(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】ハーネスボード用台車、ハーネスボード収納ラックおよびハーネスボード運用支援システム
(51)【国際特許分類】
B62B 3/10 20060101AFI20220630BHJP
E04G 21/14 20060101ALI20220630BHJP
H01B 13/012 20060101ALI20220630BHJP
B62B 5/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B62B3/10 Z
E04G21/14
H01B13/012 Z
B62B5/00 F
(21)【出願番号】P 2018133216
(22)【出願日】2018-07-13
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000113403
【氏名又は名称】ホリゾン・インターナショナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】村谷 康徳
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-031248(JP,A)
【文献】特開2018-065500(JP,A)
【文献】特開平11-198982(JP,A)
【文献】実開平06-060932(JP,U)
【文献】特開2005-240294(JP,A)
【文献】特開2007-320563(JP,A)
【文献】特開2017-220425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00- 5/08
E04G 21/14-21/22
H01B 13/012
B25H 1/00- 5/00
B65D 19/00-19/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面にキャスターを有する基体と、
前記基体に連結され、ハーネスボードを起立状態で支持する矩形状の受枠と、を備え、
前記受枠は、前記ハーネスボードの裏面を支持する第1の支持面、および、前記受枠の1つの短辺縁に沿ってのび、前記ハーネスボードの互いに直交した一対の側端面のうちの一方の側端面を支持する第2の支持面、および、前記受枠の前記短辺縁に直交する1つの長辺縁に沿ってのび、前記ハーネスボードの前記一対の側端面のうちの他方の側端面を支持する第3の支持面を有しており、さらに、
前記受枠を、前記基体に対して、前記第1の支持面が前記基体から遠ざかる側に位置しかつ上向きになるように傾斜させて、当該傾斜面に垂直な軸のまわりに回転可能に連結する連結ユニットと、
前記基体および前記受枠間、または前記連結ユニットに設けられ、前記受枠を、前記第2の支持面が上向き水平となるボード搭載位置と、前記ボード搭載位置から90度回転して、前記第3の支持面が上向きとなるボード設定位置とに一時的に固定するロック機構と、を備えたことを特徴とするハーネスボード用台車。
【請求項2】
前記受枠の前記第2の支持面に設けられ、前記受枠の前記短辺縁に沿ってのびるフリーローラコンベヤを、さらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のハーネスボード用台車。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のハーネスボード用台車と組み合わせて使用するハーネスボード収納ラックであって、
前後端を有する基台と、
前記基台の上面に互いに間隔をあけて立設され、それぞれ前記基台の前後方向にのびる複数の仕切と、を備え、
隣り合う前記仕切間に、前記ハーネスボードが起立状態で収納され得る収納スペースが形成されており、さらに、
前記基台の後端側において前記隣り合う仕切間に設けられたボード脱落防止用ストッパと、
前記基台の上面の高さレベルが、前記ハーネスボード用台車の前記ボード搭載位置にある前記受枠の前記第2の支持面の高さレベルに等しくなっていることを特徴とするハーネスボード収納ラック。
【請求項4】
前記収納スペースにおける、前記基台の上面に設けられて、前記基台の前後方向にのびるフリーローラーコンベヤを、さらに備えたことを特徴とする請求項3に記載のハーネスボード収納ラック。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のハーネスボード用台車と、請求項3または請求項4に記載のハーネスボード収納ラックとからなるハーネスボード運用支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスの製造に使用するハーネスボードを収納場所から取り出して作業場所まで搬送し、所定の作業位置にセットするためのハーネスボード用台車、および当該ハーネスボード用台車と組み合わせて使用するハーネスボード収納ラック、および当該ハーネスボード用台車と当該ハーネスボード収納ラックからなるハーネスボード運用支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のハーネスボード用台車として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
特許文献1に記載のハーネスボード用台車は、基台部と、基台部に回転自在に支持された受台部とからなり、基台部は矩形状に形成され、基台部の下面側中間部に補強板が設けられ、補強板の下面にキャスターが取り付けられている。また、基台部の上面側の長手方向両側に支柱が立設され、支柱の上端部に軸受が固定されている。
【0003】
受台部は矩形状に形成され、受台部の両面がハーネスボードを支持する支持面となっている。また、受台部の外周部分には、押さえ部材が取り付けられている。押さえ部材は、支持面上に載置されたハーネスボードの外周端部を受台部との間で挟持して、ハーネスボードを支持面に固定する。
【0004】
さらに、受台部の長手方向両側部に支軸が突設され、支軸は、基台部の軸受に回転自在に支持されている。また、支軸の両側には固定ピンが突設されている。固定ピンには、固定金具の一端が係止され、固定金具の他端は、支柱に回転自在に支持されている。
【0005】
そして、受台部の2つの支持面に異なる種類の2つのハーネスボードが固定され、受台部が支軸のまわりに回転せしめられることで、支持面、すなわちハーネスボードが切り替えられる。
それによって、ハーネスボードの交換が容易になり、作業効率がアップする。
【0006】
しかしながら、この従来の台車においては、ハーネスボードが受台部の支持面に押さえ部材によって取り付けられるが、この取付作業の際、作業者は、ハーネスボードを支持面の所定位置まで持ち上げ、所定位置に位置決めした状態で、押さえ部材で支持面に固定しなければならない。
【0007】
ところて、ハーネスボードは、通常、サイズが1,800mm×900mmで、重量も最大で15Kg程度あり、大型でしかも重い。
そのため、ハーネスボードの受台部への取付作業にはかなり労力を要しており、さらには、作業中にハーネスボードが作業者の足元に落下する等の危険性もあり、この作業を女性作業者に担当させることが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、ハーネスボードのセッティング作業(ハーネスボードを収納場所から取出し、作業場所まで搬送し、所定の作業位置にセットし、作業後再び収納場所に収納する作業)を容易かつ安全に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明によれば、下面にキャスターを有する基体と、前記基体に連結され、前記ハーネスボードを起立状態で支持する矩形状の受枠と、を備え、前記受枠は、前記ハーネスボードの裏面を支持する第1の支持面、および、前記受枠の1つの短辺縁に沿ってのび、前記ハーネスボードの互いに直交した一対の側端面のうちの一方の側端面を支持する第2の支持面、および、前記受枠の前記短辺縁に直交する1つの長辺縁に沿ってのび、前記ハーネスボードの前記一対の側端面のうちの他方の側端面を支持する第3の支持面を有しており、さらに、前記受枠を、前記基体に対して、前記第1の支持面が前記基体から遠ざかる側に位置しかつ上向きになるように傾斜させて、当該傾斜面に垂直な軸のまわりに回転可能に連結する連結ユニットと、前記基体および前記受枠間、または前記連結ユニットに設けられ、前記受枠を、前記第2の支持面が上向き水平となるボード搭載位置と、前記ボード搭載位置から90度回転して、前記第3の支持面が上向きとなるボード設定位置とに一時的に固定するロック機構と、を備えたことを特徴とするハーネスボード用台車が提供される。
【0011】
本発明の好ましい実施例によれば、前記ハーネスボード用台車は、さらに、前記受枠の前記第2の支持面に設けられ、前記受枠の前記短辺縁に沿ってのびるフリーローラコンベヤを備えている。
【0012】
また、本発明によれば、上記ハーネスボード用台車と組み合わせて使用するハーネスボード収納ラックであって、前後端を有する基台と、前記基台の上面に互いに間隔をあけて立設され、それぞれ前記基台の前後方向にのびる複数の仕切と、を備え、隣り合う前記仕切間に、前記ハーネスボードが起立状態で収納され得る収納スペースが形成されており、さらに、前記基台の後端側において前記隣り合う仕切間に設けられたボード脱落防止用ストッパと、を備え、前記基台の上面の高さレベルが、前記ハーネスボード用台車の前記ボード搭載位置にある前記受枠の前記第2の支持面の高さレベルに等しくなっていることを特徴とするハーネスボード収納ラックが提供される。
【0013】
好ましくは、前記ハーネスボード収納ラックは、さらに、前記収納スペースにおける、前記基台の上面に設けられて、前記基台の前後方向にのびるフリーローラーコンベヤを備えている。
【0014】
また、本発明によれば、上記ハーネスボード用台車と、上記ハーネスボード収納ラックとからなるハーネスボード運用支援システムが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ハーネスボード用台車は、受枠がボード搭載位置に固定された状態で、ハーネスボードの収納場所まで移動せしめられる。そして、必要なハーネスボードが収納場所から作業者の手で取り出され、次いで、受枠の第2の支持面の高さまで持ち上げられて、ハーネスボードの互いに直交する一対の側端面のうちの一方の側端面の一端部が第2の支持面上に載せられた後、第2の支持面上を第3の支持面に当接するまでスライドせしめられる。それによって、ハーネスボードがハーネスボード用台車に搭載される。
【0016】
その後、ハーネスボード用台車は作業場所まで移動せしめられる。そして、作業者の手で受枠の固定が解除されるとともに、受枠がボード搭載位置からボード設定位置まで回転せしめられ、ボード設定位置に固定される。それによって、ハーネスボードが作業位置にセットされる。
【0017】
作業終了後、作業者の手で受枠の固定が解除されるとともに、受枠がボード設定位置からボード搭載位置まで回転せしめられ、ボード搭載位置に固定される。
そして、ハーネスボード用台車は収納場所まで移動せしめられ、そこで、作業者の手でハーネスボードが受枠から引き出されて、元の収納場所に収納される。
【0018】
こうして、本発明によれば、ハーネスボードのセッティング作業(ハーネスボードを収納場所から取出し、作業場所まで搬送し、所定の作業位置にセットし、作業後再び収納場所に収納する作業)を容易かつ安全に行うことができ、女性作業員であっても問題なくこの作業を担当することができる。
【0019】
また、このハーネスボード用台車を本発明によるハーネスボード収納ラックと組み合わせて使用した場合には、ハーネスボードのハーネスボード用台車への搭載時、ハーネスボード用台車が、ハーネスボード収納ラックの前方に、ボード搭載位置に固定された受枠の第2の支持面における第3の支持面から遠ざかる側の端が、ハーネスボード収納棚の前端であって、該当するハーネスボードが収納された収納スペースの位置に一致する配置で停車せしめられる。
【0020】
このとき、ハーネスボード用台車の受枠の第2の支持面と、ハーネスボード収納ラックの基台の上面(すなわち、収納スペースの底面)は同じ高さレベルに位置する。
そして、該当するハーネスボードは、作業者の手で、家屋の引き戸を動かす要領で、ハーネスボード収納ラックからハーネスボード用台車の受枠に向けてスムーズに引き出されて受枠に搭載される。
【0021】
また、ハーネスボードによる作業の完了後、ハーネスボードを収納する際にも、ハーネスボード用台車が、ハーネスボードの搭載時と同様にハーネスボード収納ラックの前に停車せしめられる。そして、ハーネスボードが、作業者の手で、家屋の引き戸を動かす要領で、ハーネスボード用台車の受枠からハーネスボード収納ラック向けてスムーズに引き出されて収納スペースに収納される。
【0022】
こうして、本発明によるハーネスボード用台車に本発明のよるハーネスボード収納ラックを組み合わせて使用することによって、ハーネスボードの収納場所からハーネスボード用台車への搭載並びにハーネスボード用台車から収納場所への収納がより容易かつ安全に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の1実施例によるハーネスボード用台車の斜視図である。
【
図2】
図1のハーネスボード用台車の側面図であり、(A)は受枠がボード搭載位置にある状態を示し、(B)は受枠がボード設定位置にある状態を示している。
【
図3】
図1のハーネスボード用台車の正面図であり、(A)は受枠がハーネスボードを支持してボード搭載位置にある状態を示し、(B)は受枠がハーネスボードを支持してボード設定位置にある状態を示している。
【
図4】
図1のハーネスボード用台車のストッパを示す図であり、(A)は下方から見た斜視図であり、(B)は、ストッパがロック位置にあるときの横断面図であり、(C)はストッパがロック解除位置にあるときの横断面図である。
【
図5】
図1のハーネスボード用台車のロック機構を示す部分拡大斜視図である。
【
図6】本発明の1実施例によるハーネスボード収納ラックの斜視図である。
【
図7】
図1のハーネスボード用台車と
図6のハーネスボード収納ラックを組み合わせたときの使用方法を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の構成を好ましい実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明の1実施例によるハーネスボード用台車の斜視図である。
図2Aは、
図1のハーネスボード用台車の、受枠がボード搭載位置にあるときの側面図であり、
図2Bは、
図1のハーネスボード用台車の、受枠がボード設定位置にあるときの側面図である。
また、
図3Aは、
図1のハーネスボード用台車の、受枠がハーネスボードを支持してボード搭載位置にあるときの正面図であり、
図3Bは、
図1のハーネスボード用台車の、受枠がハーネスボードを支持してボード設定位置にあるときの正面図である。
【0025】
図1~
図3を参照して、本発明のハーネスボード用台車Wは、下面の四隅にキャスターを有する基体1と、基体1の前面に連結され、ハーネスボードHBを起立状態で支持する矩形状の受枠2を備えている。
【0026】
基体1は、複数本の棒体から組み立てられており、下面にキャスター3を備えた直方体形状の下部1aと、下部1aの上端に接続し、その前面が上向きに傾斜した上部1bを有している
【0027】
受枠2は、互いに平行な短辺縁をなす第1および第2の棒体2a、2bと、第1および第2の棒体2a、2bの一端同士を接続し、1つの長辺縁をなす第3の棒体2cと、第1および第2の棒体2a、2bの他端同士を接続し、別の長辺縁を形成する第4の棒体2dと、十字状をなし、第1および第2の棒体2a、2bの中間部同士、および第3および第4の棒体の中間部同士を接続する補強部材2eとから形成されている。
【0028】
さらに、第1の棒体2aと第3の棒体2cとの接続部、および第1の棒体2aの他端にそれぞれ補助部材2f、2gが接続されて、第1~第4の棒体2a~2dおよび補強部材2eによって画成された面F1から傾斜して起立し、また、補助部材2f、2gの先端同士が連結部材2hによって連結されている。
【0029】
さらに、第3の棒体2cの他端および中間部の複数の位置にそれぞれ補助部材2iが接続されて、面F1に垂直にのび、また、補助部材2iの先端同士が連結部材2jによって連結されている。
【0030】
そして、面F1が、ハーネスボードHBの裏面を支持する第1の支持面4を形成し、第1の棒体2a、補助部材2f、2g、および連結部材2hによって画成された面F2が、ハーネスボードHBの互いに直交した一対の側端面のうちの一方の側端面を支持する第2の支持面5を形成し、第3の棒体2c、補助部材2f、2i、および連結部材2jによって画成された面F3が、ハーネスボードHBの一対の側端面のうちの他方の側端面を支持する第3の支持面6を形成する。
【0031】
受枠2は、補強部材2eの中央交差部において、公知の適当な連結ユニット7によって、基体1の上部1bの前面に対し、第1の支持面4が基体1から遠ざかる側に位置しかつ上向きになるように傾斜する配置で、当該傾斜面に垂直な軸のまわりに回転可能に連結されている。
そして、受枠2は、第2の支持面5が上向き水平となるボード搭載位置(
図2A、
図3A参照)と、ボード搭載位置から90度回転して、第3の支持面6が上向きとなるボード設定位置(
図2B、
図3B参照)とを取り得る。
【0032】
また、受枠2の補強部材2eにおける第1の棒体2aに平行な腕部分に、コ字状の第1のバー8が固定されて、受枠2から受枠2および基体1間のスペースに突出し、補強部材2eにおける第3の棒体2cに平行な腕部分には、コ字状の第2のバー9が固定されて、受枠2から受枠2および基体1間のスペースに突出している。
【0033】
図4Aは、
図1のハーネスボード用台車のストッパを下方から見た斜視図であり、
図4Bは、ストッパがロック位置にあるときの横断面図であり、
図4Cは、ストッパがロック解除位置にあるときの横断面図である。また、
図5は、
図1のハーネスボード用台車のロック機構を示す部分拡大斜視図である。
図4および
図5に示すように、基体1の上部1bの前面に、受枠2がボード設定位置からボード搭載位置に向けて回転してボード搭載位置に到達したとき、受枠2の第1のバー8を把持して受枠2をボード搭載位置に固定する第1のストッパ10が設けられている。
【0034】
第1のストッパ10は、この実施例では、基体上部1bの前面を形成する水平な棒体1cに固定されて、受枠2の第1のバー8の運動経路内に突出する断面がL字状の水平な固定板11と、固定板11の下面にバネ付き蝶番12を介して接続された断面がU字状の可動板13から構成されている。
【0035】
この場合、バネ付き蝶番12の一片側が固定板11の下面に固定される一方、バネ付き蝶番12の他片側が、可動板13の平行な一対の側壁13a、13bのうちの一方の側壁13aの内面に固定され、可動板13は、バネ付き蝶番12によって、常時、一方の側壁13aが固定板11に当接する向きに弾性付勢されている。
【0036】
こうして、第1のストッパ10は、可動板13がバネ付き蝶番12の弾性付勢力によって一方の側壁13aにおいて固定板11に当接し、受枠2の第1のバー8を、固定板11および可動板13および基体1の棒体1c間に把持、固定するロック位置(
図4B参照)と、可動板13がバネ付き蝶番12の弾性付勢力に抗して蝶番12のまわりに固定板11から離れる向きに回動することによって、受枠2の第1のバー8の固定を解除するロック解除位置(
図4C参照)とをとる。
【0037】
また、可動板13の一対の側壁13a、13bのうちの他方の側壁13bの上端は、外側に鋭角をなして折り返されている。
そして、受枠2がボード搭載位置の手前からボード搭載位置まで回転する間に、第1のバー8が可動板13の折り返し部分13cに当接して第1のストッパ10をロック位置からロック解除位置まで動かすとともに、第1のストッパ10内に進入し、受枠2がボード搭載位置に到達したとき、第1のバー8が固定板11に当接するとともに、第1のストッパ10がロック解除位置からロック位置まで戻る。
それによって、受枠2がボード搭載位置に固定される。
【0038】
基体1の上部1bの前面には、また、第1のストッパ10による受枠2の固定を解除するための第1の解除機構14が設けられている。
第1の解除機構14は、基体1の上部1bにおける第1のストッパ10の下方に取り付けられ、上部1bの前面に垂直な軸のまわりに回転可能なプーリー15と、上部1bの前面の側部に、管状スライドガイド16を介して水平方向にスライド可能に取り付けられた操作ロッド17と、一端が第1のストッパ10の可動板13の折り返し部分13cに取り付けられ、他端がプーリー15を経て操作ロッド17の内側端に取り付けられた紐18とから構成されている。
【0039】
そして、操作ロッド17が外側に引っ張られることによって、第1のストッパ10の可動板13がバネ付き蝶番12の弾性付勢力に抗して固定板11から離間し、第1のストッパ10がロック解除位置をとり、操作ロッド17を外側に引っ張る力が取り去られることによって、第1のストッパ10の可動板13がバネ付き蝶番12の弾性付勢力によって元の位置に戻り、第1のストッパ11がロック位置をとる。
【0040】
また、基体1の上部1bの前面には、受枠2がボード搭載位置からボード設定位置に向けて回転してボード設定位置に到達したとき、受枠2の第2のバー9を把持して受枠2をボード設定位置に固定する第2のストッパ19と、第2のストッパ19による受枠2の固定を解除するための第2の解除機構20が取り付けられている。
第2のストッパ19および第2の解除機構20は第1のストッパ10および第1の解除機構14と同一の構成を有している。よって、第2のストッパ19および第2の解除機構20の詳細な説明は省略する。
【0041】
第1のバー8、第2のバー9、第1のストッパ10、第1の解除機構14、第2のストッパ19および第2の解除機構20から、受枠2をボード搭載位置と、ボード設定位置とに一時的に固定するロック機構21が構成される。
【0042】
なお、ロック機構21の構成はこの実施例に限定されず、ロック機構21は、受枠2をボード搭載位置とボード設定位置とに一時的に固定するのに適した任意の構成を有し得る。また、ロック機構21を、基体1および受枠2間ではなく、連結ユニット7に設けてもよい。
【0043】
再び
図1を参照して、本発明のハーネスボード用台車Wは、さらに、受枠2の第2の支持面5に設けられ、受枠2の短辺縁に沿ってのびるフリーローラコンベヤ22(フリーローラコンベヤ22を構成する複数のローラの回転軸はそれぞれ第2の支持面5の幅方向にのびる)を備えている。
【0044】
次に、本発明によるハーネスボード用台車Wの使用方法を説明する。
ハーネスボード用台車WにハーネスボードHBが搭載される時は、受枠2が第1のストッパ10によってボード搭載位置に固定された状態で、ハーネスボードHBの収納場所まで移動せしめられる。そして、必要なハーネスボードHBが収納場所から作業者の手で取り出され、次いで、受枠2の第2の支持面5の高さまで持ち上げられて、ハーネスボードHBの互いに直交する一対の側端面のうちの一方の側端面の一端部がフリーローラコンベヤ22上に載せられた後、フリーローラコンベヤ22上を受枠の第3の支持面6に当接するまで押される。
それによって、ハーネスボードHBがハーネスボード用台車Wに搭載される。
【0045】
その後、ハーネスボード用台車Wは作業場所まで移動せしめられる。
そして、作業者の手で第1の解除機構14の操作ロッド17が外側に引っ張られて第1のストッパ10による受枠2の固定が解除され、受枠2が作業者の手でボード搭載位置からボード設定位置まで回転せしめられる。受枠2は、ボード設定位置に到達すると、第2のストッパ19によって自動的に固定される。
それによって、ハーネスボードHBが作業位置にセットされる。
【0046】
ワイヤーハーネスの製造作業の終了後、作業者の手で第2の解除機構20の操作ロッド17が外側に引っ張られて第2のストッパ19による受枠2の固定が解除され、受枠2が作業者の手でボード設定位置からボード搭載位置まで回転せしめられる。受枠2は、ボード搭載位置に到達すると、第1のストッパ10によって自動的に固定される。
そして、ハーネスボード用台車Wは収納場所まで移動せしめられ、そこで、作業者の手でハーネスボードHBがフリーローラコンベヤ22を用いて受枠2から引き出されて、元の収納場所に収納される。
【0047】
こうして、本発明によれば、ハーネスボードHBのセッティング作業(ハーネスボードHBを収納場所から取出し、作業場所まで搬送し、所定の作業位置にセットし、作業後再び収納場所に収納する作業)を容易かつ安全に行うことができ、女性作業員であっても問題なくこの作業を担当することができる。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明の構成は上記実施例に限定されるものではない。
例えば、上記実施例では、ハーネスボード用台車の基体および受枠を棒状部材の組立体から形成したが、基体および受枠を板状部材を主体として形成することもできる。
また、上記実施例では、受枠の第2の支持面にフリーローラコンベヤを設けたが、フリーローラコンベヤを設けずに、第2の支持面を平面状に形成してもよい。
【0049】
図6は、
図1のハーネスボード用台車と組み合わせて使用される本発明のハーネスボード収納ラックの斜視図である。
図6に示すように、本発明のハーネスボード収納ラックXは、前後端23a、23bを有する基台23を備えている。そして、基台23の上面の高さレベルは、ハーネスボード用台車Wのボード搭載位置にある受枠2の第2の支持面5の高さレベルに等しくなっている。
【0050】
ハーネスボード収納ラックXは、また、基台23の上面に互いに間隔をあけて立設され、それぞれ基台23の前後方向にのびる複数の仕切24を備えており、隣り合う仕切24間には、ハーネスボードHBが起立状態で収納され得る収納スペース25が形成されている。
【0051】
また、基台23の後端側において、隣り合う仕切24間に、ボード脱落防止用ストッパ26が設けられている。
この実施例では、ボード脱落防止用ストッパ26は、各仕切24の上部を連結する単一の水平なバーからなっている。
【0052】
さらに、収納スペース25の底面(収納スペース25における基台23の上面)に、フリーローラコンベヤ27が設けられ、基台23の前後方向にのびている(フリーローラコンベヤ27を構成する複数のローラの回転軸はそれぞれ基台23の左右方向にのびている)。
フリーローラコンベヤ27は、必要に応じて設けられる。
【0053】
図7は、
図1のハーネスボード用台車と
図6のハーネスボード収納ラックを組み合わせたときの使用方法を説明する斜視図である。
図7を参照して、このハーネスボード収納ラックXを
図1のハーネスボード用台車Wと組み合わせて使用した場合には、ハーネスボードHBのハーネスボード用台車Wへの搭載時、ハーネスボード用台車Wが、ハーネスボード収納ラックXの前方に、ボード搭載位置に固定された受枠2の第2の支持面5(フリーローラコンベヤ22)における第3の支持面6から遠ざかる側の端が、ハーネスボード収納ラックXの前端であって、該当するハーネスボードHBが収納された収納スペース25の位置に一致する配置で停車せしめられる。
【0054】
このとき、ハーネスボード用台車Wの受枠2のフリーローラコンベヤ22の搬送面と、ハーネスボード収納ラックXのフリーローラコンベヤ27の搬送面は同じ高さレベルに位置する。
そして、該当するハーネスボードHBは、作業者の手で、家屋の引き戸を動かす要領で、ハーネスボード収納ラックXの収納スペース25からハーネスボード用台車Wの受枠2に向けてスムーズに引き出されて受枠2に搭載される。
【0055】
また、ハーネスボードHBを用いたワイヤハーネス製造作業の完了後、ハーネスボードHBを収納する際にも、ハーネスボード用台車Wが、ハーネスボードHBの搭載時と同様にハーネスボード収納ラックXの前に停車せしめられる。そして、ハーネスボードHBが、作業者の手で、家屋の引き戸を動かす要領で、ハーネスボード用台車Wの受枠2からハーネスボード収納ラックXに向けてスムーズに引き出されて収納スペース25に収納される。
【0056】
本発明によるハーネスボード用台車に本発明のよるハーネスボード収納ラックを組み合わせて使用することによって、ハーネスボードの収納場所からハーネスボード用台車への搭載並びにハーネスボード用台車から収納場所への収納がより容易かつ安全に行えるようになる。
【0057】
こうして、本発明のハーネスボード用台車Wと本発明のハーネスボード収納ラックXを組み合わせは、ハーネスボード運用支援システムを構成する。
【符号の説明】
【0058】
1 基体
1a 下部
1b 上部
1c 棒体
2 受枠
2a~2d 第1~第4の棒体
2e 補強部材
2f、2g 補助部材
2h 連結部材
2i 補助部材
2j 連結部材
3 キャスター
4 第1の支持面
5 第2の支持面
6 第3の支持面
7 連結ユニット
8 第1のバー
9 第2のバー
10 第1のストッパ
11 固定板
12 バネ付き蝶番
13 可動板
13a、13b 側壁
13c 折り返し部分
14 第1の解除機構
15 プーリー
16 管状スライドガイド
17 操作ロッド
18 紐
19 第2のストッパ
20 第2の解除機構
21 ロック機構
22 フリーローラコンベヤ
23 基台
23a 前端
23b 後端
24 仕切
25 収納スペース
26 ボード脱落防止用ストッパ
27 フリーローラコンベヤ
F1~F3 面
HB ハーネスボード
W ハーネスボード用台車
X ハーネスボード収納ラック