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特許7097114脳の機能的活性度に基づいた脳地図決定装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】脳の機能的活性度に基づいた脳地図決定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/377 20210101AFI20220630BHJP
【FI】
A61B5/377
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021105057
(22)【出願日】2021-06-24
(65)【公開番号】P2022067615
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】10-2020-0136062
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513246872
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、チョン キ
(72)【発明者】
【氏名】キム、チュン シク
(72)【発明者】
【氏名】イ、トン ヒョク
【審査官】鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-100(JP,A)
【文献】国際公開第2020/115664(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/369-5/386
G06F 3/01
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサにより、対象体に加えられた感覚刺激に反応した上記対象体の脳信号発生位置を確認する段階と、
上記プロセッサにより、相異なる少なくとも二つの感覚刺激に対する上記脳信号発生位置に基づいて脳皮質の相異なる少なくとも二つの感覚刺激に対する各感覚領域の位置関係に係る感覚領域位置比率を算出する段階と、
上記プロセッサにより、上記感覚領域位置比率に基づいて上記対象体の個人脳地図を決定する段階と、を含む、
電子装置の脳地図決定方法。
【請求項2】
プロセッサと、
上記プロセッサと電気的に連結され、上記プロセッサで遂行される少なくとも一つのコード(code)が保存されるメモリと、を含み、
上記メモリは、上記プロセッサを介して実行されるとき、上記プロセッサが対象体に加えられた感覚刺激に反応した上記対象体の脳信号発生位置を確認し、相異なる少なくとも二つの感覚刺激に対する上記脳信号発生位置に基づいて脳皮質の相異なる少なくとも二つの感覚刺激に対する各感覚領域の位置関係に係る感覚領域位置比率を算出し、上記感覚領域位置比率に基づいて上記対象体の個人脳地図を決定するように惹起するコードを保存する、
脳地図決定装置。
【請求項3】
上記メモリは、上記プロセッサを介して実行されるとき、上記プロセッサが、感覚刺激に反応した上記対象体の脳の複数領域の脳信号を確認し、上記複数領域の脳信号間の強度差が最も大きい時点の上記複数領域の脳信号のうち最も大きい強度を有する地点を上記対象体の上記感覚刺激に対する脳信号発生位置として確認するように惹起するコードをさらに保存する、
請求項2に記載の脳地図決定装置。
【請求項4】
上記対象体の脳の複数領域の脳信号は、上記対象体の頭部に装着された複数の電極から獲得されたものであり、
上記メモリは、上記プロセッサを介して実行されるとき、上記プロセッサが、上記複数の電極の電圧値の分散が最も大きい時を上記複数領域の脳信号間の強度差が最も大きい時点として決定するように惹起するコードをさらに保存する、
請求項3に記載の脳地図決定装置。
【請求項5】
上記対象体の脳の複数領域の脳信号は、上記対象体の頭部に装着された複数の電極で測定した信号に基づいて生成された対象体のトポグラフィ(topography)であり、
上記メモリは、上記プロセッサを介して実行されるとき、上記プロセッサが、脳信号トポグラフィを脳信号発生位置としてラベリング(labeling)した訓練データで訓練された機械学習基盤の学習モデルを上記対象体のトポグラフィに適用して上記脳信号発生位置を確認するように惹起するコードをさらに保存する、
請求項3に記載の脳地図決定装置。
【請求項6】
上記対象体の脳の複数領域の脳信号は、国際10-20法(international 10-20 system)に基づいた上記複数の電極から獲得されたものであり、
上記メモリは、上記プロセッサを介して実行されるとき、上記プロセッサが、上記複数領域の脳信号間の強度差が最も大きい時点で互いに同じ強度値を有する電極の位置を連結したパワー等高線に基づいて上記複数領域の脳信号のうち最も大きい強度を有する地点を上記脳信号発生位置として確認するように惹起するコードをさらに保存する、
請求項4に記載の脳地図決定装置。
【請求項7】
上記メモリは、上記プロセッサを介して実行されるとき、上記プロセッサが、足指触覚刺激、手指触覚刺激、聴覚刺激、嗅覚刺激及び視覚刺激のうち少なくともいずれか一つの感覚刺激に対する上記脳信号発生位置を確認するように惹起するコードをさらに保存する、
請求項3に記載の脳地図決定装置。
【請求項8】
上記メモリは、上記プロセッサを介して実行されるとき、上記プロセッサが、足指触覚刺激に対する脳信号発生位置と聴覚刺激に対する脳信号発生位置との間の第1距離を計算し、上記第1距離に基づいて上記対象体の上記個人脳地図中の左半球及び右半球の比率を調整して上記個人脳地図を決定するように惹起するコードをさらに保存する、
請求項7に記載の脳地図決定装置。
【請求項9】
上記メモリは、上記プロセッサを介して実行されるとき、上記プロセッサが、足指触覚刺激に対する脳信号発生位置と手指触覚刺激に対する脳信号発生位置との間の第1距離、及び手指触覚刺激に対する脳信号発生位置と聴覚刺激に対する脳信号発生位置との間の第2距離を計算し、上記第2距離に対する上記第1距離の比率に基づいて上記対象体の上記個人脳地図中の前頭葉の側面(lateral)比率を調整して上記個人脳地図を決定するように惹起するコードをさらに保存する、
請求項7に記載の脳地図決定装置。
【請求項10】
上記メモリは、上記プロセッサを介して実行されるとき、上記プロセッサが、足指触覚刺激に対する脳信号発生位置と聴覚刺激に対する脳信号発生位置との間の第1距離、及び聴覚刺激に対する脳信号発生位置と嗅覚刺激に対する脳信号発生位置との間の第2距離を計算し、上記第2距離に対する上記第1距離の比率に基づいて上記対象体の上記個人脳地図中の前頭葉及び側頭葉の比率を調整して上記個人脳地図を決定するように惹起するコードをさらに保存する、
請求項7に記載の脳地図決定装置。
【請求項11】
上記メモリは、上記プロセッサを介して実行されるとき、上記プロセッサが、手指触覚刺激に対する脳信号発生位置と視覚刺激に対する脳信号発生位置との間の第1距離、及び嗅覚刺激に対する脳信号発生位置と視覚刺激に対する脳信号発生位置との間の第2距離を計算し、上記第2距離に対する上記第1距離の比率に基づいて上記対象体の上記個人脳地図中の後頭葉の比率を調整して上記個人脳地図を決定するように惹起するコードをさらに保存する、
請求項7に記載の脳地図決定装置。
【請求項12】
上記メモリは、上記プロセッサを介して実行されるとき、上記プロセッサが、標準脳地図をロードし、上記感覚領域位置比率に基づいて上記標準脳地図を変更して上記対象体の上記個人脳地図を決定するように惹起するコードをさらに保存する、
請求項2に記載の脳地図決定装置。
【請求項13】
上記メモリは、上記プロセッサを介して実行されるとき、上記プロセッサが、上記対象体の上記個人脳地図を決定した後、受信した上記対象体の脳信号の発生位置又は電極位置を上記個人脳地図に表示して出力するように惹起するコードをさらに保存する、
請求項2に記載の脳地図決定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脳の機能的活性度に基づいて脳地図を決定(脳マッピング)する装置及び方法に関し、より詳しくは、感覚刺激に対する個人別の脳反応領域に基づいて個人別の脳地図を決定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
てんかんなどの様々な疾病の判断のために脳信号(脳波を含む)を測定して分析する従来技術が存在する。脳信号は脳のニューロンにおいてイオン電流による脳の電気的又は磁気的活動に基づく。
【0003】
脳信号検査のうち脳電図(electroencephalography:EEG)検査の典型的な脳電図測定方法は、頭皮の色々な部位に付着した電極を通して頭脳でニューロンの活動に伴って生成される自発的電気的活動を一定時間かけて非侵襲的方法で測定するか特定刺激を加えた後に測定することを意味する。
【0004】
脳電図検査の従来の電極配置は、解剖学的な特徴を基準として、脳が特定領域で特定機能を行うという医学的な根拠に基づいて、脳の解剖学的特徴点を基準として頭部を全体的に覆いながら一定間隔に分割された位置に多数の電極を規則的に配置し、各電極から獲得された脳電図信号を分析する方式で行われていた。この場合、伸縮性のある帽子において一定間隔に分割された位置に多数の電極を規則的に配置した電極キャップ(electrode cap)が使用されることができる。
【0005】
すなわち、従来の脳電図検査を含む脳信号検査は、あらゆる人々の脳の模様と大きさが同一であるとの前提の下で、一定の規則で配置された多数の電極のうち特定電極で測定された信号が測定対象体の脳で特定機能を司る脳の領域から発生された脳信号と見なされている。
【0006】
しかし、人によって脳の大きさと模様が相異なるため、特定機能を司る脳の領域に位置するものとして見なされてきた標準脳電極配置による特定電極は、特定機能を司る脳の実際の領域と異なる所に位置し得るという問題点がある。よって、該当電極から測定された脳波信号を特定機能に対する脳信号と見なして脳信号を分析し対象体の疾病を判断することは危険性を内包するとの問題点がある。
【0007】
また、最近、ヒューマン・マシン・インターフェース(Human Machine Interface)技術では脳の特定領域に刺激を加えて人工的な感覚を提供する技術が研究されている。この場合にも、個人の脳の大きさと模様を考慮せず、特定機能を司る脳の領域と見なされてきた位置に刺激を加えることは、実際と異なる領域に刺激を加える可能性があるとの問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国登録特許公報第10-1540273号(2015.07.23.登録)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示の一実施例は、感覚刺激に対する個人別の脳反応領域に基づいて個人別の脳地図を決定する装置及び方法を提供する。
【0010】
本開示の他の実施例は、感覚刺激に対する個人別の脳反応領域に基づいて脳の左半球及び右半球の比率など個人別の脳の形態的特性を判断する装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一実施例は、感覚刺激に反応した対象体の脳信号が発生した実際位置を決定し、各感覚刺激別の脳信号が発生した実際位置の位置関係に基づいて対象体の実際の個人脳地図を決定する方法及び装置を提供する。
【0012】
本開示の一実施例による脳地図決定方法は、プロセッサにより、対象体に加えられた感覚刺激に反応した対象体の脳信号発生位置を確認する段階、相異なる少なくとも二つの感覚刺激に対する脳信号発生位置に基づいて脳皮質の相異なる少なくとも二つの感覚刺激に対する各感覚領域の位置関係に係る感覚領域位置比率を算出する段階、及び感覚領域位置比率に基づいて対象体の個人脳地図を決定する段階を含むことができる。
【0013】
本開示の一実施例による脳地図決定装置は、プロセッサ、及びプロセッサと電気的に連結され、プロセッサで遂行される少なくとも一つのコード(code)が保存されるメモリを含み、メモリは、プロセッサを介して実行されるとき、プロセッサが対象体に加えられた感覚刺激に反応した対象体の脳信号発生位置を確認し、相異なる少なくとも二つの感覚刺激に対する脳信号発生位置に基づいて脳皮質の相異なる少なくとも二つの感覚刺激に対する各感覚領域の位置関係に係る感覚領域位置比率を算出し、感覚領域位置比率に基づいて対象体の個人脳地図を決定するように惹起するコードを保存することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の実施例による脳地図を決定する装置及び方法は、個人別の脳地図を決定することにより、脳信号の解釈に役立つことができる。
【0015】
本開示の実施例による脳地図を決定する装置及び方法は、個人別の脳地図を決定することにより、対象体の正確な脳領域に刺激を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の一実施例による脳地図を決定する方法を遂行したり脳地図を決定する装置が駆動したりするための環境を示した図面である。
図2】本開示の一実施例による脳地図を決定する装置の構成を示したブロック図である。
図3】本開示の一実施例による脳地図を決定する方法を説明するためのフローチャートである。
図4】本開示の一実施例により国際10-20法による電極配置を説明するためのフローチャートである。
図5】本開示の一実施例による対象体の脳信号発生位置を確認する方法を説明する図面である。
図6】本開示の一実施例による感覚領域位置比率に基づいて脳地図を決定する方法を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本明細書に開示の実施例を詳しく説明するが、図面符号にかかわらず同一又は類似の構成要素は同一の参照番号を付与し、これに関する重複説明は省略することにする。以下の説明で使われる構成要素に対する接尾辞「モジュール」及び「部」は、明細書作成の容易性のみ考慮されて付与又は混用されるものであり、それ自体で相互区別される意味又は役割を有するものではない。また、本明細書に開示の実施例を説明するにあたって関連する公知技術に関する具体的な説明が本明細書に開示の実施例の要旨を不明確にし得ると判断される場合、その詳しい説明を省略する。また、添付図面は、本明細書に開示の実施例を容易に理解できるようにするためのものであるだけで、添付図面により本明細書に開示の技術的思想が制限されることはなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むことと理解されなければならない。
【0018】
第1、第2などのように序数を含む用語は多様な構成要素を説明するのに使用され得るが、上記構成要素は上記用語により限定されない。上記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。
【0019】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されている」又は「接続されている」と言及されたときは、その他の構成要素に直接的に連結又は接続されている場合もあれば、中間に別の構成要素が存在する場合もあると理解されるべきである。それに対して、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されている」又は「直接接続されている」と言及されたときは、中間に別の構成要素が存在しないことと理解されるべきである。
【0020】
図1を参照して、本開示の一実施例による脳地図を決定する装置を駆動したり脳地図を決定する方法を遂行したりするための環境を説明する。
【0021】
本開示の実施例による脳地図を決定する方法を遂行したり脳地図を決定する装置を駆動したりするための環境は、脳地図決定装置100、脳信号測定装置200を含むことができる。
【0022】
脳信号測定装置200は、対象体から脳電図(electroencephalography:EEG)を含む脳信号を測定することができ、伸縮性のある帽子において国際10-20法(international 10-20 system)に従って一定間隔に分割された位置に多数の電極を規則的に配置した電極キャップ(electrode cap)又は国際10-20法に従って対象体の頭部に配置された多数の電極から脳信号を受信することができる。国際10-20法は、頭皮に付着又は接着する電極の配置に関する国際標準であり、頭部の骨標識間の距離を用いて電極の配置のための線体系を決定したものである。脳信号を測定するための電極は、これら線の全体の長さの10%又は20%間隔で配置されることができる。
【0023】
本明細書では脳信号を、脳電図を例に挙げて説明するが、脳信号は脳磁図(Magnetoencephalography:MEG)など脳の神経細胞で発生する電気的又は磁気的信号をすべて含む概念である。
【0024】
脳信号測定装置200は、脳地図決定装置100に含まれて具現されるか又は脳地図決定装置100とは別途具現される形態であり得る。脳信号測定装置200が脳地図決定装置100とは別途具現される場合、脳地図決定装置100は脳信号測定装置200から、対象体から多数の電極で測定した脳信号をネットワーク又は有/無線インターフェースを介して受信することができる。
【0025】
他の実施例で、脳信号は脳信号測定装置200で測定した映像形態を含む概念である。例えば、脳電図に基づいて生成された脳電図トポグラフィ(topography)であり得るし、図5のような形式の映像形態であり得る。本明細書で脳信号は、脳電図、脳磁図などの脳の神経細胞で発生する電気的又は磁気的信号自体だけでなく、その電気的又は磁気的信号に基づいて生成されたトポグラフィを含む概念である。
【0026】
脳信号測定装置200は、感覚刺激提示装置(図示せず)が対象体に感覚刺激を提示した後、提示された感覚刺激に反応する対象体の脳信号を測定することができる。感覚刺激提示装置は、脳信号測定装置200又は脳地図決定装置100に含まれて具現されることができる。感覚刺激提示装置は、対象体に感覚を引き起こす刺激を提示するものであって、触覚、視覚、嗅覚、聴覚などの感覚に対する刺激を含むことができる。一実施例において、脳地図決定装置100は、対象体の頭部で測定した電気的又は磁気的信号に基づいてトポグラフィを生成することができる。
【0027】
脳地図決定装置100は、多数の電極で測定された複数の脳信号の中から対象体に加えられた感覚刺激に反応した脳信号の発生位置を確認することができる。脳信号の発生位置は、脳信号測定装置200で決定したものを脳地図決定装置100で確認するか、脳信号測定装置200から伝送した脳信号に基づいて脳地図決定装置100が脳信号の発生位置を決定することができる。
【0028】
脳地図決定装置100が対象体に加えられた感覚刺激に反応した脳信号の発生位置を確認する方法は、下記に詳しく説明する。
【0029】
脳地図決定装置100は、特定感覚刺激に反応した脳信号の発生位置を確認することができ、例えば、足指触覚刺激、手指触覚刺激、聴覚刺激、嗅覚刺激及び視覚刺激のうち少なくともいずれか一つの感覚刺激に対する脳信号の発生位置を確認することができる。脳信号の発生位置は、特定の電極を意味するのではなく対象体の頭部の座標又は脳の座標であり得る。又は、特定の電極の位置を用いて表示した相対的位置であり得る。
【0030】
脳地図決定装置100は、脳信号発生位置に基づいて対象体の脳で各感覚を司る領域の位置間の比率を算出し、この比率に基づいて対象体の個人脳地図を決定することができる。下記に詳しく説明する。
【0031】
脳地図決定装置100は、脳信号測定装置200が別途具現される場合、一般的なコンピュータ装置であっても、PC、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレットPCなどであってもよく、又はサーバ装置として具現されて、脳地図決定装置100から伝送した多数の電極で測定した脳信号の中から脳地図決定装置100が感覚刺激に反応した脳信号の発生位置を決定する方法で具現されることができる。
【0032】
図2を参照して本開示の一実施例による脳地図決定装置100の構成を説明する。
【0033】
脳地図決定装置100は、脳信号測定装置200、又は脳信号を測定するための電極のインターフェース又は通信を遂行するための通信部110を含み、通信部110は、移動通信モジュール、無線インターネットモジュール、近距離通信モジュールをネットワークインターフェース111として含むことができる。
【0034】
移動通信モジュールで使用する移動通信のための技術標準又は通信方式(例えば、GSM(登録商標)(Global System for Mobile communication)、CDMA(Code Division Multi Access)、CDMA2000(Code Division Multi Access 2000)、EV-DO(Enhanced Voice-Data Optimized or Enhanced Voice-Data Only)、WCDMA(登録商標)(Wideband CDMA)、HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)、HSUPA(High Speed Uplink Packet Access)、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(Long Term Evolution-Advanced)など)によって構築された移動通信網上で基地局、外部の端末、サーバのうち少なくとも一つと無線信号を送受信する。
【0035】
無線インターネットモジュールは、無線インターネット接続のためのモジュールのことであり、脳地図決定装置100に内蔵又は外装されることができる。無線インターネットモジュールは、無線インターネット技術による通信網で無線信号を送受信するように構成される。
【0036】
無線インターネット技術としては、例えば、WLAN(Wireless LAN)、Wi-Fi(Wireless-Fidelity)、Wi-Fi(Wireless Fidelity)Direct、DLNA(登録商標)(Digital Living Network Alliance)、WiBro(Wireless Broadband)、WiMAX(World Interoperability for Microwave Access)、HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)、HSUPA(High Speed Uplink Packet Access)、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(Long Term Evolution-Advanced)などがある。
【0037】
近距離通信モジュールは、近距離通信(Short range communication)のためのものであり、ブルートゥース(登録商標)(Bluetooth(登録商標)TM)、RFID(Radio Frequency Identification)、赤外線通信(Infrared Data Association;IrDA)、UWB(Ultra Wideband)、ZigBee(登録商標)、NFC(Near Field Communication)、Wi-Fi(Wireless-Fidelity)、Wi-Fi Direct、Wireless USB(Wireless Universal Serial Bus)技術のうち少なくとも一つを用いて、近距離通信を支援することができる。
【0038】
脳地図決定装置100はユーザーの入力又はユーザーに通知を提供するためのインターフェース部120を含むことができ、インターフェース部120はボタン121、ディスプレイ122、LEDなどの光出力モジュール又はスピーカーなどの音声出力モジュール123を含むことができる。インターフェース部120は、機械式(mechanical)入力手段(又は、メカニカルキー、ドームスイッチ(dome switch)、ジョグホイール、ジョグスイッチなど)及びタッチ式入力手段を含むことができる。一例として、タッチ式入力手段は、ソフトウェア的な処理を通してタッチスクリーンに表示されるバーチャルキー(virtual key)、ソフトキー(soft key)又はビジュアルキー(visual key)からなるか、上記タッチスクリーン以外の部分に配置されるタッチキー(touch key)からなり得る。
【0039】
脳地図決定装置100はメモリ130を含み、メモリ130は脳信号測定装置200から伝送されるか対象体で測定した脳信号を保存することができる。
【0040】
一実施例で、メモリ130は、機械学習基盤の学習モデルを訓練させるための訓練データ及びコード(code)、又は訓練済み学習モデルに含まれた人工ニューラルネットワークの最適化されたモデルパラメータを保存することができる。
【0041】
脳地図決定装置100は、機械学習基盤の学習モデルを訓練させるか、訓練済み学習モデルを特定入力に適用して結果値を推論するためにプロセッサ180を用いることができる。プロセッサ180は、多様な学習技法を用いて人工ニューラルネットワークを繰り返し学習させることにより、人工ニューラルネットワークの最適化されたモデルパラメータを決定するか、学習済み人工ニューラルネットワークのモデルパラメータによって学習モデルを入力に適用して結果値を推論することができる。
【0042】
機械学習基盤の学習モデルは、CNN又はR-CNN(Region based CNN)、C-RNN(Convolutional Recursive Neural Network)、Fast R-CNN、Faster R-CNN、R-FCN(Region based Fully Convolutional Network)、YOLO(You Only Look Once)又はSSD(Single Shot Multibox Detector)構造のニューラルネットワークを含むことができる。
【0043】
学習モデルは、ハードウェア、ソフトウェア又はハードウェアとソフトウェアの組合せで具現されることができ、学習モデルの一部又は全部がソフトウェアとして具現される場合、学習モデルを構成する一つ以上の命令語はメモリ130に保存されることができる。
【0044】
脳地図決定装置100は、脳信号の前処理(pre-processing)を遂行する脳信号処理部140を含むことができ、脳信号処理部140はプロセッサ180の一部として具現されるか別途具現されることができる。一実施例で、脳信号処理部140はDSPチップ又はGPUとして具現されることができる。
【0045】
一実施例で、脳信号処理部140は、脳信号が脳電図である場合、増幅及びフィルタリング(amplification and filtering)、ノイズ又は雑波(artifacts)を取り除くことができる。又は、脳信号処理部140は、フーリエ分析、ウェーブレット分析のようなアルゴリズムを遂行することができ、通常の技術者にとって一般的な構成であることから本明細書では詳しい説明を省略する。
【0046】
脳信号処理部140は、脳信号がトポグラフィである場合、映像処理アルゴリズムを通してトポグラフィ脳信号の前処理を遂行することができる。例えば、脳信号処理部140は、トポグラフィで特定色又は特定レベル以下の領域を除去又は単一化処理することができ、この場合、機械学習基盤で訓練された学習モデルに基づいて脳信号発生位置を推論する場合に学習モデルの人工ニューラルネットワーク構造を単純化するか処理速度を向上させることができる。
【0047】
脳地図決定装置100は、メモリ130に保存されたコードによって対象体の個人脳地図を決定するように惹起されるプロセッサ180を含む。プロセッサ180は、個人脳地図を決定するアルゴリズムが具現されたコード又は脳信号トポグラフィから脳信号発生位置を推論するように学習された学習モデルに基づいて脳信号発生位置を確認又は決定し、脳信号発生位置に基づいて脳で各感覚を司る領域の位置間の比率を算出し、この比率に基づいて対象体の個人脳地図を決定することができる。
【0048】
図3を参照して本開示の一実施例による脳地図決定方法を説明する。
【0049】
脳地図決定装置は、脳信号測定装置から脳信号が伝送されるか、対象体の頭部に配置された脳信号測定用電極から脳信号を受信して脳信号を獲得することができる(S110)。又は、保存装置から脳信号をロードして脳信号を獲得することができる。脳信号は、脳電図、脳磁図などの脳の神経細胞で発生する電気的又は磁気的信号を測定した信号であるか、脳電図又は脳磁図などの電気的又は磁気的信号を基に生成されたトポグラフィであり得る。
【0050】
脳信号が脳電図である場合、図4のような国際10-20法によって対象体の頭部に配置された多数の電極で測定された電気的信号であり得、脳信号がトポグラフィである場合、図5のような脳電図に基づいて生成され同じ信号強度を有する地点を等高線状に連結した形態であり得る。
【0051】
脳地図決定装置は、脳信号が脳電図である場合、多数の電極で測定された複数の脳信号又は脳磁図又はトポグラフィの中から対象体に加えられた特定感覚刺激に反応した脳信号の実際発生位置を確認することができる(S120)。
【0052】
対象体に特定感覚刺激を提示したとき、対象体の脳の複数領域で互いに強度の異なる電気的又は磁気的信号が発生することがあり、感覚刺激の提示から時間の経過によって脳の複数領域の電気的又は磁気的信号の強度が変わることがある。
【0053】
脳地図決定装置は、複数領域の脳信号間の強度差が最も大きい時点の脳信号を対象として対象体の特定感覚刺激に対する脳信号発生位置を確認することができる。
【0054】
脳地図決定装置は、脳信号が脳電図である場合、対象体の頭部に配置された電極の電圧値の分散が最も大きい時を、グローバルフィールドパワー(Global Field Power:GFP)が最も大きい、すなわち、脳信号間の強度差が最も大きい時点として決定することができ、下記の[数式1]によって該当時点を決定することができる。
【数式1】
【0055】

【0056】
すなわち、脳地図決定装置は、複数領域の脳信号間の強度差が最も大きい時点を他領域に比べて特定感覚を司る領域で該当特定感覚に反応して発生した電気的又は磁気的信号が最も大きい時点として決定することができる。
【0057】
他の実施例で、脳地図決定装置は、脳信号がトポグラフィである場合、電極の電圧値がレベル又は色で表示された各ピクセル値の分散が最も大きい時を脳信号間の強度差が最も大きい時点として決定することができ、これは、[数式1]で電極をピクセルに変更して算出することができる。よって、複数の電極の電圧値は、トポグラフィで表現されるピクセルのレベル又は色の概念を含む。
【0058】
脳地図決定装置は、複数領域の脳信号間の強度(電圧であり得る)差が最も大きい時点で測定された複数領域の脳信号のうち最も大きい強度を有する地点を対象体の特定感覚刺激に対する脳信号発生位置として確認又は決定することができる。
【0059】
一実施例で、脳地図決定装置は、互いに同じ強度値を有する電極の位置を連結したパワー等高線に基づいて複数領域の脳信号のうち最も大きい強度を有する地点を対象体に加えられた特定感覚刺激に反応した脳信号の実際発生位置として決定することができる。
【0060】
一実施例で、図5のようなトポグラフィ形態の等高線映像で他の電極よりも高い値を有する領域の等高線の複数の任意の地点510~540に基づいて特定感覚刺激に反応した脳信号の実際発生位置として決定することができる。例えば、特定地点510、520で等高線に対して垂直である直線に基づいて三角点を見出し、三角点に最も近くに位置した電極4個の位置の値を用いて線形回帰方法で最も高い信号が発生することと推論される地点を特定感覚刺激に反応した脳信号の実際発生位置として決定することができる。
【0061】
他の実施例で、図5のようなトポグラフィ形態の等高線映像を、脳信号トポグラフィを脳信号発生位置としてラベリング(labeling)した訓練データで訓練された機械学習基盤の学習モデルに入力し、学習モデルから出力された位置を特定感覚刺激に反応した脳信号の実際発生位置として決定することができる。
【0062】
脳地図決定装置は、相異なる少なくとも二つの感覚刺激に対する脳信号発生位置に基づいて脳皮質の相異なる少なくとも二つの感覚刺激に対する各感覚領域の位置関係に係る感覚領域位置比率を算出し(S130)、感覚領域位置比率に基づいて対象体の個人脳地図を決定することができる(S140)。
【0063】
一実施例で、脳地図決定装置は、標準脳地図をメモリからロードし、感覚領域位置比率に基づいて標準脳地図を変更して個人脳地図を決定することができる。標準脳地図を変更することは、下記実施例で説明する各感覚を司る領域別位置間の関係に基づいて標準脳地図をモーフィング(morphing)することであり得る。モーフィング方法は、通常の技術者に知られている技術が利用可能であり、本明細書では詳しい説明を省略する。
【0064】
図6を参照すると、足指触覚を司る脳の領域は脳の中心部(medial)に位置し、聴覚を司る脳の領域は中心部から最も外側(lateral)側面に位置し、手指触覚を司る脳の領域はその中間に位置し、嗅覚を司る脳の領域は側頭葉の下端に位置し、視覚を司る脳の領域は後頭葉の端部に位置することが分かる。
【0065】
脳地図決定装置は、対象体の各感覚を司る実際の個人別の位置を決定し、各感覚を司る領域の位置関係を考慮して個人脳地図を決定することができる。
【0066】
一実施例で、脳地図決定装置は、足指触覚刺激に対する脳信号発生位置と聴覚刺激に対する脳信号発生位置との間の距離を足指触覚及び聴覚の感覚領域位置比率で算出し、対象体の個人脳地図中の左半球及び右半球の比率を調整することができ、標準脳地図の左半球及び右半球の比率を調整するものであり得る。
【0067】
図6を参照すれば、例えば、足指触覚を司る領域は脳の左半球及び右半球の内側と知られており、聴覚は左半球及び右半球の外側と知られているため、足指触覚及び聴覚の感覚領域位置比率によって対象体の左半球/右半球の大きさ又は全体脳に占める比率又は左半球/右半球の横比率を調整することができる。
【0068】
一実施例で、脳地図決定装置は、足指触覚刺激に対する脳信号発生位置と手指触覚刺激に対する脳信号発生位置との間の第1距離、及び手指触覚刺激に対する脳信号発生位置と聴覚刺激に対する脳信号発生位置との間の第2距離を計算し、第2距離に対する第1距離の比率に基づいて対象体の個人脳地図中の前頭葉の側面(lateral)の比率を調整することができ、標準脳地図の前頭葉の側面の比率を調整するものであり得る。体性感覚(somatosensory)の場合、脳の中心溝(central sulcus)のすぐ後側である中心後溝(postcentral sulcus)に人間の四肢、顔に該当する感覚領域が順に位置し、手指感覚を司る領域の場合、この順の真ん中に該当し前頭葉又は後頭葉の外側(lateral)の比率を調整するのに用いられることができる。
【0069】
一実施例で、脳地図決定装置は、足指触覚刺激に対する脳信号発生位置と聴覚刺激に対する脳信号発生位置との間の第3距離、及び聴覚刺激に対する脳信号発生位置と嗅覚刺激に対する脳信号発生位置との間の第4距離を計算し、第4距離に対する第3距離の比率に基づいて対象体の個人脳地図中の前頭葉及び側頭葉の比率を調整することができ、これは標準脳地図の前頭葉及び側頭葉の比率を調整することであり得る。脳地図決定装置は、側頭葉の下端に位置する嗅覚を司る脳の領域と脳の中心部の最も外側に位置する聴覚を司る脳の領域との比率に基づいて前頭葉及び側頭葉の外側の比率又は長さを調整することができる。
【0070】
一実施例で、脳地図決定装置は、手指触覚刺激に対する脳信号発生位置と視覚刺激に対する脳信号発生位置との間の第5距離、及び嗅覚刺激に対する脳信号発生位置と視覚刺激に対する脳信号発生位置との間の第6距離を計算し、第6距離に対する第5距離の比率に基づいて対象体の個人脳地図中の後頭葉の比率を調整することができ、これは標準脳地図の後頭葉の比率を調整することであり得る。脳地図決定装置は、後頭葉の端部、すなわち、人の頭部で後頭部に該当する部位に位置した視覚を司る脳の領域と手指感覚を司る領域との間の距離は、後頭葉から中心後溝までの距離を意味し、嗅覚を司る脳の領域と視覚を司る脳の領域との間の距離は、後頭葉から側頭葉の下端までの距離を意味し、脳地図決定装置は、該当距離の比率に基づいて後頭葉の背側(dorsal)と腹側(ventral)の比率を調整することができ、これは標準脳地図の後頭葉の比率を調整することであり得る。
【0071】
脳地図決定装置は、個人脳地図を決定した後、対象体の脳信号発生位置又は該当脳信号を測定した電極位置を決定された個人脳地図に表示してディスプレイに出力することができる。よって、多数の電極から測定された脳信号が個人別のいずれの脳領域で発生するのか正確に判断することができる。
【0072】
本研究は、韓国科学技術情報通信部の源泉技術開発事業の一環として、研究課題名「知覚形成メカニズム基盤認知機能の増強のためのニューロモジュレーション技術開発(課題固有番号:1711103934、課題番号:2018M3C7A1022317、主管機関:大邱慶北科学技術院、研究期間:2020.01.01~2020.12.31)」の成果物として導き出された。
【符号の説明】
【0073】
100 脳地図決定装置
200 脳信号測定装置
210 電極キャップ
300 サーバ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6