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特許7097185空洞内撮影装置およびコンクリート基礎の検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】空洞内撮影装置およびコンクリート基礎の検査方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 49/00 20060101AFI20220630BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20220630BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20220630BHJP
   G01N 21/954 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
E21B49/00
G01B11/30 A
G01N21/84 A
G01N21/954 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018013024
(22)【出願日】2018-01-29
(65)【公開番号】P2019131982
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】520304996
【氏名又は名称】四国電力送配電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(73)【特許権者】
【識別番号】592190545
【氏名又は名称】テクノ・サクセス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100144509
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋三
(72)【発明者】
【氏名】藤川 真人
(72)【発明者】
【氏名】須藤 昌明
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-119986(JP,A)
【文献】特開昭63-300958(JP,A)
【文献】特開2000-160978(JP,A)
【文献】特開2009-160780(JP,A)
【文献】特開2006-022540(JP,A)
【文献】特開2000-145350(JP,A)
【文献】米国特許第05790185(US,A)
【文献】特開平06-094452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 49/00
G01B 11/30
G01N 21/84
G01N 21/954
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞内に挿入されて該空洞内を撮影する装置であって、
軸方向に延びた、断面の最大径が前記空洞の直径とほぼ同一となるように形成されたケース部と、
該ケース部における先端部に設けられた該ケース部先端より前方を撮影する前方撮影部と、
該前方撮影部よりも後方に設けられた、空洞内壁を撮影する側方撮影部と、を備えており、
該側方撮影部と前記前方撮影部とが、
それぞれ別々に画像を撮影し得るようになっており、
前記ケース部は、
前記前方撮影部および前記側方撮影部をそれぞれ保持する、2つの円環プレート群と、
該2つの円環プレート群の中心軸が同軸となるように該2つの円環プレート群を連結する複数枚の板状の連結フレームと、を有しており、
前記円環プレート群は、
板状かつ円環状である複数枚の円環プレートと、
該複数枚の円環プレートをその中心が該円環プレート群の中心軸上に位置するように中心軸方向に沿って間隔を空けた状態で連結する複数枚の板状のフレームプレートと、を備えており、
該複数枚のフレームプレートは、
その長手方向が該円環プレート群の中心軸と平行であって、該円環プレート群の中心軸方向から見たときに該円環プレート群の中心軸に対して放射状となるように配設されており、かつ、外端縁が前記複数枚の円環プレートの外端縁より突出した状態かつ外端縁から該円環プレート群の中心軸までの距離が同じ距離となるように配設されており、
前記複数枚の連結フレームは、
その長手方向が該円環プレート群の中心軸と平行であって、該円環プレート群の中心軸方向から見たときに該円環プレート群の中心軸に対して放射状となるように配設されており、かつ、外端縁が前記複数枚の円環プレートの外端縁より突出した状態かつ外端縁から該円環プレート群の中心軸までの距離が前記複数枚のフレームプレートの外端縁から該円環プレート群の中心軸までの距離と同じ距離となるように配設されており、
前記前方撮影部および前記側方撮影部は、
前記2つの円環プレート群の前記複数枚のフレームプレートで囲まれた内部空間内にそれぞれ配設されている
ことを特徴とする空洞内撮影装置。
【請求項2】
前記ケース部は、
その断面の最大径が前記空洞の直径とほぼ同一となるように形成されており、
前記側方撮影部は、
光軸が前記ケース部の中心軸と略同軸となるように配置されたカメラと、
該カメラの前面側に配置され、該カメラの光軸と交差する反射面を有する反射鏡と、を備えており、
該ケース部内の空間と該ケース部外の空間との間を連通する観測窓が設けられており、
該観測窓は、
前記反射鏡の反射面の反射を利用して前記カメラが空洞の内壁を撮影し得る位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の空洞内撮影装置。
【請求項3】
前記空洞内に液体を供給する液体供給装置を備えている
ことを特徴とする請求項1または2記載の空洞内撮影装置。
【請求項4】
前記液体供給装置が、
前記ケース部に一端が配置された送液管と、
該送液管の他端から液体を供給する液体供給部と、を備えている
ことを特徴とする請求項3記載の空洞内撮影装置。
【請求項5】
コンクリート基礎に形成された、直径が32~40mmの空洞内を撮影する装置であり、外径が空洞の直径よりも0.5~4mm小さくなるように形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の空洞内撮影装置。
【請求項6】
前記コンクリート基礎が底部から上部に向かって断面積が小さくなるように形成されており、
前記空洞が、鉛直方向に対して斜めになっている孔である
ことを特徴とする請求項5記載の空洞内撮影装置。
【請求項7】
コンクリート基礎の表面から孔を形成し、
コンクリート基礎の表面に形成された孔の開口から請求項1または2記載の空洞内撮影装置を挿入し、
空洞内撮影装置を孔に沿って移動させて、孔の内面を撮影する
ことを特徴とするコンクリート基礎の検査方法。
【請求項8】
コンクリート基礎が底部から上部に向かって断面積が小さくなるように形成されており、
コンクリート基礎に鉛直方向に対して斜めに直径が32~40mmの孔を形成する
ことを特徴とする請求項7記載のコンクリート基礎の検査方法。
【請求項9】
孔内に気体を送風して孔の内壁を乾燥させた後、請求項1または2記載の空洞内撮影装置を孔内に挿入する
ことを特徴とする請求項7または8記載のコンクリート基礎の検査方法。
【請求項10】
一端が孔の内底面近傍に位置するように送気管を孔内に挿入し、送気管の他端から気体を供給する
ことを特徴とする請求項7、8または9記載のコンクリート基礎の検査方法。
【請求項11】
請求項1乃至5のいずれかに記載の空洞内撮影装置を孔内に挿入した状態で、孔内に液体を供給する
ことを特徴とする請求項7、8、9または10記載のコンクリート基礎の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空洞内撮影装置およびコンクリート基礎の検査方法に関する。さらに詳しくは、コンクリート製の基礎や橋脚、外壁などの建造物に形成された空洞内の状況を検査する空洞内撮影装置およびコンクリート基礎の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤やコンクリート製の基礎等(以下地盤等という)の状況を確認する方法としてボーリング調査が実施される場合がある。ボーリング調査では、地盤等の表面から一定の深さまでの土壌等をパイプ等に取り込んで、取り込んだサンプル(ボーリングコア)を調査する。一方、ボーリングコアは実際の地盤等から除去されたものなので、実際の地盤に加わっている圧力などが無い状態のサンプルとなる。このため、ボーリングコアの直径がある程度大きければ、ボーリングコアから、サンプルの各位置での土質等や地盤等内のひび割れの有無やひび割れの位置は把握できる可能性はある。しかし、直径が小さいボーリングコアでは、コア除去時のカッターの力でコアが壊れてしまう場合がある。また、劣化したコンクリート基礎では、地盤等から除去されるとボーリングコアがその形状を維持できなくなる場合がある。すると、サンプルの各位置での土質等は把握できても、地盤等内のひび割れの有無やひび割れの位置を把握することはできない。
【0003】
地盤等内のひび割れなどの欠陥を確実に把握する方法として、ボーリングによって形成された孔にカメラを入れて孔の内壁面を撮影する方法がある。かかる方法に使用される装置、つまり、地盤等に形成された孔に挿入して内部を撮影する装置として、特許文献1に記載された装置が開発されている。この装置では、カメラと反射鏡とを備えたカメラ収納部と、側面に窓を有する筒状のヘッド部と、を備えており、カメラ収納部をヘッド部内に収納した状態で装置を孔に挿入して孔の壁面を撮影する構成となっている。具体的には、この装置では、カメラ収納部をヘッド部に入れた状態で孔に挿入すると、カメラの光軸が孔の軸方向と平行になるように配設されている。そして、反射鏡は、カメラ収納部をヘッド部に入れるとヘッド部の窓に対応した位置に配置されるようにカメラ収納部に取り付けられている。しかも、反射鏡は、その反射面がカメラの光軸に対して約45°となるように設けられている。このため、特許文献1の装置では、ヘッド部の窓を通して反射鏡の反射面に写っている孔の壁面をカメラによって撮影することができる。
【0004】
しかし、特許文献1の装置では、装置の側方に位置する孔の壁面しか観察することができないので、装置の前方に障害物などが存在した場合、障害物に装置が接触するまで障害物の有無を把握できない。すると、障害物と装置との接触によって装置が損傷したり、装置が孔内の障害物等に引っかかって装置を孔から取り除くことができなくなったりする可能性がある。
【0005】
そこで、装置の側方だけでなく、装置の前方も撮影できるようにした装置が開発されている(特許文献2参照)。特許文献2には、先端に凸面鏡を設け、その凸面鏡に対して接近離間できるようにカメラを設けた装置が開示されている。そして、特許文献2には、カメラを凸面鏡に接近させた状態では凸面鏡を介して孔の内壁を撮影でき、カメラを凸面鏡から離間した状態では凸面鏡の側方の空間から装置前方の状況を撮影できる旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-145350号公報
【文献】特開平6-94452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、特許文献2の技術では、カメラを凸面鏡から離間してもカメラの前方には凸面鏡が存在したままであり、装置前方が撮影できても限られた範囲しか撮影することができない。具体的には、カメラを凸面鏡から離間しても、凸面鏡よりもわずかに前方に位置する内壁しか撮影することができない。
【0008】
しかも、特許文献2の技術の場合、前方と側方を同時に確認することはできない。このため、前方視で孔の内壁の状況を概観した後、再度側方視で孔の内壁の状況を詳細に確認しなければならないので、検査時間を余分に必要とする。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、空洞内の撮影を迅速かつ短時間で実施できる空洞内撮影装置およびコンクリート基礎の検査方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明の空洞内撮影装置は、空洞内に挿入されて該空洞内を撮影する装置であって、軸方向に延びた、断面の最大径が前記空洞の直径とほぼ同一となるように形成されたケース部と、該ケース部における先端部に設けられた該ケース部先端より前方を撮影する前方撮影部と、該前方撮影部よりも後方に設けられた、空洞内壁を撮影する側方撮影部と、を備えており、該側方撮影部と前記前方撮影部とが、それぞれ別々に画像を撮影し得るようになっており、前記ケース部は、前記前方撮影部および前記側方撮影部をそれぞれ保持する2つの円環プレート群と、該2つの円環プレート群の中心軸が同軸となるように該2つの円環プレート群を連結する複数枚の板状の連結フレームと、を有しており、前記円環プレート群は、板状かつ円環状である複数枚の円環プレートと、該複数枚の円環プレートをその中心が該円環プレート群の中心軸上に位置するように中心軸方向に沿って間隔を空けた状態で連結する複数枚の板状のフレームプレートと、を備えており、該複数枚のフレームプレートは、その長手方向が該円環プレート群の中心軸と平行であって、該円環プレート群の中心軸方向から見たときに該円環プレート群の中心軸に対して放射状となるように配設されており、かつ、外端縁が前記複数枚の円環プレートの外端縁より突出した状態かつ外端縁から該円環プレート群の中心軸までの距離が同じ距離となるように配設されており、前記複数枚の連結フレームは、その長手方向が該円環プレート群の中心軸と平行であって、該円環プレート群の中心軸方向から見たときに該円環プレート群の中心軸に対して放射状となるように配設されており、かつ、外端縁が前記複数枚の円環プレートの外端縁より突出した状態かつ外端縁から該円環プレート群の中心軸までの距離が前記複数枚のフレームプレートの外端縁から該円環プレート群の中心軸までの距離と同じ距離となるように配設されており、前記前方撮影部および前記側方撮影部は、前記2つの円環プレート群の前記複数枚のフレームプレートで囲まれた内部空間内にそれぞれ配設されていることを特徴とする。
第2発明の空洞内撮影装置は、第1発明において、前記ケース部は、その断面の最大径が前記空洞の直径とほぼ同一となるように形成されており、前記側方撮影部は、光軸が前記ケース部の中心軸と略同軸となるように配置されたカメラと、該カメラの前面側に配置され、該カメラの光軸と交差する反射面を有する反射鏡と、を備えており、該ケース部内の空間と該ケース部外の空間との間を連通する観測窓が設けられており、該観測窓は、前記反射鏡の反射面の反射を利用して前記カメラが空洞の内壁を撮影し得る位置に設けられていることを特徴とする。
第3発明の空洞内撮影装置は、第1または第2発明において、前記空洞内に液体を供給する液体供給装置を備えていることを特徴とする。
第4発明の空洞内撮影装置は、第3発明において、前記液体供給装置が、前記ケース部に一端が配置された送液管と、該送液管の他端から液体を供給する液体供給部と、を備えていることを特徴とする。
第5発明の空洞内撮影装置は、第1乃至第4発明のいずれかにおいて、コンクリート基礎に形成された、直径が32~40mmの空洞内を撮影する装置であり、外径が空洞の直径よりも0.5~4mm小さくなるように形成されていることを特徴とする。
第6発明の空洞内撮影装置は、第5発明において、前記コンクリート基礎が底部から上部に向かって断面積が小さくなるように形成されており、前記空洞が、鉛直方向に対して斜めになっている孔であることを特徴とする。
(コンクリート基礎の検査方法)
第7発明のコンクリート基礎の検査方法は、コンクリート基礎の表面から孔を形成し、コンクリート基礎の表面に形成された孔の開口から第1または第2発明の空洞内撮影装置を挿入し、空洞内撮影装置を孔に沿って移動させて、孔の内面を撮影することを特徴とする。
第8発明のコンクリート基礎の検査方法は、第7発明において、コンクリート基礎が底部から上部に向かって断面積が小さくなるように形成されており、コンクリート基礎に鉛直方向に対して斜めに直径が32~40mmの孔を形成することを特徴とする。
第9発明のコンクリート基礎の検査方法は、第7または第8発明において、孔内に気体を送風して孔の内壁を乾燥させた後、第1または第2発明の空洞内撮影装置を孔内に挿入することを特徴とする。
第10発明のコンクリート基礎の検査方法は、第7、第8または第9発明において、一端が孔の内底面近傍に位置するように送気管を孔内に挿入し、送気管の他端から気体を供給することを特徴とする。
第11発明のコンクリート基礎の検査方法は、第7、第8、第9または第10発明において、第1乃至第5発明のいずれかに記載の空洞内撮影装置を孔内に挿入した状態で、孔内に液体を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、ケース部の前方の画像と側方の画像を同時に撮影できるので、ケース部前方の状況を確認しながら、空洞の内壁の状態を撮影できる。したがって、空洞内に障害物等が存在する状況において、空洞の内壁の状態を撮影しながら空洞内を移動させても、障害物と装置との接触によって装置が損傷したり、装置が孔内の障害物等に引っかかって装置を孔から取り除くことができなくなったりすることを防ぐことができる。また、前方撮影部で撮影された画像によって空洞の内壁の状態を大まかに把握した後、すぐに側方撮影部によって空洞の内壁を詳しく撮影できるので、撮影の精度と速度を向上することができる。また、空洞の内壁に凹凸などがあってもケース部が引っ掛かったりしないし、ケース部内部に異物が入ってもケース部外に排出することができる。したがって、空洞の内壁の撮影を安定して継続することができる。
第2発明によれば、ケース部を安定して空洞内に配置できるので、空洞が非鉛直であっても装置を安定して空洞内で移動させることができる。また、空洞の周方向のどの位置でも側方撮影部によってほぼ同じ条件で画像を撮影できるので、撮影画像を用いた検査の精度を高くすることができる。
第3、第4発明によれば、空洞内に濁った液体が溜まっていても、濁った液体を液体供給装置から供給される液体と置換できる。空洞内の液体が濁りの少ない液体になれば、液体を通して空洞内を撮影することができる。
第5、第6発明によれば、空洞を形成する際に除去されるコアが損傷しやすいものであっても、空洞内を撮影することによってコンクリート基礎のひび割れなどを把握することができる。
(コンクリート基礎の検査方法)
第7、第8発明によれば、コンクリート基礎に孔を形成し、その孔に撮影装置を入れて孔の内部を撮影するだけであるから、コンクリート基礎の内部の検査を簡単かつ短時間で実施できる。
第9発明によれば、空洞内壁の湿りを少なくできるので、空洞内壁に水分が存在する場合のようなカメラの照明によって空洞内壁がギラギラした映像となることを防ぐことができるから、孔内のひび割れなどを観察しやすくなる。
第10、第11発明によれば、空洞内に濁った液体が溜まっていても、空洞内の液体を濁りの少ない液体にできるので、液体を通して空洞内を撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の空洞内撮影装置1の概略説明図である。
図2】本実施形態の空洞内撮影装置1を側方から見た概略説明図である。
図3図2のIII―III線概略断面図である。
図4】(A)図3のIVA―IVA線概略断面図であり、(B)図3のIVB―IVB線概略断面図である。
図5】保持軸3を設けた本実施形態の空洞内撮影装置1の概略平面図である。
図6液体供給装置20を備えた空洞内撮影装置1の概略説明図である。
図7】コンクリート基礎Bに形成された空洞hを本実施形態の空洞内撮影装置1によって検査している状況の概略説図である。
図8】本実施形態の空洞内撮影装置1によってコンクリート基礎Bに形成された空洞hを撮影した際に撮影される画像の概略説明図であって、(A)は前方撮影画像であり、(B)は側方撮影画像である。
図9】(A)は送気管ABによって空洞hの内壁wを乾燥した後、本実施形態の空洞内撮影装置1によって空洞hの内壁wを検査する作業の概略説明図であり、(B)は液体供給装置20を備えた空洞内撮影装置1によって空洞hの内壁wを検査する作業の概略説明図である。
図10】本実施形態の空洞内撮影装置1によってコンクリート基礎Bに形成された空洞hを撮影した際に撮影される画像の概略説明図であって、(A)は内壁wが濡れている状態の画像であり、(B)は内壁wを乾燥させた後の画像である。
図11】本実施形態の空洞内撮影装置1によってコンクリート基礎Bに形成された空洞hを撮影した際に撮影される画像の概略説明図であって、(A)は空洞h内にコンクリート基礎とつながったひび割れ等から侵入した地下水が溜まった状態で撮影された画像であり、(B)は空洞h内に外部からきれいな水を供給しながら撮影された画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の空洞内撮影装置は、コンクリート基礎等に形成された空洞の内部を撮影する装置であって、側方と前方を同時に撮影できるようにしたことに特徴を有している。
【0014】
本発明の空洞内撮影装置によって撮影される空洞はとくに限定されない。例えば、コンクリートの基礎に形成された孔やコンクリートの壁面に形成された孔、構造物等に形成された孔等(以下、コンクリート基礎等に形成された孔という)の内部の撮影に使用することができる。一般的にコンクリートの状況を検査するために孔を形成する場合、孔の直径は66、86、116mmの3タイプが一般的である。このような大きさの孔の内部の撮影に本発明の空洞内撮影装置は使用できるし、孔の直径が116mmよりも大きい孔であっても、孔の内部の撮影に本発明の空洞内撮影装置を使用できる。
【0015】
一方、鉄筋コンクリート造の構造物、つまり、内部に構造筋が配筋されているような構造物の場合には、構造筋間の狭い隙間を通るように孔を形成する必要がある。かかる構造物において鉄筋に当たらないように(言い換えれば鉄筋を損傷しないように)孔を形成するには、上述したような一般的な孔よりも直径が小さい孔を形成する必要がある。例えば、直径が40mm以下の孔や、直径が32~35mm程度の孔を形成することが必要になる場合がある。かかる直径の孔でも、本発明の空洞内撮影装置であれば孔の内部の撮影に使用することができる。
【0016】
本発明の空洞内撮影装置は、コンクリート基礎等に水平に形成された孔や鉛直に形成された孔など、種々の孔の検査に使用できる。とくに、鉛直方向や水平方向に対して斜めに形成されている孔の内部を撮影する場合に、本発明の空洞内撮影装置を有効に使用することができる。つまり、コンクリート基礎のように、底部から上部に向かってその断面積が小さくなるように形成されている構造物では、構造筋間の隙間は必ずしも鉛直方向に並んで形成される訳ではない。つまり、鉛直方向の位置が変化すると、構造筋間の隙間は水平方向において若干ズレた位置に配置される場合がある。一方、コンクリート基礎にボーリングによって孔を形成する際には、構造筋を損傷しないように構造筋間の隙間を縫うように孔が形成される。すると、形成される孔は鉛直方向に対して斜めに形成されてしまう。しかも、このような傾斜した孔はその直径もあまり大きくできない。このような鉛直方向に対して斜めに形成された、通常のコンクリート検査よりも直径の小さい孔(例えば40mm以下の孔)の内部を検査する装置として、本発明の空洞内撮影装置は有効に利用することができる。
【0017】
また、孔の内部を撮影する目的もとくに限定されない。例えば、孔が形成された構造物の劣化を判断するために孔の内部を撮影してもよいし、地下水やコンクリート等の補修用注入物等が孔内壁面の開口部から流出する状況を確認するために孔の内部を撮影する場合もある。かかる目的の撮影にも本発明の空洞内撮影装置は有効に利用することができる。
【0018】
以下では、本発明の空洞内撮影装置によって、コンクリート基礎に形成された孔の内部を撮影して、コンクリートのひび割れなどの有無を検査する場合を代表として説明する。以下の説明では、本発明の空洞内撮影装置によって撮影される孔のことを空洞hという。
【0019】
(本実施形態の空洞内撮影装置1)
つぎに、本実施形態の空洞内撮影装置1の構造を、図面に基づいて説明する。
【0020】
(本実施形態の空洞内撮影装置1)
図1に示すように、本実施形態の空洞内撮影装置1は、空洞hの内部を撮影する撮影部が設けられた撮影装置2と、この撮影装置2に接続された制御部5と、を備えている。
【0021】
図2に示すように、この撮影装置2は略棒状に形成された装置であり、ケース部10(図1参照)によって保持された前方撮影部C1と、側方撮影部C2と、反射鏡Mと、を備えている。
【0022】
(ケース部10)
ケース部10は、その直径が内部を撮影する空洞hの直径よりもわずかに小さくなるように形成されたものである。例えば、直径が40mm以下や、直径が32~35mm程度の空洞hに挿入する場合であれば、ケース部10は、その直径D2(図4(A)参照)が空洞hの直径よりも、0.5mm~数mm程度(より好ましくは1~2mm程度)小さく形成される。つまり、空洞hの直径が32~35mm程度であれば、ケース部10は、その直径が28mm~34.5mm程度、好ましくは31~34mm程度に形成される。なお、ケース部10の直径D2と空洞hの直径との差(つまりクリアランス)は、上記範囲に限定されるものではなく、上記範囲よりも大きくてもよいし小さくてもよい。
【0023】
そして、前方撮影部C1や側方撮影部C2、反射鏡M、また、後述するコードCa,Cbは、撮影装置2を空洞h内部に挿入したときに空洞hの内壁wと接触しないようにケース部10に取り付けられる。つまり、ケース部10は、前方撮影部C1等を保護できる形状に形成されているが、詳細は後述する。
【0024】
(前方撮影部C1)
図2および図3に示すように、前方撮影部C1は、撮影装置2の先端部近傍に位置するようにケース部10に取り付けられている。この前方撮影部C1は先端面にカメラcが設けられており、カメラcを囲むようにLEDライト等の光源fが設けられている(図4(A)参照)。この前方撮影部C1は、カメラcが撮影装置2の前方を撮影できるように、その先端面がケース部10の先端開口に配置されている。つまり、カメラcが撮影装置2の前方を向いた状態となるように、前方撮影部C1はケース部10に取り付けられている。しかも、前方撮影部C1は、カメラcの光軸と撮影装置2の中心軸CLが同軸またはほぼ同軸となるように配設されている。この前方撮影部C1は、コードCaによって制御部5に接続されている(図1参照)。このコードCaは、撮影装置2の側方から出ないように撮影装置2の軸方向に沿って配線されており、撮影装置2の後端から外方に引き出されている(図2図3参照)。なお、コードCaは、側方撮影部C2や反射鏡Mと干渉しない位置に配線されている。例えば、側方撮影部C2や反射鏡Mの側方を通過するように、コードCaは配線されている。また、空洞h内は地下水等が侵入する場合が想定されるため、水中での撮影を行う場合は、前方撮影部C1および側方撮影部C2は防水性能を有するものが使用される。
【0025】
側方撮影部C2
図2および図3に示すように、側方撮影部C2は、前述した前方撮影部C1よりも後方に位置するようにケース部10に取り付けられている。例えば、図2および図3であれば、撮影装置2の軸方向の中間より後方に位置するようにケース部10に取り付けられている。この側方撮影部C2も、前方撮影部C1と同様に、先端面にカメラcが設けられており、カメラcを囲むようにLEDライト等の光源fが設けられている(図4(B)参照)。この側方撮影部C2も、カメラcが前方を撮影でき、かつ、その光軸と撮影装置2の中心軸CLが同軸またはほぼ同軸となるように配設されている。この側方撮影部C2は、コードCbによって制御部5に接続されている(図1参照)。このコードCbは、撮影装置2の軸方向に沿って配線されており、撮影装置2の後端から外方に引き出されている。
【0026】
(反射鏡M)
図1図3に示すように、側方撮影部C2の前方には反射鏡Mが設けられている。この反射鏡Mは、その反射面Maが側方撮影部C2のカメラcと向かい合った状態となるように設けられている。しかも、反射鏡Mは、その反射面Maの中心が撮影装置2の中心軸CL(つまり側方撮影部C2のカメラcの光軸)の延長線上に位置し、かつ、反射面Maが撮影装置2の中心軸CLに対して傾斜した状態となるように設けられている。例えば、反射面Maは、撮影装置2の中心軸CLに対する傾斜角度θが45度となるように設けられている。この反射面Maの傾斜角度θが45度であれば、側方撮影部C2のカメラcは、反射面Maを介して、撮影装置2の中心軸CLと直交する方向を撮影することができる。言い換えれば、反射面Maの位置における撮影装置2の真横の画像を側方撮影部C2のカメラcによって撮影することができる。
【0027】
また、反射鏡Mの大きさはとくに限定されないが、側方撮影部C2のカメラcが撮影する領域をできるだけ広くする上では、できるだけ大きい方が好ましい。例えば、反射鏡Mは、反射鏡Mの位置において側方撮影部C2のカメラcが撮影できる範囲よりも反射面Maが大きくなっていることが好ましい。
【0028】
一方、反射鏡Mは、空洞h内に撮影装置2を挿入した際に空洞hの内壁wとの干渉を防止する上では、ケース部10から突出する部分が無い大きさであればよい。しかし、図2および図3に示すように、反射鏡Mの側方に前方撮影部C1のコードCaを配置する場合には、反射鏡Mの側方に撮影部C1のコードCaを配置しても、撮影部C1のコードCaがケース部10の外面から突出しないようにできる程度の大きさが好ましい。もちろん、反射鏡Mをできるだけ大きくするために、切り欠きなどを設けて、切り欠きなどに撮影部C1のコードCaを配置してもよい。
【0029】
(制御部5)
制御部5は、コードCa,Cbによって前方撮影部C1および側方撮影部C2に接続されている。この制御部5は、前方撮影部C1および側方撮影部C2のカメラcや光源fに対して電力を供給したり、カメラcが撮影した画像を取得して記憶したりすることができる機能を有している。例えば、制御部5として、前方撮影部C1および側方撮影部C2の作動を制御する制御プログラムがインストールされたコンピュータ等を使用することができる。しかし、制御部5は、上記機能を有するものであればどのような機器でも使用することができる。
【0030】
制御部5は、前方撮影部C1のカメラcおよび側方撮影部C2のカメラcが画像を撮影するタイミングも制御している。例えば、制御部5は、前方撮影部C1のカメラcと側方撮影部C2のカメラcがそれぞれ別々に画像(つまり前方の画像と側方の画像)を撮影するように制御することができる。つまり、前方撮影部C1の撮影状況に係らず、側方撮影部C2は撮影装置2の側方を撮影するように制御してもよい。言い換えれば、前方撮影部C1と側方撮影部C2が、相互に無関係に画像を撮影するようにカメラcの作動を制御してもよい。もちろん、前方撮影部C1が画像を撮影するタイミングと側方撮影部C2が画像を撮影するタイミングとが連動するようにカメラcの作動を制御してもよい。
【0031】
また、制御部5は、カメラcが撮影した画像を表示できる表示部dと、この表示部dにリアルタイム画像や制御部5のメモリー等に記憶されている画像を再生して表示できる機能(表示再生機能)と、を有しているものが望ましい。とくに、空洞hを検査する場合には、表示部dと表示再生機能(とくにリアルタイム再生機能)を有していることが望ましい。この場合、空洞hの内壁wの大まかな状態を、前方撮影部C1のカメラcが撮影した画像を表示部dに表示させることによって把握できる。そして、空洞hの内壁wの状態を大まかに把握した後、側方撮影部C2のカメラcによって空洞hの内壁wを撮影できる。すると、側方撮影部C2のカメラcが撮影した画像を表示部dに表示させることによって空洞hの内壁wの状態を詳細に確認することができる。また、撮影装置2を空洞h内に挿入しているときに、前方撮影部C1のカメラcが撮影した画像を表示部dに表示させれば、前方の障害物(空洞hの内壁wの突起物や水や石などの堆積物など)を把握できる。すると、撮影装置2が障害物に衝突する等によって損傷したり、孔内の障害物に撮影装置2が引っかかり撮影装置2が取り除くことができなくなったりすることを未然に防止することができる。
【0032】
(保持軸3)
また、撮影装置2は、そのケース部10の後端に保持軸3が連結できるようになっている。具体的には、保持軸3は、その軸方向がケース部10の中心軸CLと平行になるように連結できるようになっている。例えば、ケース部10にナット部材10nを設けておき、保持軸3の先端に雄ネジを形成しておけば、保持軸3とケース部10とを連結できる(図5)。
【0033】
また、保持軸3は、複数本を同軸に連結できる構造を有していてもよい。具体的には、保持軸3の後端に雄ネジが形成されていれば、一の保持軸3の後端と他の保持軸3の先端とを、両端に雌ネジが形成されたナット部材(連結ナット)によって連結することができる。すると、保持軸3を延長することができる。例えば、1m程度の長さの保持軸3であっても、連結すれば所望の長さまで延長することができる。すると、複数本の保持軸3を使用すれば、コンクリート基礎Bに形成された5m以上もあるような深い空洞hに撮影装置2を挿入することができる。しかも、一本の保持軸3は短くできるので、保持軸3を搬送する際や保管しておく際に、保持軸3の取り扱い性や可搬性が低下することを防止できる。
【0034】
なお、保持軸3は、可搬性と取扱い性の低下を防ぎつつ、ある程度の長さにできるようにする上では、伸縮可能な構造を有するものを使用してもよい。例えば、複数の筒状の軸材をテレスコピック状に連結した構造を有する保持軸3を使用してもよい。
【0035】
また、保持軸3は必ずしも設けなくてもよい。例えば、空洞hが鉛直に形成されている場合であれば、紐やワイヤーなどで撮影装置2を吊るしても、撮影装置2を空洞h内で移動させることができる。また、クランプなどを有する軸で撮影装置2のフレーム部10を把持して、撮影装置2を空洞h内で移動させるようにしてもよい
【0036】
(本実施形態の空洞内撮影装置1を用いたコンクリート基礎の検査方法)
本実施形態の空洞内撮影装置1は、以上のような構成を有するので、コンクリート基礎に形成された空洞h内を撮影して、コンクリート基礎を検査することができる。
【0037】
まず、図7に示すように、検査対象となるコンクリート基礎Bの表面に開口を有し、その開口から内部に向かって空洞hを形成する。具体的には、先端に刃を有する筒状の部材をコンクリート基礎Bの表面に当てた状態から旋回させる等の方法によって、筒状の部材をコンクリート基礎Bに侵入させる。そして、ある程度の深さまで筒状の部材が侵入すると、筒状の部材をコンクリート基礎Bから抜き出す。すると、表面に開口を有しその開口から内部に向かって延びる空洞hをコンクリート基礎Bに形成することができる。なお、筒状の部材の内部には、空洞hとなった部分に存在していたコンクリート基礎Bが入っており(ボーリングコア)、このボーリングコアもコンクリート基礎Bの検査に使用することができる。
【0038】
空洞hの深さが検査する深さに到達していない場合には、より長尺な筒状の部材や、筒状の部材を連結したもの等を形成された空洞hに挿入して、上記と同様の作業を実施し、より深い空洞hを形成する。
【0039】
そして、当初予定していた深さまでほぼ真っ直ぐに延びる空洞hが形成されると、以下の手順で空洞内撮影装置1による撮影を実施する。なお、ほぼ真っ直ぐに延びる空洞hとは、本実施形態の空洞内撮影装置1が移動できる程度の直線性を有している空洞hを意味している。例えば、全長に渡って中心軸が同軸となっている空洞h、長さ方向において位置によって空洞hの断面の中心が若干ずれている部分がある空洞h、若干曲がっている部分がある空洞h、の全てを、ほぼ真っ直ぐに延びる空洞hは含んでいる。
【0040】
まず、撮影装置2の前方撮影部C1および側方撮影部C2のコードCa,Cbを制御部5に連結する。
ついで、保持軸3を撮影装置2に連結する。このとき、必要であれば、複数本の保持軸3を連結しておく。
【0041】
撮影装置2に保持軸3を連結すると、保持軸3を持って、撮影装置2をその先端から空洞h内に入れていく(図7参照)。このとき、ケース部10の直径は空洞hの直径よりもわずかに小さいので、撮影装置2は、空洞h内でがたつくことなく空洞h内をスムースに移動する。
【0042】
空洞h内に撮影装置2を進行させながら、撮影装置2の前方撮影部C1による撮影を実施し、制御部5の表示部dに前方撮影部C1の画像を表示させれば、空洞h内の状況を確認しながら、撮影装置2を空洞hに侵入させていくことができる。すると、空洞hの内壁wに骨材などが露出していたり、空洞hを形成する際に発生した破片などが空洞h内に存在したりしても、事前にこれらの物体の存在を把握できる。したがって、これらの物体に撮影装置2が接触することを未然に防ぐことができる。
【0043】
一方、コンクリート基礎B等の検査では、空洞hの内壁wに亀裂などが存在していないかを検査するが、その場合、前方撮影部C1のカメラcで撮影した画像では亀裂等の存在までは把握できても、亀裂の詳細な状況までは十分に把握できない場合がある。例えば、空洞hの内径が40mm以下の場合であれば、使用できる前方撮影部C1のカメラcもせいぜい口径が10mm程度のものしか使用できない。かかる口径のカメラは画角が小さいので、空洞hの内壁wを撮影できるものの、内壁wの鮮明な画像を撮影することは難しい。例えば、亀裂の幅が0.2mm程度以下であれば、前方撮影部C1のカメラcの画像で亀裂の存在は確認できるものの、亀裂の状態までは把握できない。
【0044】
しかし、撮影装置2は側方撮影部C2を備えており、反射鏡Mの反射面Maを介して側方撮影部C2のカメラcによって側面を撮影できる。すると、側方撮影部C2のカメラcは、その正面に空洞hの内壁wがある場合とほぼ同様の状態で空洞hの内壁wを撮影できる。したがって、側方撮影部C2のカメラcの口径が10mm程度であっても、空洞hの内壁wの鮮明な画像を撮影することができる(図8(B)参照)。言い換えれば、直径が40mm以下の空洞hであっても、撮影装置2によって空洞hの内壁wの鮮明な画像を撮影することができる。
【0045】
したがって、前方撮影部C1のカメラcの画像によって亀裂の存在を確認すると、その位置に側方撮影部C2のカメラcの撮影領域が位置するように撮影装置2を移動させる。そして、側方撮影部C2のカメラcによって空洞hの内壁wの画像を撮影すれば、亀裂の状態を詳細に把握することができる。
【0046】
しかも、空洞hの内壁wの亀裂を前方撮影部C1のカメラcで撮影してから、そのまま撮影装置2を空洞hに沿って移動させるだけで、側方撮影部C2のカメラcにより亀裂を撮影できる。すると、亀裂発見から詳細撮影までの時間を短くできるので、空洞h内を検査する速度を速くできる。空洞h内を検査する速度が速くなれば、コンクリート基礎Bの検査全体の時間も短くできるという利点も得られる。
【0047】
そして、保持軸3を連結していけば、空洞hが深くても、撮影装置2を空洞hの底まででも挿入していくことができる。つまり、複数本の保持軸3を連結しながら撮影装置2を空洞hに挿入していくことによって、空洞hが深くても(例えば10m程度でも)撮影装置2によって空洞hを検査することができる。
【0048】
空洞hの全体の撮影が終了すると、撮影装置2を空洞hから抜き出して、その後、空洞hをコンクリート等によって埋めれば、コンクリート基礎Bの検査が終了する。
【0049】
以上のように、本実施形態の空洞内撮影装置1を用いてコンクリート基礎Bを検査すれば、コンクリート基礎Bの表面から空洞hを形成するだけで、コンクリート基礎Bの所望の深さまで検査することが可能となる。すると、コンクリート基礎Bの検査を従来実施されていた検査に比べて短時間で実施できるし、検査対象や検査時期などの制約が少なくできる。
【0050】
従来は、鉄塔などのコンクリート基礎Bを検査する場合には、コンクリート基礎Bの周囲の地盤を掘り下げる。そして、検査したい深さまでコンクリート基礎Bを露出させて、その露出した部分から検査を実施している。この場合、コンクリート基礎Bを露出させるために非常に大掛かりな工事が必要である。とくに、川に設置されているコンクリート基礎Bであれば、周囲の水をせき止めてコンクリート基礎Bを露出させなければならず作業に長期間かつ多大な作業、コストが必要である。
また、長期間の作業が必要であるので、気候の不安定な時期(梅雨時や台風シーズン、降雪シーズン等)には検査が実施できず、検査時期が比較的天候が安定している時期に限定されるという制約もある。
しかも、本来地盤に埋まっているコンクリート基礎Bを露出させるので、検査の期間はコンクリート基礎Bが所定の耐久性(構造物を支える能力)を発揮できない。コンクリート基礎Bを複数有する構造物の場合であれば、全てのコンクリート基礎Bを同じ時期に検査することが望ましい。しかし、コンクリート基礎Bの耐久性の低下や作業時間の長期化、またコストの問題があり、現状では全てのコンクリート基礎Bを同じ時期に検査することは不可能であり、やむを得ず、選択した一部のコンクリート基礎Bを検査している。
そして、検査作業中はコンクリート基礎Bの耐久性が低下しているので、検査作業中に地震等が生じた場合、構造物の倒壊などのリスクがある。とくに、作業者が掘り下げた部分に入って検査を実施するので、作業者にとってリスクが大きい。
【0051】
一方、本実施形態の空洞内撮影装置1を用いてコンクリート基礎Bを検査すれば、コンクリート基礎Bを設置された状態のままで検査できる。つまり、コンクリート基礎Bの露出している表面(例えば上面)からコンクリート基礎B内に向かって空洞hを形成すれば、その空洞h内に撮影装置2を挿入するだけで検査を実施することができる。空洞hの直径がコンクリート基礎Bに比べて十分に小さければ、空洞hを形成しても、コンクリート基礎Bの耐久性にはほとんど影響を与えることがない。したがって、本実施形態の空洞内撮影装置1を用いれば、コンクリート基礎Bの検査を安全に実施できる。しかも、非常に短時間(長くても3日程度)で、空洞hの形成から空洞hの埋設までの作業を完了することができる。すると、気候などの制約を受けることなく所望の時期に検査を実施できるし、複数のコンクリート基礎Bを有する構造物でも全てのコンクリート基礎Bをほぼ同じ時期に検査することが可能となる。そして、本実施形態の空洞内撮影装置1を用いた検査では、コンクリート基礎Bが露出している表面を有していれば検査が可能である。すると、どのような場所にあるコンクリート基礎B(例えば川に設置されているコンクリート基礎B等)でも簡便に検査を実施することができる。
【0052】
なお、本実施形態の空洞内撮影装置1によってコンクリート基礎B等に形成した空洞hの内面を検査する上では、どの深さを検査(撮影)しているかを把握することが重要である。したがって、保持軸3に沿ってメジャーなどを設けておけば、撮影装置2がどの程度の深さに配置されているかを把握できる。もちろん、保持軸3自体に目盛を設けて撮影装置2が配置されている深さを把握するようにしてもよいし、レーザ距離計等の非接触式の距離測定装置によって撮影装置2が配置されている深さを把握するようにしてもよい。
【0053】
(ケース部10)
ケース部10は、上述したように、前方撮影部C1等を保護する機能と、前方撮影部C1および側方撮影部C2の中心軸を空洞hの中心軸が同軸またはほぼ同軸となるように配置する機能と、を発揮する構造を有していればよく、とくにその形状は限定されない。例えば、中空な筒状の部材をケース部として使用し、その内部に前方撮影部C1や側方撮影部C2、反射鏡M、コードCa,Cb等を収納してもよい。この場合には、ケース部の先端に前方撮影部C1のカメラcが前方を撮影する開口を設け、ケース部の側面に反射鏡Mを介して側方撮影部C2のカメラcが側方を撮影する窓(観測窓)を設ける。すると、前方撮影部C1および側方撮影部C2によって前方および側方を撮影でき、しかも、ケース部10によって前方撮影部C1などを保護することができる。
【0054】
また、内壁wに凹凸が存在したり内壁wが剥離したりする可能性がある場合には、ケース部10は以下のような構造とすることが望ましい。例えば、内壁wに凹凸があれば、その凹凸にケース部10が引っ掛かる可能性があるし、内壁wが剥離しやすい場合には、剥離した物体がケース部10内に侵入して排出できなくなる可能性がある。これらの問題は、空洞hの直径が小さくなりケース部10を空洞h内に挿入したときに両者間の隙間が小さくなるほど、また、ケース部10自体が小さくなるほど(言い換えれば直径が小さくなるほど)問題になる。しかし、ケース部10を以下のような構造とすれば、内壁wに凹凸があっても撮影装置2の移動の際に、凹凸の影響を小さくできる。また、内壁wが剥離した物体などがケース部10内に侵入しても、侵入した物体を容易かつ迅速にケース部10外に排出することが可能となる。
【0055】
図2および図3に示すように、ケース部10は、複数枚の円環プレート11a(図2および図3では各4枚ずつ)を有する円環プレート群11と、円環プレート12aを有する円環プレート群12と、を備えている。円環プレート群11は上述した前方撮影部C1を保持するものであり、円環プレート群12は側方撮影部C2を保持するものである。
【0056】
円環プレート群11は、複数枚の円環プレート11aの中心が同軸(円環プレート群11の中心軸)上に位置するようにほぼ等間隔で配置されている。つまり、複数枚の円環プレート11aは、その孔nの中心が同軸(円環プレート群11の中心軸)上に位置するように配置されている。そして、複数枚の円環プレート11aの孔n(図4(A)参照)に上述した前方撮影部C1やコードCaが挿通されて固定されている。
【0057】
この円環プレート群11は、4枚のフレームプレート11bを備えている。この4枚のフレームプレート11bは、上記状態を維持するように複数枚の円環プレート11aを連結している。4枚のフレームプレート11bは同じ形状を有する板状の部材である。この4枚のフレームプレート11bは、ケース部10を先端側から見たときに(図4(A)参照)、円環プレート群11の中心軸に対して放射状であって、円周方向において隣接するフレームプレート11b間に隙間ができるように配設されている。しかも、4枚のフレームプレート11bは、その外端縁eが円環プレート11aの外周縁から突出した状態かつ、外端縁eから円環プレート群11の中心軸までの距離が同じ距離(またはほぼ同じ距離)となるように配設されている。ここでいうほぼ同じ距離とは、数mm程度の差は許容することを意味している。
【0058】
円環プレート群12も、円環プレート群11と同様に、複数枚の円環プレート12a(図2および図3では4枚)の中心が同軸(円環プレート群12の中心軸)上に位置するようにほぼ等間隔で配置されている。つまり、複数枚の円環プレート12aの孔nも、その中心が同軸(円環プレート群12の中心軸)上に位置するように配置されている。そして、複数枚の円環プレート12aの孔nに上述した側方撮影部C2やコードCbが挿通されて固定されている。
【0059】
この円環プレート群12は、4枚のフレームプレート12bを備えている。この4枚のフレームプレート12bは、上記状態を維持するように複数枚の円環プレート12aを連結している。4枚のフレームプレート12bは同じ形状を有する板状の部材である。この4枚のフレームプレート12bも、円環プレート群11の4枚のフレームプレート11bと同様に、円環プレート群12の中心軸に対して放射状であって、円周方向において隣接するフレームプレート12b間に隙間ができるように配設されている。しかも、4枚のフレームプレート12bは、その外端縁eが円環プレート12aの外周縁から突出した状態かつ、外端縁eから円環プレート群12の中心軸までの距離が同じ距離(またはほぼ同じ距離)となるように配設されている。ここでいうほぼ同じ距離とは、数mm程度の差は許容することを意味している。
【0060】
(一対の連結フレーム13,14)
図1図3に示すように、ケース部10は、一対の連結フレーム13,14を有している。この一対の連結フレーム13,14は、実質的に同じ形状を有する長尺な板状の部材であり、その長さの違いを除けば、上述したフレームプレート11b,12bと実質的に同様の構造を有している(図4参照)。
【0061】
そして、ケース部10では、円環プレート群11と円環プレート群12とが一対の連結フレーム13,14によって連結されている。具体的には、円環プレート群11の中心軸と円環プレート群12の中心軸とが同軸となるように、円環プレート群11と円環プレート群12とが一対の連結フレーム13,14によって連結されている。しかも、円環プレート群11と円環プレート群12は、円環プレート群11の後端と円環プレート群12の先端との間に反射鏡Mが配置される空間ができるように、一対の連結フレーム13,14によって連結されている。そして、反射鏡Mが配置される空間には、反射鏡Mを一対の連結フレーム13,14に固定するステー15が設けられている。
【0062】
なお、円環プレート群11の後端と円環プレート群12の先端との間、かつ、円周方向において一対の連結フレーム13,14間の空間が、特許請求の範囲にいう観測窓に相当する。
【0063】
以上のように、ケース部10が、円環プレート群11、円環プレート群12および一対の連結フレーム13,14によって形成されていれば、一対の連結フレーム13,14やフレームプレート11b,12bを、空洞hの内壁wに沿って撮影装置2が移動する際のガイドとして機能させることができる。すると、撮影装置2をスムースに空洞h内で移動させることができる。
【0064】
また、一対の連結フレーム13,14やフレームプレート11b,12b、円環プレート11a,12a間には隙間が形成されている。すると、内壁wに凹凸が存在していても、凹凸に引っ掛かかりにくいし、引っ掛かっても引っ掛かりを簡単に解消できるという利点が得られる。また、内壁wが剥離した物体等がケース部10の隙間からケース部10内に入っても、他の隙間などから簡単に除去することができるという利点が得られる。
【0065】
なお、4枚のフレームプレート11bおよび一対の連結フレーム13,14は、その先端側の端部外面に傾斜面を有していることが望ましい。具体的には、傾斜面は、先端に向かうに従ってケース部10の中心軸からの距離が短くなるように傾斜していることが望ましい。4枚のフレームプレート11bおよび一対の連結フレーム13,14がかかる傾斜面を有していれば、空洞h内に撮影装置2を挿入しやすく、また、空洞h内において撮影装置2を前進させる際に抵抗が少なくなるという利点が得られる。
【0066】
同様に、4枚のフレームプレート12bおよび一対の連結フレーム13,14は、その後端側の端部外面に傾斜面を有していることが望ましい。具体的には、傾斜面は、後端に向かうに従ってケース部10の中心軸からの距離が短くなるように傾斜していることが望ましい。4枚のフレームプレート12bおよび一対の連結フレーム13,14がかかる傾斜面を有していれば、空洞h内において撮影装置2を後退させる際に抵抗が少なくなるという利点が得られる。
【0067】
上述した一対の連結フレーム13,14間に形成される隙間や、一対の連結フレーム13,14、フレームプレート11b,12b、円環プレート11a,12aの間に形成される隙間、円環プレート11a,12aの孔nが、特許請求項範囲にいう内部空間に相当する。
また、一対の連結フレーム13,14やフレームプレート11b,12bが、特許請求の範囲にいう複数のフレーム部材に相当し、円環プレート11a,12aが特許請求の範囲にいう連結部材に相当する。
【0068】
なお、円環プレート群12には前方撮影部C1のコードCaが配置される。このとき、前方撮影部C1のコードCaがケース部10の外面から突出しないように、円環プレート12aには、前方撮影部C1のコードCaを通す切欠きgを設けてもよい(図4(B)参照)。もちろん、前方撮影部C1のコードCaを挿通する貫通孔を円環プレート12aに設けてもよい。
【0069】
また、円環プレート12aの外周縁は4枚のフレームプレート12bや一対の連結フレーム13,14の外端縁eよりも内方に凹んでいるので、その凹み部分(例えば、図4(B)のxの部分)に前方撮影部C1のコードCaを配線してもよい。
【0070】
(反射鏡M)
反射鏡Mは、その反射面Maの傾斜角度θはとくに限定されない。側方撮影部C2のカメラcによって撮影した画像を利用して上述した空洞hの内面を検査する場合には、反射面Maの傾斜角度θは45度に調整することが望ましい。
【0071】
側方撮影部C2のカメラcの焦点調整機構)
側方撮影部C2のカメラcによって空洞hの内面を鮮明に撮影するには、空洞hの直径に合わせて、側方撮影部C2のカメラcの焦点距離を調整する必要がある。つまり、焦点の位置がほぼ空洞hの内面になるように側方撮影部C2のカメラcと反射面Maとの距離を調整する必要がある。例えば、円環プレート群12に、側方撮影部C2のカメラcをケース部10の軸方向に沿って移動固定可能とする固定解放機構を設けておけば、側方撮影部C2のカメラcと反射面Maとの距離を調整することができる。
【0072】
かかる固定解放機構には、公知の機構を採用できる。
例えば、円環プレート群12に側方撮影部C2のカメラcを保持開放できる輪状のクランプを設けておく。すると、クランプを締めれば側方撮影部C2のカメラcを円環プレート群12に固定できるし、クランプを緩めれば側方撮影部C2のカメラcをケース部10の軸方向に沿って移動させることができる。
【0073】
また、円環プレート群12に、その半径方向に進退するネジを複数本設けておく。具体的には、複数本のネジを円環プレート群12の中心軸周りに回転対称となるように設けておく。すると、複数本のネジを円環プレート群12の中心軸に向かって前進させて、その先端を側方撮影部C2のカメラcの側面に当接させれば、複数本のネジの先端によってカメラcを保持することができる。一方、複数本のネジを円環プレート群12の中心軸から後退させれば側方撮影部C2のカメラcを円環プレート群12の軸方向に沿って移動させることができる。
【0074】
なお、側方撮影部C2のカメラcは4枚の円環プレート12aの孔nに挿入されているので、側方撮影部C2のカメラcをケース部10の軸方向に沿って移動させる場合、円環プレート12aの孔nをガイドとして機能させることができる。すると、側方撮影部C2のカメラcの光軸とケース部10の中心軸とをほぼ同軸(またはほぼ平行)の状態で移動させることができる。したがって、側方撮影部C2のカメラcと反射面Maとの距離を調整しても、撮影位置(空洞hの軸方向の位置や円周方向の位置)が変化することを抑制することができる。つまり、反射面Maの傾斜角度θが45度となっている場合であれば、側方撮影部C2のカメラcと反射面Maとの距離を調整しても、反射面Maの位置における撮影装置2の真横の画像を側方撮影部C2のカメラcによって測定することができる。
【0075】
また、固定解放機構は、側方撮影部C2を移動固定可能に保持するものに限られず、反射鏡Mが取り付けられているステー15をケース部10の軸方向に沿って移動固定可能とするものでもよい。例えば、反射鏡Mが固定されているステー15を一対の連結フレーム13,14に沿って(つまりケース部10の軸方向に沿って)移動可能かつ所定の位置で固定できるようにしておく。一方、側方撮影部C2はケース部10の軸方向に沿って移動できないように固定しておく。すると、反射鏡Mが固定されているステー15を移動させれば、側方撮影部C2のカメラcと反射面Maとの距離を調節することができる。
【0076】
(本実施形態の空洞内撮影装置1による検査の他の例)
本実施形態の空洞内撮影装置1によって検査する空洞hは、コンクリート基礎の亀裂などを通じて地下水などが入ってしまう場合がある。この場合、地下水などをポンプでくみ上げて排水し、その後、撮影装置2を空洞h内に入れて検査を行う。
【0077】
しかし、地下水が入ってしまうと、空洞hの内壁wが濡れた状態になってしまう。濡れた状態の空洞hの内壁wを撮影すると、カメラcの光源fからの光が空洞hの内壁wの水分で反射する。すると、反射光によって画像が見づらくなるので、空洞hの内壁wに亀裂などが存在していても、画像から亀裂を発見しづらくなる(図10(A)参照)。
【0078】
そこで、空洞hの内壁wが濡れた状態となっている場合には、空洞hの内壁wをある程度乾燥させた後、撮影装置2を空洞h内に入れて検査を行うことが望ましい。例えば、図9(A)に示すように、空洞hの地下水などを抜き取った後、空洞h内に送気管APを挿入する。そして、送気管APの一端を空洞hの内底面近傍に配置する。その後、送風機ABなどによって送気管APの他端に空気等の気体を供給する。すると、気体は送気管APの一端から空洞h内に吹き込まれて、空洞hの内壁wに沿って移動して空洞hの開口から外部に排出される。このように空洞h内に気体を吹き込めば、気体の流れによって空洞hの内壁wを乾燥させることができる。すると、カメラcの光源fからの光が空洞hの内壁wの水分で反射されてギラギラした映像になることを防止できるので、空洞hの内壁wの亀裂などを発見しやすくなる(図10(B)参照)。
【0079】
送気管APを通して空洞h内に吹き込まれる気体はとくに限定されない。空洞hの内壁wに付着した水などの液体を乾燥させる効果が高いものが好ましい。例えば、市販のヒートガンを用いて200度~300度程度の温風や熱風を発生させて、その温風や熱風を送気管APを通して空洞h内に吹き込めば、空洞hの内壁wに付着した水などの液体を乾燥させる効果を高くすることができる。
【0080】
(本実施形態の空洞内撮影装置1による検査のさらに他の例)
また、本実施形態の空洞内撮影装置1によって検査する空洞hに地下水などが入り続けるなど、空洞h内の排水が困難な場合には、地下水などが入ったまま検査を行ってもよい。
【0081】
図11(A)に示すように、亀裂などから空洞h内に入った水が濁っている場合には、そのままでは検査は難しい。しかし、空洞h内に入った水をきれいな水に置換すれば、水を通して空洞hの内壁wを観察することも可能になる(図11(B))。つまり、図6に示すように、本実施形態の空洞内撮影装置1に液体供給装置20を設ければ、空洞h内に入った水をきれいな水に置換できるので、水を通して空洞hの内壁wを観察することができる。
【0082】
例えば、図6に示すように、撮影装置2のケース部10の後部に、液体供給装置20の送液管21の先端部を取り付ける。この送液管21には、例えば、ゴムホース等を使用できるが、とくに限定されない。
【0083】
そして、送液管21の基端には、ポンプなどの送液機能を有する液体供給部22を連結する。この液体供給部22は、液体を加圧して送液管21に供給できる機能を有している。
【0084】
かかる液体供給装置20を有している場合、図9(B)に示すように、地下水などが入ったままの空洞h内に撮影装置2を挿入する。その状態で液体供給部22から送液管21を通してきれいな水(濁りの少ない水、例えば水道水等)を空洞h内に供給すれば、空洞h内の濁った地下水がきれいな水に置換される。すると、空洞h内に水が存在しても、空洞hの内壁wを撮影することができる。しかも、光源fからの光が空洞hの内壁wで反射することを抑制できるので、反射光の影響を低減でき、撮影した画像を鮮明にすることができる。
【0085】
なお、空洞hの内壁wの撮影は、液体供給装置20から液体を供給しながら行ってもよいが、空洞h内の液体の透明度が撮影に支障が無い状態となった後、液体の供給を停止して撮影してもよい。
【0086】
また、空洞h内に液体を供給した際には、空洞hの開口から液体を溢れさせてもよいし、空洞hの開口から液体が溢れないように空洞h内の液体をポンプなどによって抜き出すようにしてもよい。
【0087】
撮影中に液体の供給と停止を繰り返してもよい。例えば、撮影画像を確認して、透明度が低下すると液体を供給し、撮影に支障が無い状態となると液体の供給を停止することを繰り返してもよい。この場合、液体供給部22の作動を制御する機能および撮影画像に基づいて液体の透明度を判断する機能を制御部5に設けておけば、撮影画像に基づいて、液体供給装置20による液体の供給停止を制御部5に制御させることも可能となる。
【0088】
また、この方法を採用する場合には、撮影装置2が液体に浸漬されるので、前方撮影部C1のカメラcおよび側方撮影部C2のカメラcには、防水性を有するものを使用する。とくに、地下水に含まれる粉塵等の浮遊物によるカメラcの損傷を防ぐ上では、防塵性能を有するカメラcを使用することが望ましい。例えば、防塵防水性能を表す等級のIP57以上、好ましくはIP68以上の使用を有するカメラcを使用することが望ましい。
【0089】
さらに、空洞h内に液体が存在することによって、空洞hの内壁wと撮影装置2との摩擦を低減できるので、空洞hにおける撮影装置2が移動する際の抵抗を小さくできる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の空洞内撮影装置は、コンクリート製の基礎や橋脚、外壁などの建造物に形成された空洞内の状況を検査する装置として適している。
【符号の説明】
【0091】
1 空洞内撮影装置
2 撮影装置
3 保持軸
5 制御部
10 ケース部
11a 円環プレート
11b フレームプレート
12a 円環プレート
12b フレームプレート
13 連結フレーム
14 連結フレーム
15 ステー
20 液体供給装置
21 送液管
22 液体供給部
C1 前方撮影部
C2 側方撮影部
M 反射鏡
Ma 反射面
h 空洞
w 内壁
AP 送気管
AB 送風機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11