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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】光照射システム及び光照射方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
A01G7/00 601A
A01G7/00 603
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018099229
(22)【出願日】2018-05-23
(65)【公開番号】P2019201592
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000144991
【氏名又は名称】株式会社四国総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100144509
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋三
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(72)【発明者】
【氏名】中西 美一
(72)【発明者】
【氏名】工藤 りか
(72)【発明者】
【氏名】山本 敬司
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-520269(JP,A)
【文献】特表2016-526890(JP,A)
【文献】特開2015-223118(JP,A)
【文献】特開2013-236572(JP,A)
【文献】特開平08-110230(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061858(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/027198(WO,A1)
【文献】山本敬司、工藤りか、中西美一,栽培環境モニタリングシステムの開発及び実証,農業電化,日本,社団法人農業電化協会,2013年10月01日,Vol. 66, No. 6,pp. 31 - 36
【文献】中西美一,モニタリングシステム"HaPPiMinder"の開発と導入事例,施設と園芸,日本,一般社団法人日本施設園芸協会,2014年01月25日,NO. 164,pp. 36 - 39
【文献】中西美一,農業におけるオンデマンド・モニタリングシステム技術の活用,技術総合誌OHM,日本,株式会社オーム社,2011年04月12日,Vol. 98, No. 4,pp. 24 - 27
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培植物に人工光を照射する光照射システムであって、
該光照射システムは、コントローラと電気スイッチと電流センサ及び光照射器を備えるとともに、
上記コントローラは、GPS衛星から送信される電波を定期的に受信して正確な現日時情報と上記光照射システムの設置場所の緯度及び経度の情報を算出するGPS電波受信手段と、現日時の情報を示すとともに上記GPS電波受信手段によって算出された正確な現日時の情報に基づいて自動的に補正される時計手段と、植物の種類と光照射の目的に応じた光照射スケジュール情報が記憶されており、且つ電流センサによって測定された光照射器に供給される電気の電流値の情報を上記時計手段が示す現日時の情報と関連付けて記憶する記憶手段と、上記GPS電波受信手段によって算出された光照射システムの設置場所の緯度及び経度の情報と、上記時計手段が示す現日時の情報に基づいて所定日の日出時刻及び日没時刻の情報をそれぞれ算出するとともに、算出した所定日の日出時刻及び日没時刻の情報と、上記記憶手段に記憶されている上記光照射スケジュール情報と、上記時計手段が示す現日時の情報とに基づいて、電気スイッチに対して光照射器への電気の供給と遮断を指示する演算制御手段と、を備えていることを特徴とする光照射システム。
【請求項2】
請求項1に記載の光照射システムにおいて、
上記コントローラの上記記憶手段は、該コントローラから取り外しができる記憶媒体であることを特徴とする光照射システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光照射システムにおいて、
上記植物の種類と光照射の目的に応じた上記光照射スケジュール情報が、該光照射スケジュールの設計者等の特定者のみが利用できる暗号鍵によって暗号化され、上記記憶手段に記憶されていることを特徴とする光照射システム。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の光照射システムにおいて、
調光器及び光強度センサを備え、
上記演算制御手段は、上記光強度センサによって測定された光強度の情報に基づいて適切な光強度になるように上記光照射器に供給される電気の電流値を加減するよう上記調光器に指示を与え、
上記記憶手段は、上記光強度センサによって測定された光強度の情報を上記時計手段が示す現日時の情報と関連付けて記憶する、
ように構成されたことを特徴とする光照射システム。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4に記載の光照射システムにおいて、
温度センサ及び湿度センサのいずれか一方又は両方を備え、
上記記憶手段は、上記温度センサ及び上記湿度センサによって測定された気温及び湿度の情報を、上記時計手段が示す現日時の情報と関連付けて記憶するように構成されたことを特徴とする光照射システム。
【請求項6】
請求項1、2、3,4又は5に記載の光照射システムにおいて、
上記記憶手段には上記光照射器に供給される電流値が電流値情報として記憶されており、該電流値情報から読み出される電流値が異常であるときに警報手段により警報を発するように構成されたことを特徴とする光照射システム。
【請求項7】
栽培植物に人工光を照射する光照射方法であって、
GPS衛星から送信される電波を定期的に受信して正確な現日時情報と光照射が実行される場所の緯度及び経度の情報を算出するとともに、上記現日時情報に基づいて時計手段における現日時の表示を補正して正確な現日時情報を得る第1ステップと、
植物の種類と光照射の目的に応じた光照射スケジュール情報を記憶手段に記憶保持するとともに、電流センサによって測定された光照射器に供給される電気の電流値の情報を上記現日時の情報と関連付けて上記記憶手段に記憶する第2ステップと、
上記光照射が実行される場所の緯度及び経度の情報と、上記現日時の情報に基づいて所定日の日出時刻及び日没時刻の情報をそれぞれ算出する第3ステップと、
上記所定日の日出時刻及び日没時刻の情報と上記光照射スケジュール情報と上記現日時の情報とに基づいて、電気スイッチに対して光照射器への電気の供給と遮断を指示する第4ステップを備えたことを特徴とする光照射方法。
【請求項8】
請求項7に記載の光照射方法において、
上記植物の種類と光照射の目的に応じた上記光照射スケジュール情報を、該光照射スケジュールの設計者等の特定者のみが利用できる暗号鍵によって暗号化して記憶する第5ステップを備えたことを特徴とする光照射方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の光照射方法において、
調光器及び光強度センサを設け、
上記光強度センサによって測定された光強度の情報に基づいて適切な光強度になるように上記光照射器に供給される電気の電流値を加減するよう上記調光器に指示を与える第6ステップと、
上記光強度センサによって測定された光強度の情報を上記時計手段が示す現日時の情報と関連付けて記憶する第7ステップを備えたことを特徴とする光照射方法。
【請求項10】
請求項7,8又は9に記載の光照射方法において、
温度センサ及び湿度センサのいずれか一方又は両方を設け、上記温度センサ及び湿度センサによって測定された気温及び湿度の情報を、上記現日時の情報と関連付けて記憶する第8ステップを備えたことを特徴とする光照射方法。
【請求項11】
請求項7、8,9又は10に記載の光照射方法において、
上記記憶手段に上記光照射器に供給される電流値を電流値情報として記憶しておき、該電流値情報から読み出される電流値が異常であるときに警報を発する第9ステップを備えたことを特徴とする光照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、植物の生育促進、病害虫被害の防止などを目的として、植物に各種波長の人工光を照射するための光照射システム及び光照射方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農産物である植物を栽培する圃場や栽培ハウスでは、植物の生育促進、病害虫被害の防止、植物体内における有用物質の増加などを目的として、植物に各種波長の人工光を照射することが行われている(例えば、特許文献1、特許文献2 参照)。
【0003】
特許文献1には、圃場内に居る害虫の天敵昆虫に照明器具によって光照射する光照射システムであって、年間を通じて日出・日没時刻を記憶する記憶手段と、計時手段と、計時手段により現日時を把握して照明器具を点灯制御する制御手段を備え、記憶手段に記憶された年間の日出・日没時刻情報から、当日の日出・日没時刻を読み出すと共に、天敵昆虫が生殖休眠しない長日期の日出・日没時刻を日出・日没基準時刻として設定し、読み出された当日の日出時刻が、日出基準時刻より遅い場合、日出基準時刻になると照明器具を点灯させ、日出時刻になると照明器具を消灯させ、読み出された当日の日没時刻が日没基準時刻より早い場合、日没時刻になると照明器具を点灯させ、日没基準時刻になると照明器具を消灯させる光照射システムが記載されている。
【0004】
特許文献2には、苗床に補光を照射する光源と、光源の点灯開始と、点灯終了とを制御する点灯制御手段とを備え、点灯制御手段は、日出前の略2時間前から略日出までの間光源を点灯させる、時限動作をする育苗照明装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5240930号公報
【文献】特開平10-201368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、植物に人工光を照射する場合、照射する光強度及び時間を適切に管理しなければ、照射の目的とする効果を得ることができず、また、過多に照射すると電力のロスが発生するとともに、植物にとって有害な影響が生ずる場合がある。さらに、人工光の照射の目的によっては、昼間や夜間の所定の時間帯だけ照射しなければならない場合がある。以下「第1の課題」という。
【0007】
また、従来の光照射システムでは、時計手段として一般に水晶時計が用いられているため、1日当り数秒の時刻のずれを生ずる場合があり、そのことに気付かず長期間放置すると、数十分から数時間もの時刻のずれとなってしまい、植物に対して人工光を正確に所定の時間帯に照射できなくなるという問題があった。以下「第2の課題」という。
【0008】
さらに、人工光を夜間の時間帯に照射する場合、一般に圃場や栽培ハウスは無人になるため、一部又は全部の光照射器が故障するなどして人工光の照射が適切な光強度及び時間で行われなくなっても、長期間気付かれずに放置されることがあり、人工光の照射の目的とする効果が得られなくなるという問題があった。以下「第3の課題」という。
【0009】
一方、従来の光照射システムでは、植物の生育中に照射した人工光の総量としての光照射量(積算光処理量)や、これに照射された太陽光の総量を加えたものとしての光照射量(積算光処理量)の情報を簡易な方法で取得することができなかった。そのため、植物の実際の生育状態との対比分析が困難で、光照射が植物の生育等に与える効果の検証が難しいという問題があった。以下「第4の課題」という。
【0010】
これらの課題と、引用文献1の光照射システム及び引用文献2の育苗照明装置との関係を考察すると以下のとおりである。
【0011】
特許文献1について
この特許文献1の光照射システムでは、当日の日照時間を照明器具による光照射により補完し、年間を通じて同等の光環境下で、天敵昆虫を生殖休眠させることなく生息密度を維持できるようにしているが、時計手段の示す現日時が実際の正確な現日時とずれた場合の補正方法については記載されておらず、したがって、上記「第1の課題」及び「第2の課題」には何ら対処することができない。
【0012】
また、この特許文献1の光照射システムでは、光照射器が故障するなどして、人工光の照射が適切な光強度・時間で行われなくなった場合の警告の発報についても記載されておらず、したがって、上記「第3の課題」には何ら対処することができない。
【0013】
さらに、この特許文献1の光照射システムでは、植物の生育中に照射した人工光の総量としての光照射量(積算光処理量)を容易に取得することができる構成とはなっていないため、上記「第4の課題」には何ら対処することができない。
【0014】
特許文献2について
この特許文献2の育苗照明装置では、日出前の略2時間前から略日出までの間光源を点灯させる時限動作をするものであることから、苗の生育を早めることができるものの、時計手段の示す現日時が実際の正確な現日時とずれた場合の補正方法については記載されておらず、したがって、上記「第1の課題」及び「第2の課題」には何ら対処することができない。
【0015】
また、この特許文献2の育苗照明装置では、光照射器が故障するなどして、人工光の照射が適切な光強度・時間で行われなくなった場合の警告の発報についても記載されておらず、したがって、上記「第3の課題」には何ら対処することができない
【0016】
さらに、この特許文献2の育苗照明装置では、植物の生育中に照射した人工光の総量としての光照射量(積算光処理量)を容易に取得することができるものではなく、上記「第4の課題」には何ら対処することができない。
【0017】
以上のように、引用文献1及び引用文献2のいずれも、従来の光照射システムに特有の上記各課題についての解決手段とはなり得ないものである。
【0018】
そこで本願発明は、植物に対する人工光の照射を、所定時刻に所定時間だけ正確に行うことで、光照射の目的とする効果を確実に得ることができる、信頼性及び運用性に優れた光照射システム及び光照射方法を提案することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0020】
本願の第1の発明では、栽培植物に人工光を照射する光照射システムにおいて、該光照射システムが、コントローラと電気スイッチと電流センサ及び光照射器を備えるとともに、上記コントローラは、GPS衛星から送信される電波を定期的に受信して正確な現日時情報と上記光照射システムの設置場所の緯度及び経度の情報を算出するGPS電波受信手段と、現日時の情報を示すとともに上記GPS電波受信手段によって算出された正確な現日時の情報に基づいて自動的に補正される時計手段と、植物の種類と光照射の目的に応じた光照射スケジュール情報を記憶しており、且つ電流センサによって測定された光照射器に供給される電気の電流値の情報を上記時計手段が示す現日時の情報と関連付けて記憶する記憶手段と、上記GPS電波受信手段によって算出された光照射システムの設置場所の緯度及び経度の情報と、上記時計手段が示す現日時の情報に基づいて所定日の日出時刻及び日没時刻の情報をそれぞれ算出するとともに、算出した所定日の日出時刻及び日没時刻の情報と、上記記憶手段に記憶されている上記光照射スケジュール情報と、上記時計手段が示す現日時の情報に基づいて、電気スイッチに対して光照射器への電気の供給と遮断を指示する演算制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0021】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る光照射システムにおいて、上記コントローラの上記記憶手段を、該コントローラから取り外しができる記憶媒体としたことを特徴としている。
【0022】
本願の第3の発明では、上記第1又は第2の発明に係る光照射システムにおいて、上記植物の種類と光照射の目的に応じた上記光照射スケジュール情報を、該光照射スケジュールの設計者等の特定者のみが利用できる暗号鍵によって暗号化して上記記憶手段に記憶することを特徴としている。
【0023】
本願の第4の発明では、上記第1、第2又は第3の発明に係る光照射システムにおいて、調光器及び光強度センサを備え、上記演算制御手段は、上記光強度センサによって測定された光強度の情報に基づいて適切な光強度になるように上記光照射器に供給される電気の電流値を加減するよう上記調光器に指示を与え、上記記憶手段は、上記光強度センサによって測定された光強度の情報を上記時計手段が示す現日時の情報と関連付けて記憶するように構成したことを特徴としている。
【0024】
本願の第5の発明では、上記第1、第2、第3又は第4の発明に係る光照射システムにおいて、温度センサ及び湿度センサのいずれか一方又は両方を備え、上記記憶手段は、上記温度センサ及び上記湿度センサによって測定された気温及び湿度の情報を、上記時計手段が示す現日時の情報と関連付けて記憶するように構成したことを特徴としている。
【0025】
本願の第6の発明では、上記第1、第2、第3、第4又は第5の発明に係る光照射システムにおいて、上記記憶手段に上記光照射器に供給される電流値を電流値情報として記憶しており、該電流値情報から読み出される電流値が異常であるときに警報手段により警報を発するように構成したことを特徴としている。
【0026】
本願の第7の発明では、栽培植物に人工光を照射する光照射方法において、GPS衛星から送信される電波を定期的に受信して正確な現日時情報と光照射が実行される場所の緯度及び経度の情報を算出するとともに、上記現日時情報に基づいて時計手段における現日時の表示を補正して正確な現日時情報を得る第1ステップと、植物の種類と光照射の目的に応じた光照射スケジュール情報を記憶手段に記憶保持するとともに、電流センサによって測定された光照射器に供給される電気の電流値の情報を上記現日時の情報と関連付けて上記記憶手段に記憶する第2ステップと、上記光照射が実行される場所の緯度及び経度の情報と、上記現日時の情報に基づいて所定日の日出時刻及び日没時刻の情報をそれぞれ算出する第3ステップと、上記所定日の日出時刻及び日没時刻の情報と上記光照射スケジュール情報と上記現日時の情報とに基づいて、電気スイッチに対して光照射器への電気の供給と遮断を指示する第4ステップを備えたことを特徴としている。
【0027】
本願の第8の発明では、上記第7の発明に係る光照射方法において、上記植物の種類と光照射の目的に応じた上記光照射スケジュール情報を、該光照射スケジュールの設計者等の特定者のみが利用できる暗号鍵によって暗号化して記憶する第5ステップを備えたことを特徴としている。
【0028】
本願の第9の発明では、上記第7又は第8の発明に係る光照射方法において、調光器及び光強度センサを設け、上記光強度センサによって測定された光強度の情報に基づいて適切な光強度になるように上記光照射器に供給される電気の電流値を加減するよう上記調光器に指示を与える第6ステップと、上記光強度センサによって測定された光強度の情報を上記時計手段が示す現日時の情報と関連付けて記憶する第7ステップを備えたことを特徴としている。
【0029】
本願の第10の発明では、上記第7、第8又は第9の発明に係る光照射方法において、温度センサ及び湿度センサのいずれか一方又は両方を設け、上記温度センサ及び湿度センサによって測定された気温及び湿度の情報を、上記現日時の情報と関連付けて記憶する第8ステップを備えたことを特徴としている。
【0030】
本願の第11の発明では、上記第7、第8、第9又は第10の発明に係る光照射方法において、上記記憶手段に上記光照射器に供給される電流値を電流値情報として記憶しておき、該電流値情報から読み出される電流値が異常であるときに警報を発する第9ステップを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0031】
(a)本願の第1の発明に係る光照射システムによれば、以下のような効果が得られる。
【0032】
(a-1)上記GPS衛星から送信される電波を定期的に受信して算出される正確な現日時情報に基づいて、上記時計手段の示す現日時情報が自動的に正確な現日時情報に補正されることから、例え該時計手段の示す現日時が、正確な現日時の情報とずれたような場合であっても、植物に対して正確に所定時刻における所定時間の光照射が行われ、光照射の目的とする効果を確実に得ることができる。
【0033】
(a-2)上記光照射器に供給される電気の電流値の情報が、現日時の情報と関連付けられて上記記憶手段に記憶されるため、後に記憶手段からこれらの情報を読み出して、電流値と通電時間から推定した光照射量(積算光処理量)と植物の実際の生育状態とを、容易に対比分析して、その分析結果を今後の植物の育成計画にノウハウとして反映させることができる。
【0034】
(a-3)互いに関連付けられた電流値の情報と現日時の情報から、光照射器の異常を発見し、迅速に対処することができることから、光照射システムの信頼性が担保される。
【0035】
(a-4)上記演算制御手段において、所定日の日出時刻及び日没時刻の情報を算出する際に、上記GPS電波受信手段によって算出された光照射システムの設置場所の緯度及び経度の情報を使用するので、緯度及び経度の情報を人手によって入力する必要がなく、便宜であり、また人手による誤入力を防ぐことができるなど、信頼性及び運用性に優れた光照射システムを提供できる。
【0036】
(b)本願の第2の発明に係る光照射システムによれば、上記(a)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。
【0037】
(b-1)上記記憶手段には、植物の種類と人工光の照射の目的(例えば、生育促進、病害虫被害の防止、有用物質の増加など)に応じた光照射スケジュール情報を記憶させてあるため、該記憶手段として上記コントローラから取り外しができる記憶媒体を使用すれば、植物の種類や光照射の目的毎に異なる記憶媒体を用意しておき、それらの記憶媒体を交換するだけで、光照射システムの使用対象及び目的の変更に容易に対応することができ、光照射システムの運用性がさらに向上する。
【0038】
(b-2)上記記憶手段には、上記光照射器に供給される電気の電流値の情報を、上記時計手段が示す現日時の情報と関連付けて記憶させるので、該記憶手段として上記コントローラから取り外しができる記憶媒体を使用すれば、該コントローラから取り外した記憶媒体を、パソコン等の所定箇所に接続するだけで、容易に情報を読み出して、例えば、電流値と通電時間から推定した光照射量(積算光処理量)と、植物の実際の生育状態との対比分析を容易に行うことができる。
【0039】
(b-3)上記コントローラから記憶媒体を取り外すと、該コントローラには、上記光照射スケジュール情報と、上記光照射器に供給される電気の電流値の情報は残らないため、ノウハウの外部流出を防ぐことができる。
【0040】
(c)本願の第3の発明に係る光照射システムによれば、上記(a)又は(b)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記植物の種類と光照射の目的に応じた上記光照射スケジュール情報を、該光照射スケジュールの設計者等の特定者のみが利用できる暗号鍵によって暗号化して上記記憶手段に記憶するようにしていることから、長年の試験研究の貴重な成果である上記植物の種類と光照射の目的に応じた光照射スケジュール情報の外部流出を防ぐことができる。
なお、暗号鍵を利用できる特定者は、必ずしも上記光照射スケジュールの設計者である必要はなく、上記光照射システムや上記光照射スケジュール情報の所有者や管理者等であってもよい。
【0041】
(d)本願の第4の発明に係る光照射システムによれば、上記(a)、(b)又は(c)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。
【0042】
(d-1)上記調光器及び上記光強度センサを備えているので、例えば、晴天時のように太陽光の光強度が大きい場合には、上記光照射器から照射される補光用の白色光の光強度を小さくするとか消灯し、逆に、曇天時のように太陽光の光強度が小さい場合には、上記光照射器から照射される白色光の光強度を大きくすることで、天候に左右されることなく必要な光照射量を確保して植物の生育を促進させることができるとともに、電気の使用量を低減することができる。
【0043】
(d-2)後に上記記憶手段から、植物栽培環境における太陽光及び人工光を合せた光強度の情報と、光照射時間の情報を読み出して、太陽光と人工光を合せた光照射量(積算光処理量)と植物の実際の生育状態とを容易に対比分析することができ、さらにこの分析結果を今後の植物の育成計画にノウハウとして反映させることができる。
【0044】
(e)本願の第5の発明に係る光照射システムによれば、上記(a)、(b)、(c)又は(d)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、温度センサ及び湿度センサのいずれか一方又は両方を備えているので、後に上記記憶手段から、植物栽培環境における気温及び湿度の情報を読み出して、気温及び湿度と植物の実際の生育状態とを容易に対比分析することができ、さらにこの分析結果を今後の植物の育成計画にノウハウとして反映させることができる。
【0045】
(f)本願の第6の発明に係る光照射システムによれば、上記(a)、(b)、(c)、(d)又は(e)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記記憶手段に上記光照射器に供給される電流値を電流値情報として記憶しておき、該電流値情報から読み出される電流値が異常であるときに警報手段により警報を発するようにしているので、例えば、一部又は全部の光照射器が故障するなどして光照射が適切な光強度及び時間で行われなくなった場合には、上記警報手段によって管理者に異常の発生が伝えられ、管理者において迅速な対策をとることができ、この結果、光照射の目的とする効果が得られなくなるという問題の発生を未然に防ぐことができ、光照射システムの信頼性が担保される。
【0046】
(g)本願の第7の発明に係る光照射方法によれば、以下のような特有の効果が得られる。
【0047】
(g-1)上記GPS衛星から送信される電波を定期的に受信して算出される正確な現日時情報に基づいて、上記時計手段の示す現日時情報が自動的に正確な現日時情報に補正されることから、例え該時計手段の示す現日時が、正確な現日時の情報とずれたような場合であっても、植物に対して正確に所定時刻における所定時間の光照射が行われ、光照射の目的とする効果を確実に得ることができる。
【0048】
(g-2)電流値の情報が、現日時の情報と関連付けられて記憶されるため、後に記憶された情報を読み出して、電流値と通電時間から推定した光照射量(積算光処理量)と植物の実際の生育状態とを、容易に対比分析して、その分析結果を今後の植物の育成計画にノウハウとして反映させることができる。
【0049】
(g-3)互いに関連付けられた電流値の情報と現日時の情報から、光照射器の異常を発見し、迅速に対処することができることから、光照射方法における信頼性が担保される。
【0050】
(g-4)所定日の日出時刻及び日没時刻の情報を算出する際に、上記GPS衛星から送信される電波に基づいて算出された光照射システムの設置場所の緯度及び経度の情報を使用するので、緯度及び経度の情報を人手によって入力する必要がなく、便宜であり、また人手による誤入力を防ぐことができるなど、信頼性及び運用性に優れた光照射システムを提供できる。
【0051】
(h)本願の第8の発明に係る光照射方法によれば、上記(g)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記植物の種類と光照射の目的に応じた上記光照射スケジュール情報を、該光照射スケジュールの設計者等の特定者のみが利用できる暗号鍵によって暗号化して記憶するようにしているので、長年の試験研究の貴重な成果である上記植物の種類と光照射の目的に応じた光照射スケジュール情報の外部流出を防ぐことができる。
【0052】
(i)本願の第9の発明に係る光照射方法によれば、上記(g)又は(h)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。
【0053】
(i-1)上記調光器及び上記光強度センサを備えているので、例えば、晴天時のように太陽光の光強度が大きい場合には、上記光照射器から照射される補光用の白色光の光強度を小さくするとか消灯し、逆に、曇天時のように太陽光の光強度が小さい場合には、上記光照射器から照射される白色光の光強度を大きくすることで、天候に左右されることなく必要な光照射量を確保して植物の生育を促進させることができるとともに、電気の使用量を低減することができる。
【0054】
(i-2)後に、植物栽培環境における太陽光及び人工光を合せた光強度の情報と、光照射時間の情報を読み出して、太陽光と人工光を合せた光照射量(積算光処理量)と植物の実際の生育状態とを容易に対比分析することができ、さらにこの分析結果を今後の植物の育成計画にノウハウとして反映させることができる。
【0055】
(j)本願の第10の発明に係る光照射方法によれば、上記(g)、(h)又は(i)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、温度センサ及び湿度センサのいずれか一方又は両方を備えているので、後に、植物栽培環境における気温及び湿度の情報を読み出して、気温及び湿度と植物の実際の生育状態とを、容易に対比分析することができ、さらにこの分析結果を今後の植物の育成計画にノウハウとして反映させることができる。
【0056】
(k)本願の第11の発明に係る光照射方法によれば、上記(g)、(h)、(i)又は(j)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記記憶手段に上記光照射器に供給される電流値を電流値情報として記憶しておき、該電流値情報から読み出される電流値が異常であるときに警報を発するようにしているので、例えば、一部又は全部の光照射器が故障するなどして光照射が適切な光強度及び時間で行われなくなった場合には、上記警報手段によって管理者に異常の発生が伝えられ、管理者において迅速な対策をとることができ、この結果、光照射の目的とする効果が得られなくなるという問題の発生を未然に防ぐことができ、光照射システムの信頼性が担保される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本願発明の実施形態に係る光照射システムの機能ブロック図である。
図2】上記光照射システムにおける光照射制御のフローチャートである。
図3】上記フローチャートにおける異常状態判定処理のサブルーチンである。
図4】上記フローチャートにおけるセンサ情報の記憶処理のサブルーチンである。
図5】上記フローチャートにおける光強度の適正化処理のサブルーチンである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1には、本願発明の実施形態に係る光照射システムZの機能ブロック図を示している。この光照射システムZは、コントローラ1と電気スイッチ2と電流センサ3と複数(この実施形態では4個)の光照射器4と調光器5と光強度センサ6と温度センサ7及び湿度センサ8を備えて構成される。
【0059】
「コントローラ1」
上記コントローラ1は、GPS電波受信手段11と時計手段12と光照射スケジュール13と記憶手段14と演算制御手段15及び警報手段16を備えて構成される。
【0060】
「GPS電波受信手段11」
上記GPS電波受信手段11は、原子時計が搭載された4つのGPS衛星から送信される電波を定期的(例えば、毎日午前0時)に受信して、「正確な現日時情報(a)」と、光照射システムの設置場所の「緯度及び経度の情報(b)」をそれぞれ算出する。
【0061】
そして、ここで算出された「正確な現日時情報(a)」と「緯度及び経度の情報(b)」のうち、「正確な現日時情報(a)」は、「現日時の情報」を示す時計手段12に入力され、該「現日時の情報」を補正して、「正確な現日時(c)」を算出する。ここで算出された「正確な現日時(c)」は、後述の演算制御手段15に入力されるとともに、後述の電流値情報(j)と関連付けられて後述の記憶手段14に入力され、ここに記憶保持される。
【0062】
一方、上記「緯度及び経度の情報(b)」は、後述の記憶手段14に入力され、ここに記憶保持される。
【0063】
「時計手段12」
上記時計手段12は、現日時を表示するもので、この実施形態では「水晶時計」を採用している。この「水晶時計」は、上述のように1日当たり数秒の時刻のずれを生じる場合があることから、この時計手段12で表示される現時刻を、上記GPS電波受信手段11からの「正確な現日時情報(a)」によって補正し、常に正確な現日時(c)」が表示されるようにしている。
【0064】
「光照射スケジュール13」
上記光照射スケジュール13は、植物の種類と光照射の目的(例えば、植物の生育促進、植物の病害虫被害の防止、植物栽培に有用な物質の増加など)に応じて予め設定した光照射のスケジュールであって、光照射スケジュール情報(d)として上記記憶手段14に記憶させてある。
【0065】
この場合、この実施形態においては、上記光照射スケジュール情報(d)を、該光照射スケジュール13の設計者等の特定者のみが利用できる暗号鍵によって暗号化して記憶するようにしており、これによって、長年の試験研究の貴重な成果である上記植物の種類と光照射の目的に応じた光照射スケジュール情報(d)の外部流出を防ぐことができる。また、ここでは、主に暗号処理の速さを重視して、暗号鍵と複合鍵を同じとする共通鍵暗号方式を採用している。
【0066】
例えば、この実施形態のように、光照射器4として白色光の光照射器と緑色光の光照射器を備えたものにあっては、以下のような光照射スケジュールが想定される。
(1)植物の生育促進を目的とする場合は、白色光の光照射器を日出1時間後に点灯し、日没2時間前に消灯する。
(2)植物の病害虫被害の防止を目的とする場合は、緑色光の光照射器を日出4時間前に点灯し、日出1時間前に消灯する。
(3)植物体内の有用物質の増加を目的とする場合は、緑色光の光照射器を日没2時間後に点灯し、日没5時間後に消灯する。
【0067】
「記憶手段14」
上記記憶手段14には上記光照射スケジュール13の光照射スケジュール情報(d)が予め記憶されているが、これに加えて後述する電流センサ3により得られる電流値情報(j)と、光強度センサ6により得られる光強度情報(g)と、温度センサ7により得られる温度情報(h)と、湿度センサ8により得られる湿度情報(i)が、それぞれ正確な現日時(c)と関連付けられた状態で記憶される。
【0068】
なお、この実施形態においては、上記記憶手段14を上記コントローラ1から取り外しができる記録媒体(例えば、「マイクロSDメモリ」とか「フラッシュメモリ」)で構成している。係る構成とすることで、該記憶手段14には上述のように、植物の種類と人工光の照射の目的に応じた光照射スケジュール情報(d)を記憶させてあるため、植物の種類や光照射の目的毎に異なる記憶媒体を用意しておき、それらの記憶媒体を交換するだけで、光照射システムの使用対象及び目的の変更に容易に対応することができる。
【0069】
また、上記記憶手段14には、光照射器4に供給される電気の電流値情報(j)を、上記時計手段12が示す現日時の情報と関連付けて記憶させているため、上記記憶手段14として上記コントローラ1から取り外しができる記憶媒体を使用すれば、該コントローラ1から取り外した記憶媒体を、パソコン等の所定箇所に接続するだけで、容易に情報を読み出して、例えば、電流値と通電時間から推定した光照射量(積算光処理量)と、植物の実際の生育状態との対比分析を容易に行うことができる。
【0070】
さらに、上記記憶手段14として上記コントローラ1から取り外しができる記憶媒体を使用することによって、上記コントローラ1には、上記光照射スケジュール情報(d)とか、光照射器4に供給される電気の電流値情報(j)等の情報は残らないため、ノウハウの外部流出を防ぐことができる。
【0071】
「演算制御手段15」
上記演算制御手段15は、上記時計手段12における補正後の「正確な現日時(c)」と上記記憶手段14から読み出される「経度・緯度情報(b)」を受けて「所定日の日出時刻情報・日没時刻情報(e)を算出する。
【0072】
また、上記演算制御手段15では、算出した「所定日の日出時刻情報・日没時刻情報(e)と、記憶手段14から読み出される「光照射スケジュール情報(d)」と、上記時計手段12が示す「正確な現日時情報(a)」に基づいて、電気スイッチ2に対して光照射器4への電気の供給と遮断を指示する「電気の供給・遮断の指示情報(f)」を求め、これを上記電気スイッチ2に出力する。
【0073】
さらに、上記演算制御手段15では、光強度センサ6から「光強度情報(g)」を、温度センサ7から「温度情報(h)」を、湿度センサ8から「湿度情報(i)」を得るとともに、これら各情報を「正確な現日時(c)」と関連付けて上記記憶手段14に記憶させることは既述の通りである。
【0074】
そして、これら各情報のうち、「光強度情報(g)」は調光器5に入力され、該光照射器4の光強度が光照射の目的に対応した最適な光強度となるように、該光照射器4に供給される電気の電流値が加減制御される。例えば、晴天時のように太陽光の光強度が大きい場合には、光照射器4から照射される補光用の白色光の光強度を小さくするか、あるいは消灯する。また、曇天時のように太陽光の光強度が小さい場合には、光照射器4から照射される白色光の光強度を大きくする。これにより、植物の生育を促進させるとともに、電気の使用量を低減することができる。
【0075】
さらに、上記「光強度情報(g)」を「正確な現日時情報(a)」と関連付けて上記記憶手段14に記憶させることで、後に記憶手段14から、植物栽培環境における太陽光及び人工光を合せた光強度の情報と、光照射時間の情報を読み出して、太陽光と人工光を合せた光照射量(積算光処理量)と植物の実際の生育状態とを容易に対比分析することができる。そして、この分析結果は、今後の植物の育成計画にノウハウとして反映させることができる。
【0076】
また、上記「温度情報(h)」と「湿度情報(i)」を正確な現日時情報(a)と関連付けて上記記憶手段14に記憶させることで、後に記憶手段14から、植物栽培環境における気温及び湿度の情報を読み出して、気温及び湿度と植物の実際の生育状態とを、容易に対比分析することができる。この分析結果は、今後の植物の育成計画にノウハウとして反映させることができる。
【0077】
「警報手段16」
上記警報手段16は、上記電流センサ3からの電流値情報(j)を受けて、検出される電流値が異常な値である場合に警報を発するものであって、この実施形態では視認性を考慮して、これを赤色光LEDライトで構成している。この警報手段16を設けることで、例えば、一部又は全部の光照射器4が故障するなどして光照射が適切な光強度及び時間で行われなくなった場合には、該警報手段16によって管理者に異常の発生が伝えられることから、管理者においてはこの警報を確認して迅速な対策をとることができ、この結果、光照射の目的とする効果が得られなくなるという事態の発生を未然に防ぐことができ、光照射システムの信頼性が担保される。
【0078】
「電気スイッチ2」
上記電気スイッチ2は、リレースイッチで構成され、上記演算制御手段15から「電気の供給・遮断の指示情報(f)」を受けて、上記各光照射器4への電気の供給・遮断を行う。
【0079】
「電流センサ3」
上記電流センサ3は、電源から各光照射器4に供給される電気の電流値を検出して電流値情報(j)を得るものであり、ここで得られた電流値情報(j)は正確な現日時(c)と関連づけられて上記記憶手段14に記憶される。
【0080】
「光照射器4」
上記光照射器4は、LEDライトで構成され、この実施形態では記述のように、白色光LEDと緑色光LEDをそれぞれ2個ずつ備え、これら光色の異なる光照射器4を光照射の目的に応じて使い分ける点は既述の通りである。
【0081】
続いて、この光照射システムZの実際の制御について、図1を参照しつつ、図2図5に基づいて具体的に説明する。
【0082】
図2において、電源(図1参照)が投入されて制御が開始されると、先ずGPS電波受信手段11によりGPS電波情報が受信される(ステップS1)。そして、この受信されたGPS電波情報に基づいて、正確な現日時情報(a)が取得され(ステップS2)、さらにこの正確な現日時情報(a)に基づいて時計手段12の表示時刻が正確な現日時表示に補正され(ステップS3)、正確な現日時(c)が取得される(ステップS4)。
【0083】
次に、GPS電波情報に基づいて、経度・緯度情報(b)が取得され、且つこれが記憶手段14に記憶保持される(ステップS5)。
【0084】
次に、光照射スケジュール13から光照射の目的に適応した光照射スケジュール情報(d)が取得され、且つこれが記憶手段14に記憶保持される(ステップS6)。
【0085】
次に、時計手段12からの正確な現日時(c)と、上記記憶手段14から読み出される経度・緯度情報(b)に基づいて、所定日の日出時刻情報・日没時刻情報(e)を取得する(ステップS7)。
【0086】
次に、この所定日の日出時刻情報・日没時刻情報(e)と、上記時計手段12からの正確な現日時(c)と、上記記憶手段14から読み出される光照射スケジュール情報(d)に基づいて、電気の供給・遮断の指示情報(f)を取得し、これに基づいて電気スイッチ2に電気の供給・遮断の指示を出す(ステップS8)。
【0087】
次に、点灯時刻になったか否かを判断し(ステップS9)、点灯時刻になった時点で、実際に光照射器4に電気を供給してこれを点灯させ、植物への光照射を開始する(ステップS10)。
【0088】
次に、異常状態判定処理を実行する(ステップS11)。即ち、図3に示すように、記憶手段14に記憶されている電流値情報(j)を取得し(ステップS21)、光照射状態下において電流値が異常値を示しているかどうかを判定し(ステップS22)、異常ではないと判定される場合には処理を終了するが、異常であると判定された場合には警報を発出し(ステップS23)、施設管理者の注意を喚起する。
【0089】
次に、センサ情報の記録処理を実行する(ステップS12)。即ち、図4に示すように、先ず電流値情報(j)を取得し(ステップS31)、これを現日時と関連付けて記憶手段14に記憶保持する(ステップS32)。
【0090】
続いて、光強度情報を取得し(ステップS33)、これを現日時と関連付けて記憶手段14に記憶保持し(ステップS34)、さらに温度情報を取得し(ステップS35)、これを現日時と関連付けて記憶手段14に記憶保持する(ステップS36)とともに、湿度情報を取得し(ステップS37)、これを現日時と関連付けて記憶手段14に記憶保持し(ステップS38)、これで処理を終了する。
【0091】
次に、光強度の適正化処理を実行する(ステップS13)。即ち、図5において、先ず、光強度情報(g)を読み出す(ステップS41)とともに、この読み出された光強度が、光照射される植物の種類とか光照射の目的からして適正か否かが判断される(ステップS42)。そして、光強度が適正であると判断される場合にはそのまま処理を終了するが、適正でないと判断された場合は、上記調光器5による光強度の調整操作が実行される(ステップS43)。具体的には、例えば、晴天時のように太陽光の光強度が大きい場合には、光照射器4から照射される補光用の白色光の光強度を小さくするか、あるいは消灯する。また、曇天時のように太陽光の光強度が小さい場合には、光照射器4から照射される白色光の光強度を大きくするものであり、既述したところである。
【0092】
次に、図2に戻って、光照射時間は光照射スケジュールにおいて規定されており、所定の光照射時間が経過した時点で消灯させる必要があり、ステップS14では、消灯時刻に達したか否かを判断し、消灯時刻に達した時点で消灯させる(ステップS15)。以上をもって、光照射に伴う全制御が終了する。
【0093】
ここで、先の記載と重複する部分もあるが、この実施形態の光照射システムZにおける基本的な効果を簡単に説明する。
【0094】
(1)上記時計手段12の示す現日時の情報が、正確な現日時の情報とずれた場合でも、上記GPS電波受信手段11から定期的に得られる正確な現時点の情報に基づいて、時計手段の補正を行うようにしているので、植物に対して正確に所定時刻における所定時間の光照射を行うことができる。
【0095】
(2)一部又は全部の光照射器4が故障するなどして光照射が適切な光強度及び時間で行われなくなった場合には、上記警報手段16によって管理者に異常の発生を伝えることができるため、迅速に対策を施すことで、光照射の目的とする効果が得られなくなるという問題の発生を防ぐことができる。
【0096】
(3)光照射器4に供給される電気の電流値情報(j)が、現日時の情報と関連付けられて上記記憶手段14に記憶されるため、後に該記憶手段14からこれらの情報を読み出して、電流値と通電時間から推定した光照射量(積算光処理量)と植物の実際の生育状態とを、容易に対比分析することができる。分析結果は、今後の植物の育成計画にノウハウとして反映させることができる。また、互いに関連付けられた電流値の情報と現日時の情報から、光照射器4の異常を発見することができる。
【0097】
(4)上記演算制御手段15において、所定日の日出時刻及び日没時刻情報(e)を算出する際に、上記GPS電波受信手段11によって算出された光照射システムZの設置場所の緯度・経度情報(b)を使用するので、緯度及び経度の情報を人手によって入力する必要がなく、便宜であり、また人手による誤入力を防ぐことができる。
【0098】
(5)上記植物の種類と光照射の目的に応じた上記光照射スケジュール情報(d)を、該光照射スケジュール13の設計者等の特定者のみが利用できる暗号鍵によって暗号化して上記記憶手段14に記憶するようにしていることから、長年の試験研究の貴重な成果である上記植物の種類と光照射の目的に応じた光照射スケジュール情報の外部流出を防ぐことができる。
【0099】
(6)上記記憶手段14に上記光照射器4に供給される電流値を電流値情報(j)として記憶し、該電流値情報(j)から読み出される電流値が異常であるときに警報手段16により警報を発するようにしているので、例えば、一部又は全部の光照射器が故障するなどして光照射が適切な光強度及び時間で行われなくなった場合には、上記警報手段16によって管理者に異常の発生が伝えられ、管理者において迅速な対策をとることができる
【産業上の利用可能性】
【0100】
本願発明に係る光照射システム及び光照射方法は、圃場等における植物の光照射による栽培分野において広く利用できるものである。
【符号の説明】
【0101】
1 ・・コントローラ
2 ・・電気スイッチ
3 ・・電流センサ
4 ・・光照射器
5 ・・調光器
6 ・・光強度センサ
7 ・・温度センサ
8 ・・湿度センサ
11 ・・GPS電波受信手段
12 ・・時計手段
13 ・・光照射スケジュール
14 ・・記憶手段
15 ・・演算制御手段
16 ・・警報手段
Z ・・光照射システム
図1
図2
図3
図4
図5