(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】コインホッパ
(51)【国際特許分類】
G07D 1/00 20060101AFI20220630BHJP
A63F 9/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
G07D1/00 Z
A63F9/00 512B
(21)【出願番号】P 2019153330
(22)【出願日】2019-08-26
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000116987
【氏名又は名称】旭精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 元晴
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-235747(JP,A)
【文献】特開2007-042071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16
G07D 9/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コインを貯留する貯留容器と、ディスクを回転させることにより前記コインを搬送する環状の搬送路と、前記ディスクの回転方向に回転し、前記貯留容器に貯留された前記コインを撹拌する撹拌部材と、前記搬送路から前記コインを排出する排出口とを備えたコインホッパにおいて、
前記撹拌部材を回転させるモーターから前記撹拌部材へ動力を伝達する経路の途中に接続手段を備え、
前記接続手段は、前記撹拌部材の回転が阻害された場合に、前記ディスクの回転は継続させながら、予め定められた経路に従って前記撹拌部材を前記ディスクに対して相対的に移動させる案内部を有
し、
前記接続手段は、分かれて配置された前記撹拌部材の側と前記モーターの側とを相互に付勢する付勢手段を備えることを特徴とするコインホッパ。
【請求項2】
前記案内部は、前記ディスクに対する接離方向および前記回転方向を含む方向に前記撹拌部材を案内する第1案内部が前記撹拌部材の側に配置され、前記第1案内部に対応して第2案内部が前記モーターの側に配置されており、
前記付勢手段は、前記第1案内部と前記第2案内部を相互に付勢することを特徴とする請求項1に記載のコインホッパ。
【請求項3】
前記接続手段は、前記撹拌部材の前記回転方向に対して交差する方向への移動を所定範囲内に規制する規制手段をさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコインホッパ。
【請求項4】
コインを貯留する貯留容器と、ディスクを回転させることにより前記コインを搬送する環状の搬送路と、前記ディスクの回転方向に回転し、前記貯留容器に貯留された前記コインを撹拌する撹拌部材と、前記搬送路から前記コインを排出する排出口とを備えたコインホッパにおいて、
前記撹拌部材を回転させるモーターから前記撹拌部材へ動力を伝達する経路の途中に接続手段を備え、
前記接続手段は、前記撹拌部材の回転が阻害された場合に、前記ディスクの回転は継続させながら、予め定められた経路に従って前記撹拌部材を前記ディスクに対して相対的に移動させる案内部を有し、
前記接続手段は、前記撹拌部材の前記回転方向に対して交差する方向への移動を所定範囲内に規制する規制手段をさらに有することを特徴とす
るコインホッパ。
【請求項5】
前記撹拌部材の回転が阻害された場合は、前記撹拌部材が前記ディスクに対して相対的に回転すると共に、前記撹拌部材が前記ディスクに対して離れる方向に移動し、前記撹拌部材と前記ディスクの相対的な移動の距離が所定距離を超えると前記撹拌部材が前記ディスクに対して近づく方向に移動することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のコインホッパ。
【請求項6】
コインを貯留する貯留容器と、ディスクを回転させることにより前記コインを搬送する環状の搬送路と、前記ディスクの回転方向に回転し、前記貯留容器に貯留された前記コインを撹拌する撹拌部材と、前記搬送路から前記コインを排出する排出口とを備えたコインホッパにおいて、
前記撹拌部材を回転させるモーターから前記撹拌部材へ動力を伝達する経路の途中に接続手段を備え、
前記接続手段は、前記撹拌部材の回転が阻害された場合に、前記ディスクの回転は継続させながら、予め定められた経路に従って前記撹拌部材を前記ディスクに対して相対的に移動させる案内部を有し、
前記撹拌部材の回転が阻害された場合は、前記撹拌部材が前記ディスクに対して相対的に回転すると共に、前記撹拌部材が前記ディスクに対して離れる方向に移動し、前記撹拌部材と前記ディスクの相対的な移動の距離が所定距離を超えると前記撹拌部材が前記ディスクに対して近づく方向に移動することを特徴とするコインホッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コインを一枚ずつ排出するコインホッパに関する。
【背景技術】
【0002】
流通貨幣である硬貨、ゲーム機等で使用されるメダルやトークン等の代用貨幣などの円盤状体、あるいは八角形等の多角形状の板状体の硬貨、メダル、トークン等を、一枚ずつ排出するコインホッパが知られている。これら硬貨、メダル、トークン等を以下コインと称する。
【0003】
例えば、コインホッパは、コインを貯留する貯留容器の下部に、貯留容器から供給されるコインを一枚ずつ保持する開口部を複数備えたディスクが配置されている。そのディスクを回転させ、開口部にコインを入れ、コインを保持した状態で環状の搬送路に沿って搬送する。搬送路に配置された排出機構により、必要に応じてディスクに保持されたコインの移動方向を変え、排出口から排出する。例えば、可動式のピン、ローラー、板などを駆動制御し、搬送路から排出口方向へ導くようにコインの移動方向を変えて排出する。この様なコインホッパとして、特開2019-8523号公報の円板状体払出装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コインホッパは、コインを貯留容器にバラ積みして使用する。貯留容器内のコインは、ディスクの回転に応じて撹拌され、ディスクの開口部に入り、保持され、必要に応じ排出口に排出される。
【0006】
しかし、バラ積みされたコインの下方に積まれたコインだけが排出され、上方に積まれたコインがブリッジ状に残ってしまう問題が生じることがある。コインが排出不能に貯留容器内に残るため、コインが在るにもかかわらず、払い出しできない問題が生じる。この問題を解決するため、ディスク上方に撹拌部を備え、ディスクと共に撹拌部を回転させ、コインを撹拌する装置が考えられている。しかし、貯留容器と撹拌部との間に、コイン同士が重なりあって挟まってしまい、ディスクおよび撹拌部の回転を阻害する問題が生じることがある。この様な問題によって、最悪の場合に、ディスクおよび撹拌部の駆動部が破損する問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコインホッパは、コインを貯留する貯留容器と、ディスクを回転させることにより前記コインを搬送する環状の搬送路と、前記ディスクの回転方向に回転し、前記貯留容器に貯留された前記コインを撹拌する撹拌部材と、前記搬送路から前記コインを排出する排出口とを備えたコインホッパにおいて、前記撹拌部材を回転させるモーターから前記撹拌部材へ動力を伝達する経路の途中に接続手段を備え、前記接続手段は、前記撹拌部材の回転が阻害された場合に、前記ディスクの回転は継続させながら、予め定められた経路に従って前記撹拌部材を前記ディスクに対して相対的に移動させる案内部を有し、前記接続手段は、分かれて配置された前記撹拌部材の側と前記モーターの側とを相互に付勢する付勢手段を備えることを特徴とする。また、本発明のコインホッパは、コインを貯留する貯留容器と、ディスクを回転させることにより前記コインを搬送する環状の搬送路と、前記ディスクの回転方向に回転し、前記貯留容器に貯留された前記コインを撹拌する撹拌部材と、前記搬送路から前記コインを排出する排出口とを備えたコインホッパにおいて、前記撹拌部材を回転させるモーターから前記撹拌部材へ動力を伝達する経路の途中に接続手段を備え、前記接続手段は、前記撹拌部材の回転が阻害された場合に、前記ディスクの回転は継続させながら、予め定められた経路に従って前記撹拌部材を前記ディスクに対して相対的に移動させる案内部を有し、前記接続手段は、前記撹拌部材の前記回転方向に対して交差する方向への移動を所定範囲内に規制する規制手段をさらに有することを特徴としてもよい。また、本発明のコインホッパは、コインを貯留する貯留容器と、ディスクを回転させることにより前記コインを搬送する環状の搬送路と、前記ディスクの回転方向に回転し、前記貯留容器に貯留された前記コインを撹拌する撹拌部材と、前記搬送路から前記コインを排出する排出口とを備えたコインホッパにおいて、前記撹拌部材を回転させるモーターから前記撹拌部材へ動力を伝達する経路の途中に接続手段を備え、前記接続手段は、前記撹拌部材の回転が阻害された場合に、前記ディスクの回転は継続させながら、予め定められた経路に従って前記撹拌部材を前記ディスクに対して相対的に移動させる案内部を有し、前記撹拌部材の回転が阻害された場合は、前記撹拌部材が前記ディスクに対して相対的に回転すると共に、前記撹拌部材が前記ディスクに対して離れる方向に移動し、前記撹拌部材と前記ディスクの相対的な移動の距離が所定距離を超えると前記撹拌部材が前記ディスクに対して近づく方向に移動することを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コインホッパの貯留容器内で撹拌部材を回転させることで、貯留容器内のコインを好適に撹拌でき、コインがブリッジ状に残ることを低減乃至防止することができる。また、撹拌部材の回転が阻害された場合であっても、コインの撹拌を継続すると共に駆動部への影響を低減乃至防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】
図3は、コインホッパの貯留容器を取り除いた斜視図である。
【
図4】
図4は、コインホッパの動作を説明する概略断面図である。
【
図6】
図6は、突出部側接触部を説明する平面図である。
【
図7】
図7は、突出部側接触部を説明する断面図である。
【
図8】
図8は、接触部の第1の例を説明する図である。
【
図9】
図9は、接触部の第2の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るコインホッパの斜視図である。
図2は、本発明の実施形態に係るコインホッパの側面図である。
図1、
図2を用いて、まず、コインホッパの概要を説明する。
【0012】
コインホッパ1は、コインを貯留する貯留容器2、コインの搬送路8、コインを搬送するディスク4、ディスク4の駆動装置や搬送路などを格納するベース3、貯留容器2内に貯留されたコインを撹拌する撹拌部材5を含み構成されている。
【0013】
撹拌部材5はディスク4の回転方向に回転駆動され、貯留容器2内のコインを撹拌する。撹拌部材5は、例えばコインとの接触面積を大きくし、より多くのコインを撹拌し、撹拌性を良くする撹拌翼6を備える。撹拌翼6は、1つでも複数配置してもよい。また、撹拌部材5、撹拌翼6は、樹脂または金属製の剛体で構成することで、コインを撹拌する。また、撹拌翼6を大きくすると撹拌性は向上するが、回転駆動のための負荷の増大、撹拌翼6と貯留容器2間にコインが挟まりやすくなる。
【0014】
ディスク4は、貯留容器2とベース3との間に配置されている。また、貯留容器2は、上部が開口している。この上部の開口からコインを投入できる。貯留容器2の底部にディスク4を臨む略円形の開口部を備えている。該開口部方向へ向かい底面7が傾斜し、略漏斗状に形成され、バラ積みされたコインが、ディスク4方向へ落ちる構成となっている。すなわち、底面7の傾斜により、載置されるコインが自重によって自然滑落するよう設定されている。貯留容器2にバラ積みされたコインは、この斜面に沿ってディスク4方向に案内され、底部の開口部からディスク4へ供給されることになる。貯留容器2の底部の開口の径は、ディスク4の径より小さい。ディスク4が貯留容器2とベース3に挟まれ、抜けないように拘束できる。
【0015】
コインホッパ1の側面にコインを1枚ずつ排出する排出口9が設けられている。また、ディスク4を、水平方向に対して傾斜するように配置することで、ディスク4の開口部へコインが入りやすくしている。また、ディスク4が傾斜して配置されていても、ディスク4へコインが供給されやすいように対応して貯留容器2の底面に緩急を設けている。例えば、
図2の紙面の右方側の傾斜が急であり、左方側が緩傾斜となっている。傾斜角の差を設けることで、撹拌部材5を回転させた場合に、コインの浅深により撹拌性が向上する。
【0016】
図3は、コインホッパの貯留容器を取り除いた斜視図である。ベース3には、貯留容器の2の底面の開口部に対向する位置に、略円形の開口を有する有底の凹部12が配置されている。凹部12の底面には、コインを搬送する搬送路8が形成されている。コインは、一方の面が搬送路8に接触し、ディスク4によって環状に摺動しながら搬送される。貯留容器2はベース3に配置された取り付け構造部13によって固定される。
【0017】
撹拌部材5の先端には貫通孔の先端側の開口である開口部10が形成されている。撹拌部材5の先端側には、撹拌翼6が回転中心に対して対象に配置されている。ここでは撹拌翼6は2枚の例を示しているが、1枚でも3枚以上の複数枚でもよい。撹拌翼6を撹拌部材5に備えることで、撹拌性を向上させている。
【0018】
ディスク4の中央部であり、撹拌部材5との間に突出部16を備える。突出部16は、ディスク4と一体である。突出部16はディスク4と共に回転する。また、突出部16を別体に構成し、ディスク4に固定してもよい。また、ディスク4を回転駆動させる駆動手段に固定し、ディスク4と共に回転するようにしてもよい。また、ディスク4及び突出部16もコインと接触するので撹拌する機能を持つ。
【0019】
凹部12には、ディスク4が回転可能かつ着脱可能に装着されている。ディスク4は矢印で示される回転方向R1方向に回転する。
【0020】
コインホッパ1は、貯留容器2にバラ積み状態で貯留されたコインを、回転するディスク4によって1枚ずつに分離して、ベース3に設けられた排出口9から一定の姿勢で一枚ずつ排出する機能を有している。すなわち、ベース3の端部には、排出口9が形成されている。排出口9は、凹部12と接続され、凹部12の搬送路8に沿って搬送されるコインを1枚ずつ排出する。
【0021】
凹部12と排出口9との間には、操出装置(不図示)と案内部材14とが配置されている。操出装置はディスク4の回転方向R1下流側に配置され、案内部材14はディスク4の回転方向R1上流側に配置されている。操出装置と案内部材14とは、その間をコインが通過可能に配置されている。
【0022】
案内部材14は、板状の部材で構成され、側面が凹部12の側壁に支持されながらディスク4の通孔11の側面に押動されるコインを、排出口9に向けて案内する。
【0023】
操出装置は、ローラー15と、ローラー15が固定されたレバー(不図示)と、ローラー15を案内部材14に向けて付勢する付勢部材(不図示)と、当該レバーの動きを検出するセンサー(不図示)から構成されている。操出装置のレバー、付勢部材およびセンサーはベース3の下面側に配置され、ローラー15はベース3に形成された円弧状の貫通孔に挿入され、ベース3の上面側に突出して配置されている。ローラー15は、案内部材14との間の距離が、使用されるコインの内で直径が最小のコインの直径よりわずかに小さく設定された位置と、使用されるコインの内で直径が最大のコインの直径よりわずかに大きく設定された位置との間を移動可能に構成されている。そして、案内部材14と協働してコインを排出口9に向けて繰り出す。
【0024】
なお、本実施の形態では、ベース3の上面に形成した開口が略円形の凹部12にディスク4を装着しているが、これに限定されるものではなく、例えば、円形状の孔を形成した板状部材をベース3上に配置して、ディスク4を装着する凹部を構成してもよい。また、貯留容器2の下部開口の下端の直径をディスク4の直径より大きく設定して、下部開口の下端の内壁を凹部の側壁として構成することもできる。
【0025】
また、ディスク4の直径が大きく、コインの直径が小さいと撹拌性が良くなる。しかし、ディスクの直径が大きくなると装置が大型化してしまう問題があるので、あまり大きくはできない。ディスク4の直径が小さく、コインの直径が大きいと、撹拌性が低下し、撹拌する手段が必要になる。しかし、コインが挟まり易くなってしまう問題が生じる。好適に撹拌することができるように、ディスク4の直径がコインの直径の2.1倍~5.0倍、より好ましくは2.1倍~3.5倍の場合に、撹拌部材5が配置されることが好ましい。
【0026】
図4は、コインホッパの動作を説明する概略断面図である。
【0027】
モーター30の動力をディスク4に伝えることで、ディスク4を回転させる。モーター30の回転軸31には第1の歯車32が接続されている。ディスク4、突出部16および撹拌部材5が接続される撹拌軸33には第2の歯車34が接続されている。モーター30の回転を撹拌軸33に伝達するために第1の歯車32と第2の歯車34が接続されている。また、歯車の数、歯の数を変えることで、所望の減速比にして用いる。すなわち、モーター30の回転を、所望の減速比にして撹拌軸33に伝達し、ディスク4を回転させている。
【0028】
ベース3には、ベース3の内外を貫通する貫通孔42が設けられている。貫通孔42に撹拌軸33が挿通されている。
【0029】
撹拌軸33には、ピン36が、撹拌軸33の回転中心L1に対して直角に突出して設けられている。撹拌軸33が矢印で示す回転方向R1方向に回転したときに、ピン36がディスク4に設けられた当接面37に当接することで、ディスク4が回転する。当接面37は、回転方向R1の進行方向に向かいベース3から離れる方向に斜面が形成されている。ディスク4には、当接面37の斜面の角度に応じて、回転方向R1と搬送路8方向に力が働く。搬送路8方向に力を加えながら、回転することで、ディスク4の回転時の搬送路8に対する接離方向の揺れを防止できる。例えば、撹拌部材5とディスク4が接続されている場合に、コインが撹拌部材5またはディスク4と接触するので、ディスク4に様々な方向の力が加わることになる。ディスク4を搬送路8方向に押さえ付ける力が働くので、揺れ等の外乱を防止乃至低減させながら回転させることができる。これにより、ディスク4と搬送路8間は一定の間隔となるので、コインを搬送路8に安定して保持させ続けることができる。
【0030】
ピン36は、好ましくは、回転中心L1に対して反対側にも設ける。さらに好ましくは120°おきに3カ所、または90°おきに4カ所設ける。ディスク4に均等に力を加えることで、バランスをとり、回転むらや搬送路8との間の接離方向の揺れを低減できる。
【0031】
撹拌部材5は、撹拌軸33、ディスク4あるいは突出部16に接続手段35によって接続される。撹拌部材5がコインから受ける影響に応じて、撹拌軸33の回転の伝達を遮断する。これにより、撹拌部材5の回転が阻害された場合であっても、装置の損傷を防ぐことができる。撹拌部材5はディスク4に接続されても、撹拌軸33に接続されても、突出部16に接続されていてもよい。また、ディスク4に対して独立して駆動する構成であってもよい。この例では、ディスク4の回転と共に撹拌部材5を回転させる構成としている。しかし場合によっては、ディスク4の回転の有無によらずに、撹拌部材5が回転することで、貯留容器2内のコインを撹拌する構成であってもよい。
【0032】
図5は、コインホッパの断面図である。また、
図5は、
図2のA-A線に沿った断面図である。
【0033】
ベース3の凹部12には、その中心に貫通孔42を有している。貫通孔42には、ディスク4を駆動する駆動手段の一部である撹拌軸33が挿通されている。
【0034】
搬送路8上のディスク4に設けられた通孔11に対応する位置に、コイン40が保持されている。搬送路8上のコイン40は、通孔11の側面の搬送当接部41によって回転方向R1へ押され、搬送される。
【0035】
ベース3の下部には、撹拌軸33に接続される第2の歯車34が備わる。第2の歯車34は、モーター30に歯車、ベルトなどで接続され。モーター30の回転を撹拌軸33へ好適な減速比で伝える。
【0036】
ディスク4の上面に略円錐状の突出部16が一体に形成されている。また突出部16はディスク4に固定された別体の部材でもよい。突出部16は、ディスク4と共に回転する。ディスク4および突出部16の回転中心を含む部分には、貫通孔44が形成されている。貫通孔44は、図の下方すなわちコインの搬送路8方向の内径が大きく、貯留容器2の方向の内径が小さい構造となっている。貫通孔44は、内径が異なる部分があり、またその接続部分には段差45が備わる。
【0037】
この貫通孔44の径の大きい方から、つば付きブッシュ43を挿入する。ブッシュ43のつばは段差45により行き止まる。ブッシュ43の先端には凹部が形成されており、そこに、ねじ溝が設けられている。ブッシュ43は、貫通孔42を突き抜け、突出部16から突出する。
【0038】
突出部16の先端が一部被るように撹拌部材5が配置される。撹拌部材5の先端部から末端部に向かい貫通孔46が形成されている。貫通孔46は、先端部方向の内径が大きく、末端方向の内径が狭く、中央の内径がそれら内径の中間の内径である3段の段差構造となっている。
【0039】
つば付きブッシュ43は、突出部16の貫通孔44から突出し、撹拌部材5の貫通孔46に挿入される。撹拌部材5の貫通孔46の中央部分にバネ49がブッシュ43の外側を覆うように挿入される。バネ49は圧縮バネである。
【0040】
撹拌部材5の貫通孔46の先端側方向の開口部10からワッシャ48を挿入し、さらにネジ47を挿入する。ワッシャ48の外径を、開口部10の径より小さく、貫通孔46の中央部の径より大きく、バネ49の径より大きくし、ネジ47をつば付きブッシュ43の凹部に回転させて挿入し、固定する。また、ブッシュ43のつばが段差45で止まり、ワッシャ48がバネ49に付勢さ、ネジ47でブッシュ43に固定される。バネ49が縮んだ状態で、貫通孔46内から抜け出ることが無いように配置される。ワッシャ48とネジ47は一体型のネジでもよい。
【0041】
突出部16の段差45にブッシュ43のつばが当接し、ワッシャ48がネジ47によって止められているので、バネ49は、撹拌部材5をブッシュ43のつば方向、言い換えれば突出部16方向に付勢する。これによって、撹拌部材側接触部51と突出部側接触部50とが相互に押圧する状態となる。
【0042】
また、ワッシャ48は、バネ49によって開口部10方向に付勢される。ワッシャ48が最も開口部10に近づける位置が、撹拌部材5のディスク4から離れる方向の限界位置となる。このような機構によって、撹拌部材5が外れずに移動できる所定範囲が決められる。すなわち撹拌部材5の移動を規制する規制手段ともなっている。
【0043】
突出部16には、撹拌部材5と接触する突出部側接触部50が備わり、撹拌部材5には、突出部16と接触する撹拌部材側接触部51が備わる。突出部16と撹拌部材5は、突出部側接触部50と撹拌部材側接触部51により接触する。突出部側接触部50と撹拌部材側接触部51は各々の接触位置応じて、撹拌部材5のディスク4に対しての位置が可変する構成となっている。
【0044】
突出部16と撹拌部材5とに、付勢手段によって、お互いに近づく方向かまた、別の機構を用いれば離れる方向に力が加わる様にしても良い。この例では、突出部16に対して撹拌部材5が近づく方向に力が加わっている。言い換えれば、撹拌部材側接触部51と突出部側接触部50とがお互いに付勢している。例えば、つば付きブッシュ43、バネ49、突出部16の貫通孔44、段差45、撹拌部材5の貫通孔46、ワッシャ48、ネジ47によって付勢する機構を構成している。この様な付勢手段、突出部側接触部50、撹拌部材側接触部51によって接続手段35を形成している。
【0045】
撹拌部材5の裾の部分は、裾方向に行くに従い、開口が広がる形状をしている。突出部16は、この撹拌部材5の形状に対応した形状をしている。これにより、撹拌部材5が上下に移動しても、コインが突出部16と撹拌部材5の間に挟まり難くなっている。
【0046】
また、突出部16の撹拌部材5の被らない部分は、被る部分に比べて傾斜が緩やかになっている。この部分もコインと接触するので、貯留容器2との間にコインが挟まり難くして回転の阻害が生じないようにしている。
【0047】
なお、
図5は、撹拌部材5の裾の部分が、突出部16の緩斜面部分に当接している状態の図であり、突出部16へ撹拌部材5が最も近づいた状態を示している。
【0048】
また、モーター30によってディスク4および突出部16と、撹拌部材5とが回転する。撹拌部材5は接続手段によって接続され、この接続手段によって撹拌部材5の回転が阻害された場合であっても、ディスク4および突出部16の回転に影響を与えないようにしている。
【0049】
図6は、突出部側接触部を説明する平面図である。
図7は、突出部側接触部を説明する断面図である。
図7は、
図6の回転部材のD-D線に沿った断面図である。
図6、
図7を用いて突出部側接触部50を説明する。また、撹拌部材側接触部51は、突出部側接触部50に対応した形状を有する。ディスク4には通孔11、突出部16、貫通孔44が形成されている。ディスク4の中央部に突出部16が配置され、突出部は、先端に向かい外径が小さくなる形状となっている。撹拌部材5が覆い被さる位置は突出部16の裾の部分より傾斜が急に形成されている。また、突出部16の先端部分に突出部側接触部50が形成されている。突出部側接触部50は、貫通孔44の開口の周囲を8等分し、各々の位置に同形の突起状の構造物によって構成されている。
【0050】
図8は、接触部の第1の例を説明する図である。突出部側接触部50と撹拌部材側接触部51の概略の構成図である。
図8(a)は、突出部側接触部50と撹拌部材側接触部51が最も近接している状態を説明する図である。
図8(b)は、突出部側接触部50と撹拌部材側接触部51とが接触しながら移動する途中の状態を説明する図である。
図8(c)は、突出部側接触部50と撹拌部材側接触部51が最も離れている状態を説明する図である。
【0051】
例えば、撹拌部材5と貯留容器2との間にコインが重なって挟まり、撹拌部材5の回転が停止し、突出部16がディスク4と共に矢印で示される回転方向R1方向に回転した場合の状態の遷移を表している。
図8(a)は停止直後の初期状態を表し、
図8(b)、
図8(c)は時間が経過した状態を示している。
【0052】
突出部側接触部50には、第1傾斜部63と第1垂直部65を備える凸部が備わる。突出部16の回転中心を中心として、突出部16の上面を8分割し、各分割部に凸部を設けている。図は、凸部を側面から見た概略図である。ディスク4から離れる方向に凸部の頂点が配置されている。この形状に対応した形状の凸部を撹拌部材側接触部51に設けている。すなわち、第2傾斜部64と第2垂直部66である。これらは嵌め合うことができる。
【0053】
突出部側接触部50と撹拌部材側接触部51はバネ49によってお互いに他方の接触部の方向に付勢されている。この付勢力と、摩擦力による力によって撹拌部材5と突出部16は接続され、一体となり、矢印で示される回転方向R1で示される回転方向に連れ回る。この状態が
図8(a)の状態である。
【0054】
例えばコインが重なり貯留容器2と撹拌部材5の間に挟まり、撹拌部材5に回転を阻害する力が働いた場合に、撹拌部材5の回転が停止し、突出部16が回転方向R1で示される回転方向に回転する。付勢力により増加した摩擦力に抗する方向に所定の力以上がかかった場合に、第1傾斜部63を第2傾斜部64が摺動し、撹拌部材5が突出部16から離れる方向に、例えば両矢印61で示す距離、移動する。このとき回転方向にも相対的に移動することになる。この状態が
図8(b)の状態である。
【0055】
また、バネ49のバネ力に応じて、または、第1傾斜部63、第2傾斜部64の形状、表面の粗さ、材質などで摩擦力を変えることができる。所望の好適な摩擦力を設定することができる。また、撹拌部材5の回転が停止した場合に、モーター30や駆動の伝達経路の部材に影響が出ないように、また回転が停止していないのに摺動して段差を超えてしまうことが無いようにバネ49を設定する必要がある。
【0056】
摩擦力に抗する方向に所定の力が加わり、所定時間経過すると、第1傾斜部63と第1垂直部65の交点と第2傾斜部64と第2垂直部66の交点が接する位置まで到達する。すなわち、突出部16が回転方向R1で示される回転方向に回転することで、到達する。この状態が
図8(c)の状態である。さらに摩擦力に抗する方向に力が加わった場合に、
図8(a)の状態に戻る。すなわち、摩擦力に抗する方向に所定の力が所定時間加わると、初期の状態に遷移することになる。このとき、バネ49を含む付勢手段の力によって、撹拌部材5が突出部16の方向に移動する。すなわち、回転方向R1に対して、突出している部分の頂点を超えて、回転方向R1に交差する方向に、勢いよく移動し、初期の位置と同等の位置に戻る。同心円状に配置された同様の形状の8つの凸部により構成されているので、頂点を超えて移動した位置はどれも同様の位置と見なすことができる。
【0057】
この様に、撹拌部材5が受ける力に応じて、撹拌部材5と突出部16の両者が同一の方向に移動するか、突出部16のみが移動するかが決まり、突出部16のみが移動する場合は、撹拌部材5と、突出部16あるいはディスク4とが相対的に移動することになる。また、撹拌部材5の移動が停止して、ディスク4または突出部16の回転が所定距離、すなわち、回転速度が一定ならば所定時間回転が行われると、凸部の頂点を超えて撹拌部材5が、突出部16あるいはディスク4へ近づく方向へ移動することになる。
【0058】
また、第1垂直部65あるいは第2垂直部66の高さは、両矢印60、または両矢印62で示される距離と同等である。撹拌部材5の回転が阻害された状態で、突出部16が第1傾斜部63あるいは第2傾斜部64の回転方向の距離を移動する毎に、この両矢印60あるいは両矢印62で示される距離だけ回転方向に垂直な方向に移動することになる。
【0059】
回転方向に加え、回転方向に交差する方向に、撹拌部材5と突出部16を相対的に移動させることができる。このとき、双方の接触部の形状に応じて、一方を第1の案内部、他方を第2の案内部とすれば、第1の案内部に第2の案内部が案内されることに他ならない。また、ディスク4は、突出部16とは反対の搬送路8方向に力を加えられながら回転しているので、撹拌部材5の回転方向に交差する方向に力が加わったとしても、その影響は、及ばないか低減されたものになる。仮に、ディスク4に搬送路8方向に力が加えられていなければ、ディスク4の揺らぎ方が顕著になると思われる。
【0060】
また、第1垂直部65あるいは第2垂直部66の高さは、貯留容器に貯留されるコインの厚み未満にすることが好ましい。撹拌部材5の垂直方向の移動距離に相当するので、コインが挟まらない距離にすることが好ましい。また、この垂直方向の移動によって、コインに回転方向以外の方向に、強い力を加えることができるので、この移動距離は長い方が良い。好適に振動を与え、挟まったコインを移動させることができる。コインの厚みに対して5%程度の距離の垂直方向の移動があれば、バラ摘みされたコインに影響を与えられるが、好ましくは、使用するコインの厚みの30%以上、さらに好ましくは50%以上の距離の移動を生じさせ、コインに強く大きな衝撃を与えることである。
【0061】
この様な構成は、突出部側接触部50と撹拌部材側接触部51は、撹拌部材5が移動する経路の案内部となっているとも言える。例えば、突出部側接触部50が第1案内部として、撹拌部材側接触部51が第1案内部に対応した形状を備える第2案内部として、撹拌部材5の移動を案内する。
【0062】
バネ49と接触摩擦により、回転方向に抗する方向に所定の力が加わるまでは、撹拌部材5が突出部16、ディスク4と共に回転する。しかし所定の力を超える力が加わると、撹拌部材5の回転が停止するなど阻害され、突出部側接触部50と撹拌部材側接触部51の形状に沿って定められた経路で移動する。すなわち、撹拌部材5の回転が妨げられた場合に、撹拌部材5は、案内部に従ってディスク4に対して相対的な移動経路に沿って移動することに他ならない。また、突出部側接触部50と撹拌部材側接触部51の形状に基づいて、すなわち、逆方向に回転し第1垂直部65と第2垂直部66が当接するとそれ以上は逆方向には回転できないようになっている。
【0063】
図9は、接触部の第2の例を説明する図である。円筒カムを用いた例を示す概略図である。
【0064】
この場合に突出部側接触部50を円筒状にして、溝70を設ける。撹拌部材側接触部51を従動側としピン72を設ける。この溝70に撹拌部材側接触部51のピン72を差し込み、突出部側接触部50と撹拌部材側接触部51とを接触させる。撹拌軸33の回転中心L1としたときの回転方向R1に突出部16を回転させると、溝70の形状に応じて、撹拌部材側接触部51が移動する。このとき、付勢手段としてバネ71を設け相互に引く力を与える。直径方向にピン72を設け、溝70を対称になるように設けている。2カ所の対称な位置で接するので、お互いに傾かないようにできる。この様に構成することで、ブッシュ等を不要とできるので、突出部16と撹拌部材5とを相互に付勢する機構の構成部品を削減することもできる。
【0065】
このような構成で、撹拌部材5の回転が妨げられた場合に、突出部側接触部50と撹拌部材側接触部51とにより、撹拌部材5がディスク4に対して相対的な移動経路が定められ、その経路に沿って移動させることができる。言い換えれば、溝70によって定められる移動経路は、撹拌部材5の移動範囲を規制することになり、移動の規制手段としても機能する。また、このようにしても、付勢手段によって撹拌部材5を、突出部16の接離方向へ移動させることができる。このように、円筒カムを用いて案内部を構成することもできる。
【0066】
溝70の形状を、回転方向R1に対する溝の傾斜、長さ、角度などを変えることで、一様でない移動を撹拌部材5にさせることが可能となる。ここでは、ピン72として説明したが、ピンの代わりにローラーなども用いることができる。
【0067】
図10は、撹拌翼の第2の例を説明する図である。撹拌部材5の撹拌能力を向上させるには、コインに接する面積を大きくすれば良い。ただし、大きくすれば、貯留容器2との間にコインが挟まる可能性も高くなる。そこで、撹拌翼6の大きさを大きくするのではなく、数を増やすことが考えられる。
【0068】
例えば、撹拌翼6よりも突出部16に近い位置にサブ撹拌翼80を設ける。撹拌翼6は、回転軸を通る直線上に2枚設けてあり、それに対して90度傾けた線上に2枚のサブ撹拌翼80を設けた例である。上方に設けられた撹拌翼6に対して、影響が低下する下方に貯留されたコインを好適に撹拌することができる。
【0069】
図11は、撹拌翼の第3の例を説明する図である。撹拌部材5の撹拌能力を向上させる別の例である。撹拌翼81の一方の表面が、回転軸を通る線82に接するように配置している。これにより、コインを掻き込むように撹拌でき、撹拌性が向上する。また、回転軸から放射方向に撹拌翼81の表面を配置している例を示しているが、先端を回転方向に傾けた形状にすることで、さらに、コインを掻き込むように撹拌でき、撹拌性が向上する。
【符号の説明】
【0070】
1 コインホッパ
2 貯留容器
3 ベース
4 ディスク
5 撹拌部材
6 撹拌翼
7 底面
8 搬送路
9 排出口
10 開口部
11 通孔
12 凹部
13 取り付け構造部
14 案内部材
15 ローラー
16 突出部
30 モーター
31 回転軸
32 第1の歯車
33 撹拌軸
34 第2の歯車
35 接続手段
36 ピン
37 当接面
40 コイン
42 貫通孔
43 ブッシュ
44 貫通孔
45 段差
46 貫通孔
47 ネジ
48 ワッシャ
49 バネ
50 突出部側接触部
51 撹拌部材側接触部
63 第1傾斜部
64 第2傾斜部
65 第1垂直部
66 第2垂直部