載の方法により製造される、シリコーンコーティングしたミネラルウール。
実施形態53:内側面(例えば、壁、天井、床、屋根裏、基礎の表面又は別の建物表面)と、内側面沿いに接触して配置される、実施形態31から52のいずれかに記載のシリコーンコーティングしたミネラルウールと、を有する断熱された構造体。
実施形態54:内側面が、屋階の上方に面している表面、又は構造体の天井の上である、実施形態53に記載の断熱された構造体。
実施形態55:内側面及び外側面と、内側面と外側面の間の空気層内に配置され、少なくとも部分的に空気層を充填する、実施形態31から52のいずれかに記載のシリコーンコーティングしたミネラルウールと、を有する断熱された構造体。
実施形態56:内側面及び外側面と、内側面と外側面の間の空気層内に配置され、実質的に空気層を充填する、実施形態31から52のいずれかに記載のシリコーンコーティングしたミネラルウールと、を有する断熱された構造体。
実施形態57:内側面及び外側面と、内側面と外側面の間の空気層内に配置され、少なくとも部分的に空気層を充填する(例えば、実質的に充填する)、実施形態31から52のいずれかに記載のシリコーンコーティングしたミネラルウールと、を有する断熱された空気層。
実施形態58:シリコーンコーティングしたミネラルウールが、0.25~0.510lb/ftの密度を有する、実施形態53から57のいずれかに記載の断熱された空気層又は断熱された構造体。
【0059】
本開示の要旨を逸脱することなく、本明細書に記載のプロセス及び装置に様々な変更及び改変を加えることができることは、当業者にとって明らかだろう。したがって、本発明のこのような変更及び改変が添付の実施形態及び同等物の範囲内であるならば、本開示はこれらを包含することが意図される。
図1
図2
図3