(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】車両のニーエアバッグ装置の取り付け構造
(51)【国際特許分類】
B60R 21/206 20110101AFI20220630BHJP
【FI】
B60R21/206
(21)【出願番号】P 2018063734
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】中村 悟
(72)【発明者】
【氏名】歸山 秀治
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-207419(JP,A)
【文献】特開2010-143388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/206
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のニーエアバッグ装置の取り付け構造において、
前記車両の車体と前記ニーエアバッグ装置を連結する車体側ブラケットを備え、
前記車体側ブラケットに、外部端末との接続用コネクタが取り付けられるコネクタ取り付け部を設
け、
前記コネクタ取り付け部は、前記車体側ブラケットの中間部から車両の後方に向けて延び出しており、
前記コネクタ取り付け部は、前記ニーエアバッグ装置と前記車体の側面の間に配置されており、
前記取り付け構造は、前記車両の車幅方向に延びるように前記車両の車体の両側側面に取り付けられたインパネメンバと前記車両のフロアとの間に設けられたセンターステーに対して前記ニーエアバッグ装置を連結するセンターステー側ブラケットを備え、
前記センターステー側ブラケットは、前記ニーエアバッグ装置に連結されるニーエアバッグ側連結部と、前記センターステーに連結されるセンターステー側連結部と、前記ニーエアバッグ側連結部と前記センターステー側連結部の中間に設けられた中間部を備え、
前記コネクタ取り付け部は、前記センターステー側連結部よりも前記車体の前方側に位置している車両のニーエアバッグ装置の取り付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のニーエアバッグ装置の取り付け構造において、
前記接続用コネクタは、OBDコネクタである車両のニーエアバッグ装置の取り付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるニーエアバッグ装置の取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、衝突等の事故発生時に乗員の膝を保護するニーエアバッグ装置が用いられて来ている。ニーエアバッグ装置は、事故発生時に乗員の膝に向けてエアバッグを展開可能なように、乗員席の前方に配置されるようになっている。
【0003】
このようなニーエアバッグ装置に取り付け構造としては、例えば、特許文献1(特開2014-210548号公報)には、ニーエアバッグ装置を、インパネリインフォースメントースメント(インパネメンバ)と、インパネリインフォースメントースメントからフロアパネルのトンネル部に架け渡されたフロアブレース(センターステー)に、ブラケットを介して取り付けた構成が開示されている。また、特許文献2(特開2012-76531号公報)には、ニーエアバッグ装置を、ブラケットを介してインパネリインフォースメントに取り付けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-210548号公報
【文献】特開2012-76531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ニーエアバッグ装置は、事故発生時に、瞬時に(急激に)エアバッグを展開させて乗員を保護する必要がある。このため、ニーエアバッグ装置を支持する取り付け構造には、展開時に大きな衝撃がかかることになるので、十分な剛性が必要となる。しかしながら、取り付け構造の剛性を高めるために、取り付け構造における支持部材の板厚を大きくしたり、高剛性部材を用いたりすると、車両の重量が増加してしまい、燃費等の悪化につながってしまっていた。
【0006】
本発明は、以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、車両のニーエアバッグ装置の取り付け構造において、ニーエアバッグ展開時の支持剛性を確保しつつ、軽量化を達成し得る構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明にあっては、次のような解決方法を採択している。すなわち、請求項1に記載のように、車両のニーエアバッグ装置の取り付け構造において、前記車両の車体と前記ニーエアバッグ装置を連結する車体側ブラケットを備え、前記車体側ブラケットに、外部端末との接続用コネクタが取り付けられるコネクタ取り付け部を設け、前記コネクタ取り付け部は、前記車体側ブラケットの中間部から車両の後方に向けて延び出しており、前記コネクタ取り付け部は、前記ニーエアバッグ装置と前記車体の側面の間に配置されており、前記取り付け構造は、前記車両の車幅方向に延びるように前記車両の車体の両側側面に取り付けられたインパネメンバと前記車両のフロアとの間に設けられたセンターステーに対して前記ニーエアバッグ装置を連結するセンターステー側ブラケットを備え、前記センターステー側ブラケットは、前記ニーエアバッグ装置に連結されるニーエアバッグ側連結部と、前記センターステーに連結されるセンターステー側連結部と、前記ニーエアバッグ側連結部と前記センターステー側連結部の中間に設けられた中間部を備え、前記コネクタ取り付け部は、前記センターステー側連結部よりも前記車体の前方側に位置している。
【0008】
上記解決手法によれば、車体側ブラケットは、ニーエアバッグ装置を比較的近接した車体(例えばヒンジピラー)に取り付けるものであるので、その長さを短くすることができ、重量増加を抑制しつつ、板厚を大きくしたり、高剛性部材を用いたりして剛性を高めることができる。したがって、高剛性の車体側ブラケットと一体のコネクタ取り付け部は、高い取り付け剛性を有するものとでき、コネクタ取り付けの作業性が向上する。また、コネクタ取り付け部をインストルメントパネルに設ける必要が無くなり、インストルメントパネルの剛性を低くできるので、事故発生時におけるインストルメントパネルとの接触による乗員の傷害の可能性や程度を低減することができる。また、コネクタ取り付け部を支持する部材を車体側ブラケットと別に設ける必要が無くなり、全体として軽量化がなされるので、その分、車体側ブラケットは、板厚を大きくしたり、高剛性部材を用いたりすることができ、剛性を高めることができる。また、コネクタ取り付け部を、車体側ブラケットやニーエアバッグ装置と干渉しない適切な位置に配置できるので、コネクタ取り付けの高い作業性を確保できる。
【0009】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載の通りである。すなわち、前記接続用コネクタは、OBDコネクタである(請求項2対応)。この場合、車両において必ず必要となるOBDコネクタの取り付け部を、適切な位置に合理的に設定できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コネクタ取り付け部を車体側ブラケットに設けたので、ニーエアバッグ装置及びコネクタの取り付け構造を、全体の重量増加を抑制しつつ、高剛性に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明のニーエアバッグ装置の取り付け構造の一例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1には、車両における車室の前部構造を示す。また、
図2には、運転席側のニーエアバッグ装置の取り付け構造を平面図で示す。なお、図面においては、車室前部構造において本発明のニーエアバッグ装置の取り付け構造と関連する部材のみを示し、他の部材の図示は省略している。
【0016】
図示されるように、車体1の一部を構成する左右のヒンジピラー1A、1Bの間には、インパネメンバ2が配置されている。インパネメンバ2は、例えば金属製の長尺パイプ部材であり、図示されないインストルメントパネルの内側に配置されている。インパネメンバ2は、運転席側部分2A(
図1の左側部分)の端部が右側のヒンジピラー1Aに、また助手席側部分2B(
図1の右側部分)の端部が左側のヒンジピラー1Bに、それぞれ取り付けられることにより、両側側部2A、2Bの間に架け渡されて、車体1の車幅方向に延びている。
【0017】
なお、インパネメンバ2は、より高い機械的強度が求められる運転席側部分2Aの方が、助手席側部分2Bよりも大径となっている。また、運転席部分2Aの略中央には、図示されないステアリングコラムが取り付けられるようになっている。
【0018】
車室の下方には、フロアパネル3が設けられており、フロアパネル3の車幅方向の中央部分は、トンネル部3Aとなっている。フロアパネル3上には、トンネル部3Aの左右に位置するように、図示されない運転席と助手席が配置されている。
【0019】
運転席と助手席の前方には、ちょうど乗員の膝付近の前方に位置するように、それぞれニーエアバッグ装置10、20が配置されている。ニーエアバッグ装置10、20は、内部にエアバッグを備えており、このエアバッグが、事故発生時にインフレータにより展開されて、ニーエアバッグ装置10、20の外枠(ケース)を突き破って拡がることにより、乗員の膝を保護するようになっている。
【0020】
運転席側(左側)のニーエアバッグ装置10は、その左端側が車体側ブラケット11を介して車体1の左側のヒンジピラー1Aに、また右端側がセンターステー側ブラケット12を介してセンターステー13に、それぞれ取り付けられている。一方、助手席側(右側)のニーエアバッグ装置20は、その右端側が車体側ブラケット21を介して車体1の右側のヒンジピラー1Bに、また左端側がインパネメンバ側取付けブラケット22を介してインパネメンバ2に、それぞれ取り付けられている。
【0021】
ニーエアバッグ装置10、20は、略直方体形状を有しており、車幅方向(横方向)に延びて略水平に配置されている。車体側ブラケット11、21は、例えば金属からなる部材であり、車体側ブラケット11については
図3に単体で示すように、それぞれ、ニーエアバッグ装置10、20に連結されるニーエアバッグ側連結部11A、21Aと、ヒンジピラー1A、1Bに連結される車体側連結部11B、21Bと、ニーエアバッグ側連結部11A、21Aと車体側連結部11B、21Bの中間に設けられた中間部11C、21Cを備えている。車体側ブラケット11、21の中間部11C、11Bは、ニーエアバッグ装置10、20からヒンジピラー1A、1Bにかけて車幅方向に略水平に延びている。
【0022】
このように、車体側ブラケット11、21は、車体1の側部(ヒンジピラー1A、1B)に取り付けられるので、その長さを短くすることができる。すなわち、ニーエアバッグ装置10、20は車幅方向に延びて配置されているので、ニーエアバッグ装置10、20からインパネメンバ2までの距離よりも、ヒンジピラー1A、1Bまでの距離の方が短くなっており、この結果、ニーエアバッグ装置10、20をインパネメンバ2に連結して支持する場合よりも、ブラケットの長さを短くできる。また、車体側ブラケット11、21の中間部11C、21Cは、車幅方向に延びており、ヒンジピラー1A、1Bにおけるニーエアバッグ装置10、20に対して車幅方向に隣接した部分(最も近接した部分)に取り付けられるので、必要最小限の長さのものとできる。したがって、車体側ブラケット11、21は、板厚を大きくしたり、高剛性部材を用いたりして剛性を高めたとしても、その長さが短い分、重量の増加を抑制することができるので、取り付け構造における高い支持剛性の確保と軽量化を両立することができる。
【0023】
また、ニーエアバッグ装置10、20は、車体側ブラケット11、21により車体1で支持されるので、ニーエアバッグの展開時の荷重の一部が、車体側ブラケット11、20を介して剛性の大きい車体1(ヒンジピラー1A、1B)に分散される。よって、ニーエアバック展開時の荷重を、車体1で適切に支持することができる。また、様々な部材(インストルメントパネルやステアリングコラム等)が取り付けられて過重負担の大きなインパネメンバ2への加重分散を小さくすることができる。
【0024】
車体側ブラケット11、21の中間部11C、21Cは、板形状を有しており、この板形状の板面は、車両の前後方向に対して略垂直な面に沿って(略上下方向に延びて)配置されている。これにより、エアバッグが展開していく方向(斜め下方向)の支持剛性が高められるようになっている。
【0025】
本実施形態においては、車体側ブラケット11のニーエアバッグ側連結部11Aは、ニーエアバッグ装置10の上面に沿って配置されて固定される平板形状を有している。また、車体側ブラケット11の車体側連結部11Bと中間部11Cは、ボルト11Dにより連結された別部材となっている。
【0026】
センターステー13は、上端13Aがインパネメンバ2に、下端13Bがトンネル部3Bに、それぞれ固定され、インパネメンバ2とトンネル部3の間に架け渡されている。センターステー側ブラケット12は、例えば金属からなり、一端がニーエアバッグ装置10の右端部付近に、他端がセンターステー13に固定されている。
【0027】
センターステー側ブラケット12は、ニーエアバッグ装置10に連結されるニーエアバッグ側連結部12Aと、センターステー13に連結されるセンターステー側連結部12Bと、ニーエアバッグ側連結部12Aとセンターステー側連結部12Bの中間に配置された中間部12Cを備えている。本実施形態においては、ニーエアバッグ側連結部12Aは、下端においてニーエアバッグ装置10の上面に連結され、ニーエアバッグ装置10の上方に延び出している。中間部12Bは、ニーエアバッグ側連結部12Aの上端から、車幅方向に水平に延びて、センターステー側連結部12Bに達している。
【0028】
このように、車体側ブラケット11とともにニーエアバッグ装置10を支持するセンターステー側ブラケット12も、センターステー13におけるニーエアバッグ装置10に対してほぼ隣接した部分に取り付けられる。したがって、センターステー側ブラケット12も、車体側ブラケット11と同様に、(中間部12Cの)長さを短くすることができ、軽量化を図りつつ、支持剛性を高めることができる。
【0029】
センターステー側ブラケット12の中間部12Cは、板形状を有しており、この板形状の板面が車両の前後方向に対して略垂直な面に沿って(略上下方向に延びて)配置されている。これにより、エアバッグが展開していく方向(斜め下方向)の支持剛性が高められるようになっている。
【0030】
図3にも詳細に示すように、車体側ブラケット11には、外部端末との接続用コネクタを取り付けるためのコネクタ取り付け部14が一体に設けられている。なお、接続用コネクタは、例えば、OBD(On-board diagnostics)コネクタ(自己診断コネクタ)である。コネクタ取り付け部14は、車体側ブラケット11の中間部11Cに対して(例えば溶接により)一体に取り付けられており、中間部11Cの下端側から車両後方に向けて、ほぼ水平に延び出している。これにより、高剛性の車体側ブラケット11と一体のコネクタ取り付け部14は、高い取り付け剛性を有するものとでき、コネクタ取り付けの作業性が向上する。
【0031】
また、コネクタ取り付け部14を支持する部材を車体側ブラケット11と別に設ける必要が無くなり、全体として軽量化がなされるので、その分、車体側ブラケット11は、板厚を大きくしたり、高剛性部材を用いたりすることができ、剛性を高めることができる。
【0032】
また、コネクタ取り付け部14をインストルメントパネルに設ける必要が無くなるので、インストルメントパネルの樹脂部を補強する必要が無くなる。よって、インストルメントパネルの剛性を低くできるので、事故発生時におけるインストルメントパネルとの接触による乗員の傷害の可能性や程度を低減することができる。
【0033】
コネクタ取り付け部14は、車体側ブラケット11から、車両後方に延び出しており、ヒンジピラー1Aとニーエアバッグ装置10の間に配置されている。したがって、コネクタ取り付け部14へのコネクタの取り付け作業時に、車体側ブラケット11やニーエアバッグ装置10が邪魔になることはなく、高い作業性を確保できる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲において適宜の変更が可能である。例えば、上記実施形態においては、本発明のニーエアバッグ装置の取り付け構造を運転席側に適用したが、本発明はこのような形態に限られるものではなく、助手席側に適用することも可能である。また、上記実施形態では、コネクタ取り付け部14は、車体側ブラケット11に一体に取り付けられた別部材としたが、コネクタ取り付け部14と車体側ブラケット11は、一部材から構成してもよい。また、車体側ブラケットの具体的な形状は、上記実施形態の車体側ブラケット11、21の形状に限られるものではない。例えば、車体側連結部11Bと中間部11Cは、別部材とせず、一部材で構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、自動車等の車両におけるニーエアバッグ装置の取り付け構造に利用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 車体
1A ヒンジピラー
1B ヒンジピラー
2 インパネメンバ
3 フロアパネル
3A フロアパネルのトンネル部
10 ニーエアバッグ装置
11 車体側ブラケット
11A 車体側ブラケットのニーエアバッグ側連結部
11B 車体側ブラケットの車体側連結部
11C 車体側ブラケットの中間部
12 センターステー側ブラケット
12A センターステー側ブレケットのニーエアバッグ側連結部
12B センターステー側ブレケットのセンターステー側連結部
12C センターステー側ブレケットの中間部
13 センターステー
14 コネクタ接続部
20 ニーエアバッグ装置
21 車体側ブラケット
21A 車体側ブラケットのニーエアバッグ側連結部
21B 車体側ブラケットの車体側連結部
21C 車体側ブラケットの中間部
22 インパネメンバ側ブラケット