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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】噴霧器
(51)【国際特許分類】
   B05B 9/00 20060101AFI20220630BHJP
   B05B 17/06 20060101ALI20220630BHJP
   B05B 1/00 20060101ALI20220630BHJP
   A61L 2/025 20060101ALI20220630BHJP
   A61L 2/22 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B05B9/00
B05B17/06
B05B1/00 Z
A61L2/025
A61L2/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022065489
(22)【出願日】2022-04-12
【審査請求日】2022-05-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592250414
【氏名又は名称】株式会社テックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】中本 義範
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3235010(JP,U)
【文献】特開2019-154884(JP,A)
【文献】特開2009-58160(JP,A)
【文献】中国実用新案第214969547(CN,U)
【文献】中国実用新案第212593212(CN,U)
【文献】中国実用新案第211407181(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0235219(US,A1)
【文献】中国実用新案第211261155(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00- 3/18
7/00- 9/08
B05B17/00-17/08
A61L 2/00- 2/28
F24F 6/00- 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸水を溜めるとともに、前記次亜塩素酸水のミストを生成する本体と、
前記本体に接続し、上方に延び、前記本体から前記ミストが送られる第1配管と、
前記第1配管の上端部から分岐し、それぞれ上方、かつ側方に延びる第2配管と、を備え、
前記各第2配管の下側に、前記第2配管内を移動した前記ミストを噴出する噴出口があり、
前記各第2配管の内壁面に亘って微小凹凸が形成されている噴霧器。
【請求項2】
請求項1に記載の噴霧器において、
前記第1配管内には、ドーム状のオリフィスがあり、
平面視において、前記オリフィスの中心側には前記ミストの出口があり、外縁には、前記内壁面を伝って下方に流れる液滴を通すドレイン通路を前記内壁面との間に形成するドレイン溝があり、または、前記出口よりも外側には、前記第1配管の内壁面を伝って下方に流れる液滴を通すドレイン孔がある噴霧器。
【請求項3】
請求項2に記載の噴霧器において、
前記第1配管は、前記第2配管と接続する大径部と、前記大径部から縮径し、少なくとも一部が前記本体内に位置する小径部とを備え、
前記第1配管の内側には、前記大径部と前記小径部との接続部分により、周方向に亘って段差部が形成され、
前記オリフィスは、前記段差部に支持される噴霧器。
【請求項4】
請求項1に記載の噴霧器において、
前記噴出口は、
前記第2配管の内側に向かって先細り状に隆起する環状壁部の上端部によって前記第2配管の内側に形成される内側開口と、
前記第2配管の外壁面に、前記第2配管の軸方向に沿う長手状に形成され、内側に前記内側開口が位置し、かつ、前記軸方向における先端側の端縁の方が基端側の端縁よりも前記内側開口から離れる外側開口と、
前記環状壁部の外壁面を含み、前記内側開口から拡開して前記外側開口に至る環状のガイド面と、を含んで形成される噴霧器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の噴霧器において、
前記各第2配管は、前記第2配管の筒部の上側分割体および下側分割体と、前記筒部に取り外し可能に取り付けられて前記筒部の先端部開口を閉塞する蓋と、を備え、
前記第1配管と前記各下側分割体とは、一体に形成され、前記下側分割体に前記噴出口が形成され、
前記各上側分割体は、一体に形成され、前記第1配管と前記各下側分割体とに対して取り外し可能に取り付けられる噴霧器。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の噴霧器において、
前記第2配管の内壁面の表面粗さ(算術平均粗さ)Raは、1mm以下である噴霧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次亜塩素酸水の噴霧器に関する。
【背景技術】
【0002】
次亜塩素酸水のミストを噴霧し、空間中を浮遊する微生物やウイルスの不活性化を図る噴霧器が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の噴霧器は、次亜塩素酸水溶液からそのミストを発生させる超音波発生器と、発生したミストを、上方に延伸する配管に送気する送風手段とを具備する。配管に移動したミストは、配管の上端に横向きに設けられた噴出口から外部に放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-224856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の噴霧器では、配管の内壁面に付着したミストの液滴が噴出口から落下することがある。
【0005】
本発明の目的は、配管の内壁面に付着する液滴が噴出口から落下することを抑制できる次亜塩素酸水の噴霧器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば以下の通りである。以下では、図の符号を参照のために用いている。
(1)次亜塩素酸水を溜めるとともに、前記次亜塩素酸水のミストを生成する本体(図1の2)と、
前記本体に接続し、上方に延び、前記本体から前記ミストが送られる第1配管(図2の31)と、
前記第1配管の上端部から分岐し、それぞれ上方、かつ側方に延びる第2配管(32)と、を備え、
前記各第2配管の下側に、前記第2配管内を移動した前記ミストを噴出する噴出口(5)があり、
前記第2配管の内壁面に亘って微小凹凸が形成されている噴霧器(1)。
【0007】
本発明では、ミストを第1配管で上方に送った後、その流路を第2配管で分岐し、第2配管の下側にある噴出口から、第2配管内を移動したミストを下方に向けて噴出する。これにより、本発明では、ミストを足元側へ、かつ広範囲に噴霧できる。
本発明では、第2配管の内壁面に亘って、濡れ性を高める微小凹凸が形成されているので、ミスト中の粒径の大きな液滴を該内壁面で捕捉できる。これにより、本発明では、噴出口の周囲の内壁面にミストによる液滴が付着することを抑制でき、噴出口からの滴下を抑制できる。本発明では、第2配管は上方かつ側方に延びるので、捕捉した液滴を内壁面に沿って下方へ流すことができる。本発明では、ミストから粒径の大きな液滴を捕捉したうえでミストを噴霧できる。
【0008】
(2)(1)に記載の噴霧器において、
前記第1配管内には、ドーム状のオリフィス(4)があり、
平面視において、前記オリフィスの中心側には前記ミストの出口(図4の41)があり、外縁には、前記内壁面を伝って下方に流れる液滴を通すドレイン通路を前記内壁面との間に形成するドレイン溝(42)があり、または、前記出口よりも外側には、前記第1配管の内壁面を伝って下方に流れる液滴を通すドレイン孔(図5Bの42B)がある噴霧器。
【0009】
ここで、ミスト中の液滴は、互いに衝突を繰り返すことで肥大化する。粒径の大きな液滴は、落下したり、第2配管の内壁面に付着した際に内壁面を流れやすくなり、噴出口からの滴下の要因となる。本発明は、ドーム状のオリフィスにより、ミストの流量や流速を調整しつつ、オリフィスの周縁付近に位置する衝突確率の高い液滴、および粒径の大きい液滴の通過を阻害できるので、噴出口からの滴下の抑制につながる。本発明は、第1配管の内壁面を伝って下方に流れる液滴を、オリフィスのドレイン溝またはドレイン孔によってオリフィスの下方に排出できる。
【0010】
(3)(2)に記載の噴霧器において、
前記第1配管は、前記第2配管と接続する大径部(図2の311)と、前記大径部から縮径し、少なくとも一部が前記本体内に位置する小径部(312)とを備え、
前記第1配管の内側には、前記大径部と前記小径部との接続部分により、周方向に亘って段差部(313)が形成され、
前記オリフィスは、前記段差部に支持される噴霧器。
【0011】
本発明では、第1配管の途中に設けた段差部によりオリフィスを支持するので、オリフィスを設置するための専用の部材を不要にできる。
【0012】
(4)(1)に記載の噴霧器において、
前記噴出口は、
前記第2配管の内側に向かって先細り状に隆起する環状壁部(図2の54)の上端部によって前記第2配管の内側に形成される内側開口(51)と、
前記第2配管の外壁面に、前記第2配管の軸方向に沿う長手状に形成され、内側に前記内側開口が位置し、かつ、前記軸方向における先端側の端縁(図6のTe)の方が基端側の端縁(Be)よりも前記内側開口から離れる外側開口(52)と、
前記環状壁部の外壁面を含み、前記内側開口から拡開して前記外側開口に至る環状のガイド面(53)と、を含んで形成される噴霧器。
【0013】
本発明では、噴出口は、第2配管における軸方向の先端側に拡がっているので、ミストを、下方、かつ第2配管の軸方向の先端側に向けて噴出でき、ミストを広範囲に噴出できる。
本発明では、噴出口の環状壁部が第2配管の内側に向かって隆起するので、第2配管の内壁面で捕捉した液滴が噴出口に侵入し難くなる。
【0014】
(5)(1)から(4)のいずれか1つに記載の噴霧器において、
前記各第2配管は、前記第2配管の筒部(図2の323)の上側分割体(図8の7)および下側分割体(図7の6)と、前記筒部に取り外し可能に取り付けられて前記筒部の先端部開口を閉塞する蓋(図9の8)と、を備え、
前記第1配管と前記各下側分割体とは、一体に形成され、前記下側分割体に前記噴出口が形成され、
前記各上側分割体は、一体に形成され、前記第1配管と前記各下側分割体とに対して取り外し可能に取り付けられる噴霧器。
【0015】
本発明では、各部を一体化させることでパーツ数を少なくできる効果と、蓋および上側分割体を取り外すことができ、第2配管の内部を簡単に清掃できる効果とを同時に達成できる。
【0016】
(6)(1)から(4)のいずれか1つに記載の噴霧器において、
前記第2配管の内壁面の表面粗さ(算術平均粗さ)Raは、1mm以下である噴霧器。
【0017】
本発明では、第2配管の内壁面の微小凹凸に、粒径の大きな液滴を捕捉する機能を十分に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態の噴霧器の模式図である。
図2】配管の断面図である。
図3】配管の側面図である。
図4】2次オリフィスの斜視図である。
図5図5(A)は、2次オリフィスの他の例を示す図である。図5(B)は、2次オリフィスのもう一つの例を示す図である。
図6】下方から見た噴出口を示す図である。
図7】下側分割体および第1配管の斜視図である。
図8】上側分割体の斜視図である。
図9】蓋の斜視図である。
図10】第2配管上下長が、第1配管の大径部の直径よりも小さい噴霧形態の第2の実施形態の配管を示す図である。
図11】筒部の先端部付近に噴出口を備える噴霧形態の第3の実施形態の配管を示す図である。
図12図11の配管を下方から見た図である。
図13】第4の実施形態の下側分割体および第1配管の斜視図である。
図14】第4の実施形態の上側分割体の斜視図である。
図15】第4の実施形態の蓋の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図を参照して実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、噴霧器1の模式図である。以下、上下左右は、図1の上下左右を指す。
噴霧器1は、次亜塩素酸水のミストを噴霧し、空間中を浮遊する微生物やウイルスの不活性化を図る。噴霧器1は、次亜塩素酸水を溜めるとともに、次亜塩素酸水のミストを生成する本体2と、ミストを噴霧する配管3と、を備える。配管3の上端までの高さである噴霧器1の最大高さは、例えば65cmである。配管3の両端間の距離である噴霧器1の最大幅は、例えば66.7cmである。本体2の高さは、例えば40cmである。
【0020】
本体2は、筐体21と、筐体21内にあるタンク22および生成部23と、を備える。
筐体21は、適宜の形状でよく、本実施形態では6面体状である。筐体21は、例えば樹脂製である。筐体21の上面211には、差込口212と注水口213とがある。差込口212は、上面211の例えば中央部に配置される。注水口213は、不図示の蓋で覆われる。蓋は、注水口213の使用時に開けられる。
【0021】
タンク22は、筐体21の内側に形成され、注水口213から注がれる次亜塩素酸水を溜める。タンク22は、筐体21と別体で、筐体21内に出し入れできてもよい。次亜塩素酸水は、電気分解により生成された電解水や、次亜塩素酸ナトリウムを溶解させてpH調整した次亜塩素酸溶解水であってもよい。電解水は、pH2~6.5の酸性電解水、pH6.5~8の中性電解水、酸性または中性電解水を水道水で希釈したものでもよい。酸性電解水は、次亜塩素酸ナトリウム水と比較して低い塩素濃度で同等の殺菌効果を得ることができる。酸性電解水の塩素濃度は、十分な安全性と殺菌力を得るために5~50ppmであることが好ましく、特に10~30ppmであることが好ましい。
【0022】
生成部23には、タンク22から次亜塩素酸水が供給される。生成部23は、次亜塩素酸水のミストを生成する。ミストは、霧状の微細液滴である。ミストは、配管3に送られる。生成部23は、適宜の構成を取り得、例えばミストを超音波方式で生成できる。超音波方式の生成部23の一例として、生成部23は、発生管231、振動子232、ファン233、1次オリフィス234を備える。
【0023】
発生管231は、タンク22内の底面から上面に亘って延び、筐体21の上面211で開口する。発生管231の上部が差込口212を兼ねる。なお、差込口212は、筐体21の上壁部に設けられた貫通孔であってもよく、発生管231は、貫通孔の途中まで差し込まれる等して貫通孔に接続してもよい。発生管231内には、タンク22から適宜の量の次亜塩素酸水が供給される。
【0024】
振動子232は、発生管231の底に設けられ、電圧の印加により振動する。振動子232は、自身の上方にある次亜塩素酸水に超音波を照射し、発生管231内の次亜塩素酸水の水面からミストを発生させる。
【0025】
ファン233は、発生管231内に送風する。発生管231内に発生したミストは、ファン233による風に乗って発生管231内を上方に進む。
【0026】
1次オリフィス234は、発生管231内において、次亜塩素酸水の水面の上方、かつ配管3のすぐ下方に設けられる。1次オリフィス234は、板状であり、中央に孔235があり、ミストの流路を絞る。1次オリフィス234は、噴霧器1からのミストの噴霧量と排出力を高める。ミストは、1次オリフィス234から噴出し、配管3内に進む。
【0027】
なお、生成部23は、気化方式でミストを生成してもよく、タンク22から次亜塩素酸水が供給されるフィルタに、ファンによって送風し、次亜塩素酸水のミストを生成してもよい。生成部23は、スチーム方式でミストを生成してもよく、タンク22から次亜塩素酸水が供給されるヒータにて、次亜塩素酸水を加熱し、次亜塩素酸水のミストを生成してもよい。
【0028】
図2は、配管3の断面図である。図3は、配管3の側面図である。
配管3は、適宜の材料で形成されてよく、本実施形態では樹脂製である。配管3は、第1配管31と、2つの第2配管32と、を備える。
第1配管31は、本体2に接続し、上方に延び、本体2からミストが送られる。第1配管31内には、2次オリフィス4がある。
【0029】
第1配管31は、段付きの円筒状であり、大径部311と、小径部312とを備える。
大径部311は、各第2配管32と接続し、本体2の外部に位置する。
小径部312は、大径部311から僅かに縮径し、少なくとも一部が差込口212に差し込まれて本体2内に位置する。本実施形態では、小径部312は、差込口212に全て差し込まれる。配管3は、小径部312が差込口212に嵌められることで本体2に固定されてもよい。配管3を本体2に固定する固定機構が設けられてもよい。
【0030】
第1配管31の内側には、大径部311と小径部312との接続部分により、上側が拡開する段差部313が周方向に亘って形成される。2次オリフィス4の外縁が、段差部313に支持される。
第2配管32は、筒部323と、筒部323の先端部開口324を閉塞する蓋8と、を備える。筒部323は、上側分割体7と下側分割体6とが組み付けられて形成される。上側分割体7と下側分割体6は、大略、筒部323を上下に分割した形状である。
【0031】
図4は、2次オリフィス4の斜視図である。
2次オリフィス4は、ドーム状である。平面視において、2次オリフィス4の中心側には、ミストの出口41がある。また、2次オリフィス4のドレインに係る構成の一例として、外縁にドレイン溝42がある。
【0032】
ここで、ミスト中の液滴は、互いに衝突を繰り返すことで肥大化する。粒径の大きな液滴は、落下したり、第2配管32の内壁面に付着した際に該内壁面を流れやすくなり、第2配管32の噴出口5からの滴下の要因となる。
【0033】
2次オリフィス4は、一例として樹脂製であり、シボ加工により内壁面に亘って微小凹凸が形成され、該内壁面の濡れ性が高められている。これにより、2次オリフィス4を通るミスト中の粒径の大きな液滴が2次オリフィス4の内壁面に付着しやすくなり、噴出口5からの滴下の抑制につながる。2次オリフィス4および後述する第2配管32へのシボ加工は、樹脂の射出成形の際に、金型から樹脂へ微小凹凸を転写する加工であるものとするが、樹脂または金属等である2次オリフィス4および第2配管32に直接エッチングやサンドブラスト、レーザ加工を行ってもよい。
【0034】
2次オリフィス4の内壁面の表面粗さRaは、例えば20μmとすることができる。2次オリフィス4の内壁面の表面粗さRaは、1mm以下であることが好ましい。表面粗さRaの測定方法は、例えば、ISO25178の規格に従った非接触式測定法を適用できる。2次オリフィス4の内壁面は、シボ加工が無くても良い。
【0035】
2次オリフィス4は、円筒部43と、ドーム壁部44とを備える。
円筒部43は、外形が大径部311の内径と略同一である。
【0036】
ドーム壁部44は、円筒部43の上端に接続し、ドーム状である。ドーム状は、先窄み状と換言できる。ドーム壁部44の頂部に、出口41がある。出口41は、2次オリフィス4の中心軸を通る円孔であり、1次オリフィス234の孔235よりも広く、かつ上下方向に短い。2次オリフィス4は、ミストの流量や流速を調整するとともに、1次オリフィス234よりも水平方向に拡がるようにミストを噴出することで、左右に延びる2つの第2配管32にミストを円滑に送ることができる。
【0037】
本実施形態は、ドーム状の2次オリフィス4により、2次オリフィス4の周縁付近に位置する衝突確率の高い液滴、および粒径の大きい液滴の通過を阻害でき、噴出口5からの滴下の抑制につながる。なお、出口41は、平面視において、ドーム壁部44の中心軸の周囲に複数配置されてもよい。
【0038】
ドーム壁部44の外縁側には、径方向に沿ってガイド板441が立設される。ガイド板441は、周方向に間隔を空けて複数あり、ドーム壁部44の外縁まで直線状に延びる。2次オリフィス4を第1配管31の大径部311内に挿入する際に、ガイド板441は、大径部311の内壁面に接触し、2次オリフィス4の傾きを防止する。
【0039】
ドレイン溝42は、2次オリフィス4の周方向に間隔をあけて複数ある。ドレイン溝42は、ドーム壁部44の外縁部から円筒部43の下端に至る。粒径の大きくなったミストが大径部311の内壁面で液滴となり、該液滴が大径部311の内壁面を伝って下方に流れる場合がある。また、第2配管32から流れ落ちてくる液滴も、大径部311の内壁面を伝って下方に流れる。ドレイン溝42は、大径部311の内壁面を伝って下方に流れる液滴を下方に通すドレイン通路を、内壁面との間に形成する。
【0040】
図5Aは、2次オリフィスの他の例を示す図である。
2次オリフィス4Aは、ドーム壁部44Aの上端に円筒部43Aが接続する。ドーム壁部44Aの外縁部にドレイン溝42Aがある。ドレイン溝42Aは、周方向に間隔をあけて複数ある。円筒部43Aの上端が、ミストの出口41Aとなる。
【0041】
図5Bは、2次オリフィスのもう一つの例を示す図である。
2次オリフィス4Bは、円筒部43Bの上端にドーム壁部44Bが接続する。ドーム壁部44Bの頂部に、ミストの出口41Bがある。ドーム壁部44Bにおいて、出口41Bよりも径方向外側にドレイン孔42Bがある。ドレイン孔42Bは、周方向に間隔をあけて複数ある。ドレイン孔42Bは、第1配管31の大径部311の内壁面を伝って下方に流れる液滴を下方に通す。2次オリフィス4、4Aにおいて、ドレイン溝42,42Aの替わりにドレイン孔42Bを適用してもよいし、ドレイン溝42,42Aに加えてドレイン孔42Bを適用してもよい。
【0042】
図2に戻り、ドレイン溝42を下方に向かって通過した液滴は、小径部312の内壁面を伝って下方に流れ、1次オリフィス234の中央の孔235から発生管231内に落下する。一方、2次オリフィス4から上方に噴出するミストは、第1配管31の上部を経て各第2配管32内に進む。
【0043】
各第2配管32は、第1配管31の上端部から分岐し、それぞれ上方、かつ側方に延びる。各第2配管32は、筒状であり、本実施形態では上方から見た場合に左右に一直線となるように延びる。
【0044】
各第2配管32は、シボ加工により内壁面に亘って微小凹凸が形成され、該内壁面の濡れ性が高められている。また、微小凹凸は、粒径の大きくなったミスト中の液滴を集めて大きな液滴にする役割を担う。これにより、第2配管32を通るミスト中の粒径の大きな液滴が第2配管32の内壁面に付着しやすくなる。従って、本実施形態は、噴出口5の周囲の内壁面にミストによる液滴が付着することを抑制でき、噴出口5からの滴下を抑制できる。また、本実施形態では、ミスト中の粒径の大きな液滴の噴霧を抑制できる。第2配管32の内壁面の表面粗さRaは、1mm以下であることが好ましく、より好ましくは10~50μmである。
【0045】
第2配管32は、本体2の左右端よりも左右に延びる(図1参照)。第2配管32の軸C1は、水平面に対して上方側に傾く。軸C1の傾きθ1は例えば15度である。本実施形態では、軸C1の傾きθ1を45度よりも小さくすることで、第2配管32の高さを抑制しながら足元側へ広範囲にミストを噴霧することのバランスを良好にとることができる。
【0046】
本実施形態では、第2配管32が上方かつ本体2の側方に延びるので、第2配管32の内壁面で捕捉した液滴を該内壁面に沿って下方へ流すことができ、噴出口5からの液滴の落下防止を図ることができる。
【0047】
2つの第2配管32は、上方から見た場合に一直線となるように延びていなくてもよく、各第2配管32の軸C1が交差するように配置されてもよい。第2配管32は、3本以上あってもよい。第2配管32の傾きθ1、断面形状、長さは適宜の態様を取り得る。
【0048】
各第2配管32の先端側かつ下側に、第2配管32内を移動したミストを噴出する噴出口5がある。先端側とは、第2配管32の軸方向の中央から先端までの間の領域を指す。
噴出口5は、内側開口51と、外側開口52と、ガイド面53と、を含んで形成される。
内側開口51は、第2配管32の内側に向かって先細り状に隆起する環状壁部54(図7も参照)の上端部によって第2配管32の内側に形成される。内側開口51は、例えば真円状である。環状壁部54の断面形状は、直線状でも湾曲していてもよい。
ガイド面53は、環状であり、噴霧器1の外側に露出する環状壁部54の外壁面を含み、内側開口51から拡開して外側開口52に至る。
【0049】
図6は、下方から見た噴出口5を示す図である。
外側開口52は、第2配管32の外壁面に、第2配管32の軸方向に沿う長手状に形成される。外側開口52の内側に内側開口51が位置する。外側開口52において、軸方向における先端側(図6の右側)の端縁Teの方が、基端側(図6の左側)の端縁Beよりも内側開口51から離れる。換言すると、先端側の端縁Teと内側開口51の中心C2との距離LTeの方が、基端側の端縁Beと内側開口51の中心C2との距離LBeよりも長い。
【0050】
噴出口5の上記構成により、噴霧器1は、ミストを下向き、かつ左右方向に良好に噴霧できる。従って、噴霧器1は、足元側の空間中のウイルス等の不活化を、周囲の広い範囲に亘って行うことができる。
また、本実施形態では、噴出口5の環状壁部54が第2配管32の内側に向かって隆起するので、第2配管32の内壁面で捕捉した液滴が噴出口5に侵入し難くなる。
【0051】
図7は、下側分割体6および第1配管31の斜視図である。
各下側分割体6と第1配管31とは、一体に形成される。
各下側分割体6は、円弧状部61、一対の平板部62、一対の下側ガイド部63、下側差込部64を備える。
【0052】
円弧状部61は、断面視で円弧状である。円弧状部61の先端側に噴出口5がある。
前後方向に対向する一対の平板部62は、円弧状部61の前後方向における両端部から上方に延びる。
【0053】
前後方向に対向する一対の下側ガイド部63は、肉厚が平板部62の肉厚の半分以下であり、各平板部62の上縁部において幅方向(前後方向)の外側から上方に延びる。
平板部62および下側ガイド部63の外壁は面一である。
【0054】
下側差込部64は、円弧状部61および平板部62よりも肉厚が薄い。下側差込部64は、第2配管32の軸方向における円弧状部61および平板部62の先端部から先端側に突出する。
【0055】
下側分割体6では、一対の下側ガイド部63および下側差込部64を除く内壁面の全面に亘ってシボ加工が施され、微小凹凸が形成されている。
【0056】
図8は、上側分割体7の斜視図である。図8では、上側分割体7の内壁を示すために、上側分割体7の姿勢を組み付け時とは上下逆にして描いている。
各上側分割体7は、一体に形成され、第1配管31および各下側分割体6に対して取り外し可能に取り付けられる。上側分割体7は、下側分割体6の上に重ねられ、不図示の固定機構により、下側分割体6に取り外し可能に取り付けられる。固定機構は、適宜の構成を採用でき、例えば、上側分割体7の爪が下側分割体6の穴に差し込まれることで、上側分割体7を下側分割体6に固定してもよい。
【0057】
各上側分割体7は、円弧状部71、一対の上側ガイド部73、上側差込部74を備える。
円弧状部71は、断面視で円弧状である。
上側分割体7では、円弧状部71の内壁面に亘ってシボ加工が施され、微小凹凸が形成されている。一対の上側ガイド部73および上側差込部74にはシボ加工は施されていない。
【0058】
前後方向に対向する一対の上側ガイド部73は、肉厚が円弧状部71の肉厚の半分以下であり、円弧状部71の上縁部において幅方向(前後方向)の内側から上方に延びる。上側分割体7が下側分割体6に組み付けられる際に、上側ガイド部73は、下側ガイド部63の内側に配置される。
上側差込部74は、円弧状部71よりも肉厚が薄い。上側差込部74は、第2配管32の軸方向における円弧状部61の先端部から先端側に突出する。
【0059】
図9は、蓋8の斜視図である。
蓋8は、閉塞部81、差込部82、挟持部83を備える。
閉塞部81は、平板状であり、第2配管32の筒部323の先端部開口324を覆う。閉塞部81には、シボ加工が施されていてもよいし、施されていなくてもよい。
【0060】
差込部82は、閉塞部81の周縁の僅かに内側から立ち上がり、第2配管32の筒部323の先端部開口324内に差し込まれる。
挟持部83は、閉塞部81の周縁から立ち上がり、環状である。差込部82と挟持部83の隙間に、上側分割体7の上側差込部74および下側分割体6の下側差込部64が差し込まれる。蓋8は、差込部82と挟持部83の作用により筒部323に取り外し可能に取り付けられる。
【0061】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態の配管3Cを示す図である。
配管3Cでは、第2配管32Cの上下長L1が、第1配管31Cの大径部311Cの直径Φ1よりも小さい。配管3Cのその他の構成は、前述の配管3と同様である。例えば、シボ加工により第2配管32Cの内壁面に亘って微小凹凸が形成されている。
本実施形態では、このように、第2配管32Cの上下長L1を第1配管31Cの大径部311Cの直径Φ1よりも小さくすることで、噴出口5Cから出るミストの噴霧力を増大できる。
【0062】
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態の配管3Dを示す図である。図12は、配管3Dを下方から見た図である。
配管3Dにおいて、第2配管32Dは、筒部323Dと、筒部323Dの先端部に接続するドーム部325Dとを備える。第2配管32Dは、上側分割体7Dおよび下側分割体6Dが組み付けられることにより形成される。第1配管31Dと各下側分割体6Dとは、一体に形成される。下側分割体6Dにおけるドーム部325Dの領域に噴出口5Dが形成される。
【0063】
配管3Dでは、第2配管32Dの先端のドーム部325Dで、第2配管32Dの先端に到達するミストを良好に噴出口5Dに導くことができる。
【0064】
各上側分割体7Dは、一体に形成され、第1配管31Dと各下側分割体6Dとに対して、不図示の固定機構により、取り外し可能に取り付けられる。固定機構は、適宜の構成を採用でき、例えば、上側分割体7Dの爪が下側分割体6Dの穴に差し込まれることで、上側分割体7Dを下側分割体6Dに固定してもよい。
【0065】
このように、配管3Dは、第2配管32Dが蓋を備えない点が配管3と異なり、その他の構成は配管3と同様である。例えば、シボ加工により第2配管32Dの内壁面に亘って微小凹凸が形成されている。
【0066】
上記のような構成をとることで、本実施形態では、第1及び第2の実施形態よりも、噴出口5Dから出るミストを斜め上方向に(換言すると側方に向けて)噴出させることができ、ミストの床への噴霧エリアを拡げることができる。
【0067】
(第4の実施形態)
図13図15の第4の実施形態では、各部を一体化させることでパーツ数を少なくできる効果と、蓋8Eおよび上側分割体7Eを取り外すことができ、第2配管32Eの内部を簡単に清掃できる効果とを同時に達成できる。
【0068】
以下、具体的に述べると、図13は、第4の実施形態の下側分割体6Eおよび第1配管31Eの斜視図である。
下側分割体6Eは、図7の下側分割体6と同様の構成であり、下側分割体6Eの要素61E~64Eは、図7の下側分割体6の要素61~64に対応する。下側分割体6Eは、図2の第2配管32よりも偏平な第2配管32Eを構成し、図7の下側分割体6よりも偏平である。円弧状部61Eは、図7の円弧状部61よりも曲率が小さい。円弧状部61Eの軸方向における先端側には、噴出口5Eを跨ぐように差込口65Eがある。前後方向に対向する一対の平板部62Eには、左右方向に間隔をあけて複数の穴91Eが設けられている。穴91Eを含んで、下側分割体6Eおよび上側分割体7E(図14)を固定する固定機構9Eが構成される。
【0069】
図14は、第4の実施形態の上側分割体7Eの斜視図である。同様に、上側分割体7Eは、図8の上側分割体7と同様の構成であり、要素71E~74Eは、図8の上側分割体7の要素71~74に対応する。円弧状部71Eは、図8の円弧状部71よりも曲率が小さい。円弧状部71Eの軸方向における先端側には、差込口75Eがある。前後方向に対向する一対の上側ガイド部73Eには、上側ガイド部73Eの下端(図14では上端)を超えて下方(図14の上方)に延びる爪92Eが設けられている。爪92Eは、左右方向に間隔をあけて複数設けられている。爪92Eを含んで固定機構9Eが構成される。爪92Eの先端部には、前後方向における外側に突出する突起921Eが設けられている。各突起921Eが、下側分割体6Eの各穴91Eに差し込まれることで、下側分割体6Eおよび上側分割体7Eが固定される。
【0070】
図15は、第4の実施形態の蓋8Eの斜視図である。
蓋8Eは、図9の蓋8と同様の構成であり、要素81E~83Eは、図9の要素81~83に対応する。差込部82Eの上部および下部には、爪84Eが設けられている。蓋8Eは、組み付けられた下側分割体6Eおよび上側分割体7Eに嵌められる。この際、爪84Eは、各分割体6E、7Eの差込口65E、75Eに差し込まれ、蓋8Eを固定する。
【0071】
本発明は、その特徴から逸脱することなく、実施形態で実施できる。実施形態、変形例、効果は単なる例示であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。実施形態および変形例の特徴、構造は、追加でき、また代替の構成を得るために様々な方法で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0072】
1…噴霧器、2…本体、3,3C,3D…配管、4,4A~4D…オリフィス、5,5C~5E…噴出口、6,6C~6E…下側分割体、7,7C~7E…上側分割体、8,8C,8E…蓋、22…タンク、23…生成部、31,31C~31E…第1配管、32,32C~32E…第2配管、41,41A,41B…出口、42,42A…ドレイン溝、42B…ドレイン孔、51…内側開口、52…外側開口、53…ガイド面、54…環状壁部、311,311C,311D…大径部、312,312C,312D…小径部、313…段差部、323,323D…筒部、324…先端部開口、325D…ドーム部、Be…基端側の端縁、Te…先端側の端縁。
【要約】
【課題】配管の内壁面に付着する液滴が噴出口から落下することを抑制できる次亜塩素酸水の噴霧器を提供すること。
【解決手段】次亜塩素酸水を溜めるとともに、前記次亜塩素酸水のミストを生成する本体と、前記本体に接続し、上方に延び、前記本体から前記ミストが送られる第1配管と、前記第1配管の上端部から分岐し、それぞれ上方、かつ側方に延びる第2配管と、を備え、前記各第2配管の下側に、前記第2配管内を移動した前記ミストを噴出する噴出口があり、前記各第2配管の内壁面に亘って微小凹凸が形成されている噴霧器。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
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図15