IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

特許7096909水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法
<>
  • 特許-水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法 図1
  • 特許-水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法 図2
  • 特許-水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法 図3
  • 特許-水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法 図4
  • 特許-水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法 図5
  • 特許-水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法 図6
  • 特許-水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法 図7
  • 特許-水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法 図8
  • 特許-水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法 図9
  • 特許-水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法 図10
  • 特許-水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法 図11
  • 特許-水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法 図12
  • 特許-水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法 図13
  • 特許-水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法 図14
  • 特許-水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法 図15
  • 特許-水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法 図16
  • 特許-水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法 図17
  • 特許-水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法 図18
  • 特許-水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 15/00 20060101AFI20220629BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALI20220629BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20220629BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20220629BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20220629BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
H02J15/00 G
H01M8/0656
H02J3/00 170
H02J3/14
H02J3/38 130
H02J3/38 160
H02J3/38 170
H02J13/00 311R
H02J13/00 311T
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020559614
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2018045722
(87)【国際公開番号】W WO2020121447
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-05-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発/再エネ利用水素システムの事業モデル構築と大規模実証に係る技術開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 剛史
(72)【発明者】
【氏名】田丸 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】加藤 新
(72)【発明者】
【氏名】山根 史之
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-170097(JP,A)
【文献】国際公開第2017/009909(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/078875(WO,A1)
【文献】特開2016-140161(JP,A)
【文献】特開2016-208694(JP,A)
【文献】特開2017-220068(JP,A)
【文献】国際公開第2017/158762(WO,A1)
【文献】特開2014-23232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 15/00
H02J 3/14
H02J 3/38
H02J 3/00
H02J 13/00
H01M 8/0656
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギー発電装置から供給される第1電力と、電力系統から供給される第2電力とにより水素を製造する水素システムの制御装置であって、
ディマンドリスポンスの要請が無い場合に消費される前記第2電力の第1消費電力量を示すベースラインをディマンドリスポンスの要請期間に予め設定する第1設定部と、
前記要請期間内の前記第1消費電力量を低減する前記ディマンドリスポンスの要請がある場合に、前記第1消費電力量から削減電力量を低減した実消費電力量を予め設定する第2設定部と、
前記実消費電力量に基づき、前記要請期間内の前記第2電力の電力量を制御する制御部と、を備え、
前記第2設定部は、前記実消費電力量によって前記水素システムにより生成される水素量が、前記水素システムが前記要請期間を含み、且つ前記要請期間より長い第1期間に生成する目標水素量を達成できる範囲に設定する、水素システムの制御装置。
【請求項2】
前記第1設定部は、前記要請期間よりも前の所定時間帯の前記第2電力の値に基づき、前記ベースラインを前記要請期間に設定する、請求項1に記載の水素システムの制御装置。
【請求項3】
前記第2電力の値は、前記第1電力の予測値と、前記水素システム全体の消費電力とに基づき演算される、請求項2に記載の水素システムの制御装置。
【請求項4】
前記第1設定部は、前記要請期間を含む日よりも前の複数の日における前記所定時間帯に対応する前記第2電力の平均値と、前記要請期間を含む日における前記所定時間帯の前記第2電力の平均値との差分値を、前記複数の日における前記要請期間に対応する前記第2電力の平均値に加算した値に基づき、前記ベースラインを設定する、請求項2又は3に記載の水素システムの制御装置。
【請求項5】
前記第2設定部は、前記第1期間内の前記要請期間を除く第2期間における前記水素システムの水素製造可能量に基づき、前記実消費電力量を設定する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の水素システムの制御装置。
【請求項6】
前記第2設定部は、前記要請期間に供給される前記第1電力が0又は所定値以下である場合にも、前記目標水素量が生成可能である範囲に前記実消費電力量を設定する、請求項5に記載の水素システムの制御装置。
【請求項7】
前記第1電力の内の前記電力系統に供給する電力量に係数を乗算した値、前記第2電力の電力量に係数を乗算した値、前記削減電力量に係数を乗算した値、及び、前記水素の製造量に係数を乗算した値を前記第1期間内の単位時間毎に加算した評価関数を生成する生成部と、
前記評価関数が極値を取るように、前記単位時間毎に前記第2電力、前記第1電力、前記削減電力量、及び前記水素の製造量を演算する演算部と、を更に備え、
前記評価関数内における前記削減電力量は前記第1設定部、及び前記第2設定部の演算処理により設定され、
前記制御部は、前記演算部の演算結果に基づき、前記制御を行う、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の水素システムの制御装置。
【請求項8】
前記単位時間毎の前記第1電力の電力量は予測値である、請求項7に記載の水素システムの制御装置。
【請求項9】
前記単位時間毎の前記第1電力を予測する第1予測部を更に備える、請求項8に記載の水素システムの制御装置。
【請求項10】
前記演算部は、前記第1電力の予測値と、前記水素システムの水素製造量に対応する電力とに基づき、前記要請期間以外の前記単位時間毎の前記第2電力を演算する、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の水素システムの制御装置。
【請求項11】
前記演算部は、前記第1電力の電力量を、前記単位時間毎の前記第1電力の確率分布に基づき設定する、請求項8に記載の水素システムの制御装置。
【請求項12】
前記第1電力の日ごとの電力量、前記第2電力の日ごとの電力量、及び、前記水素の日ごとの製造量に対応する水素製造装置の日ごとの入力電力量を計画する第1計画部を更に備える、請求項7乃至11のいずれか一項に記載の水素システムの制御装置。
【請求項13】
前記水素システムが生成する水素の供給形態に応じて、前記第1計画部の計画情報を使用する場合と使用しない場合とを切り替える切り替え部を更に備える、請求項12に記載の水素システムの制御装置。
【請求項14】
前記目標水素量は、水素貯蔵量の目標値、液化水素量積算、圧縮水素量積算、水素製造装置の気体水素製造量積算、のいずれかである、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の水素システムの制御装置。
【請求項15】
再生可能エネルギー発電装置が生成する第1電力と、電力系統から供給される第2電力とにより水素を製造する水素システムの制御方法であって、
ディマンドリスポンスの要請が無い場合に消費される前記第2電力の第1消費電力量を示すベースラインをディマンドリスポンスの要請期間に予め設定する第1設定工程と、
前記要請期間内の前記第1消費電力量を低減する前記ディマンドリスポンスの要請がある場合に、前記第1消費電力量から削減電力量を低減した実消費電力量を予め設定する第2設定工程と、
前記実消費電力量に基づき、前記要請期間内の前記第2電力の電力量を制御する制御工程と、を備え、
前記第2設定工程では、前記実消費電力量によって前記水素システムにより生成される水素量が、前記水素システムが前記要請期間を含み、且つ前記要請期間より長い第1期間に生成する目標水素量を達成できる範囲に設定する、水素システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新たなエネルギーとして水素エネルギーが注目されつつある。水素システムの水素製造装置により水素が生成され、水素タンクに貯蔵される。この水素タンクに貯蔵された水素を、水素発電装置により再び電力に変換することが可能である。このため、水素システムを電力網に接続することで、電力網から電力を供給されることも、電力網に電力を供給することも可能である。こように、水素システムにより、電力網の安定化と、水素需要への対応を行うことが可能となる。
【0003】
また、電力網の電力供給状況に応じて水素システムにおける電力消費のパターンを変化させるディマンドリスポンスの重要性が認識されるようになっている。電力消費のパターンの一例には、電力網における消費電力量のピークカットを行う電力消費の削減型が考えられる。ところが、電力消費の削減を行うと、水素システムの生成する水素量が目標値に達しない恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6038085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、電力系統から供給される電力を要請期間中に削減しても、水素エネルギーシステムの目的とする水素量を生成可能な水素システムの制御装置、および水素システムの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る水素システムの制御装置は、再生可能エネルギー発電装置から供給される第1電力と、電力系統から供給される第2電力とにより水素を製造する水素システムの制御装置であって、ディマンドリスポンスの要請が無い場合に消費される前記第2電力の第1消費電力量を示すベースラインをディマンドリスポンスの要請期間に予め設定する第1設定部と、前記要請期間内の前記第1消費電力量を低減する前記ディマンドリスポンスの要請がある場合に、前記第1消費電力量から削減電力量を低減した実消費電力量を予め設定する第2設定部と、前記実消費電力量に基づき、前記要請期間内の前記第2電力の電力量を制御する制御部と、を備え、前記第2設定部は、前記実消費電力量を、前記水素システムが前記要請期間を含み、且つ前記要請期間より長い第1期間に生成する目標水素量を達成できる範囲に設定する。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、電力系統から供給される電力を要請期間中に削減しても、水素エネルギーシステムが目的とする水素量を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る水素エネルギーシステムの構成を示すブロック図。
図2】制御装置の詳細な構成を示すブロック図。
図3】長期計画を画像として表示した例を示す図。
図4】各パラメータの表示画像例を示す図。
図5】EC効率の設定画像例を示す図。
図6】水素製造装置の効率の補間例を示す図。
図7】ディマンドリスポンスの日時の設定画面例を示す図。
図8】下げDRの一例を示す図。
図9】ベースラインの設定例を示す図。
図10】ベースライン以下のスロットと水素製造装置の入力電力を示す図。
図11】目標水素量と水素貯蔵量の例を概念的に示す図。
図12】実消費電力量を設定する処理例を示すフローチャート図。
図13】長期計画と短期計画のタイムスケジューリングの一例を示す図。
図14】第2計画部が生成した短期計画を画像化した例を示す図。
図15】演算部310の処理例を示すフローチャート。
図16】制御装置の処理例を示すフローチャート。
図17】第2実施形態に係る水素エネルギーシステムの構成を示すブロック図。
図18】第2実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図。
図19】発電量の信頼度の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る水素エネルギー制御システムおよび水素エネルギー制御システムの制御方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0010】
(第1実施形態)
【0011】
図1は、第1実施形態に係る水素エネルギーシステム1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る水素エネルギーシステム1は、水素を生成するシステムであり、水素システム10と、再生可能エネルギー発電装置20と、制御装置30とを備えて構成されている。図1では、更に電力系統40と、液体水素流通網50とが図示されている。
【0012】
水素システム10は、再生可能エネルギー発電装置20が生成する第1電力と、電力系統40から供給される第2電力とにより水素を製造する。水素システム10の詳細な構成は、後述する。
【0013】
再生可能エネルギー発電装置20は、自然エネルギー由来の発電設備を有し、第1電力を生成する。この再生可能エネルギー発電装置20は、例えば太陽光を用いた太陽光発電装置22と、風力を用いて発電する風力発電装置24とを有する。再生可能エネルギー発電装置20は、化石燃料などの燃料が不要であるが、その発電量は天候や風力などの環境の影響を受けるため不安定である。なお、再生可能エネルギー発電装置20は、バイオマスやバイオマス由来廃棄物などの新エネルギーを利用した発電装置でもよい。
【0014】
制御装置30は、水素システム10と、再生可能エネルギー発電装置20と、電力系統から供給される第2電力を制御する。制御装置30の詳細な構成は、後述する。
【0015】
電力系統40は、火力発電所などが発電した電力を、電力網を介して水素システム10、再生可能エネルギー発電装置20及び制御装置30などに供給する。
液体水素流通網50は、水素を液体として輸送して、水素需要家に対して供給する流通網である。
【0016】
ここで、水素システム10の詳細な構成を説明する。水素システム10は、水素製造装置100と、水素貯蔵供給装置102と、水素発電装置104とを有する。
【0017】
水素製造装置100は、例えば、アルカリ性の溶液に電流を流すことにより、水素と酸素とを製造する電気水分解装置である。また、水素製造装置100は、水素配管を介して、生成した水素を水素貯蔵供給装置102の気体水素タンク108に蓄える。すなわち、この水素製造装置100は、再生可能エネルギー発電装置20が生成する第1電力と、電力系統40から供給される第2電力とにより水素を製造し、この製造した水素を水素貯蔵供給装置102に蓄える。
【0018】
水素貯蔵供給装置102は、水素製造装置100が生成した水素を貯蔵すると共に、液体水素流通網50を介して液体水素を供給する。なお、水素貯蔵供給装置102の詳細は後述する。
【0019】
水素発電装置104は、水素貯蔵供給装置102から供給される水素を用いて、電力と、熱とを生成する。ここでの熱は、例えば温水として温水網へ供給される。水素発電装置104は、例えば燃料電池を有している。酸素は空気中の酸素を利用してもよいし、水素製造装置100が水素製造に伴い生成する酸素を酸素タンクに蓄積したものを使用してもよい。
【0020】
ここで、水素貯蔵供給装置102の構造を詳細に説明する。この水素貯蔵供給装置102は、パワーコンディショナ装置106と、気体水素タンク108と、液化装置110と、液体水素タンク112と、液体水素排出装置114と、気化装置116と、減圧装置118とを備えて構成されている。
【0021】
パワーコンディショナ装置106は、例えばコンバータを含んで構成される。このコンバータは、再生可能エネルギー発電装置20が出力した直流電力を所定の交流電力に変換する。
【0022】
気体水素タンク108は、水素製造装置100により製造された気体の水素を蓄える。この気体水素タンク108は、水素製造装置100と、液化装置110とに配管を介して接続され、液化装置110に気体の水素を供給する。
【0023】
液化装置110は、例えば冷却機・圧縮機であり、気体水素タンク108から供給された気体水素を液体水素に変換する。この液化装置110は、気体水素タンク108から供給された水素を液体水素に変換し、配管を介して液体水素タンク112に供給する。
【0024】
液体水素タンク112は、液化装置110から供給された液体水素を貯蔵する。この液体水素タンク112は、液化装置110から供給された液体水素を蓄えると共に、液体水素排出装置114に配管を介して液体水素を供給する。
【0025】
液体水素排出装置114は、液体水素タンク112から供給された液体水素を液体水素流通網50、及び気化装置116に供給する。なお、液体水素排出装置114は、液体水素タンク112と一体的に構成されてもよい。
【0026】
気化装置116は、液体水素排出装置114から供給された液体水素を気体の水素に変換する。すなわち、この気化装置116は、液体水素排出装置114から供給された液体水素を気体の水素に変換し、配管を介して気体水素タンク108に供給する。
【0027】
減圧装置118は、配管を介して液体水素タンク112と水素発電装置104とに接続されている。すなわち、この減圧装置118は、配管を介して液体水素タンク112から供給された液体水素を減圧し、配管を介し水素発電装置104に供給する。
【0028】
図2は、制御装置30の詳細な構成を示すブロック図である。図2に示すように、制御装置30は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含んで構成され、記憶部302と、通信部304と、第1予測部306と、第1計画部308と、第2計画部310と、画像処理部312と、制御部313と、表示制御部314と、表示部316とを、有する。制御装置30は、記憶部302に記憶されるプログラムを実行することにより、通信部304と、第1予測部306と、第1計画部308と、第2計画部310と、画像処理部312と、制御部313と、表示制御部314の各機能を実現する。なお、通信部304と、第1予測部306と、第1計画部308と、第2計画部310と、画像処理部312と、制御部313と、表示制御部314とのそれぞれを、独立した電子回路により構成してもよい。
【0029】
記憶部302は、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク等により実現される。この記憶部302は、制御装置30が実行するプログラムと、各種の制御用のデータを記憶する。
【0030】
通信部304は、外部のネットワークと通信を行い、例えば60日分の気象予測データを取得する。この気象予測データは、単位時間毎、例えば30分単位毎のデータである。
【0031】
第1予測部306は、通信部304が取得した気象予測データに基づき、再生可能エネルギー発電装置20の発電量を予測する。第1予測部306は、単位時間、例えば30分単位の再生可能エネルギー発電装置20が発電する第1電力量を60日分予測する。第1予測部306は、一般的な予測方法、例えば回帰分析、ニューラルネットワークなどにより、再生可能エネルギー発電装置20が発電する第1電力を予測する。また、第1予測部306は、再生可能エネルギー発電装置20の30分単位の予測発電量を加算し、再生可能エネルギー発電装置20が発電する第1電力の1日ごとの発電量を算出する。
【0032】
第1計画部308は、水素システム10の長期計画、例えば60日分を生成する。第1計画部308の詳細は後述する。
【0033】
第2計画部310は、第1計画部308の長期計画に基づき、水素システム10の短期計画、例えば1~7日分を生成する。第2計画部310の詳細も後述する。
【0034】
画像処理部312は、第1計画部308及び第2計画部310の計画値、各種の情報を画像として生成する。制御部313は、第1計画部308の長期計画、及び第1計画部308の短期計画に基づき、水素エネルギーシステム1内の各装置を制御ずる。
【0035】
表示制御部314は、画像処理部312が生成した画像を表示部316に表示する。表示部316は、例えばモニタであり、画像処理部312が生成した画像などを表示する。
【0036】
ここで、第1計画部308の処理の詳細を説明する。図3は、第1計画部308が生成した長期計画を画像として表示部316に表示した例を示す図である。上側の図は、1日ごとの再生可能エネルギー発電装置20の第1電力をPV平均発電電力で示し、水素システム10全体の消費電力をプラント全体平均消費電力で示し、電力系統40から供給される第2電力をプラント全体平均受電電力で示し、水素製造装置100の入力電力をEC平均入力電力で示す。
【0037】
下側の図は、水素製造装置100の水素製造量である液化水素量、液体水素タンク112に貯蔵される液水タンク残量、水素の出荷量を示す。横軸は、日にちを示し、上側の図の縦軸は電力を示し、下側の図の縦軸は水素量を示す。
【0038】
図3に示すように、第1計画部308は、日ごとの第1電力と、水素システム10全体の消費電力と、電力系統40から供給される第2電力と、水素製造装置100の入力電力と、を計画する。また、第1計画部308は、日ごとの液化水素量と、水素の出荷量と、液水タンク残量と、を計画する。
【0039】
より詳細には、第1計画部308は、液水タンク残量と出荷量とに基づき、日ごとの液化水素量を演算し、計画情報として設定する。また、第1計画部308は、日ごとの液化水素量に基づき、日ごとの水素製造装置100の入力電力を演算し、計画情報として設定する。次に、第1計画部308は、日ごとの水素製造装置100の入力電力に基づき、水素システム10全体の消費電力を演算し、計画情報として設定する。すなわち、水素システム10全体の消費電力には、水素製造装置100の入力電力に、水素システム10内の各装置の消費電力が加算される。
【0040】
水素システム10内の各装置の消費電力には、例えば液化装置110の消費電力が含まれる。この液化装置110の消費電力は、液化器負荷率に応じて定められる。液化装置110の液化器負荷率は、液化装置110の処理能力を示し、例えば24時間単位で設定される。第1計画部308は、水素システム10全体の消費電力から再生可能エネルギー発電装置20の1日ごとの予測第1電力を減算することで、電力系統40から受電する計画値としての第2電力を演算し、計画情報として設定する。
【0041】
図4は、第1計画部308が設定する各パラメータの表示画像例を示す図である。図4に示すように、第1計画部308は、水素製造装置100の定格電力と、電力系統40から受電する第2電力の契約電力を設定する。また、操作者がEC効率の設定画面へのリンクを指示すると、後述の図5の画面例が表示され、DR候補日時の設定画面へのリンクを指示すると、後述の図7の画面例が表示される。
【0042】
図5は、水素製造装置100の効率の設定画像例を示す図である。図5に示すように、第1計画部308は、水素製造装置100の効率を入力電力に応じて、設定する。水素製造装置100の効率は、例えば入力電力に対する水素生成量の割合を示す。
【0043】
本実施形態に係る水素製造装置100は、短時間だけ水素製造を停止する場合に起動停止時間を短縮できる短縮モードを有する。また、ディマンドリスポンス(以下「DR」と記載する場合がある。)の要請時には水素製造装置100を停止する場合がある。このように、水素製造装置100の水素製造を停止する場合には、停止にいたるまでの入力電力を徐々に低下させ、再製造する場合には、入力電力を徐々に増加させる。入力電力が変化することで水素生成量が変化する。効率は、例えば入力電力に対して設定することができるため、第1計画部308は、ディマンドリスポンスの実行時などに合わせ水素製造装置100の効率を設定する。
【0044】
ディマンドリスポンスは、電力供給状況に応じて消費パターンを変化させることを意味する。ディマンドリスポンスには、「需要削減」としての所謂「下げDR(図3)」と、「需要増加」としての所謂「上げDR(図3)」の2通りが考えられる。前者は、効果的に電力系統40のピークカットを行うことが可能となる。後者は、電力の供給過多状態に陥った際に、需要家に対し電力の消費増加を促すことで、電圧や周波数等の電気の品質安定化に資するものである。
【0045】
図6は、水素製造装置100の効率の補間例を示す図である。図6に示すように、第1計画部308は、水素製造装置100に設定した効率を補完する。例えば、第1計画部308は、水素製造装置100に設定した効率を例えばスプライン補完する。これにより、水素製造装置100の効率をすべての入力電力に対して設定することが可能となる。
【0046】
図7は、第1計画部308が設定するディマンドリスポンスの日時の設定画面例を示す図である。図7に示すように、第1計画部308は、ディマンドリスポンスの日時を設定する。より具体的には、第1計画部308は、「下げDR(図3)」と、「上げDR(図3)」の日時を設定する。また、第1計画部308は、「下げDR(図3)」の期間には、水素製造装置100の水素製造量を0として、液水タンク残量を計画してもよい。これにより、下げDRの実行時に、第2電力の供給をより抑制可能となる。
【0047】
また、液体水素出荷の時間を任意の時間に定めることが可能である。このため、第1計画部308は、例えば、出荷予定日と前日をまたがる00:00までに、出荷予定日の出荷量を液体水素タンク112に貯蔵することを計画する。さらに、第1計画部308は、長期計画を計画する際の制約条件として、各装置の性能範囲内であること、契約電力以内であることなどを満たすように計画する。長期計画を計画する方法として、装置の入出力を数式で表現し数理最適化やメタヒューリスティックで最適化する方法を用いてもよい。このような処理により、第1計画部308は、上述の情報に加え、液化器負荷率、目標水素貯蔵量(下限)、DR予定日、時間帯などを計画する。そして、第1計画部308は、計画した情報を画像処理部312に出力する。これにより、画像処理部312は、例えば上述の図3に示す画像データを生成する。
【0048】
ここで、第2計画部310の詳細を説明する。図2に示すように、第2計画部310は、第1設定部310aと、第2設定部310bと、生成部310cと、演算部310dとを有する。
【0049】
図8は、下げDRの一例を示す図である。縦軸は電力を示し、横軸は時間を示す。実消費電力802は、電力系統40(図1)から供給される第2電力を示し、ベースライン804は、DRの要請がなかった場合に想定される要請期間T80における第2電力を示し、削減電力806は、ベースライン804と、実際の実消費電力802との差分を示す。
【0050】
第1設定部310aは、ディマンドリスポンスの要請が無い場合に消費される第2電力の第1消費電力量であるベースライン804をディマンドリスポンスの要請期間T80に設定する。本実施形態に係る第1設定部310aは、例えば統計的推計負荷の考え方によりベースライン804を設定する。ベースライン804は、ディマンドリスポンスの要請が無い場合に消費される要請期間T80内の第2電力の第1消費電力量を示す。すなわち、ベースライン804が示す電力を要請期間T80内において積算すると、要請期間T80内において第2電力を積算した第1消費電力量となる。
【0051】
図9は、ベースラインの設定例を概念的に示す図である。ここでは、DR当日、及びDRの5日前から1日前の第2電力の消費電力を示している。縦軸は電力を示し、横軸は時間を示している。図9内には、DRの要請期間T80をDR当日の13時00分から13時30分と、13時30分から14時00分の2コマとしている。また、DR当日のベースライン910、及びDRの要請期間T80の4時間前から1時間前までの30分単位の7コマの期間における消費電力912を示している。さらにまた、DRの5日前から1日前の消費電力912に対応する消費電力914、及びDRの要請期間T80に対応する期間の消費電力916を示している。
【0052】
図9に示すように、第1設定部310aは、DR実施日当日を含まないDR実施日の直近5日間のうち、DRの要請期間T80に対応するDR実施時間帯の平均需要量の多い4日間の平均消費電力を求める。例えば3日前の平均消費電が0メガワットであり、3日前を除く各日の平均消費電が1メガワットであるので、3日前の平均消費電を除く4日間のDR実施時間帯における平均消費電力は、1メガワットとなる。
【0053】
次に、第1設定部310aは、DR実施時間の4時間前から1時間前までの30分単位の7コマ(所定時間帯T82)について、(DR実施日当日の需要量)-(上記の算出方法により算出された値)の平均値を算出する。例えば、DR実施日当日の需要量は、4メガワットである。また、5日前の平均消費電力が4メガワットであり、4日前の平均消費電力が2メガワットであり、4日前の平均消費電力が2メガワットであり、3日前の平均消費電力が1メガワットであり、2日前の平均消費電力が4メガワットであり、1日前の平均消費電力が2メガワットである。このため、3日前の平均消費電力1メガワットを除く4日間の平均消費電力は3メガワットとなる、これにより、(DR実施日当日の需要量)-(上記の算出方法により算出された値)は、4メガワットから3メガワットを減算した1メガワットとなる。
【0054】
次に、第1設定部310aは、上記で算出されたDR実施時間帯に対応する4日間の平均消費電力に、(DR実施日当日の需要量)-(上記の算出方法により算出された値)の平均値を加算してベースラインとする。例えば、第1設定部310aは、4日間のDR実施時間帯における平均消費電力である1メガワットに、(DR実施日当日の需要量)-(上記の算出方法により算出された値)の平均値である1メガワットを加算した2メガワットをベースラインとする。このように、第1設定部310aは、要請期間T80を含む日(当日)よりも前の複数の日(DR1、2、4、5日前)における所定時間帯T82に対応する第2電力の平均値と、所定時間帯T82の第2電力の平均値との差分値を、複数の日(DR1、2、4、5日前)における要請期間T80に対応する第2電力の平均値に加算した値に基づき、ベースライン910を設定する。
【0055】
第2設定部310bは、ディマンドリスポンスの要請がある場合に消費される第2電力の消費電力量である実消費電力量を設定する。すなわち、第2設定部310bは、要請期間T80内の第1消費電力量を低減するディマンドリスポンスの要請がある場合に、第1消費電力量から削減電力量を低減した実消費電力量を予め設定する。図8に示すように、削減電力量は、削減電力806の要請期間T80における積算値である。
【0056】
また、第2設定部310bは、ベースラインと実消費電力量との差である削減電力量を、水素システム10がDRの要請期間T80よりも長く、且つ要請期間T80含む第1期間に生成する目標水素量に基づき演算する。この第1期間は、例えば要請期間T80を含む24時間である。
【0057】
第2設定部310bは、DRの要請期間T80に供給される第1電力が0又は所定値以下である場合を想定して、目標水素量が生成可能である範囲に実消費電力量を設定してもよい。これにより、変動性の高い第1電力の水素生成への依存率を低下できるので、目標水素量の達成可能性がより向上する。
【0058】
例えば、第2設定部310bは、第1期間内の要請期間T80を除く第2期間における水素システム10の水素製造可能量に基づき、実消費電力量を設定する。これにより、要請期間T80におけるDRにより水素製造ができなくとも、目標水素量を達成することが可能となる。より具体的な例では、第2設定部は、第1期間内におけるDRの要請期間T80を除く第2期間に、水素システム10の水素製造装置100を定格負荷で運転させた場合の水素製造量に基づき、実消費電力量を設定する。この場合、DRの要請期間T80に水素製造装置100を停止させ、定格負荷で運転させる場合の移行期間における水素製造装置100の水素生成量を設定してもよい。
【0059】
図10は、ベースライン910以下のスロット1102と水素製造装置100の入力電力1104を概念的に示す図である。DRの要請期間T80は、11時30分から12時30分である。ここでは、下げDRの例を示している。上図がベースライン910以下のスロット1102を示す図であり、下図が水素製造装置100の入力電力1104を示す図である。上図及び下図の横軸は時間を示し、上図の縦軸は第2電力の受電電力を示し、下図の縦軸は、水素製造装置100の入力電力を示す。図10の例では、DRの要請期間T80中において水素製造装置100の水素製造が停止している例を示しているが、これに限定されない。また、スロット1102は、ベースライン910以下の電力を均等割した単位電力の大きさを意味する。例えば、ベースライン910の示す電力をN分割、例えば3分割した値がスロット1102の縦辺の長さに対応する。
【0060】
図11は、目標水素量1200と液体水素タンク112に貯蔵される水素貯蔵量の例を概念的に示す図である。縦軸はDR実施時間後に液体水素タンク112に貯蔵される水素貯蔵量を示し、横軸は時間を示している。図12における目標水素量1200は、出荷予定日と前日をまたがる00:00時における値である。
【0061】
図8図10、及び図11を参照にしつつ図12に基づき、第2設定部310bの処理例を説明する。図12は、第2設定部310bが実消費電力量を設定する処理例を示すフローチャートである。
【0062】
まず、第2設定部310bは、第1設定部310aが設定したDR要請期間T80におけるベースラインをN分割したスロット1102(図10)を生成する(ステップS100)。分割数は、限定されず、例えば1000分割でもよい。また、第2設定部310bは、第1予測部306(図2)が予測した30分単位の再生可能エネルギー発電装置20の発電量に関して、DRの要請期間T80における値を0に設定する。これにより、DR要請期間T80における実消費電力量の実行をより高精度に行うことが可能となる。
【0063】
次に、第2設定部310bは、Zに1を設定する(ステップS102)。
次に、第2設定部310bは、Z個のスロット1102に対応する削減電力量の削減を実行する(ステップS104)。この場合に、第2設定部310bは、削減電力量の削減を実行した際の水素生成量を、水素製造装置100の効率を元に計算する。
【0064】
次に、第2設定部310bは、この削減電力量の削減を実行しても、目標水素量1200(図11)を達成できるか否かを判定する(ステップS106)。達成できる場合(ステップS106のYES)、ZがNか否かを判定し(ステップS108)、Z=Nである場合(ステップS108のYES)、現状のZから1を減算したスロット1102に対応する削減電力量を設定(ステップS110)し、処理を終了する。
【0065】
一方で、目標水素量1200(図11)を達成できない場合(ステップS106のNO)、ステップS110の処理を行う。また、Z=Nでない場合(ステップS108のNO)、Zに1を加算し(ステップS112)、ステップS104からの処理を繰り返す。第2設定部310bは、ベースライン910から最終的に削減したスロット1102に対応する削減電力量を減じ、実消費電力量を設定する。
【0066】
なお、本実施形態に係る第2設定部310bは、第1予測部306(図2)が予測した30分単位の発電量をDR要請期間T80において0に設定するが、これに限定されず、予測した30分単位の発電量を用いてもよい。或いは、予測した30分単位の発電量に所定の比率を乗算して、所定値以下に設定した再生可能エネルギー発電装置20の発電量を用いてもよい。
【0067】
このように、第2設定部310bは、削減電力量を増加させつつ、目標水素量1200(図11)を達成できるか否かを判定する。そして、目標水素量1200(図11)を達成できる削減電力量の限界値に基づき、実消費電力量を設定する。また、実消費電力量が設定されると、上述した制御部313は、第2設定部310bが設定した消費電力量に基づき、要請期間T80において第2電力を制御する。
【0068】
図2に示す生成部310cは、第2電力の電力量に第1係数を乗算した値、第1電力の内の電力系統40に供給する電力量に第2係数を乗算した値、下げDRでの削減電力量に第3係数を乗算した値、上げDRでの負荷増減量に第4係数を乗算した値、及び、水素の製造量に第5係数を乗算した値を計画作成時間である第1期間内の単位時間毎に加算した評価関数を生成する。
【0069】
【数1】
(1)式は、生成部310Cが生成する評価式の一例である。
【0070】
【数2】
(2)式は、単位時間を30分とした場合の、第2電力の電力量に第1係数を乗算した値を示している。tは単位時間を示し、Tは第1期間を示す。例えば第1期間が7日であれば、T=336となる。
【数3】
【数4】
ここで、(3)式は、時刻tでの係数であり、(3)式で示す係数に0.5を乗算した値が第1係数である。(4)式は、時刻tでの第2電力の電力量である。例えば、(2)式は、電力系統40からの買電支出[円]に対応する。
【0071】
【数5】
(5)式は、第1電力の内の電力系統40に供給する電力量に第2係数を乗算した値を示している。
【数6】
【数7】
ここで、(6)式は、時刻tでの係数であり、(6)式で示す係数に-0.5を乗算した値が第2係数である。(7)式は、時刻tでの電力系統40に供給する電力量である。例えば、(5)式は、電力系統40への売電収入[円]に対応する。
【0072】
【数8】
(8)式は、削減電力量に第3係数を乗算した値を示している。
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
ここで、(9)式は、時刻tでの係数であり、(9)式で示す係数に-0.5を乗算した値が第3係数である。(10)式は、時刻tでの下げDR可能量、すなわち削減電力量を示している。また、(11)式は、時刻tでの係数であり、(11)式で示す係数に-0.5を乗算した値が第4係数である。(12)式は、時刻tでの上げDR可能量、すなわち負荷増減量を示している。例えば、(8)式は、ディマンドレスポンスでの収入[円]に対応する。
【0073】
【数13】
(13)式は、水素の製造量に第5係数を乗算した値を示している。
【数14】
【数15】
ここで、(14)式は、第5係数である。(15)式は、時刻tでの水素の製造量である。例えば、(13)式は、水素販売収入[円]に対応する。
【0074】
図2に示す演算部310dは、(16)式で示すように、(1)式で示した評価関数が最小値を取るように演算する。なお。係数を0に設定することにより、評価関数に加えない項目を除くことが可能である。例えば、上げDRを行わない場合には、(11)式で示す係数を0とする。
【数16】
【0075】
図13は、長期計画と短期計画のタイムスケジューリングの一例を示す図である。横軸は時間を示している。第1計画部308(図2)は、1日目を含む7日分の長期計画500の生成を0日目の時刻T10である8:30に例えば開始する。第1計画部308(図2)が長期計画500を生成する際の初期条件502は、0日目を含む過去のデータから設定される。第1計画部308(図2)は、前述のように、日ごとの液水タンク残量、水素の出荷量、目標水素残量、水素システム10全体のプラント全体平均消費電力、及びEC平均入力電力などを計画し、これらの情報を短期計画506の終端条件504として演算部310dに供給する。
【0076】
演算部310は、短期計画506を生成するために、(1)式で示した評価関数が極値を取るように、0日目の時刻T12である例えば9:00から演算を開始する。演算部310が短期計画506を生成するための情報を演算する際の初期条件508は、0日目を含む過去のデータから設定される。すなわち、演算部310は、終端条件504に含まれる日ごとの液水タンク残量、水素の出荷量、目標水素残量、水素システム10全体のプラント全体平均消費電力、及びEC平均入力電力などの内の必要な情報を拘束条件とし、初期条件508を用いて、(1)式で示した評価関数が極値を取るように、演算する。
【0077】
図14は、演算部310の演算結果に基づき、第2計画部310が生成した短期計画506を画像として表示部316に表示した例を示す図である。上側の図は、30分毎の再生可能エネルギー発電装置20の予測した第1電力をPV平均発電電力で示し、水素システム10全体の消費電力をプラント全体平均消費電力で示し、電力系統40から供給される第2電力をプラント全体平均受電電力で示し、水素製造装置100の入力電力をEC平均入力電力で示す。
【0078】
下側の図は、水素製造装置100の水素製造量である液化水素量、液体水素タンク112に貯蔵される液水タンク残量、水素の出荷量、目標水素残量を示す。横軸は、日にちを示し、上側の図の縦軸は電力を示し、下側の図の縦軸は水素量を示す。
【0079】
図14に示すように、演算部310dは、(1)式で示した評価関数が極値を取るように、所定時間t、例えば30分毎に第1電力、削減電力量、及び水素の製造量を演算する。この演算の際に、演算部310dは、第1設定部310a及び第2設定部310bが演算したベースライン、削減電力量、負荷増減量を使用する。さらにまた、所定時間t毎の再生可能エネルギー発電装置20の発電量は、第1予測部306の予測値を使用する。
【0080】
図15は、演算部310の処理例を示すフローチャートである。ここでは、図9及び図13を参照しつつ、終端条件504及び初期条件508を拘束条件として、短期計画506の期間内の全単位時間の水素製造量に対応する電力を変更する例を説明する。
【0081】
まず、演算部310dが、終端条件504に基づき、短期計画506の期間内の全単位時間の水素製造量に対応する電力を初期値として設定する(ステップS150)。
【0082】
次に、演算部310dは、全単位時間の水素製造量に対応する電力、及び全単位時間の第1電力の予測値を用いて、短期計画506の期間内の要請期間T82を除く全単位時間の第2電力の値を演算する(ステップS152)。
【0083】
次に、第1設定部310aは、要請期間T82を含む日よりも前の複数の日における所定時間帯T82に対応する第2電力の平均値と、所定時間帯T82の第2電力の平均値との差分値を、これら複数の日における要請期間T82に対応する第2電力の平均値に加算した値に基づき、ベースライン910を設定する(ステップS154)。この場合、複数の日の中に既に過去となった日が含まれる場合には、初期条件508に含まれる第2電力の実績値を使用する。一方で、複数の日に将来の日が含まれる場合には、演算部310dの演算値を用いる。
【0084】
次に、第2設定部310bは、第1期間(24時間)内の要請期間T82を除く第2期間における水素システム10の水素製造可能量に基づき、要請期間T82内の実消費電力量を設定する(ステップS156)。すなわち、第2設定部310bは、実消費電力量を、水素システム10が要請期間T82を含み、且つ要請期間T82より長い第1期間(24時間)に生成する目標水素量を達成できる範囲に設定する。また、この際に、第2設定部310bは、要請期間T82に供給される第1電力が0又は所定値以下である場合にも、目標水素量が生成可能である範囲に実消費電力量を設定してもよい。
【0085】
次に、演算部310dは、評価関数の値を演算する(ステップS158)。そして、演算部310dは、評価関数の値が極値であるか否かを判定する(ステップS160)。ここでは、所定の演算回数に達したか否かを判定してもよい。
【0086】
評価関数の値が極値である場合(ステップS160のYES)、処理を終了する。一方で、評価関数の値が極値でない場合(ステップS160のNO)、終端条件504を拘束条件として、短期計画506の期間内の全てまたは一部の単位時間の水素製造量に対応する電力の値を変更し(ステップS162)、ステップS152から処理を繰り返す。例えば、電力の値はモンテカルロシュミレーション方法などにより変更してもよい。このように、演算部310dは、終端条件504を拘束条件として評価関数の値が極値を取るように演算を行う。
【0087】
再び図13に戻り、第1計画部308(図2)は、1日目を含む7日分の長期計画512の生成を0日目の時刻T14である例えば23:30に再度、開始する。第1計画部308(図2)が長期計画512を生成する際の初期条件514には、0日目の23:30までの過去のデータと、短期計画506におけるDRの要請期間T80内における実消費電力量が含まれる。第1計画部308(図2)は、前述のように、日ごとの液水タンク残量、水素の出荷量、目標水素残量、水素システム10全体のプラント全体平均消費電力、及びEC平均入力電力などを再計画し、これらの情報を短期計画520の終端条件518として演算部310dに供給する。
【0088】
演算部310は、短期計画520を再度、生成するために、(1)式で示した評価関数が極値を取るように、0日目の時刻T16である例えば23:45から演算を開始する。演算部310が短期計画520を生成する際の初期条件522は、0日目の23:30までの過去のデータと、短期計画506におけるDRの要請期間T80内における実消費電力量が含まれる。すなわち、演算部310は、終端条件518に含まれる日ごとの液水タンク残量、水素の出荷量、目標水素残量、水素システム10全体のプラント全体平均消費電力、EC平均入力電力、第1設定部310aが演算したベースライン、及び第2設定部310bが演算した削減電力量の内の処理に必要な情報を拘束条件とし、初期条件522を用いて、(1)式で示した評価関数が極値を取るように、再演算する。そして、第2計画部310(図2)は、演算部310の演算結果を画像処理部312に出力する。これにより、画像処理部312は、例えば上述の図14に示す画像データを生成する。また、上述の制御部313(図2)は、演算部310dの演算結果に基づき、制御を行う。
【0089】
図16は、本実施形態に係る制御装置30の処理例を示すフローチャートである。まず、第1予測部306が、通信部304が取得した気象予測データに基づき、再生可能エネルギー発電装置20の発電量を例えば30分単位で予測する(ステップS200)。また、第1予測部306は、30分単位で予測した発電量を24時間単位で加算し、日ごとの予測発電量を演算する。
【0090】
次に、第1計画部308が、日ごとの予測発電量及び初期条件を用いて、日ごとの液水タンク残量、水素の出荷量、目標水素残量、水素システム10全体のプラント全体平均消費電力、及びEC平均入力電力などの情報を含む長期計画を生成する(ステップS202)。これらの情報を短期計画の終端条件として演算部310dに供給する。
【0091】
次に、演算部310dは、初期条件及び終端条件を用いて、評価式(1)式の極値を演算する。この際に演算部310dは、第1設定部310a及び第2設定部310bが演算したベースライン、実消費電力量を用いる。そして、極値が得られた時点の削減電力量をDR可能量予測値とする(ステップS204)。
【0092】
また、演算部310dは、評価式(1)式の極値を演算する際に、第1設定部310a及び第2設定部310bが演算したベースライン、負荷削減量を拘束条件とし、水素製造装置100のEC性能を設定する。EC性能は例えば、水素製造装置の起動や停止に要する時間である。(ステップS206)。
【0093】
第2計画部310は、評価式(1)式の極値が得られた時点の演算結果に基づき、30分毎の第1電力、水素システム10全体の消費電力、電力系統40から供給される第2電力、水素製造装置100の入力電力、DR可能量予測値、及び水素生成量などの計画情報を含む短期計画を生成し(ステップS208)、処理を終了する。
【0094】
以上説明したように、第1実施形態によれば、第2設定部310bが、ディマンドリスポンスの要請期間T80に予め設定する第2電力の実消費電力量を、水素システムが要請期間T80よりも長い第1期間に生成する目標水素量を達成できる範囲に設定することとした。これにより、ディマンドリスポンスを行っても、より高精度に目標水素量の生成を行うことができる。
【0095】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る水素エネルギーシステム1は、液体水素の代わりに圧縮水素を生成する点で第1実施形態に係る水素エネルギーシステム1と相違する。以下では、第1実施形態に係る水素エネルギーシステム1と相違する点に関して説明する。
【0096】
図17は、第2実施形態に係る水素エネルギーシステム1の構成を示すブロック図である。図17に示すように、本実施形態に係る水素エネルギーシステム1は、圧縮水素を生成するシステムである。すなわち、この水素貯蔵供給装置102は、圧縮装置120と、圧縮水素タンク122と、圧縮水素排出装置124とを備える点で第1実施形態に係る水素貯蔵供給装置102と相違する。
【0097】
圧縮装置120は、気体水素タンク108から供給された気体水素を圧縮し、圧縮水素に変換し、配管を介して圧縮水素タンク122に供給する。圧縮水素タンク122は、圧縮装置120から供給された圧縮水素を貯蔵する。この圧縮水素タンク122は、圧縮装置120から供給された液体水素を蓄えると共に、圧縮水素排出装置124に配管を介して圧縮水素を供給する。圧縮水素排出装置124は、圧縮水素タンク122から供給された圧縮水素を圧縮水素流通網126に供給する。
【0098】
図18は、第2実施形態に係る制御装置30の構成を示すブロック図である。図18に示すように、第2実施形態に係る制御装置30は、切り替え部318を更に備える。
【0099】
切り替え部318は、水素エネルギーシステム1が生成する水素の供給形態に応じて、第1計画部308、及び第2計画部310の処理内容を変更する。より具体的には、水素エネルギーシステム1が圧縮水素を圧縮水素流通網126に供給する場合に、第1計画部308は、過去のデータから設定された初期条件に基づき、30分ごとの液水タンク残量、水素の出荷量、目標水素残量、水素システム10全体のプラント全体平均消費電力、及びEC平均入力電力などを計画する。圧縮水素は液体水素に比べ圧縮率が低く、1回の出荷での配送量が少ないため、出荷頻度が高くなる。このため長期計画は1~2週間程度とする。また、終端条件として、日ごとの液水タンク残量、水素の出荷量、目標水素残量、水素システム10全体のプラント全体平均消費電力、及びEC平均入力電力などを第2計画部310に供給する。
【0100】
水素エネルギーシステム1が圧縮水素を圧縮水素流通網126に供給する場合に、第2計画部310の演算部310dは、第1計画部308から供給された終端条件を拘束条件及びとして、(1)式で示した評価関数が極値を取るように演算する。短期計画における評価関数は、1~3日程度の期間であり、30分単位である。この演算の際に、演算部310dは、第1設定部310a及び第2設定部310bが演算したベースライン、削減電力量、負荷増減量を使用する。さらにまた、所定時間t=30分毎の再生可能エネルギー発電装置20の発電量は、第1予測部306の予測値を使用する。
【0101】
切り替え部318は、第1計画部308の計画情報を使用する場合と使用しない場合とを切り替えてもよい。より詳細には、圧縮水素を圧縮水素流通網126に供給する場合に、第1計画部308のかわりに、第2計画部310が、1~2週間程度の期間の計画を生成する。この場合、第2計画部310の演算部310が、過去のデータから設定した初期条件及び日ごとの目標水素量に基づき、(1)式で示した評価関数が極値を取るように演算する。すなわち、図16のフローチャートにおける終端条件504を操作者が設定することで、図16のフローチャートと相違する。この演算の際にも、演算部310dは、第1設定部310a及び第2設定部310bが演算したベースライン、実消費電力量などを使用する。さらにまた、所定時間t=30分毎の再生可能エネルギー発電装置20の発電量は、第1予測部306の予測値を使用する。この場合、モデルを概略化し、DR計算を一部省略するなどの処理を行なってもよい。或いは、例えば水素製造装置100の利用効率を一定値にしてもよい。
【0102】
以上説明したように、第2実施形態によれば、切り替え部318が、水素エネルギーシステム1で処理する水素の種類に基づき、第1計画部308、及び第2計画部310の処理内容を変更することとした。これにより、水素エネルギーシステム1が圧縮水素を圧縮水素流通網126に供給する場合にも、第1実施形態に係る水素エネルギーシステムと同等の効果を得ることができる。
【0103】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る水素エネルギーシステム1は、第1予測部306が予測する再生可能エネルギー発電装置20の発電量に信頼度として確率分布を導入する点で第1実施形態に係る水素エネルギーシステム1と相違する。以下では、第1実施形態に係る水素エネルギーシステム1と相違する点に関して説明する。
【0104】
図19は、発電量の信頼度の例を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は再生可能エネルギー発電装置20の予測発電量とその信頼度を示している。
【0105】
第3実施形態に係る第1予測部306は、予測する時間単位t、例えば30分ごとの再生可能エネルギー発電装置20の発電量に信頼度を付帯する。この信頼度は、例えば標準偏差をσとする正規分布524、526で示される。正規分布524、526の積算値は1に正規化されており、正規分布の値は発生確率であり、信頼度の値に対応する。すなわち、時刻t-1に対応する正規分布528、時刻tに対応する正規分布530の積算値は1である。
【0106】
例えば、第1予測部306に対してマイナスnσを設定するとマイナスnσに対応する予測発電量528、530が演算される。これにより、第2計画部310は、これらの予測発電量528、530などと初期条件534とを用いて、短期計画532を生成する。
【0107】
以上説明したように、第3実施形態によれば、第1予測部306が予測する再生可能エネルギー発電装置20の発電量に信頼度として確率分布を導入することとした。これにより、第2計画部310は、確率分布を反映した短期計画を生成可能となり、短期計画の精度をより上げることができる。
【0108】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置、方法及びプログラムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置、方法及びプログラムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19