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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】トイレ用手摺装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 17/02 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
A47K17/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017178427
(22)【出願日】2017-09-16
(65)【公開番号】P2019051175
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】599117255
【氏名又は名称】株式会社 シコク
(74)【代理人】
【識別番号】100144509
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋三
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 幸司
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-049571(JP,A)
【文献】特開2004-238970(JP,A)
【文献】特開2004-000347(JP,A)
【文献】登録実用新案第3003985(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋式便器をその左右両側から挟むように配置された左右一対のサイド支柱部と該各サイド支柱部の上端にそれぞれ前後方向へ向けて固定された受材の上面側に肘掛部を備えた手摺本体部と、該手摺本体部の上記受材の前端にこれと同軸上に連結される連結杆を介して取り付けられる補助手摺部を備えるとともに、
上記補助手摺部は、その上部が上記肘掛部の上面よりも上方へ延出する把持部とされ、その下端は床面への接地部とされる一方、上記手摺本体部と上記連結杆の間に該手摺本体部の前後方向に延びるスペーサを介在させることで該手摺本体部の前後方向における設置位置が調整可能とされていることを特徴とするトイレ用手摺装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記手摺本体部の上記各サイド支柱部はその高さが調整可能に構成される一方、
上記補助手摺部は、上記各サイド支柱部と一体的に、又は該各サイド支柱部と独立して、その高さが調整可能に構成されていることを特徴とするトイレ用手摺装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記補助手摺部が、上記手摺本体部側の左右のサイド支柱部の何れか一方側に、又は双方に設けられたことを特徴とするトイレ用手摺装置。
【請求項4】
請求項1,2又は3において、
上記補助手摺部は、上記手摺本体部との連結位置の近傍を中心として左右方向における設置位置が調整可能とされていることを特徴とするトイレ用手摺装置。
【請求項5】
請求項1,2又は3において、
上記補助手摺部の上記把持部は、略逆U字の形体とされ且つその平面視における一端側が上記手摺本体部に連結されていることを特徴とするトイレ用手摺装置。
【請求項6】
請求項1,2又は3において、
上記補助手摺部の上記把持部は、平面視における一端側から他端側へ向けて、又は平面視における延出方向に略直交する方向へ傾斜していることを特徴とするトイレ用手摺装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、洋式トイレの近傍に設置されるトイレ用手摺装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洋式便器の使用に際して、主として使用者の安楽な姿勢を保持することを目的として、例えば特許文献1に示されるような肘掛部を備えた手摺装置を洋式便器の近傍に配置し、便座に着座した使用者が安楽姿勢をとり且つこれを保持し得るようにすることが知られている。なお、この手摺装置は、この他に、例えば、上記肘掛部を把持することで使用者の移動に伴う転倒等の事故を防止するという安全対策上の効果も期待できる。
【0003】
一方、このような手摺装置において、特に便座への進入及び着座動作とか、便座からの立ち上がり及び離脱動作の安全性を高めるという観点から、例えば、特許文献2に示されるように、肘掛部の先端側に、斜めに立ち上がる傾斜把持部と、該傾斜把持部の先端に設けられた転回把持部を備え、着座姿勢と起立姿勢の間の動作時にはこれら傾斜把持部と転回把持部を使用するようにしている。
【0004】
また、便座への進入及び着座動作とか、便座からの立ち上がり及び離脱動作においては、人体を前方側へ引き寄せる力が必要であることから、従来は特許文献3に示されるように、強固なトイレ壁面に固定式の手摺を取り付け、この手摺に力を掛けて姿勢変更を行うことで上記動作時の安全性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-275147号公報
【文献】特開2009-77801号公報
【文献】特開2012-161599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、洋式便器への設置の容易さ、簡便性という点では、特許文献1とか特許文献2に示される設置式の手摺装置が有利であるが、便座への進入及び着座動作時とか便座からの立ち上がり及び離脱動作時における安全性という点においては特許文献3の手摺装置が有利である。
【0007】
一方、特許文献3の手摺装置は固定式であることから、トイレスペースの大小、洋式便器の形状等によっては当初予定の効果が十分に得られないことも有り得るが、特許文献1とか特許文献2の手摺装置は必要に応じて洋式便器の近傍に設置する設置式であるため、上述のような制約は殆ど無く有利である。
【0008】
このように、従来の各手摺装置においては、それぞれ利害相反するところがあり、これら各手摺装置をそれぞれ単一装置として設置したのでは、トイレ使用者に対する安全性及び利便性を両立させることは困難である。
【0009】
そこで本願発明は、単一の手摺装置によって、トイレ使用者の用便時における安楽姿勢の保持作用と、便座への着座及び離座時における的確な体勢変更と、洋式便器側への進入及び退避動作時における安全な移動の確保を実現することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0011】
本願の第1の発明に係るトイレ用手摺装置は、洋式便器をその左右両側から挟むように配置された左右一対のサイド支柱部と該各サイド支柱部の上端にそれぞれ前後方向へ向けて固定された受材の上面側に肘掛部を備えた手摺本体部と、該手摺本体部の上記受材の前端にこれと同軸上に連結される連結杆を介して取り付けられる補助手摺部を備えるとともに、
上記補助手摺部は、その上部が上記肘掛部の上面よりも上方へ延出する把持部とされ、その下端は床面への接地部とされる一方、上記手摺本体部と上記連結杆の間に該手摺本体部の前後方向に延びるスペーサを介在させることで該手摺本体部の前後方向における設置位置が調整可能とされていることを特徴としている。
【0012】
本願の第2の発明に係るトイレ用手摺装置は、上記第1の発明において、上記手摺本体部の上記各サイド支柱部の高さを調整可能に構成する一方、上記補助手摺部は、上記各サイド支柱部と一体的に、又は該各サイド支柱部と独立して、その高さを調整可能に構成したことを特徴としている。
【0013】
本願の第3の発明に係るトイレ用手摺装置は、上記第1又は第2の発明において、上記補助手摺部を、上記手摺本体部の左右のサイド支柱部の何れか一方側に、又は双方に設けたことを特徴としている。
【0014】
本願の第4の発明に係るトイレ用手摺装置は、上記第1、第2又は第3の発明において、上記補助手摺部を、上記手摺本体部との連結位置の近傍を中心として左右方向における設置位置を調整可能としたことを特徴としている。
【0015】
本願の第5の発明に係るトイレ用手摺装置は、上記第1、第2又は第3の発明において、上記補助手摺部の上記把持部を、略逆U字の形体とし且つその平面視における一端側を上記手摺本体部に連結したことを特徴としている。
【0016】
本願の第6の発明に係るトイレ用手摺装置は、上記第1、第2又は第3の発明において、上記補助手摺部の上記把持部を、平面視における一端側から他端側へ向けて、又は平面視における延出方向に略直交する方向へ傾斜させたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本願発明では次のような効果が得られる。
【0018】
(a)本願の第1の発明
(a-1)本願の第1の発明に係るトイレ用手摺装置によれば、トイレの使用者は、上記手摺装置の上記手摺本体部に備えられた肘掛部に肘を置いて便座に着座することで、排便に適した姿勢をとり且つこれを維持することができることから、排便時の労的負担が軽減され、特に高齢者とか身体障害者等の身体的弱者にとってはその効果は顕著である。
【0019】
また、便座への着座時には体を前傾させながら臀部を斜め後方に移動させた後、前傾姿勢から直立姿勢側へ引き起こす必要があり、また便座からの立ち上がり時には、便座への着座姿勢にある体を次第に前傾させながら上方へ引き上げる必要があり、これら何れの動作においても、トイレ使用者は自己の体を比較的大きな力で拘引することが必要となるが、この場合、トイレ使用者は上記手摺装置の上記補助手摺部の把持部を掴むことで、これに体重を預けながら安全に且つ容易に上記各姿勢変更動作を行うことができる。
【0020】
さらに、用便に際しての洋式便器側への進入移動時、及び側洋式便器からの離間移動時には、上記手摺本体部の上記肘掛部とか、上記補助手摺部の上記把持部部分に体を支持させながらこれを伝って移動することで、上記各動作を安全に且つスム-ズに行うことができる。
【0021】
以上のように、この第1の発明に係るトイレ用手摺装置によれば、排便時の労的負担の軽減と、便座への着座時と離座時の双方における安全且つ的確な姿勢変更動作の実現と、用便に際しての洋式便器側への進入移動時及び該洋式便器からの離間移動時における安全な移動の確保、という用便に伴う複数の異なる要求を単一の手摺装置によって実現することができるものであって、その利用価値は極めて高いものであり、特に介護分野においてその効果は顕著なものとなる。
【0022】
(a-2)また、この第1の発明に係るトイレ用手摺装置によれば、上記手摺本体部の上記肘掛部の前方位置に上記補助手摺部が連結状態で設置され、これらが一体として取り扱われることから、例えば、上掲の各特許文献1に記載の手摺装置を組み合わせて用いて同様の機能を得ようとするような場合に比して、手摺装置の構造の簡略及び小型化が促進されるとともに、その設置作業が容易であって手摺装置の低廉化が促進される。
【0023】
(a-3)さらに、この発明第1の手摺装置によれば、上記補助手摺部の、上記手摺本体部の前後方向における設置位置を調整可能としているので、例えば、トイレ使用者の体格に合わせて上記補助手摺部の設置位置を調整することで、換言すれば、上記手摺本体部の肘掛部と上記補助手摺部の把持部との相対関係を自己の体格に合わせて調整することで、トイレ使用者は常に最適な状態で上記補助手摺部の把持部を利用することができ、該補助手摺部を備えたことの効果が最大限発揮され、トイレ使用者の安全性が確保される。
【0024】
(b)本願の第2の発明
本願の第2の発明に係るトイレ用手摺装置によれば、上記(a)に記載の効果に加えて次のような特有の効果が得られる。即ち、この発明の手摺装置によれば、上記手摺本体部の上記各サイド支柱部の高さを調整可能に構成する一方、上記補助手摺部は、上記各サイド支柱部と一体的に、又は該各サイド支柱部と独立して、その高さを調整可能に構成したので、例えば、トイレ使用者の体格に応じて上記各サイド支柱部の高さを調整して上記肘掛部をトイレ使用者の肘高さに合わせることができる一方、上記補助手摺部においては、上記サイド支柱部の高さ調整と同時にその高さ調整を行ってトイレ使用者による把持性を担保し得るとともに、上記サイド支柱部の高さ調整とは別個独立に、例えば、接地面の高さの変化に応じて、その高さ調整を行って該補助手摺部の安定性を担保することができる。
【0025】
(c)本願の第3の発明
本願の第3の発明に係るトイレ用手摺装置によれば、上記(a)又は(b)に記載の効果に加えて次のような特有の効果が得られる。即ち、この発明の手摺装置によれば、上記補助手摺部を、上記手摺本体部側の左右の肘掛部の何れか一方側に、又は双方に設けているので、
(c-1)該補助手摺部が左右の肘掛部の何れか一方側に設けられた場合には、該補助手摺部が設けられなかった方においては洋式便器の前方側のスペースが大きくなることから、例えば、体が大きい人が使用する場合、上記洋式便器までの間の移動が容易となり、安全性がさらに向上し、
(c-2)該補助手摺部が左右の肘掛部の双方に設けられた場合には、例えば、歩行に支障があるような人がトイレを使用するような場合においても、左右両側の補助手摺部を同時に把持して伝え歩きをすることでより安全に通行することができ、安全性がさらに向上する。
【0026】
(d)本願の第4の発明
本願の第4の発明に係るトイレ用手摺装置によれば、上記(a)、(b)又は(c)に記載の効果に加えて次のような特有の効果が得られる。即ち、この発明の手摺装置によれば、上記補助手摺部を、上記手摺本体部との連結位置の近傍を中心として左右方向における設置位置を調整可能としているので、例えば、トイレの出入口が、洋式便器の外側に設置された上記手摺本体部の肘掛部の延設方向(即ち、上記手摺本体部の前方側)から左右方向に外れているような場合には、該補助手摺部を回動操作してその把持9の延出方向をトイレの出入口の方向に略合致させることで、トイレ使用者は該把持部を伝って上記手摺本体部と上記トイレ出入口の間をスムーズに且つ安全に移動することができ、トイレ使用者に対する支援性が向上する。
【0027】
(e)本願の第5の発明
本願の第5の発明に係るトイレ用手摺装置によれば、上記(a)、(b)又は(c)に記載の効果に加えて次のような特有の効果が得られる。即ち、この発明の手摺装置によれば、上記補助手摺部の上記把持部を、略逆U字の形体とし且つその平面視における一端側を上記手摺本体部に連結しているので、上記把持部の前後2本の縦材とこれらを接続する横材が上記手摺本体部から直線上に並ぶこととなり、トイレ使用者はこれら把持部の三つの部材を順次把持しながら伝い歩くことで安全に移動でき、また、場合によっては、左右の手で二つの部材を同時に把持しながら伝い歩くこともでき、移動の安全性がより一層向上する。
【0028】
(f)本願の第6の発明
本願の第6の発明に係るトイレ用手摺装置によれば、上記(a)、(b)又は(c)に記載の効果に加えて次のような特有の効果が得られる。即ち、この発明の手摺装置によれば、上記補助手摺部の上記把持部を、平面視における一端側から他端側へ向けて、又は平面視における延出方向に略直交する方向へ傾斜させているので、
(f-1)上記把持部を、平面視における一端側から他端側へ向けて傾斜させた場合には、上記手摺本体部の上記肘掛部と上記補助手摺部の把持部が鈍角を形成し、該把持部はその上部が上記肘掛部から次第に遠ざかるように傾斜することから、上記肘掛部に肘を置いた状態で上記把持部を手で掴む場合、肘と手首の成す角度が上記肘掛部と上記把持部の成す角度が可及的に合致し、より自然な状態で的確に把持部を掴むことができ、安全性が向上し、
(f-2)上記把持部を、平面視における延出方向に略直交する方向へ傾斜させた場合には、上記手摺本体部の上記肘掛部の延出方向と上記把持部の延出方向とが側方へ偏移した状態となることから、例えば、上記肘掛部に肘を預けた状態で上記補助手摺部の把持部を手で掴んだままトイレ使用者が上記手摺本体部側からその前方へ(即ち、上記把持部側へ)移動する場合、腕が上記把持部と干渉するのが可及的に回避され、トイレ使用者は上記把持部を把持した状態のまま安全に前方へ移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本願発明の第1の実施形態に係るトイレ用手摺装置の全体斜視図である。
図2】上記トイレ用手摺装置の側面図である。
図3】本願発明の第2の実施形態に係るトイレ用手摺装置の全体斜視図である。
図4】本願発明の第3の実施形態に係るトイレ用手摺装置の全体斜視図である。
図5】本願発明の第4の実施形態に係るトイレ用手摺装置の要部斜視図である。
図6】上記要部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本願発明に係るトイレ用手摺装置をいくつかの実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0031】
「第1の実施形態」
図1及び図2には、本願発明の第1の実施形態に係るトイレ用手摺装置Zを示している。このトイレ用手摺装置Zは、次述するように、手摺本体部1と補助手摺部2を備えて構成される。
【0032】
「手摺本体部1」
上記手摺本体部1は、洋式便器3をその左右両側から挟むように配置されるものであって、左右一対のサイド支柱部10,10を備えている。このサイド支柱部10は、上記洋式便器3の前後方向に向けて配置されるベース材12と、該ベース材12の前後両端側からそれぞれ立ち上がる前後一対の伸縮式の支柱13,13と、該各支柱13,13の上端にそれぞれ上記ベース材12と略平行に取り付けられた前後一対の受材14,14と、該各受材14,14の上面に固定された肘掛部11を備えて構成される。
【0033】
そして、これら左右一対のサイド支柱部10、10は、その前部寄りに設けた支柱13同士を連結材15によって連結することで、一体化されている。なお、この連結材15は、その略中央部が前方側へ湾曲した形体を有し、この湾曲部分で上記洋式便器3の前部を支持するようになっている。また、この連結材15は図示しない伸縮機構によって伸縮自在とされ、上記洋式便器3の幅寸法に対応し得るようになっている。
【0034】
また、上記肘掛部11の高さは、上記洋式便器3に着座するトイレ使用者の体格に応じて変更することが必要となるが、この肘掛部11の高さ調整は、上記サイド支柱部10を適宜に伸縮させることで行われる。
【0035】
さらに、左右一対のサイド支柱部10、10は、その後部寄りに設けた支柱13、13間に張設される上下一対の固定ベルト16,16によって上記洋式便器3の後部を抱持するようになっている。この上下一対の固定ベルト16,16による上記洋式便器3の後部に対する抱持作用と、上記連結材15による上記洋式便器3の前部の支持作用の協働により、上記手摺本体部1は上記洋式便器3側に取り付けられ、該洋式便器3と一体化される。
【0036】
なお、上記左右一対のサイド支柱部10,10の前部寄りに設けられた各支柱13、13の上端に固定された上記受材14,14の前端には、それぞれ後述の補助手摺部2を連結するための受穴部31(図3参照)が設けられている。
【0037】
「補助手摺部2」
上記補助手摺部2は、上記手摺本体部1側の上記受材14の先端に対して同軸上に連結される所定長さの連結杆21と、該連結杆21の先端から下方に向けて略直交状態で連結固定されるとともにその下端には接地部24が設けられた支柱部22と、該支柱部22の上端と上記連結杆21の中間部との間に跨って取り付けられた逆U形の把持部23を備えて構成される。
【0038】
なお、上記補助手摺部2の支柱部22の下端に設けられた上記接地部24は、該支柱部22の下端に対してその軸方向へ伸縮可能に連結されており、その伸縮量を増減調整することで上記補助手摺部2の高さ調整が行われる。そして、この補助手摺部2の高さ調整は、上記手摺本体部1に連動して一体的に調整できる他、該手摺本体部1の高さ調整とは別個独立に、該補助手摺部2のみでも行うことができる。
【0039】
そして、この実施形態では、上記把持部23の前後一対の縦材23a、23bを上記支柱部22と同軸上に位置させており、したがって上記一対の縦材23a、23bを連続させる湾曲した横材23cは、平面視において上記連結杆21に重なることになる。
【0040】
また、上記連結杆21の基端部には、図3にも示すように、上記受材14側の受穴部31に挿入される挿入連結体32が設けられており、上記補助手摺部2は上記挿入連結体32を上記受材14の受穴部31に嵌挿し且つ固定ネジ(図示省略)で固定することで、上記手摺本体部1側に着脱可能に連結固定され、これと一体化される。そして、上記補助手摺部2は、上記手摺本体部1との一体化状態においては、上記手摺本体部1を介しての上記洋式便器3への固定作用と、上記支柱部22の下端に設けた上記接地部24による接地作用との協働で、安定的に設置され、利用に供される。
【0041】
「トイレ用手摺装置Zの作用効果」
このように構成されたトイレ用手摺装置Zによれば、以下のような作用効果が得られる。
【0042】
このトイレ用手摺装置Zによれば、トイレの使用者は、上記手摺本体部1に備えられた肘掛部11に肘を置いて便座に着座することで、排便に適した姿勢をとり且つこれを維持することができることから、排便時の労的負担が軽減され、特に高齢者とか身体障害者等の身体的弱者にとってはその効果は顕著である。
【0043】
また、便座への着座時には体を前傾させながら臀部を斜め後方に移動させた後、前傾姿勢から直立姿勢側へ引き起こす必要があり、また便座からの立ち上がり時には、便座への着座姿勢にある体を次第に前傾させながら上方へ引き上げる必要があり、これら何れの動作においても、トイレ使用者は自己の体を比較的大きな力で拘引することが必要となるが、この場合、トイレ使用者は上記補助手摺部2の把持部23を掴むことで、これに体重を預けながら安全に且つ容易に上記各姿勢変更動作を行うことができる。
【0044】
さらに、用便に際しての洋式便器3側への進入移動時、及び側洋式便器3からの離間移動時には、上記手摺本体部1の上記肘掛部11とか、上記補助手摺部2の上記把持部23部分に体を支持させながらこれを伝って移動することで、上記各動作を安全に且つスム-ズに行うことができる。
【0045】
また、上記補助手摺部2が上記手摺本体部1の左右の肘掛部11、11の何れか一方側(この実施形態では上記手摺本体部1の左側の肘掛部11)に設けられているので、該補助手摺部2が設けられなかった方においては洋式便器3の前方側のスペースが大きくなることから、例えば、体が大きい人が使用する場合、上記洋式便器3までの間の移動が容易となり、安全性がさらに向上することになる。
【0046】
このように、この第1の実施形態に係るトイレ用手摺装置によれば、排便時の労的負担の軽減と、便座への着座時と離座時の双方における安全且つ的確な姿勢変更動作の実現と、用便に際しての洋式便器側への進入移動時及び該洋式便器からの離間移動
時における安全な移動の確保、という用便に伴う複数の異なる要求を単一の手摺装置によって実現することができるものであって、その利用価値は極めて高いものであり、特に介護分野においてその効果は顕著なものとなる。
【0047】
またこの実施形態では、上記手摺本体部1の上記各サイド支柱部10、10の高さを調整可能に構成する一方、上記補助手摺部2は、上記各サイド支柱部10、10と一体的に、又は該各サイド支柱部10、10と独立して、その高さを調整可能に構成したので、例えば、トイレ使用者の体格に応じて上記各サイド支柱部10、10の高さを調整して上記肘掛部11をトイレ使用者の肘高さに合わせることができる一方、上記補助手摺部2においては、上記サイド支柱部10、10の高さ調整と同時にその高さ調整を行ってトイレ使用者による把持性を担保し得るとともに、上記サイド支柱部10、10の高さ調整とは別個独立に、例えば、接地面の高さの変化に応じて、その高さ調整を行って該補助手摺部2の安定性を担保することができる。
【0048】
また、この実施形態では、上記補助手摺部2の上記把持部23を、略逆U字の形体とし且つその平面視における一端側を上記手摺本体部に連結しているので、上記把持部の前後2本の縦材23a,23bとこれらを接続する横材23cが上記手摺本体部1から直線上に並ぶこととなり、トイレ使用者はこれら把持部の三つの部材23a~23cを順次把持しながら伝い歩くことで安全に移動でき、また、場合によっては、左右の手で二つの部材を同時に把持しながら伝い歩くこともでき、移動の安全性がより一層向上する。
【0049】
なお、他の実施形態においては、図1に鎖線図示するように、上記把持部23を、上記支柱部22を含む仮想の鉛直面よりも外側へ傾斜させた状態で固定し、平面視において上記把持部23を上記連結杆21から側方へ退避させることもできる。係る構成とした場合には、上記手摺本体部1の上記肘掛部11の延出方向と上記把持部23の延出方向とが側方へ偏移した状態となることから、例えば、上記肘掛部11に肘を預けた状態で上記補助手摺部2の把持部23を手で掴んだままトイレ使用者が上記手摺本体部1側からその前方へ(即ち、上記把持部23側へ)移動する場合、腕が上記把持部23と干渉するのが可及的に回避され、トイレ使用者は上記把持部23を把持した状態のまま安全に前方へ移動することができる。
【0050】
また、他の実施形態においては、図2に鎖線図示するように、上記把持部23を上記支柱部22に対して直立状態ではなく、該支柱部22の上端部分から前方へ向けて傾斜させた状態で取り付けることもできる。係る構成によれば、上記手摺本体部1の上記肘掛部11と上記補助手摺部2の把持部23が鈍角を形成し、該把持部23はその上部が上記肘掛部11から次第に遠ざかるように傾斜することから、上記肘掛部11に肘を置いた状態で上記把持部23を手で掴む場合、肘と手首の成す角度が上記肘掛部11と上記把持部23の成す角度に可及的に合致し、より自然な状態で的確に把持部23を掴むことができ、それだけ安全性が向上することになる。
【0051】
さらに、図示はしないが、上記把持部23を、図1に鎖線図示するように外側へ傾斜させると同時に、図2に鎖線図示するように前方へ傾斜させることも可能である。係る構成によれば、これらそれぞれの構成に基づく作用効果を同時に達成することができ、より好ましい構成と言える。
【0052】
「第2の実施形態」
図3には、本願発明の第2の実施形態に係るトイレ用手摺装置Zを示している。このトイレ用手摺装置Zは、その基本構成を上記第1の実施形態のトイレ用手摺装置Zと同じとし、これと異なる点は、上記手摺本体部1の左右の肘掛部11,11の前端側にそれぞれ上記補助手摺部2を配置した点である。
【0053】
このように、上記補助手摺部2が左右の肘掛部11,11の双方に設けられた場合には、例えば、歩行に支障があるような人がトイレを使用するような場合においても、左右両側の補助手摺部2を同時に把持して伝え歩きをすることでより安全に通行することができ、安全性がさらに向上する。なお、これ以外の作用効果は上記第1の実施形態の場合と同様であるので、これを援用し、ここでの説明は省略する。
【0054】
「第3の実施形態」
図4には、本願発明の第3の実施形態に係るトイレ用手摺装置Zを示している。このトイレ用手摺装置Zは、その基本構成を上記第1の実施形態のトイレ用手摺装置Zと同じとし、これと異なる点は、上記第1の実施形態においては上記手摺本体部1に対して上記補助手摺部2を固定的に取り付けていたのに対して、この実施形態においては図4に示すように、上記補助手摺部2を、上記手摺本体部1との連結位置の近傍を中心として左右方向へ回動可能とし、左右方向における設置位置を調整できるようにしている。
【0055】
係る構成によれば、例えば、トイレの出入口が、洋式便器3の外側に設置された上記手摺本体部1の肘掛部11の延設方向(即ち、上記手摺本体部1の前方側)から左右方向に外れているような場合には、該補助手摺部2を回動操作してその把持部23の延出方向をトイレの出入口の方向に略合致させることで、トイレ使用者は該把持部23を伝って上記手摺本体部1と上記トイレ出入口の間をスムーズに且つ安全に移動することができ、トイレ使用者に対する支援性が向上する。なお、これ以外の作用効果は上記第1の実施形態の場合と同様であるので、これを援用し、ここでの説明は省略する。
【0056】
「第4の実施形態」
図5及び図6には、第4の実施形態に係るトイレ用手摺装置Zの要部、即ち、上記手摺本体部1の受材14側と上記補助手摺部2との連結部分を示している。この実施形態は、上記手摺本体部1に対する上記補助手摺部2の取付位置を該手摺本体部1の前後方向において調整可能とするものであって、上記手摺本体部1の上記受材14と、上記補助手摺部2の連結杆21の間に所定長さのスペーサ33を介在させることで、該スペーサ33の長さ分だけ上記手摺本体部1と補助手摺部2の間隔を調整可能としている。なお、上記スペーサ33の一端には上記受材14側の受穴部31に嵌挿される挿入連結体34が、他端には上記補助手摺部2の連結杆21に設けた挿入連結体32が嵌挿される受穴部35が、それぞれ設けられている。
【0057】
このように、上記手摺本体部1の前後方向における上記補助手摺部2の設置位置を調整可能とすれば、例えば、トイレ使用者の体格に合わせて上記補助手摺部2の設置位置を調整することで、換言すれば、上記手摺本体部1の肘掛部14と上記補助手摺部2の把持部23との相対関係を自己の体格に合わせて調整することで、トイレ使用者は常に最適な状態で上記補助手摺部2の把持部23を利用することができ、該補助手摺部2を備えたことの効果が最大限発揮され、トイレ使用者の安全性が確保される。なお、これ以外の作用効果は上記第1の実施形態の場合と同様であるので、これを援用し、ここでの説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本願発明に係るトイレ用手摺装置は、主として介護福祉分野において、被介護者の負担軽減手段として広く利用できるものである。
【符号の説明】
【0059】
1・・手摺本体部
2・・補助手摺部
3・・洋式便器
10・・サイド支柱部
11・・肘掛部
12・・ベース材
13・・支柱
14・・受材
15・・連結材
16・・固定ベルト
21・・連結杆
22・・支柱部
23・・把持部
24・・接地部
31・・受穴部
32・・挿入連結体
33・・スペーサ
34・・挿入連結体
35・・受穴部
Z・・手摺装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6