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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20220630BHJP
   F28F 3/00 20060101ALI20220630BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20220630BHJP
   F28F 21/04 20060101ALI20220630BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20220630BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220630BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20220630BHJP
【FI】
F28F9/02 301J
F28F3/00 311
F28F3/08 311
F28F21/04
F28D9/00
B33Y10/00
B33Y80/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019516280
(86)(22)【出願日】2017-06-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-04
(86)【国際出願番号】 GB2017051571
(87)【国際公開番号】W WO2017212222
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-05-01
(31)【優先権主張番号】1609847.7
(32)【優先日】2016-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519422603
【氏名又は名称】キュウ テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KEW TECHNOLOGY LIMITED
【住所又は居所原語表記】38-39 Albert Road, Tamworth, England, B79 7JS United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(72)【発明者】
【氏名】カルシ,カマルディープ
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-505743(JP,A)
【文献】特表2010-536694(JP,A)
【文献】特開平06-034283(JP,A)
【文献】米国特許第02821369(US,A)
【文献】特開平10-253286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
F28F 3/00
F28F 3/08
F28F 21/04
F28D 9/00
B33Y 10/00
B33Y 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向を向く開口部と前記第1の方向とは異なる第2の方向を向く開口部とを各々が有する第1の複数の流路と、
前記第1の複数の流路と重ね合わせて配置され、第3の方向を向く開口部と前記第1の方向を向く開口部とを有する第2の複数の流路と、を備え、
前記第3の方向は、前記第1の方向及び前記第2の方向と異なり、
第4の方向を向く開口部と前記第1の方向を向く開口部とを有する第3の複数の流路をさらに備え、
前記第4の方向は、前記第1の方向、前記第2の方向、及び前記第3の方向と異なる、並流式熱交換器用のマニホルド。
【請求項2】
前記マニホルドが、1070℃~1350℃の温度で動作するように適合されている、請求項1に記載のマニホルド。
【請求項3】
前記マニホルドが炭化ケイ素又は炭化ケイ素誘導体材料である、請求項1又は2に記載のマニホルド。
【請求項4】
前記第1の複数の流路及び前記第2の複数の流路の各々で構成される所定数の重ね合わせられた流路が、前記第3の複数の流路の隣接する流路の間に配置される、請求項に記載のマニホルド。
【請求項5】
前記所定の数が1より大きい、請求項に記載のマニホルド。
【請求項6】
第5の方向を向く開口部と前記第1の方向を向く開口部とを有する第4の複数の流路をさらに備え、前記第5の方向は、前記第1の方向、前記第2の方向、前記第3の方向及び前記第4の方向とは異なる、請求項1から5のいずれか一項に記載のマニホルド。
【請求項7】
前記マニホルドを3Dプリントするステップを含む、請求項1からのいずれか一項に記載のマニホルドを製造する方法。
【請求項8】
熱交換スタックの両側に接続された2つのマニホルドを備える熱交換器であって、
各マニホルドは請求項1からのいずれか一項に記載のマニホルドであり、
前記熱交換スタックは、貫通する複数の流路を有する少なくとも1つの熱交換ブロックを備え、
前記熱交換ブロックの前記流路は、各マニホルドの前記流路と整列されて、マニホルドと熱交換スタックの両方にまたがる直列の気体経路を形成する、熱交換器。
【請求項9】
各熱交換ブロックがガスケットを受容するように適応された挿入領域を含み、
前記挿入領域が、前記熱交換ブロックの表面上に配置され、前記熱交換ブロックの前記表面上で前記流路を囲む、請求項に記載の熱交換器。
【請求項10】
第1の流体経路が一方のマニホルド内の前記第1の複数の流路及び他方のマニホルド内の前記第1の複数の流路を含み、
第2の流体経路が一方のマニホルド内の前記第2の複数の流路及び他方のマニホルド内の前記第2の複数の流路を含み、
前記熱交換器が、
前記第1の流体経路を第1の流体源に接続するように適合された第1のコネクタと、
前記第2の流体経路を第2の流体源に接続するように適合された第2のコネクタと、をさらに備える、請求項に記載の熱交換器。
【請求項11】
前記第1のコネクタとは反対側の前記第1の流体経路の端部で前記第1の流体経路を前記第2の流体源に接続するための第3のコネクタをさらに備える、請求項10に記載の熱交換器。
【請求項12】
前記第1及び第2のコネクタが同じマニホルドに取り付けられる、請求項10又は11に記載の熱交換器。
【請求項13】
前記第1及び第2のコネクタが異なるマニホルドに取り付けられる、請求項10又は11に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並流式熱交換器用のマニホルド、及び該マニホルドを含む熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器は、自動車から空調ユニット、先端熱処理システムのエネルギ回収装置まで多くのシステムで使用されている。
【0003】
従来、熱交換器は様々な要因を考慮に入れなければならない。例えば、ファウリング(汚れ)は、圧力損失の増大及び熱伝達率の低下を引き起こすことがあり、これは熱交換器の効率に悪影響を及ぼす可能性がある。別の考慮事項として、熱交換器はその性質上、温度変動の影響を受ける。加えて、熱交換器は、システムの特定の領域の磨耗率を高める微粒子負荷を伴う高速度の流体(気体又は液体)流を受ける可能性がある。熱交換器が高温で作動すると、浸食の問題が悪化する可能性がある。同様に、熱交換器を通過する流体は酸又は他の腐食性材料を含む可能性があり、それは高温で熱交換器の内部をさらに劣化させる可能性さえある。腐食及び浸食の問題は、金属製の熱交換器で特によく起こる。
【0004】
幾つかの従来のセラミック熱交換器では、管対管板(tube-to-tubesheet)構造が採用されている。第1の流体は一連の管の内側を流れ、第2の流体は管の外側を通って流れる。したがって、管と接触すると、第2の流体が停滞する可能性があり、これは多くの問題を引き起こす可能性がある。例えば、第2の流体が粒子状物質を含む場合、第2の流体の流れに対して垂直な管の表面の侵食が増大するであろう。また、状況によっては、管の周囲のよどみ点がファウリングを引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流体間の効率的な熱交換を可能にする方法及び装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、並流式熱交換器用のマニホルド、及びそのマニホルドを含む熱交換器に関する。
【0007】
一態様では、並流熱交換器用のマニホルドは、各々が第1の方向を向く開口部と、第1の方向とは異なる第2の方向を向く開口部とを有する第1の複数の流路と、第1の方向及び第2の方向とは異なる第3の方向を向く開口部と第1の方向を向く開口部とを有する第2の複数の流路とを備えている。
【0008】
有利には、並流式熱交換器を用いると、流体は互いに平行又は逆平行(すなわち、対向流の並流)に流れることができる。その結果、これは熱交換器内の流体の停滞の可能性を低減する。第1の流体が一連のパイプを通って移動し、第2の流体がそれらのパイプの外側の周囲で直交して流れる例では、第2の流体はパイプとの接触点で停滞し、それらパイプの他方の側で乱流作用を受ける。停滞/乱流によって引き起こされる圧力降下は、第1の流体と第2の流体間の熱伝達を非効率にする可能性がある。
【0009】
加えて、たとえ第1及び第2の流体が直交する流路を流されたとしても、熱交換器は、伝熱面積を増大させるために二次元(長さと幅)で拡張されなければならないであろう。その結果、熱交換器の幅がより大きくなるため(ひいては、流路の断面積がより大きくなるため)、所定の体積の流体での圧力が低下する。したがって、その所定の体積で熱交換器を通って移動する流体の速度もまた減少するであろう。一方、並流式では、熱交換器は一次元的に拡大して(すなわち、幅を同じに保ちながら長さを長くして)伝熱面積を増大させることができる。他の寸法(すなわち幅及び高さ)は同じままに保たれ、したがって圧力及び速度への影響を最小にし得る。
【0010】
幾つかの態様では、マニホルドは、1、070℃~1350℃の温度で作動するように適応されている。このようにして、熱交換器によって処理可能な流体及び温度変化の範囲が増大する。
【0011】
幾つかの態様では、マニホルドは炭化ケイ素又は炭化ケイ素誘導体材料(炭化ケイ素由来の材料/SiC derivative material)である。炭化ケイ素、又は炭化ケイ素誘導体材料は、マニホルドが高温で流体を処理することを可能にしつつ、マニホルドの侵食及び腐食耐性を高めることを可能にする。
【0012】
幾つかの態様では、マニホルドはさらに、第4の方向を向く開口部と第1の方向を向く開口部とを有する第3の複数の流路をさらに含み、第4の方向は第1の方向、第2の方向、及び第3の方向とは異なる。このようにして、マニホルドは3つの異なる流体源からの流体を熱交換器の内側で並行で流動させることができる。3つの流体が異なる温度である場合、これは熱交換器から流出する流体の温度に対するより優れた制御を提供する。
【0013】
幾つかの態様では、第1組及び第2組の流路の各々からの所定数の重ね合わせて配置された(interleaved/インターリーブされた/交互配置された)流路が、第3組の流路からの連続した複数の流路の間に配置される。好ましくは、所定数は1以上である。
【0014】
幾つかの態様では、マニホルドは、第5の方向を向く開口部と第1の方向を向く開口部とを有する第4の複数の流路をさらに含み、第5の方向は第1の方向、第2の方向、第3の方向及び第4の方向とは異なる。そのような構成は、熱交換器から流出する第1及び第2の流体の温度に対してさらに優れた制御を提供する。例えば、4つの流体源からの流体では、第1及び第2の流体が処理されるように(すなわち、温度が増減されるように)提供されるのに対して、第3及び第4の流体は第1及び第2の流体の温度を調節するように提供され得る。幾つかの例では、第3の流体は冷却剤であってよく、第4の流体は加熱流体であってよい。
【0015】
本発明はさらに、本明細書に記載のマニホルドの製造方法を含み、前記製造方法は、前記マニホルドを3Dプリント(3次元印刷)することを含む。
【0016】
幾つかの態様では、熱交換器は、熱交換スタックの両反対面に接続された2つのマニホルドを含み、各マニホルドは本明細書に記載のマニホルドであり、熱交換スタックは複数の流路が貫通する少なくとも1つの熱交換ブロックを含み、熱交換ブロックの流路は各マニホルドの流路と整列されて、マニホルドと熱交換スタックの両方にまたがる一連の気体経路を形成する。
【0017】
幾つかの態様では、熱交換ブロックは、ガスケットを受容するように適応された挿入領域を含み、前記挿入領域は、ブロックの表面上に配置され、ブロックの表面上で前記流路を囲む。そのような配置は、熱交換器内の流体の相互汚染の可能性を低減する。
【0018】
幾つかの態様では、第1の流体経路は一方のマニホルド内の第1の複数の流路と他方のマニホルド内の第1の複数の流路とを含み、第2の流体経路は一方のマニホルド内の第2の複数の流路と他方のマニホルド内の第2の複数の流路とを含む。これらの態様の熱交換器はさらに、第1の流体経路を第1の流体源(流体源)に接続するようにされた第1のコネクタと、第2の流体経路を第2の流体源に接続するようにされた第2のコネクタとを含む。
【0019】
幾つかの態様では、熱交換器は、第1のコネクタの反対側の第1の流体経路の端部で第1の流体経路を第2の流体源に接続するための第3のコネクタをさらに備えている。したがって、第1の流体として熱交換器に流入する流体は、熱処理され、次いで第2の流体として熱交換器に再流入される同じ流体と熱交換するために使用されることができる。
【0020】
幾つかの態様では、第1及び第2のコネクタは同じコネクタに取り付けられている。他の態様では、第1及び第2のコネクタは異なるマニホルドに取り付けられる。
【0021】
本発明の様々な実施形態及び態様は、添付の図面を参照して、限定されることなく以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】熱交換器の斜視図である。
【0023】
図2】熱交換器用のマニホルドの斜視図である。
【0024】
図3図2のA-A線に沿った断面図である。
【0025】
図4図2のB-B線に沿った断面図である。
【0026】
図5】マニホルド用のディフューザの斜視図である。
【0027】
図6】熱交換器用の熱交換器ブロックの斜視図である。
【0028】
図7】ハウジング又はシェルを含む熱交換器の斜視図である。
【0029】
図8】熱交換器を含む先端熱処理システムの概略図である。
【0030】
図9】熱交換器用のマニホルドの斜視図である。
【0031】
図10A】熱交換器用のマニホルドの斜視図である。
【0032】
図10B図10AのC-C線に沿った断面図である。
【0033】
図11A】熱交換器のための熱交換器ブロックの斜視図である。
【0034】
図11B図11AのD-D線に沿った断面図である。
【0035】
図12A】熱交換器用の端部部品の斜視図である。
【0036】
図12B図12AのE-E線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、熱交換器1のためのマニホルド2、及び前記マニホルド2を組み込んだ熱交換器1に関する。熱交換器1内では、2つの異なる流体源からの流体が、インターリーブ(重ね合わせて配置)され、隔離された平行流路を通って互いに流れる。熱交換器1は、先端熱処理システムで特に有用であるが、高温排ガス熱回収、高温プロセス流体エネルギ回収、腐食性の化学流体エネルギ回収、化学反応器節約、カーボンブラック生成プロセス、高温のエリクソンサイクル(間接燃焼ジュールサイクル)、鉄鋼産業、石油化学用途などの高温で化学的に侵食性の排ガスの回収などの他の分野に適用することができる。これらの分野は例示として提示されたものであり、熱交換器1の用途はこれらの分野に限定されない。
【0038】
好ましい実施形態では、熱交換器1は、それ自体も第2のマニホルド2bに接続されている熱交換スタック3に接続された第1のマニホルド2aからなる。熱交換スタック3は、少なくとも1つの熱交換ブロック4を備えている。熱交換器1の第1及び第2のマニホルド2a、2bは、実質的に同じ設計であるが、図1に示されてように、熱交換スタック3に接続される場合は向きが異なる。
【0039】
マニホルド
図2を参照すると、マニホルド2は、2つの流体の流れが異なる方向から流入、流出することを可能にする重ね合わせて配置された流路5からなり、一方、マニホルド2の1つの入口/出口における2つの流体の両方の流れは、同じ軸に沿っている。図2に示された配置は台形の断面を有し、第1の流体の流れの入口/出口は台形の一方の非平行側(非平行側側辺)に位置するのに対して、第2の流体の流れの入口/出口は台形の他方の非平行側に位置する。図2のマニホルド2は、台形のより平行長辺で熱交換器スタック3に取り付けられるように意図されている。この配置では、非平行側に関連する面は、熱交換器スタック3に取り付けられる面の半数の流路を有することになる。したがって、マニホルド2は、熱交換器に流入、流出する流体の流れを平行に分配することができる。他の断面形状も可能であり、本発明は台形断面のマニホルドに限定されない。
【0040】
マニホルド2は、全ての流路5、5a、5bが第1の方向(すなわち、熱交換スタックに向かう方向)に開口部を有する2組の流路5a、5bを含む。第1組の流路5aは第2の方向(すなわち図2の左側)の別の開口部を有し、第2組の流路5bは第3の方向(すなわち図2の右側)に別の開口部を有している。第2の方向と第3の方向は互いに異なっている。好ましくは、第2及び第3の方向の両方とも第1の方向とは異なるが、マニホルドは、第2の方向と第3の方向の一方のみが第1の方向とは異なる必要がある。したがって、第1組の流路5aと第2組の流路5bの各流路5は、流体(気体又は液体)が進行し得る密閉(囲われた)容積を形成する。この設計を有するマニホルド内では、1つの流路内の流体は他の任意の流路の内部の流体から隔離されている。
【0041】
上記の構成は、第1の場所からの第1の(加熱された)流体が、第2の複数の流路5bに流入又はそこから流出する(以下、同様の場合、単に「流入又は流出する」と書く。)流体とは異なる供給源から第1の複数の流路5aに流入又は流出するように流れることを可能にする。マニホルド2が熱交換器スタック3に取り付けられる場合、第1の複数の流路5aを包囲する流体経路は、熱交換器スタック3内の第2の複数の流路5bを包囲する流体経路と平行になる。したがって、マニホルドは、異なる熱源からの流体が熱交換器スタック3内で平行に流れるようにすることを可能にする。
【0042】
第1の複数の流路5a及び第2の複数の流路5bは、異なる流体源からの流体がマニホルド2内の交互の流路5を流れることを可能にするように重ね合わせて配置される。例えば、第1の複数の流路5aのうちの第1の流路は、第2の複数の流路5bのうちの第1の流路の次に配置され、第2の複数の流路5bも第1の複数の流路5aのうちの第2の流路の次に配置される。そして、第1の複数の流路5aの第2の流路も第2の複数の流路5bのうちの第2の流路の次に配置され、以下同様である。第1の流体(例えば比較的高温の流体)が第1の複数の流路5aを流れ、第2の流体(例えば比較的低温の流体)が第2の複数の流路5bを流れると、第1の流体と第2の流体間の熱交換がマニホルド2内で生じるであろう。
【0043】
第1及び第2の複数の流路5a、5bの流路の幾何構造(幾何学的形状)が、熱交換器1全体にわたって流速を常に高く維持することができるようなものであることも好ましい。各流路は、高温と低温の交互の流れがコアの熱交換器スタック3内に向けられれるように流れさせ、それを方向転換させることを可能にする緩やかな湾曲で構成される。例えば、図3及び図4では、熱伝達面(すなわち流路の壁)に沿った流体の流れ方向に対して直角(90°)にあるポイントは存在しない。これがマニホルド2内の流体の停滞を防止し、それによって高い流速が可能になり、ファウリングの傾向が大幅に減少する。
【0044】
停滞の可能性をさらに最小限に抑え、かつ高い流れを維持するため、流体のためのマニホルドへの入口は、流れを適切にチャネリングする(向ける)ための一組のディフューザ8を含み得る。そのようなディフューザ8は図5に示されている。
【0045】
マニホルド2は次いで製造を容易にするため3Dプリントされ、硬化のために焼成されることが好ましい。この構成方法は、組み立て工程が単純な耐火物を基にした作業であり、専門の溶接又は他のそのような技能を必要としないので、費用効果が高い。
【0046】
好ましいマニホルド2は、炭化ケイ素(SiC)から製造される。したがって、好ましいマニホルドは、他の材料及び構成技術を適用することもできるが、SiC又はSiC由来の材料(SiCの変種)から製造される。SiC材料の耐高温性は、マニホルド2が1350℃までの腐食性及び侵食性が高い環境において連続的に動作することを可能にする。SiCの変種を変更することによって、この温度を1600℃まで増加させることができる。
【0047】
図2のA-A線及びB-B線にそれぞれ沿った断面を示す図3及び4に示されるように、マニホルド2内の流路の断面を見ると、第1の角部20に隣接する2つの側面(側辺)に開口部を有し、第2の角部に隣接する2つの側面には開口部がないように、2つの対向する角部20、21がマニホルド2内に画定され得る。したがって、図3は第1組の流路5aのうちの1つを示し、図4は第2組の流路5bのうちの1つを示す。第2の角部21における曲率半径は、流路を通って流れる流体の停滞を回避するように選択される。幾つかの態様では、その曲率半径は95mmから125mmの間である。好ましい態様では、曲率半径は110mmである。しかし、マニホルドを通過することを意図した流体を含む多数の要因に応じて、異なる曲率半径が適用され得ることは明らかであろう。
【0048】
熱交換器スタック
熱交換器スタック3は、1つ又は複数の熱交換器ブロック4を備える。各熱交換器ブロック4は、流体が流れることができる多数の平行流路6を有する。好ましい実施形態では、熱交換器ブロック4は直方体であり、各流路6は長方形の断面を有し、直方体の軸に沿って前記直方体の一方の面から反対側の面まで延在する。したがって、熱交換ブロック4内の流路6は互いに平行になる。これにより、複雑な又は過度に大きな熱交換器1を形成する必要なく、隣接する流路6内の流体間の熱交換が流路6全体に沿って確実に行われる。したがって、熱交換器ブロック4内の各流路は、流体(気体又は液体)がそれを通って移動し得る囲われた容積を形成する。本明細書に記載の熱交換ブロック4内では、1つの流路6内の流体は他の任意の流路6内の流体から隔離される。
【0049】
熱交換ブロック4の頂部及び底部は、熱交換ブロック4とマニホルド2又は別の熱交換ブロック4との間のガスケット密封を可能にする挿入領域8を有する。幾つかの実施形態ではマニホルド2が同様の挿入領域を含み得ることは明らかである。挿入領域8は熱交換ブロック4の表面上にあり、熱交換ブロック4がマニホルド2及び/又は熱交換ブロック4と組み合わされた際に、挿入領域8に配置されたガスケットが流路6を包囲するように位置決めされる。好ましい配置では、セラミックファイバガスケットが利用され、これは、これらの要素間の接続部における熱交換ブロックとマニホルドの幾何構造の単純さによって可能になる。
【0050】
粉末冶金を用いて熱交換ブロック4を製造することが好ましい。他の実施形態では、熱交換ブロック4は3Dプリントされ、次いで硬化のために焼成される。好ましい熱交換ブロック4は、炭化ケイ素(SiC)から製造される。他の材料及び構築技術も適用可能である。さらに別の実施形態では、熱交換ブロック4は、その後、集合体として硬化される未焼成又は「グリーン」セラミックプレートを組み立てることによって構築され得る。他の製造技術も可能である。
【0051】
熱交換器
図1に示される配置では、熱交換器1は、2つのマニホルド2a、2bと、(熱交換コアとも称される)熱交換スタック3とを含み、マニホルド2a、2bは、熱交換ブロック4の両端に取り付けられている。図1の配置では、6つの熱交換ブロック4a、4b、4c、4d、4e、4fが示されているが、熱交換ブロック4の数は熱交換器1が使用されるシステムの要件に応じて変わり得ることは明らかであろう。熱交換器1は、マニホルドをそれぞれの流体源に接続するためのコネクタをさらに含む。例えば、第1の流体経路に関連する第1のコネクタは、第1のマニホルド2aを第1の流体源に接続し、第2の流体経路に関連する第2のコネクタは第2のマニホルド2bを第2の流体源に接続する。幾つかの態様では、第2の流体経路に関連する第3のコネクタもまた、第2のマニホルド2bを第2の流体源に接続する。
【0052】
熱交換器の各要素(すなわち、マニホルド2a、2b及び熱交換ブロック4a、4b、4c、4d、4e、4f)は、この熱交換器1の軸に沿って互いに組み合わされる。したがって、熱交換器1の軸は、熱交換器スタック3と、熱交換器スタック3の両端に配置されている両方のマニホルド2a、2bとを貫通する。前述のマニホルド2の向きを用いれば、各マニホルド2a、2bの第1の方向は熱交換器1の軸と整列されているが、一方のマニホルドは他方に対して反転している(すなわち、各マニホルド上に最も多くの開口部を有する面が他方のマニホルドに面している)。
【0053】
第1のマニホルド2a内の第1組の流路5aは、熱交換スタック3内の第1組の流路6aと整列され、これら自体は、第2のマニホルド2bの第1組の流路5aと整列されて第1組の流体経路を形成する。同様に、第1のマニホルド2a内の第2組の流路5bは、熱交換スタック3内の第2組の流路6bと整列され、これら自体は、第2のマニホルド2b内の第2組の流路5bと整列されて第2組の流体経路を形成する。したがって、第1及び第2の流体経路は重ね合わせて配置される。例えば、第1組の流体経路のうちの第1の流体経路は、第2組の流体経路のうちの第1の流体経路に隣接し、これは、また、第1組の流体経路の第2の流体経路に隣接する。さらに、第2組の流体経路のうちの第2の流体経路も、第2組の流体経路のうちの第2の流体経路に隣接し、以下同様である。
【0054】
流路は、熱交換スタック3内にあるときは、熱交換器1の軸と平行である。各マニホルド2a、2b内で、流体経路は軸と平行である方向から異なる方向へと方向転換する;第1組の流体経路は、軸と平行ではない一方向を向くように方向転換するのに対して、第2組の流体経路は、軸と平行ではなく、第1組の流体経路の方向とは異なる別の方向に向くように方向転換する。
【0055】
このように、マニホルド2a、2bは、第1組の流体経路内の流体を第2組の流体経路内の流体から隔離することができる。これにより、熱交換器1は2つの異なる流体源から流体を流入させることが可能になる。第1組と第2組の流体経路が交互に重ね合わせて配置されるため、マニホルド2a、2bは流体をそれぞれの流体経路に隔離し、流体を熱交換スタック3内の隣接する流路に流動させ、そこで、マニホルド2及び熱交換ブロック4の材料を熱交換媒体として使用して、流体間の熱交換が起こり得る。
【0056】
幾つかの実施形態では、流体経路の第1及び第2組の両方の中の流体は同じ方向に流れる。他の実施形態では、第1組の経路内の流体は、第2組の流体経路内の流体とは反対方向に流れる。
【0057】
上述のヒートスタック3内の流体の並流の結果として、隣接する流路6内の流体間で熱交換が行われる熱交換器1の領域が最大化され、それによってより効率的な熱交換器が提供される。さらに、熱交換面を変更する必要がある場合(例えば、2つの流体間の熱交換のための追加の時間が必要な場合)には、熱交換器1は単一軸に沿って拡張するだけでよい。これに関して、熱交換ブロック4及びマニホルド2のモジュール式の性質は、熱交換ブロック4の数を迅速かつ簡単な方法で増減することによって熱交換器1の長さを変えることができるので利点を高める。さらに、そのようなモジュール式配置は、1つの要素が損傷した場合にそれを簡単かつ迅速に取り外して交換することができ、それによって熱交換器を組み込んだシステムの停止時間を最小限に抑えるという点で有利である。代表的な金属製の熱交換器では、構成要素は互いに溶接されているので、損傷した構成要素を取り外して交換するための単純な機構が不可能になる。溶接は、熱交換器内部へのアクセスをより困難にし、清掃が必要な場合に停止時間が長くなることがある。
【0058】
マニホルド2内の流路内の流体はそのマニホルド2内の他の流路内の流体から隔離されており、熱交換ブロック4内の流路内の流体はその熱交換ブロック内の他の流路内の流体から隔離されることは前述の通りである。ブロック4間の、又はブロック4とマニホルド2間の接合部で流体が流路から漏れる可能性を最小限にするために、熱交換器はシェル又はハウジング内に配置され得る。そのような配置が図7に示されており、そこでは2つのマニホルド2a、2b及び熱交換スタック3がハウジング(又はシェル)7内に封入される。
【0059】
ハウジング7の内部寸法は、熱交換器1の軸に沿った2つのマニホルド2と熱交換スタック3との組み合わせの外形寸法と類似している。マニホルド2a、2b及び熱交換スタック3がハウジング7内に配置されると、ハウジング7はマニホルド2a、2b及び熱交換スタック3を軸に沿って圧縮する。このようにして熱交換器1の要素を圧縮すると、2つの要素間の接合部(すなわち、マニホルド2から熱交換器ブロック4への接合部、又は熱交換器ブロック4から熱交換器ブロック4への接合部)で流体が流体経路から漏れることが防止される。その結果、これによって第2組の流体経路を通って移動する流体による、第1組の流体経路を通って移動する流体の汚染が防止される。
【0060】
ハウジング7は、流体源とマニホルド2a、2bとの間の接続部として機能するポート9a、9b、9c、9dを含む。例えば、第1のマニホルド2a及び第1の流体経路に関連する第1のポート9aは第1の流体源に接続し、第2のマニホルド2b及び第2の流体経路に関連する第2のポート9bは第2の流体源に接続する。幾つかの態様では、第2のマニホルド2b及び第2の流体経路に関連する第3のポート9cもまた第2の流体源10に接続する。
【0061】
好ましくは、ハウジング7は耐火物でライニングされた鋼鉄製ハウジングであり、熱交換ブロック4はライニング内の固定具によって適所に保持される。ハウジングが十分な強度の他の材料で作られてもよいことは当業者に明らかであろう。
【0062】
熱交換器1は任意の適切な材料で製造することができるが、マニホルド2及び熱交換スタック3を製造するための好ましい材料は、炭化ケイ素(SiC)又はSiC由来の材料であることは上述した。この材料は、動作温度、耐食性、耐浸食性、及びメンテナンスに関して、従来の金属製熱交換器を超える多くの利点を提供する。
【0063】
例えば、動作温度及び耐食性に関して、253MA又はIncolnelベースの合金などの特殊金属の代表的な材料限界は、環境が極めて侵食性である場合には1000℃未満に制限される。SiC又はSiC由来の材料を用いると、熱交換器は、最高1350℃までの高度の腐食性かつ侵食性の(過酷な)環境において連続的に動作され得る。SiCの変種を変更することによって、これを1600℃まで上昇させることができる。高度の腐食性かつ侵食性の環境での悪影響をさらに最小限に抑えるために、熱交換器の動作は1070℃に制限されることがある。したがって、幾つかの態様では、熱交換器、ひいてはマニホルドは1070℃~1350℃で動作する。幾つかの態様では、熱交換器は1070℃~1600℃で動作する。より高い動作温度は、熱交換器を必要とするより多様なシステムに熱交換器が適用されることを可能にする。
【0064】
耐侵食性に関して、流れの中に個体がある場合、特に流れ形状がよどみ点を含む場合、浸食が問題となる。さらに、熱膨張の問題に対処するためには表面は薄肉でなければならず、連続的な固体衝撃に耐えるそれらの能力を使い果たしてしまう。しかし、SiC又はSiC誘導体材料(又はSiC由来の材料)の使用は、より大きな耐浸食性を可能にする。その結果、これは熱交換要素2、3の耐久性を向上させ、メンテナンスに必要な時間を短縮する。
【0065】
さらに、熱交換器1内に材料の堆積がある場合(例えば、炭化水素が一方又は両方の流体中に存在するとタールが堆積する可能性がある)、清掃が必要となる。好ましい熱交換器1を清掃するために、収着剤媒体を添加する手段が設けられ得る。収着剤媒体は、熱交換器1内で「サンドブラスト」剤として作用する。収着剤媒体は流路内に導入され、流路の幾何構造により流路の中に流速が常に高く保たれ、流路内で搬送される。したがって、収着剤媒体は、研磨作用によって内壁からファウリングを除去する。このような清掃は、SiC材料の材料特性、特に硬度によって可能になる。代表的には、収着媒体は典型的にはアルミナサンドであり、これは回収され、再使用される。
【0066】
金属熱交換器のコストもまた、Incolnelベースの合金のコストの高騰のために法外なものとなっている。
【0067】
使用例
一例では、上述したような熱交換器1は、先端熱処理システムにおいて実施され得る。例えば、図8に示されるように、第1の気体供給源からの比較的低温の気体は、第1の入口(すなわち第1のコネクタ)10から熱交換器1に流入し、第1の出口(すなわち第3のコネクタ)11に向かって流れる。出口11の後、気体は先端熱処理装置14に流入し、そこで処理中に気体が加熱される。先端熱処理装置14から流出すると、加熱された気体は第2の入口(又は第2のコネクタ)12で熱交換器1に再導入され、第2の出口(すなわち第4のコネクタ)13に向かって流れる。熱交換器1の観点から見ると、先端熱処理装置14は第2の気体供給源である。熱交換器1内では、第1の供給源からの比較的低温の気体は第1の気体経路(第1の流体経路)を流れ、一方、先端熱処理装置からの加熱された気体は第2の気体経路(第2の流体経路)を流れる。第2の気体経路は、上述したように第1の気体経路と平行で、重ね合わせて配置される。
【0068】
有利には、熱交換器1をこのように使用することによって、先端熱処理装置14に入る気体は予熱され、それによって処理のために気体を適切な温度まで上昇させるのに必要なエネルギを減少させると共に、先端熱処理装置からの加熱された気体を冷却して清掃及び処理を可能にする。
【0069】
先端熱処理システムで使用され、マニホルドが台形の断面を有する場合、流路は、2つの開口部(1つは台形の非平行の側に沿った開口部、もう1つは台形の平行な側に沿った開口部)を有する。したがって、マニホルドの使用時に気体がそこで方向転換する第1の角部は、隣接する端部に開口部を有し、第2の角部は、隣接する端部に開口部を有しない。幾つかの態様では、開口部を有さない平行の側の内壁は、非平行の側の開口部から第2の角部に向かって僅かな角度をなしている。好ましくは、その平行側の壁とその内壁間の角度は4°であり、内壁の長さは295mmである。第2の角部の曲率半径は110mmであるが、下限は95mm、上限は125mmである。このような曲率半径は、流体が第2の角部で停滞することを防止する。
【0070】
他の例では、カーボンブラックは、アセチレン、天然ガス及び石油由来オイルを含む炭化水素の部分酸化から製造される。酸化プロセスは、カーボンブラック製造プロセスを持続するのに必要な熱を発生するためにある割合の炭化水素を消費する。反応器(代表的には空気)への酸化剤の予熱温度が高いほど、最終生成物の収率が高い。反応器からの高温の排ガスから酸化剤を予熱するために、その用途のための金属製又はセラミック製のシェル・チューブ型熱交換器を利用することが現在の慣行である。空気の最高予熱温度は、ピークの空気予熱が制限されている金属製熱交換器の場合、(特に、例えば硫黄に富むオイルが使用される場合)腐食及び浸食の問題を含む冶金学的考察によって制限される。シェル・チューブ構成の現在のセラミック熱交換器については、現在の制限は、管と管板との間の全ての接合部で、低温の気体流と高温の気体流とを互いにシールすることが複雑であることに起因する。加えて、オイルは管内に堆積する灰生成物が含まれているため、定期的なメンテナンスのための停止が必要である。ここでの熱交換器は、(熱交換器のピンチポイント内で)実質的に無制限の予熱レベルを達成するための手段を提供して、プロセス効率の飛躍的(段階的)な変化をもたらす。さらに、この構成は、オンラインクリーニングを採用することを可能にし、停止時間を軽減する。より高い硫黄レベル、又はさらに選択されたプラスチック廃棄物を含むより侵食性の原料をプロセスに利用することができ、プロセスの経済性を改善する。
【0071】
さらに別の例では、熱交換器1を使用して、閉ループ空気又は熱流体を加熱して安全で低コストのボイラー内の蒸気圧及び温度を上昇させ、それによってボイラー材料を問題の(例えば腐食性の)化学物質の凝縮物から隔離することができる。従来の焼却炉では、エネルギの回収は材料の腐食のために制限されている。例えば、ボイラ管を腐食させる問題のある化学物質の凝縮により、熱回収は流体を570℃未満に保つ。上述した熱交換器1は、流体経路内によどみ点がないことにより凝縮を最小限に抑える。したがって、問題のある化学物質が堆積する可能性は低くなる。さらに、好ましい熱交換器1は耐腐食性であり、熱交換器内を流れる流体中の腐食性化学物質の影響をさらに制限する。
【0072】
他の態様、実施形態及び修正
幾つかの態様では、熱交換器は、並流式多管式熱交換器であり得る。高速の流体の流れは、ファウリングの傾向を減らす効果がある。高速度はまた、熱伝達率の増加にも寄与する。したがって、熱交換器は、(例えば、熱交換器スタック内の流路の壁に沿って)熱伝達領域のサイズを増大させるために長く狭くされつつ、流路内の高い気体速度を可能にする配置をも提供する。したがって、特定の環境では、熱交換器のアスペクト比は好ましくない(すなわち、過度に高い/長い又は直列の複数の熱交換器もまた高コストにつながる)。並流式、多経路式熱交換器配置は、狭い流路(ひいては高い気体速度)を維持しつつ、単一の熱交換器本体内の経路数を交換器の長さで効果的に乗算する(熱交換器の長さを単一の熱交換器本体内の経路数倍にする)ことによってこれらの問題に対処する。単管式配置と比較して、多管式配置の熱交換器は、全体を通して並流式構成を維持しつつ気体の滞留時間(すなわちドエルタイム)を増加させ、それによってよどみ点及び再循環ゾーンを回避するという利点を維持する。以下に記載するこれらの態様の説明は、二重管配置に焦点を合わせている。当業者は、同様の原理が3管式(又はそれ以上の)配置を作製するために適用され得ることを理解するであろう。
【0073】
並流二重経路熱交換器は、熱交換スタック3aの端部にマニホルド2aを備えている。マニホルドが接続されている端部以外の熱交換スタックの端部には端部部品が設けられている。並流二重パス熱交換器は、熱交換器内の気体の滞留時間(すなわちドエルタイム)を増加させる。二重管配置では、高温気体と低温気体とは熱接触により多くの時間を費やし、したがって、高温気体から低温気体へより多くの熱が伝達される。
【0074】
図10Aを参照すると、マニホルド102は4つのポート150、152、154、156を備えている。これらのポート150、152、154、156は、第1及び第2の入力ポート、及び対応する第1及び第2の出力ポートを含む。各入力ポートは、マニホルド102内のそれぞれの複数の流路105に接続されている。好ましくは、この態様のマニホルドでは、入力ポートは、ポート150に関連して図2に示されるように、(「副流路」とも称される)2つの流路160、162に接続される。これらの流路及び/又は副流路は、熱交換スタック内の対応する流路に気体を向けるように動作可能である。このようにして、マニホルド102は、単一の入力ポートを通って気体を流入させて熱交換スタック内の2つの別個の平行な流路を通って流動させる。同様に、各出力ポートは、マニホルド102内のそれぞれの複数の流路105に接続されている。図10では、流路の始端はポート156を通して見ることができる。
【0075】
「副流路」構成は、有利には、ハウジング内で圧縮された場合に熱交換器にさらなる強度を提供する(例えば、図7を参照)。図10A、11A及び12Aに見られるように、「副流路」配置は(それぞれ線C-C、D-D及びE-Eに対して垂直に延びる)中央リブを可能にする。そのリブは、熱交換器の構成要素が座屈するのを防止するためのブレースとして機能する。さらに、図6に示されるように流路と比較して断面積が変化するため、副流路配置は僅かに増加した速度を生じ、それによってファウリングの減少に関して好ましい効果を有する。
【0076】
図11A及び11Bを参照すると、熱交換スタック103内の流路は、複数の気体戻り流路と重ね合わせて配置された複数の気体入口流路を有すると見なされ得る。気体入口流路は、入力ポートに接続されているマニホルド102の流路に接続されている。気体入口流路は、マニホルド102の流入ポートと端部部品200の間に配置されている。気体戻り流路は、流出ポートに接続されているマニホルド102の流路に接続されている。気体戻り流路は、端部部品200とマニホルド102の流出ポートとの間に配置されている。
【0077】
図11Aの相互配置された入口流路及び戻り流路は、図6の第1組の流路6a及び第2組の流路6bと同様である。図11Aの配置は、単一の流路の代わりに2つの副流路170、172を備えていることで図6の配置とは異なっている。図10A及び図10Bのマニホルド102が副流路160、162を含まず、副流路160、162の代わりに単一の流路を含む配置では、熱交換スタック103は、図6に示され、また上述した通りである。
【0078】
図11Bは、図11Aの線D-Dで切断された断面図を示す。副流路配置は、図11Bで明確に分かる。図11Bに示される配置は、入口流路又は戻り流路のいずれにも適用可能である。
【0079】
図12A及び図12Bを参照すると、端部部品200は、熱交換器スタック103内の対応する気体入口及び気体出口流路に接続する副流路を含む。端部部品は、実質的に端部部品の幅(すなわち線EEに垂直な方向)に渡る(を差し渡す)単一流路を含み得ることが理解されよう。
【0080】
端部部品200内の流路(又は副流路)は、熱交換器スタック103の気体入口流路(又は副流路)を熱交換器スタック103の対応する気体戻り流路(又は副流路)と相互接続する。したがって、端部部品200内の流路は、マニホルド102の入力ポートと対応する出力ポート間の単一の気密封止された気体経路の一部である。気密封止された気体経路は、マニホルド102の入力ポートに接続されたマニホルド102内の流路、熱交換器スタック103内の気体入口流路、端部部品200内の流路、熱交換器スタック103内の気体出口流路、及びマニホルド102の出力ポートに接続された、マニホルド102内で接続された流路を備えている。
【0081】
マニホルド102の入力ポートを通って入る気体経路は、熱交換スタック103を通過して端部部品200内に入り、次いで再び熱交換スタック103内に戻る。端部部品200内の流路は、熱交換スタック103の気体入口流路から端部部品200に流入する気体の方向を、熱交換スタック103の気体出口流路に流出するように変えるように湾曲されている。
【0082】
副流路が存在する図12A及び12Bに示される配置では、気体はマニホルド102上の入力ポートを介して装置に流入し、マニホルド102内の2つの副流路160、162に隔離する。その後、気体は熱交換スタック103に向けられ、そこでマニホルド102内のそれぞれの副流路160、162に接続されている副流路170、172に沿って移動する。次いで、気体は端部部品200内の対応する副流路180、180’に向けられ、その後、気体は再び熱交換スタック103に向けられる。より具体的には、気体は熱交換スタック103内の対応する戻り副流路170’、172’に向けられる。気体は、熱交換スタックの戻り副流路170’、172’に沿って移動し、マニホルドの副流路160’、162’内に向けられる。次いで副流路160’、162’内の気体は出力ポートを経てマニホルドから流出する前に再結合される。気体はマニホルド内で隔離されるが、気体経路自体は入力ポートと出力ポートとの間で気密封止されたままであることに留意されたい。
【0083】
端部部品200の流路(又は副流路180、180’)は、熱交換器スタック103の入口気体流路(又は副流路)から端部部品200に流入する気体が方向転換して、入口気体流路に対応する熱交換スタック103の戻り気体流路に流入するように湾曲される。好ましくは、端部部品200の曲率(湾曲)は、流路(又は副流路)の壁に沿って流体の流れの方向に対して直角(90°)なポイントがないような湾曲である。これが、端部部品内での流体の停滞を防止し、それによって高い流速が可能になり、ファウリング傾向を大幅に減少させる。これが停滞の回避を可能にする。好ましくは、端部部品の流路はU字形である。図12Bに示される配置では、端部部品内の副流路は気体の方向を180°変えさせる。他の湾曲度は当業者には明らかであろう。気体が、中間装置を介して熱交換スタック103の対応する流路又は副流路に向けられ得ることもまた明らかであろう。同様に、気体は、熱交換スタック103から中間装置を介して端部部品200の対応する流路又は副流路に向けられ得ることも明らかであろう。
【0084】
幾つかの態様では、マニホルド2は、熱交換器1が3つ以上の流体源から流体を受け取ることを可能にするように適合され得る。これにより、熱交換器内部の温度、ひいては熱交換器を出る流体の温度に対するより優れた制御が可能になる。この態様によるマニホルド2は3組の流路15a、15b、15cを含み、これら3組の各流路は第1の方向に開口部を有する。第1組の流路15a内の流路は第2の方向にも開口を有し、第2組の流路15b内の流路は第3方向にも開口を有し、第3組の流路15b内の流路は同様に第4の方向にも開口部を有する。
【0085】
マニホルド2が、熱交換器1が上述のように2つ以上の流体源から流体を受けることを可能にすると、重ね合わせて配置された流路のための異なる配置が適用され得る。例えば、第3組の流路15内の流路は、第1組及び第2組の流路5a、5bからの重ね合わせて配置された所定数の流路の後にのみ配置され得る。-第3組の流路15の連続した流路の間に第1組と第2組の各流路からのN個の重ね合わせて配置された流路があり、ここでNは所定の数である。幾つかの態様では、Nは1より大きい。流路の正確な配置は、熱交換器1が適用されるシステムに依存して変わり得る。
【0086】
先端熱処理システムで処理するため、気体を予熱するために熱交換器1が使用される例では、第3の気体源は熱源であり得よう。例えば、先端熱処理装置14から熱交換器1に再流入する加熱された気体が、先端熱処理装置14に流入しようとしている気体を予熱するのに十分な温度ではない場合、熱交換器内で気体の温度を上昇させるため、上記熱源からの専用の加熱流体が熱交換器を通過するようにされ得る。熱交換器を通過させ。その中の気体の温度を上昇させるために熱交換器を通過させることができる。同様に、加熱気体が十分に冷却されていない場合、専用の加熱流体の代わりに冷却剤が使用され得る。
【0087】
もちろん、4つの流体源(及びマニホルド及び熱交換ブロック内の関連する組の流路)を有する配置では、専用の加熱流体と冷却剤の両方が使用され得る。この態様によるマニホルドは4組の流路を含み、それら4組の各流路は第1の方向に開口部を有する。第1組の流路内の流路は第2の方向にも開口部を有し、第2組の流路内の流路は第3の方向にも開口部を有し、第3組の流路内の流路もまた第4の方向にも開口部を有し、また第4組の流路内の流路も第5の方向にも開口部を有し、第1の方向から第5の方向は互いに異なる。
【0088】
本発明は、2つの異なる流体源からの流体を熱交換器内で平行方向に流動させるための手段を提供することが理解されよう。
【0089】
本発明は、複数の流体の流入を受け、それらを互いに別個に並行して流動させるための手段と、前記熱交換器からの出口で前記複数の流体を分配するための手段とを備える熱交換器を提供する。前述のように、熱交換器は、対向流(すなわち、反平行流)又は順方向流/同方向流(すなわち、平行流)のいずれかでも可能である。
【0090】
本発明は、熱が高温流体から比較的低温の流体に伝達されるように、複数の高温流体源と単一の比較的低温の流体源とを受容するように動作可能な並流式熱交換器を提供することがさらに理解されよう。
下記は、本願の出願当初に記載の発明である。
<請求項1>
第1の方向を向く開口部と前記第1の方向とは異なる第2の方向を向く開口部とを各々が有する第1の複数の流路と、
前記第1の複数の流路と重ね合わせて配置され、第3の方向を向く開口部と前記第1の方向を向く開口部とを有する第2の複数の流路と、を備え、
前記第3の方向は、前記第1の方向及び前記第2の方向と異なる、並流式熱交換器用のマニホルド。
<請求項2>
前記マニホルドが、1070℃~1350℃の温度で動作するように適合されている、請求項1に記載のマニホルド。
<請求項3>
前記マニホルドが炭化ケイ素又は炭化ケイ素誘導体材料である、請求項1又は2に記載のマニホルド。
<請求項4>
第4の方向を向く開口部と第1の方向を向く開口部とを有する第3の複数の流路をさらに備え、前記第4の方向は、前記第1の方向、前記第2の方向、及び前記第3の方向と異なる、請求項1から3のいずれか一項に記載のマニホルド。
<請求項5>
前記第1組及び第2組の流路の各々からの所定数の重ね合わせられた流路が、前記第3組の流路からの連続した流路の間に配置される、請求項4に記載のマニホルド。
<請求項6>
前記所定の数が1より大きい、請求項6に記載のマニホルド。
<請求項7>
第5の方向を向く開口部と前記第1の方向を向く開口部とを有する第4の複数の流路をさらに備え、前記第5の方向は、前記第1の方向、前記第2の方向、前記第3の方向及び前記第4の方向とは異なる、請求項4から6のいずれか一項に記載のマニホルド。
<請求項8>
前記マニホルドを3Dプリントするステップを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のマニホルドを製造する方法。
<請求項9>
熱交換スタックの両側に接続された2つのマニホルドを備える熱交換器であって、
各マニホルドは請求項1から7のいずれか一項に記載のマニホルドであり、
前記熱交換スタックは、貫通する複数の流路を有する少なくとも1つの熱交換ブロックを備え、
前記熱交換ブロックの前記流路は、各マニホルドの前記流路と整列されて、マニホルドと熱交換スタックの両方にまたがる直列の気体経路を形成する、熱交換器。
<請求項10>
各熱交換ブロックがガスケットを受容するように適応された挿入領域を含み、
前記挿入領域が、前記ブロックの表面上に配置され、前記ブロックの前記表面上で前記流路を囲む、請求項9に記載の熱交換器。
<請求項11>
第1の流体経路が一方のマニホルド内の前記第1の複数の流路及び他方のマニホルド内の前記第1の複数の流路を含み、
第2の流体経路が一方のマニホルド内の前記第2の複数の流路及び他方のマニホルド内の前記第2の複数の流路を含み、
前記熱交換器が、
前記第1の流体経路を第1の流体源に接続するように適合された第1のコネクタと、
前記第2の流体経路を第2の流体源に接続するように適合された第2のコネクタと、をさらに備える、請求項9に記載の熱交換器。
<請求項12>
前記第1のコネクタとは反対側の前記第1の流体経路の端部で前記第1の流体経路を前記第2の流体源に接続するための第3のコネクタをさらに備える、請求項11に記載の熱交換器。
<請求項13>
前記第1及び第2のコネクタが同じマニホルドに取り付けられる、請求項11又は12に記載の熱交換器。
<請求項14>
前記第1及び第2のコネクタが異なるマニホルドに取り付けられる、請求項11又は12に記載の熱交換器。
<請求項15>
複数の流体の流入を受け、それらを互いに別個に並行に流動させるための手段と、前記熱交換器から流出する際に前記複数の流体を分配するための手段と、を備える熱交換器。
<請求項16>
前述の、又は添付の図面に示されるマニホルド。
<請求項17>
前述の、又は添付の図面に示される熱交換器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B