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特許7097203クライミング式テルハ及び建物の解体方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】クライミング式テルハ及び建物の解体方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
E04G23/08 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018053359
(22)【出願日】2018-03-20
(65)【公開番号】P2019163672
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】西村 淳
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-263531(JP,A)
【文献】特開2014-129697(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0083351(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14、21/16、21/28、23/08
B66F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱枠状に形成されたフレームと、
前記フレームに一体に設けられるともに伸縮して前記フレームの側面から水平方向外側に張出可能に設けられた上部受け架台と、
前記フレームの直下に設けられるとともに、伸縮して水平方向外側に張出可能に設けられた下部受け架台と、
上端を前記フレームに、下端を前記下部受け架台にそれぞれ接続して上下方向に伸縮駆動する複数のクライミングジャッキと、
前記フレームに支持されて水平方向に移動可能に設けられた揚重装置と、
前記フレームの頂部に設けられる搬送台車と、
設置/撤去可能に設けられ、前記揚重装置を前記フレームの側面の外側に移動させるための張出/延長用走行レールとを備えることを特徴とするクライミング式テルハ。
【請求項2】
請求項1記載のクライミング式テルハを用いて建物を解体する方法であって、
建物内に前記クライミング式テルハ設置するクライミング式テルハ組立て設置工程と、
前記搬送台車が上方の床スラブに当接してこれを支持する位置まで前記クライミングジャッキを伸長する直上スラブ仮支持工程と、
前記搬送台車で受けた状態を維持しつつ、前記床スラブを切断し、前記クライミング式テルハが上方に通過移動可能な開口部を形成する直上スラブ開口工程と、
前記床スラブを切断して分離した切断片を搬送台車で搬送除去する切断片撤去工程と、
前記搬送台車を前記フレームの頂部に戻すとともに、前記上部受け架台が新たに形成した直上の開口部を上方に通過するまで前記クライミングジャッキを伸ばし、前記上部受け架台で前記クライミング式テルハを支持するとともに、前記下部受け架台を上方に移動しつつ前記下部受け架台で前記クライミング式テルハを支持するクライミング工程と、
前記直上スラブ仮支持工程と前記直上スラブ開口工程と前記切断片撤去工程とクライミング工程とを繰り返し行って建物の最頂部にクライミング式テルハを設置するクライミング式テルハ頂部到達工程と、
前記張出/延長用走行レールを取り付け、前記揚重装置で解体部材を地上に搬送しつつ建物の上階から解体作業を行い、且つ、前記上部受け架台と前記下部受け架台で前記クライミング式テルハを支持しつつ順次クライミング式テルハを下方に移動し、上階から下階まで順次建物を解体してゆく建物解体工程とを備えることを特徴とする建物の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライミング式テルハ及びこれを用いた建物の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中小規模のビルを解体し、超高層に建替えることを目的とした解体工事では、バックホー、ニブラ等を使用して建物躯体を解体し、解体部材を上階から落としてゆく手法が多用されている。
【0003】
一方、近年では超高層ビルの解体工事が増加してきており、また、解体時の環境対策などにより、従来の中小規模のビルを解体構法では対応できないケースが増えている。すなわち、超高層ビルとして建設されたビルも老朽化を理由に解体されるケースが増え、解体対象の高層化が進んでいる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-046360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、解体重機を設置する解体構法では、中小規模ビルの解体の場合、建屋の高さが低いことから移動式クレーンを用いて解体重機を屋上階に設置することができる。これに対し、超高層ビルの場合には、建屋の高さが高いため、タワークレーン等を設置して解体重機を設置しなければならない。
【0006】
また、解体部材の搬送作業においても、中小規模ビルの解体の場合にはエレベータシャフト等の開口を使って解体部材を落下させ地上階におろすことができるのに対し、超高層ビルの場合には、バケット等に解体部材を集積し、タワークレーン等で地上階におろすことが必要になる。
【0007】
よって、超高層ビルを解体する場合にはビルの高さに応じた揚程能力を有したタワークレーンが必要であり、さらに、タワークレーンを設置するにはおよそ1か月程度が必要で、工期の短い解体工事ではタワークレーンの組立解体日数が工期のウェイトを占めてしまう。
【0008】
このような背景から、超高層ビルの解体工事を好適に行うことが可能な手法の開発が強く望まれていた。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、超高層ビルであっても解体工事を好適に行うことを可能にするクライミング式テルハ及び建物の解体方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0011】
本発明に係るクライミング式テルハは、箱枠状に形成されたフレームと、前記フレームに一体に設けられるともに伸縮して前記フレームの側面から水平方向外側に張出可能に設けられた上部受け架台と、前記フレームの直下に設けられるとともに、伸縮して水平方向外側に張出可能に設けられた下部受け架台と、上端を前記フレームに、下端を前記下部受け架台にそれぞれ接続して上下方向に伸縮駆動する複数のクライミングジャッキと、前記フレームに支持されて水平方向に移動可能に設けられた揚重装置と、前記フレームの頂部に設けられる搬送台車と、設置/撤去可能に設けられ、前記揚重装置を前記フレームの側面の外側に移動させるための張出/延長用走行レールとを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る建物の解体方法は、上記のクライミング式テルハを用いて建物を解体する方法であって、建物内に前記クライミング式テルハ設置するクライミング式テルハ組立て設置工程と、前記搬送台車が上方の床スラブに当接してこれを支持する位置まで前記クライミングジャッキを伸長する直上スラブ仮支持工程と、前記搬送台車で受けた状態を維持しつつ、前記床スラブを切断し、前記クライミング式テルハが上方に通過移動可能な開口部を形成する直上スラブ開口工程と、前記床スラブを切断して分離した切断片を搬送台車で搬送除去する切断片撤去工程と、前記搬送台車を前記フレームの頂部に戻すとともに、前記上部受け架台が新たに形成した直上の開口部を上方に通過するまで前記クライミングジャッキを伸ばし、前記上部受け架台で前記クライミング式テルハを支持するとともに、前記下部受け架台を上方に移動しつつ前記下部受け架台で前記クライミング式テルハを支持するクライミング工程と、前記直上スラブ仮支持工程と前記直上スラブ開口工程と前記切断片撤去工程とクライミング工程とを繰り返し行って建物の最頂部にクライミング式テルハを設置するクライミング式テルハ頂部到達工程と、前記張出/延長用走行レールを取り付け、前記揚重装置で解体部材を地上に搬送しつつ建物の上階から解体作業を行い、且つ、前記上部受け架台と前記下部受け架台で前記クライミング式テルハを支持しつつ順次クライミング式テルハを下方に移動し、上階から下階まで順次建物を解体してゆく建物解体工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のクライミング式テルハ及びこれを用いた建物の解体方法においては、クライミング式テルハ(テルハ装置)を機械の設置を1階で行え、このクライミング式テルハ自身の駆動で建物の最上階まで移動することができる。また、クライミング式テルハを用いて解体機械の揚重、解体部材の搬出を行うことができ、大型揚重機を必要としない。さらに、建物の解体作業の進捗に応じて、クライミング式テルハ自身の駆動で下方の所定階に移動できる。
【0014】
よって、本発明のクライミング式テルハ及び建物の解体方法によれば、超高層ビルであっても、言い換えれば、建物(構造物)の規模に影響を受けることなく、その建物の解体工事を好適に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを示す正面図であり、建物内を上昇するクライミング時の状態を示す図である。
図2図1のX1-X1線矢視図であり、本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを示す側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを示す正面図であり、下降する建物解体時の状態を示す図である。
図4図3のX1-X1線矢視図であり、本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを示す側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、クライミング式テルハを設置するために建物の下階側の床スラブに開口部を形成した状態を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、建物の1階にクライミング式テルハを設置した状態を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、搬送台車で直上の床スラブを支持する位置までフレームを上げた状態を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、搬送台車で床スラブを支持しつつ床スラブを切断している状態を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、床スラブを切断した後にフレームを上げて搬送台車で床スラブの切断片を支持した状態を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、搬送台車で床スラブの切断片を撤去している状態を示す図である。
図11】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、新たに形成した床スラブの開口部を通じてフレームを上方に移動した状態を示す図である。
図12】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、上部受け架台でフレームを支持するために上部受け架台を張り出した状態を示す図である。
図13】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、上部受け架台でフレームを支持するともに下部受け架台を下階の床スラブから離した状態を示す図である。
図14】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、下部受け架台を縮めた状態を示す図である。
図15】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、下部受け架台を開口部を通じて上方の床スラブ位置まで移動した状態を示す図である。
図16】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、下部受け架台を再度張り出した状態を示す図である。
図17】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、下部受け架台でフレームを再度支持した状態を示す図である。
図18】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、直上の床スラブを切断撤去する作業を繰り返し行ってクライミングしてゆく状態を示す図である。
図19】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、クライミング式テルハを建物の最頂部に設置した状態を示す図である。
図20】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、建物の最頂部に設置したクライミング式テルハの揚重装置で張出/延長用走行レールを吊り上げ搬入している状態を示す図である。
図21】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、搬入した張出/延長用走行レールを所定位置に仮置きした状態を示す図である。
図22】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、下部受け架台を床スラブから離した状態を示す図である。
図23】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、下部受け架台を縮めた状態を示す図である。
図24】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、下部受け架台を下方に移動した状態を示す図である。
図25】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、下部受け架台を伸ばした状態を示す図である。
図26】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、下部受け架台を下方の床スラブに当接させてクライミング式テルハを下部受け架台で支持した状態を示す図である。
図27】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、上部受け架台を縮めた状態を示す図である。
図28】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、フレームを下方に移動し、仮置きした張出/延長用走行レールとサドル走行レールのレベルを合わせた状態を示す図である。
図29】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、張出/延長用走行レールとフレーム/サドル走行レールに接続した状態を示す図である。
図30】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、上部受け架台及び下部受け架台でフレームをクライミング式テルハを支持した状態を示す図である。
図31】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、揚重装置を用いて、重機等を地上から吊り上げて搬入している状態を示す図である。
図32】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、建物の最頂部の解体作業を開始し、解体部材を揚重装置で地上に吊り下げて搬送撤去している状態を示す図である。
図33】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、盛替え作業を行うために下部受け架台を縮めた状態を示す図である。
図34】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、盛替え作業を行うために下部受け架台を下方に移動し、下部受け架台を伸ばして下方の床スラブに当接してクライミング式テルハを支持させた状態を示す図である。
図35】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、盛替え作業を行うために上部受け架台を縮めた後、下方に移動した状態を示す図である。
図36】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、上部受け架台を伸ばした状態を示す図である。
図37】本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハを用いた建物の解体方法において、上部受け架台でクライミング式テルハを支持させ、盛替え作業が完了した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1から図37を参照し、本発明の一実施形態に係るクライミング式テルハ及び建物の解体方法について説明する。ここで、本発明に係るクライミング式テルハは、超高層ビルの解体工事に用いて好適な揚重/搬送用の装置であるが、勿論、超高層ビル以外のあらゆる建物(構造物)の解体にも適用可能である。
【0017】
本実施形態のクライミング式テルハAは、図1から図4に示すように、例えば、鉄骨材を組み付けて略矩形箱枠状に形成されたフレーム1と、フレーム1の下方部分に一体に設けられるともに伸縮してフレーム1の側面から水平方向外側に張出可能に設けられた上部受け架台2と、フレーム1の直下に設けられるとともに、伸縮して水平方向外側に張出可能に設けられた下部受け架台3と、上端をフレーム1に、下端を下部受け架台3にそれぞれ接続して上下方向に伸縮駆動する複数のクライミングジャッキ4と、フレーム1の上部受け架台2よりも上方に配されるとともに、サドル走行レール5に走行サドル6を支持させて水平方向に走行移動可能に設けられた電動ウインチ(揚重装置)7とを備えて構成されている。
【0018】
また、上部受け架台2と下部受け架台3はそれぞれ、油圧シリンダーの伸縮駆動によって水平方向に張出/退避可能に構成されている。
【0019】
本実施形態のクライミング式テルハAには、上部受け架台2と下部受け架台3の油圧シリンダーと、クライミングジャッキ4の油圧シリンダーを伸縮駆動するための油圧ユニット10がフレーム1に一体に取り付けられている。
【0020】
本実施形態のクライミング式テルハAは、建物内を上昇するクライミング時の状態の図1及び図2に示すように、水平方向に走行移動自在に、且つ設置/撤去可能に設けられる搬送台車11をフレーム1の頂部(上端)に備えている。さらに、下降する建物解体時の状態の図3及び図4に示すように、クライミング式テルハAは、電動ウインチ7を走行させるための走行レール5をフレーム1の両外側に延長するように着脱可能(設置/撤去可能)に設けられる張出/延長用走行レール12を備えている。
【0021】
なお、揚重装置は、電動ウインチ7に限定する必要はなく、また、揚重装置を水平方向に移動させる手段も限定する必要はない。
【0022】
次に、上記構成からなる本実施形態のクライミング式テルハAを用いて建物を解体する方法について説明するとともに、本実施形態のクライミング式テルハ(建物の解体方法)の作用効果について説明する。
【0023】
本実施形態のクライミング式テルハAを用いて建物Tを解体する際には、図5に示すように、クライミング式テルハAの組立てが可能な領域を確保するために、建物Tの下階の床スラブ15の一部を予め解体して開口部16を形成する。例えば、2~3フロア分の床スラブ15を解体する。
【0024】
そして、図6に示すように、床スラブ15を予め解体して形成された上下方向に延びる建物内の空間を利用し、この空間内にクライミング式テルハAを組立てて設置する(クライミング式テルハ組立て設置工程)。このとき、クライミング式テルハAは、その頂部に搬送台車11を設け、張出/延長用走行レール12を撤去した図1及び図2の状態で組み立てられる。また、下部受け架台3の油圧シリンダーを伸長させて下部受け架台3を外側に張り出しておく。
【0025】
次に、図7に示すように、フレーム1の頂部に設けられた搬送台車11が上方の床スラブ15に当接してこれを支持する位置までクライミングジャッキ(クライミング用の油圧シリンダー)4を伸長する(直上スラブ仮支持工程)。
【0026】
次に、図8図9に示すように、上方の床スラブ15を搬送台車11で受けた状態を維持しつつ、この上方の床スラブ15を、道路カッター17などを用いて切断し、クライミング式テルハAが上方に通過移動可能な開口部16を形成する(直上スラブ開口工程)。
【0027】
このとき、図8図9に示すように、床スラブ15を切断するとともに搬送台車11で床スラブ15の切断片15aを受け、この状態でクライミングジャッキ4を伸ばし、切断対象階に敷設した走行レール18のレベルまでフレーム1の頂部ひいては搬送台車11を上昇させる。これにより、直上の床スラブ15に開口部16が形成される。また、図10に示すように、切断対象階に敷設した走行レール18上を走行させて搬送台車11とともに床スラブ15の切断片15aを切断対象階に取り込んで、搬送台車11から下ろし仮置きする(切断片撤去工程)。この床スラブ15の切断片15aは後のクライミング式テルハAの下降時に搬出撤去する。なお、搬送台車11は、走行レール18上を走行するのではなく、フレーム1上及び床スラブ15上を自在に走行、移動できるように構成されていても勿論構わない。
【0028】
次に、図11に示すように、搬送台車11をフレーム1の頂部に戻すとともに、上部受け架台2が次の階のスラブ位置(新たに形成した直上の開口部16)を上方に通過するまでクライミングジャッキ4を伸ばす。図12に示すように、この段階で上部受け架台2の油圧シリンダーを伸ばし、上部受け架台2をフレーム1の側面から床スラブ15の上に張り出す。
【0029】
次に、図13に示すように、クライミングジャッキ4の油圧シリンダーを縮め、上部受け架台2を床スラブ15に当接して支持させ、下部受け架台3を下階の床スラブ15から離し、下部受け架台3による支持状態を解除する(上部受け架台支持工程/クライミング工程)。
【0030】
次に、図14に示すように、クライミング式テルハAが上部受け架台2を床スラブ15に当接させて支持された段階で、油圧シリンダーを縮長させ、下部受け架台3を縮めて退避させる。そして、図15に示すように、下部受け架台3が次の直上の床スラブ15を通過するまでクライミングジャッキ4の油圧シリンダーを縮め、図16に示すように、再度、下部受け架台3を張り出して床スラブ15上に下部受け架台3を伸ばす。
【0031】
この段階で、図17に示すように、クライミングジャッキ4の油圧シリンダーを伸ばし、下部受け架台3を床スラブ15に当接させ、クライミング式テルハAを下部受け架台3で支持させる(下部受け架台支持工程/クライミング工程)。また、上部受け架台2を縮めて退避させる。
【0032】
そして、図6から図17に示す操作/工程を順次繰り返してゆくことにより、図18に示すように、建物Tの頂部まで各階の床スラブ15に開口部16を形成しつつクライミング式テルハAをクライミング(上昇移動)させることができる(クライミング式テルハ頂部到達工程)。また、図18に示すように、クライミング式テルハAのフレーム1の頂部が建物Tの最頂部に達した段階で搬送台車11を床スラブ15の切断片15aとともにフレーム1の頂部から走行移動させて撤去する(搬送台車撤去工程)。
【0033】
次に、図19に示すように、上部受け架台2を建物Tの最頂部の床スラブ15に支持させ、且つ、下部受け架台3を直下の階の床スラブ15に支持させるようにして、クライミング式テルハAを建物最上部までクライミングさせる(最上部設置工程)。
【0034】
この段階で、図20に示すように、電動ウインチ7を使って地上から張出/延長用走行レール12を建物Tの最頂部に搬入する(張出/延長用走行レール搬入工程)。また、図21に示すように、搬入した張出/延長用走行レール12を、台車等に載せ、取り付けしやすい状態にして仮置きする。
【0035】
次に、図22に示すように、下部受け架台3が床スラブ15から離れるようにクライミングジャッキ4の油圧シリンダーを縮め、下部受け架台3による支持状態を解除するとともに、図23に示すように、下部受け架台3を縮める。
【0036】
次に、図24に示すように、下部受け架台3が下階の床スラブ15付近まで降下するようにクライミングジャッキ4の油圧シリンダーを伸ばし、図25に示すように、下部受け架台3を張り出し、さらにクライミングジャッキ4の油圧シリンダーを伸ばして、図26に示すように、下部受け架台3を床スラブ15に当接させ、下階の床スラブ15でクライミング式テルハAを支持させる(下部受け架台下降/支持工程)。
【0037】
次に、図27に示すように、上部受け架台2を縮めるとともにクライミングジャッキ4の油圧シリンダーを縮め、図28に示すように、サドル走行レール5と張出/延長用走行レール12の高さ位置が一致するまでクライミング式テルハAを下降させる。図29に示すように、サドル走行レール5に張出/延長用走行レール12を接続し、図30に示すように、再度、クライミング式テルハAを建物最上部までクライミングさせる(最上部再設置工程)。
【0038】
次に、図31に示すように、解体作業に必要な重機等を電動ウインチ7、サドル走行レール5、張出/延長用走行レール12を用いて地上から揚重、盛替えし、建物Tの最上階の解体作業を始め、図32に示すように、電動ウインチ7、サドル走行レール5、張出/延長用走行レール12を用いて解体部材20を地上の下階に順次搬送撤去する(最上部解体工程)。
【0039】
そして、建物Tの最上階の解体作業が完了した段階で、直下の階の解体作業を行うために重機等の直下の階への搬送、盛替えを行う。
【0040】
この盛替え作業時には、図33に示すように、下部受け架台3を縮め、図34に示すように、クライミングジャッキ4の油圧シリンダーを伸ばして下部受け架台3を下方に移動し、下部受け架台3を伸ばして下方の床スラブ15に当接させてクライミング式テルハAを支持させる。次に、図35に示すように、上部受け架台2を縮めるとともにクライミングジャッキ4の油圧シリンダーを縮めてクライミング式テルハAを下げる。そして、図36に示すように、上部受け架台2を伸ばし、図37に示すように、さらにクライミングジャッキ4の油圧シリンダーを縮めて上部受け架台2でクライミング式テルハAを支持させる。この状態で下階の解体作業、解体部材20の搬送撤去を行ってゆく。
【0041】
上記と同様の操作を繰り返し行って順次クライミング式テルハAを下降させながら建物Tを上階から下階まで解体してゆく(建物解体工程)。
【0042】
したがって、本実施形態のクライミング式テルハAにおいては、機械の設置を1階で行え、クライミング式テルハA自身の駆動で建物Tの最上階まで移動することができる。また、このクライミング式テルハAを用いて解体機械の揚重、解体部材20の搬出を行うことができ、大型揚重機を必要としない。さらに、建物Tの解体作業の進捗に応じて、クライミング式テルハA自身の駆動で下方の所定階に移動できる。
【0043】
よって、本実施形態のクライミング式テルハA及び建物Tの解体方法によれば、超高層ビルであっても、言い換えれば、建物(構造物)Tの規模に影響を受けることなく、その建物Tの解体工事を好適に行うことが可能になる。
【0044】
以上、本発明に係るクライミング式テルハ及び建物の解体方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0045】
例えば、本実施形態では、クライミングジャッキ4が油圧式であるものとして説明を行っているが、空気圧など他の方式で伸縮するものであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 フレーム
2 上部受け架台
3 下部受け架台
4 クライミングジャッキ
5 サドル走行レール
6 サドル
7 電動ウインチ(揚重装置)
10 油圧ユニット
11 搬送台車
12 張出/延長用走行レール
15 床スラブ
15a 切断片
16 開口部
17 道路カッター
18 走行レール
A クライミング式テルハ
T 建物
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