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特許7097201複合体、複合体の製造方法、熱可塑性樹脂組成物及び成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】複合体、複合体の製造方法、熱可塑性樹脂組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08K 9/00 20060101AFI20220630BHJP
   C01B 33/146 20060101ALI20220630BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
C08K9/00
C01B33/146
C08L101/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018051631
(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公開番号】P2019163374
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000104364
【氏名又は名称】出光ファインコンポジット株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501402730
【氏名又は名称】株式会社アドマテックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内尾 知生
(72)【発明者】
【氏名】山本 寿樹
(72)【発明者】
【氏名】楊原 武
(72)【発明者】
【氏名】永野 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 喜隆
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-269261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0106513(US,A1)
【文献】特開2015-038036(JP,A)
【文献】特開2009-155465(JP,A)
【文献】特開2009-179786(JP,A)
【文献】特開2012-214554(JP,A)
【文献】特開2016-193825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 9/00
C01B 33/146
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系造核剤及び酸化マグネシウムからなる群から選択される1以上の造核剤と、
シリカ粒子に下記式(1)で表される官能基及び下記式(2)で表される官能基が結合したシリカ粒子材料と、を含み、
前記造核剤の表面に前記シリカ粒子材料が付着した複合体。
-OSi(X)(X)(X)・・・(1)
-OSi(Y)(Y)(Y)・・・(2)
(式(1)中、Xは、フェニル基である。X及びXは、それぞれ独立に、-OSi(R)又は-OSi(Y)(Y)(Y)である。
式(2)中、YはRである。Y及びYは、それぞれ独立に、R又は-OSi(Y)(Y)(Y)である。
はRである。Y及びYは、それぞれ独立に、R又は-OSi(R)である。Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基である。Yが複数存在する場合、複数のYは同一でも異なってもよい。Yが複数存在する場合、複数のYは同一でも異なってもよい。Yが複数存在する場合、複数のYは同一でも異なってもよい。
、X、Y、Y、Y及びYのいずれかは、隣り合うX、X、Y、Y、Y、及びYのいずれかと-O-を介して結合してもよい。)
【請求項2】
前記シリカ粒子材料の含有量が、前記造核剤100質量部に対して1~100質量部である請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複合体と、結晶性熱可塑性樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記複合体の含有量が、前記結晶性熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01~400質量部である請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記結晶性熱可塑性樹脂がポリプロピレンである請求項3又は4に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項3~5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を用いて作製した成形体。
【請求項7】
水を含む液状媒体中で、シランカップリング剤及びオルガノシラザンによってシリカ粒子を表面処理してシリカ粒子材料を製造する工程、及び前記シリカ粒子材料と造核剤を混合する工程を含む、請求項1又は2に記載の複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体、複合体の製造方法、熱可塑性樹脂組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
表面処理を施したシリカ粒子を樹脂用のフィラーとして用いる場合がある。例えば、特許文献1には特定の官能基を有するシリカ粒子材料、及び当該シリカ粒子材料と樹脂材料及び/又は樹脂材料前駆体とを含むフィラー含有組成物が開示されている。特許文献2には、ソルビトールアセタール化合物と特定の物性を有するシリカ成分とを含む添加剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-038036号公報
【文献】特表2009-507982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は結晶性熱可塑性樹脂に対して有用なシリカ粒子含有添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、特定の構造を有するシリカ粒子材料が造核剤の表面に付着した複合体を熱可塑性樹脂組成物に適用すると、高い透明性を有する成形体が得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明によれば、以下の複合体等が提供される。
1.造核剤と、
シリカ粒子に下記式(1)で表される官能基及び下記式(2)で表される官能基が結合したシリカ粒子材料と、を含み、
前記造核剤の表面に前記シリカ粒子材料が付着した複合体。
-OSi(X)(X)(X)・・・(1)
-OSi(Y)(Y)(Y)・・・(2)
(式(1)中、Xは、フェニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基又はアクリル基である。X及びXは、それぞれ独立に、-OSi(R)又は-OSi(Y)(Y)(Y)である。
式(2)中、YはRである。Y及びYは、それぞれ独立に、R又は-OSi(Y)(Y)(Y)である。
はRである。Y及びYは、それぞれ独立に、R又は-OSi(R)である。Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基である。Yが複数存在する場合、複数のYは同一でも異なってもよい。Yが複数存在する場合、複数のYは同一でも異なってもよい。Yが複数存在する場合、複数のYは同一でも異なってもよい。
、X、Y、Y、Y及びYのいずれかは、隣り合うX、X、Y、Y、Y、及びYのいずれかと-O-を介して結合してもよい。)
2.前記シリカ粒子材料の含有量が、前記造核剤100質量部に対して1~100質量部である1に記載の複合体。
3.1又は2に記載の複合体と、結晶性熱可塑性樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物。
4.前記複合体の含有量が、前記結晶性熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01~400質量部である3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
5.前記結晶性熱可塑性樹脂がポリプロピレンである3又は4に記載の熱可塑性樹脂組成物。
6.3~5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を用いて作製した成形体。
7.水を含む液状媒体中で、シランカップリング剤及びオルガノシラザンによってシリカ粒子を表面処理してシリカ粒子材料を製造する工程、及び前記シリカ粒子材料と造核剤を混合する工程を含む、1又は2に記載の複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、結晶性熱可塑性樹脂に対して有用なシリカ粒子含有添加剤が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[複合体]
本発明の一態様に係る複合体は、造核剤と、シリカ粒子に式(1)で表される官能基及び式(2)で表される官能基が結合したシリカ粒子材料とを含み、当該造核剤の表面に当該シリカ粒子材料が付着した構造を有する。
式(1)及び式(2)で表される官能基については後述する。
【0008】
造核剤の表面にシリカ粒子材料が「付着した」とは、造核剤表面の少なくとも一部がシリカ粒子材料で被覆された状態を意味する。後述するように、造核剤とシリカ粒子材料とを撹拌、混合することにより、造核剤表面にシリカ粒子材料が付着した複合体を得ることができる。
【0009】
本発明の複合体は、特定のシリカ粒子材料が造核剤の表面に付着した構造を有するため、熱可塑性樹脂組成物中における複合体(造核剤)の分散性を大きく向上でき、造核剤の添加効果を増大することができる。これにより、透明性の高い成形体を製造することが可能となる。
以下、各成分について説明する。尚、本明細書において、「x~y」は「x以上、y以下」の数値範囲を表すものとする。
【0010】
(造核剤)
造核剤は、結晶性熱可塑性樹脂の結晶化過程に直接関与する添加剤である。造核剤の添加により、当該樹脂が溶融状態から高分子鎖の結晶化が促進され、材料全体としての結晶化速度が増大するため、成形加工時の生産性の改善、力学特性の改善、及び結晶組織の微細化による成形品の透明性の改善等が期待される。
【0011】
造核剤としては、有機系造核剤及び無機系造核剤が挙げられる。
有機系造核剤としては、分散型造核剤及び溶解型造核剤等が挙げられる。
【0012】
分散型造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩系造核剤、カルボン酸金属塩系造核剤及びロジン金属塩系造核剤等が挙げられる。
【0013】
リン酸エステル金属塩系造核剤としては、例えば、リン酸-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ナトリウム、アルミニウムヒドロキシビス[2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート]、リン酸-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リチウム等が挙げられる。
リン酸エステル金属塩系造核剤は、例えば株式会社ADEKA製「アデカスタブNA-11」、同「アデカスタブNA-21」として市販されている。
【0014】
カルボン酸金属塩系造核剤としては、例えば安息香酸金属塩系造核剤が挙げられ、具体的には、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、ジ-p-tert-ブチル安息香酸ヒドロキシアルミニウム(AL-PTBBA)等が挙げられる。
カルボン酸金属塩系造核剤は、例えば、ジャパンケムテック株式会社製「AL-PTBBA」として市販されている。
【0015】
ロジン金属塩系造核剤としては、例えば、デヒドロアビエチン酸マグネシウム、デヒドロアビエチン酸カルシウム、デヒドロアビエチン酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。
ロジン金属塩系造核剤は、例えば、荒川化学工業株式会社製「パインクリスタルKM-1500」、「パインクリスタルKM-1300」、「パインクリスタルKR-50M」等として市販されている。
【0016】
溶解型造核剤としては、ソルビトール系造核剤、ノニトール系造核剤、キシリトール系造核剤及びアミド系造核剤等が挙げられる。
【0017】
ソルビトール系造核剤としては、ジベンジリデンソルビトール等が挙げられ、例えば、1,3:2,4-ビス-O-(ベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(4-メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトールが挙げられる。
ソルビトール系造核剤は、例えば、新日本理化株式会社製「ゲルオールD」、「ゲルオールMD」として市販されている。
【0018】
ノニトール系造核剤としては、例えば(1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-[(4-プロピルフェニル)メチレン]-ノニトールが挙げられる。
ノニトール系造核剤は、例えば、ミリケン&カンパニー社製「Millad NX8000」として市販されている。
【0019】
キシリトール系造核剤としては、例えばビス-1,3:2,4-(5’,6’,7’,8’-テトラヒドロ-2-ナフトアルデヒドベンジリデン)1-アリルキシリトール、ビス-1,3:2,4-(3’,4’-ジメチルベンジリデン)1-プロピルキシリトール等が挙げられる。
【0020】
アミド系造核剤としては、例えば(N,N’,N”-トリス[2-メチルシクロヘキサン-1-イル]-プロパン-1,2,3-トリイルカルボキサミド)等が挙げられる。
アミド系造核剤は、例えば、BASF社製「Irgaclear XT386」として市販されている。
【0021】
無機系造核剤としては、タルク、シリカ等のケイ酸塩化合物、酸化マグネシウム等の金属酸化物等が挙げられる。
【0022】
(シリカ粒子材料)
本発明の一態様で用いるシリカ粒子材料は、シリカ粒子に式(1)で表される官能基及び式(2)で表される官能基が結合した構造を有する。
-OSi(X)(X)(X)・・・(1)
-OSi(Y)(Y)(Y)・・・(2)
(式(1)中、Xは、フェニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基又はアクリル基である。X及びXは、それぞれ独立に、-OSi(R)又は-OSi(Y)(Y)(Y)である。
式(2)中、YはRである。Y及びYは、それぞれ独立に、R又は-OSi(Y)(Y)(Y)である。
はRである。Y及びYは、それぞれ独立に、R又は-OSi(R)である。Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基である。Yが複数存在する場合、複数のYは同一でも異なってもよい。Yが複数存在する場合、複数のYは同一でも異なってもよい。Yが複数存在する場合、複数のYは同一でも異なってもよい。
、X、Y、Y、Y及びYのいずれかは、隣り合うX、X、Y、Y、Y、及びYのいずれかと-O-を介して結合してもよい。)
【0023】
シリカ粒子に式(1)で表される官能基及び式(2)で表される官能基が「結合した」とは、シリカ粒子の表面に存在する水酸基が式(1)で表される官能基及び式(2)で表される官能基によって置換されたことをいう。
以下、式(1)で表される官能基を「第1の官能基」と、式(2)で表される官能基を「第2の官能基」と称する場合がある。
【0024】
造核剤の機能の1つである結晶組織の微細化による透明性向上効果は、結晶性熱可塑性樹脂の結晶化過程における結晶開始点の増加作用によるものであるが、当該作用は造核剤の分散性に影響を受ける。
シリカ粒子と造核剤を気相中で高速撹拌・混合すると、衝撃力による造核剤の微細化と、造核剤表面へのシリカ粒子の付着が並行して進行する。その結果、微細化した造核剤表面がシリカ粒子で被覆された複合体が得られる。
【0025】
本発明の一態様においては、造核剤に特定の官能基を有するシリカ粒子材料が付着した複合体を採用することで、結晶性熱可塑性樹脂への親和性が飛躍的に高まる。これにより複合体同士の再凝集が抑制され、結晶性熱可塑性樹脂に対する複合体、即ち造核剤の分散性を大幅に向上することが可能となる。
【0026】
、X、Y、Y、Y、及びYのいずれかは、隣り合う官能基のX、X、Y、Y、Y、及びYのいずれかと-O-を介して結合してもよい。
例えば、第1の官能基のX、X、Y、及びYのいずれかが、この第1の官能基に隣り合う第1の官能基のX、X、Y、及びYのいずれかと-O-を介して結合してもよい。
同様に、第2の官能基のY、Y、Y、及びYのいずれかが、この第2の官能基に隣り合う第2の官能基のY、Y、Y、及びYのいずれかと-O-を介して結合してもよい。
さらには、第1の官能基のX、X、Y、及びYのいずれかが、この第1の官能基に隣り合う第2の官能基のY、Y、Y、及びYのいずれかと-O-を介して結合してもよい。
【0027】
本発明の一態様で用いるシリカ粒子材料は、好ましくは下記(ア)~(オ)からなる群から選択される1以上の特徴を有する。
(ア)メチルエチルケトンに再分散できる。
(イ)シリカ粒子材料とメチルエチルケトンとを、シリカ粒子材料:メチルエチルケトン=1:1~1:4(質量比)の割合で配合し撹拌して分散試料を調製し、当該分散試料の粒度分布を粒度分布測定装置により測定すると、粒子径100nm以上の位置にピークが見られない。
(ウ)シリカ粒子材料とメチルエチルケトンとを、シリカ粒子材料:メチルエチルケトン=1:1~1:4(質量比)の割合で配合し撹拌して分散試料を調製し、当該分散試料に発振周波数39kHz、出力500Wの超音波を10分間照射したものの粒度分布を粒度分布測定装置により測定すると、粒子径100nm以上の位置にピークが見られない。
(エ)シリカ粒子材料を121℃で24時間浸漬した抽出水の電気伝導度が50μS/cm以下である。
(オ)平均粒子径が3~200nmであり、好ましくは5~50nmである。
【0028】
第1の官能基及び第2の官能基に含まれる-OSiRが多いほどシリカ粒子材料の表面にR(炭素数1~3のアルキル基)が多く、Rが多いほどシリカ粒子材料は凝集しにくくなる。
本発明の一態様で用いるシリカ粒子材料は一定量以上のRを有するため、凝集しにくい。(ア)~(ウ)は、当該シリカ粒子材料が凝集しにくいことを示し、また、僅かに凝集した場合であっても超音波処理することによって再度分散可能であることを示す。
また、上記のシリカ粒子材料は凝集し難いため水で容易に洗浄でき、これにより電子部品用材料としての適用が可能となる。(エ)はこのことを示し、電子部品用材料とする場合には(エ)に示す電気伝導度となるまで水で洗浄することが好ましい。
同様に、(オ)もシリカ粒子材料が凝集し難いことに由来する特徴であり、当該性質により粒径の小さな材料とすることが可能となる。
【0029】
平均粒子径は、1mm角の領域における粒径1nm~1μmの粒子を、電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「SU-70」)により撮影した写真を用いて目視により無差別に100個選択し、当該100個の粒子の粒径の単純平均(算術平均)を求めて測定する。粒径は長径を用いる。
【0030】
第1の官能基に含まれるX及びRの数、及び第2の官能基に含まれるRの数は、RとXとの存在数比やシリカ粒子材料の粒径や用途に応じて適宜設定すればよい。
【0031】
本発明の一態様で用いるシリカ粒子材料は、好ましくは第1の官能基と第2の官能基との存在数比が1:12~1:60である。この範囲であれば、シリカ粒子材料の表面にXとRとがバランス良く存在するため、結晶性熱可塑性樹脂に対する親和性及び凝集抑制効果に優れる。
【0032】
本発明の一態様で用いるシリカ粒子材料は、好ましくは、シリカ粒子材料の単位表面積(nm)あたりのXが0.5~2.5個である。この範囲であれば、シリカ粒子材料の表面に十分な数の第1の官能基が結合し、第1の官能基及び第2の官能基に由来するRもまた十分な数存在するため、結晶性熱可塑性樹脂に対する親和性及びシリカ粒子材料の凝集抑制効果が十分に発揮される。単位表面積(nm)あたりのXの個数は実施例に記載の方法で測定する。
【0033】
本発明の一態様で用いるシリカ粒子材料は、好ましくは、シリカ粒子材料の単位表面積(nm)あたりのRが1~10個である。この範囲であれば、シリカ粒子材料の表面に存在するXの数とRの数とのバランスが良くなり、結晶性熱可塑性樹脂に対する親和性及びシリカ粒子材料の凝集抑制効果との両方がバランス良く発揮される。
【0034】
本発明の一態様で用いるシリカ粒子材料は、好ましくは、シリカ粒子の表面に存在する水酸基の全部が第1の官能基及び第2の官能基で置換されたものである。第1の官能基と第2の官能基との和が、シリカ粒子材料の単位表面積(nm)あたり2.0個以上であれば、シリカ粒子材料において、シリカ粒子の表面に存在していた水酸基のほぼ全部が第1の官能基及び第2の官能基で置換されているといえる。
【0035】
シリカ粒子材料の含有量は、好ましくは、造核剤100質量部に対して1~100質量部である。
シリカ粒子材料の含有量が造核剤100質量部に対して1質量部以上であれば、造核剤の性能向上効果が十分に発揮される。100質量部以下であれば、経済性に優れる。
シリカ粒子材料の含有量は、好ましくは造核剤100質量部に対して1~30質量部であり、より好ましくは1~20質量部である。
【0036】
(シリカ粒子材料の製造方法)
本発明の一態様で用いるシリカ粒子材料は、水を含む液状媒体中で、シランカップリング剤(第1のシランカップリング剤)及びオルガノシラザンによってシリカ粒子を表面処理する工程(表面処理工程)を含む製造方法により製造することができる。
シランカップリング剤としては、フェニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、又はアクリル基(即ち、Xに対応する基)と、3つのアルコキシ基とがケイ素原子に結合した化合物を用いることができる。
【0037】
シランカップリング剤で表面処理することで、シリカ粒子の表面に存在する水酸基がシランカップリング剤に由来する官能基で置換される。シランカップリング剤に由来する官能基は、例えば下記式(10)で表される。
-OSi(X)(X)(X)・・・(10)
(式(10)中、Xは式(1)中のXと同じである。X及びXは、それぞれ独立に、アルコキシ基である。)
【0038】
次に、オルガノシラザンで表面処理することで、式(10)で表される官能基のX及びXが、オルガノシラザンに由来する-OSi(Y)(Y)(Y)(式(2)で表される官能基:第2の官能基)で置換される。
【0039】
シリカ粒子の表面に存在する水酸基のうち、シランカップリング剤に由来する官能基で置換されずに残存する水酸基が第2の官能基で置換される。このため、本発明の一態様で用いるシリカ粒子材料の表面には第1の官能基と第2の官能基とが結合する。
【0040】
シランカップリング剤とオルガノシラザンとのモル比は、好ましくは、シランカップリング剤:オルガノシラザン=1:2~1:10である。この場合、得られたシリカ粒子材料における第1の官能基と第2の官能基との存在数比は、理論上、1:12~1:60となる。
【0041】
表面処理の方法としては、シランカップリング剤及びオルガノシラザンで同時に表面処理を行う方法;シランカップリング剤で表面処理し、その後オルガノシラザンで表面処理する方法;オルガノシラザンで表面処理し、次にシランカップリング剤で表面処理し、その後オルガノシラザンで表面処理する方法等が挙げられ、いずれを用いてもよい。
いずれの方法においても、シリカ粒子の表面に存在する水酸基の全てが第2の官能基で置換されないようにオルガノシラザンの量を調整すればよい。
【0042】
式(10)で表される官能基のX及びXは、全て第2の官能基で置換されるのが好ましい。
【0043】
オルガノシラザンの一部を、第2のシランカップリング剤で置き換えてもよい。第2のシランカップリング剤としては、3つのアルコキシ基と、1つのアルキル基とを有する化合物を用いることができる。この場合、式(10)で表される官能基に含まれるX、Xが、第2のシランカップリング剤に由来する官能基で置換される。第2のシランカップリング剤に由来する官能基は、例えば下記式(11)で表される。
-OSi(Y)(X)(X)・・・(11)
(式(11)中、Yは第2の官能基におけるYと同じ(R)である。X及びXは、それぞれ独立に、アルコキシ基又は水酸基である。)
【0044】
式(11)で表される官能基に含まれるX及びXは、オルガノシラザンに由来する第2の官能基で置換されるか、又は他の式(11)で表される官能基で置換される。この場合、シリカ粒子材料の表面に存在するRの量をさらに多くすることができる。
オルガノシラザンの一部を第2のシランカップリング剤に置き換える場合、通常、第2のシランカップリング剤で表面処理した後に再度オルガノシラザンで表面処理する。式(11)で表される官能基に含まれるX及びXを最終的にはオルガノシラザンに由来する第2の官能基で置換するためである。
【0045】
オルガノシラザンの一部を第2のシランカップリング剤で置き換える場合、第1の官能基に含まれるX及びXは、オルガノシラザンに由来する第2の官能基で置換されるか、第2のシランカップリング剤に由来する式(11)で表される官能基で置換される。X及びXが式(11)で表される官能基で置換された場合、式(11)で表される官能基に含まれるX及びXは、第2の官能基で置換されるか、他の式(11)で表される官能基によって置換される。式(11)で表される官能基に含まれるX及びXが他の式(11)で表される官能基によって置換された場合、式(11)で表される官能基に含まれるX及びXは第2の官能基で置換される。このため、第2のシランカップリング剤は、第1のシランカップリング剤及びオルガノシラザンのみで表面処理する場合(オルガノシラザンを第2のシランカップリング剤で置き換えなかった場合)に設定されるオルガノシラザンの量(a)molに対して、最大で5a/3mol置き換えることができる。この場合に必要になるオルガノシラザンの量は、8a/3molである。
【0046】
第1のシランカップリング剤及び第2のシランカップリング剤に含まれるアルコキシ基に特に制限はないが、炭素数の小さなものが好ましく、炭素数1~12であることが好ましい。アルコキシ基の加水分解性を考慮すると、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基又はブトキシ基が好ましい。
【0047】
第1のシランカップリング剤として、具体的には、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0048】
オルガノシラザンとしては、シリカ粒子の表面に存在する水酸基及びシランカップリング剤に由来するアルコキシ基を上述した第2の官能基で置換できるものであればよいが、分子量の小さなものを用いるのが好ましい。具体的には、テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ペンタメチルジシラザン等が挙げられる。
【0049】
第2のシランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0050】
表面処理工程において、第1のシランカップリング剤の重合や第2のシランカップリング剤の重合を抑制するため重合禁止剤を加えてもよい。重合禁止剤としては、3,5-ジブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、p-メトキシフェノール(メトキノン)等の一般的なものを用いることができる。
【0051】
上述したシリカ粒子材料の製造方法において、表面処理工程後に固形化工程を設けてもよい。固形化工程は、表面処理後のシリカ粒子材料を鉱酸で沈殿させ、沈殿物を水で洗浄・乾燥して、シリカ粒子材料の固形物を得る工程である。
【0052】
鉱酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等が例示でき、塩酸が好ましい。鉱酸はそのまま用いてもよいが、鉱酸水溶液として用いるのが好ましい。鉱酸水溶液における鉱酸の濃度は0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。鉱酸水溶液の量は、洗浄対象であるシリカ粒子材料の質量を基準として6~12倍程度にすることができる。
【0053】
その後、洗浄して懸濁させたシリカ粒子材料をろ取し、水にて洗浄する。使用する水はアルカリ金属等のイオンを含まない(例えば質量基準で1ppm以下)ことが望ましい。例えば、イオン交換水、蒸留水、純水等である。
シリカ粒子材料の乾燥は、常法により行うことができる。例えば、加熱や、減圧(真空)下に放置する等である。
水を除去することで、混合材料中にシリカ粒子材料が混合乃至分散した状態とすることができる。
【0054】
(複合体の製造方法)
本発明の一態様による複合体は、上記の造核剤及びシリカ粒子材料を混合することにより製造することができる。混合方法に特に制限はないが、例えば、チョッパーを備える粉体ミキサー(例えば株式会社ダルトン製)により行う。
造核剤とシリカ粒子材料を混合することで、造核剤の表面の少なくとも一部がシリカ粒子材料によって被覆された複合体とすることができる。
【0055】
本発明の一態様に係る複合体の、例えば、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.9質量%以上又は100質量%が、上記の造核剤及びシリカ粒子材料であってもよい。
本発明の一態様に係る複合体は、本質的に上記の造核剤及びシリカ粒子材料からなってもよい。この場合、不可避不純物を含んでもよい。
【0056】
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の一態様による熱可塑性樹脂組成物は、上記の複合体と結晶性熱可塑性樹脂とを含む。
結晶性熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、乳酸系樹脂(PLA)、ポリフェニレンサルファイト(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、PTFE等のフッ素樹脂および液晶性ポリマー(LCP)等が挙げられ、ポリプロピレンが好ましい。ポリプロピレンは特に制限はなく、市販の各種共重合種、触媒種等のポリプロピレンを用いることができる。
【0057】
ポリプロピレンは、軽量かつ成形性に優れる樹脂組成物が得られる観点から、230℃、荷重2.16kgでのメルトフローレート(MFR)が0.1~200g/10分であると好ましい。さらに、剛性や耐衝撃性に優れる成形体が得られる観点から、230℃、荷重2.16kgでのメルトフローレートが0.1~50g/10分であるとより好ましい。メルトフローレートは、ASTM規格D1238に準拠した方法により測定する。
【0058】
結晶性熱可塑性樹脂の形状にも特に制限はなく、ペレット状、粉体状、スラリー状等のいずれでもよい。
【0059】
熱可塑性樹脂組成物における複合体の含有量は、好ましくは結晶性熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01~400質量部であり、より好ましくは0.1~100質量部であり、さらに好ましくは0.1~10質量部である。
複合体の含有量が0.01以上であれば、複合体添加効果が十分に発揮される。
【0060】
熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、公知の熱安定剤、光安定剤、加工性向上剤、着色剤等の添加剤を添加してもよい。
【0061】
本発明の一態様に係る熱可塑性樹脂組成物の、例えば、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.9質量%以上又は100質量%が、上記の複合体及び結晶性熱可塑性樹脂であってもよい。
本発明の一態様に係る熱可塑性樹脂組成物は、本質的に上記の複合体及び結晶性熱可塑性樹脂からなってもよい。この場合、不可避不純物を含んでもよい。
【0062】
本発明の一態様による熱可塑性樹脂組成物は、上記の複合体と結晶性熱可塑性樹脂とを溶融混合することにより製造することができる。溶融混合方法に特に制限はなく、ミキサー、ロール、ニーダー等を用いて行うことができる。
【0063】
[成形体]
本発明の一態様による熱可塑性樹脂組成物を用いて成形体を作製することができる。成形体の形状は特に限定されない。成形方法も特に制限されず、押出成形、プレス、キャスト、カレンダーロール等の公知の方法を使用できる。
【0064】
得られた成形体の利用分野は特に限定されず、例えば、自動車部品としてはバンパー、カウルトップ、ウェザーストリップ等の外装部品、インストルメントパネル、メータークラスター、ドアトリム、ラゲッジボード、HVACユニット等の内装部品、エアクリーナーエレメント等のエンジン部品等が挙げられ、家電部品としては冷凍冷蔵庫、炊飯器、電子レンジ、洗濯機、パーソナルコンピューター、エアーコンディショナー、エアーコンディショナー向け室外機、温水洗浄便座、テレビ受信機等の筐体、各種部品等が挙げられ、その他、プリンタ複合機の筐体、軸受け等の各種部品等のOA機器部品、スピーカー筐体、スピーカーフレーム、振動板等の音響部品、クランプカバー等の電設部品、浴室カウンター、キッチンパネル等の建築部材、生体適合性を利用した医療材料等の各種用途に使用できる。
【実施例
【0065】
実施例1
[複合体の製造]
1.シリカ粒子材料の調製
シリカ粒子材料を下記方法で製造した。
(1)表面処理工程
(準備工程:分散液の調製)
コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスOS」、平均粒径10nm、シリカ粒子が水中に分散したスラリー、固形分濃度20質量%)100質量部にイソプロパノール60質量部を加え、室温(約25℃)で混合して、シリカ粒子が液状媒体に分散した分散液を得た。
【0066】
(第1工程:フェニルトリメトキシシランによる表面処理)
得られた分散液に、フェニルトリメトキシシラン(シランカップリング剤、信越化学工業株式会社製「KBM-103」)を、コロイダルシリカ100質量部に対して1.8質量部加え、40℃で72時間混合した。これにより、シリカ粒子表面に存在する水酸基をシランカップリング剤で表面処理した。
フェニルトリメトキシシランは、後述する第2工程で必要な量の水酸基が残存するような量(コロイダルシリカ100質量部に対して1.8質量部)とした。
【0067】
(第2工程:ヘキサメチルジシラザンによる表面処理)
第1工程後の混合液に、ヘキサメチルジシラザン(信越化学工業株式会社製「HDMS-1」)を、コロイダルシリカ100質量部に対して3.7質量部加え、40℃で72時間放置した。表面処理の進行に伴い、疎水性になったシリカ粒子が水及びイソプロパノールの中で安定に存在できなくなり、凝集し、沈殿した。フェニルトリメトキシシランとヘキサメチルジシラザンのモル比は2:5とした。
【0068】
(2)固形化工程
第2工程後、35%塩酸5質量部を加えてシリカ粒子材料を沈殿させ、沈殿物をろ紙(アドバンテック社製「5A」)で濾過した。濾過残渣(固形分)を純水で洗浄した後に100℃で真空乾燥してシリカ粒子材料1を得た。
【0069】
得られたシリカ粒子材料について、単位表面積(nm)あたりのX(式(1)においてXで表される基)の存在数を測定した。Xの存在数はシリカ粒子材料の炭素量を基に算出した。詳しくは、第1工程後のシリカ粒子を水で洗浄し遠心分離した後に乾燥して、シランカップリング剤処理後のシリカ粒子試料を得た。この試料の炭素量を、有機炭素測定装置を用いて測定し、測定値を基にX数を算出した。その結果、X数は約1.2個/nmであった。
【0070】
2.複合体の調製
造核剤1(ミリケン&カンパニー社製「Millad NX8000」、ノニトール系造核剤)とシリカ粒子材料1とを10:1の割合(質量比)で、チョッパーを備える粉体ミキサー(株式会社ダルトン製)で混合して複合体1を得た。
【0071】
[熱可塑性樹脂組成物の製造]
複合体1と結晶性熱可塑性樹脂(結晶性熱可塑性樹脂1、株式会社プライムポリマー製「プライムポリプロJ137G」、ホモポリプロピレン、MFR=30g/10分)とを二軸連続押出機を用いて1:100の割合(質量比)で加熱溶融混合し、熱可塑性樹脂組成物を調製した。
【0072】
[成形体の製造及び評価]
得られた熱可塑性樹脂組成物を射出成形して厚さ1mmのプレート(成形体)を作成した。得られたプレートについて、分光光度計「V-650」(日本分光株式会社製)によりヘーズ(濁度)を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
比較例1
シリカ粒子材料1の代わりに比較シリカ粒子1(日本アエロジル株式会社製「アエロジル(登録商標)R974」、ヒュームド疎水性サブミクロン粒径シリカ、シリカ粒子表面に官能基としてジメチルシリル基のみを有するシリカ粒子)を用いた他は、実施例1と同様にして、複合体(比較複合体1)、熱可塑性樹脂組成物及び成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0074】
比較例2
複合体1の代わりに造核剤1をそのまま用いた他は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物及び成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
実施例2
造核剤として造核剤2(新日本理化株式会社製「ゲルオールMD」、ソルビトール系造核剤)を用いた他は、実施例1と同様にして、複合体(複合体2)、熱可塑性樹脂組成物及び成形体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0077】
比較例3
シリカ粒子材料1の代わりに比較シリカ粒子1を用いた他は、実施例2と同様にして、複合体(比較複合体2)、熱可塑性樹脂組成物及び成形体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0078】
比較例4
複合体2の代わりに造核剤2をそのまま用いた他は実施例2と同様にして熱可塑性樹脂組成物及び成形体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
実施例3
造核剤として造核剤3(ジャパンケムテック株式会社製「AL-PTBBA」、カルボン酸金属塩系造核剤)を用いた他は、実施例1と同様にして、複合体(複合体3)、熱可塑性樹脂組成物及び成形体を製造し、評価した。結果を表3に示す。
【0081】
比較例5
シリカ粒子材料1の代わりに比較シリカ粒子1を用いた他は、実施例3と同様にして、複合体(比較複合体3)、熱可塑性樹脂組成物及び成形体を製造し、評価した。結果を表3に示す。
【0082】
比較例6
複合体3の代わりに造核剤3をそのまま用いた他は実施例3と同様にして熱可塑性樹脂組成物及び成形体を製造し、評価した。結果を表3に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
実施例4
造核剤として造核剤4(株式会社ADEKA製「アデカスタブNA-11」、リン酸エステル金属塩系造核剤)を用いた他は、実施例1と同様にして、複合体(複合体4)、熱可塑性樹脂組成物及び成形体を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0085】
比較例7
シリカ粒子材料1の代わりに比較用シリカ粒子1を用いた他は、実施例4と同様にして、複合体(比較複合体4)、熱可塑性樹脂組成物及び成形体を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0086】
比較例8
複合体4の代わりに造核剤4をそのまま用いた他は実施例4と同様にして熱可塑性樹脂組成物及び成形体を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0087】
【表4】
【0088】
実施例5
造核剤として造核剤5(株式会社ADEKA製「アデカスタブNA-21」、リン酸エステル金属塩系造核剤)を用いた他は、実施例1と同様にして、複合体(複合体5)、熱可塑性樹脂組成物及び成形体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
【0089】
比較例9
シリカ粒子材料1の代わりに比較シリカ粒子1を用いた他は、実施例5と同様にして、複合体(複合体5)、熱可塑性樹脂組成物及び成形体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
【0090】
比較例10
複合体5の代わりに造核剤5をそのまま用いた他は実施例5と同様にして熱可塑性樹脂組成物及び成形体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
【0091】
【表5】
【0092】
表1~5より、特定の構造を有するシリカ粒子材料が造核剤に付着した本発明の複合体を用いることで、成形体のヘーズが低減され、透明性を向上できることが分かる。