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特許7097063リンク機構、およびディスクブレーキ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】リンク機構、およびディスクブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 21/10 20060101AFI20220630BHJP
   F16D 55/22 20060101ALI20220630BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
F16H21/10 F
F16D55/22 Z
F16D65/18
F16H21/10 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018142929
(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公開番号】P2020020363
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000227755
【氏名又は名称】日本アイキャン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】春日 紀重
(72)【発明者】
【氏名】松本 誠一郎
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-037186(JP,A)
【文献】特開平09-105433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 21/00
F16D 55/00
F16D 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する三方向を上下、左右、前後方向とするとともに、上下方向および左右方向を含む面を揺動面として、
前記揺動面内で揺動する揺動部材を含んで構成されるリンク機構であって、
前記揺動部材と、前記揺動面内で直線運動する第1直動部材および第2直動部材とが第1クロスピースおよび第2クロスピースを介して連動し、
前記揺動部材は、前端面を構成する平板状の第1揺動部材と、後端面を構成する平板状の第3揺動部材と、第1揺動部材と第3揺動部材との間に介在する第2揺動部材とからなり、
記第1クロスピースは、前端面および後端面に、それぞれ前方および後方に円柱状に突出する回転軸を有し、前記第1揺動部材と前記第2揺動部材間に回転可能に軸支されているとともに、前記第1直動部材の先端を支持し、
前記第2クロスピースは、前後方向に円柱状に突出する回転軸を有して、前記第2揺動部材と前記第3揺動部材との間に回転可能に軸支されているとともに、前記第2直動部材の先端を支持し、
前記第2揺動部材は、一体成形品からなり、前端面および後端面が、それぞれ前記第1揺動部材および前記第3揺動部材と対面する形状に形成されているとともに、当該前端面および後端面に、前方および後方に突出する柱状の連結部が形成され、
前記第1揺動部材および前記第3揺動部材が前記連結部を介して前記第2揺動部材と接続されて、前記第2揺動部材と前記第1揺動部との間、および前記第2揺動部材と前記第3揺動部材との間に、前記第1クロスピース、および前記第2クロスピースを介在させるための間隙が形成されている、
ことを特徴とするリンク機構。
【請求項2】
請求項1に記載のリンク機構において、前記第1揺動部材と第2揺動部材との間、および前記第2揺動部材と前記第3揺動部材との間に、それぞれ、前後方向を軸方向とした位置合わせ用のピンが介在することを特徴とするリンク機構。
【請求項3】
ブレーキディスクを左右方向で互いに対面する左方および右方のブレーキライニングに狭持させることで前記ブレーキディスクの回転に制動を掛けるディスクブレーキ装置であって、
それぞれが下端に前後方向に延長する回転軸を有して立設されているとともに、それぞれに前記ブレーキライニング取り付けられてなる左方および右方のブレーキレバーと、
左方と右方の前記ブレーキレバーを互いに近接および離間させるように揺動させるリンク機構と、
左右の前記ブレーキレバーが互いに離間して制動が解除された開状態となるように前記リンク機構を動作させるスラスターと、
を備え、
前記リンク機構は、左右の前記ブレーキレバーの上方に左右方向に架け渡されて一体的に揺動するレバー機構、棒状の連結装置、ロッドを下方に向けて常時付勢するスプリング機構、および前記レバー機構の揺動運動と前記連結装置の直線運動と前記ロッドの直線運動とを連動させる第1クロスピースと第2クロスピースで構成され、
前記レバー機構は、ブレーキレバーの上方に左右方向に架け渡される平板状のベントレバー部材と、当該ベントレバー部材の左右一方の端部の前方に配置されつつ当該ベントレバー部材に対して下方に突出する平板状のショートレバー部材と、前記ベントレバー部材とショートレバー部材の間に介在するレバー構造体とで構成され、
前記レバー構造体は、一体成形品からなり、前端面および後端面が、それぞれ前記ショートレバー部材および前記ベントレバー部材と対面する形状に形成されているとともに、当該前端面および後端面に、前方および後方に突出する柱状の連結部が形成され、
前記連結装置は、左右他方の端部に前後方向の回転軸を有して左右他方のブレーキレバーの上端側に軸支されているとともに、左右一方の端部側が前記第1クロスピースに保持され、
記第1クロスピースは、前端面および後端面に、それぞれ前方および後方に円柱状に突出する回転軸を有し、前記レバー構造体と前記ショートレバー部材との間に回転可能に軸支され、
前記第2クロスピースは、前後方向に円柱状に突出する回転軸を有して、前記レバー構造体と前記ベントレバー部材との間に回転可能に軸支されているとともに、前記スプリング機構のロッドの先端側を保持し、
前記スラスターは、作動軸の先端が前記ベントレバー部の左右他方の端部に取り付けられて、動作時に前記レバー機構の左右他方の端部を上方に押し上げ、
前記スプリング機構は、前記スラスターが動作していないときに、前記レバー機構を、前記第2クロスピースを介して下方に付勢することで、左右の前記ブレーキレバーが互いに近接して制動が掛かる閉状態となるように前記リンク機構を動作させる、
ことを特徴とするディスクブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンク機構、および当該リンク機構を備えたディスクブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レバーなど、揺動運動する部材(以下、揺動部材とも言う)と、スピンドルやアクチュエーターの軸などの直線運動をする棒状の部材(以下、直動部材とも言う)とを連動させるための部材としてクロスピースがある。クロスピースは、例えば、矩形箱状の本体の両端面に揺動部材の回転軸となる円筒状の軸が突出して形成された形状を有している。また、矩形箱状の本体には、回転軸と直交する方向に直動部材の先端側を保持するための孔が形成されている。揺動部材とクロスピースとを備えたリンク機構では、揺動部材は、普通、互いに対面する二つの平板状の部材により構成され、クロスピースの本体は、その互いに対面した二つの平板状の部材間に配置される。そして、クロスピースは、直動部材の直線運動を揺動部材の揺動運動に変換したり、揺動部材の揺動運動を直動部材の直線運動に変換したりする。
【0003】
ここで、クロスピースを備えたリンク機構の一利用形態として、巻上機などの一般作業機械に使用されるディスクブレーキ装置を挙げる。周知のごとくディスクブレーキ装置は、制動対象となる駆動体(例えば、車輪、ベルトなど)に連結されて回転するブレーキディスクの表裏両面を摩擦材であるブレーキライニングで狭持することで制動力を発生させる。
【0004】
図1図2とに、ディスクブレーキの外観を示した。図1図2は、ディスクブレーキ装置1全体の構成を示す図であり、それぞれディスクブレーキ装置1を異なる方向から見たときの斜視図である。なお、以下では、互いに直交する三方向を上下方向、左右方向、前後方向とするとともに、ブレーキディスク2の回転軸200が左右方向に向かって延長しているものとする。なお、以下の説明を容易にするために、何らかの回転機構における回転中心、あるいは、回転機構において回転中心を形成するための構造、部位、部材などについては、断りがない限り、「回転軸」と称することとする。
【0005】
図1図2に示したように、ディスクブレーキ装置1は、自身を構成する各種部材、機構、および装置が、各種ブラケットを介してベースプレート6上の適所に取り付けられてなる。ここで、ベースプレート6が前後方向と左右方向とを含む面内に載置されていることとして上下の各方向を規定すると、ブレーキディスク2の左右両側に、上方に延長する一対のブレーキレバー(3L,3R)が互いに対面している。左右のブレーキレバー(3L,3R)において、上下中央近傍位置のブレーキディスク2側には、ブレーキライニング(5L,5R)がブレーキシュー4を介して取り付けられている。
【0006】
二つのブレーキレバー(3L,3R)は、前後に対面する同形の二つの平板状の部材からなり、二つの平板状部材が前後方向に延長するボルト32を介して連結されている。そして、左右のブレーキレバー(3L,3R)は、下端に前後方向の回転軸(31L,31R)を有し、上端側に接続されているリンク機構10を介して連動するように左右に揺動する。また、リンク機構10は、電動アクチュエーターなどによって構成されるスラスター40を動力源として駆動されるように構成されている。なお、スラスター40は、図2に示したように、下端に前後方向に延長する回転軸42を有し、ベースプレート6上の左後方に設けられたブラケット61に回動自在に取り付けられている。そして、リンク機構10の動作に伴う若干の左右方向への揺動が許容されている。
【0007】
ディスクブレーキ装置1におけるリンク機構10は、前後方向を厚さ方向とした二つの平板状のレバー部材(11a,11b)によって構成されるベントレバー11、同様に前後方向を厚さ方向とした二つの平板状のレバー部材(12a,12b)によって構成されるショートレバー12、左右方向に斜めに延長する棒状の連結装置20、ベントレバー11とショートレバー12を常時下方に付勢するスプリング機構50、ショートレバー12と連結装置20とを接続する第1クロスピース22、およびベントレバー11とスプリング機構とを接続する第2クロスピース53などから構成されている。
【0008】
四つの平板状のレバー部材(11a,11b,12a,12b)は、上述した揺動部材を構成し、左右一方の端部側において前後方向に貫通するボルト13によって互いに固定されて一体的に動作する。ここで、当該ボルト13が、4本のレバー部材(11a,11b,12a,12b)の右端側を貫通していることとして、左右の各方向を規定するとともに、ベントレバー11の前方にショートレバー12が配置されていることとして前後の各方向を規定する。なお、ベントレバー11を構成する後方側の二つ一組のレバー部材(以下、ベントレバー部材(11a,11b)とも言う)は、四つのレバー部材(11a,11b,12a,12b)を貫通するボルト13とは別のボルト14によっても固定されている。
【0009】
ベントレバー11は、左右のブレーキレバー(3L,3R)の上後方側に架け渡されている。ショートレバー12は、ベントレバー11よりも左右方向の長さが短い二つ一組のレバー部材(以下、ショートレバー部材(12a,12b)とも言う)からなり、ベントレバー11の右端側と前後方向で対面している。また、ショートレバー12は、ベントレバー11に対して下方に突出する形状を有している。したがって、四つのレバー(11a,11b,12a,12b)からなるレバー機構は、前後方向から見ると、右端が下方に屈曲するL字型に形成されている。
【0010】
ショートレバー12は、右方のブレーキレバー3Rを構成する前後二つの板状のレバー部材間(3R-3R)に配置されている。前後二つのショートレバー部材(12a,12b)の間には、クロスピース(以下、第1クロスピース22とも言う)がショートレバー12に対して回転可能に軸支された状態で配置され、その第1クロスピース22に、リンク機構10を構成する棒状の連結装置20の右端側が保持されている。なお、連結装置20は、右方から左方に向かって上方に斜めに延長し、左端側もクロスピース21によって保持されている。この連結装置20の左端側を保持するクロスピース21の回転軸23は、左方のブレーキレバー3Lを構成する前後二つの板状の部材のそれぞれの上端側に軸支されている。
【0011】
図2に示したように、第1クロスピース22の回転軸24の位置は、右方のブレーキレバー3Rにおいてショートレバー12を軸支する回転軸33よりも下方にある。また、左方のブレーキレバー3Lにおいて、連結装置20の左端側を保持するクロスピース21の回転軸23と、右方のブレーキレバー3Rにおいて、ショートレバー12が軸支される回転軸33の上下位置は同じである。
【0012】
上述したように、レバー機構は、スプリング機構50により常時下方に付勢されている。スプリング機構50は、上下方向を筒軸とした中空角筒状のケース51と、上下方向に螺旋軸を有して筐体内に収納されているスプリングと、スプリングの伸縮運動に伴って上下動するロッド52とを備えている。ロッド52の先端は、クロスピース(以下、第2クロスピース53とも言う)に保持されている。第2クロスピース53は、前後方向に回転軸54を有し、その回転軸54が、ベントレバー11に軸支されている。そして、以上の構成を備えたディスクブレーキ装置1では、ベントレバー11とショートレバー12とが揺動部材に相当し、連結装置20とスプリング機構50におけるロッド52とが直動部材に相当する
図3にディスクブレーキ装置1を前方から見たときの正面図を示した。以下、この図3を参照しつつ、ディスクブレーキ装置1の動作を説明する。図3において黒塗りの矢印で示したように、スラスター40を動作させてロッド41を上昇させると、ベントレバー11の左端がスプリング機構50による下方への付勢力に抗し上昇する(s1)。ベントレバー11の左端が上昇すると、スプリング機構50の拘束が解かれて、スラスター40の右方への傾きにより、右方のブレーキレバー3Rが右方へ揺動する。右方のブレーキレバー3Rは、当該ブレーキレバー3Rの下端に取り付けられた支持装置70の下端がベースプレート6に取り付けられた台座62の上面に当接して揺動が止まる。そして、ベントレバー11とショートレバー12が、右方のブレーキレバー3Rに軸支されているショートレバー12の回転軸33を支持として一時的に時計合わりに回動する(s2)
また、連結装置20の右端が、ショートレバー12の回転軸33より下方の位置にて第1クロスピース22を介して軸支されており、連結装置20は、ベントレバー11とショートレバー12の一体的な揺動に伴って、右方のブレーキレバー3Rが支持されたことによる反力を受けて左方に押し出される(s3)。連結装置20の左端は、左方のブレーキレバー3Lの上端に軸支されているため、左方のブレーキレバー3Lの上端が左方に付勢される(s4)。すなわち、ブレーキレバー(3L,3R)が相互に離間する方向に揺動し(s5)、ディスクブレーキ装置1は、制動状態が解除された開状態となる。
【0013】
一方、スラスター40の電源を切るなどして当該スラスター40を非動作状態にすると、図中白塗りの矢印で示したように、スプリング機構50のロッド52の上端に第2クロスピース53を介して接続されているベントレバー11が下方に付勢され(s11)、スラスター40のロッド41が下降し(s12)、ショートレバー12の回転軸33を支点としてベントレバー11とショートレバー12が一体的に反時計回りに回動する(s13)。そして、これらのレバー(11,12)の回動に伴って連結装置20の右端が右方に押し出され(s14)、連結装置20の左端を軸支する左方のブレーキレバー3Lの上端が右方に付勢される(s15)。その結果、左右のブレーキレバー(3L,3R)が相互に近接する方向に揺動し(s16)ブレーキレバー(3L,3R)にブレーキシュー4を介して取り付けられているブレーキライニング(5L,5R)によって、ブレーキディスク2が狭持され、ディスクブレーキ装置1が閉状態となる。なお、以下の特許文献1には、上述したリンク機構を備えたディスクブレーキ装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開平11-37186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図1図3に示したディスクブレーキ装置1を構成するリンク機構10は、ボルト13などによって固定されて一体的に揺動するベントレバー11とショートレバー12のそれぞれに、直動部材(ロッド52、連結装置20)がクロスピース(53、22)を介して接続された構造を有していた。そして、二つのレバー(11、12)は、それぞれが前後方向に対面する二つの平板状のレバー部材(11aと11b、12aと12b)で構成されており、リンク機構10は、合計四つのレバー部材(11a、11b、12a、12b)を備えていた。
【0016】
そして、上述したディスクブレーキ装置1のように、一体的に揺動する二つの揺動部材のそれぞれに直動部材がクロスピースを介して取り付けられて、二つの揺動部材の揺動運動と二つの直動部材の直線運動とが連動する従来のリンク機構を備えた装置では、二つの揺動部材や、二つの揺動部材を一体化するための部品の点数が多くなるため、組み立て工程における工数も多くなり、製造コストを低減させることが難しい。また、多数の部品によって構成されたリンク機構は、強度と軽量化とを両立することが難しく、リンク機構を動作させるための動力源の省力化も難しくなる。リンク機構の重量化は、装置の動作応答性を低下させる。とくに、ディスクブレーキ装置では、安全性に関わる制動を確実に、かつ瞬時に掛ける必要がある。そのため、より高い安全性を得るためには、応答性の向上が必要となる。また、リンク機構を備えた装置を確実に作動させるためには、部品の組み立てにも高い精度が必要となる。しかし、各部品には公差があるため、多数の部品からなるリンク機構では、高い精度で組み立てることも難しくなる。さらに、リンク機構を構成する個々の部品は、それぞれ経年劣化の度合いが異なるため、部品毎に保守や点検を行う必要がある。そのため、従来のリンク機構を備えた装置では、メンテナンスコストを低減させることも難しかった。
【0017】
そこで本発明は、一体的に揺動するように構成された二つの揺動部材と、各揺動部材にクロスピースを介して接続された直動部材とを備えつつ、部品点数が少なく、軽量化やコストダウンが可能なリンク機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、互いに直交する三方向を上下、左右、前後方向とするとともに、上下方向および左右方向を含む面を揺動面として、
前記揺動面内で揺動する揺動部材を含んで構成されるリンク機構であって、
前記揺動部材と、前記揺動面内で直線運動する第1直動部材および第2直動部材とが第1クロスピースおよび第2クロスピースを介して連動し、
前記揺動部材は、前端面を構成する平板状の第1揺動部材と、後端面を構成する平板状の第3揺動部材と、第1揺動部材と第3揺動部材との間に介在する第2揺動部材とからなり、
記第1クロスピースは、前端面および後端面に、それぞれ前方および後方に円柱状に突出する回転軸を有し、前記第1揺動部材と前記第2揺動部材間に回転可能に軸支されているとともに、前記第1直動部材の先端を支持し、
前記第2クロスピースは、前後方向に円柱状に突出する回転軸を有して、前記第2揺動部材と前記第3揺動部材との間に回転可能に軸支されているとともに、前記第2直動部材の先端を支持し、
前記第2揺動部材は、一体成形品からなり、前端面および後端面が、それぞれ前記第1揺動部材および前記第3揺動部材と対面する形状に形成されているとともに、当該前端面および後端面に、前方および後方に突出する柱状の連結部が形成され、
前記第1揺動部材および前記第3揺動部材が前記連結部を介して前記第2揺動部材と接続されて、前記第2揺動部材と前記第1揺動部との間、および前記第2揺動部材と前記第3揺動部材との間に、前記第1クロスピース、および前記第2クロスピースを介在させるための間隙が形成されている、
ことを特徴とするリンク機構としている。
【0019】
上記リンク機構において、前記第1揺動部材と第2揺動部材との間、および前記第2揺動部材と前記第3揺動部材との間に、それぞれ、前後方向を軸方向とした位置合わせ用のピンが介在することとしてもよい。
【0020】
本発明のその他の態様は、 ブレーキディスクを左右方向で互いに対面する左方および右方のブレーキライニングに狭持させることで前記ブレーキディスクの回転に制動を掛けるディスクブレーキ装置であって、
それぞれが下端に前後方向に延長する回転軸を有して立設されているとともに、それぞれに前記ブレーキライニング取り付けられてなる左方および右方のブレーキレバーと、
左方と右方の前記ブレーキレバーを互いに近接および離間させるように揺動させるリンク機構と、
左右の前記ブレーキレバーが互いに離間して制動が解除された開状態となるように前記リンク機構を動作させるスラスターと、
を備え、
前記リンク機構は、左右の前記ブレーキレバーの上方に左右方向に架け渡されて一体的に揺動するレバー機構、棒状の連結装置、ロッドを下方に向けて常時付勢するスプリング機構、および前記レバー機構の揺動運動と前記連結装置の直線運動と前記ロッドの直線運動とを連動させる第1クロスピースと第2クロスピースで構成され、
前記レバー機構は、ブレーキレバーの上方に左右方向に架け渡される平板状のベントレバー部材と、当該ベントレバー部材の左右一方の端部の前方に配置されつつ当該ベントレバー部材に対して下方に突出する平板状のショートレバー部材と、前記ベントレバー部材とショートレバー部材の間に介在するレバー構造体とで構成され、
前記レバー構造体は、一体成形品からなり、前端面および後端面が、それぞれ前記ショートレバー部材および前記ベントレバー部材と対面する形状に形成されているとともに、当該前端面および後端面に、前方および後方に突出する柱状の連結部が形成され、
前記連結装置は、左右他方の端部に前後方向の回転軸を有して左右他方のブレーキレバーの上端側に軸支されているとともに、左右一方の端部側が前記第1クロスピースに保持され、
記第1クロスピースは、前端面および後端面に、それぞれ前方および後方に円柱状に突出する回転軸を有し、前記レバー構造体と前記ショートレバー部材との間に回転可能に軸支され、
前記第2クロスピースは、前後方向に円柱状に突出する回転軸を有して、前記レバー構造体と前記ベントレバー部材との間に回転可能に軸支されているとともに、前記スプリング機構のロッドの先端側を保持し、
前記スラスターは、作動軸の先端が前記ベントレバー部の左右他方の端部に取り付けられて、動作時に前記レバー機構の左右他方の端部を上方に押し上げ、
前記スプリング機構は、前記スラスターが動作していないときに、前記レバー機構を、前記第2クロスピースを介して下方に付勢することで、左右の前記ブレーキレバーが互いに近接して制動が掛かる閉状態となるように前記リンク機構を動作させる、
ことを特徴とするディスクブレーキ装置としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、一体的に揺動するように構成された二つの揺動部材と、各揺動部材にクロスピースを介して接続された直動部材とを備えつつ、部品点数が少なく、軽量化やコストダウンが可能なリンク機構が提供される。なお、その他の効果については以下の記載で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来のリンク機構を備えたディスクブレーキ装置を所定の方向から見たときの斜視図である。
図2】上記ディスクブレーキ装置を別の方向から見たときの斜視図である。
図3】上記ディスクブレーキ装置の動作を示す図である。
図4】本発明の実施例に係るリンク機構を備えたディスクブレーキ装置を示す図である。
図5】本発明の実施例に係るリンク機構を示す分解斜視図である。
図6】上記実施例に係るリンク機構の平面図と正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施例について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明に用いた図面において、同一または類似の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略することがある。図面によっては説明に際して不要な符号を省略することもある。
【0024】
===実施形態===
本発明の実施例としてディスクブレーキ装置を構成するリンク機構を挙げる。図4に、本発明の実施例に係るリンク機構100を備えたディスクブレーキ装置101の外観図を示した。ディスクブレーキ装置101の基本構成は、図1図3に示したディスクブレーキ装置1と同様である。しかし、本実施例に係るリンク機構100を備えたディスクブレーキ装置(以下、実施例に係るディスクブレーキ装置101とも言う)では、図1図3に示した従来のディスクブレーキ装置1とは異なるリンク機構100を備えている。概略的には、本実施例のリンク機構100は、三つの主要部材(111,110,112)を含んで構成されており、従来のリンク機構10における四つの平板状のレバー部材(11a、11b、12a、12b)がボルト13で連結されてなるレバー機構に代え、前方のベントレバー部材11b、後方のショートレバー部材12a、およびベントレバー11とショートレバー12とを一体化するためのボルト(13,14)に対応する構成が、一体成形された一つの部材(以下、レバー構造体110とも言う)からなっている。
【0025】
図5図6とに、実施例に係るリンク機構100の構造を示した。図5は、実施例におけるリンク機構100の分解斜視図である。なお、図5では、ボルトなどが省略されている。図6(A)は、リンク機構100を上方から見たときの平面図である。なお、図6(A)では、リンク機構100を構成する上記三つの主要部材(111,110,112)をハッチングによって示した。そして、図6(B)は、リンク機構100を前方から見たときの正面図である。以下、図1図6を参照しつつ、実施例に係るリンク機構100について説明する。
【0026】
図4図6に示したように、レバー構造体110は、従来の後方のショートレバー部材12bとボルト13の前端側とに対応する前端部120と、前方のベントレバー部材11aとボルト13の後端側とに対応する後端部130と、前端部120と後端部130とを連続させる接続部140とを有している。前端部120は、前方から見ると、ショートレバー部材112と対面して、当該ショートレバー部材112を包含する領域を有する平面形状となるように形成されている。また、前端部120は、第1クロスピース22の後方の回転軸23を軸支するための孔(以下、軸受け孔121とも言う)や、右方のブレーキレバー3Rの上端側の回転軸33が挿通される孔122などが形成された平板状の部位123の上方に、ボルト13の前端側に対応して前方に突出する柱状の連結部124が形成された形状を有している。そして、連結部124の前端面には、ショートレバー部材112をボルト127によって取り付けるためのねじ穴125などが形成されている。そして、前端部120にショートレバー部材112が連結部124を介して取り付けられることでショートレバー12が構成される。
【0027】
後端部130は、前方から見ると、ショートレバー12に対して左方に突出し、後方から見ると、ベントレバー部材111と対面する平面形状を有する平板状の部位132と、その部位132から後方に突出する二つの柱状の連結部(133,134)とから構成されている。平板状の部位132には、第2クロスピース53の前方の回転軸54の軸受け孔131や、スラスター40のロッド41の上端を前後方向の軸で軸支するための孔135などが形成されている。連結部(133,134)は、従来のディスクブレーキ装置1において、ボルト13の後端側や前後のベントレバー部材(11a,11b)の左端側を相互に連結するためのボルト14に対応する部位である。また、連結部(133,134)の後端面には、ベントレバー部材111をボルト136で取り付けるための孔(図示せず)が形成されている。
【0028】
このように実施例に係るディスクブレーキ装置101が備えるリンク機構100では、従来、平板状の四つのレバー部材(11a、11b、12a、12b)に一括して挿通された前後に長いボルト13と、そのボルト13に取り付けられるナットなどの部品が不要となり、リンク機構100を極めて少ない数の部品で構成することができる。また、ベントレバー11において、ショートレバー12と前後方向で重複する領域が不要となる。それによって、リンク機構100を大幅に軽量化することが可能となる。さらに、部品点数が少ないことから、リンク機構の組み立てに要する工数や工程時間を減少させることができる。部品同士が接触する部位が少ないため、部品の摩耗に伴うガタツキなどの動作不良も発生し難くなる。部品毎に異なる経年劣化の度合いを考慮する必要が無く、メンテナンスコストを低減させることもできる。一体成形されているレバー構造体110は、自身の素材によって強度を容易に高めることがでる。レバー構造体110は、ディスクブレーキ装置101において最も強度が要求されるレバー機構のほとんどの領域を占有しているため、レバー機構は高い強度を有するものとなる。なお、レバー構造体110は、金属ブロックを切削加工することで作製してもよいが、本実施例では、より軽量化が可能な鋳造物でレバー構造体を構成している。
【0029】
ところで、リンク機構100を正確に動作させるための一つの要件は、クロスピース(22,53)の回転軸(24,54)と、レバー構造体110およびレバー部材(111、112)における軸受け孔(121,131)とを精度よく同軸となるように配置することである。本実施例に係るリンク機構100では、従来、多くの部材で構成されていたレバー機構の一部が一体的なレバー構造体110に置換されているため、レバー構造体110に対応する複数の部材同士の組み付け精度を考慮する必要が無くなる。そして、実施例におけるリンク機構100では、レバー構造体110とレバー部材(111,112)の少なくとも一方にピン150を挿通するための孔113が形成されており、それによって、クロスピース(22,53)の回転軸(24,54)と、レバー構造体110およびレバー部材(111,112)における軸受け孔(121,131)とをさらに高い精度で同軸となるように配置できるようになっている。本実施例では、レバー部材(111,112)側と、レバー構造体110の連結部(124,133,134)とに位置決めピン150が挿通される孔113が形成されている。そして、レバー部材(111,112)側の孔113が、位置決めピン150の先端が挿通される貫通孔113になっており、レバー構造体110の連結部(124,133,134)に形成されている孔113には、位置決めピン150が先端を突出させた状態で挿入されるようになっている。なお、本実施例では、位置決めピン150にスプリングピンを用いている。もちろん、位置決めピン150には、リーマーピンなどを用いることもできる。また、レバー構造体110、あるいはレバー部材(111,112)の一方の部材にピンを形成しておき、そのピンが挿通される孔を他方の部材に形成しておいてもよい。いずれにしても、レバー構造体110とレバー部材(111,112)とが前後方向を軸としたピンによって位置決めされていればよい。
【0030】
なお、以上、本発明の実施例に係るリンク機構について、ディスクブレーキ装置を例に挙げて説明したが、本発明の実施例に係るリンク機構を備えた装置は、ディスクブレーキ装置に限るものではない。レバーのように上下方向と左右方向とを含む揺動面内で揺動する揺動部材が、揺動面内で直線運動する二つの直動部材(連結装置,スプリング機構のロッドなど)と、個別にクロスピースを介して連動する装置であればよい。
【符号の説明】
【0031】
1,101 ディスクブレーキ装置、2 ブレーキディスク、
3L,3R ブレーキレバー、4 ブレーキシュー、5L,5R ブレーキライニング、6 ベースプレート、10,100 リンク機構、11 ベントレバー、
11a,11b,111 ベントレバー部材、12 ショートレバー、
12a,12b,112 ショートレバー部材、13,14 ボルト、20 連結装置、
22,53 クロスピース、50 スプリング機構、52 スプリング機構のロッド、
110 レバー構造体、120 レバー構造体の前端部、121,131 軸受け孔、
124,133,134 連結部、130 レバー構造体の後端部、
140 レバー構造体の接続部、150 位置決めピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6