(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】車台および商用車両
(51)【国際特許分類】
B62D 21/03 20060101AFI20220629BHJP
B62D 21/09 20060101ALI20220629BHJP
B62D 33/077 20060101ALI20220629BHJP
B60P 7/13 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B62D21/03
B62D21/09 Z
B62D33/077
B60P7/13
(21)【出願番号】P 2021518918
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(86)【国際出願番号】 EP2020072570
(87)【国際公開番号】W WO2021047847
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】102019124460.9
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514154260
【氏名又は名称】ラインメタル マン ミリタリー ビークルズ エースターライヒ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】シュレーゲル クリストフ
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-031688(JP,A)
【文献】特開2013-001167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 - 25/08
B62D 25/14 - 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軍事商用車両のための車台であって、
前記車台の長手方向に沿って延びる車台フレームと、
前記車台フレームに強固に接続され、前記車台に載置することができる交換可能な上部構造を支持するクロスビームと、
前記車台フレームに回動可能に取り付けられ、前記上部構造を支持する振り子クロスビームと、
一方の第1の回転軸を中心に回転可能に前記車台フレームに取り付けられ、一方の第2の回転軸を中心に回転可能に前記振り子クロスビームに取り付けられた第1のスイングアーム要素と、
他方の第1の回転軸を中心に回転可能に前記車台フレームに取り付けられ、他方の第2の回転軸を中心に回転可能に前記振り子クロスビームに取り付けられた第2のスイングアーム要素とを備え、
前記第1のスイングアーム要素の延長線および前記第2のスイングアーム要素の延長線は、前記車台の高さ方向から見て、前記振り子クロスビームの下方に位置する瞬間中心で互いに交差していて、
前記第1および第2のスイングアーム要素の前記一方および他方の第2の回転軸は、前記高さ方向から見て、前記第1および第2のスイングアーム要素の前記一方および他方の第1の回転軸と前記瞬間中心との間に配置されていることを特徴とする車台。
【請求項2】
前記第1および第2のスイングアーム要素の前記一方および他方の第1の回転軸は、前記車台の横方向から見て、前記第1および第2のスイングアーム要素の前記一方および他方の第2の回転軸よりも互いにより離間して配置されていて、これにより、前記第1のスイングアーム要素と前記第2のスイングアーム要素とが互いに斜めに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車台。
【請求項3】
前記第1のスイングアーム要素および前記第2のスイングアーム要素は、互いに斜めに配置されていて、これにより、前記第1のスイングアーム要素と前記第2のスイングアーム要素とが互いに向かって延びていること特徴とする請求項2に記載の車台。
【請求項4】
前記第1および第2のスイングアーム要素の前記一方および他方の第1の回転軸は、前記高さ方向から見て同じ高さに配置され、
前記第1および第2のスイングアーム要素の前記一方および他方の第2の回転軸は、前記振り子クロスビームの初期位置において、前記高さ方向から見て同じ高さに配置されること特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車台。
【請求項5】
2つの第1のスイングアーム要素および2つの第2のスイングアーム要素が設けられるそれぞれの場合において、前記振り子クロスビームは、前記長手方向から見て、それぞれの場合において、前記2つの第1のスイングアーム要素の間および前記2つの第2のスイングアーム要素の間に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車台。
【請求項6】
前記第1のスイングアーム要素は、前記車台フレームに取り付けられた第1の車軸要素に、その第1の回転軸を中心に回転可能に取り付けられ、
前記第2のスイングアーム要素は、前記車台フレームに取り付けられた第2の車軸要素に、その第1の回転軸を中心に回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車台。
【請求項7】
前記第1の車軸要素および前記第2の車軸要素は、前記長手方向から見て、前記振り子クロスビームを越えてあるいは通って案内されることを特徴とする請求項6に記載の車台。
【請求項8】
前記振り子クロスビームは、第1の側部と、第2の側部と、前記第1の側部と前記第2の側部との間に配置された基部とを備え、
前記第1の側部および前記第2の側部は、前記基部の上側の上方に延出していて、
前記第1の車軸要素および前記第2の車軸要素は、前記振り子クロスビームを越えて、前記第1の側部と前記第2の側部との間を通過することを特徴とする請求項7に記載の車台。
【請求項9】
前記振り子クロスビームは、前記第1の車軸要素が挿通される第1の開口部と、前記第2の車軸要素が挿通される第2の開口部とを備えることを特徴とする請求項7に記載の車台。
【請求項10】
前記クロスビームは、前記車台フレームの前部に配置され、
前記振り子クロスビームは、前記車台フレームの後部に配置されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の車台。
【請求項11】
当該車台はさらに、前記車台フレームと前記振り子クロスビームとの間に配置されたばねおよび/または減衰装置を備えることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の車台。
【請求項12】
軍事商用車両であって、
請求項1から11のいずれか1項に記載の車台を備えることを特徴とする商用車両。
【請求項13】
当該商用車両はさらに、交換可能な上部構造を備え、
前記上部構造は、前記クロスビームおよび前記振り子クロスビームに載置されることを特徴とする請求項12に記載の商用車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用車両、特に、軍事商用車両のための車台、およびそのような車台を備える商用車両、特に、軍事商用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
オフロード商用車両、例えば、トラックは、剛性はあるがねじりに対して軟性(torsionally soft)である車台と、車台に取り付けられたコンテナなどの、ねじり剛性(torsionally stiff)のある交換可能な上部構造を有してもよい。オフロード走行中、車台は反ることがあり、ねじり剛性のある上部構造が反りを妨げて車台フレーム内に高い応力が導入されるか、あるいは上部構造自体に過剰な応力がかかる。
【0003】
独国特許出願公開第2726448号(DE 27 26 448 A1)は、商用車両の車台フレームにおける剛性上部構造の軸受構成を示している。この上部構造は、その前端および後端の後の2点において、車両の長手方向中心軸の領域内で弾性可撓軸受によって支持されるとともに、車両の横方向平面内で互いに対向して配置され、かつ第1の軸受点の間に配置された2つのさらなる軸受によって、車台フレームまたはそれに取り付けられたサブフレームの長手方向部材に接続されている。
【0004】
独国特許出願公開第2911722号(DE 29 11 722 A1)は、自動車の、ねじりに対して軟性である車台フレームにおいて、ねじり剛性のある上部構造を弾性支持するための装置を記載している。この装置は、車両の長手方向軸に対して横向きおよび対称的に配置された2対の弾性軸受点と、長手方向中心軸における上部構造の一方の端部に配置され、かつすべての面において弾性である1つの軸受点とを備える。1対の軸受点は、圧縮方向において硬く、引張方向において柔らかく、大きな補償経路を持つサスペンションによって上部構造の前端から支持されている。他方の対の軸受点は、後車軸の領域に配置され、個々の軸受点はフレームの後端に配置されていて、これにより、長手方向および横方向の力は、前側および後側の軸受点によってのみ伝達され、垂直方向の力はすべての軸受点によって伝達される。
【0005】
欧州特許第0214990号(EP 0 214 990 B1)は、多軸自動車を記載している。この自動車は、ねじり可撓性フレームと、当該フレームに支持部材によって支持され、大きなねじれを受けない上部構造とを備え、これにより、上部構造の中央領域における車両の長手方向において車両とフレームとの間に接続部が設けられている。この接続部は、垂直方向の力および長手方向の力を柔軟に吸収し、フレームと上部構造との間の限定的な相対移動を可能にする。少なくとも1つの支持部材は、車両の長手方向においてオフセットされた少なくとも1つのさらなる領域に配置されている。上部構造の少なくとも1つの領域には、横方向の力を吸収する横方向せん断支持接続部が上部構造とフレームとの間に設けられている。
【0006】
独国特許出願公開第10106495号(DE 101 06 495 A1)は、ねじれ可能なサブフレームが取り付けられた、剛性はあるがねじりに対して軟性である車台フレームを有するトラックが示されている。この車台フレームは、移動軸受を介して少なくとも3点においてサブフレームに接続された、曲げ剛性(flexurally stiff)かつねじり剛性のある上部構造を支持している。これらの移動軸受のうちの少なくとも1つは旋回軸受として設計されていて、その旋回軸が車両の長手方向中心軸内にほぼ沿って延びている。少なくとも2つの移動軸受は、旋回軸の両側に横向きに配置され、かつ旋回軸受から車両の操舵方向に離間した支持体として設計されている。
【0007】
本発明の1つの課題は、このような背景に鑑み、商用車両のための改良された車台を提供することである。
【発明の概要】
【0008】
したがって、商用車両、特に、軍事商用車両のための車台を提供する。前記車台は、前記車台の長手方向に沿って延びる車台フレームと、前記車台フレームに固定的に接続され、前記車台に載置される交換可能な上部構造を支持するクロスビームと、前記車台フレームに回動可能に取り付けられ、前記上部構造を支持する振り子クロスビームと、第1の回転軸を中心に回転可能に前記車台フレームに取り付けられ、第2の回転軸を中心に回転可能に前記振り子クロスビームに取り付けられた第1のスイングアーム要素と、第1の回転軸を中心に回転可能に前記車台フレームに取り付けられ、第2の回転軸を中心に回転可能に前記振り子クロスビームに取り付けられた第2のスイングアーム要素とを備える。
【0009】
振り子クロスビームは、車台フレームに直接軸支されず、第1のスイングアーム要素および第2のスイングアーム要素を介して車台フレームに接続されているため、振り子クロスビームが回転する瞬間的な中心は、車台フレームの下方に配置してもよい。これにより、車台フレームは、クロスビームに載置された上部構造および振り子クロスビームに過剰な機械的応力を受けさせることなく、ねじれることが可能となる。また、上部構造のねじり剛性によって、車台フレーム内に過剰な応力が導入されることをも防止することができる。
【0010】
車台は、商用車両の一部であってもよい。しかし、車台は、トレーラー、特に、商用車両のトレーラーにも適している。これは、車台がトレーラー、特に、商用車両トレーラーまたはトラックトレーラーの一部であってよいことを意味する。商用車両およびトレーラーは、セット、特に、商用車両セットまたはトラックセットを形成することができ、これにより、商用車両およびトレーラーはいずれもこのような車台を有してもよい。しかし、商用車両は、このような車台を持たないトレーラーと組み合わせてセットを形成してもよい。
【0011】
車台は、車台フレームが延びる長手方向に加えて、クロスビームおよび振り子クロスビームが延びる横方向と、高さ方向とが割り当てられている。長手方向、横方向および高さ方向は、互いに垂直に配置され、好ましくは、車台の座標系を形成する。車台は、好ましくは、いくつかの車軸、特に、車輪が取り付けられる駆動車軸を備える。高さ方向は、詳細には、車軸から車台フレームの方向、特に、振り子クロスビームの方向に向いている。
【0012】
車台フレームは、好ましくは、長手方向に沿って延びる少なくとも2つの長手方向ビームを備え、これらのビームは、横方向に延びる複数のクロスバーまたはトラスによって互いに強固に接続することができる。車台フレームは、好ましくは、ねじりに対して軟性であるが剛性も有する。長手方向ビームは、いくつかの長手方向断面のビーム、例えば、中空の箱型断面のビーム、U字型断面のビーム、またはI字型断面のビームをそれぞれ任意に有してもよい。車台フレームの構成部品は、互いに強固に接続されていて、例えば、一体にボルト止めされるか、リベット止めされるか、あるいは溶接されてもよい。
【0013】
クロスビームが車台フレームに「強固に」接続されているということは、特に、クロスビームが車台フレームに対して移動不可であり、特に、車台フレームに対してねじれたり、変位したりすることができないことを意味する。例えば、クロスビームは、車台フレームにボルト止めされるか、リベット止めされるか、あるいは溶接されている。横方向において、クロスビームは、好ましくは、車台フレームの両側で横向きに突出している。
【0014】
振り子クロスビームが車台フレームに「回動可能に」取り付けられているということは、特に、振り子クロスビームが車台フレームに対して回動運動を行うことができるということを意味してよい。回動運動は、例えば、特に、高さ方向および横方向に沿った回転運動と直線運動との組み合わせであってもよい。回動運動は、純粋な回転すなわち回転運動であってもよい。
【0015】
好ましくは、振り子クロスビームは、車台フレームに直接ではなく、スイングアーム要素を介して間接的に取り付けられている。よって、スイングアーム要素は、車台フレームと振り子クロスビームとの間に配置され、それにより、振り子クロスビームを車台フレームに回動可能に接続する。振り子クロスビームは、横方向に、好ましくは、車台フレームを越えて両側において横向きに突出している。振り子クロスビームは、好ましくは、1つの中立位置あるいは初期位置からより多数の偏向位置に無段階に偏向または旋回させることができる。
【0016】
交換可能な上部構造は、例えば、平台、コンテナ、箱、タンクなどであってもよく、あるいは、これらのうちの1つを含んでもよい。上部構造は、例えば、立方体形状であってもよい。上部構造は、クロスビームおよび振り子クロスビームに取り付けられている。クロスビームおよび振り子クロスビームは、好ましくは、車台の上部構造接続部分または上部構造支持装置を形成する。上部構造が「交換可能」であるということは、特に、異なるタイプの上部構造が交換可能であることを意味する。しかし、これは、上部構造が車台に強固に接続されている、例えば、ボルト止めされるという可能性を除外するものではない。ただし、上部構造を交換するために、上部構造と車台との接続を解除することはできる。
【0017】
第1のスイングアーム要素および第2のスイングアーム要素は、好ましくは、全く同様に設計されている。スイングアーム要素は、棒状の基部を有する骨状の形状を有してもよく、この基部には、環状の受け部が両側の端部において接続されている。各受け部は、好ましくは、開口部を有する。開口部は、好ましくは、それぞれの受け部の中心の孔である。開口部には、車軸要素を収容することができ、これにより、スイングアーム要素をそれぞれの第1の回転軸および第2の回転軸を中心に旋回させることが可能となる。車軸要素は、車台フレームおよび振り子クロスビームに設けることができる。
【0018】
好ましくは、車台フレーム、第1のスイングアーム要素、第2のスイングアーム要素および振り子クロスビームは、車台のリンケージギアを形成する。このようなリンケージギアは、フレームと、カプラと、カプラをフレームに接続するスイングアームとを備える。この場合、車台フレームはリンケージギアのフレームであり、振り子クロスビームはリンケージギアのカプラであり、スイングアーム要素はリンケージギアのスイングアームである。特に、第1のスイングアーム要素の第1の回転軸は、第2のスイングアーム要素の第1の回転軸と一致しない。これらは、2つの異なる第1の回転軸である。したがって、第1のスイングアーム要素の第2の回転軸は、好ましくは、第2のスイングアーム要素の第2の回転軸と一致しない。これらは、2つの異なる第2の回転軸である。
【0019】
一実施形態によれば、前記スイングアーム要素の前記第1の2つの回転軸は、前記車台の横方向から見て、前記スイングアーム要素の前記第2の2つの回転軸よりも互いにより離間して配置されていて、これにより、前記第1のスイングアーム要素と前記第2のスイングアーム要素とが互いに斜めに配置されている。
【0020】
したがって、横方向において、2つの第2の回転軸は、好ましくは2つの第1の回転軸の間に配置されている。
【0021】
別の実施形態によれば、前記第1のスイングアーム要素および前記第2のスイングアーム要素は、互いに斜めに配置されていて、これにより、前記第1のスイングアーム要素と前記第2のスイングアーム要素とが互いに向かって延びている。
【0022】
特に、第1のスイングアーム要素および第2のスイングアーム要素は、高さ方向の反対から見て、互いに向かって延びていて、これにより、第1のスイングアーム要素および第2のスイングアーム要素がV字型に配置されている。逆に、第1のスイングアーム要素および第2のスイングアーム要素は、高さ方向に沿って見たとき、互いに離れるように延びている。
【0023】
別の実施形態によれば、前記第1のスイングアーム要素の延長線および前記第2のスイングアーム要素の延長線は、前記車台の高さ方向から見て、前記振り子クロスビームの下方に位置する瞬間中心で互いに交差する。
【0024】
前述のように、高さ方向は、車台の車軸から車台フレームに向かっている。瞬間中心は、高さ方向において車台フレームの下方に位置する。この場合の「延長線」とは、第1のスイングアーム要素の第1の回転軸および第2の回転軸をそれぞれ通り、第2のスイングアーム要素の第1の回転軸および第2の回転軸をそれぞれ通って延びる直線を意味する。したがって、「延長線」という用語は、「直線」という用語に置き換えることができる。これらの直線は、瞬間中心と交わるかあるいは交差する。剛体、例えば振り子クロスビームの平面移動の場合、「瞬間中心」または「動きの極(motion pole)」とは、空間内の点であって、その点では、剛体が回転だけを行っているとみなして扱うことができる。振り子クロスビームが偏向すると、振り子クロスビームは、好ましくは、高さ方向および横方向にまたがる平面内において移動する。振り子クロスビームが偏向しているか否かに応じて、振り子クロスビームまたは瞬間中心は、前述の初期位置から任意の数の偏向位置に揺動したり、あるいは位置をずらしたりすることができる。瞬間中心は、高さ方向および横方向に沿って移動する。瞬間中心は、長手方向に沿っては特に移動しない。しかし、瞬間中心は、高さ方向から見たとき、振り子クロスビームの下方、特に、車台フレームの下方に常に位置する。振り子クロスビームが初期位置から偏向位置または異なる偏向位置に偏向または旋回すると、瞬間中心は、好ましくは、軌道曲線上を移動する。特に、軌道曲線は、高さ方向および横方向にまたがる平面内に位置する。軌道曲線は、円形、楕円形または長円形であってもよい。これは、軌道曲線が円、楕円または長円形の一部であってもよいことを意味する。
【0025】
別の実施形態によれば、前記スイングアーム要素の前記2つの第2の回転軸は、前記高さ方向から見て、前記スイングアーム要素の前記2つの第1の回転軸と前記瞬間中心との間に配置されている。
【0026】
横方向から見て、瞬間中心は、特に、初期位置において、2つの第2の回転軸の間、および2つの第1の回転軸の間の中心に位置する。ここで、2つの第2の回転軸は、2つの第1の回転軸の間に配置されている。偏向位置または複数の偏向位置において、瞬間中心は、好ましくは、横方向から見て、偏心している。
【0027】
別の実施形態によれば、前記スイングアーム要素の前記2つの第1の回転軸は、前記高さ方向から見て同じ高さに配置され、前記スイングアーム要素の前記2つの第2の回転軸は、前記振り子クロスビームの初期位置において、前記高さ方向から見て同じ高さに配置される。
【0028】
特に、第1の2つの回転軸は固定されていて、振り子クロスビームが偏向したとき、高さ方向および横方向の位置が変化しない。第2の回転軸は振り子クロスビームに設けられているので、振り子クロスビームがその初期位置から任意の偏向位置に偏向したとき、第2の回転軸は、高さ方向および横方向の位置が変化する。
【0029】
別の実施形態によれば、2つの第1のスイングアーム要素および2つの第2のスイングアーム要素が設けられるそれぞれの場合において、前記振り子クロスビームは、前記長手方向から見て、それぞれの場合において、前記2つの第1のスイングアーム要素の間および前記2つの第2のスイングアーム要素の間に配置されている。
【0030】
これは、振り子クロスビームが、第1の2つのスイングアーム要素の間および第2の2つのスイングアーム要素の間に配置された状態で、4つのスイングアーム要素が存在してもよいことを意味する。これにより、振り子クロスビームが横方向を中心に傾くことを防止することができる。これにより、振り子クロスビームおよび/またはスイングアーム要素が傾く危険性を低減することができる。ただし、これは任意である。正確に1つの第1のスイングアーム要素および正確に1つの第2のスイングアーム要素を設けることもできる。これは、正確に2つまたは少なくとも2つのスイングアーム要素が好ましいことを意味する。第1のスイングアーム要素を1つのみ設け、第2のスイングアーム要素を1つのみ設ける場合、振り子クロスビームは、好ましくは、長手方向から見たとき、スイングアーム要素と車台フレームとの間に配置される。これは、この場合、スイングアーム要素は、好ましくは、振り子クロスビームの外側に設けられることを意味する。あるいは、1つの第1のスイングアーム要素および1つの第2のスイングアーム要素のみが設けられる場合、スイングアーム要素は、振り子クロスビームの内側に設けてもよい。この場合、スイングアーム要素は、長手方向から見て、振り子クロスビームと車台フレームとの間に配置される。
【0031】
別の実施形態によれば、前記第1のスイングアーム要素は、前記車台フレームに取り付けられた第1の車軸要素に、その第1の回転軸を中心に回転可能に取り付けられ、前記第2のスイングアーム要素は、前記車台フレームに取り付けられた第2の車軸要素に、その第1の回転軸を中心に回転可能に取り付けられている。
【0032】
好ましくは、車台フレームは、2つの長手方向ビームの間に配置された接続ビームを備え、接続ビームは、当該2つの長手方向ビームを強固に接続する。第1の車軸要素および第2の車軸要素は、接続ビームに取り付けることができる。例えば、第1の車軸要素および第2の車軸要素は、接続ビームに溶接されるか、リベット止めされるか、あるいはボルト止めされる。車軸要素は、スイングアーム要素の受け部のそれぞれの開口部内に収容される。この目的のために、対応する軸受、例えば、すべり軸受またはころ軸受を受け部内に設けることができる。あるいは、車軸要素は、スイングアーム要素に回転不能に接続されてもよく、これにより、車軸要素は、車台フレーム、特に接続ビームに回転可能に取り付けられる。また、この場合、すべり軸受やころ軸受などの対応する軸受を設けることができる。車軸要素は、振り子クロスビームに設けてもよく、これにより、スイングアーム要素はその第2の回転軸を中心に旋回することが可能となる。よって、振り子クロスビームは、第1の車軸要素および第2の車軸要素も含んでよい。これらの車軸要素は、車台フレームの車軸要素を収容しないスイングアーム要素の受け部内に収容することができる。
【0033】
別の実施形態によれば、前記第1の車軸要素および前記第2の車軸要素は、前記長手方向から見て、前記振り子クロスビームを越えてあるいは通って案内される。
【0034】
これにより、高さ方向から見たときに、特にコンパクトな設計が可能となる。
【0035】
別の実施形態によれば、前記振り子クロスビームは、第1の側部と、第2の側部と、前記第1の側部と前記第2の側部との間に配置された基部とを備え、前記第1の側部および前記第2の側部は、前記基部の上側の上方に延出していて、前記第1の車軸要素および前記第2の車軸要素は、前記振り子クロスビームを越えて、前記第1の側部と前記第2の側部との間を通過する。
【0036】
特に、振り子クロスビームは、車軸要素が挿通されるV字状の形状を有する。高さ方向から見たとき、側部は、特に車軸要素を越えて突出している。基部は、好ましくは、箱型状または立方体形状である。振り子クロスビームは、好ましくは、中空状である。振り子クロスビームは、中空の箱型であってもよく、あるいは、中空の箱型で構成されていてもよい。振り子クロスビームは、いくつかのI字型断面の桁またはU字型断面の桁で構成されていてもよい。
【0037】
別の実施形態によれば、前記振り子クロスビームは、前記第1の車軸要素が挿通される第1の開口部と、前記第2の車軸要素が挿通される第2の開口部とを備える。
【0038】
開口部は、例えば、楕円形または角が丸められた長方形であってもよい。開口部は、横方向および高さ方向に沿って延び、開口部の横方向に沿った寸法は、その高さ方向に沿った寸法よりも大きい。開口部を設けることにより、車軸要素を振り子クロスビームに挿通することができるため、振り子クロスビームを通過するように車軸要素を案内する必要はない。これは、振り子クロスビームは、連続した上部フランジまたは連続した平坦な上面を有してもよいことを意味する。この場合、振り子クロスビームの底部には、トレーラー連結器のための凹部または隙間を設けてもよい。
【0039】
別の実施形態によれば、前記クロスビームは、前記車台フレームの前部に配置され、前記振り子クロスビームは、前記車台フレームの後部に配置されている。
【0040】
ここでの「前」とは、商用車両の運転室に割り当てられていることを意味する。ここでの「後」とは、運転室から離れることを意味する。
【0041】
別の実施形態によれば、前記車台はさらに、前記車台フレームと前記振り子クロスビームとの間に配置されたばねおよび/または減衰装置を備える。
【0042】
ばねおよび/または減衰装置は、純粋なばね装置または純粋な減衰装置であってもよいが、ばねと減衰装置を組み合わせた装置であってもよい。ばねおよび/または減衰装置は、ばね要素、例えば、円筒ばね要素または空気圧ばね要素と、減衰シリンダとを備えていてもよい。好ましくは、ばねおよび/または減衰装置は、車台フレームの長手方向ビームのうちの1つと振り子クロスビームとの間に配置され、これらを互いに接続する。ばねおよび/または減衰装置は、複数設けてもよい。例えば、車台フレームの両側に設けられた2つのばねおよび/または減衰装置を設けてもよい。
【0043】
さらに、このような車台を備える商用車両、特に、軍事商用車両が提供される。
【0044】
商用車両は、好ましくは、陸上車両、特にトラックである。商用車両は、好ましくは、軍事商用車両である。したがって、商用車両は、軍事商用車両と呼ぶことができる。特に、商用車両は、オフロードトラックである。商用車両は、防護型車両であってもよい。好ましくは、複数の車軸が車台フレームに設けられている。これは、商用車両が多軸車両、特に、三軸車両であることを意味する。商用車両は、好ましくは、全輪駆動を含む。したがって、商用車両は、全輪駆動商用車両と呼ぶこともできる。商用車両は、車輪付き車両であってもよい。あるいは、商用車両は、軌道車両であってもよい。
【0045】
前述のように、車台は、トレーラーの一部であってもよい。この場合、トレーラー、特にこのような車台を備える軍事商用車両用のトレーラーが提案される。
【0046】
一実施形態によれば、前記商用車両はさらに、交換可能な上部構造を備え、この上部構造は、前記クロスビームおよび前記振り子クロスビームに載置される。
【0047】
前述のように、上部構造は、好ましくは、ねじり剛性を有する。上部構造は、好ましくは、立方体形状である。上部構造は、例えば、平台、コンテナ、箱、タンク、または同様のものであってもよい。異なる上部構造を設けることができ、それらを交換することができる。上部構造は、車台に強固に接続することができ、例えば、車台にボルト止めすることができる。しかし、上部構造と車台との接続は、上部構造を交換するために取り外し可能である。
【0048】
車台について記載された設計および特徴は、提案される商用車両および提案されるトレーラーに適宜適用され、その逆もまた同様である。
【0049】
本明細書において、「1つ」は、厳密に1つの要素に限定されるものとして理解する必要はなく、むしろ、2つ、3つまたはそれ以上の、いくつかの要素が意図されてもよい。また、本明細書において使用される他の全ての計数は、記載される要素の数に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。むしろ、特に明記しない限り、数値が上下にずれることも可能である。
【0050】
車台および/または商用車両の他の可能な実施態様は、実施形態に関して上記または以下に明示されていない特徴または設計の組み合わせも含んでよい。専門家であれば、車台および/または商用車両のそれぞれの基本形状に対する改良または追加として、個々の態様を追加するであろう。
【0051】
車台および/または商用車両のさらなる有利な設計および態様は、従属請求項ならびに以下に記載される車台および/または商用車両の実施形態の主題である。さらに、車台および/または商用車両は、添付の図面を参照して、好ましい設計に基づいてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】
図1は、商用車両の一実施形態の概略側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に係る商用車両のための車台の一実施形態の概略上面図である。
【
図4】
図4は、
図2に係る車台のためのスイングアーム要素の一実施形態の概略図である。
【
図5】
図5は、
図4の交線V-Vに係るスイングアーム要素の概略断面図である。
【
図9】
図9は、商用車両の別の実施形態の概略背面図である。
【
図11】
図11は、
図9に係る商用車両のための車台の一実施形態の概略斜視図である。
【
図12】
図12は、
図11に係る車台のための振り子クロスビームの一実施形態の概略図である。
【
図13】
図13は、
図9に係る商用車両のための車台の別の実施形態の概略部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図中、同一または機能的に同一の要素には、特に示さない限り、同じ参照符号が付されている。図面において隠れた部品は破線で示されている。
【0054】
図1は、商用車両1の実施形態の概略側面図である。商用車両1は、陸上車両である。商用車両1は、特に、軍事商用車両である。したがって、商用車両1は、軍事商用車両として記載することもできる。商用車両1は、
図1に示すようなトラックであってもよい。特に、商用車両1は、オフロードトラックである。商用車両1は、防護型車両であってもよい。
【0055】
商用車両1または商用車両1の車台2には、x方向すなわち長手方向Lと、y方向すなわち高さ方向Hと、z方向すなわち横方向Qとを有する座標系が割り当てられている。方向H、L、Qは、互いに直交する方向に向けられている。高さ方向Hは、重力方向gに対して平行に向いている。重力方向gは、
図1の姿勢において上から下に向いている。
【0056】
商用車両1は、車台2を備える。車台2は、長手方向Lに延びる車台フレーム3を有する。車台フレーム3は、曲げ剛性を有するがねじりに対して軟性であり、運転室4から商用車両1の後部に延びている。「ねじれ軟性(Torsionally soft)」とは、特に、車台フレーム3が長手方向L周りにねじれ可能であることを意味する。
【0057】
車台フレーム3には、複数の車軸5~7が設けられている。これは、商用車両1が三軸車両であることを意味する。しかし、車軸5~7の数は任意である。商用車両1は、好ましくは、四輪駆動を含む。これは、車軸5~7のすべてが駆動されることを意味する。したがって、商用車両1は、全輪駆動商用車両と呼ぶこともできる。商用車両1は、
図1に示すような車輪付き車両であってもよい。あるいは、商用車両1は、軌道車両であってもよい。高さ方向Hは、車軸5~7から車台フレーム3に向かう方向である。
【0058】
車台2は、運転室4に加えて、商用車両1の交換可能でねじり剛性を有する上部構造8を支持するのに適している。上部構造8は、例えば、平台、コンテナ、スーツケース、タンクなどであってもよい。
図1において、上部構造8は、平台の形態で示されている。運転室4は、好ましくは、弾丸、仕掛け爆弾、簡易爆発物(IED)、地雷または同様のものから保護されている。
【0059】
しかし、車台2は、トレーラー(図示せず)、特に、商用車両1のトレーラーにも適している。これは、車台2がトレーラー、特に商用車両トレーラーまたはトラックトレーラーの一部であってもよいことを意味する。商用車両1およびトレーラーは、セット、特に商用車両セットまたはトラックセットを形成することができる。これにより、商用車両1およびトレーラーはいずれも、このような車台2を有することができる。しかし、商用車両1は、このような車台2を有さないトレーラーと組み合あわせてセットを形成することもできる。
【0060】
図2は、商用車両1のための車台2の一実施形態の非常に簡略化された概略図である。車台2は、長手方向Lに延びる2本の長手方向ビーム9、10を備える。長手方向ビーム9、10は、それぞれ、いくつかのプロファイル(profiles)またはプロファイル桁、特に鋼製プロファイルで形成することができる。長手方向ビーム9、10は、横方向Qに離間していて、互いに平行に延びている。長手方向ビーム9、10は、横方向Qに延びる不図示の複数のクロスビームまたはビームによって互いに接続することができ、それにより、剛性を有するがねじりに対して軟性の車台フレーム3を形成することができる。クロスビームは、長手方向ビーム9、10に対して溶接されるか、リベット止めされるか、ボルト止めされるか、または他の方法で強固に接続されてもよい。
【0061】
上部構造8を支持するために、車台2は、前部に配置されたクロスビーム11を備える。クロスビーム11は、横方向Qに延びていて、これにより長手方向ビーム9、10に直交している。クロスビーム11は、いくつかの部分で構成することができる。クロスビーム11は、長手方向ビーム9、10に強固に接続され、例えば、これらに対してボルト止めされるか、リベット止めされるか、あるいは溶接される。さらに、車台2は、後部に配置された振り子クロスビーム12を含む。振り子クロスビーム12は、車台フレーム3に回動可能に取り付けられている。クロスビーム11および振り子クロスビーム12は、上部構造8を支持するための上部構造支持装置13を形成する。上部構造支持装置13は、上部構造接続部分であるか、あるいはそのように設計することができる。クロスビーム11は、例えば、中空箱桁、U字桁、I字桁などの形態で横方向Qに延びる断面ビームであってもよい。振り子クロスビーム12についても同様である。
【0062】
長手方向ビーム9、10は、好ましくは、鋼材で構成されている。しかし、長手方向ビーム9、10は、チタン、マグネシウムまたはアルミニウムで構成されていてもよい。さらに、長手方向ビーム9、10は、ガラス繊維強化プラスチック(GRP)または炭素繊維強化プラスチック(CFP)で構成されていてもよい。同様に、クロスビーム11および振り子クロスビーム12は、鋼材、チタン、マグネシウムまたはアルミニウム、ガラス繊維強化プラスチックまたは炭素繊維強化プラスチックでそれぞれ構成されてもよい。
【0063】
クロスビーム11および振り子クロスビーム12はそれぞれ、上部構造8が載置され、上部構造8を取り付けることが可能な端部に、支持部14、15を有する。支持部14、15には、例えばコンテナを収容する規格化された接続片を設けてもよい。クロスビーム11および振り子クロスビーム12の端部の他の設計も可能である。クロスビーム11または振り子クロスビーム12と支持部14、15との接続は、例えば、溶接接続によって行うことができるが、ねじ止めまたはリベット止めによって行うことも可能である。
【0064】
図3は、商用車両1の背面図であって、上部構造8はコンテナとして示されている。好ましくは、振り子クロスビーム12は、中空の箱ビームまたは中空の箱プロファイルである。例えば、振り子クロスビーム12は、複数のプレート、プロファイルなどで構成された溶接部品であってもよい。振り子クロスビーム12は、箱形に設計されていて、立方体形状の基部16を備える。基部16は、下側面17と、下側面17から高さ方向Hに離間した上側面18とを有する。基部16は、斜めに配置された2つの側部19、20の間に配置されている。側部19、20は、高さ方向Hにおいて上側面18を越えて延出している。側部19、20の後には、上部構造8が載置される支持部14、15が連続している。前述のように、上部構造8は、支持部14、15に強固に接続することができる。しかし、上部構造8は、例えば、ねじ接続によって取り外して、支持部14、15に接続することができる。これにより、上部構造8を交換することができる。
【0065】
車台2は、第1のスイングアーム要素21Aおよび第2のスイングアーム要素22Aを含み、これらを用いて、振り子クロスビーム12は車台フレーム3に回動可能に取り付けられている。スイングアーム要素21A、22Aは、好ましくは、同一に設計されている。スイングアーム要素21A、22Aはそれぞれ、車台フレーム3および振り子クロスビーム12に回動可能に取り付けられている。
【0066】
図4および
図5が示すように、第1のスイングアーム要素21Aは、棒状の基部23を備える。基部23は、例えば、矩形または円形の断面を有してもよい。基部23の端部には、第1の受け部24および第2の受け部25が設けられている。したがって、基部23は、受け部24、25の間に配置されている。基部23は、受け部24、25よりも小さい断面積を有していてもよく、その結果、第1のスイングアーム要素21Aの形状が骨型となる。しかし、第1のスイングアーム要素21Aは、
図4に係る上面図において矩形形状を有してもよい。
【0067】
各受け部24、25は、中央に開口部26、27を有する。開口部26、27は、例えば、シャフトまたは車軸を受け入れることができる。開口部26、27は、好ましくは、円形孔として設計され、それぞれの中心あるいは対称軸28、29に対して回転対称になっている。開口部26、27またはその内部には、すべり軸受、ころ軸受などの軸受要素が設けられてもよい。
【0068】
前述のように、第2のスイングアーム要素22Aは、第1のスイングアーム要素21Aと同一であるため、第2のスイングアーム要素22Aの詳細な説明は不要である。スイングアーム要素21A、22Aは、例えば、鋼合金、チタン合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、ガラス繊維強化プラスチック材料、炭素繊維強化プラスチック材料またはこれらの材料の組み合わせで構成されてもよい。
【0069】
図6は、
図3に係る詳細
図VIである。
図6は、車台2の一部のみを示している。
図7は、車台2の概略上面図である。また、
図7では、車台2の一部のみを示している。
図8は、車台2の概略部分斜視図である。以下では、
図6~
図8を同時に参照する。
【0070】
2つの第1のスイングアーム要素21A、21Bと、2つの第2のスイングアーム要素22A、22Bとが設けられている。振り子クロスビーム12は、長手方向Lから見て、2つの第1のスイングアーム要素21A、21Bの間と、2つの第2のスイングアーム要素22A、22Bの間とに配置されている。しかし、1つの第1のスイングアーム要素21Aおよび1つの第2のスイングアーム要素22Aのみを設けてもよい。スイングアーム要素21A、21B、22A、22Bは、同一の構造である。
【0071】
第1のスイングアーム要素21A、21Bはそれぞれ、車台フレーム3にそれぞれ取り付けられていて、第1の回転軸30を中心に回転可能となっている。この目的のために、第1のスイングアーム要素21A、21Bの第1の受け部24のそれぞれの開口部26内に回転可能に取り付けられた車軸要素31を、車台フレーム3に設けてもよい。車軸要素31は、車台フレーム3に強固に接続されてもよい。この目的のために、箱状の接続ビーム32を設けてもよい。接続ビーム32は、長手方向ビーム9、10の間に配置されてこれらに強固に接続され、例えば、これらに溶接されるか、リベット止めされるか、あるいはボルト止めされる。あるいは、車軸要素31は、車台フレーム3に回転可能に取り付けられてもよい。この場合、車軸要素31は、第1のスイングアーム要素21A、21Bに回転不能に接続される。
【0072】
さらに、第1のスイングアーム要素21A、21Bは、振り子クロスビーム12に取り付けられていて、第2の回転軸33を中心に回転可能となっている。この目的のために、第1のスイングアーム要素21A、21Bの第2の受け部25のそれぞれの開口部27内に回転可能に取り付けられたボルト状の車軸要素34を、振り子クロスビーム12に設けてもよい。あるいは、車軸要素34は、振り子クロスビーム12に回転可能に取り付けられてもよい。この場合、車軸要素34は、第1のスイングアーム要素21A、21Bに回転不能に接続される。
【0073】
第2のスイングアーム要素22A、22Bは、車台フレーム3に取り付けられていて、第1の回転軸35を中心に回転可能である。この目的のために、車台フレーム3は、車軸要素31と同様に、接続ビーム32に強固に接続された車軸要素36を有してもよい。車軸要素36は、第2のスイングアーム要素22A、22Bの第1の受け部24のそれぞれの開口部26内に回転可能に取り付けられている。あるいは、車軸要素36は、車台フレーム3に回転可能に取り付けられてもよい。この場合、車軸要素36は、第2のスイングアーム要素22A、22Bに回転不能に接続される。
【0074】
第1のスイングアーム要素21A、21Bと同様に、第2のスイングアーム要素22A、22Bもまた、振り子クロスビーム12に取り付けられていて、第2の回転軸37を中心に回転可能となっている。この目的のために、振り子クロスビーム12は、車軸要素38を有する。車軸要素38は、第2のスイングアーム要素22A、22Bの第2の受け部25のそれぞれの開口部27内に回転可能に取り付けられている。あるいは、車軸要素38は、振り子クロスビーム12に回転可能に取り付けられてもよい。この場合、車軸要素38は、第2のスイングアーム要素22A、22Bに回転不能に接続される。
【0075】
車軸要素31は、車台フレーム3の第1の車軸要素として記載することができる。車軸要素36は、車台フレーム3の第2の車軸要素として記載することができる。車軸要素34は、振り子クロスビーム12の第1の車軸要素として記載することができる。車軸要素38は、振り子クロスビーム12の第2の車軸要素として記載することができる。
【0076】
また、
図6および
図7にも示すように、スイングアーム要素21A、21B、22A、22Bの第1の2つの回転軸30、35は、スイングアーム要素21A、21B、22A、22Bの第2の2つの回転軸33、37よりも、横方向Qに互いに離間して配置されている。よって、第1のスイングアーム要素21A、21Bおよび第2のスイングアーム要素22A、22Bは、互いに斜めに配置されていて、これにより、高さ方向Hに対して見たとき、スイングアーム要素21A、21B、22A、22Bが互いに接近するように延び、またこれとは逆に高さ方向Hに沿って見たときに、互いに離れるように延びている。よって、スイングアーム要素21A、21B、22A、22Bは、V字形に配置されている。
【0077】
第1のスイングアーム要素21A、21Bの2つの回転軸30、33を通って延びる第1のスイングアーム要素21A、21Bの延長線39と、第2のスイングアーム要素22A、22Bの2つの回転軸35、37を通って延びる第2のスイングアーム要素22A、22Bの延長線40とは、瞬間的な回転中心すなわち瞬間中心41において互いに交わるかあるいは交差している。これにより、スイングアーム要素21A、22Aおよびスイングアーム要素21B、22Bの両方にそれぞれ、このような瞬間中心41を割り当てることができる。スイングアーム要素21A、21B、22A、22Bのこれら2つの瞬間中心41は、長手方向Lに沿って延びる共通軸(図示せず)上に位置することができる。
【0078】
本明細書において、「延長線」とは、回転軸30、33および回転軸35、37をそれぞれ通って延びる直線を意味する。「瞬間中心」とは、空間内の点であって、剛体、例えば、振り子クロスビーム12が、その周りで回転だけを行っているとみなして扱うことができると理解されるべきである。瞬間中心41は、振り子クロスビーム12が揺動したときに変位可能である。特に、瞬間中心41は、振り子クロスビーム12が高さ方向Hおよび横方向Qに沿って旋回したときに変位する。しかし、瞬間中心41は、長手方向Lに沿って移動しない。
【0079】
図6は、振り子クロスビーム12が中立位置あるいは初期位置P1にあるときと、非常に図式化された偏向位置P2にあるときとを示している。
図6は、スイングアーム要素21A、22Aのみを示している。偏向位置P2の数は任意である。偏向位置P2では、偏向した部品または要素の参照符号が上線で示されている。偏向位置P2では、振り子クロスビーム12’、スイングアーム要素21A'、22A'、第2の回転軸33’、37’、延長線39’、40’および瞬間中心41’は偏向している。「偏向している」とは、初期位置P1に対して変位していることを意味する。
【0080】
振り子クロスビーム12が初期位置P1から偏向位置P2まで、または異なる偏向位置P2までに旋回すると、瞬間中心41、41’は、軌道曲線42上を移動する。軌道曲線42は、高さ方向Hと横方向Qとによって規定される平面内に位置する。軌道曲線42は、円形、楕円形または長円形であってもよい。これは、軌道曲線42が円、楕円または長円の一部であってもよいことを意味する。
【0081】
車台フレーム3、振り子クロスビーム12、第1のスイングアーム要素21A、21Bおよび第2のスイングアーム要素22A、22Bは、車台2のリンケージギア43を形成している。このようなリンケージギア43は、フレームと、1つまたは複数のスイングアームと、カプラとを備える。この場合、車台フレーム3はリンケージギア43のフレームであり、車台フレーム3に直接接続されていない振り子クロスビーム12はカプラであり、スイングアーム要素21A、21B、22A、22Bはリンケージギア43のスイングアームである。
【0082】
図6がさらに示すように、高さ方向Hから見たいずれの位置P1、P2においても、瞬間中心41、41’は、振り子クロスビーム12の下方または車台フレーム3の下方に常に位置する。前述のように、高さ方向Hは、車軸5~7から車台フレーム3の方向、特に振り子クロスビーム12の方向に向いている。
【0083】
高さ方向Hから見たときに瞬間中心41、41’が振り子クロスビーム12の下方に常に位置するということは、車台フレーム3は、例えば、オフロード運転中、上部構造8に過剰な力が加わったり、ねじり剛性を有する上部構造8によって車台フレーム3に過度な変形および応力が発生したりすることなく、車台フレーム3が相当な歪みを受けることができるということを意味する。上部構造8内に高いねじり力が導入されることも防止される。
【0084】
図6に示すように、スイングアーム要素21A、21B、22A、22Bの2つの第2の回転軸33、33’、37、37’は、高さ方向Hから見たときに、2つの第1の回転軸30、35と瞬間中心41、41’との間に配置されている。第1の2つの回転軸30、35は、高さ方向Hから見て、同じ高さに配置されている。さらに、第2の回転軸33、37もまた、初期位置P1では高さ方向Hから見て、同じ高さに配置されている。しかし、偏向位置P2では、2つの第2の回転軸33’、37’は、高さ方向Hから見たときに、異なる高さに配置されている。
【0085】
同様に振り子クロスビーム12は、長手方向Lから見て、スイングアーム要素21A、21B、22A、22Bの間に配置される。スイングアーム要素21B、22Bは、長手方向から見て、振り子クロスビーム12と、車台フレーム3、特に車台フレーム3の接続ビーム32との間に配置されている。2つの車軸要素31、36は、振り子クロスビーム12を越えて案内される。特に、2つの車軸要素31、36は、2つの側部19、20の間を通る。第1の2つの回転軸30、35は、高さ方向Hから見て、支持部14、15の下方に配置されてもよい。
【0086】
図9は、商用車両1の別の実施形態の概略背面図である。
図8に示す商用車両1は、代替的に設計された振り子クロスビーム12が設けられているという点のみが
図1に示す商用車両1と異なる。
図10は、
図9に係る商用車両1の概略斜視図である。
図11は、
図9に係る商用車両1のための車台2の一実施形態の概略斜視図である。以下においては、
図9~
図11を同時に参照する。
【0087】
長手方向ビーム9、10はそれぞれ、長手方向Lに延びる車台2のいくつかの、例えば、2つのプロファイルビーム44、45に接続することができる。振り子クロスビーム12は、車軸要素31が挿通する第1の開口部46と、車軸要素36が挿通する第2の開口部47とを備える。開口部46、47は、例えば、楕円形、または角が丸められた長方形であってもよい。開口部46、47は、長手方向Lに沿って振り子クロスビーム12を完全に貫通している。
【0088】
本実施形態の振り子クロスビーム12では、クロスビームは、平坦な上側面18または連続した上側ベルトを有していて、ここでもまた、基部16と、基部16の両側に配置された2つの側部19、20とを備える。しかし、この場合、側部19、20は、上側面18を越えて延びていない。下側すなわち、上側面18に対向する側において、振り子クロスビーム12は、例えばトレーラー連結器を挿通可能な凹部または隙間48を備える。上記トレーラーは、トレーラー連結器に連結することができる。長手方向ビーム9、10は、複数のクロスバーすなわちクロスビーム49によって互いに強固に接続することができる。
図11では、クロスビーム49のうちの1つのみに参照符号が付されている。クロスビーム49は、横方向Qに延びている。
【0089】
図12に示すように、商用車両1の振り子クロスビーム12は、図
6に示すように、初期位置P1から任意の数の偏向位置P2まで偏向させることもできる。
【0090】
図13は、
図9に係る商用車両1のための車台2の別の実施形態の概略部分斜視図である。
図13に係る車台2は、車台フレーム3と振り子クロスビーム12との間に配置されたばねおよび/または減衰装置50が設けられているという点でのみ、
図11に係る車台2と異なる。ばねおよび/または減衰装置50は、例えば、円筒ばねおよび/または減衰シリンダを有してもよい。例えば、ばねおよび/または減衰装置50は、振り子クロスビーム12の後部に取り付けられて、振り子クロスビーム12を長手方向ビーム10に接続する。この目的のために、振り子クロスビーム12に、例えば、鋼製アングル材またはボルトの形態の締結要素51を設けてもよい。ばねおよび/または減衰装置50は、
図1に示すような商用車両1においても使用することができる。
【0091】
ばねおよび/または減衰装置50は複数設けてもよい。例えば、車台フレーム3の両側に1つずつばねおよび/または減衰装置50が設けられる。しかし、ばねおよび/または減衰装置50の数は限定されない。
【0092】
本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明は様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0093】
1…商用車両、2…車台、3…車台フレーム、4…運転室、5、6、7…車軸、8…上部構造、9、10…長手方向ビーム、11…クロスビーム、12、12’…振り子クロスビーム、13…上部構造支持装置、14、15…支持部、16…基部、17…下側面、18…上側面、19、20…側部、21A、21A’、21B、22A、22A’、22B…スイングアーム要素、23…基部、24、25…受け部、26、27…開口部、28、29…対称軸、30…回転軸、31…車軸要素、32…接続ビーム、33、33’…回転軸、34…車軸要素、35…回転軸、36…車軸要素、37、37’…回転軸、38…車軸要素、39、39’、40、40’…延長線、41、41’…瞬間中心、42…軌道曲線、43…リンケージギア、44、45…プロファイルビーム、46、47…開口部、48…隙間、49…クロスビーム、50…ばねおよび/または減衰装置、51…締結要素、g…重力方向、H…高さ方向、L…長手方向、P1…初期位置、P2…偏向位置、Q…横方向