(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】発電機
(51)【国際特許分類】
H02K 7/116 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
H02K7/116
(21)【出願番号】P 2022056779
(22)【出願日】2022-03-30
【審査請求日】2022-05-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114710
【氏名又は名称】ヤマウチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】林 高良
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-019426(JP,A)
【文献】特許第6999994(JP,B1)
【文献】特許第6647672(JP,B1)
【文献】特開2000-253621(JP,A)
【文献】特開2018-191402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
H02K 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に巻回されたコイルと、
前記コイルの内側を通るように前記コイルの軸方向に対して垂直な方向に延び、前記軸方向から見て互いに平行に設けられ、かつ前記コイルに対して回転可能な第1シャフトおよび第2シャフトと、
前記コイルの内側において、前記第1シャフトと一体回転するように前記第1シャフトの外周部に設けられかつ前記第1シャフトの長さ方向に並ぶように配置された磁石および第1ギアと、
前記第1ギアよりも歯数が多く、前記コイルの内側において、前記第2シャフトと一体回転するように前記第2シャフトの外周部に設けられかつ前記第1ギアに噛み合う第2ギアと、
前記コイルの軸方向から見て前記コイルの外側に設けられ、かつ前記第2シャフトを回転駆動する駆動部と、
を備える、発電機。
【請求項2】
前記第2シャフトは、非磁性材料からなる、
請求項1に記載の発電機。
【請求項3】
前記コイル、前記第1シャフト、前記第2シャフトおよび前記駆動部を収容する筐体を更に備え、
前記駆動部は、
一部が前記筐体の外側に突出するように設けられかつ前記一部が前記筐体内に向かって押し込まれる第1方向および前記一部が筐体外に向かって押し出される第2方向に往復直線運動可能に設けられた操作部材と、
前記操作部材を前記第2方向に向かって付勢する付勢部材と、
前記操作部材の前記第1方向の直線運動を第1回転運動に変換するとともに、前記操作部材の前記第2方向の直線運動を前記第1回転運動とは反対方向の第2回転運動に変換する変換部と、
前記変換部によって変換された前記第1回転運動を前記第2シャフトに伝達し、かつ前記変換部によって変換された前記第2回転運動の前記第2シャフトへの伝達を遮断する伝達部と、を含む、
請求項1または2に記載の発電機。
【請求項4】
前記操作部材は、ラックギアを有し、
前記変換部は、前記ラックギアに噛み合うピニオンギアと、前記ピニオンギアよりも歯数が多くかつ前記ピニオンギアと一体回転するように設けられた駆動ギアとを有し、
前記伝達部は、前記第2シャフトと同軸状に設けられかつ前記駆動ギアと噛み合う従動ギアと、前記従動ギアと前記第2シャフトとを連結するラチェット部とを有し、
前記ラチェット部は、前記駆動ギアから前記従動ギアに伝達された前記第1回転運動を前記第2シャフトに伝達し、かつ前記駆動ギアから前記従動ギアに伝達された前記第2回転運動の前記第2シャフトへの伝達を遮断する、
請求項3に記載の発電機。
【請求項5】
中空状の筒部を有するボビンをさらに備え、
前記コイルは、前記筒部の外周面に巻回されており、
前記第1シャフトおよび前記第2シャフトは、前記コイルの軸方向から見て、前記筒部を貫通するように設けられ、
前記磁石、前記第1ギアおよび前記第2ギアは、前記筒部の内側に設けられている、
請求項1から4のいずれかに記載の発電機。
【請求項6】
前記コイルは、前記筒部の軸方向に並ぶように配置された第1コイルおよび第2コイルを含み、
前記ボビンは、前記第1コイルが巻回された第1ボビンと、前記第2コイルが巻回された第2ボビンとを含み、
前記第1シャフトおよび前記第2シャフトは、前記第1ボビンと前記第2ボビンとによって挟まれるように設けられ、
前記磁石は、中心部を前記第1シャフトが通るようにリング状に形成されかつ外周部が周方向に2極に着磁されている、
請求項5に記載の発電機。
【請求項7】
前記筒部の軸方向における前記ボビンの一端部に固定された磁性金属部材をさらに備える、
請求項5または6に記載の発電機。
【請求項8】
前記第2シャフトの長さ方向から見て、前記磁石の一部と前記第2ギアの一部とが重なっている、
請求項1から7のいずれかに記載の発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運動エネルギーを電気エネルギーに変換することができる種々の発電機が提案されている。例えば、特許文献1に開示された回転マグネット式発電装置は、空芯コイルと、空芯コイルの周回部分を貫通して延びる回転軸と、空芯コイル内に配置されるように回転軸に固定されマグネットを備えている。
【0003】
特許文献1に開示された発電機では、回転軸を回転させることによって、空芯コイル内でマグネットが回転することによって、空芯コイルに誘導電流が流れる。すなわち、発電が行われる。
【0004】
上記の発電機は、例えば、トイレットルーム、浴室、キッチン等に設置される遠隔操作装置において利用される。具体的には、遠隔操作装置の操作子が操作されることによって回転軸が回転して発電が行われるように、遠隔操作装置内に発電機が組み込まれる。このような遠隔操作装置では、利用者の操作子の操作によって発電機で発電された電力を用いて、操作対象となる装置に信号を送信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような発電機において、十分な発電量を確保するためには、回転軸(マグネット)を十分な速度で回転させる必要がある。このため、例えば、遠隔操作装置内に発電機を組み込む場合には、操作子と回転軸との間に増速機を設けることが考えられる。具体的には、複数のギアを組み合わせた構成の増速機を操作子と回転軸との間に設けることによって、回転軸の回転速度を向上させることができる。
【0007】
しかしながら、設計上の制約等により、遠隔操作装置内に十分なスペースを確保できない場合には、操作子と回転軸との間に十分な数のギアを配置できない場合がある。この場合、回転軸を十分な速度で回転させることができなくなり、発電効率が低下する。
【0008】
そこで、本発明は、省スペースで効率よく発電できる発電機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の発電機を要旨とする。
【0010】
(1)筒状に巻回されたコイルと、
前記コイルの内側を通るように前記コイルの軸方向に対して垂直な方向に延び、前記軸方向から見て互いに平行に設けられ、かつ前記コイルに対して回転可能な第1シャフトおよび第2シャフトと、
前記コイルの内側において、前記第1シャフトと一体回転するように前記第1シャフトの外周部に設けられかつ前記第1シャフトの長さ方向に並ぶように配置された磁石および第1ギアと、
前記第1ギアよりも歯数が多く、前記筒部の内側において、前記第2シャフトと一体回転するように前記第2シャフトの外周部に設けられかつ前記第1ギアに噛み合う第2ギアと、
前記コイルの軸方向から見て前記コイルの外側に設けられ、かつ前記第2シャフトを回転駆動する駆動部と、
を備える、発電機。
【0011】
(2)前記第2シャフトは、非磁性材料からなる、
上記(1)に記載の発電機。
【0012】
(3)前記コイル、前記第1シャフト、前記第2シャフトおよび前記駆動部を収容する筐体を更に備え、
前記駆動部は、
一部が前記筐体の外側に突出するように設けられかつ前記一部が前記筐体内に向かって押し込まれる第1方向および前記一部が筐体外に向かって押し出される第2方向に往復直線運動可能に設けられた操作部材と、
前記操作部材を前記第2方向に向かって付勢する付勢部材と、
前記操作部材の前記第1方向の直線運動を第1回転運動に変換するとともに、前記操作部材の前記第2方向の直線運動を前記第1回転運動とは反対方向の第2回転運動に変換する変換部と、
前記変換部によって変換された前記第1回転運動を前記第2シャフトに伝達し、かつ前記変換部によって変換された前記第2回転運動の前記第2シャフトへの伝達を遮断する伝達部と、を含む、
上記(1)または(2)に記載の発電機。
【0013】
(4)前記操作部材は、ラックギアを有し、
前記変換部は、前記ラックギアに噛み合うピニオンギアと、前記ピニオンギアよりも歯数が多くかつ前記ピニオンギアと一体回転するように設けられた駆動ギアとを有し、
前記伝達部は、前記第2シャフトと同軸状に設けられかつ前記駆動ギアと噛み合う従動ギアと、前記従動ギアと前記第2シャフトとを連結するラチェット部とを有し、
前記ラチェット部は、前記駆動ギアから前記従動ギアに伝達された前記第1回転運動を前記第2シャフトに伝達し、かつ前記駆動ギアから前記従動ギアに伝達された前記第2回転運動の前記第2シャフトへの伝達を遮断する、
上記(3)に記載の発電機。
【0014】
(5)中空状の筒部を有するボビンをさらに備え、
前記コイルは、前記筒部の外周面に巻回されており、
前記第1シャフトおよび前記第2シャフトは、前記コイルの軸方向から見て、前記筒部を貫通するように設けられ、
前記磁石、前記第1ギアおよび前記第2ギアは、前記筒部の内側に設けられている、
上記(1)から(4)のいずれかに記載の発電機。
【0015】
(6)前記コイルは、前記筒部の軸方向に並ぶように配置された第1コイルおよび第2コイルを含み、
前記ボビンは、前記第1コイルが巻回された第1ボビンと、前記第2コイルが巻回された第2ボビンとを含み、
前記第1シャフトおよび前記第2シャフトは、前記第1ボビンと前記第2ボビンとによって挟まれるように設けられ、
前記磁石は、中心部を前記第1シャフトが通るようにリング状に形成されかつ外周部が周方向に2極に着磁されている、
上記(5)に記載の発電機。
【0016】
(7)前記筒部の軸方向における前記ボビンの一端部に固定された磁性金属部材をさらに備える、
上記(5)または(6)に記載の発電機。
【0017】
(8)前記第2シャフトの長さ方向から見て、前記磁石の一部と前記第2ギアの一部とが重なっている、
上記(1)から(7)のいずれかに記載の発電機。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、省スペースで効率よく発電できる発電機が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る発電機の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、発電機の内部構造を示す概略図である。
【
図5】
図5は、ボビンおよび第2シャフトを示す概略斜視図である。
【
図6】
図6は、第1シャフト、第2シャフトおよび第2ボビンを示す概略斜視図である。
【
図8】
図8は、発電機の動作を説明するための図である。
【
図9】
図9は、発電機の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る発電機について図面を参照しつつ説明する。
【0021】
(発電機の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る発電機の外観を示す斜視図であり、
図2は、本実施形態に係る発電機の内部構造を示す概略図である。なお、
図2には、後述する蓋部14を取り外した状態の発電機100が示されている。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る発電機100は、直方体状の筐体10を有している。
図1および
図2に示すように、筐体10は、開口部12aを有する収容部12と、開口部12aを塞ぐように収容部12に着脱可能に取り付けられる蓋部14とを有する。
図2に示すように、収容部12には、発電部16および駆動部18が収容されている。
【0023】
図1および
図2に示すように、本実施形態では、収容部12は、直方体形状を有し、矩形状の底部12bと、底部12bの四辺から立ち上がる壁部12c,12d,12e,12fを有している。なお、以下においては、発電機100の構造を理解し易くするために、底部12bに対して蓋部14側を上側とし、蓋部14に対して底部12b側を下側とする。
【0024】
図2に示すように、収容部12内において、底部12bから上方に立ち上がるように、板状の仕切り12gが設けられている。上方から見て、仕切り12gは、壁部12cと壁部12eとを接続するように壁部12d,12fに対して平行に延びている。仕切り12gにおいて、中央部よりも壁部12e側には、仕切り12gから上方に立ち上がるように支持部12hが設けられている。
【0025】
本実施形態では、仕切り12gによって、収容部12内は、第1収容部13aと、第2収容部13bとに区画されており、第1収容部13aに発電部16が収容され、第2収容部13bに駆動部18が収容されている。第2収容部13bにおいて、底部12bから上方に立ち上がるように、板状の支持部12iが設けられている。支持部12iは、仕切り12gから壁部12f側に向かって、壁部12c,12eに対して平行に延びるように設けられている。なお、支持部12iと壁部12fとの間には、後述する操作部材40を配置するための隙間が形成されている。また、壁部12cには、操作部材40を通すための貫通孔12jが形成されている。
【0026】
本実施形態では、筐体10は、非磁性材料からなる。本明細書において非磁性材料とは、強磁性体ではない材料を意味し、常磁性体、反磁性体および反強磁性体を含む。本実施形態では、筐体10は、例えば、合成樹脂によって形成される。
【0027】
図3は、
図2のa-a部分を示す概略断面図であり、
図4は、
図2のb-b部分を示す概略断面図である。
図2~
図4に示すように、発電部16は、ボビン20と、コイル22と、第1シャフト24と、第2シャフト26と、磁石28と、第1ギア30と、第2ギア32と、磁性金属部材34とを有している。ボビン20、第2シャフト26、第1ギア30および第2ギア32は、例えば、非磁性材料からなる。第1シャフト24としては、磁石28のバックヨークとしての機能を持たせる観点から、軟磁性材料を用いることが好ましい。具体的には、第1シャフト24、鉄材、SUS(ステンレス)材、SKH(ハイスピード鋼)材、フェライト材などの材料を用いることができる。
【0028】
図5は、ボビン20および第2シャフト26を示す概略斜視図である。
図2~
図5に示すように、ボビン20は、中心部に、中空状の筒部20aを有している。
図2~
図4に示すように、本実施形態では、ボビン20は、収容部12に固定されている。
図3および
図4に示すように、コイル22は、筒状に巻回されている。本実施形態では、コイル22は、ボビン20の筒部20aの外周面に巻回されている。
図3~
図5に示すように、本実施形態では、ボビン20は、第1ボビン36および第2ボビン38を含む。また、
図3および
図4に示すように、コイル22は、第1コイル22aおよび第2コイル22bを含む。
【0029】
本実施形態では、第1ボビン36は、中空状の筒部36aと、筒部36aの両端部に設けられたフランジ部36b,36cとを含む。第2ボビン38は、中空状の筒部38aと、筒部38aの両端部に設けられたフランジ部38b,38cとを含む。第1ボビン36の筒部36aと第2ボビン38の筒部38aとが直線状に並ぶように、フランジ部36cとフランジ部38bとが固定されている。本実施形態では、筒部36aと筒部38aとによって、筒部20aが構成されている。
【0030】
第1コイル22aおよび第2コイル22bは、筒部20aの軸方向に並ぶように配置されている。本実施形態では、第1コイル22aは、第1ボビン36の筒部36aに巻回され、第2コイル22bは、第2ボビン38の筒部38aに巻回されている。図示は省略するが、第1コイル22aおよび第2コイル22bはそれぞれ、例えば、整流器等を介して外部装置に電気的に接続される。これにより、第1コイル22aおよび第2コイル22bにおいて発生した電流を用いて外部装置を起動することができる。
【0031】
図2に示すように、第1シャフト24および第2シャフト26は、ボビン20およびコイル22に対して回転できるように、ボビン20に支持されている。第1シャフト24および第2シャフト26は、コイル22(筒部20a)の内側を通るようにコイル22(筒部20a)の軸方向に対して垂直な方向に延び、かつコイル22(筒部20a)の軸方向から見て互いに平行に設けられている。本実施形態では、第1シャフト24および第2シャフト26は、コイル22(筒部20a)の軸方向から見て、筒部20aを貫通するように設けられている。なお、本実施形態では、第1シャフト24は、コイル22(筒部20a)の軸方向から見て、コイル22を貫通していない。言い換えると、コイル22(筒部20a)の軸方向から見て、第1シャフト24の両端は、コイル22の外周よりも内側に位置している。本実施形態では、第1シャフト24は、第2シャフト26よりも短い。
【0032】
図6は、第1シャフト24、第2シャフト26および第2ボビン38を示す概略斜視図である。なお、後述するように、第1シャフト24には磁石28および第1ギア30が取り付けられ、第2シャフト26には第2ギア32が取り付けられているが、
図6においては、第1シャフト24、第2シャフト26および第2ボビン38の関係を分かり易くするために、磁石28、第1ギア30および第2ギア32の図示は省略している。
【0033】
図6に示すように、第2ボビン38のフランジ部38bには、第1シャフト24および第2シャフト26を回転可能に支持するための凹部38d,38eが形成されている。また、
図5に示すように、第1ボビン36のフランジ部36cにおいて、凹部38dに対向する領域に凹部36dが形成され、凹部38eに対向する領域に凹部36eが形成されている。
図3に示すように、本実施形態では、第1シャフト24は、凹部36dと凹部38dとによって回転可能に支持されている。また、
図5に示すように、第2シャフト26は、凹部36eと凹部38eとによって回転可能に支持されている。
【0034】
図2および
図3に示すように、磁石28および第1ギア30は、コイル22および筒部20aの内側において、第1シャフト24の長さ方向に並ぶように配置されている。本実施形態では、磁石28および第1ギア30は、第1シャフト24と一体回転するように第1シャフト24に固定されている。
【0035】
図3および
図4に示すように、本実施形態では、磁石28は、中心部を第1シャフト24が通るようにリング状に形成された永久磁石である。
図4に示すように、本実施形態では、磁石28は、外周部が周方向に2極に着磁された構成を有しており、互いに極性が異なる第1極性部28aおよび第2極性部28bを有している。なお、
図4においては、磁石28における第1極性部28aと第2極性部28bとの境界を破線で示している。磁石28の材料は特に限定されないが、例えば、Nd‐Fe‐B焼結磁石を用いることができる。
【0036】
図2に示すように、第2ギア32は、コイル22および筒部20aの内側において、第2シャフト26と一体回転するようにかつ第1ギア30に噛み合うように、第2シャフト26に固定されている。第2ギア32の歯数は、第1ギア30の歯数よりも多い。したがって、第2シャフト26の回転は、第2ギア32および第1ギア30によって増速されて第1シャフト24に伝達される。本実施形態では、第2シャフト26の長さ方向(軸線方向)から見て、磁石28の一部と第2ギア32の一部とが重なるように、磁石28および第2ギア32が配置されている。
【0037】
磁性金属部材34は、筒部20aの軸方向において、ボビン20の一端部に固定されている。本実施形態では、磁性金属部材34は、筒部20aの軸方向から見て、磁石28の径方向外側に位置するように、第1ボビン36のフランジ部36bに固定されている。磁性金属部材34として、例えば、金属板または金属箔が用いられる。
【0038】
磁性金属部材34の極性は、磁石28のうち近接する部分の極性に応じて変化する。例えば、磁石28の第1極性部28aが第2極性部28bよりも磁性金属部材34に近い場合には、磁性金属部材34のうち磁石28側の部分は、第1極性部28aとは反対の極性となる。これにより、第1シャフト24が回転駆動されていない場合に、磁石28と磁性金属部材34との間に作用する磁力によって、磁石28が回転することを防止することができる。その結果、発電機100のがたつきを防止することができる。
【0039】
磁性金属部材34としては、極性の切り替え易さの観点から、軟磁性材料を用いることが好ましい。具体的には、磁性金属部材34として、鉄材、SUS(ステンレス)材、SKH(ハイスピード鋼)材、フェライト材などの材料を用いることができる。
【0040】
駆動部18は、コイル22の軸方向から見てコイル22の外側に設けられ、発電機100の利用者に操作されることによって、第2シャフト26を回転駆動する。上述したように、本実施形態では、駆動部18は、収容部12の第2収容部13bに設けられている。
【0041】
駆動部18は、操作部材40と、付勢部材42と、変換部44と、伝達部46とを含む。
図7は、操作部材40を示す図であり、(a)は、操作部材40の側面図(
図2において操作部材40を紙面左側から見た図)であり、(b)は、操作部材40の平面図である。
【0042】
図2および
図7に示すように、操作部材40は、操作部50と、摺動部52と、ラックギア54と、ガイド部56とを備えている。
図2に示すように、操作部材40は、一部(本実施形態では、操作部50)が筐体10の外側に突出するように設けられている。また、操作部材40は、第1方向X1および第2方向X2に往復直線運動可能に設けられている。なお、第1方向X1は、操作部50を筐体10内に向かって押し込む際の操作部50の移動方向を意味し、第2方向X2は、操作部50を筐体10外に向かって押し出す際の操作部50の移動方向を意味する。
【0043】
図2および
図7に示すように、本実施形態では、操作部50は、略直方体形状を有しており、第1方向X1および第2方向X2に移動可能に壁部12cの貫通孔12jに挿入されている。操作部50において筐体10の内側には、突出部50aおよび凹部50bが形成されている。
【0044】
突出部50aは、貫通孔12jよりも上側に位置付けられるように形成されている。操作部材40が筐体10から抜け落ちることは、突出部50aが壁部12cに係止されることによって防止される。凹部50bは、仕切り12g側および支持部12i側に向かって開口するように形成されている。凹部50bには、付勢部材42の一端部が挿入される。付勢部材42については後述する。
【0045】
摺動部52は、操作部50から第1方向X1に延びるように形成されている。本実施形態では、摺動部52は、操作部50の第1方向X1または第2方向X2への移動に連動して、筐体10に対して第1方向X1または第2方向X2に摺動する。本実施形態では、摺動部52は、操作部50から壁部12fと支持部12iとの間を通って壁部12e側に向かって延びる第1摺動部52aと、第1摺動部52aよりも壁部12e側に設けられかつ第1摺動部52aよりも大きい幅を有する第2摺動部52bとを有している。
【0046】
ラックギア54は、第2摺動部52bの上面に形成されている。本実施形態では、ラックギア54は、第2摺動部52bの仕切り12g側の端部において、第1方向X1に対して平行に延びるように形成されている。ガイド部56は、第2摺動部52bの壁部12e側の端部から仕切り12g側に向かって突出するように形成されている。
【0047】
本実施形態では、操作部50が壁部12fおよび仕切り12gに挟まれるとともに、第2摺動部52bおよびガイド部56が壁部12fおよび仕切り12gに挟まれることによって、操作部材40の移動方向が、第1方向X1および第2方向X2に規制されている。
【0048】
図2に示すように、付勢部材42は、操作部50(凹部50b)と支持部12iとに挟まれるように設けられている。付勢部材42は、操作部材40を第2方向X2に向かって付勢している。本実施形態では、付勢部材42として、コイルばねが用いられている。
【0049】
図2および
図3に示すように、変換部44は、ラックギア54に噛み合うピニオンギア44aと、ピニオンギア44aよりも歯数が多くかつピニオンギア44aと一体回転する駆動ギア44bとを有している。ピニオンギア44aは、ラックギア54の上方に設けられている。本実施形態では、ピニオンギア44aおよび駆動ギア44bは第3シャフト44cに固定され、第3シャフト44cは壁部12fおよび支持部12hに回転可能に支持されている。なお、本実施形態では、ピニオンギア44aおよび駆動ギア44bは一体成形されているが、ピニオンギア44aおよび駆動ギア44bは、第3シャフト44cを回転軸として一体的に回転するのであれば、別個の部材として構成されていてもよい。
【0050】
図2に示すように、伝達部46は、駆動ギア44bと噛み合う従動ギア46aと、従動ギア46aと第2シャフト26とを連結するラチェット部46bとを有している。従動ギア46aは、第2シャフト26と同軸状に設けられている。また、従動ギア46aは、第2シャフト26の長さ方向に移動可能にかつ第2シャフト26に対して回転可能に、第2シャフト26に支持されている。
【0051】
ラチェット部46bは、第1ラチェット歯60と、連結部材62と、付勢部材64とを有している。第1ラチェット歯60は、環状に形成され、第2シャフト26と同軸状に設けられている。本実施形態では、第1ラチェット歯60は、従動ギア46aの壁部12f側において従動ギア46aと一体成形されている。第1ラチェット歯60は、従動ギア46aと同様に、第2シャフト26の長さ方向に移動可能にかつ第2シャフト26に対して回転可能に、第2シャフト26に支持されている。
【0052】
連結部材62は、筒状に形成され、第1ラチェット歯60よりも壁部12f側において第2シャフト26と同軸状に設けられている。連結部材62は、第1ラチェット歯60に噛み合う第2ラチェット歯62aを有している。連結部材62は、第2シャフト26と一体回転するように第2シャフト26に連結されている。
【0053】
後述するように、本実施形態では、発電部16側から見て従動ギア46aおよび第1ラチェット歯60が時計周りに回転する場合には、第1ラチェット歯60と第2ラチェット歯62aとが互いに噛み合う。これにより、連結部材62および第2シャフト26は、従動ギア46aに連動して回転する。
【0054】
一方、発電部16側から見て従動ギア46aおよび第1ラチェット歯60が反時計回りに回転する場合には、第1ラチェット歯60と第2ラチェット歯62aとは噛み合わない。この場合、従動ギア46aおよび第1ラチェット歯60が回転しても、連結部材62および第2シャフト26は回転しない。
【0055】
付勢部材64は、ボビン20と従動ギア46aとの間に設けられ、従動ギア46aを連結部材62側に向かって付勢している。本実施形態では、付勢部材64としてのコイルばねが、第2シャフト26に嵌められている。本実施形態では、付勢部材64の一端は、ボビン20のフランジ部36c,38bに支持され、付勢部材64の他端は、従動ギア46aに支持されている。
【0056】
(発電機の動作)
本実施形態では、
図8に示すように、発電機100の利用者が操作部50を筐体10内に押し込むと、操作部材40が第1方向X1に直線運動する。操作部材40の第1方向X1への直線運動は、ラックギア54を介して変換部44(ピニオンギア44a)に伝達される。これにより、変換部44(ピニオンギア44a)は、発電部16側(
図2の紙面左側)から見て、反時計周りに回転する(第1回転運動)。
【0057】
変換部44(駆動ギア44b)から従動ギア46aに上記第1回転運動が伝達されると、従動ギア46aは、発電部16側から見て時計周りに回転する。上述したように、従動ギア46aの上記時計周りの回転は、第1ラチェット歯60および連結部材62(第2ラチェット歯62a)を介して第2シャフト26に伝達される。これにより、第2シャフト26が回転する。
【0058】
第2シャフト26の回転は、第2ギア32および第1ギア30によって増速されて第1シャフト24に伝達される。これにより、磁石28が回転する。このように、本実施形態では、操作部50を筐体10内に押し込むことによって、磁石28を回転させることができる。その結果、コイル22において電流が発生する。すなわち、発電が行われる。
【0059】
上述したように、操作部材40は、付勢部材42によって第2方向X2に押されているので、発電機100の利用者が操作部50を筐体10内に押し込んだ後、操作部50から手を離すと、
図9に示すように、操作部材40が第2方向X2に直線運動する。操作部材40の第2方向X2への直線運動は、ラックギア54を介して変換部44(ピニオンギア44a)に伝達される。これにより、変換部44(ピニオンギア44a)は、発電部16側(
図2の紙面左側)から見て、時計周りに回転する(第2回転運動)。
【0060】
変換部44(駆動ギア44b)から従動ギア46aに上記第2回転運動が伝達されると、従動ギア46aは、発電部16側から見て反時計周りに回転する。上述したように、従動ギア46aの上記反時計周りの回転は、第2シャフト26に伝達されない。本実施形態では、従動ギア46aが上記反時計周りに回転すると、第1ラチェット歯60は、第2ラチェット歯62aに噛み合うことなく、第2ラチェット歯62aに沿って第2シャフト26の長さ方向に移動する。この際、従動ギア46aは、駆動ギア44bに噛み合った状態を維持しつつ、第2シャフト26の長さ方向に移動する。このため、従動ギア46aは、駆動ギア44bから伝達される回転によって、発電部16側から見て反時計回りに回転するが、その回転は連結部材62に伝達されない。この場合、第2シャフト26は回転しないので、第2シャフト26から第2ギア32、第1ギア30および第1シャフト24を介して磁石28に回転が伝達されることもない。したがって、磁石28は回転せず、発電は行われない。なお、従動ギア46aは、付勢部材64によって連結部材62側に押されているので、操作部材40に外部から力が加えられていない場合には、
図2に示したように、第1ラチェット歯60と第2ラチェット歯62aとが噛み合った状態が維持される。
【0061】
(本実施形態の効果)
以上のように、本実施形態に係る発電機100では、コイル22(筒部20a)の内側を通りかつコイル22(筒部20a)の軸方向に対して垂直な方向に延びるように第1シャフト24および第2シャフト26が設けられ、第1シャフト24に磁石28および第1ギア30が設けられ、第2シャフト26に第2ギア32が設けられている。第2シャフト26は、駆動部18によって回転駆動される。第2シャフト26の回転は、第2ギア32および第1ギア30によって増速されて第1シャフト24に伝達される。これにより、磁石28を高速で回転させることができるので、効率よく発電を行うことができる。
【0062】
また、本実施形態では、磁石28を高速で回転させるための増速機構(第1ギア30および第2ギア32)がボビン20の筒部20a内に設けられている。すなわち、本実施形態では、コイル22(筒部20a)内の空間を利用して増速機構が配置されている。この場合、コイル22(ボビン20)の外部に同様の増速機構を設ける場合に比べて、発電機100を小型に構成することができる。すなわち、本実施形態に係る発電機100は、省スペースで効率よく発電を行うことができる。
【0063】
なお、本実施形態では、第2シャフト26の長さ方向から見て、磁石28の一部と第2ギア32の一部とが重なるように、磁石28および第2ギア32が配置されている。この場合、第1シャフト24と第2シャフト26との距離が大きくなることを抑制しつつ、磁石28および第2ギア32の寸法を大きくすることができる。これにより、発電機100の省スペース化を実現しつつ、さらに効率よく発電を行うことができる。
【0064】
(変形例)
上述の実施形態では、発電機100が第1コイル22aおよび第2コイル22bを備える場合について説明したが、発電機100が備えるコイルの数は2つに限定されない。また、コイルの数に応じてボビンを設ければよい。
【0065】
上述の実施形態では、コイルがボビンに巻回される場合について説明したが、発電機がボビンを備えていなくてもよい。この場合、例えば、コイルとして、自己融着線からなる空芯コイルを用い、当該空芯コイルを筐体に支持させることが考えられる。また、この場合、例えば、筐体内または筐体自体に支持部を設け、当該支持部によって、第1シャフトおよび第2シャフトをコイルに対して回転可能に支持すればよい。
【0066】
上述の実施形態では、周方向に2極に着磁されたリング状の磁石28を用いる場合について説明したが、磁石は、コイル22に電流を生じさせることができるように構成されていればよく、磁石の構成は上述の例に限定されない。例えば、柱状または球状の磁石を用いてもよい。この場合、柱状または球状の磁石の外周面を、第1シャフト24の外周面に取り付けてもよい。また、上述の実施形態では、1個の磁石を用いる場合について説明したが、複数の磁石を用いてもよい。
【0067】
また、変換部44の構成は上述の例に限定されず、変換部44は、操作部材40の第1方向X1の直線運動を第1回転運動に変換するとともに、操作部材40の第2方向X2の直線運動を第1回転運動とは反対方向の第2回転運動に変換するように構成されていればよい。また、伝達部46の構成も上述の例に限定されず、伝達部46は、変換部44によって変換された上記第1回転運動を第2シャフト26に伝達し、かつ変換部44によって変換された上記第2回転運動の第2シャフト26への伝達を遮断するように構成されていればよい。また、伝達部46のラチェット部46bの構成も上記の例に限定されず、ラチェット部46bは、駆動ギア44bから従動ギア46aに伝達された上記第1回転運動を第2シャフト26に伝達する一方で、駆動ギア44bからラチェット部46bに伝達された上記第2回転運動の第2シャフト26への伝達を遮断するように構成されていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、省スペースで効率よく発電できる発電機が得られる。
【符号の説明】
【0069】
10 筐体
12 収容部
14 蓋部
16 発電部
18 駆動部
20 ボビン
20a 筒部
22 コイル
22a 第1コイル
22b 第2コイル
24 第1シャフト
26 第2シャフト
28 磁石
30 第1ギア
32 第2ギア
34 磁性金属部材
36 第1ボビン
38 第2ボビン
40 操作部材
42 付勢部材
44 変換部
44a ピニオンギア
44b 駆動ギア
46 伝達部
46a 従動ギア
46b ラチェット部
54 ラックギア
100 発電機
【要約】
【課題】省スペースで効率よく発電できる発電機を提供する。
【解決手段】発電機100は、コイル22と、コイル22の内側を通るようにコイル22の軸方向に対して垂直な方向に延びる第1シャフト24および第2シャフト26と、コイル22内において第1シャフト24の外周部に設けられた磁石28および第1ギア30と、コイル22内において第2シャフト26の外周部に設けられた第2ギア32とを有する。第2ギア32は、第1ギア30よりも歯数が多くかつ第1ギア30に噛み合っている。第2シャフト26は、駆動部18によって回転駆動される。第2シャフト26の回転は、第2ギア32および第1ギア30によって増速されて第1シャフト24および磁石28に伝達される。
【選択図】
図2