(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 13/20 20060101AFI20220630BHJP
F24F 13/14 20060101ALI20220630BHJP
F24F 13/22 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
F24F1/0007 401C
F24F13/14 B
F24F13/22 221
(21)【出願番号】P 2017051907
(22)【出願日】2017-03-16
【審査請求日】2020-02-28
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 雄介
(72)【発明者】
【氏名】凌 悟朗
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕貢
【合議体】
【審判長】松下 聡
【審判官】槙原 進
【審判官】林 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-44874(JP,A)
【文献】特開2017-40410(JP,A)
【文献】国際公開第2017/026013(WO,A1)
【文献】特開2002-115896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0007 - 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器を有する筐体と、
前記熱交換器の風下側に設けられる吹出口と、
前記吹出口に回動自在に配置される上下風向板とを備え、
前記上下風向板は、風下側に風下端に沿って延びる突部を有し、前記突部の風上で前記突部に対して第1の高低差を作り出す厚板部と、前記突部の風下で前記突部に対して第1の高低差よりも大きい第2の高低差を作り出
し、前記上下風向板の風下端を形成する薄板部とを有
し、
前記上下風向板は、前記吹出口に向き合う表面を形成する第1パネル部材と、前記第1パネル部材の外観面側に配置されて、少なくとも前記上下風向板の風上端および前記風下端で前記第1パネル部材に溶着される第2パネル部材とを備える
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機において、前記突部の基端部は傾斜角を有して前記風向板に接続されており、風下側の傾斜角は、風上側の傾斜角に比べて大きい傾斜角であることを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の空気調和機において、前記上下風向板は中空構造を有することを特徴とする空気調和機。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の空気調和機において、前記筐体の底面は空気調和機が設置される空間の床面に対して水平であり、前記吹出口は前記筐体の底面に開口することを特徴とする空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は空気調和機を開示する。吹出口には複数枚の上下風向板が配置される。冷気は上下風向板の表裏に沿って流れる。上下風向板は風下端に沿って延びる厚肉部を有する。厚肉部の形成に基づき結露の防止が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-98684号公報
【文献】特開2011-133158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2は空気調和機を開示する。空気調和機は、吹出口に配置される1枚の上下風向板を備える。吹出口から冷気が吹き出される際に、冷気は上下風向板の片側の面に沿って流れる。こうした形態の空気調和機で風向板の先端が冷気によって冷やされると、上下風向板の反対側の面から室内の空気が風向板の先端に接触し、風向板の先端に結露が生じてしまう。
【0005】
本発明は、風向板の先端に生じる結露を防止することができる空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、熱交換器を有する筐体と、前記熱交換器の風下側に設けられる吹出口と、前記吹出口に回動自在に配置される上下風向板とを備え、前記上下風向板は、風下側に風下端に沿って延びる突部を有し、前記突部の風上で前記突部に対して第1の高低差を作り出す厚板部と、前記突部の風下で前記突部に対して第1の高低差よりも大きい第2の高低差を作り出す薄板部とを有する空気調和機が提供される。
【0007】
吹出口から冷気が吹き出される際に、冷気は突部の風上で厚板部の表面に沿って流れる。冷気は第1の高低差で押し上げられて表面から浮き上がるように流れる。
【0008】
突部の風下では第1の高低差よりも大きい第2の高低差が確保されることから、浮き上がった冷気が突部の風下で剥離を起こして渦流となっても、薄板部を冷却することはない。突部の風下では冷気に基づく薄板部の低温化は回避される。突部の風下で室温空気が薄板部に接触しても、結露の発生は防止されることができる。
【0009】
前記突部の風上側と風下側の基端部は傾斜角を有して前記風向板に接続されており、風下側の傾斜角は、風上側の傾斜角に比べて大きい傾斜角であればよい。こうして突部の風下で冷気の剥離は実現される。冷気が基端部に沿わなくなるため、薄板部に冷気が接触することを防止することができる。
【0010】
前記上下風向板は中空構造を有してもよい。上下風向板が大型化しても上下風向板の重量は抑制される。その結果、上下風向板を駆動する駆動源の大型化は回避される。駆動源の大型化に伴う製造コストの増大や消費電力の増加は回避される。
【0011】
前記上下風向板は、前記吹出口に向き合う表面を形成する第1パネル部材と、前記第1パネル部材の外観面側に配置されて、少なくとも前記厚板部の風上端および前記薄板部の風下端で前記第1パネル部材に溶着される第2パネル部材とを備えてもよい。
【0012】
上下風向板の薄板部は中空構造である必要はなく、薄板部では第2パネル部材に第1パネル部材は重ねられることができるので、薄板部は溶着代として機能する。気流の流通方向に薄板部はできる限り短縮されればよい。突部はできる限り上下風向板の風下端に近い位置に配置される。
【0013】
吹出口が開口される空気調和機の底面が、空気調和機が設置される空間の床面に対して平行である場合、上下風向板が吹出口を開放する際に、上下風向板は下向きに傾斜する。冷気は突部に押し上げられて上下風向板の表面から浮き上がることから、吹き出し口が開口される面が床面に平行であっても、冷気を水平方向に吹き出すことが可能となる。これによれば、結露の発生を防止することに加え、いわゆる冷気の吹きおろしの抑制に貢献することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように開示の装置によれば、風向板の先端に生じる結露を防止することができる空気調和機は提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空気調和機の構成を概略的に示す概念図である。
【
図2】一実施形態に係る室内機の外観を概略的に示す正面図である。
【
図3】室内機の内部構造を概略的に示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0017】
(1)空気調和機の構成
図1は本発明の一実施形態に係る空気調和機11の構成を概略的に示す。空気調和機11は室内機12および室外機13を備える。室内機12は例えば建物内の室内空間に設置される。その他、室内機12は室内空間に相当する空間に設置されればよい。室内機12には室内熱交換器14が組み込まれる。室外機13には圧縮機15、室外熱交換器16、膨張弁17および四方弁18が組み込まれる。室外機13は、室外空気との熱交換が可能な屋外に設置されればよい。室内熱交換器14、圧縮機15、室外熱交換器16、膨張弁17および四方弁18は冷凍回路19を形成する。
【0018】
冷凍回路19は第1循環経路21を備える。第1循環経路21は四方弁18の第1口18aおよび第2口18bを相互に結ぶ。第1循環経路21には、圧縮機15が設けられている。圧縮機15の吸入管15aは四方弁18の第1口18aに冷媒配管を介して接続される。第1口18aからガス冷媒は圧縮機15の吸入管15aに供給される。圧縮機15は低圧のガス冷媒を所定の圧力まで圧縮する。圧縮機15の吐出管15bは四方弁18の第2口18bに冷媒配管を介して接続される。圧縮機15の吐出管15bからガス冷媒は四方弁18の第2口18bに供給される。冷媒配管は例えば銅管であればよい。
【0019】
冷凍回路19は第2循環経路22をさらに備える。第2循環経路22は四方弁18の第3口18cおよび第4口18dを相互に結ぶ。第2循環経路22には、第3口18c側から順番に室外熱交換器16、膨張弁17および室内熱交換器14が組み込まれる。室外熱交換器16は、通過する冷媒と周囲の空気との間で熱エネルギーを交換する。室内熱交換器14は、通過する冷媒と周囲の空気との間で熱エネルギーを交換する。第2循環経路22は例えば銅管などの冷媒配管で形成されればよい。
【0020】
室外機13には送風ファン23が組み込まれる。送風ファン23は室外熱交換器16に通風する。送風ファン23は例えば羽根車の回転に応じて気流を生成する。送風ファン23の働きで気流は室外熱交換器16を通り抜ける。室外の空気は室外熱交換器16を通り抜け冷媒と熱交換する。熱交換された冷気または暖気の気流は室外機13から吹き出される。通り抜ける気流の流量は羽根車の回転数に応じて調整される。
【0021】
室内機12には送風ファン24が組み込まれる。送風ファン24は室内熱交換器14に通風する。送風ファン24は羽根車の回転に応じて気流を生成する。送風ファン24の働きで室内機12には室内空気が吸い込まれる。室内空気は室内熱交換器14を通り抜け冷媒と熱交換する。熱交換された冷気または暖気の気流は室内機12から吹き出される。通り抜ける気流の流量は羽根車の回転数に応じて調整される。
【0022】
冷凍回路19で冷房運転が実施される場合には、四方弁18は第2口18bおよび第3口18cを相互に接続し第1口18aおよび第4口18dを相互に接続する。したがって、圧縮機15の吐出管15bから高温高圧の冷媒が室外熱交換器16に供給される。冷媒は室外熱交換器16、膨張弁17および室内熱交換器14を順番に流通する。室外熱交換器16では冷媒から外気に放熱する。膨張弁17で冷媒は低圧まで減圧される。減圧された冷媒は室内熱交換器14で周囲の空気から吸熱する。冷気が生成される。冷気は送風ファン24の働きで室内空間に吹き出される。
【0023】
冷凍回路19で暖房運転が実施される場合には、四方弁18は第2口18bおよび第4口18dを相互に接続し第1口18aおよび第3口18cを相互に接続する。圧縮機15から高温高圧の冷媒が室内熱交換器14に供給される。冷媒は室内熱交換器14、膨張弁17および室外熱交換器16を順番に流通する。室内熱交換器14では冷媒から周囲の空気に放熱する。暖気が生成される。暖気は送風ファン24の働きで室内空間に吹き出される。膨張弁17で冷媒は低圧まで減圧される。減圧された冷媒は室外熱交換器16で周囲の空気から吸熱する。その後、冷媒は圧縮機15に戻る。
【0024】
(2)室内機の構成
図2は一実施形態に係る室内機12の外観を概略的に示す。室内機12は、重力方向に直交する水平面に平行な床面と、床面に垂直な壁面とからなる部屋の壁面に設置されればよい。室内機12は筐体26を備える。筐体26の底板27には吹出口28が形成される。吹出口28は室内に向けて開口する。吹出口28は、室内熱交換器14で生成される冷気または暖気の気流を吹き出す。筐体26の底板27は重力方向に直交する水平面に沿って広がる。したがって、吹出口28は水平面に沿って開口する。
【0025】
吹出口28には例えば1枚の上下風向板29が配置される。上下風向板29は、底板27と平行な水平軸線HL回りに回転することができる。回転に応じて上下風向板29は吹出口28を開閉することができる。上下風向板29の角度に応じて、吹き出される気流の方向は変えられる。上下風向板29の風下側の先端部には、後述する突部43が風下端に沿って設けられている。
【0026】
図3に示されるように、筐体26の天板31には吸込口32が形成される。筐体26内には吸込口32から吹出口28に向かって空気の通路33が区画される。通路33内に室内熱交換器14は配置される。室内熱交換器14は、水平軸線HLの線方向に均等な間隔で配列される伝熱フィン34と、水平方向に往復しながら伝熱フィン34に挿通されて、第2循環経路21の一部を構成する配管35とを備える。配管35を流通する冷媒と、伝熱フィン34の間を流通する空気との間で熱エネルギーは交換される。
【0027】
通路33内に送風ファン24は配置される。送風ファン24には例えばクロスフローファンが用いられる。送風ファン24は水平軸線HLに平行な回転軸36回りで回転する。送風ファン24には駆動源(図示されず)から回転軸36回りの駆動力が伝達される。送風ファン24の回転に応じて気流は室内熱交換器14を通過する。その結果、冷気または暖気の気流が生成される。冷気または暖気の気流は吹出口28から吹き出される。
【0028】
図4に示されるように、上下風向板29は、吹出口28に向き合う表面(送風面)を形成する第1パネル部材37と、第1パネル部材37よりも本体の外観面側に配置されて、少なくとも上下風向板29の風上端29aおよび風下端29bで第1パネル部材37に溶着される第2パネル部材38とを備える。第1パネル部材37および第2パネル部材38の間には中空部39が区画される。こうして上下風向板29の中空構造は確立される。第1パネル部材37および第2パネル部材38は例えば樹脂材料から成型されるものであれば良い。
【0029】
第2パネル部材38の風上端および風下端には、第2パネル部材38から立ち上がる縁壁41a、41bがそれぞれ形成される。縁壁41a、41bの内側に第1パネル部材37は収まる。第1パネル部材37には、縁壁41a、41bに対応して、第1パネル部材37の風上端および風下端から立ち上がって第2パネル部材38の縁壁41a、41bにそれぞれ向き合わせられる合わせ壁42a、42bが一体に形成される。合わせ壁42a、42bの先端は、第2パネル部材38の第1パネル部材37側の面(以下、第2パネル部材38の表面)に当てられる。縁壁41a、41bと第2パネル部材38の表面は、合わせ壁42a、42bと溶着される。
【0030】
上下風向板29は、風下端29bおよび第1パネル部材37の表面(送風面)よりも通路33側に凸となる突部43を形成する。突部43は第1パネル部材37の一部を湾曲させることで形成される。第1パネル部材37の凹凸に基づき、上下風向板29には、突部43の風上で突部43に対して第1の高低差H1を作り出す厚板部44と、突部43の風下で突部43に対して第1の高低差H1よりも大きい第2の高低差H2を作り出す薄板部45とが形成される。突部43は、傾斜角α、βをもって厚板部44および薄板部45に接続される基端部47、48を有する。
【0031】
吹出口28から冷気が吹き出される際に、冷気は突部43の風上で厚板部44の表面に沿って流れる。冷気は突部で押し上げられて表面から浮き上がるように流れる。上下風向板29が下向きに傾斜しても、冷気はできる限り上向きに吹き出されることができる。特に、本実施形態では、吹出口28は筐体26の底板27に沿って開口する。上下風向板29が吹出口28を開放する際に、上下風向板29は下向きに傾斜する。冷気は突部に押し上げられて上下風向板29の表面から浮き上がることから、冷気が直接床面に吹きつけられる、いわゆる冷気の吹き下ろしは抑制されることができる。
【0032】
しかも、突部43の風下では第1の高低差H1よりも大きい第2の高低差H2が確保されることから、浮き上がった冷気が突部43の風下で剥離を起こして渦流となっても、薄板部45を冷却することはない。突部43の風下では冷気に基づく薄板部45の低温化は回避される。突部43の風下で室温空気が薄板部45に接触しても、結露の発生は防止されることができる。
【0033】
突部43の基端部47、48は傾斜角を有して厚板部44および薄板部45に接続されており、風下側の基端部48は、風上側の基端部47の傾斜角αに比べて大きい傾斜角βを有する。こうして突部43の風下で冷気の剥離はさらに促進される。冷気が基端部48に沿わなくなるため、薄板部45に冷気が接触することを防止することができる。
【0034】
前述のように、上下風向板29は中空構造を有する。上下風向板29が大型化しても上下風向板29の重量は抑制される。その結果、上下風向板29を駆動する駆動源の大型化は回避される。駆動源の大型化に伴う製造コストの増大や消費電力の増加は回避される。上下風向板29が1枚であっても、十分な大きさの吹出口28は確保される。
【0035】
上下風向板29は、吹出口28に向き合う表面を形成する第1パネル部材37と、第1パネル部材37の外観面側に配置されて、少なくとも厚板部44の風上端29aおよび薄板部45の風下端29bで第1パネル部材37に溶着される第2パネル部材38とを備える。上下風向板29の薄板部45は中空構造である必要はなく、薄板部45では第2パネル部材38に第1パネル部材37は重ねられることができるので、薄板部45は溶着代として機能する。その結果、気流の流通方向に薄板部45はできる限り短縮される。突部43はできる限り上下風向板29の風下端29bに近い位置に配置される。
【符号の説明】
【0036】
11…空気調和機、26…筐体、27…底板、28…吹出口、29…上下風向板、29b…風下端、37…第1パネル部材、38…第2パネル部材、43…突部、44…厚板部、45…薄板部、H1…第1の高低差、H2…第2の高低差、α…(風上側の)傾斜角、β…(風下側の)傾斜角。