IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社サンエスの特許一覧

<>
  • 特許-冷却衣服 図1
  • 特許-冷却衣服 図2
  • 特許-冷却衣服 図3
  • 特許-冷却衣服 図4
  • 特許-冷却衣服 図5
  • 特許-冷却衣服 図6
  • 特許-冷却衣服 図7
  • 特許-冷却衣服 図8
  • 特許-冷却衣服 図9
  • 特許-冷却衣服 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】冷却衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20220630BHJP
   A41D 13/005 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D13/005 103
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021091313
(22)【出願日】2021-05-31
(62)【分割の表示】P 2017161247の分割
【原出願日】2017-02-28
(65)【公開番号】P2021120502
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2021-05-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年1月13日 株式会社サンエス発行の「空調風神服2017(製品カタログ)」に発表 平成29年2月20日 株式会社サンエスのホームページ「空調風神服」に発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000130732
【氏名又は名称】株式会社サンエス
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】松岡 泰典
(72)【発明者】
【氏名】山本 勝義
【審査官】津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-23378(JP,A)
【文献】特開2015-74852(JP,A)
【文献】特開2006-132040(JP,A)
【文献】国際公開第2016/016996(WO,A1)
【文献】特許第6233674(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00-13/12
A41D 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
服本体の内側に冷却風を送出する風発生手段が装着される取付孔が背面に形成された冷却衣服であって、
前記冷却風を前記冷却衣服の外側に排出し、裾口幅方向及び着丈方向に複数設けられた冷却風排出路を有し、かつ、長手方向に複数の係合部が設けられ、一端が裏地に固定されたバンド部と、前記裏地に固定された取付部とを有し、何れかの前記係合部と前記取付部とを係合させ、前記バンド部の固定位置から前記取付部の固定位置までの直線の長さを、前記バンド部の固定位置から前記取付部の固定位置までの前記裏地に沿った長さよりも短くすると共に、前記裏地を弛ませることで、一方の前記冷却風排出路を開口させ、前記冷却風が、一方の前記冷却風排出路を介して、外側に排出される、冷却風排出機構を肩部分に備える、
ことを特徴とする冷却衣服。
【請求項2】
前記取付部がバックネックポイント近傍に固定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却風排出機構を備える冷却衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄工所や夏の屋外の工事現場のような、高温環境下で作業する場合、体温の上昇を抑制することが必要となる。しかし、このような環境下では、安全性や機能性の面から、生地が厚い衣服が着用されている。長時間、高温環境下で作業を行う場合、体外に熱を充分に放出することができないため、過度の体温上昇を引き起こして熱中症に陥るおそれがある。
【0003】
このような環境で作業する時に着用する衣服として、冷却衣服が使用されている(特許文献1)。
特許文献1の冷却衣服には、着用者の首後部と襟後部との間に空気排出口調整機構が設けられ、この空気排出口調整機構は、流通路内を流通する冷却風を外部に排出する空気排出口の開口度を調整するためのものであり、留め具を有し、帯状の端部が服地の襟後部に取り付けられた調整ベルトと、留め具を取り付けるための係合部とを備えている。この空気排出口調整機構では、端部から留め具までの調整ベルトの長さを調整ベルトが取り付けられた位置から係合部までの空調服の服地に沿った距離よりも短くし、留め具を係合部に取り付けることで、襟後部と人体の首後部との間に空気排出口を形成している。この空気排出口は、冷却衣服の幅方向の中間を中心として、襟後部に1つ形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-74852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の冷却衣服では、空気排出口が、冷却衣服の幅方向の中間を中心として、襟後部に1つ形成されているため、首元全体から均一に冷却風が排出される。
冷却衣服は、屋外や発熱体が存在する高温環境下で着用される。例えば、屋外で作業する場合、太陽の日差しが当たる側の体温は、光が当たらない部分よりも体温が上昇する。
体温が上昇したと感じた着用者は、風発生装置を調整し、冷却風の風量を増加させる。そうすると、体温が上昇していない部分へ送出される冷却風の量も増加する。そのため、風発生装置のモータの電池の消費が早くなり、モータの充電を行う回数が増えるため、作業の効率が悪くなることに加え、体温が上昇していない部分が過剰に冷却され、身体を効率的に冷却することができない。
【0006】
そこで、本発明は、モータへの負担を軽減し、身体を効率的に冷却できる冷却風排出機構を備える冷却衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の冷却衣服に設けられた冷却風排出機構は、軸流ファンを駆動するモータ、外側から空気を取り込む空気取込口、及び冷却風を送出する空気送出口を有する風発生手段が装着される取付孔が背面に形成された冷却衣服の裏地に設けられるものあって、冷却風を冷却衣服の外側に排出する冷却風排出路が、冷却衣服の肩部分の裾口幅方向に複数設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の冷却衣服に設けられた冷却風排出機構は、冷却風排出路が冷却衣服の裾口幅方向の中心線の左側および右側にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の冷却衣服に設けられた冷却風排出機構は、係合部が設けられ、一端が裏地に固定されたバンド部と、裏地に固定された取付部とを有し、係合部と取付部とを係合させ、バンド部の固定位置から取付部の固定位置までの直線の長さを、バンド部の固定位置から取付部の固定位置までの裏地に沿った長さよりも短くすると共に、裏地を弛ませることで、冷却風排出路が形成されることを特徴とする。
【0010】
本発明の冷却衣服に設けられた冷却風排出機構は、バンド部の一端又は取付部が、バックネックポイントに固定されていることを特徴とする。なお、バックネックポイントとは、首の後ろ側の根本の首を前に倒したときに飛び出てくる背骨の位置を示す。
【0011】
本発明の冷却衣服は、軸流ファンを駆動するモータ、外側から空気を取り込む空気取込口、及び冷却風を送出する空気送出口を有する風発生手段を装着する取付孔が背面に形成され、冷却風を外側に排出する冷却風排出路を有する冷却風排出機構を肩部分に備え、冷却排出路が裾口幅方向に複数設けられたことを特徴とする。
【0012】
本発明の冷却衣服は、風発生手段が、取付孔に対して、斜め下方向に5°~35°傾斜して装着され、風発生手段を作動させたときに、風発生手段の斜め下方向から空気取込口を介して空気が取り込まれ、風発生手段の斜め上方向に空気送出口を介して、使用者に向けて冷却風が送出されることを特徴とする。
【0013】
本発明の冷却衣服は、風発生手段が取付孔に回転可能に取り付けられ、風発生手段を回転させたときに、空気取込口を介して取り込まれる空気の方向が変更されると共に、空気送出口を介して送出される冷却風の方向が変更されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の冷却衣服に設けられた冷却風排出機構は、冷却風を冷却衣服の外側に排出する冷却風排出路を、冷却衣服の肩部分の裾口幅方向に複数備える。これらの冷却風排出路の少なくとも一つを開状態とすることで、風発生装置から送出された冷却風は、開状態の冷却風排出路から優先的に排出される。
そうすると、冷却を望まない部分は冷却されず、冷却を望む部分を集中的に冷却することができる。そのため、モータへの負担を軽減し、身体を効率的に冷却できる。
【0015】
本発明の冷却衣服は、上記の冷却風排出機構を備えるため、冷却衣服の着用者が冷却を望む部分を集中的に冷却し、身体が効率的に冷却される。さらに、モータへの負担が軽減されることにより、着用者はモータの充電を行う回数が減らすことができ、作業効率が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の背面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る冷却衣服を着用した状態における、風発生手段の断面図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る冷却風排出機構を示す図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る冷却風排出機構を示す図である。
図5】本発明の第一実施形態に係る冷却風排出機構の概略断面図である。
図6】本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の内部における冷却風の流れを説明するための図である。
図7】本発明の第二実施形態に係る冷却衣服を着用した状態における、風発生手段の断面図である。
図8】本発明の第二実施形態に係る冷却風排出機構を示す図である。
図9】本発明の第二実施形態に係る冷却風排出機構を示す図である。
図10】本発明の第二実施形態に係る冷却衣服の内部における冷却風の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第一実施形態]
本実施形態に係る冷却衣服及び冷却風排出機構を、図1図6を参照し説明する。
図面上、裾口幅の方向を幅方向X、幅方向Xと直交する着丈方向を高さ方向Yとする。
冷却衣服1は、図1に示すように、背面の腰部分に形成された取付孔3に装着される風発生手段としての風発生装置2と、肩部分の裏地に設けられた冷却風排出機構60とを備えている。
この冷却衣服1は、使用者が直接着用したり、下着を着用した上から着用したりする。
【0018】
風発生装置2は、図2に示すように、冷却衣服1の外側から空気を取り込むための空気取込口11と、冷却衣服1の内側に冷却風を送出するための空気送出口12と、空気取込口11が形成されている外側ファンガード13と、空気送出口12が形成されている内側ファンガード14と、冷却衣服1の外側から空気を取込み、冷却衣服1の内部に冷却風を送出する軸流ファン15、軸流ファン15を駆動させ、使用者の身体9の側で軸流ファン15を駆動し、支持するモータ16と、モータ16を覆うキャップ17とを備えている。
この風発生装置2は、環状の固定リング18を使用し、取付け孔3に対して、斜め下方向に5°から35°の角度だけ傾斜させて、取付け孔3に装着されている。そのため、風発生装置2は、その上端部25が外側に突出し、かつその下端部26が冷却衣服1の内側に配置されている。
【0019】
外側ファンガード13は、有底円筒状を有し、その側面が内側ファンガード14に嵌め合わされる。外側ファンガード13の前面には、空気取込口11が複数形成されている。内側ファンガード14は、ドーム型のカバー部20と円環部21を有する有底円筒状をしている。また、内側ファンガード14の側面には、フランジ19が、内側ファンガード14と一体として形成されている。このフランジ19は、円環部21に対して斜めに形成されている。カバー部20には、空気送出口12が複数形成されている。この空気送出口12は、空気取込口11の位置と対向する位置に形成されている。
風発生装置2を、取付け孔3に対して斜め下方向に所定の角度だけ傾斜させて装着することで、空気取込口11は取付け孔3に対して斜め下方向に所定の角度だけ傾斜している。そのため、風発生装置2は、軸流ファン15を回転させることで、斜め下方向から外部の空気を取り込み、その空気は軸流ファン15の軸方向に沿って斜め上方向に移動し、空気送出口12から身体9に向けて冷却風として送出される。
【0020】
冷却風排出機構60は、図3に示すように、冷却衣服1の幅方向Xの中心線Lの左側に設けられた第一冷却風排出機構61、及び中心線Lの右側に設けられた第二冷却風排出機構62を有している。
第一冷却風排出機構61は、襟部分と服地部分が縫合された部分に、一端が固定された第一バンド部63と、バックネックポイント近傍に固定された取付部としてのボタン部64とを備えている。ここで、バックネックポイントとは、首の後ろ側の根本の首を前に倒したときに飛び出だす背骨の位置(後ろ首の付け根部分の位置)を意味する。
第一バンド部63には、ボタン部64と係合される係合部としての係合孔65が、第一バンド部63の長手方向に複数形成されている。この係合孔65とボタン部64とを係合させることで、図4に示すように、第一冷却風排出路61Aが形成される。
【0021】
具体的には、図5に示すように、係合孔65とボタン部64とを係合させることで、第一バンド部63の固定位置からボタン部64の固定位置までの直線の長さL1を、第一バンド部63の固定位置からボタン部64の固定位置までの裏地に沿った長さL2よりも短くすると共に、裏地を弛ませることで、第一冷却風排出路61Aを形成する。この第一冷却風排出路61Aを介して、冷却衣服1の外側と内側とは連通される。
この第一冷却風排出路61Aの大きさは、ボタン部64と係合させる係合孔65の位置を変更することで、適宜変更できる。
【0022】
第二冷却風排出機構62は、中心線Lを軸として、第一冷却風排出機構61と対称の位置に設けられている(図4)。この第二冷却風排出機構62は、襟部分と服地部分が縫合された部分に一端が固定された第二バンド部66と、バックネックポイント近傍に固定された取付部としてのボタン部67とを備えている。第二バンド部66には、ボタン部67と係合される係合部としての係合孔68が、第二バンド部66の長手方向に複数形成されている。この係合孔68とボタン部67とを係合させることで、第二冷却風排出路62Aが形成される(図5)。
【0023】
本実施形態の冷却衣服1は、中心線Lの左右片側だけ、または、中心線Lの両側に冷却排出路を形成することができる。以下、片側の第一冷却排出路61Aを開状態とした冷却衣服1の作用効果について説明する。
冷却衣服1を着用すると、図6に示すように、冷却衣服1と身体9との間に流路30が形成される。
冷却衣服1を着用後、風発生装置2を作動させると、風発生装置2から冷却風が上方向に流れ、首元又は袖口から外側に排出される。冷却衣服1の首元には、冷却衣服1の外側と内側を連通する、開状態の冷却衣服排出路61Aが形成されているため、流路30を通過した冷却風は冷却衣服排出路61Aから優先的に排出される。そのため、第一冷却排出路61Aが形成されている側に取り付けられたれ風発生装置2(図6上右側に装着されている風発生装置2)からの冷却風に加え、冷却風排出路61Aが形成されていない側に取り付けられた風発生装置2(図6上左側に装着されている風発生装置2)から排出される冷却風も第一冷却排出路61Aから外側に排出される。
そうすると、多量の冷却風を、右側に形成された流路30を通過させ、外側に排出することができる。
【0024】
右側に形成された流路30に多量の冷却風を送出することで、着用者の身体9の右側部分を集中的に冷却することができる。そのため、例えば、屋外で着用者の右側部分に太陽の日差しが当たる作業環境で着用する場合や、着用者の右側に発熱体が置かれている環境で着用する場合、体温が上昇する側の身体部分を選択的に冷却することができる。
また、冷却衣服1は、体温が上昇している部分を選択的に冷却し、体温が上昇していない部分を過度に冷却しない。身体9の体温が上昇していない部分を過度に冷却されることを防止できるため、身体9に悪影響を及ぼさない。
【0025】
従来、両肩にかけて一つの冷却風排出路が形成されている冷却衣服が使用されている。この冷却衣服では、冷却風排出路から冷却風が均一に排出される。そのため、例えば、身体の右側部分の体温が上昇し、その部分をさらに冷却したい場合、風発生装置から送出される冷却風の風量を多くしなければならない。そうすると、体温が上昇していない、身体9の左側部分の流路にも冷却風が送出され、外側に排出されるため、モータを浪費する。
【0026】
本実施形態に係る冷却衣服1は、肩部分の片側だけに第一冷却風排出路61Aを形成することができるため、両肩にかけて一つの冷却風排出路が形成されている場合と比較し、風量を増加させずに所望の身体部分を冷却でき、冷却風の風量増加に伴うモータの浪費を回避できる。モータの浪費を回避することによって、着用者は、冷却衣服1を長時間使用することができ、作業効率を良くすることができる。
【0027】
また、本実施形態に係る冷却衣服1は、ボタン部64に係合させる係合孔65の位置を変更することで、第一冷却風排出路61Aの大きさを変更することができる。そのため、風発生装置2からの冷却風の送出量と、第一冷却風排出路61Aの大きさを調整することで、着用者が最適であると感じる冷却風の排出量を決定することができる。
【0028】
身体の首から背中部分には、第7頸椎や大椎が存在し、これらの骨は、首を曲げたときに飛び出す。そのため、両肩にかけて一つの冷却風排出路が形成されている場合、着用者の体勢によって、身体と冷却衣服との間が塞がれ、首元の冷却風排出路が塞がれて、効率的に身体を冷却できないおそれがある。さらに、着用者が体勢を変更する度に、冷却風の排出量が変化することで、着用者へ違和感を生じさせる。
【0029】
本実施形態に係る冷却衣服1は、ボタン部64をバックネックポイント近傍に設けることで、上述した骨近辺を支点として第一冷却風排出路61Aが形成される。
そのため、冷却衣服1は、両肩にかけて1つの冷却排出路が形成されている場合と比較し、第一冷却風排出路61Aの形状が変更されづらく、第一冷却風排出路61Aが塞がれるおそれを回避でき、効率よく身体9を冷却することができる。さらに、第一冷却風排出路61Aの形状が変更されづらいため、一定の冷却風の排出量を確保でき、着用者が体勢を変えても、着用者への違和感を生じさせない。
【0030】
着用者が、例えば、左を向いて長時間作業する場合、冷却風排出路から多量の冷却風が排出されると、冷却風が耳や目に当たり、作業の妨げとなるおそれがある。
本実施形態に係る冷却衣服1は、中心線Lよりも右側から冷却風を排出させることができるため、冷却風が着用者の作業の妨げにならない。
【0031】
本実施形態に係る冷却衣服は、第一冷却風排出路61A及び第二冷却風排出路62Aを開状態とすることもできる。この場合、両肩にかけて一つの冷却風排出路が形成されている場合と比較し、肩部分の形状に沿って冷却風排出路を形成することができため、着用者へ違和感を生じさせない。
【0032】
[第二実施形態]
本実施形態の冷却衣服1は、第一実施形態の冷却衣服1と比較し、風発生装置2の構成及び冷却風排出機構60の構成が相違する。以下、本実施形態に係る冷却衣服1について、第一実施形態の冷却衣服1と共通する構成の説明は省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0033】
本実施形態の冷却衣服1に装着する風発生装置2には、空気取込口11を介して取り込まれる空気の方向が変更されると供に、空気排出口12を介して送風される冷却風の方向を変更できるものを使用する。
この風発生装置2は、図7に示すように、風発生装置2のフランジ19と内側ファンガード14は、別個の部材で構成され、この内側ファンガード14の円環部21の外周は球面を有している。そのため、円環部21とフランジ19は、球面で接触し、風発生装置2(空気取込口11)の下向きの角度を5~35°の範囲で任意の角度に設定できる。この風発生装置2は、上下方向の角度だけでなく、左側または右側にも回転することができる。
風発生装置2を左側または右側に回転させると、空気取込口11を介して取り込まれる空気の方向が変更されると供に、空気排出口12を介して送風される冷却風の方向が変更される。そのため、着用者は、冷却風の流れる方向を自在に選択できる。
【0034】
また、風発生装置2は、取付け孔3に装着した後、取付け孔3の周方向に回転させることができる。風発生装置2を取付け孔3の周方向へ回転させる場合、風発生装置2全体を回転させるため、風発生装置2の上端部25や空気取込口11等も所定の方向に回転する。そのため、空気取込口11を傾斜させる角度を自由に変更することができる。
なお、身体9の全体をむらなく冷却するには、風発生装置2の取付け孔3に対する回転角度は、0°~45°とすることが好ましい。
【0035】
本実施形態に係る冷却風排出機構60は、図8に示すように、襟元よりも下部分、かつ、中心線L上に固定された第一バンド部71及び第二バンド部72と、中心線Lから所定の距離離れた襟部分と服地部分が縫合された部分に、それぞれ固定された取付部73,74とから構成されている。
第一バンド部71及び第二バンド部72の一端は、バックネックポイント近傍にそれぞれ固定されている。また、第一バンド部71及び第二バンド部72には、係合部としての係合孔75がそれぞれ設けられている。
【0036】
第一バンド部71の係合孔75と取付部73とが係合することで、第一冷却風排出路61Aが形成され、第二バンド部72の係合孔75と取付部74とが係合することで、第二冷却風排出路62Aが形成される。
具体的には、図9に示すように、第一冷却風排出路61Aは、第一バンド部71の固定位置から取付部73までの直線の長さを、第一バンド部71の固定位置から取付部73までの裏地に沿った長さよりも短くすると共に、裏地を弛ませることで形成される。
一方、第二冷却風排出路62Aは、第二バンド部72の固定位置から取付部74までの直線の長さを、第二バンド部72の固定位置から取付部74までの裏地に沿った長さよりも短くすると共に、裏地を弛ませることで形成される。
なお、第一バンド部71,第二バンド部72の固定位置は、中心線L上に限定されず、中心線Lから幅方向Xにずらした位置でもよい。
【0037】
次に、本実施形態に係る冷却排出機構60を備えた冷却衣服1の効果について説明する。
本実施形態に係る冷却衣服1の風発生装置2は、左側または右側にも回転することができる。本実施形態では、第一冷却風排出路61Aを形成し、図10上中心線よりも左側の風発生装置2を所定の角度だけ右回転させた冷却衣服について説明する。
【0038】
風発生装置2を所定の角度回転させた場合、風発生装置2から送出される冷却風は、図10に示すように、第一実施形態の冷却衣服1と比べて、中心線Lよりも右側部分への冷却風の送出量が増加する。そのため、多量の冷却風が、右側部分の流路30を通過し、第一冷却風排出路61Aから排出される。
多量の冷却風を、中心線Lよりも右側の流路30に送出できるため、身体9の右側部分を集中的に冷却することができる。
また、風発生装置2は、その回転角度を変更することで、冷却したい部位に冷却風を送出することができる。そのため、より所望の身体部分を集中的に冷却することができる。
【0039】
以上、本実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
例えば、本実施形態では、冷却風排出路を2つ形成する例を示したが、冷却風排出路は、幅方向Xに2つ以上設けることもできる。また、冷却風排出路は、高さ方向に複数設けることもできる。
また、風発生装置2よりも上側に冷却材を設けて、流路30を通過する冷却風を冷却することもできる。この場合、体温が上昇した部分をより効率的に冷却することができる。
【0040】
また、冷却風排出路は、本実施形態で示した以外にも、例えば、一端が裏地に固定された一対のバンド部を有し、一方のバンド部と他方のバンド部を連結させ、一方のバンド部の固定位置から他方のバンド部の固定位置までの直線の長さを、一方のバンド部の固定位置から他方のバンド部の固定位置までの裏地に沿った長さよりも短くすると共に、裏地を弛ませることで形成してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 冷却衣服
2 風発生装置(風発生手段)
3 取付孔
9 身体
11 空気取込口
12 空気送出口
13 外側ファンガード
14 内側ファンガード
15 軸流ファン
16 モータ
17 キャップ
18 固定リング
19 フランジ
20 カバー部
21 円環部
25 上端部
26 下端部
30 流路
60 冷却風排出機構
61 第一冷却風排出機構
61A 第一冷却風排出路
62 第二冷却風排出機構
62A 第二冷却風排出路
63 第一バンド部
64 ボタン部(取付部)
65 係合孔(係合部)
66 第二バンド部
67 ボタン部(取付部)
68 係合孔(係合部)
71 第一バンド部
72 第二バンド部
73,74 取付部
75 係合孔(係合部)
L 中心線
L1 長さ
L2 長さ
X 幅方向(裾口幅方向)
Y 高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10