(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】廃熱回収システムおよびそれに使用される複合スクロール流体機械
(51)【国際特許分類】
F01K 25/10 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
F01K25/10 K
(21)【出願番号】P 2020101482
(22)【出願日】2020-06-11
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】506423165
【氏名又は名称】有限会社スクロール技研
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】川添 新二
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-061273(JP,U)
【文献】特開2000-088380(JP,A)
【文献】実開昭50-145935(JP,U)
【文献】特開平03-059355(JP,A)
【文献】特開2018-119520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01C 1/02
F01K 25/10
F04C 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源から移動する第1の熱交換媒体と熱交換し、第2の熱交換媒体を蒸発させるランキン用蒸発器、該ランキン用蒸発器で蒸発した第2の熱交換媒体を膨張させる膨張機、該膨張機で膨張した第2の熱交換媒体を凝縮するランキン用凝縮器および該ランキン用凝縮器によって凝縮された第2の熱交換媒体を前記ランキン用蒸発器に供給するポンプによって構成されるランキンサイクルと、第3の熱交換媒体を凝縮する冷凍サイクル用凝縮器、該冷凍サイクル用凝縮器によって凝縮された第3の熱交換媒体を断熱膨張させる膨張手段、該膨張手段によって膨張した第3の熱交換媒体を蒸発させる冷凍サイクル用蒸発器および該冷凍サイクル用蒸発器によって蒸発した第3の熱交換媒体を圧縮する圧縮機によって構成される冷凍サイクルとからなる廃熱回収システムにおいて、
前記膨張機は圧力相殺型の第1のスクロール流体機械であり、前記圧縮機は第1のスクロール流体機械と同一の構造を有する第2のスクロール流体機械であり、前記第1のスクロール流体機械と前記第2のスクロール流体機械は、連結ハウジングを介して背中合わせに結合され、前記第1のスクロール流体機械の連結軸は、前記第2のスクロール流体機械の連結軸と前記連結ハウジング内で連結固定されて複合流体機械を構成すること
、
前記連結ハウジングは、前記第1のスクロール流体機械の連結軸と、前記第2のスクロール流体機械の連結軸との連結部を収容する連結空間を画成し、該連結空間は前記第1のスクロール流体機械の内部空間と連通することを特徴とする廃熱回収システム。
【請求項2】
前記廃熱回収システムのランキンサイクルにおいて、前記ランキン用蒸発器と前記膨張機との間に加熱手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の廃熱回収システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の廃熱回収システムにおいて使用される複合流体機械であって、
略円筒状の側面部、該側面部の一方側に位置するフロント端面部、前記側面部の他方側に位置するリア端面部からなり、内部空間を画成するとともに該内部空間と外部とを連通する開口部が設けられるハウジングと、前記フロント端面部に回転自在に支持される回転軸と、前記リア端面部に回転自在に支持される連結軸と、前記回転軸に固定され、径方向に螺旋状に延出する第1の駆動スクロール部材と、前記連結軸に固定され、径方向に螺旋状に延出する第2の駆動スクロール部材と、前記第1の駆動スクロール部材の第1の駆動スクロールと噛合して第1の圧縮空間を画成する螺旋状の第1の従動スクロールおよび前記第2の駆動スクロール部材の第2の駆動スクロールと噛合して第2の圧縮空間を画成する螺旋状の第2の従動スクロールを具備し、前記フロント端面部および前記リア端面部に回転自在に保持される従動スクロール部材とを具備し、前記第1および第2の圧縮空間は、中心から外周方向に向けて漸次その空間を拡大させるように構成され、前記回転軸に貫通して設けられた貫通孔が前記第1および第2の圧縮空間の最内周端と連通し、前記第1および第2の圧縮空間の最外周端が前記内部空間と連通する圧力相殺型の第1のスクロール流体機械と、
該第1のスクロール流体機械と同一の構成を有する第2のスクロール流体機械とを具備し、
前記第2のスクロール流体機械は連結ハウジングを介して前記第1のスクロール流体機械と背中合わせに配置されるとともに、前記連結ハウジング内において第1のスクロール流体機械の連結軸と第2のスクロール流体機械の連結軸とが連結固定されること
、
前記連結ハウジングは、前記第1のスクロール流体機械の連結軸と、前記第2のスクロール流体機械の連結軸との連結部を収容する連結空間を画成し、該連結空間は前記第1のスクロール流体機械の内部空間と連通することを特徴とする複合流体機械。
【請求項4】
前記第1のスクロール流体機械は、冷凍サイクルの一部を構成する圧縮機として、前記第2のスクロール流体機械は、ランキンサイクルの一部を構成する膨張機として使用されることを特徴とする請求項3記載の複合流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン廃熱、工場廃熱などの低温度廃熱を回収し、回収された廃熱を動力源として冷凍サイクルを駆動する廃熱回収システムに関し、またその廃熱回収システムに使用される複合スクロール流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特許第6674796号公報)において開示される排熱回収装置は、入口から出口までの流路であって、空気を前記口から吸気して圧縮して前記出口へ吐出する第1の圧縮機と、前記第1の圧縮機の下流の圧縮空気から熱回収する第1の熱交換器と、前記第1の熱交換器の下流側の圧縮空気から熱回収する第2の熱交換器とが設けられる空気流路と、循環流路であって、前記圧縮空気との熱交換により冷媒を蒸発させる前記第1の熱交換器と、前記第1の熱交換器で蒸発した冷媒により駆動される膨張機と、前記膨張機から排気された冷媒を凝縮する第1の凝縮器と、前記第1の凝縮器で凝縮した冷媒を前記第1の熱交換器に供給するポンプとが設けられているランキンサイクル流路と、前記ランキンサイクル流路内を流動する冷媒と同種の冷媒が流動する循環流路であって、前記圧縮空気との熱交換により冷媒を蒸発させる前記第2の熱交換器と、前記膨張機で得られた回転駆動力で回転駆動され、前記第2の熱交換器で蒸発した冷媒を圧縮する第2の圧縮機と、前記第2の圧縮機から吐出された冷媒を凝縮させる第2の凝縮器と、前記第2の凝縮器で凝縮された冷媒を膨張させる膨張弁とが設けられる冷凍サイクル流路とを備えるものである。
【0003】
この構成によれば、空気流路の圧縮機の排熱をランキンサイクル流路の第1の熱交換器および冷凍サイクル流路の第2の熱交換器で有効に利用できること、ランキンサイクル流路の膨張機で発生した回転駆動力を冷凍サイクル流路の第2の圧縮機の回転駆動力として使用し、第2の圧縮機の駆動電力を低減し省エネ化できること、この際、膨張機で発生した回転駆動力を電気等に変換せず、第2の圧縮機を直接回転駆動するため、電気変換等を伴うエネルギーロスもないことなどの効果を奏することが開示される。
【0004】
特許文献2(特開2011-214484号公報)に開示される廃熱利用装置は、駆動源と、少なくとも発電機として機能する回転電機と、ランキンサイクル用冷媒を利用して前記回転電機の駆動軸に回転力を付与する膨張機と、冷凍サイクル用冷媒を吸入して吐出する圧縮機と、前記駆動軸と前記圧縮機の回転軸とを接続する接続状態、または前記駆動軸と前記回転軸とを切断する切断状態に切り替える切替手段とを備えた複合流体機械が、ランキンサイクル回路と冷凍サイクルかいろとの各一部を構成し、ランキンサイクル用冷媒の存在領域と冷凍サイクル用冷媒の存在領域とは分かれており、前記回転電機のロータは、前記複合流体機械内の冷凍サイクル冷媒の存在領域にある、駆動源の廃熱を利用するものである。この廃熱利用装置が有する複合流体機械は、センターハウジングと、フロントハウジングと、リアハウジングからなる全体ハウジングを有し、前記センターハウジングにはモータ・ジェニレータが配され、フロントハウジング内にはスクロール式の圧縮機が設けられ、リアハウジングには、スクロール式の膨張機が設けられるものである。
【0005】
特許文献3(特開2019-120164号公報)に開示される車両用廃熱回収システムは、エンジンの廃熱を利用して作動流体を加熱する加熱器と、前記加熱器を経由した作動流体を膨張させて動力を発生する膨張機と、前記膨張機を経由した作動流体を凝縮させるランキン用凝縮器と、前記ランキン用凝縮器を経由した作動流体を前記加熱器へ送出する作動流体ポンプを順次配設したランキンサイクル回路を有するランキンサイクルシステムと、前記加熱器とエンジンとを経由して冷却水がポンプを介して循環するエンジン冷却水回路を有するエンジン冷却水システムと、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を放熱する熱交換器と、前記熱交換器で外気と熱交換された後を減圧する減圧装置と、減圧された冷媒を加熱する蒸発器を順次配設した冷凍サイクロ回路を有する冷凍サイクルシステムとを備え、前記熱交換器は、前記エンジン冷却水回路を流れる冷却水と前記冷媒サイクル回路を流れる冷媒との熱交換を行う熱交換器であって、前記エンジン冷却水回路における前記加熱器と前記エンジンとの間に配設するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6674796号公報
【文献】特開2011-214484号公報
【文献】特開2019-120164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エンジン等の内燃機関から発生する廃熱や工場廃熱などを利用して駆動力を得るランキンサイクルと、このランキンサイクルにより得られる駆動力を冷凍サイクルの圧縮機の駆動に利用する冷凍サイクルとを設けることは、特許文献1乃至3から公知である。
【0008】
特許文献1では、膨張機と圧縮機とがケーシング内で流体的に接続されているため、膨張機で冷媒を膨張させる際に得られた回転駆動力で、第2の圧縮機を回転駆動できるので、第2の圧縮機の駆動電力を低減し省エネ化できるという効果を有し、また膨張機で発生した回転駆動力を電気等に変化せず、第2の圧縮機を直接回転駆動するため、電気変換等に伴うエネルギーロスがないという効果を有するが、ランキンサイクル流路の膨張機と冷凍サイクル流路の第2の圧縮機との間の冷媒の混合を防止し、膨張機と第2の圧縮機との間のシールを不要とするために、同種の冷媒を使用しなければならないという不具合を有する。また、特許文献1では、膨張機および第2の圧縮機は、共にスクリュー式であることから、膨張機および第2の圧縮機の吸入側および吐出側は、両者ともハウジングの中央部分となるため、ハウジングに吐出流路を形成する必要があるため、吐出流路の形成が難しいという不具合が生じる。
【0009】
特許文献2に開示された複合流体機械では、センターハウジングの中央にモータ・ジェネレータが配され、ステータのコイルへの通電によってロータを回転させる電動機として機能し、ロータが回転することによってコイルに電力を生じさせる発電機としての機能を併せ持つもので、センターハウジングの前部内に設けられた支持ブロックとフロントハウジングとの間にスクロール式の圧縮機が設けられ、前記センターハウジングの後部内には、サイドプレートが隔壁に対向するように固設され、隔壁とサイドプレートとの間にはポンプ室が区画され、さらにセンターハウジングの後部内に設けられた支持ブロックとリアハウジングの間にはスクロール式の膨張機が設けられている。このように、この発明では、全体ハウジング内に、フロントハウジングからリアハウジングにかけて、圧縮室、電磁クラッチ、モータ・ジェネレータ、ギアポンプ、膨張機が順に配されるもので、軸方向に長い構造となっており、構造自体が複雑であるという不具合を有する。
【0010】
特許文献3に記載される車両用廃熱回収システムは、ランキンサイクルシステムと、エンジン冷却水システムと、冷凍サイクルシステムとを備えるが、ランキンサイクルの一部を構成する膨張機と冷凍サイクルの一部を構成する圧縮機とはそれぞれ独立した装置として構成される。
【0011】
上述したように、廃熱回収システムが、ランキンサイクルと冷凍サイクルによって構成されることは公知であり、さらに、ランキンサイクルの一部を構成する膨張機と冷凍サイクルの一部を構成する圧縮機とを一体に構成すること、膨張機および圧縮機をスクロール流体機械で構成することは、すでに公知である。
【0012】
しかしながら、同一ハウジング内に膨張機としてのスクロール流体部と、圧縮機としてのスクロール流体部を設けることは、構造が複雑となる。上述した廃熱回収システムでは、スクロール型の膨張機および圧縮機を一体に構成した複合流体機械を簡単に且つコストをかけずに形成することは難しい。
【0013】
また、スクロール流体機械では、中央から外周方向へ圧縮空間が拡大して膨張機となり、外周方向から中央へ圧縮空間が縮小して圧縮機となることから、ある意味で駆動軸の回転方向を変えることによって、通常のスクロール流体機械は、膨張機にも圧縮機にもなる。しかしながら、従来の旋回型スクロール圧縮機は固定スクロールと旋回スクロールの圧縮作用により、両スクロールを主軸方向に互いに引き離そうとする軸方向ガス力(引き離し力)を低減するために、旋回スクロール背面に吐出圧と吸入圧との中間の圧力を導入し、引き離し力をキャンセルする引付力を発生させている。しかし、この中間の圧力は吸入圧に比例した値であるので、回転速度が異なるときや、圧力が異なると、背圧が過剰または不足になり旋回スクロールと固定スクロールとの間のスラスト力が変化し、各ラップの歯先歯底の摺動摩擦が増大すると機械効率が低下し、隙間が空きすぎると性能低下を生じる。また圧縮機においては吐出部に逆止弁やインジェクションポート、リリース穴などを備える必要があるため、同一の圧縮機を簡単に膨張機に転用することは難しく、現実的には、膨張機と圧縮機は専用設計を行っているのが実情である。
【0014】
これに対して、圧力相殺型のスクロール流体機械は、軸方向の引き離し力が一切発生しないことから、圧力バランス調整が一切不要であるという利点を有する。このため、ランキンサイクルの一部を構成する膨張機と、冷凍サイクルの一部を構成する圧縮機とを一体化した複合流体機械を構成するにあたり、圧力相殺型のスクロール流体機械を用いることで、同一本体によって膨張機と圧縮機とを兼用できることを、本発明者は見いだした。これにより、本発明は、一対の圧力相殺型のスクロール流体機械を背中合わせに結合することによって複合流体機械を構成し、この複合流体機械の一方に配置された膨張機によって他方に配置された圧縮機を駆動する簡単且つ低コストの廃熱回収システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は、熱源から移動する第1の熱交換媒体と熱交換し、第2の熱交換媒体を蒸発させるランキン用蒸発器、該ランキン用蒸発器で蒸発した第2の熱交換媒体を膨張させる膨張機、該膨張機で膨張した第2の熱交換媒体を凝縮するランキン用凝縮器および該ランキン用凝縮器によって凝縮された第2の熱交換媒体を前記ランキン用蒸発器に供給するポンプによって構成されるランキンサイクルと、第3の熱交換媒体を凝縮する冷凍サイクル用凝縮器、該冷凍サイクル用凝縮器によって凝縮された第3の熱交換媒体を断熱膨張させる膨張手段、該膨張手段によって膨張した第3の熱交換媒体を蒸発させる冷凍サイクル用蒸発器および該冷凍サイクル用蒸発器によって蒸発した第3の熱交換媒体を圧縮する圧縮機によって構成される冷凍サイクルとからなる廃熱回収システムにおいて、前記膨張機は圧力相殺型の第1のスクロール流体機械であり、前記圧縮機は第1のスクロール流体機械と同一の構造を有する圧力相殺型の第2のスクロール流体機械であり、前記第1のスクロール流体機械と前記第2のスクロール流体機械は、連結ハウジングを介して背中合わせに結合され、前記第1のスクロール流体機械の連結軸は、前記第2のスクロール流体機械の連結軸と前記連結ハウジング内で連結固定されて複合流体機械を構成することにある。
【0016】
以上の構成により、熱源から供給される第1の熱交換媒体とランキン用蒸発器において熱交換されて蒸発した第2の熱交換媒体は、膨張機を通過する時に、断熱膨張しその膨張エネルギーで連結軸を回転させる。この回転力は、圧縮機の連結軸を回転させるので、冷凍サイクルを循環する第3の熱交換媒体が圧縮され、冷凍サイクルに第3の熱交換媒体が循環する。このように、熱源、例えばエンジン廃熱、工場廃熱などの低温度廃熱を回収して、冷凍サイクルを駆動する駆動源にすることができるものである。
【0017】
また、前記廃熱回収システムのランキンサイクルにおいて、前記ランキン用蒸発器と前記膨張機との間に加熱手段を設けることが好ましい。これによって、冷凍用トラックなどで、エンジンの冷却水廃熱を利用し、冷凍機を稼働する場合などは、夜間休憩などでの長時間運転停止や、予期せぬトラブルで熱源供給がストップしランキン用蒸発器による第2の熱交換媒体への加熱が不足または停止した場合に、膨張機が駆動できず冷凍機を停止させなければならない。冷凍用トラックにとって冷凍機を停止させることは、致命傷であり、何らかの代替運転手段が必要であるが、もともとモータを保有していない構成のため、その解決策としては、冷凍機停止時は補助モータが利用できるような複雑な構成にする必要があった。しかしこの発明では加熱手段の設置のみによってこの加熱不足を補うことができるため、簡単な構成で膨張機での駆動力を確保できるものである。前記加熱手段としては、外部電源(例えばバッテリー、ソーラー発電、燃料電池、商用電源等)を利用したヒータであることが望ましい。尚、この発明のみについては、圧縮機、膨張機の構造については特に限定する必要がない。
【0018】
さらに、本発明は、上述した構成の廃熱回収システムにおいて使用される複合流体機械は、略円筒状の側面部、該側面部の一方側に位置するフロント端面部、前記側面部の他方側に位置するリア端面部からなり、内部空間を画成するとともに該内部空間と外部とを連通する開口部が設けられるハウジングと、前記フロント端面部に回転自在に支持される回転軸と、前記リア端面部に回転自在に支持される連結軸と、前記回転軸に固定され、径方向に螺旋状に延出する第1の駆動スクロール部材と、前記連結軸に固定され、径方向に螺旋状に延出する第2の駆動スクロール部材と、前記第1の駆動スクロール部材の第1の駆動スクロールと噛合して第1の圧縮空間を画成する螺旋状の第1の従動スクロールおよび前記第2のスクロール部材の第2の駆動スクロールと噛合して第2の圧縮空間を画成する螺旋状の第2の従動スクロールを具備し、前記フロント端面部および前記リア端面部に回転自在に保持される駆動スクロール部材とを具備し、前記第1および第2の圧縮空間は、中心から外周方向に向けて漸次その空間を拡大させるように構成され、前記回転軸に貫通して設けられた貫通孔が前記第1および第2の圧縮空間の最内周端と連通し、前記第1および第2の圧縮空間の最外周端が前記内部空間と連通する第1のスクロール流体機械と、該第1のスクロール流体機械と同一の構成を有する第2のスクロール流体機械であって、前記連結ハウジング内において、第2のスクロール流体機械の連結軸が第1のスクロール流体機械の連結軸と連結される前記第2のスクロール流体機械とからなることにある。上述した圧力相殺型のスクロール流体機械によれば、従来の両スクロールを主軸方向に互いに引き離そうとする軸方向ガス力(引き離し力)は発生しないことより、容易に同一の圧縮機と膨張機を兼用使用することが可能となる。
【0019】
さらに、前記第1のスクロール流体機械は、ランキンサイクルの一部を構成する膨張機として、前記第2のスクロール流体機械は、冷凍サイクルの一部を構成する圧縮機として、使用されることにある。
【0020】
以上の構成により、同一の構造を有する2つのスクロール流体機械を、連結ハウジングを介して背中合わせに配置し、前記連結ハウジング内において、前記第1のスクロール流体機械の連結軸と、前記第2のスクロール流体機械の連結軸とを連結して複合スクロール流体機械を構成する。これによって、同一の構造の2つのスクロール流体機械によって連結された膨張機および圧縮機からなる複合スクロール流体機械を構成できるため、コストの削減が可能となるものである。
【0021】
さらに、前記連結ハウジングは、前記第1のスクロール流体機械の連結軸と、前記第2のスクロール流体機械の連結軸との連結部を収容する連結空間を画成し、該連結空間は前記第2のスクロール流体機械の内部空間と連通することが好ましい。
【0022】
これによって、連結ハウジング内の連結空間が外気から密閉され、冷媒が大気に漏れることが防止できる。また圧縮機となる第2のスクロール流体機械の内部空間と連通され同圧となることから、圧縮機との軸シールを不要とすることができるものである。また、膨張機のハウジング内と連結ハウジング内は共に低圧のため差圧が小さくなることよりリップシールなどの簡単な軸シールでのシールが容易となる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、同一本体を使用し反対向きに連結することで回転方向を反対にし、圧縮機と膨張機とすることによって、同一本体を使用可能とするため、コストの低減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施例に係る廃熱回収システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の別の実施例に係る廃熱回収システムの概略構成図である。
【
図3】複合スクロール流体機械の概略構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の実施例について図面により説明する。
【実施例1】
【0026】
本発明の実施例に係る廃熱回収システム1は、例えば
図1に示すように、熱源、例えばエンジン廃熱源(ラジエータ等)、工場廃熱源(発電後の蒸気等)から移動する第1の熱交換媒体(例えば水)の熱を吸収して、第2の熱交換媒体(例えばHF01233zdやHFC245faのような冷媒を蒸発(気化)させるランキン用蒸発器2、該ランキン用蒸発器2で蒸発した第2の熱交換媒体を膨張させる膨張機としての第1のスクロール流体機械3A、該第1のスクロール流体機械3Aで膨張した第2の熱交換媒体の熱を例えば通過する空気に放熱して凝縮(液化)するランキン用凝縮器4および該ランキン用凝縮器4によって凝縮された第2の熱交換媒体を前記ランキン用蒸発器2に供給するポンプ5によって構成されるランキンサイクル6を具備する。このランキンサイクルは、オーガニックランキンサイクル(ORC)であることが好ましい。
【0027】
また、前記廃熱回収システム1は、第3の熱交換媒体(例えばR448Aのよな冷媒)の熱を通過する空気に放熱して凝縮する冷凍サイクル用凝縮器7、該冷凍サイクル用凝縮器7によって凝縮された第3の熱交換媒体を断熱膨張させる膨張弁などの膨張手段8、該膨張手段8によって膨張した第3の熱交換媒体が通過する空気の熱を吸収して蒸発する冷凍サイクル用蒸発器9および該冷凍サイクル用蒸発器9によって蒸発した第3の熱交換媒体を圧縮する圧縮機としての第2のスクロール流体機械3Bによって構成される冷凍サイクル10をさらに具備する。
【0028】
さらに、前記第1のスクロール流体機械3Aと前記第2のスクロール流体機械3Bは、連結ハウジング3Cを介して背中合わせに結合され、前記第1のスクロール流体機械3Aの連結軸30Aは、前記第2のスクロール流体機械3Bの連結軸30Bと前記連結ハウジング3C内においてカップリングなどで連結固定されて複合流体機械3を構成するものである。
【0029】
以上の構成により、エンジン等からの廃熱を搬送する第1の熱交換媒体とランキンサイクル6を循環する第2の熱交換媒体とが、ランキン用蒸発器2において熱交換し、第1の熱交換媒体の熱によって第2の熱交換媒体が蒸発(気化)する。蒸発した熱交換媒体は、前記第1のスクロール流体機械3A内を膨張しながら通過し、膨張機3Aの連結軸30Aを回転させる。この回転力は第2のスクロール流体機械3Bの連結軸30Bを回転させるので、冷凍サイクル10を循環する第3の熱交換媒体は、冷凍サイクル用凝縮器7で凝縮(液化)され、蒸発器9で加熱され蒸発した冷媒は第2のスクロール流体機械3B内に吸引され圧縮吐出される。
【0030】
以上のように、同一本体を兼用使用したスクロール流体機械を、連結ハウジング3Cを介して背中合わせに配置してそれぞれの連結軸30A,30Bを連結して構成した複合流体機械3において、連結軸30A,30Bを同一方向に回転させた場合、一方は圧縮機、他方は膨張機として作動するものである。これによって、ランキン用蒸発器2において回収した熱によって、冷凍サイクル10を作動させることができるものである。
【0031】
また、前記冷凍サイクル10において、前記冷凍サイクル用蒸発器9は、例えば空調システムの空気流路内に配置されて、通過する空気の熱を吸収して第3の熱交換媒体を蒸発させ、前記通過する空気を冷却するものである。このように、エンジンのラジエータ等の熱を回収して冷凍サイクルを駆動させることができるものである。
【実施例2】
【0032】
図2に示す廃熱回収サイクル6Aは、前記ランキン用蒸発器2と第1のスクロール流体機械3Aの間にヒータ等の加熱手段11を設けたこと特徴とする。これによって、熱源の停止や不足により、ランキン用蒸発器2を通過する第2の熱交換媒体が十分に蒸発されない場合、前記加熱手段11によって前記第2の熱交換媒体を加熱して十分に蒸発させ、第1のスクロール流体機械3Aで十分に膨張させることができるものである。
【実施例3】
【0033】
上述した廃熱回収システム1に使用される複合流体機械3は、例えば
図3に示すように、膨張機となる圧力相殺型の第1のスクロール流体機械3Aと圧縮機となる前記第1のスクロール流体機械3Aと同一構造の第2のスクロール流体機械3Bとによって構成される。
【0034】
この実施例3において膨張機として作動する前記第1のスクロール流体機械3Aは、略円筒状の側面部31A、該側面部31Aの一方側に位置するフロント端面部32A、前記側面部31Aの他方側に位置するリア端面部33Aからなり、内部空間34Aを画成するとともに該内部空間34Aと外部とを連通する開口部35Aが設けられるハウジング36Aと、前記フロント端面部32Aに回転自在に支持される回転軸37Aと、前記リア端面部33Aに回転自在に支持される連結軸30Aと、前記回転軸37Aに固定され、径方向に螺旋状に延出する第1の駆動スクロール部材38Aと、前記連結軸30Aに固定され、径方向に螺旋状に延出する第2の駆動スクロール部材39Aと、前記第1の駆動スクロール部材38Aの第1の駆動スクロール40Aと噛合して第1の膨張空間42Aを画成する螺旋状の第1の従動スクロール44Aおよび前記第2の駆動スクロール部材39Aの第2の駆動スクロール41Aと噛合して第2の膨張空間43Aを画成する螺旋状の第2の従動スクロール45Aを具備し、前記フロント端面部32Aおよび前記リア端面部33Aに回転自在に保持される従動スクロール部材46Aとを具備し、前記第1および第2の圧縮空間42A,43Aは、中心から外周方向に向けて漸次その空間を拡大させるように構成され、前記回転軸37Aに貫通して設けられた貫通孔47Aが前記第1および第2の膨張空間42A,43Aの最内周端と連通し、前記第1および第2の膨張空間42A,43Aの最外周端が前記内部空間34Aと連通するように構成される。高圧で加熱された冷媒は貫通穴47を経て膨張機の中心部に流入し容積を押し広げながら回転駆動させ動力を発生させる。膨張機内部の圧力は圧力相殺機構となっているため、軸方向の引き離し力が発生しないことより、圧力バランス調整が不要のため、膨張機と圧縮機の同一本体の兼用化が可能となっている。
【0035】
この実施例3において圧縮機として作動する前記第2のスクロール流体機械3Bは、第1のスクロール部材3Aと同様の構造を有するもので、略円筒状の側面部31B、該側面部31Bの一方側に位置するフロント端面部32B、前記側面部31Bの他方側に位置するリア端面部33Bからなり、内部空間34Bを画成するとともに該内部空間34Bと外部とを連通する開口部35Bが設けられるハウジング36Bと、前記フロント端面部32Bに回転自在に支持される回転軸37Bと、前記リア端面部33Bに回転自在に支持される連結軸30Bと、前記回転軸37Bに固定され、径方向に螺旋状に延出する第1の駆動スクロール部材38Bと、前記連結軸30Bに固定され、径方向に螺旋状に延出する第2の駆動スクロール部材39Bと、前記第1の駆動スクロール部材38Bの第1の駆動スクロール40Bと噛合して第1の圧縮空間(前記第1の膨張空間と同じ)42Bを画成する螺旋状の第1の従動スクロール44Bおよび前記第2の駆動スクロール部材39Bの第2の駆動スクロール41Bと噛合して第2の圧縮空間(前記第2の圧縮空間と同じ)43Bを画成する螺旋状の第2の従動スクロール45Bを具備し、前記フロント端面部32Bおよび前記リア端面部33Bに回転自在に保持される従動スクロール部材46Bとを具備し、前記第1および第2の圧縮空間42B,43Bは、中心から外周方向に向けて漸次その空間を拡大させるように構成され、前記回転軸37Bに貫通して設けられた貫通孔47Bが前記第1および第2の圧縮空間42B,43Bの最内周端と連通し、前記第1および第2の圧縮空間42B,43Bの最外周端が前記内部空間34Bと連通するように構成される。低温のガス状冷媒は貫通穴35Bから吸引され圧縮機3Bで圧縮空間42B,43Bの容積を中心部にむかって縮小しながら吐出口47Bから高温高圧の冷媒ガスを吐出させる。圧縮機3Bの内部の発生圧力は圧力相殺機構となっているため、軸方向の引き離し力が発生しないことより、圧力バランス調整が不要のため、膨張機と圧縮機の同一本体の兼用化が可能となっている。
【0036】
以上のように、第1のスクロール流体機械3Aと同一の構成を有する第2のスクロール流体機械3Bは、前記連結ハウジング3C内を介して前記第1のスクロール流体機械3Aと背中合わせに配置されると共に、前記連結ハウジング3C内において第1のスクロール流体機械3Aの連結軸30Aと第2のスクロール流体機械3Bの連結軸30Bとが連結固定される。また、第1のスクロール流体機械3Aの回転軸37Aおよび第2のスクロール流体機械3Bの回転軸37Bは、前記フロント端面部32A,32Bにそれぞれベアリング等を介して回転自在に保持されると共に、その先端はキャップ49A,49Bによってシールされる。
【0037】
上述したように、この実施例3では、複合流体機械3の一方、例えば前記第1のスクロール流体機械3Aは、ランキンサイクル6(または6A)の一部を構成する膨張機として、前記複合流体機械3の他方、例えば前記第2のスクロール流体機械3Bは、冷凍サイクル10の一部を構成する圧縮機として使用されるものである。
【0038】
さらに、前記連結ハウジング3Cは、前記第1のスクロール流体機械3Aの連結軸30Aと、前記第2のスクロール流体機械3Bの連結軸30Bとの連結部分を収容する連結空間3Dを画成し、該連結空間3Dは前記第2のスクロール流体機械3Bの内部空間34Bと連通するものである。この構造を達成するために、第1および第2のスクロール流体機械3A,3Bのリア端面部33A,33Bには、それぞれのリア端面部33A,33Bを貫通する連通孔48A,48Bが形成される。この実施例3では、第2のスクロール流体機械3Bが圧縮機として作用するため、第2のスクロール流体機械33Bのリア端面部33Bに形成される連通孔48Bが開放状態となり、第1のスクロール流体機械33Aのリア端面部33Aに形成される連通孔48Aが閉鎖される。これによって、第2のスクロール流体機械3Bの内部空間34Bと前記連結ハウジング3C内の連結空間3Dとは連通状態となり、同一圧力となるため、連結軸30Bの周縁の軸シールが不要となる。尚、膨張機としての第1のスクロール流体機械3Aの内部空間34Aと前記連結空間3Dとは異なる種類の冷媒の混入を避けるために、リップシールを構成したキャップ50Aを設けて両者を遮断することが好ましい。また前記内部空間34Aと連結空間3Dは共に低圧であることからリップシールにかかる圧力差はさらに小さくなることより、シールが容易となる。
【0039】
また、この実施例3では、第1のスクロール流体機械3Aの外部と連通する開口部35Aは、フロント端面部32Aに開口するが、第2のスクロール流体機械3Bのフロント端面部33Bの開口部35B’は閉鎖される。同様に、第2のスクロール流体機械3Bの外部と連通する開口部35Bは、側面部31Bに開口するが、第1のスクロール流体機械3Aの開口部35A’は閉鎖される。
【0040】
以上の構成により、ランキン用蒸発器2において、エンジン廃熱等の熱源から供給された第1の熱交換媒体と熱交換して蒸発した第2の熱交換媒体は、キャップ49Aを介して回転軸37A内を貫通する貫通孔47Aに流れ込み、前記第1および第2の膨張空間42A,43Aの中心部分から、前記第1および第2の膨張空間42A,43A内を膨張しながら最外周端方向に移動し、前記回転軸37Aおよび連結軸30Aを回転させる。これによって、第1のスクロール流体機械3Aの連結軸30Aと連結する連結軸30Bを介して第2のスクロール流体機械3Bが作動させることができるものである。
【0041】
以上説明したように、本発明によれば、エンジン等の廃熱を利用して冷凍サククルを稼働させることが可能となるものである。
【符号の説明】
【0042】
1 廃熱回収システム
2 ランキン用蒸発器
3 複合流体機械
3A 第1のスクロール流体機械
3B 第2のスクロール流体機械
4 ランキン用凝縮器
5 ポンプ
6 ランキンサイクル
7 冷凍サイクル用凝縮器
8 膨張手段
9 冷凍サイクル用蒸発器
10 冷凍サイクル
11 加熱手段