(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】光射出装置及びLED基板
(51)【国際特許分類】
H01L 33/64 20100101AFI20220630BHJP
【FI】
H01L33/64
(21)【出願番号】P 2017233126
(22)【出願日】2017-12-05
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】596099446
【氏名又は名称】シーシーエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 顕治
(72)【発明者】
【氏名】戸川 拓三
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-016093(JP,A)
【文献】特開2006-165279(JP,A)
【文献】特開2013-045782(JP,A)
【文献】特開平01-187956(JP,A)
【文献】特開2015-103751(JP,A)
【文献】特開平06-260723(JP,A)
【文献】特開2013-149947(JP,A)
【文献】特開2016-219779(JP,A)
【文献】特開2003-092428(JP,A)
【文献】特開2014-150199(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0338878(US,A1)
【文献】中国実用新案第203386751(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01L 23/29
H01L 23/34 -23/36
H01L 23/373-23/427
H01L 23/44
H01L 23/467-23/473
H01L 33/00 -33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣り合う少なくとも2つの基板と、
前記各基板の表面に設けられたLEDチップと、
前記各基板が放熱グリスを介して取り付けられる放熱部材とを具備し、
前記各基板の間に、又は少なくとも1つの前記基板の裏面から側面に亘って、前記放熱グリスが流れ込む逃げ空間が形成されており、
前記各基板が、空気が流通可能な隙間を介して前記放熱部材上に
密接して配置されており、
前記逃げ空間が、前記隙間に連通している光射出装置。
【請求項2】
前記各基板が、列状に配置されている請求項1記載の光射出装置。
【請求項3】
前記基板が、前記基板の側面と裏面とに亘って形成された切欠き部を有し、
前記切欠き部を形成する面が、前記逃げ空間を形成する請求項1又は2記載の光射出装置。
【請求項4】
前記切欠き部を形成する面が傾斜面である請求項3記載の光射出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光射出装置及び光射出装置に用いられるLED基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面にLEDチップを多数実装したLED基板(以下、単に基板という)には、LEDチップでの発熱が大きいことから、裏面に放熱部材が設けられており、基板から放熱部材への放熱性を高めるべく、基板の裏面や放熱部材には放熱グリスが塗布されることがある。
【0003】
特許文献1に示す光射出装置は、余剰な放熱グリスが基板とヒートシンクの間から押し出されて基板の表面に回り込むのを防ぐべく、ヒートシンクにおける基板が載置される面に凹溝を形成して、この凹溝に余剰な放熱グリスが流れ込むように構成されている。
【0004】
しかしながら、上述した構成では、ヒートシンクに形成された凹溝が基板により塞がれ、凹溝に放熱グリスが流れ込んだ際に空気の逃げ場がなくなるため、放熱グリスに空気が噛み込んだ状態となって放熱性の低下を招く。
一方、空気を逃がすためには、凹溝上に端部が位置するように基板を配置すれば、凹溝全体が基板によって塞がれるのを防止できるが、この方法では凹溝の位置によって基板の配置位置が限られ、基板の取付精度が要求されることとなり、組み立て性が悪くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決すべくなされたものであり、放熱性や組み立て性を損なうことなく、基板の表面に放熱グリスが回り込むのを防ぐことをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る光射出装置は、互いに隣り合う少なくとも2つの基板と、前記各基板の表面に設けられたLEDチップと、前記各基板が放熱グリスを介して取り付けられる放熱部材とを具備し、前記各基板の間に、又は少なくとも1つの前記基板の裏面から側面に亘って、前記放熱グリスが流れ込む逃げ空間が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
このような光射出装置であれば、隣り合う基板の間や、隣り合う基板の少なくとも一方の裏面から側面に亘って逃げ空間が形成されているので、この逃げ空間に、基板と放熱部材の間から押し出される放熱グリスが流れ込み、放熱グリスが基板の表面に回り込むのを防止することができる。そのうえ、逃げ空間が放熱部材側ではなく、基板の間や基板の端部に設けられているため、基板の配置位置が何ら限定されず、放熱グリスの回り込み防止との関係で、放熱部材に対する基板の取付精度が要求されることがない。したがって、組み立て作業の容易化を図ることもできる。
【0009】
基板を隣り合わせて配置する場合に、これらの基板の間に全く隙間が形成されないことはなく、どんなに密接させて配置したとしても隙間が形成される。したがって、逃げ空間が形成されていないと、このような隙間を介して基板の表面に放熱グリスが溢れ出るわけであるが、このような隙間と逃げ空間とがつながっていれば、放熱グリスを逃げ空間に溜め込みつつ、逃げ空間の空気をこの隙間から外部に抜くことが可能となる。これにより、放熱グリスに空気が噛み込むのを防止し、放熱性が低下するのを防止できる。そういった意味で、光射出装置は、前記各基板が、空気が流通可能な隙間を介して前記放熱部材上に隣接して配置されており、前記逃げ空間が前記隙間に連通していることが好ましい。ここで、隙間の大きさは何ら限定されるものではない。
【0010】
なお、具体的な基板の配置態様としては、例えば、前記各基板を列状に配置したものを挙げることができる。
【0011】
逃げ空間を容易に形成するためには、前記基板が、前記基板の側面と裏面とに亘って形成された切欠き部を有し、前記切欠き部を形成する面が、前記逃げ空間を形成することが好ましい。
【0012】
そして、切欠き部を簡単に形成するためには、前記切欠き部を形成する面が傾斜面であることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るLED基板は、表面にLEDチップが設けられるとともに、放熱グリスを介して放熱部材に取り付けられるLED基板であって、当該LED基板が少なくとも2つ互いに隣り合って配置された場合に、これらのLED基板の間に、又は当該LED基板の裏面から少なくとも一方の側面に亘って、前記放熱グリスが流れ込む逃げ空間が形成されるように構成されていることを特徴とするものである。
このようなLED基板であれば、上述した光射出装置と同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0014】
このように構成した本発明によれば、放熱性や組み立て性を損なうことなく、放熱グリスが基板の表面に回り込むことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の光射出装置の構成を模式的に示す図。
【
図2】同実施形態の逃げ空間の構成を模式的に示す図。
【
図3】同実施形態の放熱グリスが塗布された状態を説明するための図。
【
図4】同実施形態の放熱グリスの流れを説明するための図。
【
図5】変形実施形態の逃げ空間の構成を模式的に示す図。
【
図6】変形実施形態の逃げ空間の構成を模式的に示す図。
【
図7】変形実施形態の逃げ空間の構成を模式的に示す図。
【
図8】変形実施形態の逃げ空間の構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明に係る光射出装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
本実施形態の光射出装置100は、
図1に示すように、複数のLEDチップ1を実装した例えばCOBタイプのLED基板2(以下、単に基板2という)を列状に配置したライン光射出装置である。以下では、基板2の配列方向を長手方向という。
なお、本発明に係る光射出装置は、上述したものに限らず、例えばSMDタイプやCSPタイプのLED基板を用いても良いし、LED基板を面状に並べた面発光装置であっても良い。
【0018】
LEDチップ1は、例えば紫外光を射出するものであり、ここでは多数のLEDチップ1が基板2の表面21に敷き詰められている。具体的には、長手方向に沿って基板2の一端から他端に亘って並べられた列状のLEDチップ1が、長手方向と直交する方向(以下、短手方向ともいう)に複数列設けられている。
【0019】
基板2は、
図1及び
図2に示すように、例えば矩形状のものであり、列状に隣接して(本例では密接して)配置され、互いに隣り合う基板2の側面22が対面している。ここでいう密接配置とは、互いに隣り合う基板2の側面22同士が隙間なく面接触しているわけではなく、これらの側面22の間に空気が通り抜ける程度の僅かな隙間Gが形成された状態で配置されていることをいう。なお、基板2の形状は矩形状に限らず、例えば三角形状や多角形状であっても良い。
【0020】
本実施形態では、各基板2にLEDチップ1を保護するためのカバー3(例えばガラス板等)が、樹脂等の接着剤Zを介して設けられている。このカバー3は、平面視において長手方向は基板2とほぼ同じサイズであり、短手方向は基板2よりも短く、基板2と同様、列状に密接配置されて、互いに隣り合うカバー3の側面22が対面している。なお、これらのカバー3は必ずしも設ける必要はない。
【0021】
基板2は、
図2に示すように、LEDチップ1での発熱を放熱するための放熱部材4に取り付けられる。
放熱部材4は、基板2が載置される載置面41と、載置面41の反対側の面に設けられた複数の放熱フィン42とを有するヒートシンクである。
本実施形態の放熱部材4は長尺状のものであり、載置面41に複数の基板2が長手方向に沿って載置され、例えばネジ留めされる。
【0022】
然して、本実施形態の光射出装置100は、
図2~
図4に示すように、基板2と放熱部材4との間に放熱グリスXが塗布されており、互いに隣り合う少なくとも2つの基板2の間に、裏面23と放熱部材4との間から押し出された放熱グリスXが流れ込む逃げ空間Sが形成されている。なお、放熱グリスXは、放熱性及び粘性を有する流動体であり、
図2では説明の便宜上、放熱グリスの記載を省略してある。
【0023】
この逃げ空間Sは、上述した短手方向において、少なくとも基板2のLEDチップ1が搭載された搭載領域P(
図1参照)の下方に形成されており、本実施形態では、例えば、短手方向における基板2の一端から他端に亘って形成されている。
【0024】
より具体的に説明すると、逃げ空間Sは、
図2に示すように、互いに隣り合う基板2の間それぞれに形成されている。これらの逃げ空間Sは、互いに隣り合う基板2の側面22の間に形成された僅かな隙間Gを介して外部空間と連通している。
【0025】
本実施形態では、各基板2が、側面22と裏面23とに亘って形成された切欠き部5を有しており、この切欠き部5が上述した逃げ空間Sの一部をなしている。言い換えれば、切欠き部5を形成する切欠き面51、すなわち側面22と裏面23とを切り欠くことで形成された切欠き面51が、上述した逃げ空間Sを形成している。
【0026】
切欠き部5は、長手方向における基板2の一方側側面22と他方側側面22との両方に形成されている。ここでの切欠き面51は、裏面23側から表面21側に向かうに連れて徐々に外側に向かう傾斜面であり、側面22と裏面23との角部を斜めに切り欠くことで形成されたものである。なお、一方側側面22と他方側側面22の切欠き部5は同形状である。
【0027】
そして、隣り合う基板2の対向する側面22それぞれに形成された切欠き部5によって逃げ空間Sが形成される。より詳細には隣り合う基板2の一方に形成された切欠き面51、他方に形成された切欠き面51、及び放熱部材4の載置面41によって囲まれた空間が逃げ空間Sとなる。なお、長手方向に沿った両端側の逃げ空間Sは、1つの切欠き面51と載置面41とによって囲まれた空間である。
【0028】
次に、本実施形態の光射出装置100の組み立てについて
図3及び
図4を参照しながら簡単に説明する。
【0029】
まず、
図3に示すように、基板2の裏面23と放熱部材4の載置面41との一方又は両方に放熱グリスXを塗布する。ここでは、放熱部材4の載置面41に放熱グリスXを塗布した例を図示しているが、基板2の裏面23に放熱グリスXを塗布しても構わない。
【0030】
次に、
図4の上段に示すように、基板2を放熱部材4の載置面41に載置する。このとき、載置面41と基板2の裏面23との間から押し出された放熱グリスXは逃げ空間Sに流れ込もうとするので、放熱グリスXは基板2の外周に向かうことになる。つまり、逃げ空間Sは、放熱グリスXを基板2の外周に向かって導く形状をなしており、放熱グリスXは、基板2の側面22と切欠き面51たる傾斜面とからなる外側周面に向かうこととなる。ただし、逃げ空間Sの容積は、載置面41と基板2の裏面23との間から押し出されると見込まれる放熱グリスXの余剰量よりも大きく、必ずしも基板2の外側周面の全体に放熱グリスXが行き届くわけではない。
【0031】
そして、放熱グリスXが逃げ空間Sに流れ込むと、
図4の下段に矢印で示すように、逃げ空間Sの空気は、隣り合う基板2の側面22の間に形成された僅かな隙間Gから外部空間に抜けていく。これにより、基板2と載置面41との間に空気を介在させることなく、基板2を載置面41に載置することができる。
【0032】
その後、基板2を載置面41にネジ留めする。なお、複数の基板2を載置面41に並べ終えてから、それらの基板2を順次ネジ留めしても良いし、基板2を載置面41に載置してネジ留めする作業を順次繰り返しても良い。
【0033】
このように構成された光射出装置100によれば、基板2を隣接配置するだけで逃げ空間Sを形成することができる。そのうえ、逃げ空間Sに流れ込んだ放熱グリスXが基板2の外周に導かれるので、逃げ空間Sの空気は互いに隣り合う基板2の隙間Gから外部に抜けていく。
これにより、基板2と放熱部材4との間から押し出された放熱グリスXを逃げ空間Sに溜め込みつつ、逃げ空間Sの空気の逃げ場を確保することができるので、放熱グリスXが基板2の表面21に回り込むことを防ぎながらも、組み立て性を損なわない。
【0034】
また、隣り合う基板2の間それぞれに逃げ空間Sを形成しているので、載置面41に複数の基板2を列状に密接配置する際に押し出される放熱グリスXを、確実に逃げ空間Sに溜め込むことができる。
【0035】
さらに、切欠き面51を傾斜面としているので、側面22と裏面23とによって形成された角部を切り欠くことで簡単に切欠き部5を形成することができる。
【0036】
加えて、逃げ空間Sが、少なくとも基板2の搭載領域Pの下方に形成されているので、余剰な放熱グリスXが搭載領域Pにおいて基板2の表面21に溢れ出るのをより確実に防ぐことができる。これにより、LEDチップ1に放熱グリスが付着するのを防止できる。
【0037】
また、基板2と放熱部材4とが放熱グリスXによって密着していたとしても、切欠き部5に例えば工具や指などを引っ掛けることで基板2を簡単に剥がすことができ、例えば、基板2の着脱、交換などの作業が容易になる。
【0038】
そのうえ、切欠き部5を含めた各基板2の形状を同じにしているので、基板2の製造工程の工数を削減することができる。
【0039】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0040】
例えば、前記実施形態では、隣り合う基板2それぞれに切欠き部5が形成されていたが、
図5に示すように、例えば1つ置きの基板2に切欠き部5を形成するなど、必ずしも全ての基板2に切欠き部5を形成する必要はない。
【0041】
また、切欠き部5の形状は、前記実施形態に限らず種々変更して構わない。例えば、
図6に示すように、切欠き部5が、裏面23側から表面21側に向かうに連れて徐々に内側に向かう傾斜面と、この傾斜面と側面22との間に形成された平面とから形成されていても良い。
このような形状であれば、基板2の裏面23と放熱部材4との接触面を大きく確保しつつ、逃げ空間Sを形成することができる。
【0042】
そのうえ、前記実施形態では、長手方向における基板2の両側面22に切欠き部5が形成されていたが、
図7に示すように、何れか一方の側面にのみ切欠き部5が形成されていても良い。このような構成であっても、基板2の形状を同じにすることができるので、基板2の製造工程の工数を削減することができる。
【0043】
さらに、切欠き部5は、前記実施形態では基板2の側面22と裏面23とに亘って形成されていたが、基板2の表面21と裏面23とに亘って形成されていても良い。
【0044】
加えて、逃げ空間Sは、基板2の切欠き部5によって形成される必要はなく、例えば
図8に示すように、基板2そのものに設けられる、側面22と裏面23とを貫通した貫通孔6によって形成されていても良い。
【0045】
そのうえ、逃げ空間Sは、前記実施形態では短手方向における基板2の一端から他端に亘って形成されていたが、短手方向において部分的に形成されていても良い。具体的には、搭載領域Pの下方にのみ逃げ空間Sを形成しても良いし、搭載領域Pの下方には形成することなく、短手方向における基板2の一端部及び他端部の両方又は一方に逃げ空間Sを形成しても良い。
【0046】
LEDチップ1は、前記実施形態では紫外光を射出するものであったが、赤外光や可視光を射出するものであっても良い。
【0047】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0048】
100・・・光射出装置
1 ・・・LEDチップ
2 ・・・基板
4 ・・・放熱部材
22 ・・・側面
G ・・・隙間
23 ・・・裏面
X ・・・放熱グリス
S ・・・逃げ空間
5 ・・・切欠き部
51 ・・・切欠き面