(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】機械式駐車装置
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20220630BHJP
E04H 6/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
E04H6/18 601A
E04H6/00 A
(21)【出願番号】P 2017232275
(22)【出願日】2017-12-04
【審査請求日】2020-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】大川 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】伊波 泰
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115364(JP,A)
【文献】特開2016-102346(JP,A)
【文献】特開2016-173023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00,6/14,6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式駐車装置の運転を操作する運転操作盤と、
該機械式駐車装置の外側に設けられ該運転操作盤に備えて利用者の情報記憶媒体の情報を読み込み及び書き込みする情報読み書き装置と、
前記機械式駐車装置の入出庫階の内側に備えて前記情報記憶媒体に扉閉許可情報を書き込む情報書き込み装置と、を備え
た機械式駐車装置であって、
運転開始時に、前記利用者が所持した前記情報記憶媒体の情報を前記運転操作盤の前記情報読み書き装置へ読み込ませると、前記運転操作盤は、前記情報読み書き装置に読み込まれた情報を認識した後、
当該情報に基づいて前記利用者が正規の利用者であるか判定し、前記正規の利用者であると判定した場合には、前記機械式駐車装置の運転を開始して前記入出庫階の扉を開かせ
るとともに、前記利用者が前記入出庫階から退出する際には前記入出庫階の無人を確認し、前記情報書き込み装置により情報を前記情報記憶媒体へ書き込む操作をするように指示し、
入出庫を行った後に前記入出庫階内の無人を確認した前記利用者が所持する前記情報記憶媒体に、前記入出庫階の内側に設けられた前記情報書き込み装置
により、前記扉閉許可情報を書き込ませ
、
前記利用者が入出庫階から退出して、前記情報記憶媒体の情報を前記機械式駐車装置の外側に設けられ前記運転操作盤に備えられた前記情報読み書き装置に読み込ませ
ると、前記運転操作盤は、読み込んだ情報に前記扉閉許可情報が含まれるか判定し、含まれていると判定した場合には、前記入出庫階の扉を閉めることを可能としたことを特徴とする機械式駐車装置。
【請求項2】
前記入出庫階に複数の前記情報書き込み装置を備えたことを特徴とする請求項1に記載の機械式駐車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車装置内部に人が閉じこめられるのを未然に防止する機械式駐車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式駐車装置は、スペースの少ない土地に多数の車両を効率よく駐車できる駐車設備として住宅密集地等において広く利用されており、利用する土地の広狭や経済性などを考慮した種々の構造のものが提供されている。一般的に機械式駐車装置には、一箇所または複数箇所に入出庫スペースが設けられており、駐車する車両は自走により入出庫スペースへの出入りを行う。入出庫スペースと駐車スペースとの間には、車両を搬送する搬送装置を備えており、入出庫スペースにおいて搬送装置上に車両を搭載し、所定の駐車スペースへと車両を搬送して格納する。入出庫スペースの入出庫口には、外部との空間を遮断する扉が設けられており、機械式駐車装置が動作するときには扉を閉鎖して人が装置内へ進入しないようになっている。機械式駐車装置外部の扉近傍には機械式駐車装置の運転を操作する運転操作盤が設けられており、これを駐車装置の管理人あるいは車両の運転者自身が操作することにより、扉の開閉や搬送装置の動作が行われる。
【0003】
近年、機械式駐車装置は、商業施設での利用に加えてオフィスビルやマンション等の集合住宅に併設されて利用されることも多く、この場合には、駐車装置の管理人が常駐することなく、特定の利用者自身が機械式駐車装置の運転操作を行うことが多い。しかしながら、このように専門の管理人の操作によらず、利用者自身の操作により機械式駐車装置を動作させる場合には、利用者の注意不足や確認不足により、機械式駐車装置内に他の人が取り残された状態で扉が閉じられてしまう可能性がある。例えば、出庫時には利用者が車両を運転して入出庫スペースから退出し、この後、機械式駐車装置の運転操作を行うため、他の人が機械式駐車装置内に取り残されることはほとんどない。これに対して入庫時には、同乗者を乗せたまま入出庫スペースに進入し、この後同乗者の退出を確認しないまま運転操作を行うと、同乗者が機械式駐車装置内に閉じこめられてしまうといった可能性がある。
【0004】
また、入出庫を行っている利用者が入出庫スペースに居るときに、他の利用者が前の利用者が入出庫スペースに居ることに気付かずに操作盤を操作すると、前の利用者を入出庫部内に閉じ込めることになってしまう。このような事態を防止するために、扉を開く前に利用者の認証を行う第1の認証処理を行い、扉を閉じる前に利用者の認証を再度行う第2の認証処理を行って、第1の認証処理の認証情報と第2の認証処理の認証情報とを照合した後、照合結果が一致した場合にのみ扉を閉じる閉扉操作を入力することで閉扉処理が行えるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように2回の認証を行う方式においては、先行する利用者が第2の認証処理を行わず、扉を閉じずに立ち去った場合には、後行の利用者は認証処理を行うことができず機械式駐車装置を運行することができない。このため、このような事態が生じた場合には、扉を閉じる権限を有するサービスエンジニアや、管理会社の担当者が出向いて機械式駐車装置を復旧する必要があり、時間の浪費等により機械式駐車装置の運用性を損なってしまう。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、利用者の安全性を確保するとともに運用性を損なう事のない機械式駐車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1の発明は、機械式駐車装置の運転を操作する運転操作盤と、
該機械式駐車装置の外側に設けられ該運転操作盤に備えて利用者の情報記憶媒体の情報を読み込み及び書き込みする情報読み書き装置と、
前記機械式駐車装置の入出庫階の内側に備えて前記情報記憶媒体に扉閉許可情報を書き込む情報書き込み装置と、を備えた機械式駐車装置であって、
運転開始時に、前記利用者が所持した前記情報記憶媒体の情報を前記運転操作盤の前記情報読み書き装置へ読み込ませると、前記運転操作盤は、前記情報読み書き装置に読み込まれた情報を認識した後、当該情報に基づいて前記利用者が正規の利用者であるか判定し、前記正規の利用者であると判定した場合には、前記機械式駐車装置の運転を開始して前記入出庫階の扉を開かせるとともに、前記利用者が前記入出庫階から退出する際には前記入出庫階の無人を確認し、前記情報書き込み装置により情報を前記情報記憶媒体へ書き込む操作をするように指示し、
入出庫を行った後に前記入出庫階内の無人を確認した前記利用者が所持する前記情報記憶媒体に、前記入出庫階の内側に設けられた前記情報書き込み装置により、前記扉閉許可情報を書き込ませ、
前記利用者が入出庫階から退出して、前記情報記憶媒体の情報を前記機械式駐車装置の外側に設けられ前記運転操作盤に備えられた前記情報読み書き装置に読み込ませると、前記運転操作盤は、読み込んだ情報に前記扉閉許可情報が含まれるか判定し、含まれていると判定した場合には、前記入出庫階の扉を閉めることを可能としたことを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明は、前記入出庫階に複数の前記情報書き込み装置を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、利用者は入出庫後に入出庫内の情報書き込み装置を操作せねばならず、利用者による無人確認行動を促進することができる。また、先行の利用者が扉を閉め忘れて立ち去ったとしても、後行の利用者は入出庫階内の情報書き込み装置を操作することにより機械式駐車装置の運転が可能になるので、機械式駐車装置の運用性を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。
図1及び
図2は、機械式駐車装置の概略を示す側面図及び正面図であり、本説明においては、具体例としてエレベータ式機械式駐車装置を示して説明を行う。機械式駐車装置10の内部には、中央を上下に貫通する昇降路11が形成されており、この昇降路11を昇降可能に昇降リフト12を設けている。昇降リフト12は、車両19を搭載する搬器13の四隅にワイヤロープ14を連結し、このワイヤロープ14を機械式駐車装置10の上部に設けた巻き上げ装置(図示せず)により、巻き上げ又は繰り出しすることにより搬器13を昇降駆動するようにしたものである。
【0013】
昇降路11の両側方には、複数の駐車室17が上下多段に形成されており、各駐車室17には、それぞれ車両19を搭載するためのパレット18を備えている。この機械式駐車装置10においては、地上1階部分を車両19の入出庫階15としており、車両19の入退出方向16は、搬器13の長手方向に対して直交する方向に設定されている。車両19が格納されていない何れかの駐車室17にある空のパレット18は、搬器13上へスライド(横行)させられた後、搬器13とともに入出庫階15に降下して停止する。入出庫階15の下方には、パレット18を旋回して向きを変えるパレット旋回装置20を備えており、入出庫階15に到着したパレット18は、このパレット旋回装置20により90°旋回させられて、その長手方向が車両19の入退出方向16となるように方向転換して待機する。
【0014】
車両19の入庫時には、車両19が自走してパレット18上へと乗り込んだ後、車両19及びパレット18は、パレット旋回装置20により90°旋回させられて搬器13上に載置される。そしてこの後搬器13は、元の駐車室17の位置、すなわち、パレット18を取り出して空になった駐車室17まで車両19及びパレット18を搬送し、この後パレット18ごと車両19を横行させて格納する。車両19の出庫時は、これと逆の動作であり、車両19が格納された駐車室17まで空の搬器13が移動した後、駐車室17からパレット18および車両19を搬器13上へ横行させる。この後、搬器13が下降して入出庫階15に到着すると、車両19及びパレット18がパレット旋回装置20により90°旋回させられ、運転者が車両19に乗り込んで車両19を運転して機械式駐車装置10から退出する。
【0015】
図3は、入出庫階15の平面図である。入出庫階15の出入り口には、引き戸式の扉22を備えており、扉22近傍の外壁には、運転操作盤21を備えている。運転操作盤21には、入出庫を選択する釦類やタッチパネル等を備えており、利用者が運転操作盤21を操作することにより機械式駐車装置10が作動する。入庫時には、利用者は車両19を扉22の前方で車両19を停車させ、運転操作盤21を操作すると扉22が開いて車両19の進入が可能になる。次いで、利用者が車両19を運転して入出庫階15の所定位置に車両19を停車させた後、利用者が退出して運転操作盤21を操作すると、扉22が閉じた後にパレット旋回装置20および搬器13が動作して所定の駐車室17に車両19が格納される。出庫時は、機械式駐車装置10の扉22は閉じられた状態であり、この状態で利用者は車両19が格納された駐車室17の指定や装置の運転開始等の操作を運転操作盤21にて行う。車両19が駐車室17から運搬されて入出庫階15にて出庫可能な状態になると、扉22が自動的に開いた後、利用者が内部へ入構し車両19を運転して退出する。その後利用者は、一旦車両19を停車させ、運転操作盤21を操作して扉22を閉じる。
【0016】
運転操作盤21には、運転釦、非常停止釦、完了釦、表示部、スピーカー等を備えるとともに、利用者が所持する情報記憶媒体の情報を読み込み及び書き込み可能な情報読み書き装置23を備えており、また、入出庫階15の奥側壁面には、情報記憶媒体へ情報を書き込む情報書き込み装置24を備えている。情報記憶媒体は、情報を電子的に記憶するICカード等であって、利用者によって異なる情報が固定情報として記憶されている。
【0017】
運転操作盤21での操作は以下のように行われる。まず、運転開始時に利用者は、所持した情報記憶媒体の情報を運転操作盤21の情報読み書き装置23へ読み込ませる。運転操作盤21内では、読み込んだ情報が正規の利用者であるか等を判定し、正規の利用者である場合には、表示部やスピーカーにより運転釦を押すように利用者へ知らせる。利用者が運転釦を押すと運転が開始され、前述したように空のパレット18又は車両19を搭載したパレット18が入出庫階15へ搬送された後、所定の動作を行って扉22が開く。この際に運転操作盤21の表示部やスピーカーからは、利用者が入出庫階15から退出する際には入出庫階15が無人である事を確認し、情報書き込み装置24により情報を情報記憶媒体へ書き込む操作、例えばICカードを近づけたりタッチする操作をするように指示がなされる。
【0018】
利用者は、入出庫を行なった後、上記指示に従って入出庫階15内の無人を確認し、情報書き込み装置24により情報を情報記憶媒体へ書き込む。情報書き込み装置24には、扉22を可能にする扉閉許可情報が記憶されており、情報記憶媒体にはこの扉閉許可情報が書き込まれる。次いで、利用者は入出庫階15から退出し、運転操作盤21にて情報記憶媒体の情報を情報読み書き装置23へ読み込ませる。運転操作盤21は、読み込んだ情報に扉閉許可情報が含まれるかどうかを判定し、含まれている場合には完了釦が有効になって、これを利用者が押すことによって扉22が閉じる。また、情報記憶媒体に記憶された扉閉許可情報は、情報読み書き装置23へ読み込まれた後に消去され、情報記憶媒体は初期の状態に戻る。一方、情報記憶媒体に扉閉許可情報が含まれていなかった場合には、再び無人の確認と情報書き込み装置24を操作する旨の指示が運転操作盤21によりなされ、利用者は再び入出庫階15に入構して上記の操作を行う。
【0019】
以上のように利用者は、入出庫階15内で情報書き込み装置24の操作を行わないと扉22を閉じることが出来ないので、利用者が実際に入出庫階15内に入った状態で無人確認を行うようにすることができる。また、情報書き込み装置24を奥側壁面の両側方に設ければ、車両19の両側方も視認することができるので、より確実に無人確認を行わせることができる。さらには、利用者が扉22を閉じる操作を忘れて立ち去った場合であっても、後行の利用者は自分の情報記憶媒体により情報読み書き装置23の操作を行って運転の終了動作を行った後、さらに自らの情報記憶媒体によって新たに運転を再開することができ、時間を浪費することなく運行上の利便性が向上する。
【符号の説明】
【0020】
10 機械式駐車装置
11 昇降路
12 昇降リフト
13 搬器
14 ワイヤロープ
15 入出庫階
16 入退出方向
17 駐車室
18 パレット
19 車両
20 パレット旋回装置
21 運転操作盤
22 扉
23 情報読み書き装置
24 情報書き込み装置