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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】継ぎ手部材
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20220630BHJP
   E03C 1/28 20060101ALI20220630BHJP
   F16K 15/14 20060101ALI20220630BHJP
   F16K 15/06 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
E03C1/12 E
E03C1/28 Z
F16K15/14 B
F16K15/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017147773
(22)【出願日】2017-07-31
(65)【公開番号】P2019027147
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 大輔
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-190867(JP,A)
【文献】特開平06-011058(JP,A)
【文献】特開2014-047872(JP,A)
【文献】特公昭34-001937(JP,B1)
【文献】特開2014-189060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
F16K 15/00-15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に管体が接続される継ぎ手部材であって、
壁面に形成された点検口と、
前記点検口を閉塞する蓋部と、
前記点検口より継ぎ手部材内部に配置され、弁座に当接することにより流体の逆流を防ぐ弁体を備え、
前記弁体は弾性材より成り、自身の弾性を付勢手段として前記弁座と当接して排水流路を閉塞する止水部を有し、
前記管体が横引き管である場合において、
前記止水部は前記継ぎ手部材が前記横引き管に対して接続された際において、
前記点検口の向きに関わらず前記止水部の下端が前記排水流路の底部に位置し、
前記点検口の向きを任意の角度に傾斜させた場合であっても、前記排水流路を閉塞可能であることを特徴とする継ぎ手部材。
【請求項2】
端部に管体が接続される継ぎ手部材であって、
壁面に形成された点検口と、
前記点検口を閉塞する蓋部と、
前記点検口より継ぎ手部材内部に配置され、弁座に当接することにより流体の逆流を防ぐ弁体と、
前記点検口から前記継ぎ手部材内部に挿入されるアダプターを備え、
前記アダプターは前記継ぎ手部材内部に配置された際に排水流路の一部を構成するとともに、前記弁体及び前記弁座を有し、
前記弁体は弾性材より成り、自身の弾性を付勢手段として前記弁座と当接して排水流路を閉塞する止水部を有し、
前記管体が横引き管である場合において、
前記止水部は前記継ぎ手部材が前記横引き管に対して接続された際において、前記点検口の向きを任意の角度に傾斜させた場合であっても、前記排水流路を閉塞可能であることを特徴とする継ぎ手部材。
【請求項3】
前記弁座が、前記排水流路の内周全周に亘り形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の継ぎ手部材。
【請求項4】
前記止水部は付勢手段によって前記弁座に当接するよう応力が加えられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の継ぎ手部材。
【請求項5】
前記弁体は略円錐形状を成し、
外側面が前記弁座と当接する前記止水部として機能することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の継ぎ手部材。
【請求項6】
前記弁体は前記排水流路の内周から離間した位置に備えた固定部に固定され、前記継ぎ手部材が前記横引き管に対して接続された際において、前記点検口の向きを任意の角度に傾斜させた場合であっても、常に前記固定部と前記排水流路の底部との間が離間していることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一つに記載の継ぎ手部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水配管に取り付けられて、下流側からの流体の逆流を防止する弁体を備えた継ぎ手部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排水配管に接続される継ぎ手部材としては、特許文献1のように、内部に弁体を備え、下流側からの流体の逆流を防止する構造のものが知られている。尚、特許文献1に記載の継ぎ手部材は冷凍冷蔵庫や空調機器等の設備機器の使用に伴い生じるドレンを排出する排水配管に接続されるものであって、当該排水配管は略水平方向に配設される横引き管である。
上記弁体は排水流路内において回動可能となるよう継ぎ手本体に取り付けられている。又、無排水時において弁体は弁座に当接しており、下流側からの臭気や排水(流体等)、又は害虫の逆流を防いでいる。尚、下流側より流体の逆流が生じた際には、弁体に対し、弁座に押し付けられる方向に応力が加わることから、排水流路の閉塞が維持される。一方、上流側から排水が排出された際には、当該排水によって弁体が回動し、排水流路が一時的に開放されることによって下流側へと排水を排出する。即ち、弁体は無排水時や下流側より流体の逆流が生じた際には弁体が排水流路を閉塞し、上流側より排水が生じた際には排水流路を開放するように回動する構造となっている。
又、継ぎ手部材は上部に点検口及び当該点検口を閉塞する蓋部を有しており、当該蓋部を取り外すことにより点検口から弁体の着脱や継ぎ手部材内部の清掃等を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-224529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記継ぎ手部材は、点検口より弁体の着脱や清掃等を行うことが困難となる場合があった。例えば、継ぎ手部材が空調機器から連続する排水配管に接続されている場合、継ぎ手部材は天井裏に配置される。この時、作業者は下の階の天井に形成された点検用の蓋を取り外し、下方から継ぎ手部材の点検を行うが、下方から継ぎ手部材の上部に配置された蓋部を取り外し、弁体の着脱や清掃を行うことは困難であった。又、継ぎ手部材が冷凍冷蔵庫から連続する排水配管に接続されている場合、点検口の上方には冷凍冷蔵庫等の設備機器が配置されていることがあり、やはり継ぎ手部材の上部に配置された蓋部を取り外すことは困難であった。
【0005】
本発明は上記問題に鑑み発明されたものであって、点検口より容易に弁体の着脱や清掃等を行うことが可能となる継ぎ手部材の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、端部に管体が接続される継ぎ手部材であって、
壁面に形成された点検口と、
前記点検口を閉塞する蓋部と、
前記点検口より継ぎ手部材内部に配置され、弁座に当接することにより流体の逆流を防ぐ弁体を備え、
前記弁体は弾性材より成り、自身の弾性を付勢手段として前記弁座と当接して排水流路を閉塞する止水部を有し、
前記管体が横引き管である場合において、
前記止水部は前記継ぎ手部材が前記横引き管に対して接続された際において、
前記点検口の向きに関わらず前記止水部の下端が前記排水流路の底部に位置し、
前記点検口の向きを任意の角度に傾斜させた場合であっても、前記排水流路を閉塞可能であることを特徴とする継ぎ手部材である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、端部に管体が接続される継ぎ手部材であって、
壁面に形成された点検口と、
前記点検口を閉塞する蓋部と、
前記点検口より継ぎ手部材内部に配置され、弁座に当接することにより流体の逆流を防ぐ弁体と、
前記点検口から前記継ぎ手部材内部に挿入されるアダプターを備え、
前記アダプターは前記継ぎ手部材内部に配置された際に排水流路の一部を構成するとともに、前記弁体及び前記弁座を有し、
前記弁体は弾性材より成り、自身の弾性を付勢手段として前記弁座と当接して排水流路を閉塞する止水部を有し、
前記管体が横引き管である場合において、
前記止水部は前記継ぎ手部材が前記横引き管に対して接続された際において、前記点検口の向きを任意の角度に傾斜させた場合であっても、前記排水流路を閉塞可能であることを特徴とする継ぎ手部材である。
【0008】
請求項3に記載の本発明は、前記弁座が、前記排水流路の内周全周に亘り形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の継ぎ手部材である。
【0009】
請求項4に記載の本発明は、前記止水部は付勢手段によって前記弁座に当接するよう応力が加えられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の継ぎ手部材である。
【0010】
請求項5に記載の本発明は、前記弁体は略円錐形状を成し、
外側面が前記弁座と当接する前記止水部として機能することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の継ぎ手部材である。
【0011】
請求項6に記載の本発明は、前記弁体は前記排水流路の内周から離間した位置に備えた固定部に固定され、前記継ぎ手部材が前記横引き管に対して接続された際において、前記点検口の向きを任意の角度に傾斜させた場合であっても、常に前記固定部と前記排水流路の底部との間が離間していることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一つに記載の継ぎ手部材である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の継ぎ手部材は、横引き管に接続された際に、点検口を任意の角度に傾斜可能となるため、施工状況に合わせて点検口を下方や側面等に向けることが可能であり、清掃やメンテナンス性が向上する。そして、請求項2乃至請求項6に記載の構成を備えることにより、点検口を任意の方向に傾斜させた場合であっても良好に排水流路を閉塞可能となる。即ち、弁座が排水流路の内周全周に亘り形成されていることから、点検口の方向に関わらず排水流路の閉塞/開放が可能である。又、止水部が自重によって排水流路を閉塞する構造である場合、弁体が排水流路を閉塞可能な方向が限定されてしまうが、本発明において、止水部は付勢手段によって弁座に当接しているため、点検口が任意の方向に傾斜されたとしても、止水部が弁座に当接可能である。又、弁体が略円錐形状を成すことから、上流側からの排水を通過させるとともに、下流側からの流体等の逆流を好適に防ぐことが可能となる。又、固定部が排水流路の内周から離間した位置に備えられていることから、固定部によって排水が妨げられるといった問題が生じることはない。又、点検口の向きに関わらず止水部の下端が排水流路の底部に位置することから、止水部より上流側における水残りを防ぐことが可能となる。
更に、本発明は点検口から継ぎ手部材内部に挿入されるアダプターを備え、当該アダプターが弁体及び弁座を有することにより、点検口から弁体を脱着する際に弁体が変形する等の恐れがなくなる。又、清掃等の際には、アダプターを継ぎ手部材から取り外した後に弁体の着脱等を行うことが可能となることから、継ぎ手部材が狭所に取り付けられた際に、当該狭所内で作業を行う必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態を示す断面図である。
図2】継ぎ手部材を示す分解図である。
図3】(a)アダプターを示す断面図、(b)図3(a)のA-A’断面図である。
図4】(a)上流側からの排水の流れを示す参考図、(b)下流側から流体等の逆流が生じた際の流れを示す参考図である。
図5】第二実施形態を示す断面図である。
図6】継ぎ手部材を示す分解図である。
図7】(a)アダプターを示す断面図、(b)図7(a)のA-A’断面図である。
図8】(a)上流側からの排水の流れを示す参考図、(b)下流側から流体等の逆流が生じた際の流れを示す参考図である。
図9】第三実施形態に係る弁体を示す(a)断面図、(b)背面図である。
図10】第四実施形態を示す(a)断面図、(b)図10(a)のA部拡大図である。
図11】第五実施形態を示す断面図である。
図12】第六実施形態を示す断面図である。
図13】継ぎ手部材の施工状態を示す参考図である。
図14】継ぎ手部材の施工状態を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の継ぎ手部材を、図面を参照しつつ説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にするものであって、これによって本発明が制限して理解されるものではない。又、本発明における継ぎ手部材は、継ぎ手本体10の軸を中心として、点検口14の向きを上方、側方等任意の方向に向けた状態で固定することが可能であるが、発明の理解を容易にするため、図1乃至図4に示す第一実施形態の説明を行うにあたっては、図1に示すように、点検口14が下方を向いた状態を基準として上下左右を説明する。
【0015】
本実施形態の継ぎ手部材1は図2に示すように、壁面に点検口14を備える継ぎ手本体10と、点検口14を閉塞する蓋部20と、蓋部20と連結されて継ぎ手本体10内に配置されるアダプター30と、アダプター30に取り付けられた弁体50から成る。又、継ぎ手部材1はその上流側と下流側において、略水平方向に延設する横引き管に対して接続されている。尚、図1においては上流側及び下流側に接続された横引き管を二点鎖線で記載している。
【0016】
継ぎ手本体10は半透明の硬質樹脂から成る筒状のケーシングであって、その上流側端部及び下流側端部において、管体が接続される流入口11と流出口12を備えており、内部には後述するアダプター30を収納する収納室13が形成されているとともに、壁面には点検口14が開口されている。尚、本実施形態において、継ぎ手本体10は点検口14が下方を向いている。
流入口11と流出口12は中心軸が合致する円筒状であって、接着により接続される管体の外径とほぼ同径となる内径を有している。
点検口14は継ぎ手本体10の壁面に形成された円形の開口であって、その内周には内側に向けて凸部15が形成されている。凸部15は後述する蓋部20と係合する突起であって、等間隔に4箇所の凸部15が形成されている。又、点検口14は蓋部20及びアダプター30が挿入された際、凸部15の上方(収納室13側)おいて、アダプター30に取り付けられたパッキン40が点検口14の内周全周に亘って当接しており、蓋部20が取り付けられた状態において水密に閉塞されている。
収納室13は流入口11と流出口12の間であって、図1及び図2に示すように、点検口14が下方を向いて配置されている状態において、当該点検口14の直上となる位置に形成されている。又、収納室13は内部に当接面16とガイド部17を備えている。
当接面16は収納室13の上流側端部であって、流入口11との境界に形成されており、蓋部20及びアダプター30の挿入方向に対して傾斜し、図1に示すように、パッキン41を介してアダプター30と当接している。尚、当接面16は点検口14から対向する壁面(上方)に進むにつれて、流入口11から流出口12へ向かうようにして傾斜している。
ガイド部17は上記当接面16と対向する位置に形成された面であり、蓋部20及びアダプター30の挿入方向と同一方向に延設されている。
【0017】
蓋部20は上記点検口14の内径と略同径となる外径を備えた円形の閉塞部材であって、点検口14の内周と対向する蓋部20の外周には、上記凸部15と係合する溝部21が形成されている。溝部21は螺旋状に形成されており、溝部21内に凸部15が配置された状態で蓋部20を時計回りに回動させると、溝部21内を凸部15が摺動することにより、点検口14に固定される。又、蓋部20の上面(収納室13側)には係合部22が突設されている。係合部22は平面視円形であり、その端部において、全周に亘り外側に向けて突出するフランジ部分を有しており、アダプター30と回動可能に連結されている。尚、蓋部20は継ぎ手本体10に取り付けられた状態において、外側に把持部23が露出しており、使用者は当該把持部23によって手動で蓋部20を回動させることができる。
【0018】
アダプター30は上記蓋部20の係合部22に係合する爪部31と、収納室13内に配置された際に排水流路を形成する流路形成部32と、弁体50を固定する固定部33を備えている。又、アダプター30は爪部31の外側においてパッキン40を、流路形成部32の上流側端部にパッキン41をそれぞれ有している。
爪部31は内向きに突出する爪部分を有し、上記係合部22と係合している状態において、蓋部20とアダプター30が相対回転可能となるように部材を連結する。
流路形成部32は円筒状であって、アダプター30が収納室13内に配置された状態において、その上流側端部と下流側端部が流入口11及び流出口12とそれぞれ面一となるよう連続し、継ぎ手部材1内に排水流路を形成する。尚、流路形成部32の上流側端部には、上記当接面16と同一角度に傾斜する被当接面34と、取り付け時にガイド部17と当接する被ガイド部35を備えており、被当接面34には環状のパッキン41が取り付けられている。又、図3に示すように、流路形成部32は内周面から中心軸へ向けて支承部36が延設されており、当該支承部36によって固定部33が流路形成部32の中心軸上に配置されている。固定部33は流路形成部32の中心に形成され、軸方向に延設された棒状であって、固定部33は全周に亘り排水流路の内周から離間した位置に配置され、弁体50を流路形成部32内の中心軸上に固定している。従って、点検口14の向きを任意の角度に傾斜させた場合であっても、常に固定部33と排水流路の底部との間は離間している。
尚、後述するように、流路形成部32は弁体50が取り付けられた状態において、弁体50の止水部52と流路形成部32と全周に亘り当接し、無排水時及び下流側からの逆流発生時には排水流路が閉塞される。尚、以降において流路形成部32の内周において上記止水部52と水密に当接する箇所を弁座37として記載する。即ち、本実施形態において弁座37は排水流路の内周全周に亘り形成されている。
【0019】
弁体50はゴムやシリコン等の弾性材より成る略円錐状であって、上流側に配置された頂点部51と、流路形成部32の内周全周と当接する止水部52と、頂点部51と止水部52を繋ぐ側壁部53と、固定部33に取り付けられる被固定部54から成る。
止水部52は弁体50の下流側端部であって、その外径は流路形成部32の内径と略同径又は流路形成部32の内径よりやや大径であり、弁座37と当接している。又、弁体50が固定部33に取り付けられている状態において、弁体50の中心軸は流路形成部32の中心軸と合致しており、止水部52は弁体50自身の弾性によって弁座37に向けて均等に応力が加えられている。従って、止水部52は自身の弾性を付勢手段として、弁座37と全周に亘って均等に当接している。
側壁部53は頂点部51と止水部52とを繋ぐように略円錐状に広がる薄膜状の傾斜壁である。当該側壁部53に対して上流側から応力が加わった際には、側壁部53が弁体50の中心軸方向に向けて撓むことによって止水部52が弁座37から離間し、排水流路を開放する。この開放の際に、弁体50の被固定部54は固定部33に固定されたまま、移動することは無い。一方、下流側からの応力が加わった際には側壁部53に対して弁座37へ向けて押し付けられる方向に応力が加わり、排水流路の閉塞を維持する。
被固定部54は弁体50の中心に形成された筒状部であり、固定部33の周囲に嵌着されている。
【0020】
以下に、本実施形態における継ぎ手部材1の組み立てについて詳述する。
【0021】
まず、蓋部20の係合部22に対してアダプター30の爪部31を押し付け、蓋部20とアダプター30を係合させる。この時、爪部31は係合部22のフランジ部分を乗り越
え、蓋部20とアダプター30は相対回転可能に接続される。
次に、アダプター30の固定部33に弁体50を嵌着させる。この時、弁体50の止水部52が弁座37に対して全周に亘り当接する。
次に、上記蓋部20とアダプター30を点検口14から挿入し、溝部21内に凸部15が配置された状態で蓋部20を時計回りに回動させ、アダプター30と弁体50を収納室13内に配置することで組み立てが完了する。この時、継ぎ手本体10に形成されたガイド部17とアダプター30に形成された被ガイド部35によって、アダプター30の傾斜角度や挿入方向が誘導される。又、当接面16と被当接面34がそれぞれ挿入方向に対して傾斜していることにより、上記挿入時には挿入方向に加えられた応力の一部が当接面16と被当接面34が互いに近接する方向の応力へと変換される。これによって、当接面16と被当接面34がパッキン41を介して圧接されて水密状態となる。尚、挿入時に変換された力は当接面16と被当接面34が離間する方向にも働くが、ガイド部17によってアダプター30が当接面16より離間することが防止されているため、確実に水密状態を維持することが可能となる。
【0022】
上記組み立てが完了した状態において、流路形成部32は上流側及び下流側の排水流路と全周に亘り面一となり、滑らかに連続する円筒状の排水流路を形成する。
尚、上記継ぎ手部材1のメンテナンスを行う際には、蓋部20を反時計回りに回動させることで、点検口14より蓋部20とアダプター30と弁体50を取り出すことが可能となる。
【0023】
以下に、本実施形態における継ぎ手部材1の動作について詳述する。
【0024】
まず、継ぎ手部材1に対して上流側からの排水が無く、下流側からも流体等の逆流が生じていない場合において、弁体50は自身の弾性により止水部52が弁座37(流路形成部32の内周全周)に対して当接している。これにより、継ぎ手部材1内部の排水流路は止水部52において閉塞されており、下流側からの臭気や害虫等の逆流を防ぐことが可能となる。
設備機器等の使用により上流側より排水が継ぎ手部材1に対して排水が流入すると、当該排水が弁体50の側壁部53と当接する。この時、図4(a)に示すように、排水の水圧によって止水部52が弁座37より離間することで継ぎ手部材1内の排水流路が開放され、上記排水が下流側へと排出される。尚、上流側からの排水の流入が終了すると、弁体50は自身の弾性力によって復元し、止水部52が再び全周に亘り弁座37に当接することで排水流路を閉塞する。尚、図4においては、上流側からの排水の流れや、下流側から流体等が生じた際に弁体50に加わる応力を矢印にて示している(流体の流れ方向とは、流体の圧力つまり応力が作用する方向であるから、流体の流れ方向は事実上弁体に作用する応力の方向と同じものである)。
一方、継ぎ手部材1の下流側より流体等の逆流が生じた場合、当該逆流した流体が弁体50の側壁部53と下流側より当接する。この時、図4(b)に示すように、下流側より当接した流体等は側壁部53を流路形成部32の内周に向けて押し付けるように応力を加える。従って、止水部52は下流側からの流体等によって弁座37に強く押し付けられることから、排水流路の閉塞が維持される。
【0025】
上記第一実施形態にかかる本発明によれば、継ぎ手部材1の流入口11、流出口12とそれに接続される管体は円筒形状のため、継ぎ手部材1は管体の周面に沿って任意の方向に回転させた上で管体に接続させることができ、点検口14の方向も施工段階では自在に変更できる(前述のように、第一実施形態では点検口14は下方を向いて施工されている)。止水部52は付勢手段によって流路形成部32の内周全周に亘って当接していることから、止水部52横引き管に接続された際において、点検口14の方向が上方や下方や側方等、任意の向きとなるように配置されていても、常に流路形成部32と水密に当接し、
排水流路を閉塞可能である。又、点検口14の位置をどのような方向へ向けた場合であっても止水部52の下端である点Pが排水流路の底部に位置するとともに、止水部52の上流側には逆勾配となる段差や傾斜が存在しないため、止水部52の上流側に水残りが生じることを防ぐことが可能となる。又、固定部33は全周に亘り排水流路の内周から離間した位置に配置されていることから、固定部33に起因する水残りや排水流量の低下等を防ぐことができる。
【0026】
本発明の第一実施形態は以上であるが、本発明は上記第一実施形態の形状に限られるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の形状変更を加えても良いものである。例えば、第一実施形態において、弁体は自身にお弾性力を付勢手段としていたが、図5乃至図8に示す第二実施形態のように、付勢手段はスプリング6やその他の機構であっても良い。
【0027】
第二実施形態に係る継ぎ手部材1は図5に示すように、壁面に点検口14を備える継ぎ手本体10と、点検口14を閉塞する蓋部20と、蓋部20と連結されて継ぎ手本体10内に配置されるアダプター30と、アダプター30に取り付けられた弁体50から成る。又、継ぎ手部材1はその上流側と下流側において、略水平方向に延設する横引き管に対して接続されている。尚、図5においては上流側及び下流側に接続された横引き管を二点鎖線で記載している。
【0028】
継ぎ手本体10は半透明の硬質樹脂から成る筒状のケーシングであって、その上流側端部及び下流側端部において、管体が接続される流入口11と流出口12を備えており、内部には後述するアダプター30を収納する収納室13が形成されているとともに、壁面には点検口14が開口されている。尚、本実施形態において、継ぎ手本体10は点検口14が下方を向いている。
流入口11と流出口12は中心軸が合致する筒状であって、接着により接続される管体の外径とほぼ同径となる内径を有している。
点検口14は継ぎ手本体10の壁面に形成された円形の開口であって、その内周には内側に向けて凸部15が形成されている。凸部15は後述する蓋部20と係合する突起であって、等間隔に4箇所の凸部15が形成されている。又、点検口14は蓋部20及びアダプター30が挿入された際、凸部15の上方(収納室13側)おいて、アダプター30に取り付けられたパッキン40が点検口14の内周全周に亘って当接しており、蓋部20が取り付けられた状態において水密に閉塞されている。
収納室13は流入口11と流出口12の間であって、図5及び図6に示すように、点検口14が下方を向いて配置されている状態において、当該点検口14の直上となる位置に形成されている。又、収納室13は内部に当接面16とガイド部17を備えている。
当接面16は収納室13の上流側端部であって、流入口11との境界に形成されており、蓋部20及びアダプター30の挿入方向に対して傾斜し、図5に示すように、パッキン41を介してアダプター30と当接している。尚、当接面16は点検口14から対向する壁面(上方)に進むにつれて、流入口11から流出口12へ向かうようにして傾斜している。
ガイド部17は上記当接面16と対向する位置に形成された面であり、蓋部20及びアダプター30の挿入方向と同一方向に延設されている。
【0029】
蓋部20は上記点検口14の内径と略同径となる外径を備えた円形の閉塞部材であって、点検口14の内周と対向する蓋部20の外周には、上記凸部15と係合する溝部21が形成されている。溝部21は螺旋状に形成されており、溝部21内に凸部15が配置された状態で蓋部20を時計回りに回動させると、溝部21内を凸部15が摺動することにより、点検口14に固定される。又、蓋部20の上面(収納室13側)には係合部22が突設されている。係合部22は平面視円形であり、その端部において、全周に亘り外側に向けて突出するフランジ部分を有しており、アダプター30と回動可能に連結されている。尚、蓋部20は継ぎ手本体10に取り付けられた状態において、外側に把持部23が露出しており、使用者は当該把持部23によって手動で蓋部20を回動させることができる。
【0030】
アダプター30は上記蓋部20の係合部22に係合する爪部31と、収納室13内に配置された際に排水流路を形成する流路形成部32と、弁体50を固定する固定部33を備えている。又、アダプター30は爪部31の外側においてパッキン40を、流路形成部32の上流側端部にパッキン41をそれぞれ有している。
爪部31は内向きに突出する爪部分を有し、上記係合部22と係合している状態において、蓋部20とアダプター30が相対回転可能となるように部材を連結する。
流路形成部32は円筒状であって、アダプター30が収納室13内に配置された状態において、その上流側端部と下流側端部が流入口11及び流出口12とそれぞれ連続し、継ぎ手部材1内に排水流路を形成する。尚、流路形成部32の上流側端部には、上記当接面16と同一角度に傾斜する被当接面34と、取り付け時にガイド部17と当接する被ガイド部35を備えており、被当接面34には環状のパッキン41が取り付けられている。又、図7に示すように、流路形成部32は内周面から中心軸へ向けて支承部36が延設されており、当該支承部36によって固定部33が流路形成部32の中心軸上に配置されている。固定部33は流路形成部32の中心に形成され、弁体50を流路形成部32内の中心軸上において、流路形成部32の軸方向にのみ移動可能となるよう固定している。従って、点検口14の向きを任意の角度に傾斜させた場合であっても、常に固定部33と排水流路の底部との間は離間している。
尚、後述するように、流路形成部32は弁体50が取り付けられた状態において、弁体50の止水部52と全周に亘り当接する段状の弁座37を有し、無排水時及び下流側からの逆流発生時には排水流路が閉塞される。即ち、本実施形態において弁座37は排水流路の内周全周に亘り形成されている。
【0031】
弁体50はゴムやシリコン等の弾性材より成り、弁座37と全周に亘り当接する止水部52と、固定部33に対して流路形成部32の軸方向にのみ移動可能となるよう固定される被固定部54を有している。又、弁体50は固定部33と止水部52との間に配置されたスプリング6によって、常時弁座37へと付勢されている。
【0032】
以下に、本実施形態における継ぎ手部材1の組み立てについて詳述する。
【0033】
まず、蓋部20の係合部22に対してアダプター30の爪部31を押し付け、蓋部20とアダプター30を係合させる。この時、爪部31は係合部22のフランジ部分を乗り越え、蓋部20とアダプター30は相対回転可能に接続される。
次に、アダプター30の固定部33に弁体50を嵌着させる。この時、弁体50の止水部52が弁座37に対して全周に亘り当接する。
次に、上記蓋部20とアダプター30を点検口14から挿入し、溝部21内に凸部15が配置された状態で蓋部20を時計回りに回動させ、アダプター30と弁体50を収納室13内に配置することで組み立てが完了する。この時、継ぎ手本体10に形成されたガイド部17とアダプター30に形成された被ガイド部35によって、アダプター30の傾斜角度や挿入方向が誘導される。又、当接面16と被当接面34がそれぞれ挿入方向に対して傾斜していることにより、上記挿入時には挿入方向に加えられた応力の一部が当接面16と被当接面34が互いに近接する方向の応力へと変換される。これによって、当接面16と被当接面34がパッキン41を介して圧接されて水密状態となる。尚、挿入時に変換された力は当接面16と被当接面34が離間する方向にも働くが、ガイド部17によってアダプター30が当接面16より離間することが防止されているため、確実に水密状態を維持することが可能となる。
【0034】
上記組み立てが完了した状態において、流路形成部32は上流側及び下流側の排水流路と全周に亘り面一となり、滑らかに連続する円筒状の排水流路を形成する。
尚、上記継ぎ手部材1のメンテナンスを行う際には、蓋部20を反時計回りに回動させることで、点検口14より蓋部20とアダプター30と弁体50を取り出すことが可能となる。
【0035】
以下に、本実施形態における継ぎ手部材1の動作について詳述する。
【0036】
まず、継ぎ手部材1に対して上流側からの排水が無く、下流側からも流体等の逆流が生じていない場合において、弁体50はスプリング6の反発により止水部52が弁座37に対して全周に亘り当接している。これにより、継ぎ手部材1内部の排水流路は止水部52において閉塞されており、下流側からの臭気や害虫等の逆流を防ぐことが可能となる。
設備機器等の使用により上流側より排水が継ぎ手部材1に対して排水が流入すると、当該排水が弁体50の止水部52と当接する。この時、図8(a)に示すように、排水の水圧によって止水部52が弁座37より離間することで継ぎ手部材1内の排水流路が開放され、上記排水が下流側へと排出される。尚、上流側からの排水の流入が終了すると、弁体50はスプリング6の反発によって復元し、止水部52が再び全周に亘り弁座37に当接することで排水流路を閉塞する。尚、図7においては、上流側からの排水の流れや、下流側から流体等が生じた際に弁体50に加わる応力を矢印にて示している。(流体の流れ方向とは、流体の圧力つまり応力が作用する方向であるから、流体の流れ方向は事実上弁体に作用する応力の方向と同じものである)。
一方、継ぎ手部材1の下流側より流体等の逆流が生じた場合、当該逆流した流体が弁体50の止水部52と下流側より当接する。この時、図8(b)に示すように、下流側より当接した流体等は止水部52を弁座37に向けて押し付けるように応力を加える。従って、止水部52は下流側からの流体等によって弁座37に強く押し付けられることから、排水流路の閉塞が維持される。
【0037】
上記第二実施形態にかかる本発明によれば、止水部52は付勢手段によって止水部52の全周に亘って当接していることから、継ぎ手部材1が横引き管に接続された際において、点検口14の方向が上方や下方や側方等、任意の向きとなるように配置されていても、常に流路形成部32と水密に当接し、排水流路を閉塞可能である。又、点検口14の位置をどのような方向へ向けた場合であっても止水部52の下端である点Pが排水流路の底部に位置するとともに、止水部52の上流側には逆勾配となる段差や傾斜が存在しないため、止水部52の上流側に水残りが生じることを防ぐことが可能となる。又、固定部33は全周に亘り排水流路の内周から離間した位置に配置されていることから、固定部33に起因する水残りや排水流量の低下等を防ぐことができる。
【0038】
又、図9に示す第三実施形態のように、弁体50に対しリブ55を設け、剛性を高めることによって流体等の逆流時における弁体50の変形を防ぐよう構成しても良い。
【0039】
又、図10に示す第四実施形態のように、流路形成部32の一部に、下流側が拡径するように形成された段部を形成し、弁座37として止水部52が当接するように構成しても良い。当該第四実施形態においては、側壁部53の一部が止水部52として機能し、弁座37と当接する。このように形成することにより、成形状況等の理由により弁体50の形状が所定よりも大きい、又は小さい場合であったとしても、当該形状の差に左右されず、確実に止水部52を弁座37の全周に亘り当接させることが可能となる。
【0040】
又、点検口14は流路形成部32又は継ぎ手本体10の側面にのみ形成される構造に限られるものではない。即ち、図11に示す第五実施形態のように、点検口14が流路形成部32の軸方向に形成されている等、点検口14が形成される位置は継ぎ手部材1が取り
付けられる排水配管や施工箇所によって種々の変更が加えられても良い。尚、図11に記載された第五実施形態は横引き管に接続された継ぎ手部材1の上半分を切断した断面図であり、上流側及び下流側の管体は横引き管である。そして、図11(a)、図11(b)に示すように、継ぎ手部材1は管体のレイアウトを変更することにより点検口14の向きを変更させることが可能であり、当該点検口14の向きに関わらず排水流路を閉塞可能となっている。
【0041】
又、図12に示す第六実施形態のように、継ぎ手部材1に偏芯管等を取り付けても良い。これにより、弁体50に上流側からの排水による水圧を付与し易くなり、弁体50の動作が更に安定し、水残りを防ぐことが可能となる。尚、図12においては上流側にのみ偏芯管を取り付けているが、下流側にも偏芯管を取り付けても良い。又、偏芯管は継ぎ手部材1と一体に形成していても良い。
【0042】
本発明の実施形態は以上であるが、図13に示すように、本発明の継ぎ手部材1が空調機器100から連続する排水配管に取り付けられた場合には、点検口14が下方に向くように取り付けを行うことにより、階下からのメンテナンスが容易となる。即ち、上記空調機器100から連続する排水配管に継ぎ手部材1が取り付けられている場合、作業者は階下の天井に設けられた点検用の蓋110を取り外し、下方から天井裏に配置された継ぎ手部材1メンテナンスを行う。この時、本発明の継ぎ手部材1を、点検口14が下方を向くように取り付けることにより、容易に蓋部20を取り外して内部の清掃等を行うことが可能となる。
又、図14に示すように、継ぎ手部材1が冷凍冷蔵庫200から連続する排水配管に取り付けられた場合には、点検口14が水平方向を向くように取り付けを行うことにより、側方からのメンテナンスが容易となる。即ち、上記冷凍冷蔵庫200から連続する排水配管に継ぎ手部材1が取り付けられている場合、作業者は冷凍冷蔵庫200の下方より継ぎ手部材1のメンテナンスを行う。この時、本発明の継ぎ手部材1を、点検口14が側方を向くように取り付けることにより、継ぎ手部材1の上方に配置された冷凍冷蔵庫に干渉することなく、内部の清掃等を行うことが可能となる。
尚、上記各実施形態における継ぎ手部材1は弁体50のみによって逆流を防止しており、封水を使用していないことから、蓋部20の取り外しの際に使用者に排水がかかったり、周囲が排水によって汚れてしまったりすることはない。
又、上記各実施形態における継ぎ手部材1は、横引き配管のみ接続されるものではない。即ち、略垂直方向に排水流路が形成された縦配管に接続されても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 継ぎ手部材
10 継ぎ手本体
11 流入口
12 流出口
13 収納室
14 点検口
15 凸部
16 当接面
17 ガイド部
20 蓋部
21 溝部
22 係合部
23 把持部
30 アダプター
31 爪部
32 流路形成部
33 固定部
34 被当接面
35 被ガイド部
36 支承部
37 弁座
40 パッキン
41 パッキン
50 弁体
51 頂点部
52 止水部
53 側壁部
54 被固定部
55 リブ
6 スプリング
100 空調機器
110 蓋
200 冷凍冷蔵庫
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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