(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】C3炭化水素留分のための選択的水素化触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/44 20060101AFI20220630BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20220630BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20220630BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20220630BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20220630BHJP
B01J 37/16 20060101ALI20220630BHJP
C07C 5/05 20060101ALI20220630BHJP
C07C 5/09 20060101ALI20220630BHJP
C07C 7/163 20060101ALI20220630BHJP
C07C 7/167 20060101ALI20220630BHJP
C07C 11/06 20060101ALI20220630BHJP
B01J 35/08 20060101ALI20220630BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220630BHJP
【FI】
B01J23/44 M
B01J35/10 301A
B01J35/10 301H
B01J37/02 101C
B01J37/08
B01J37/10
B01J37/16
C07C5/05
C07C5/09
C07C7/163
C07C7/167
C07C11/06
B01J35/08 Z
C07B61/00 300
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017226391
(22)【出願日】2017-11-27
【審査請求日】2020-11-24
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】マリカ ブアレグ
(72)【発明者】
【氏名】プリシラ アヴニール
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-225305(JP,A)
【文献】国際公開第2006/137358(WO,A1)
【文献】特開2013-248612(JP,A)
【文献】特表平08-511775(JP,A)
【文献】国際公開第98/010863(WO,A1)
【文献】特開昭56-005418(JP,A)
【文献】特公昭49-045995(JP,B1)
【文献】特開2000-061306(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0137433(US,A1)
【文献】国際公開第2016/037830(WO,A1)
【文献】特表2017-533085(JP,A)
【文献】特開昭59-162949(JP,A)
【文献】BERGERET, G. et al.,Particle Size and Dispersion Measurements,Handbook of Heretogeneous Catalysis,2008年,Vol.2,pp.738-765,<DOI:10.1002/9783527610044.hetcat0038>,HAL Id:hal-00308909
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07B 61/00
C07C 7/163 - 7/167
C07C 5/05 - 5/09
C07C 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的水素化反応のための触媒の調製方法であって、
該触媒は、パラジウムによって構成される活性相と、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナによって構成される群から選択される少なくとも1種の耐火性酸化物を含む多孔質担体とを含み、
・ 該触媒中のパラジウム含有率は、該触媒の全重量に対して0.0025重量%~1重量%の範囲内であり;
・ パラジウムの最低80重量%を含有する粒子縁部までの距離として定義される多孔質担体の周囲におけるクラスト厚は、25~450μmの範囲内であり;
・ 多孔質担体の比表面積は、70~160m
2
/gの範囲内であり;
・ パラジウムの金属分散Dは、20%未満であり、
該調製方法は、以下の工程:
a) アルカリ水酸化物およびアルカリ土類水酸化物によって構成される群から選択される少なくとも1種の水酸化物を含む水溶液(I)と、パラジウムの少なくとも1種の前駆体を含む水溶液(II)とを混合することによって水相中に酸化パラジウムまたは水酸化パラジウムのコロイド懸濁液を調製する工程;
b) 工程a)から得られた前記溶液を、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナによって構成される群から選択される少なくとも1種の耐火性酸化物を含む多孔質担体上に含浸させる工程;
c) 場合による、工程b)において得られた含浸済み多孔質担体を成熟させて、触媒前駆体を得る工程;
d) 工程b)またはc)において得られた触媒前駆体を、70℃~200℃の範囲内の温度で乾燥させる工程;
e) 場合による、工程d)において得られた乾燥済み触媒を、250℃~900℃の範囲内の温度で焼成する工程;
f) 工程d)において得られた乾燥済み触媒または工程e)において得られた焼成済み触媒の水熱処理を500℃~900℃の範囲内の温度で、空気の重量(kg)当たり150~5000グラムの範囲内の水を含む空気中において行う工程;
g) 場合による、還元ガスと接触させることにより工程f)の終わりに得られた触媒上で還元処理を行う工程
を含む、方法。
【請求項2】
パラジウムの金属分散Dは、18%以下である、請求項1に記載の
選択的水素化反応のための触媒の調製方法。
【請求項3】
前記触媒中のパラジウム含有率は、
前記触媒の全重量に対して0.025重量%~0.8重量%の範囲内である、請求項1または2に記載の
選択的水素化反応のための触媒の調製方法。
【請求項4】
多孔質担体の比表面積は、70~150m
2/gの範囲内であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の
選択的水素化反応のための触媒の調製方法。
【請求項5】
パラジウムの最低80重量%を含有する粒子縁部までの距離として定義される多孔質担体の周囲におけるクラスト厚は、50~450μmの範囲内であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の
選択的水素化反応のための触媒の調製方法。
【請求項6】
多孔質担体はアルミナであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の
選択的水素化反応のための触媒の調製方法。
【請求項7】
担体の全細孔容積は、0.1~1.5cm
3/gの範囲内であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の
選択的水素化反応のための触媒の調製方法。
【請求項8】
多孔質担体は、
前記触媒の全重量に対して0.0050重量%~0.25重量%の範囲内の硫黄を含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載の
選択的水素化反応のための触媒の調製方法。
【請求項9】
パラジウムは、4~10nmの範囲内の平均サイズを有する粒子状の形態であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の
選択的水素化反応のための触媒の調製方法。
【請求項10】
工程a)において、パラジウム前駆体は、塩化パラジウム、硝酸パラジウムおよび硫酸パラジウムによって構成される群から選択される、請求項
1~9のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項11】
工程f)において、工程d)で得られた乾燥済み触媒または工程e)で得られた焼成済み触媒の水熱処理は、600℃~800℃の範囲内の温度で、空気の重量(kg)当たり300~4500グラムの水を含む空気中において行われる、請求項
1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
選択的水素化のための方法であって、水蒸気分解および/または接触分解からのC3留分を
、請求項
1~
11のいずれか1つにより調製された触媒と接触させる工程を含み、該工程において、温度は、0℃~300℃の範囲内であり、その際の圧力は、0.1~10MPaの範囲内であり、液相で行われる方法について水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、0.1~10の範囲内であり、その際の毎時空間速度HSVは、0.1~100h
-1の範囲内であり、気相で行われる方法について水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、0.5~1000の範囲内であり、その際の毎時空間速度HSVは、100~40000h
-1の範囲内である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
選択的水素化方法は、最も不飽和な化合物を、完全な飽和、したがって、対応するアルカンの形成を避けながら対応するアルケンに転化することによってオイルカットのポリ不飽和化合物を変換するために用いられ得る。
【0002】
本発明の目的は、改善された性能を有する触媒並びにこの触媒の調製のための様式を提案することにあり、この触媒の性能は、水蒸気分解および/または接触分解からのC3炭化水素留分中に存在する不飽和炭化水素化合物の選択的水素化のための方法において非常に良好である。
【背景技術】
【0003】
水蒸気分解および/または接触分解からのC3留分の選択的水素化のための触媒は、一般的に、パラジウムをベースとしており、このパラジウムは、小金属粒子の形態にあり、耐火性酸化物であってよい担体上に沈着させられている。パラジウム含有率およびパラジウムの粒子のサイズは、触媒の活性および選択性に関して重要である基準の一部である。
【0004】
担体中の金属粒子の巨視的分布も、重要な基準を、特に、迅速で連続した反応、例えば、選択的水素化との絡みで構成する。一般的に、これらの元素は、欠陥のある活性および選択性の喪失をもたらし得る粒子内材料の移動による問題を回避するために担体の周囲におけるクラスト中に置かれなければならない。例として、特許文献1には、アセチレンおよびジオレフィンの選択的水素化のための触媒が記載され、この触媒は、パラジウムを含み、このパラジウムは、パラジウムの90%が触媒における250μm未満のクラスト中に導入されるように分配されている。
【0005】
さらに、選択的水素化触媒の選択性、特に、水蒸気分解および/または接触分解からのC3炭化水素留分中に存在する不飽和炭化水素化合物のための選択的水素化触媒の選択性を改善するために、従来技術において、第IB族から選択される第2金属、好ましくは銀を加えて、二金属性パラジウム-銀(Pd-Ag)触媒を得ることが提案された。このタイプの触媒は、特許文献2および3に記載されている。触媒の活性相に銀を加えることは、パラジウムの金属分散を低減させるという主要な効果を有するが、対照的に、触媒中の粒子サイズの分配を変更しない。
【0006】
本出願人は、驚くべきことに、パラジウム触媒であって、パラジウムの一部が、担体の周囲におけるクラスト中に分配されているものの性能が、前記触媒がパラジウムのみによって構成される活性相を含む、すなわち、それが、パラジウム以外にあらゆる金属、特に、銀を活性相中に含まず、前記触媒が、20%未満のパラジウムの金属分散を有し、十分に明示されているパラジウム含有率および比表面積を有する多孔質担体を有する場合に、水蒸気分解および/または接触分解からのC3炭化水素留分中に存在する不飽和炭化水素化合物の選択的水素化のための方法において有意に改善され得ることを発見した。このような触媒は、コロイド含浸工程並びに触媒の焼結を引き起こす特定の水熱処理工程を含む調製方法によって得られ得、これは、触媒中のパラジウムの金属分散を低減させるという効果を有し、予想外にも、選択性に関して向上した性能を有する触媒を得るという結果がもたらされる。
【0007】
実際に、本発明による触媒は、高い選択性を有し、モノオレフィンの完全水素化(C3留分の場合におけるプロパン)を制限しかつプロピレン収率の低減および触媒の早期の失活を引き起こすあらゆるオリゴマー化またはポリマー化の反応を制限しながらアセチレン化合物および/またはアレン化合物および/またはジオレフィン化合物の水素化を行うことを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2006/025302号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2882531号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2991197号明細書(特開2013-248612号公報)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の目的)
第1の局面において、本発明は、パラジウムによって構成される活性相と、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナによって構成される群から選択される少なくとも1種の耐火性酸化物を含む多孔質担体とを含む触媒であって、
・ 触媒中のパラジウム含有率は、触媒の全重量に対して0.0025重量%~1重量%の範囲内であり;
・ パラジウムの最低80重量%は、多孔質担体の周囲におけるクラスト中に分配され、前記クラストの厚さは、25~450μmの範囲内であり;
・ 多孔質担体の比表面積は、70~160m2/gの範囲内であり;
・ パラジウムの金属分配Dは、20%未満である
触媒に関する。
【0010】
好ましくは、パラジウムの金属分配Dは、18%以下である。
【0011】
有利には、触媒中のパラジウム含有率は、触媒の全重量に対して0.025重量%~0.8重量%の範囲内である。
【0012】
好ましくは、多孔質担体の比表面積は、70~150m2/gの範囲内である。
【0013】
有利には、パラジウムの最低80重量%は、多孔質担体の周囲におけるクラスト中に分配され、前記クラストの厚さは、50~450μmの範囲内である。
【0014】
好ましくは、多孔質担体はアルミナである。
【0015】
有利には、担体の全細孔容積は、0.1~1.5cm3/gの範囲内である。
【0016】
好ましくは、多孔質担体は、触媒の全重量に対して0.0050重量%~0.25重量%の範囲内の硫黄を含む。
【0017】
有利には、パラジウムは、4~10nmの範囲内の平均サイズを有する粒子の形態である。
【0018】
さらなる局面において、本発明による触媒の調製方法は、以下の工程:
a) アルカリ水酸化物およびアルカリ土類水酸化物によって構成される群から選択される少なくとも1種の水酸化物を含む水溶液(I)と少なくとも1種のパラジウムの前駆体を含む水溶液(II)とを混合することによって水相中に酸化パラジウムまたは水酸化パラジウムのコロイド懸濁液を調製する工程;
b) 工程a)から得られた前記溶液を、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナによって構成される群から選択される少なくとも1種の耐火性酸化物を含む多孔質担体上に含浸させる工程;
c) 場合による、工程b)において得られた含浸済み多孔質担体を成熟させて、触媒前駆体を得る工程;
d) 工程b)またはc)において得られた触媒前駆体を、70℃~200℃の範囲内の温度で乾燥させる工程;
e) 場合による、工程d)において得られた乾燥済み触媒を、250℃~900℃の範囲内の温度で焼成する工程;
f) 工程d)において得られた乾燥済み触媒または工程e)において得られた焼成済み触媒の水熱処理を、500℃~900℃の範囲内の温度で、空気の重量(kg)当たり150~5000グラムの範囲内の水を含む空気中において行う工程;
g) 場合による、還元ガスと接触させることにより、工程f)の終わりに得られた触媒上の還元処理を行う工程
を含む。
【0019】
有利には、工程a)において、パラジウム前駆体は、塩化パラジウム、硝酸パラジウムおよび硫酸パラジウムによって構成される群から選択される。
【0020】
有利には、工程f)において、工程d)で得られた乾燥済み触媒または工程e)で得られた焼成済み触媒の水熱処理は、600℃~800℃の範囲内の温度で、空気の重量(kg)当たり300~4500グラムの水を含む空気中において行われる。
【0021】
さらなる局面において、選択的水素化方法は、水蒸気分解および/または接触分解からのC3留分を、本発明による触媒または本発明により調製された触媒と接触させる工程を含み、この工程において、温度は、0℃~300℃の範囲内であり、圧力は、0.1~10MPaの範囲内であり、液相で行われる方法について、水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、0.1~10の範囲内であり、毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)は0.1~100h-1の範囲内であり、気相で行われる方法について、水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、0.5~1000の範囲内であり、毎時空間速度(HSV)は、100~40000h-1の範囲内である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
以下、化学元素の族は、CAS分類に従って提供される(CRC Handbook of Chemistry and Physics, published by CRC press, Editor-in-chief D.R. Lide, 81st edition, 2000-2001)。例として、CAS分類における第IB族は、新IUPAC分類の11族からの金属に対応する。
【0023】
(1.定義)
(粒子の金属分散(D))
粒子の分散は、無次元量であり、しばしば、百分率として表される。分散は、粒子がより小さくなるにしたがってより大きくなる。それは、R. Van HardeveldおよびF. Hartogによる出版物“The statistics of surface atoms and surface sites on metal crystals”, Surface Science 15, 1969, 189-230において定義されている。
【0024】
(パラジウムクラスト厚の定義)
担体上の金属相の分配を分析するために、クラスト厚は、キャスタン・マイクロプローブ(Castaing microprobe)(または電子マイクロプローブ微量分析)によって測定される。用いられた器具は、CAMECA SX100であり、4元素を同時に分析するために4つの結晶モノクロメータを備えている。キャスタン・マイクロプローブを用いる分析のための技術は、高エネルギー電子ビームを用いたその元素の励起の後に固体によって放射されるX線を検出することからなる。この特徴付けの目的のために、触媒の粒子が、エポキシ樹脂ブロック中にはめ込まれる。これらのブロックは、ビーズまたは押出物の径を有する断面が得られるまで研磨され、次いで、金属蒸発器中で炭素を沈着させることによって金属化される。電子プローブは、5個のビーズまたは押出物の径に沿って走査されて、固体の構成元素の平均分配プロファイルが得られる。
【0025】
パラジウムがクラストの形態で分配される場合、その局所濃度は、一般的に、触媒粒子の縁部から出発して内部の方にそれが測定される時に着実に低減する。局所パラジウム含有率がゼロになるところの粒子の縁部からの距離は、しばしば、再現可能な精密度で決定され得ない。パラジウム粒子の大部分において有意であるクラスト厚を測定するために、クラスト厚は、パラジウムの80重量%を含有する粒子縁部までの距離として定義される。
【0026】
それは、L. Sorbierらによる出版物“Measurement of palladium crust thickness on catalyst by EPMA”, Materials Science and Engineering 32 (2012)において定義されている。キャスタン・マイクロプローブを用いて得られた分配プロファイル(c(x))から出発して、半径rを有する粒子の縁部までの距離yの関数としての粒子中のパラジウムの累積量Q(y)を計算することが可能である。
【0027】
ビードの場合(すなわち、本発明によらない触媒の粒子の場合):
【0028】
【0029】
押出物の場合:
【0030】
【0031】
ここで、
r:粒子の半径;
y:粒子の縁部までの距離;
x:積算値変数(プロファイル上の位置)
である。
【0032】
濃度プロファイルは、x=-r~x=+r(x=0は中心である)からの径に従うことが仮定される。
【0033】
Q(r)は、ここで、粒子中の元素の全量に対応する。以下の式がyについて数的に解かれる:
【0034】
【0035】
ここで、cは、厳密に正関数であり、Qは、厳密に増加関数であり、この式は、クラストの厚さである唯一解を有する。
【0036】
(2.触媒)
本発明は、パラジウムによって構成される活性相と、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナによって構成される群から選択される少なくとも1種の耐火性酸化物を含む多孔質担体とを含む触媒であって、
・ 触媒中のパラジウム含有率は、触媒の全重量に対して0.0025重量%~1重量%の範囲内、好ましくは0.025重量%~0.8重量%の範囲内、より好ましくは0.1重量%~0.75重量%の範囲内である;
・ パラジウムの最低80重量%は、多孔質担体の周囲におけるクラスト中に分配され、前記クラストの厚さは、100~450μmの範囲内、好ましくは125~300μmの範囲内、より好ましくは125~250μmの範囲内、一層より好ましくは125~225μmの範囲内である;
・ 多孔質担体の比表面積は、70~160m2/gの範囲内、好ましくは70~150m2/gの範囲内、より好ましくは80~140m2/gの範囲内である;
・ パラジウムの金属分散Dは、20%未満、好ましくは18%以下である
触媒に関する。
【0037】
パラジウムについての平均粒子サイズは、4~10nmの範囲内、好ましくは3~6nmの範囲内である。平均微結晶サイズは、粒子の金属分散(D)についての測定から、当業者に知られておりかつ“Analyse physico-chimiques des catalyseurs industriels” [Physico-chemical analyses of industrial catalysts(工業触媒の物理化学分析)], Chapter I, Technip Publications, Paris, 2001に記載されている分散-粒子サイズの関係式を適用することによって推定される。
【0038】
多孔質担体は、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナによって構成される群から選択される。より好ましくは、担体はアルミナである。アルミナは、考えられる結晶学的形態:単独のまたは混合物としてのアルファ、デルタ、シータ、カイ、ガンマ等のいずれかで存在してよい。好ましくは、担体は、アルファ、デルタおよびシータのアルミナから選択される。より好ましくは、アルファアルミナが選択される。
【0039】
多孔質担体の比表面積は、70~160m2/gの範囲内、好ましくは70~150m2/gの範囲内、より好ましくは80~140m2/gの範囲内である。BET比表面積は、窒素物理吸着によって測定される。BET比表面積は、Rouquerol F.; Rouquerol J.; Singh Kによって“Adsorption by Powders & Porous Solids: Principle, methodology and applications”, Academic Press, 1999において記載されたようなASTM規格D3663-03による窒素物理吸着によって測定される。
【0040】
担体の全細孔容積は、0.1~1.5cm3/gの範囲内、好ましくは0.2~1.4cm3/gの範囲内、より好ましくは0.25~1.3cm3/gの範囲内である。全細孔容積は、ASTM規格D4284-92による水銀ポロシメトリによって、ぬれ角140°で、例えば、Micromeritics(登録商標)からのAutopore(登録商標)IIIモデル器具を用いて測定される。
【0041】
本発明の一実施形態において、選択的水素化触媒のための担体は、高純度にメソ細孔性であり、すなわち、その細孔径は、2~50nmの範囲内、好ましくは5~30nmの範囲内、より好ましくは8~20nmの範囲内である。
【0042】
本発明による別の実施形態において、選択的水素化触媒の担体は、二峰性であり、第1峰は、メソ細孔性であり、すなわち、細孔径は、2~50nmの範囲内、好ましくは5~30nmの範囲内、より好ましくは8~20nm範囲内であり、第2峰は、マクロ細孔性であり、すなわち、細孔の径は、50nm超である。前記担体は、有利には、50~700nmの範囲内の細孔径を有する細孔について細孔容積:担体の全細孔容積の20%未満、好ましくは担体の全細孔容積の18%未満、特に好ましくは担体の全細孔容積の15%未満を有する。
【0043】
担体は、場合によっては、硫黄を含んでよい。担体中の硫黄含有率は、触媒の全重量に対して0.0050重量%~0.25重量%の範囲内であってよく、好ましくは、0.0075重量%~0.20重量%の範囲内である。
【0044】
本発明によると、多孔質担体は、ビーズ状、三葉状、押出物状、ペレット状または不規則かつ非球状の凝集体の形態にあり、該凝集体の特定の形状は、破砕工程の結果であり得る。大いに有利には、担体は、ビーズ状または押出物状の形態にある。一層より有利には、担体はビーズ状の形態にある。ビーズの径は、1mm~10mmの範囲内、好ましくは2~8mmの範囲内、より好ましくは2~6mmの範囲内である。
【0045】
(3.調製方法)
本発明は、触媒の調製方法にも関する。パラジウムの溶液は、当業者に知られている技術のいずれかを用いて担体上に沈着させられてよい。好ましくは、パラジウム溶液は、コロイド法を用いて沈着させられる。
【0046】
より特定的には、本発明による触媒の調製方法は、一般に、以下の工程:
a) アルカリ水酸化物およびアルカリ土類水酸化物によって構成される群から選択される少なくとも1種の水酸化物を含む水溶液(I)と、パラジウムの少なくとも1種の前駆体を含む水溶液(II)とを混合することによって水相中に酸化パラジウムまたは水酸化パラジウムのコロイド懸濁液を調製する工程;
b) 工程a)から得られた前記コロイド懸濁液を、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナによって構成される群から選択される少なくとも1種の耐火性酸化物を含む多孔質担体上に含浸させる工程;
c) 場合による、工程b)において得られた含浸済み多孔質担体を成熟させて、触媒前駆体を得る工程
d) 工程b)またはc)において得られた触媒前駆体を、70℃~200℃の範囲内の温度で乾燥させる工程;
e) 場合による、工程d)において得られた乾燥済み触媒を、250℃~900℃の範囲内の温度で焼成する工程;
f) 工程d)において得られた乾燥済み触媒または工程e)において得られた焼成済み触媒の水熱処理を、500℃~900℃の範囲内の温度で、空気の重量(kg)当たり150~5000グラムの範囲内の水を含む空気中において行う工程;
g) 場合による、還元ガスと接触させることにより工程f)の終わりに得られた焼成済み触媒上に還元処理を行う工程
を含む。
【0047】
種々の工程は、以下に詳細に説明される。
【0048】
(a)水相中の酸化パラジウムまたは水酸化パラジウムのコロイド懸濁液の調製)
コロイド懸濁液は、一般的に、水性媒体中のパラジウムカチオンの加水分解によって得られ、これにより、懸濁液中にパラジウムの酸化物または水酸化物の粒子が形成されるにいたる。
【0049】
アルカリ水酸化物またはアルカリ土類水酸化物の水溶液は、一般に、水酸化ナトリウムの水溶液、水酸化マグネシウムの水溶液によって構成される群から選択される。好ましくは、水溶液は、好んで、水酸化ナトリウムの水溶液である。
【0050】
パラジウム前駆体塩は、一般的に、塩化パラジウム、硝酸パラジウムおよび硫酸パラジウムによって構成される群から選択される。大いに好ましくは、パラジウムの前駆体塩は、硝酸パラジウムである。
【0051】
典型的には、パラジウムの少なくとも1種の前駆体塩を含む水溶液[以降において、溶液(II)とも称する]が適切な装置に供給され、次いで、少なくとも1種のアルカリ水酸化物またはアルカリ土類水酸化物を含む水溶液[以降において、溶液(I)とも称する]が続けられる。あるいは、溶液(I)および(II)は、同時に装置に注がれてよい。好ましくは、水溶液(II)が装置に注がれた後に、水溶液(I)が続けられる。
【0052】
コロイド懸濁液は、一般的に、0~20時間の範囲内の滞留時間にわたって装置中に残る。
【0053】
溶液(I)および(II)の濃度は、一般的に、コロイド懸濁液のpH:1.0~3.5を得るように選択される。それ故に、コロイド懸濁液のpHは、この滞留時間の間に、コロイド懸濁液の安定性に適合した量の酸または塩基を加えることによって改変されてよい。
【0054】
一般に、調製温度は、5℃~40℃の範囲内、好ましくは15℃~35℃の範囲内である。
【0055】
パラジウムの濃度は、好ましくは5~150ミリモル/リットル(mmol/L)の範囲内、より好ましくは8~80ミリモル/リットルの範囲内である。
【0056】
(b)工程a)において調製されたコロイド懸濁液を、含浸によって担体上、好ましくはアルミナ上に沈着させる工程)
工程1a)において調製されたコロイド懸濁液は、次いで、担体上に含浸させられる。
【0057】
担体は、場合によっては、含浸工程の前に一連の処理を経てよく、例えば、焼成処理または水和処理である。担体は、コロイド懸濁液の含浸の前に1種以上の金属元素をすでに含んでいてもよい。金属元素は、コロイド懸濁液に導入されてもよい。これらの金属元素は、従来の技術、または、本発明による方法を用いることのいずれかによって導入されてよい。
【0058】
コロイド懸濁液は、好ましくは、担体上に注がれる。好ましくは、担体上に含浸させられるコロイド懸濁液の容積は、細孔容積の0.9~1.1倍の範囲内である。この方法は、バッチ式の方法で、すなわち、コロイド懸濁液の調製の工程が、担体上への含浸の工程に先んじ、コロイド懸濁液の主要部分が含浸工程に全て一度に送られて、または、連続的に、すなわち、工程a)から得られた生成物が、コロイド懸濁液の滞留時間を調節した後に工程b)に連続的に送られて、のいずれかで行われてよい。
【0059】
溶液(I)および(II)が同時に、含浸させられることになる担体を含む帯域に連続的にオーバーフローするタンクに注がれる方法が、連続的方法の例として言及されてよい。
【0060】
(c)0.5~40時間の範囲内の期間にわたる、工程b)の間に含浸させられた担体の成熟(場合による工程))
含浸の後、含浸済み担体は、一般的には、0.5~40時間にわたって、好ましくは1~30時間にわたって湿潤状態で成熟させられる。より長い継続期間は除外されないが、必ずしも改善をもたらさない。
【0061】
(d)工程b)またはc)から得られた触媒前駆体の乾燥)
触媒前駆体は、一般的には、含浸の間に導入された水の全部または一部を除去するために、好ましくは50℃~250℃の範囲内、より好ましくは70℃~200℃の範囲内の温度で乾燥させられる。乾燥期間は、0.5時間~20時間の範囲内である。より長い継続期間は除外されないが、必ずしも改善もたらさない。
【0062】
乾燥処理は、一般的に、炭化水素、好ましくはメタンの燃焼からの空気中で、または、燃焼空気の重量(キログラム)当たり0~80グラムの水、5容積%~25容積%の範囲内の含有率の酸素および0~10容積%の範囲内の含有率の二酸化炭素を含む加熱された空気中で行われる。
【0063】
(e)燃焼空気中の工程d)から得られた乾燥済み触媒の焼成(場合による工程))
乾燥処理の後、触媒は、空気中、好ましくは、燃焼空気中、より好ましくは、空気の重量(kg)当たり40~80グラムの水と、5容積%~15容積%の範囲内の含有率の酸素と、4容積%~10容積%の範囲内の含有率のCO2とを含むメタンの燃焼からの空気中で焼成されてよい。焼成温度は、一般的に250℃~900℃の範囲内、好ましくは約300℃~約500℃の範囲内である。焼成期間は、一般的に0.5時間~5時間の範囲内である。
【0064】
(f)工程d)から得られた乾燥済み触媒または工程e)から得られた焼成済み触媒の水熱処理)
乾燥工程d)または焼成工程e)の後に、触媒は、空気中、好ましくは、空気の重量(kg)当たり150~5000グラムの範囲内、好ましくは300~4500グラムの範囲内、より好ましくは500~4000グラムの範囲内の水を含む燃焼空気中で水熱処理を経る。
【0065】
水熱処理の温度は、500℃~900℃の範囲内、好ましくは600℃~700℃の範囲内である。
【0066】
水熱処理の継続期間は、一般的に0.5~5時間の範囲内である。
【0067】
(g)工程f)から得られた担持された酸化物の、好ましくは気体水素を用いた還元(場合による工程))
触媒は一般的に還元される。この工程は、好ましくは、還元ガスの存在下に、現場内で、すなわち、接触変換が行われる反応器においてまたは現場外で行われる。この工程が行われる際の温度は、好ましくは80℃~180℃の範囲内、より好ましくは100℃~160℃の範囲内である。
【0068】
還元は、25容積%~100容積%の水素、好ましくは100容積%の水素を含む還元ガスの存在下に行われる。水素は、場合によっては、還元に不活性であるガス、好ましくはアルゴン、窒素またはメタンによって補充される。
【0069】
還元は、一般的に、温度上昇段階と、これに続く、一定温度段階とを含む。
【0070】
還元のための一定温度段階の継続期間は、一般的に、1~10時間の範囲内、好ましくは2~8時間の範囲内である。
【0071】
毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)は、時間当たりかつ触媒の容積(リットル)当たり還元ガス一般的に150~3000リットルの範囲内、好ましくは300~1500リットルの範囲内である。
【0072】
(触媒の使用)
本発明による触媒は、水蒸気分解および/または接触分解からのC3炭化水素留分中に存在する不飽和炭化水素化合物の選択的水素化のための方法において用いられてよい。本発明による選択的水素化方法の目的は、モノ不飽和炭化水素を水素化することなく水素化して、前記供給原料中に存在する前記ポリ不飽和炭化水素を取り除くことにある。より特定的には、本発明による選択的水素化方法の目的は、プロパジエンおよびメチルアセチレンを選択的に水素化することにある。
【0073】
それ故に、例えば、C3水蒸気分解留分は、以下の平均組成を有してよい:プロピレン90重量%程度、プロパジエンおよびメチルアセチレン3重量%~8重量%程度;残りは、必然的にプロパンである。
【0074】
所定のC3留分において、0.1重量%~2重量%のC2およびC4が存在してもよい。石油化学品およびポリマー化装置についてのこれらのポリ不飽和化合物の濃度に関する仕様は、非常に低い:化学品質プロピレンについてMAPD(methylacetylene and propadiene:メチルアセチレンおよびプロパジエン)20~30重量ppmおよびプロピレン95重量%超および「ポリマー化」品質についてMAPD10重量ppm未満、さらには、1重量ppm未満およびプロピレン99%超。
【0075】
選択的水素化方法のために用いられる技術は、例えば、ポリ不飽和炭化水素供給原料および水素を少なくとも1基の固定床反応器に上昇流または下降流として注入することを含む。前記反応器は、等温または断熱タイプのものであってよい。断熱反応器が好ましい。ポリ不飽和炭化水素供給原料は、有利には、反応器中の温度勾配を制限するように反応器の入口と出口の間に位置する反応器の種々のポイントへの、選択的水素化反応が行われる前記反応器から得られた流出物の1回以上の再注入によって希釈されてよい。本発明による選択的水素化方法の技術は、有利には、反応蒸留塔中または交換器-反応器中に少なくとも前記担持型触媒を設置することを含んでもよい。水素の流れは、水素化されるべき供給原料と同時におよび/または反応器の1以上の異なるポイントにおいて導入されてよい。
【0076】
C3留分の選択的水素化は、気相または液相で行われてよいが、好ましくは液相で行われる。液相反応は、エネルギーコストを低減させかつ触媒のサイクルタイムを長くするために用いられ得る。
【0077】
一般に、C3留分の選択的水素化が行われる際の温度は、0℃~300℃の範囲内、好ましくは20℃~100℃の範囲内であり、その際の圧力は、0.1~10MPaの範囲内、好ましくは0.5~5MPaの範囲内であり、液相で行われる方法について、その際の水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、0.1~10の範囲内であり、その際の毎時空間速度HSV(供給原料の容積流量対触媒の容積の比として定義される)は、0.1~100h-1の範囲内であり、気相で行われる方法についてその際の水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、0.5~1000の範囲内であり、その際の毎時空間速度HSVは、100~40000h-1の範囲内である。
【0078】
(実施例)
以下に提示される実施例は、本発明による触媒による選択的水素化の触媒活性における改善を実証することを目的とする。実施例1~4は、本発明に合致しない触媒(触媒C1~C4)の調製方法に関し、実施例5および6は、本発明に合致する触媒(触媒C5およびC6)の調製方法に関する。
【0079】
実施例7は、触媒C1~C6の金属分散Dの測定に関する。
【0080】
実施例8は、C3留分の選択的水素化反応におけるこれらの触媒の適用に関する。
【0081】
これらの実施例は、例証として提示され、本発明の範囲を決して制限するものではない。
【0082】
(実施例1:触媒C1(本発明に合致しない)の調製)
Pd酸化物のコロイド懸濁液の調製は、25℃で撹拌しながら、8.5重量%のパラジウムPdを含有する1.8gの硝酸パラジウムPd(NO3)2の溶液を、約45mLの脱塩水により希釈し、次いで、約10mLの水酸化ナトリウム溶液を加えて2.4のpHを得ることにより行われた。懸濁液は、次いで、アルミナ担体の細孔容積に相当する容積まで脱塩水により希釈された。この溶液は、次いで、アルミナ80g上に含浸させられた。このアルミナの比表面積は71m2/gであり、ビーズ状の形態に形付けされたものであった。乾燥処理の前の、3時間の期間にわたる含浸済み担体の成熟のための工程が空気中、密閉された湿潤媒体中で行われた。得られた固体は、空気中、20時間にわたって120℃で乾燥させられた。
【0083】
触媒C1は、空気中120℃で乾燥させられ、次いで、2時間にわたって450℃で、触媒の容積(リットル)当たりかつ時間当たり燃焼空気500リットルのHSVを有する燃焼空気の流れ中において焼成された。燃焼空気は、乾燥空気の重量(キログラム)当たり約60gの水を含有していた。
【0084】
この方法で調製された触媒C1は、触媒の全重量に対して0.19重量%のパラジウムを含んでいた。
【0085】
キャスタン・マイクロプローブによる触媒C1の特徴付けにより、Pdの80%は、約222μmの厚さを有するクラスト中に分配されていたことが示された。
【0086】
触媒C1のパラジウムの金属分散Dは26%であった。
【0087】
(実施例2:触媒C2(本発明に合致しない)の調製)
Pd酸化物のコロイド懸濁液の調製は、25℃で撹拌しながら、8.5重量%のパラジウムPdを含有する1.8gの硝酸パラジウムPd(NO3)2の溶液を、約45mLの脱塩水により希釈し、次いで、約10mLの水酸化ナトリウム溶液を加えて2.4のpHを得ることによって行われた。懸濁液は、次いで、アルミナ担体の細孔容積に相当する容積まで脱塩水により希釈された。この溶液は、次いで、アルミナ80g上に含浸させられた。このアルミナの比表面積は71m2/gであり、ビーズ状の形態に形付けされたものであった。乾燥処理前の、3時間の期間にわたる含浸済み担体の成熟のための工程が、空気中、密閉された湿潤媒体において行われた。得られた固体は、空気中20時間にわたって120℃で乾燥させられた。
【0088】
触媒C2は、空気中120℃で乾燥させられ、次いで、2時間にわたって650℃で、触媒の容積(リットル)当たりかつ時間当たり燃焼空気4000リットルのHSVを有する燃焼空気の流れ中において焼成された。燃焼空気は、乾燥空気の重量(キログラム)当たり約60gの水を含有していた。
【0089】
この方法で調製された触媒C2は、触媒の全重量に対して1.5重量%のパラジウムを含んでいた。
【0090】
キャスタン・マイクロプローブによる触媒C2の特徴付けにより、Pdの80%は、約500μmの厚さを有するクラスト中に分配されていたことが示された。
【0091】
触媒C2のパラジウムの金属分配Dは25%であった。
【0092】
(実施例3:触媒C3(本発明に合致していない)の(乾式含浸法による)調製)
硝酸パラジウムの水溶液の調製は、25℃で、8.5重量%のパラジウムを含有する3.5gの硝酸パラジウムの溶液を、アルミナ担体の細孔容積に相当する容積まで脱塩水により希釈することによって行われた。
【0093】
この溶液は、次いで、(乾式含浸法を用いて)アルミナ100グラム上に含浸させられた。このアルミナのSBETは、300m2/gであった。このアルミナは、3mmの平均径を有するビーズ状の形態であった。
【0094】
乾燥処理前の20時間の期間にわたる含浸済み担体の成熟のための工程が、空気中の密閉した湿潤媒体において行われた。得られた固体は、空気中2時間にわたって120℃で乾燥させられた。得られた触媒C3は、空気中120℃で乾燥させられ、次いで、2時間にわたって650℃で、触媒の容積(リットル)当たりかつ時間当たり燃焼空気3000リットルのHSVを有する燃焼空気の流れ中において焼成された。燃焼空気は、乾燥空気の重量(kg)当たり約4000gの水を含有していた。
【0095】
この方法で調製された触媒C3は、触媒の全重量に対して0.19重量%のパラジウムを含んでいた。
【0096】
キャスタン・マイクロプローブによる触媒C3の特徴付けにより、Pdの80%は、約500μmの厚さを有するクラスト中に分配されていたことが示された。
【0097】
触媒C3のパラジウムの金属分散Dは、30%であった。
【0098】
(実施例4:触媒C4(本発明に合致しない)の調製)
Pd酸化物のコロイド懸濁液の調製は、25℃で撹拌しながら、8.5重量%のパラジウムPdを含有する1.8gの硝酸パラジウムPd(NO3)2の溶液を、約45mLの脱塩水により希釈し、次いで、約10mLの水酸化ナトリウム溶液を加えて2.4のpHを得ることによって行われた。懸濁液は、次いで、アルミナ担体の細孔容積に相当する容積まで脱塩水により希釈された。この溶液は、次いで、アルミナ80g上に含浸させられた。このアルミナの比表面積は300m2/gであり、ビーズ状の形態に形付けされたものである。乾燥処理前の3時間の期間にわたる含浸済み担体の成熟のための工程が、空気中の密閉された湿潤媒体において行われた。
【0099】
得られた触媒C4は、空気中120℃で乾燥させられ、次いで、2時間にわたって650℃で、触媒の容積(リットル)当たりかつ時間当たり燃焼空気500リットルのHSVを有する燃焼空気の流れ中において焼成された。燃焼空気は、空気の重量(kg)当たり約4000gの水を含有していた。
【0100】
この方法で調製された触媒C4は、触媒の全重量に対して0.18重量%のパラジウムを含んでいた。
【0101】
キャスタン・マイクロプローブによる触媒C4の特徴付けにより、Pdの80%は、約210μmの厚さを有するクラスト中に分配されていたことが示された。
【0102】
触媒C4のパラジウムの金属分散Dは、23%であった。
【0103】
(実施例5:触媒C5(本発明に合致する)の調製)
Pd酸化物のコロイド懸濁液の調製は、25℃で撹拌しながら、8.5重量%のパラジウムPdを含有する1.8gの硝酸パラジウムPd(NO3)2の溶液を、約45mLの脱塩水により希釈し、次いで、約10mLの水酸化ナトリウム溶液を加えて2.4のpHを得ることによって行われた。懸濁液は、次いで、アルミナ担体の細孔容積に相当する容積まで脱塩水により希釈された。この溶液は、次いで、アルミナ80g上に含浸させられた。このアルミナの比表面積は90m2/gであり、ビーズ状の形態に形付けされたものである。乾燥処理前の3時間の期間にわたる含浸済み担体の成熟のための工程が、空気中の密閉した湿潤媒体において行われた。
【0104】
得られた触媒C5は、空気中120℃で乾燥させられ、次いで、2時間にわたって650℃で、触媒の容積(リットル)当たりかつ時間当たり燃焼空気500リットルのHSVを有する燃焼空気の流れ中において焼成された。燃焼空気は、空気の重量(kg)当たり約3500gの水を含有していた。
【0105】
この方法で調製された触媒C5は、触媒の全重量に対して0.18重量%のパラジウムを含んでいた。
【0106】
キャスタン・マイクロプローブによる触媒C5の特徴付けにより、Pdの80%は、約195μmの厚さを有するクラスト中に分配されていたことが示された。
【0107】
触媒C5のパラジウムの金属分散Dは、14%であった。
【0108】
(実施例6:触媒C6(本発明に合致する)の調製)
Pd酸化物のコロイド懸濁液の調製は、25℃で撹拌しながら、8.5重量%のパラジウムPdを含有する1.8gの硝酸パラジウムPd(NO3)2の溶液を約45mLの脱塩水により希釈し、次いで、約10mLの水酸化ナトリウム溶液を加えて2.4のpHを得ることにより行われた。懸濁液は、次いで、アルミナ担体の細孔容積に相当する容積まで脱塩水により希釈された。この溶液は、次いで、アルミナ80g上に含浸させられた。このアルミナの比表面積は150m2/gであり、ビーズ状の形態に形付けされたものである。乾燥処理前の3時間の期間にわたる含浸済み担体の成熟のための工程が、空気中の密閉した湿潤媒体において行われた。
【0109】
得られた触媒C6は、空気中120℃で乾燥させられ、次いで、2時間にわたって650℃で、触媒の容積(リットル)当たりかつ時間当たり燃焼空気500リットルのHSVを有する燃焼空気の流れ中において焼成された。燃焼空気は、空気の重量(kg)当たり約3500gの水を含有していた。
【0110】
この方法で調製された触媒C6は、触媒の全重量に対して0.30重量%のパラジウムを含んでいた。
【0111】
キャスタン・マイクロプローブによる触媒C6の特徴付けにより、Pdの80%は、約150μmの厚さを有するクラスト中に分配されていたことが示された。
【0112】
触媒C6のパラジウムの金属分散Dは、12%であった。
【0113】
(実施例7:触媒C1~C6の金属分散Dの測定)
金属分散の測定は、時間当たりかつ触媒の重量(グラム)当たり水素1リットル下に、300℃/hの温度上昇と150℃での2時間の一定温度段階還元されていた触媒上への一酸化炭素COの化学吸着によって行わた。触媒は、次いで、1時間にわたって150℃で、ヘリウム下にフラッシュ(flush)され、次いで、ヘリウム下に25℃に冷却された。
【0114】
CO化学吸着は、当業者に知られている通常のやり方に従って25℃で動力学的に行われ、化学吸着されたCOの容積がもたらされ、そこから、当業者は、化学吸着されたCOのモルの数を計算することができた。表面上のPd原子の数を計算するために表面上のPdの原子当たり1モルのCOの化学量論比が仮定された。分散は、触媒サンプル中に存在するPd原子の全てに対する表面Pd原子の百分率(%)として表される。触媒C1~C6のパラジウムについての金属分散Dは、下記の表1に示される。
【0115】
【0116】
(実施例8:C3水蒸気分解留分の選択的水素化のための触媒C1~C6の使用)
プロピレン92.47重量%、プロパン4.12重量%、メチルアセチレン(methylacetylene:MA)1.18重量%、プロパジエン(propadiene:PD)1.63重量%を含む供給原料が、触媒C1~C7により処理された。反応の前に、選択的水素化触媒は、水素の流れ中、160℃で2時間にわたって活性にされた。
【0117】
触媒25mLが、上昇流様式の管式反応器に置かれた。圧力は、30bar(3MPa)に維持され、温度は、27℃に保たれた。50h-1の毎時空間速度(HSV)が適用された。H2/MAPDのモル比は、0、5、10mol/molの間で変動させられた。供給原料および流出物の組成が、反応器出口において気相クロマトグラフィーによって連続的に測定された。気体オリゴマーは、装置の種々のフィルタによって捕捉されないオリゴマーとして規定され、クロマトグラフィーカラムによって検出された(6個までの炭素からなる)。触媒C1~C6の性能は、下記の表2において記録される。
【0118】
【0119】
触媒C5およびC6は、本発明に合致していた。それらの両方は、プロピレンについておよび気体オリゴマーの生成について非常に良好な選択性を有していた。最も選択的な触媒は、薄い、すなわち、450ミクロン未満のパラジウムクラスト並びに20%未満の分散を有するものである。
【0120】
これらの触媒は、70m2/g超かつ160m2/g未満の比表面積を有する担体上で調製された。これを超えると、触媒C4が大量のオリゴマーを発生させた実施例4において例証されるように担体の酸度がオリゴマー化反応を触媒し、触媒の早期のコーキングおよびこのもののより短い耐用期間につながるからである。あまりに高い比表面積および/またはあまりに高いパラジウム含有率並びにあまりに高いCO分配は、結果として、低い性能の触媒C1~C4をもたらし、本願において望まれない化合物である、あまりに多いプロパンと、気体オリゴマーとが生じ、気体オリゴマーの含有率は、より多くのオリゴマーとあまりに多くのコークの生成の兆候であり、これにより、触媒の耐用期間および水素化装置の適正な操作が損なわれる。