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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】シート剥離装置およびシート剥離方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017169979
(22)【出願日】2017-09-05
(65)【公開番号】P2019047007
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100184712
【弁理士】
【氏名又は名称】扇原 梢伸
(74)【代理人】
【識別番号】100192223
【弁理士】
【氏名又は名称】加久田 典子
(72)【発明者】
【氏名】杉下 芳昭
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-107944(JP,A)
【文献】特開平02-182434(JP,A)
【文献】特開2010-073966(JP,A)
【文献】特開2009-206530(JP,A)
【文献】特開2010-006908(JP,A)
【文献】特開2001-114967(JP,A)
【文献】特開2007-43048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体に貼付された接着シートに剥離用シートを貼付し、当該剥離用シートを介して前記接着シートを保持する保持手段を備え、当該保持手段で保持した前記剥離用シートに張力を付与して前記被着体から前記接着シートを剥離するシート剥離装置において、
前記剥離用シートおよび前記接着シートの少なくとも一方における相手方に当接する面側には、高周波が印加されることで加熱して接着力を生じる、または、接着力が増加する高周波誘電接着剤層が設けられ、
前記保持手段は、前記高周波誘電接着剤層に高周波を印加する高周波誘電加熱処理手段を備えていることを特徴とするシート剥離装置。
【請求項2】
前記高周波が印加されて加熱した高周波誘電接着剤層を冷却する冷却手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のシート剥離装置。
【請求項3】
前記高周波誘電接着剤層の温度を検知する温度検知手段を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシート剥離装置。
【請求項4】
前記保持手段は、前記高周波誘電接着剤層の温度が所定の第1温度以上となったことを前記温度検知手段が検知するまで、前記高周波誘電接着剤層に高周波を印加することを特徴とする請求項3に記載のシート剥離装置。
【請求項5】
所定の信号を出力する出力手段を備え、当該出力手段は、前記高周波誘電接着剤層の温度が所定の第2温度以下となったことを前記温度検知手段が検知すると、前記接着シートに貼付した前記剥離用シートに張力を付与することを許可する前記所定の信号を出力することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のシート剥離装置。
【請求項6】
被着体に貼付された接着シートに剥離用シートを貼付する貼付工程と前記貼付工程で貼付した前記剥離用シートを介して前記接着シートを保持する保持工程実施し、当該保持工程で保持した前記剥離用シートに張力を付与して前記被着体から前記接着シートを剥離するシート剥離方法において、
前記貼付工程において手方に当接する面側に高周波が印加されることで加熱して接着力を生じる、または、接着力が増加する高周波誘電接着剤層が設けられた前記剥離用シートおよび前記接着シートの少なくとも一方を用意する用意工程と
前記高周波誘電接着剤層に高周波を印加する高周波誘電加熱処理工程を実施することを特徴とするシート剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート剥離装置およびシート剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被着体に貼付された接着シートを剥離するシート剥離装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1に記載されたシート剥離装置は、ヒータ503によって接着テープTを保護シートFに貼付し、当該接着テープTに張力を付与して保護シートFをウェハWから剥離する構成とされ、特許文献2に記載されたシート剥離装置は、超音波溶着装置10によって他のシートSbをシートSaに貼付し、当該他のシートSbに張力を付与してシートSaを被貼着物Wから剥離する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-16862号公報
【文献】特開2011-228626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたシート剥離装置では、接着テープT(剥離用シート)を構成する基材シートを伝播させたヒータ503の熱で、当該剥離用シートを構成する接着剤層を加熱し、保護シートF(接着シート)に当該剥離用シートを貼付する構成なので、ヒータ503の温度調整や温度管理等の温度コントロールが難しく、当該温度コントロールが的確に行われていないと、接着剤層を良好に加熱することができず、接着シートの剥離中に剥離用シートが接着シートから剥がれ、当該接着シートをウェハW(被着体)から剥離できなくなる剥離不良を発生する可能性がある。また、特許文献2に記載されたシート剥離装置では、例えば、紙や布等の溶着ができない基材シートを備えたシートSa、Sb(接着シート)が採用された場合、接着シートを被貼着物W(被着体)から剥離できなくなる剥離不良を発生する。
【0005】
本発明の目的は、接着シートを被着体から剥離できなくなる剥離不良が発生することを防止することができるシート剥離装置および剥離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項に記載した構成を採用した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高周波誘電接着剤層の接着により剥離用シートを介して接着シートを保持し、当該剥離用シートに張力を付与して接着シートを被着体から剥離する構成としたので、従来のような温度コントロールの困難性を排除し、高周波誘電接着剤層を加熱して剥離用シートを良好に接着シートに接着させることができる。これにより、接着シートを被着体から剥離できなくなる剥離不良が発生することを防止することができる。また、溶着ができない基材シートを備えた接着シートが採用された場合にでも、高周波誘電接着剤層の接着により剥離用シートを介して接着シートを保持することができ、剥離不良が発生することを防止することができる。
さらに、冷却手段を備えれば、高周波誘電接着剤層が、加熱によって接着した後、冷却することによって強い接着力で接着する性質のものの場合、高周波誘電接着剤層を強制的に冷却し、自然冷却に比べて短時間で接着シートに剥離用シートを強い接着力で貼付することができる。
また、温度検知手段を備えれば、高周波誘電接着剤層が良好に接着する温度に達したことを確実に確認することができ、接着シートを被着体から剥離できなくなる剥離不良が発生することを確実に防止することができる。
さらに、高周波誘電接着剤層の温度が所定の第1温度以上となるまで、当該高周波誘電接着剤層に高周波を印加する構成とすれば、高周波誘電接着剤層が第1温度以上となることで良好に接着する性質のものの場合、剥離用シートを介して確実に接着シートを保持することができ、接着シートを被着体から剥離できなくなる剥離不良が発生することをより確実に防止することができる。
また、出力手段を備えれば、高周波誘電接着剤層が、加熱によって接着した後、冷却することによって強い接着力で接着する性質のものの場合、当該高周波誘電接着剤層が確実に所定の第2温度以下となったことを確認した後に、剥離用シートに張力を付与して被着体から接着シートを剥離することができ、剥離用シートが接着シートから剥がれることを確実に防止し、接着シートを被着体から剥離できなくなる剥離不良が発生することをより確実に防止することができる。
なお、本発明における接着または接着剤は、粘着または粘着剤を含むこととする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るシート剥離装置の側面図。
図2】(A)~(C)はシート剥離装置の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態におけるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸およびY軸は、所定平面内の軸とし、Z軸は、前記所定平面に直交する軸とする。さらに、本実施形態では、Y軸と平行な図1(AAおよびBBで示した図除く)中手前方向から観た場合を基準とし、図を指定することなく方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「左」がX軸の矢印方向で「右」がその逆方向、「前」がY軸と平行な図1中手前方向で「後」がその逆方向とする。
【0010】
図1において、シート剥離装置10は、被着体WKに貼付された接着シートASに剥離用シートPSを貼付し、当該剥離用シートPSを介して接着シートASを保持する保持手段20と、接着シートASに貼付した剥離用シートPSに張力を付与して被着体WKから接着シートASを剥離する張力付与手段30と、高周波が印加されて加熱した高周波誘電接着剤層HAを冷却する冷却手段40と、高周波誘電接着剤層HAの温度を検知する温度検知手段50と、所定の信号を出力する出力手段60とを備えている。なお、剥離用シートPSは、高周波が印加されることで加熱して接着力を生じる、または、接着力が増加する高周波誘電接着剤層HAと、基材シートBSとで構成され、接着シートASに当接する面側に高周波誘電接着剤層HAが設けられている。
【0011】
保持手段20は、巻回された剥離用シートPSを回転可能に支持するテープ支持手段21と、テープ支持手段21に支持された剥離用シートPSを当該テープ支持手段21とで挟み込み、当該剥離用シートPSに繰出力を付与する繰出手段22と、剥離用シートPSのリード端部を保持するリード保持手段23と、リード保持手段23が剥離用シートPSを保持することを補助する保持補助手段24と、高周波誘電接着剤層HAに高周波を印加する高周波誘電加熱処理手段25と、剥離用シートPSを切断する切断手段26とを備えている。
【0012】
テープ支持手段21は、軸21Aを中心に回動可能な回動アーム21Bと、その自由端側に支持され、巻回された剥離用シートPSを支持する支持ローラ21Cと、回動アーム21Bを繰出手段22方向に付勢する付勢手段としてのばね21Dとを備えている。
繰出手段22は、駆動機器としての回動モータ22Aと、その図示しない出力軸に支持され、支持ローラ21Cに支持された剥離用シートPSに回転力を付与する繰出ローラ22Bとを備えている。
リード保持手段23は、駆動機器としての直動モータ23Aの出力軸23Bに支持された収容手段23Cと、収容手段23Cの底面である吸着面23Dに形成された吸引孔23Eを介して吸着保持が可能な減圧ポンプや真空エジェクタ等の支持手段としての吸引手段23Fとを備えている。
保持補助手段24は、駆動機器としての直動モータ24Aと、その出力軸24Bに支持され、剥離用シートPSを吸着面23Dに当接させる補助ローラ24Cとを備えている。
高周波誘電加熱処理手段25は、収容手段23C内に収容された駆動機器としてのリニアモータ25Aと、そのスライダ25Bに支持され、剥離用シートPSを接着シートASに当接させる当接部材25Cと、当接部材25Cの内部に設けられ、高周波の電界を形成する高周波印加電極25D、25Eと、高周波電源や高周波発振機等によって所定の周波数、例えば、40.68MHzの高周波電流を高周波印加電極25D、25Eに供給する高周波発生装置25Fとを備えている。なお、高周波印加電極25D、25Eは、図1中AAで示す図のように、それぞれが1体ずつで構成されていてもよいし、同図中BBで示す図のように、それぞれが複数体ずつで構成されていてもよい。
切断手段26は、収容手段23C内に収容された駆動機器としてのリニアモータ26Aと、そのスライダ26Bに支持され、剥離用シートPSを切断可能な切断刃26Cとを備えている。
【0013】
張力付与手段30は、保持手段20と被着体WKとを相対移動させる移動手段31と、被着体WKから剥離された接着シートASを所定方向に誘導する誘導手段32とを備えている。
移動手段31は、駆動機器としてのリニアモータ31Aと、そのスライダ31Bに支持され、減圧ポンプや真空エジェクタ等の図示しない減圧手段によって吸着保持が可能な支持面31Cを有する支持部材としてのテーブル31Dとを備えている。
誘導手段32は、駆動機器としてのリニアモータ32Aと、そのスライダ32Bに支持され、被着体WKから剥離した接着シートASが掛け回される誘導ローラ32Cとを備えている。
【0014】
冷却手段40は、テーブル31D内に設けられたペルティエ素子41を備えている。
【0015】
温度検知手段50は、スタンド51を介してテーブル31Dに支持された温度測定器52を備えている。
【0016】
出力手段60は、電気または電波等の通信媒体によってシート剥離装置10の各部材に繋がった出力機器61を備え、高周波誘電接着剤層HAの温度が所定の第2温度以下となったことを温度検知手段50が検知すると、接着シートASに貼付した剥離用シートPSに張力を付与することを許可する電気信号や電波信号等の所定の信号を張力付与手段30に対して出力する構成になっている。
【0017】
以上のシート剥離装置10において、被着体WKに貼付された接着シートASを剥離する手順を説明する。
先ず、図1中実線で示す初期位置に各部材が配置されたシート剥離装置10に対し、当該シート剥離装置10の使用者(以下、単に「使用者」という)が同図のように剥離用シートPSをセットした後、図示しない操作パネルやパーソナルコンピュータ等の入力手段を介して自動運転開始の信号を入力すると、保持手段20が吸引手段23Fを駆動し、吸着面23Dでの剥離用シートPSの吸着保持を開始する。そして、人手または多関節ロボットやベルトコンベア等の図示しない搬送手段によって、接着シートASが上方となる状態で被着体WKが支持面31C上に載置されると、張力付与手段30が図示しない減圧手段を駆動し、被着体WKの吸着保持を開始する。次いで、張力付与手段30がリニアモータ31Aを駆動し、テーブル31Dを右方向に移動させ、図1中二点鎖線で示すように、接着シートASの左端部を当接部材25Cの直下に位置させる。
【0018】
その後、保持手段20が直動モータ24Aを駆動し、図1中二点鎖線で示すように、補助ローラ24Cを収容手段23Cの下方から退避させた後、回動モータ22Aおよび直動モータ23Aを駆動し、剥離用シートPSを繰り出しながら収容手段23Cを接着シートASの直上所定位置まで下降させる。次に、保持手段20がリニアモータ25Aを駆動し、図2(A)に示すように、当接部材25Cを下降させ、剥離用シートPSを接着シートASの左端部に当接させた後、高周波発生装置25Fを駆動し、高周波印加電極25D、25Eに高周波電流を供給する。すると、高周波印加電極25D、25Eによって高周波の電界が形成され、当該高周波の電界の中に位置する高周波誘電接着剤層HA自らが発熱し、その熱によって接着シートASに接着する。このとき、吸引手段23Fは、当接部材25Cで接着シートASに当接させた剥離用シートPS部分以外のリード端部が、接着シートASに当接して貼付することを防止する接着防止手段として機能する。
【0019】
高周波発生装置25Fが高周波電流の供給を開始して所定時間が経過すると、保持手段20が高周波発生装置25Fの駆動を停止した後、リニアモータ25Aを駆動し、当接部材25Cを剥離用シートPS上から退避させる。そして、温度検知手段50が温度測定器52を駆動し、高周波誘電接着剤層HAの温度を検知し、当該高周波誘電接着剤層HAの温度が所定の第1温度未満であった場合、保持手段20がリニアモータ25Aおよび高周波発生装置25Fを駆動し、当接部材25Cを下降させ、上記と同様の要領で高周波誘電接着剤層HAに再度高周波を印加する。このように、保持手段20は、高周波誘電接着剤層HAの温度が所定の第1温度以上となったことを温度検知手段50が検知するまで、高周波誘電接着剤層HAに高周波を印加する。次いで、高周波誘電接着剤層HAの温度が第1温度以上になったことを温度検知手段50が検知すると、保持手段20が吸引手段23Fの駆動を停止した後、直動モータ23Aを駆動し、収容手段23Cを初期位置に復帰させる。
【0020】
その後、冷却手段40がペルティエ素子41を駆動し、高周波誘電接着剤層HAを強制的に冷却し、高周波誘電接着剤層HAの温度が第2温度以下となったことを温度検知手段50が検知すると、出力手段60が出力機器61を駆動し、張力付与手段30に対して駆動を許可する所定の信号を出力する。所定の信号が入力されると、張力付与手段30がリニアモータ31A、32Aを駆動し、テーブル31Dを左方向に移動させるとともに、誘導ローラ32Cを右方向に移動させることで、図2(B)に示すように、接着シートASを被着体WKから剥離する。次いで、被着体WKから接着シートAS全体が剥離され、テーブル31Dが所定の位置に到達すると、張力付与手段30がリニアモータ31A、32Aおよび図示しない減圧手段の駆動を停止した後、保持手段20が直動モータ24Aおよび吸引手段23Fを駆動し、補助ローラ24Cを初期位置に復帰させ、吸着面23Dでの剥離用シートPSの吸着保持を開始する。その後、保持手段20がリニアモータ26Aを駆動し、図2(C)に示すように、切断刃26Cを昇降させて剥離用シートPSを切断し、人手または図示しない移送手段が接着シートASを回収する。次に、人手または図示しない搬送手段がテーブル31D上の被着体WKを次工程に搬送した後、各手段がそれぞれの駆動機器を駆動し、各部材を初期位置に復帰させ、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0021】
以上のような実施形態によれば、高周波誘電接着剤層HAの接着により剥離用シートPSを介して接着シートASを保持し、当該剥離用シートPSに張力を付与して接着シートASを被着体WKから剥離する構成としたので、従来のような温度コントロールの困難性を排除し、高周波誘電接着剤層HAを加熱して剥離用シートPSを良好に接着シートASに接着させることができる。これにより、接着シートASを被着体WKから剥離できなくなる剥離不良が発生することを防止することができる。また、溶着ができない基材シートBSを備えた接着シートASが採用された場合にでも、高周波誘電接着剤層の接着により剥離用シートPSを確実に接着シートASに接着させることができ、剥離不良が発生することを防止することができる。
【0022】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、高周波誘電加熱処理手段は、高周波誘電接着剤層に高周波を印加可能なものであれば、出願当初の技術常識に照らし合わせ、その技術範囲内のものであればなんら限定されることはない(その他の手段および工程も同じ)。
【0023】
例えば、保持手段20は、枚葉の剥離用シートPSを接着シートASに貼付する構成でもよい。また、保持手段20は、収容手段23Cを接着シートASの直上所定位置まで下降させた際、吸着面23Dで吸着保持している剥離用シートPSのリード端部を接着シートASに当接させてもよい。この場合、リード保持手段23は、剥離用シートPSを接着シートASに当接させる当接部材として機能し、吸着面23Dで吸着保持している剥離用シートPSのリード端部を接着シートASに当接させた状態で、保持手段20が高周波発生装置25Fを駆動し、高周波誘電接着剤層HAを接着シートASに接着させてもよい。
テープ支持手段21は、繰出手段22方向に付勢されることなく剥離用シートPSを支持してもよく、この場合、繰出手段22は、繰出ローラ22Bとで剥離用シートPSを挟み込むピンチローラ等を採用すればよい。
保持補助手段24は、補助ローラ24Cに代えてまたは併用して、棒状部材、板状部材、エアの吹き付け等で剥離用シートPSを吸着面23Dに当接させる構成を採用してもよいし、接着シートAS剥離後の剥離用シートPSをリード保持手段23のみで保持可能であれば、なくてもよい。
高周波誘電加熱処理手段25は、高周波印加電極25D、25Eのうち一方を1体とし、他方を複数体としてもよいし、高周波印加電極25D、25Eのうち一方を当接部材25Cの内部に設け、他方をテーブル31Dの内部やその他の位置に設けてもよいし、当接部材25Cの外部に高周波印加電極25D、25Eや高周波発生装置25Fを設けてもよいし、当接部材25Cの代わりに、気体を吹き付けて剥離用シートPSを接着シートASに当接させる構成を採用してもよいし、当接部材25Cで剥離用シートPSを接着シートASに押圧して、または押圧することなく当接させてもよいし、当接部材25Cがなくてもよい。当接部材25Cがない場合、剥離用シートPSが自重で接着シートASに当接すればよい。
高周波発生装置25Fが高周波印加電極25D、25Eに供給する高周波電流の周波数は、例えば、13.56MHz、27.12MHz、60MHz、100MHz、200MHz等、工業用に割り当てられた周波数でもよいし、その他、例えば、5MHz、127MHz、270MHz等でもよく、高周波と言われる例えば3MHz~300MHzの範囲さらには、その前後の範囲のどのような周波数でもよく、高周波誘電接着剤層HAに印可することで、当該高周波誘電接着剤層HAが加熱して接着力を生じる、または、接着力が増加する周波数であればどのような周波数でもよい。
高周波発生装置25Fが高周波印加電極25D、25Eに高周波電流を供給する所定時間は、シート剥離装置10が予め記憶していてもよいし、高周波誘電接着剤層HAの特性、特質、性質、材質、組成、構成、形状、寸法および重量や、雰囲気の条件や、その他の要因等を考慮して使用者が任意に決定してもよい。
高周波誘電加熱処理手段25および切断手段26の少なくとも一方は、収容手段23Cに収容されていなくてもよいし、収容手段23Cがなくてもよい。
切断手段26は、剥離用シートPSを切断しなくてもよいし、他の装置で剥離用シートPSを切断する場合、本発明のシート剥離装置10に備わっていなくてもよい。
【0024】
張力付与手段30は、テーブル31Dを移動させずにまたは移動させつつ保持手段20を移動させ、接着シートASに貼付された剥離用シートPSに張力を付与して被着体WKから接着シートASを剥離する構成としてもよいし、繰出手段22の駆動、リニアモータ31Aの駆動およびリニアモータ32Aの駆動のうち、少なくとも1つの駆動で、接着シートASに貼付された剥離用シートPSに張力を付与して被着体WKから接着シートASを剥離する構成としてもよい。
張力付与手段30は、本発明のシート剥離装置10に備わっていなくてもよく、この場合、接着シートASが貼付された被着体WKを他の装置で支持し、当該他の装置が保持手段20に対して被着体WKを相対移動させ、接着シートASに貼付された剥離用シートPSに張力を付与して被着体WKから接着シートASを剥離すればよい。
張力付与手段30は、接着シートASが貼付された被着体WKを他の装置で支持する場合、他の装置で支持した被着体WKを移動させずにまたは移動させつつ保持手段20を移動させ、接着シートASに貼付された剥離用シートPSに張力を付与して被着体WKから接着シートASを剥離する構成としてもよい。
誘導手段32は、誘導ローラ32Cに代えてまたは併用して、棒状部材、板状部材、エアの吹き付け等で接着シートASを誘導してもよいし、なくてもよい。
【0025】
冷却手段40は、高周波誘電接着剤層HAを加熱する際、当該高周波誘電接着剤層HAの周辺部である例えば被着体WKや接着シートASが、その熱によって変形したり破損したりするといった熱による悪影響を受けないように、周辺部を冷却するように構成してもよいし、当接部材25Cにおける高周波印加電極25D、25Eの下部またはその周辺に設けてもよいし、当接部材25Cやテーブル31Dの外部に設けてもよいし、ヒートパイプの冷却側で冷却するものでもよいし、冷風や外気を送風して冷却するものでもよもよいし、水やオイル等の液体またはジェル体で冷却するものでもよいし、高周波印加電極25D、25Eに高周波電流を供給する前、供給すると同時、供給した後または、供給が終了した後に高周波誘電接着剤層HAの冷却を開始してもよいし、温度検知手段50の検知結果とは関係なく、シート剥離装置10が予め冷却時間を記憶していてもよいし、高周波誘電接着剤層HAの特性、特質、性質、材質、組成、構成、形状、寸法および重量や、雰囲気の条件や、その他の要因等を考慮して使用者が冷却時間を任意に決定してもよいし、本発明のシート剥離装置10に備わっていなくてもよい。
【0026】
温度検知手段50は、サーモグラフィーや放射温度計等の非接触温度計、サーミスタや測温抵抗体等の抵抗温度計、熱電対、液柱温度計、バイタル式温度計、ガリレオ温度計等高周波誘電接着剤層HAの温度を検知できるものであれば何でもよいし、本発明のシート剥離装置10に備わっていなくてもよい。
温度検知手段50は、高周波発生装置25Fが高周波電流の供給を行っている最中に、高周波誘電接着剤層HAの温度を検知する構成としてもよく、この場合、保持手段20は、高周波誘電接着剤層HAの温度が第1温度以上となったことを温度検知手段50が検知した時点で、高周波発生装置25Fの駆動を停止するように構成してもよいし、高周波誘電接着剤層HAの温度が第1温度以上となったことを温度検知手段50が検知した時点から、当該第1温度以下にならないように制御しつつ所定の時間経過した後、高周波発生装置25Fの駆動を停止するように構成してもよい。
【0027】
出力手段60は、出力機器61として、コンピュータ、マイコンボード、シーケンサ等、所定の信号を出力可能なものであれば何が採用されてもよいし、本発明のシート剥離装置10に備わっていなくてもよい。
【0028】
前記実施形態では、接着シートASに当接する面側に高周波誘電接着剤層HAが設けられた剥離用シートPSと、当該剥離用シートPSに当接する面側に高周波誘電接着剤層HAが設けられていない接着シートASとが採用された場合のシート剥離装置10を例示したが、シート剥離装置10は、接着シートASに当接する面側に高周波誘電接着剤層HAが設けられていない剥離用シートPSと、当該剥離用シートPSに当接する面側に高周波誘電接着剤層HAが設けられた接着シートASとが採用されてもよいし、接着シートASに当接する面側に高周波誘電接着剤層HAが設けられた剥離用シートPSと、当該剥離用シートPSに当接する面側に高周波誘電接着剤層HAが設けられた接着シートASとが採用されてもよい。そして、このような高周波誘電接着剤層HAは、基材シートBSや接着シートASの全面に積層されていてもよいし、それらの一部であって1箇所または複数箇所に積層されていてもよい。
【0029】
高周波誘電接着剤層HAは、例えば、特願2017-73419で開示された誘電加熱接着フィルム、特願2016-210218で開示された高周波誘電接着剤層、特開2010-6908号公報で開示された接着層組成物、特開2014-37489号公報で開示された誘電加熱用の接着層組成物等、何ら限定されるものではないし、高周波が印加される前の段階において接着力がないものでもよいし、接着力があるものでもよく、高周波が印加されることで加熱して接着力を生じる、または、接着力が増加するものであればどのようなものでもよい。
第1温度は、高周波誘電接着剤層HAが接着シートASに良好に接着することができる温度であれば何度でもよく、シート剥離装置10が予め記憶していてもよいし、高周波誘電接着剤層HAの特性、特質、性質、材質、組成、構成、形状、寸法および重量や、雰囲気の条件や、その他の要因等を考慮して使用者が任意に決定してもよい。
第2温度は、高周波誘電接着剤層HAが冷却前の接着力に比べて強い接着力で接着することができる温度であれば何度でもよく、シート剥離装置10が予め記憶していてもよいし、高周波誘電接着剤層HAの特性、特質、性質、材質、組成、構成、形状、寸法および重量や、雰囲気の条件や、その他の要因等を考慮して使用者が任意に決定してもよい。
剥離用シートPSは、円形、楕円形、三角形や四角形等の多角形等、その形状に限定されることはないし、例えば、高周波誘電接着剤層HAだけの単層のものでもよいし、基材シートBSと高周波誘電接着剤層HAとの間に中間層を有するものでもよいし、基材シートBS側および高周波誘電接着剤層HA側の少なくとも一方に剥離シートを有する3層以上のものでもよいし、基材シートBSを高周波誘電接着剤層HAから剥離可能なものでもよいし、基材シートBSが樹脂、紙、布、金属等の材料で形成されたものでもよいし、基材シートBSが糸や紐状等のシート状でないもので形成されたものでもよい。
【0030】
本発明における接着シートASおよび被着体WKの材質、種別、形状等は、特に限定されることはない。例えば、接着シートASは、円形、楕円形、三角形や四角形等の多角形、その他の形状であってもよいし、感圧接着性、感熱接着性等の接着形態のものであってもよい。また、このような接着シートASは、例えば、接着剤層だけの単層のもの、基材シートと接着剤層との間に中間層を有するもの、基材シートの上面にカバー層を有する等3層以上のもの、更には、基材シートを接着剤層から剥離することのできる所謂両面接着シートのようなものであってもよく、両面接着シートは、単層又は複層の中間層を有するものや、中間層のない単層又は複層のものであってよい。また、被着体WKとしては、例えば、食品、樹脂容器、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハ、回路基板、光ディスク等の情報記録基板、ガラス板、鋼板、陶器、木板または樹脂板等、任意の形態の部材や物品なども対象とすることができる。なお、接着シートASを機能的、用途的な読み方に換え、例えば、情報記載用ラベル、装飾用ラベル、保護シート、ダイシングテープ、ダイアタッチフィルム、ダイボンディングテープ、記録層形成樹脂シート等の任意の形状の任意のシート、フィルム、テープ等であってよい。
【0031】
前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダおよびロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる。
前記実施形態において、ローラ等の回転部材が採用されている場合、当該回転部材を回転駆動させる駆動機器を備えてもよいし、回転部材の表面や回転部材自体をゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成してもよいし、回転部材の表面や回転部材自体を変形しない部材で構成してもよいし、支持(保持)手段や支持(保持)部材等の被支持部材を支持または保持するものが採用されている場合、メカチャックやチャックシリンダ等の把持手段、クーロン力、接着剤、粘着剤、磁力、吸引力、ベルヌーイ吸着、駆動機器等で被支持部材を支持(保持)する構成を採用してもよいし、切断手段や切断部材等の被切断部材を切断するものが採用されている場合、上記で例示したものに代えてまたは併用して、カッター刃、レーザカッタ、イオンビーム、火力、熱、水圧、電熱線、気体や液体等の吹付け等で切断するものを採用したり、適宜な駆動機器を組み合わせたもので切断するものを移動させて切断するようにしたりしてもよいし、付勢手段が採用されている場合、ばね、ゴム、樹脂等の弾性部材で構成してもよい。
【符号の説明】
【0032】
10…シート剥離装置
20…保持手段
25…高周波誘電加熱処理手段
40…冷却手段
50…温度検知手段
60…出力手段
AS…接着シート
HA…高周波誘電接着剤層
PS…剥離用シート
WK…被着体
図1
図2