(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23B 29/24 20060101AFI20220630BHJP
B23B 31/02 20060101ALI20220630BHJP
B23P 23/02 20060101ALI20220630BHJP
B23Q 1/64 20060101ALI20220630BHJP
B23B 3/16 20060101ALI20220630BHJP
B23B 11/00 20060101ALI20220630BHJP
B23G 1/34 20060101ALI20220630BHJP
B23G 5/00 20060101ALI20220630BHJP
B23Q 3/12 20060101ALI20220630BHJP
B23B 3/30 20060101ALI20220630BHJP
B23Q 1/56 20060101ALI20220630BHJP
B23Q 1/52 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B23B29/24 A
B23B31/02 601Z
B23P23/02 A
B23Q1/64 D
B23B3/16 A
B23B11/00
B23G1/34
B23G5/00
B23Q3/12 C
B23B3/30
B23Q1/56 B
B23Q1/52
(21)【出願番号】P 2018079107
(22)【出願日】2018-04-17
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000133593
【氏名又は名称】株式会社ツガミ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】小坂 貴史
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-037043(JP,A)
【文献】特開2012-061584(JP,A)
【文献】実開昭60-109802(JP,U)
【文献】実開昭64-003401(JP,U)
【文献】特開2006-088270(JP,A)
【文献】特開2006-150574(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0264528(US,A1)
【文献】特開2014-046384(JP,A)
【文献】特許第5722682(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0256932(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0072473(US,A1)
【文献】特開2016-036868(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0131224(US,A1)
【文献】国際公開第2011/078365(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00-25/06
B23B 27/00-29/34
B23B 31/00-33/00
B23G 1/00-11/00
B23Q 1/00-1/76
B23P 5/00-17/06
B23P 23/00-25/00
B23Q 3/00-3/154
B23Q 3/16-3/18
B23Q 9/00-9/02
B25H 1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に対して回転軸線を中心に回転可能に設けられ、前記回転軸線が延びる方向において互いに間隔を空けて位置する複数の工具を保持可能な工具保持部と、
前記工具保持部を前記基台に対して前記回転軸線を中心に回転させることで、ワークに対する前記複数の工具の向きを調整する回転駆動部と、を備え、
前記複数の工具は、前記工具保持部に対して着脱可能なカートリッジ式工具を含み、
前記工具保持部は、前記複数の工具の各々を回転駆動することが可能であり、装着可能な前記カートリッジ式工具の数に応じて設けられる複数の歯車であって、駆動源の作動によって前記カートリッジ式工具とともに回転する複数の歯車を備え、
前記カートリッジ式工具は、工具先端と反対側の端部に第1嵌合部を備え、
前記複数の歯車は、それぞれ、前記第1嵌合部に嵌合する第2嵌合部を備え、
前記工具保持部に装着された前記カートリッジ式工具は、前記工具保持部にねじで固定され
、
前記カートリッジ式工具として、第1のカートリッジ式工具と、前記第1のカートリッジ式工具よりも大きい第2のカートリッジ式工具とがあり、
前記第2のカートリッジ式工具を使用する場合には、前記工具保持部に対して同時に装着可能な複数個の前記第1のカートリッジ式工具のうち、少なくとも、隣り合う2つの前記第1のカートリッジ式工具が外された状態の前記工具保持部に前記第2のカートリッジ式工具が装着される、
工作機械。
【請求項2】
基台と、
前記基台に対して回転軸線を中心に回転可能に設けられ、前記回転軸線が延びる方向において互いに間隔を空けて位置する複数の工具を保持可能な工具保持部と、
前記工具保持部を前記基台に対して前記回転軸線を中心に回転させることで、ワークに対する前記複数の工具の向きを調整する回転駆動部と
、
工具を回転可能に保持する工具台と、を備え、
前記複数の工具は、前記工具保持部に対して着脱可能なカートリッジ式工具を含み、
前記工具保持部は、前記複数の工具の各々を回転駆動することが可能であり、装着可能な前記カートリッジ式工具の数に応じて設けられる複数の歯車であって、駆動源の作動によって前記カートリッジ式工具とともに回転する複数の歯車を備え、
前記カートリッジ式工具は、工具先端と反対側の端部に第1嵌合部を備え、
前記複数の歯車は、それぞれ、前記第1嵌合部に嵌合する第2嵌合部を備え、
前記工具保持部に装着された前記カートリッジ式工具は、前記工具保持部にねじで固定され
、
前記工具保持部に対して着脱可能な前記カートリッジ式工具と同一のものが、前記工具台に対しても着脱可能である、
工作機械。
【請求項3】
基台と、
前記基台に対して回転軸線を中心に回転可能に設けられ、前記回転軸線が延びる方向において互いに間隔を空けて位置する複数の工具を保持可能な工具保持部と、
前記工具保持部を前記基台に対して前記回転軸線を中心に回転させることで、ワークに対する前記複数の工具の向きを調整する回転駆動部と
、
前記回転軸線を第1回転軸線とすると、鉛直方向に沿う前記第1回転軸線と直交する第2回転軸線を中心にワークを回転可能に保持するワーク保持部と、を備え、
前記複数の工具は、前記工具保持部に対して着脱可能なカートリッジ式工具を含み、
前記工具保持部は、前記複数の工具の各々を回転駆動することが可能であり、装着可能な前記カートリッジ式工具の数に応じて設けられる複数の歯車であって、駆動源の作動によって前記カートリッジ式工具とともに回転する複数の歯車を備え、
前記カートリッジ式工具は、工具先端と反対側の端部に第1嵌合部を備え、
前記複数の歯車は、それぞれ、前記第1嵌合部に嵌合する第2嵌合部を備え、
前記工具保持部に装着された前記カートリッジ式工具は、前記工具保持部にねじで固定され
、
前記カートリッジ式工具として、少なくとも、回転工具、ワークを挿通させることができるワーリング加工ユニット、又は増速スピンドルが前記工具保持部に対して着脱可能であり、
前記基台と前記ワーク保持部とは、前記第1回転軸線に沿う方向と、前記第2回転軸線に沿う方向とを含む互いに直交する三軸方向に相対的に移動可能である、
工作機械。
【請求項4】
前記カートリッジ式工具として
、第1のカートリッジ式工具と、前記第1のカートリッジ式工具よりも大きい第2のカートリッジ式工具とがあり、
前記第2のカートリッジ式工具を使用する場合には、
前記工具保持部に対して同時に装着可能な複数個の前記第1のカートリッジ式工具のうち、少なくとも、隣り合う2つの前記第1のカートリッジ式工具が外された状態の前記工具保持部に前記第2のカートリッジ式工具が装着される、
請求項
2に記載の工作機械。
【請求項5】
工具を回転可能に保持する工具台を備え、
前記工具保持部に対して着脱可能な前記カートリッジ式工具と同一のものが、前記工具台に対しても着脱可能である、
請求項
3に記載の工作機械。
【請求項6】
前記回転軸線を第1回転軸線とすると、鉛直方向に沿う前記第1回転軸線と直交する第2回転軸線を中心にワークを回転可能に保持するワーク保持部を備え、
前記カートリッジ式工具として、少なくとも、回転工具、ワークを挿通させることができるワーリング加工ユニット、又は増速スピンドルが前記工具保持部に対して着脱可能であり、
前記基台と前記ワーク保持部とは、前記第1回転軸線に沿う方向と、前記第2回転軸線に沿う方向とを含む互いに直交する三軸方向に相対的に移動可能である、
請求項1
又は4に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の工作機械として、特許文献1には、鉛直方向に沿って立つ基台に対して回転可能に設けられたB軸回転工具部を備えるものが開示されている。B軸回転工具部は、鉛直方向において互いに間隔を空けて設けられた複数の回転工具を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された工作機械では、ワークに施す加工に合わせてB軸回転工具部の回転工具を交換することは想定されておらず、B軸回転工具部に対する回転工具の着脱は容易ではない。したがって、B軸回転工具部により可能な加工の種類は、B軸回転工具部に予め取り付けられた回転工具の種類に依存し、例えば、穴あけ加工、タップ加工、エンドミル加工等に限られていた。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、多様な加工を簡便に行うことができる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る工作機械は、
基台と、
前記基台に対して回転軸線を中心に回転可能に設けられ、前記回転軸線が延びる方向において互いに間隔を空けて位置する複数の工具を保持可能な工具保持部と、
前記工具保持部を前記基台に対して前記回転軸線を中心に回転させることで、ワークに対する前記複数の工具の向きを調整する回転駆動部と、を備え、
前記複数の工具は、前記工具保持部に対して着脱可能なカートリッジ式工具を含み、
前記工具保持部は、前記複数の工具の各々を回転駆動することが可能であり、装着可能な前記カートリッジ式工具の数に応じて設けられる複数の歯車であって、駆動源の作動によって前記カートリッジ式工具とともに回転する複数の歯車を備え、
前記カートリッジ式工具は、工具先端と反対側の端部に第1嵌合部を備え、
前記複数の歯車は、それぞれ、前記第1嵌合部に嵌合する第2嵌合部を備え、
前記工具保持部に装着された前記カートリッジ式工具は、前記工具保持部にねじで固定され、
前記カートリッジ式工具として、第1のカートリッジ式工具と、前記第1のカートリッジ式工具よりも大きい第2のカートリッジ式工具とがあり、
前記第2のカートリッジ式工具を使用する場合には、前記工具保持部に対して同時に装着可能な複数個の前記第1のカートリッジ式工具のうち、少なくとも、隣り合う2つの前記第1のカートリッジ式工具が外された状態の前記工具保持部に前記第2のカートリッジ式工具が装着される。
(2)上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る工作機械は、
基台と、
前記基台に対して回転軸線を中心に回転可能に設けられ、前記回転軸線が延びる方向において互いに間隔を空けて位置する複数の工具を保持可能な工具保持部と、
前記工具保持部を前記基台に対して前記回転軸線を中心に回転させることで、ワークに対する前記複数の工具の向きを調整する回転駆動部と、
工具を回転可能に保持する工具台と、を備え、
前記複数の工具は、前記工具保持部に対して着脱可能なカートリッジ式工具を含み、
前記工具保持部は、前記複数の工具の各々を回転駆動することが可能であり、装着可能な前記カートリッジ式工具の数に応じて設けられる複数の歯車であって、駆動源の作動によって前記カートリッジ式工具とともに回転する複数の歯車を備え、
前記カートリッジ式工具は、工具先端と反対側の端部に第1嵌合部を備え、
前記複数の歯車は、それぞれ、前記第1嵌合部に嵌合する第2嵌合部を備え、
前記工具保持部に装着された前記カートリッジ式工具は、前記工具保持部にねじで固定され、
前記工具保持部に対して着脱可能な前記カートリッジ式工具と同一のものが、前記工具台に対しても着脱可能である。
(3)上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係る工作機械は、
基台と、
前記基台に対して回転軸線を中心に回転可能に設けられ、前記回転軸線が延びる方向において互いに間隔を空けて位置する複数の工具を保持可能な工具保持部と、
前記工具保持部を前記基台に対して前記回転軸線を中心に回転させることで、ワークに対する前記複数の工具の向きを調整する回転駆動部と、
前記回転軸線を第1回転軸線とすると、鉛直方向に沿う前記第1回転軸線と直交する第2回転軸線を中心にワークを回転可能に保持するワーク保持部と、を備え、
前記複数の工具は、前記工具保持部に対して着脱可能なカートリッジ式工具を含み、
前記工具保持部は、前記複数の工具の各々を回転駆動することが可能であり、装着可能な前記カートリッジ式工具の数に応じて設けられる複数の歯車であって、駆動源の作動によって前記カートリッジ式工具とともに回転する複数の歯車を備え、
前記カートリッジ式工具は、工具先端と反対側の端部に第1嵌合部を備え、
前記複数の歯車は、それぞれ、前記第1嵌合部に嵌合する第2嵌合部を備え、
前記工具保持部に装着された前記カートリッジ式工具は、前記工具保持部にねじで固定され、
前記カートリッジ式工具として、少なくとも、回転工具、ワークを挿通させることができるワーリング加工ユニット、又は増速スピンドルが前記工具保持部に対して着脱可能であり、
前記基台と前記ワーク保持部とは、前記第1回転軸線に沿う方向と、前記第2回転軸線に沿う方向とを含む互いに直交する三軸方向に相対的に移動可能である。
【0007】
(4)上記(2)の工作機械において、前記カートリッジ式工具として、第1のカートリッジ式工具と、前記第1のカートリッジ式工具よりも大きい第2のカートリッジ式工具とがあり、
前記第2のカートリッジ式工具を使用する場合には、前記工具保持部に対して同時に装着可能な複数個の前記第1のカートリッジ式工具のうち、少なくとも、隣り合う2つの前記第1のカートリッジ式工具が外された状態の前記工具保持部に前記第2のカートリッジ式工具が装着される、ようにしてもよい。
(5)上記(3)の工作機械は、工具を回転可能に保持する工具台を備え、
前記工具保持部に対して着脱可能な前記カートリッジ式工具と同一のものが、前記工具台に対しても着脱可能である、ようにしてもよい。
【0008】
(6)上記(1)又は(4)の工作機械は、前記回転軸線を第1回転軸線とすると、鉛直方向に沿う前記第1回転軸線と直交する第2回転軸線を中心にワークを回転可能に保持するワーク保持部を備え、
前記カートリッジ式工具として、少なくとも、回転工具、ワークを挿通させることができるワーリング加工ユニット、又は増速スピンドルが前記工具保持部に対して着脱可能であり、
前記基台と前記ワーク保持部とは、前記第1回転軸線に沿う方向と、前記第2回転軸線に沿う方向とを含む互いに直交する三軸方向に相対的に移動可能である、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多様な加工を簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略正面図である。
【
図3】Y軸移動部におけるB軸回転工具部及びB軸回転機構を説明するための図である。
【
図4】Y軸移動部におけるB軸回転工具部及び工具回転機構を説明するための図である。
【
図5】ワーリング加工ユニットが装着されたB軸回転工具部の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る工作機械について図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示す本実施形態に係る工作機械1は、2つの主軸(後述の第1ワーク保持部11及び第2ワーク保持部21)で円柱状のワークW(被加工物)の前面及び背面を加工可能な多機能旋盤として構成されている。
【0016】
以下では、工作機械1の構成の理解を容易にするため、鉛直方向を「Y軸方向」とし、ワークWの中心線に沿った水平方向を「Z軸方向」とし、Y軸及びZ軸方向に垂直な水平方向を「X軸方向」とする。また、図中にX、Y、Z軸の各々の方向を示す矢印を示した。これら矢印が示す各方向において、矢印の向く方向を「+」側、その反対側の方向を「-」側とする。
【0017】
工作機械1は、
図1に示すように、工作機械1全体の台であるベッドSと、第1機構10と、第2機構20と、工具機構30と、制御部90と、を備える。なお、
図1は、工作機械1の概略正面図であって一部構成の断面にハッチングを付した図である。
【0018】
(第1機構10)
第1機構10は、ワークWの前面(+Z側に向く面)及び側面を加工するための機構である。第1機構10は、第1ワーク保持部11と、第1ワーク保持部11が固定されるZ軸移動部12と、Z軸移動部12をZ軸方向に移動させるZ軸移動機構13と、を備える。
【0019】
第1ワーク保持部11は、ワークWを保持するチャックとチャックで保持したワークWを回転させるワーク回転用モータとを内蔵する(図示せず)。Z軸移動機構13は、ベッドSに対して回転可能に支持されてZ軸方向に延びるボールねじ13aと、ボールねじ13aを回転させるZ軸用モータMz1と、を備える。
【0020】
Z軸移動部12は、ボールねじ13aと嵌合するナット12aを備える。Z軸移動機構13は、Z軸用モータMz1によりボールねじ13aを回転させることで、ナット12aを介してZ軸移動部12をZ軸方向に移動させる。これにより、第1ワーク保持部11がベッドSに対してZ軸方向に移動する。
【0021】
以上のようにして、第1機構10は、第1ワーク保持部11で保持したワークWをZ軸方向に移動させることができる。
【0022】
(第2機構20)
第2機構20は、ワークWの背面(-Z側に向く面)及び側面を加工するための機構である。第2機構20は、第2ワーク保持部21と、第2ワーク保持部21が固定されるZ軸移動部22と、Z軸移動部22をZ軸方向に移動させるZ軸移動機構23と、Z軸移動機構23をX軸方向に移動させるX軸移動機構24と、を備える。
【0023】
第2ワーク保持部21は、ワークWを保持するチャックとチャックで保持したワークWを回転させるワーク回転用モータとを内蔵する(図示せず)。Z軸移動機構23は、X軸移動部25と、X軸移動部25に対して回転可能に支持されてZ軸方向に延びるボールねじ23aと、ボールねじ23aを回転させるZ軸用モータMz2と、を備える。X軸移動機構24は、ベッドSに対して回転可能に支持されてX軸方向に延びるボールねじ24aと、ボールねじ24aを回転させるX軸用モータ(図示せず)と、を備える。
【0024】
Z軸移動部22は、ボールねじ23aと嵌合するナット22aを備える。Z軸移動機構23は、Z軸用モータMz2によりボールねじ23aを回転させることで、ナット22aを介してZ軸移動部22をZ軸方向に移動させる。これにより、第2ワーク保持部21がX軸移動部25に対してZ軸方向に移動する。
【0025】
X軸移動部25は、ボールねじ24aと嵌合するナット25aを備える。X軸移動機構24は、X軸用モータによりボールねじ24aを回転させることで、ナット25aを介してX軸移動部25をX軸方向に移動させる。これにより、第2ワーク保持部21がベッドSに対してX軸方向に移動する。
【0026】
以上のようにして、第2機構20は、第2ワーク保持部21で保持したワークWをZ軸及びX軸方向の各方向に移動させることができる。
【0027】
(工具機構30)
工具機構30は、ベッドSに固定された固定台31と、Y軸移動部40と、Y軸移動部40をY軸方向に移動させるY軸移動機構32と、
図2に示す工具台34と、を備える。
【0028】
Y軸移動機構32は、固定台31に対してX軸方向に移動可能なX軸移動部33と、X軸移動部33に対して回転可能に支持されてY軸方向に延びるボールねじ32aと、ボールねじ32aを回転させるY軸用モータMyと、を備える。Y軸移動機構32は、Y軸用モータMyによりボールねじ32aを回転させることで、ナット40aを介してY軸移動部40をY軸方向に移動させる。
【0029】
固定台31には、X軸方向に伸びるレール31aと、固定台31のZ軸方向に貫通する空洞部に取付けられた中空のフランジ31bとが設けられている。フランジ31bの内面には、ワークWの保持や移動を補助するガイドブッシュ31cが設けられている。なお、フランジ31bやガイドブッシュ31cは、加工するワークWに合わせて適宜変更することができる。また、固定台31は、X軸移動部33を移動させるためのX軸移動機構(図示せず)を備えている。X軸移動機構は、例えば上述したX軸移動機構24と同様にX軸用モータを有する機構である。
【0030】
(Y軸移動部40)
Y軸移動部40は、Y軸移動機構32のボールねじ32aと係合するナット40aを備える。Y軸移動機構32は、Y軸用モータMyによりボールねじ32aを回転させることで、ナット40aを介してY軸移動部40をY軸方向に移動させる。Y軸移動部40は、X軸移動部33に取付けられているため、ベッドSに対してY軸方向だけでなく、X軸方向にも移動可能となっている。
【0031】
Y軸移動部40は、
図2~
図4に示すように、X軸移動部33に取付けられた基台41と、非駆動工具部42と、回転工具部43と、第1支持部45と、第2支持部46と、B軸回転工具部50と、B軸回転機構60と、工具回転機構70と、を備える。
【0032】
なお、
図2は、Y軸移動部40をZ軸方向から見た図である。また、
図3は、Y軸移動部40におけるB軸回転工具部50及びB軸回転機構60を説明するための図であって一部構成の断面にハッチングを付した図である。また、
図4は、Y軸移動部40におけるB軸回転工具部50及び工具回転機構70を説明するための図であって一部構成の断面にハッチングを付した図である。
【0033】
非駆動工具部42は、基台41の
図2における下方の左右箇所にバイトなどの非駆動工具Tsが保持されて構成される。複数のバイトは、先端が基台41の空洞部(中央)側に向くように長手方向がX軸方向に沿って配置され、Y軸方向に櫛状に並べられて設けられている。
【0034】
回転工具部43は、非駆動工具部42の上方で、
図2における左側に設けられ、複数の回転工具Trと、複数の回転工具Trを駆動する工具回転用モータ(図示せず)とを備える。回転工具Trは、先端が基台41の中央側を向くように長手方向がX軸方向に沿って配置され、本実施形態では、4つの回転工具TrがY軸方向に櫛状に並べられて設けられている。回転工具Trは、自身が回転することでワークWを加工する工具として、例えば、ドリル、タップ、フライスなどを用いることができる。
【0035】
第1支持部45は、基台41の上方に取り付けられ、B軸回転工具部50の上方をB軸周りに回転可能に支持する。B軸は、B軸回転工具部50の回転軸線であり、Y軸と平行に設定されている。
【0036】
第2支持部46は、基台41の下方に取り付けられ、B軸回転工具部50の下方をB軸周りに回転可能に支持する。つまり、B軸回転工具部50は、第1支持部45と第2支持部46とにより、B軸周りに回転可能に支持されている。
【0037】
(B軸回転工具部50)
B軸回転工具部50は、
図2に示すように非駆動工具部42の上方に設けられ、
図3及び
図4に示すように、軸部50aと、軸部50aと連結された筐体51と、工具把持部52、53と、工具取付部54、55と、を備える。軸部50aは、
図4に示すように、第1支持部45内の軸受にB軸周りに回転可能に支持されている。なお、
図2及び
図3におけるB軸回転工具部50の状態は、
図1及び
図4をZ軸方向から見た図を、構造が分かり易いようにB軸回転工具部50をB軸を中心に90°回転した状態である。
【0038】
工具把持部52、53は、互いに係合する平歯車をそれぞれ有して2組の回転工具Tbを把持可能に構成されている。工具把持部52、53は、それぞれ、B軸回転工具部50の筐体51内に水平方向に沿う軸周りに回転可能に支持されている。工具把持部52、53には、回転工具Tbが予め取り付けられている。回転工具Tbは、例えば、ドリル、タップ、エンドミル等である。
【0039】
工具取付部54、55は、種々のカートリッジ式工具(回転工具)Tcが着脱可能に構成されている。カートリッジ式工具Tcは、筐体と、筐体内に回転可能に支持された回転部とを有する。当該回転部には刃物が設けられ、他端には筐体から突出する突出部Pが設けられている。
【0040】
図3及び
図4は、工具取付部54にカートリッジ式工具Tcとしての回転工具Tc1が、工具取付部55にカートリッジ式工具Tcとしての回転工具Tc2が取り付けられている例を示している。回転工具Tc1、Tc2は、例えば、ドリル、タップ、エンドミル等である。なお、回転工具Tc1、Tc2は、後述の増速スピンドルであってもよい。また、その他の工具取付部54、55に着脱可能なカートリッジ式工具Tcとして、後述のワーリング加工ユニットTc3が用意されている。
【0041】
工具取付部54、55は、カートリッジ式工具Tcの突出部Pと嵌合する嵌合軸54a、55aを有している。嵌合軸54a、55aは、それぞれ、B軸回転工具部50の筐体51内に水平方向に沿う軸周りに回転可能に支持されている。工具取付部54の嵌合軸54aは、工具把持部53の平歯車と係合する平歯車を有する。工具取付部55の嵌合軸55aは、嵌合軸54aの平歯車と係合する平歯車を有する。したがって、互いに係合する工具把持部52、工具把持部53、工具取付部54の嵌合軸54a、及び工具取付部55の嵌合軸55aは、同時に回転する。
【0042】
(B軸回転機構60)
B軸回転機構60は、B軸回転工具部50をB軸周りに回転駆動するものであり、
図3に示すように、B軸回転用モータMbと、入力軸61と、出力軸62と、を備える。
【0043】
B軸回転用モータMbは、第1支持部45に取り付けられ、回転軸R1を回転軸線A1周りに回転させる。回転軸線A1は、X軸と平行に設定されている。
【0044】
入力軸61は、B軸回転用モータMbの回転軸R1に取り付けられたウォーム(ねじ歯車)からなる。出力軸62は、第1支持部45にB軸周りに回転可能に支持され、入力軸61のウォームと噛み合うウォームホイール(はす歯歯車)を有する。出力軸62は、入力軸61の回転軸線A1周りの回転に応じて、B軸周りに回転する。入力軸61のウォームは、出力軸62のウォームホイールに対して、-Z方向に予圧されている。このように予圧されたウォームギヤ機構により、バックラッシが無い又は低減された状態で出力軸62をB軸周りに回転駆動することができる。なお、入力軸61と出力軸62との係合は、ウォームギヤ機構によるものに限られず任意であるが、バックラッシを無くす又は低減することのできるウォームギヤ機構又はウォームギヤに相当する機構によるものが好ましい。
【0045】
図3に示すように、B軸回転工具部50の軸部50aは、例えばボルト62aにより出力軸62に固定されている。したがって、B軸回転工具部50は、B軸回転用モータMbの駆動に応じて、B軸周りに回転可能となっている。
【0046】
(工具回転機構70)
工具回転機構70は、B軸回転工具部50の回転工具Tb、Tcを回転駆動するものであり、工具回転用モータMtと、平歯車71と、出力軸72と、第1伝達軸73と、第2伝達軸74と、を備える。
【0047】
工具回転用モータMtは、第1支持部45に取り付けられ、回転軸R2を回転軸線A2周りに回転させる。回転軸線A2は、Y軸と平行に設定されている。平歯車71は、回転軸R2に取り付けられている。
【0048】
出力軸72は、Y軸方向に延び、B軸回転工具部50の軸部50a内に設けられた軸受により回転可能に支持されている。出力軸72は、その一端に平歯車71と係合する平歯車72aを有し、その他端に傘歯車72bを有する。したがって、出力軸72は、工具回転用モータMtの駆動に応じて、Y軸と平行な軸周りに回転する。傘歯車72bは、B軸回転工具部50の筐体51内に位置している。
【0049】
第1伝達軸73と第2伝達軸74とは、各々、軸方向が水平方向となるようにB軸回転工具部50の筐体51内に回転可能に支持されている。第1伝達軸73と第2伝達軸74とは、Y方向に間隔を空けて配置されている。第1伝達軸73は、その一端に出力軸72の傘歯車72bと係合する傘歯車73aを有し、その他端に平歯車73bを有する。第2伝達軸74は、第1伝達軸73の平歯車73bと、工具把持部52の平歯車との各々と係合する平歯車74aを有する。
【0050】
したがって、工具回転用モータMtの回転動力は、平歯車71、出力軸72、第1伝達軸73、及び第2伝達軸74を介して、工具把持部52に伝達され、工具把持部52が回転する。前述のように、工具把持部52、工具把持部53、工具取付部54の嵌合軸54a、及び工具取付部55の嵌合軸55aは、互いに係合しているため、これらは同時に回転する。つまり、
図3及び
図4の例では、工具回転機構70によって、2組の回転工具Tbと、回転工具Tc1と、回転工具Tc2とが同時に回転駆動される。なお、工具回転機構70によるこれらの回転工具の回転速度は、例えば、5,000(回転/分)である。
【0051】
(工具台34)
工具台34は、非駆動工具部42よりも+Z側に位置し、複数の回転工具を着脱可能に構成されている。工具台34に取り付けられた回転工具は、+Z側に突出する格好となる。また、工具台34は、複数の回転工具Tを駆動する工具回転用モータ(図示せず)を備える。一例として、工具台34は、Z方向から見て2行4列に配列された取り付け部に、後述するカートリッジ式工具Tcが着脱可能に構成されている。また、工具台34は、前述のY軸移動機構32とは独立したY軸移動機構(図示せず)を備えている。工具台34は、このY軸移動機構によりベッドSに対してY軸方向に移動可能となっている。工具台34をY軸方向に移動させるY軸移動機構は、例えば上述したY軸移動機構32と同様にY軸用モータを有する機構である。
【0052】
制御部90は、工作機械1全体を制御するものであり、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、CPU(Central Processing Unit)と、を備える。なお、制御部90は、
図1にのみ模式的に示した。
【0053】
制御部90は、図示しない操作部から供給されたNC(Numerical Control)プログラムに従って各部を制御する。NCプログラムは、ワークWと各種工具との相対的位置関係を設定し、ワークWを加工するためのプログラムであり、オペレータによって作成される。制御部90は、例えば、B軸回転機構60の出力軸62の回転位置をB軸回転用モータMbの電気角などに基づいて検出する。
【0054】
制御部90は、第1ワーク保持部11をZ軸方向に移動させるとともに、工具機構30のY軸移動部40をY軸及びX軸方向に移動させ、ワークWと工具機構30の各種工具との相対的な位置関係を適切に設定する。具体的には、第1機構10のワーク回転用モータ及びZ軸用モータMz1と、工具機構30のY軸用モータMy及びX軸用モータとを駆動制御することによって、上記関係を実現する。
【0055】
また、制御部90は、第2ワーク保持部21をZ軸及びX軸方向に移動させ、工具機構30のY軸移動部40をY軸方向に移動させ、ワークWと工具機構30の各種工具との相対的な位置関係を適切に設定する。具体的には、第2機構20のワーク回転用モータ、Z軸用モータMz2、X軸用モータと、工具機構30のY軸用モータMyとを駆動制御することによって、上記関係を実現する。
【0056】
次に、上記構成の工作機械1によるワークWの加工の一例について説明する。本実施形態に係る工作機械1においては、まず第1機構10を利用したワークWの一次加工を行い、次に、第2機構20において一次加工が施されたワークWをさらに加工する(二次加工を行う)。
【0057】
(一次加工)
制御部90は、工具機構30のY軸用モータMyを駆動し、所望の工具がワークWと同じ高さに位置するようにY軸移動部40を移動させる。次に、制御部90は、第1機構10のワーク回転用モータとZ軸用モータMz1を駆動することでワークWを回転させながらZ軸方向に移動させ、また、これと同時か時間差で工具機構30のX軸モータを駆動することでX軸移動部33をワークWに向けて移動させる。このようにして、バイト、ドリル等の工具をワークWの前面又は側面に当接させ、ワークWを一次加工する。
【0058】
(二次加工)
一次加工を終えると、制御部90は、第2機構20のZ軸用モータMz2及びX軸用モータを駆動し、第2ワーク保持部21を移動させて、一次加工されたワークWを、第2ワーク保持部21のチャックに把持させる。続いて、制御部90は、第2機構20のワーク回転用モータと、工具機構30のX軸用モータとを駆動することで、第2ワーク保持部21と工具機構30のX軸移動部33とをX軸方向に相対的に移動させて、ワークWに向けて移動させ、工具機構30に設けられた非駆動工具Tsの切断用バイトにより、ワークWを所望の位置で切断する。続いて、制御部90は、工具機構30の工具のうち所定の工具を割り出し(選択し)、第2ワーク保持部21のワークWを回転させながら、第2ワーク保持部21と工具機構30のX軸移動部33とをX軸及びY軸方向に相対的に移動させて、ワークWの背面又は側面に選択した工具を当接させ、さらにワークWを加工する。このようにして、ワークWを二次加工する。なお、工具台34は、二次加工用に設けられている。工具台34で加工を行う場合は、第2ワーク保持部21と工具台34とをX軸及びY軸方向に相対的に移動させて、ワークWの背面又は側面に選択した工具を当接させ、ワークWを加工する。
【0059】
特に、一次加工において、B軸回転工具部50における所望の工具でワークWを加工するときには、制御部90は、工具機構30のY軸用モータMyを駆動することで、第1ワーク保持部11が保持したワークWとB軸回転工具部50における所望の工具とのY軸方向における位置を調整するとともに、B軸回転用モータMbを駆動して、B軸回転工具部50をB軸周りに旋回させて所望の工具とワークWとを所望の角度に合わせる。このようにして、B軸回転工具部50における所望の工具でワークWを加工する。
なお、二次加工において、B軸回転工具部50における所望の工具でワークWを加工してもよい。この場合は、第2ワーク保持部21が保持したワークWとB軸回転工具部50における所望の工具とのY軸方向における位置を調整するとともに、B軸回転用モータMbを駆動して、B軸回転工具部50をB軸周りに旋回させて所望の工具とワークWとを所望の角度に合わせればよい。
【0060】
(カートリッジ式工具Tcについて)
ここからは、B軸回転工具部50の工具取付部54、55と、工具台34との各々に着脱可能なカートリッジ式工具Tcについて説明する。
【0061】
カートリッジ式工具Tcは、その突出部Pを、工具取付部54の嵌合軸54aに挿入させるとともに、工具取付部54の筐体51部分にボルトで固定することで、工具取付部54に取り付けられる。一方、取り外しについては、この逆の手順でボルトを外してからカートリッジ式工具Tcを工具取付部54から引き抜けばよい。工具取付部55に対するカートリッジ式工具Tcの着脱も同様である。
【0062】
また、B軸回転工具部50に装着していないカートリッジ式工具Tcについては、工具台34に取り付けることができる。工具台34は、工具取付部54、55と同様な機構で、カートリッジ式工具Tcが着脱可能となっている。そして、前記した工具回転用モータ(図示せず)により、工具台34に装着されたカートリッジ式工具Tcも回転駆動可能となっている。
【0063】
カートリッジ式工具Tcとしては、前記のドリル、タップ、エンドミル以外に、ワーリング加工ユニット(ワーリングヘッド)Tc3や、増速スピンドルが用意されている。
【0064】
ここで、
図5、
図6を参照してワーリング加工ユニットTc3について説明する。
図5は、ワーリング加工ユニットTc3が、B軸回転工具部50の工具取付部55に取り付けられた状態を示している。
図5では、見易さを考慮して断面を示すハッチングを一部省略した。
ワーリング加工ユニットTc3をB軸回転工具部50に取り付ける際には、ワーリング加工ユニットTc3の装着スペースを確保するため、工具取付部54に取り付けられた他のカートリッジ式工具Tcは取り外しておく。
【0065】
ワーリング加工ユニットTc3は、
図5及び
図6に示すように、筐体80と、回転部81と、第1ギヤ82と、第2ギヤ83と、ワーリング加工部84と、を備える。
【0066】
筐体80は、工具取付部55に挿入されるカートリッジ部80aを有している。回転部81は、カートリッジ部80a内で回転可能に支持されるとともに、工具取付部55の嵌合軸55aと嵌合する突出部Pを有している。第1ギヤ82は、回転部81に取り付けられているとともに、第2ギヤ83と係合する。第2ギヤ83は、ワーリング加工部84に設けられたギヤと係合する。ワーリング加工部84は、ワークWを挿入させるとともに、挿入されたワークWをワーリング加工するためのワーリングカッタが設けられた挿入部84aを有している。
【0067】
制御部90の制御により工具回転用モータMtが駆動されたことに応じて、工具取付部55の嵌合軸55aが回転すると、嵌合軸55aとともにワーリング加工ユニットTc3の回転部81が回転する。回転部81の回転動力は、第1ギヤ82及び第2ギヤ83を介して、ワーリング加工部84に伝達され、ワーリング加工部84が回転する。このようにギヤを複数設けた理由は、嵌合軸55aとワーリング加工部84の各々の回転軸を離間させることで、ワーリング加工ユニットTc3の挿入部84aにワークWを挿通可能とするためである。つまり、スルーホールタイプのワーリング加工ユニットTc3において必要となるスペースを確保するためである。
【0068】
ここで、ワーリング加工ユニットTc3によるワーリング加工の一例について説明する。制御部90は、ワークWを保持した第1ワーク保持部11と、B軸回転工具部50に装着されたワーリング加工ユニットTc3とをX、Y、Z軸方向に相対的に移動させ、ワーリング加工ユニットTc3の挿入部84aにワークWを挿入させる。
【0069】
また、制御部90は、B軸回転用モータMbを駆動して、ワーリング加工ユニットTc3が装着されたB軸回転工具部50のB軸周りの傾きを制御することで、Z軸方向に延びるワークWに対してのワーリング加工部84(ワーリングカッタ)の傾きであるリード角を調整する。
なお、
図6は、第1ワーク保持部11側から見たワーリング加工ユニットTc3の正面図である。
図6を用いて説明すれば、制御部90は、ワーリング加工ユニットTc3を、紙面と平行な方向からB軸周りに傾けることによってリード角を調整する。
【0070】
そして、制御部90は、Y軸用モータMy又は図示しないX軸用モータを駆動することにより、B軸回転工具部50をX軸又はY軸方向に移動させ、ワーリングカッタをワークWに押し当てる。つまり、制御部90は、ワークWの切り込み方向にワーリングカッタを移動させる。これに合わせて、制御部90は、第1ワーク保持部11のワーク回転用モータと工具回転用モータMtとを駆動することでワークWとワーリング加工部84とを各々回転させるとともに、Z軸用モータMz1を駆動することで、ワークWをワーリング加工ユニットTc3の挿入部84aに挿通させて移動させる。これにより、ワークWにはワーリング加工が施される。
【0071】
カートリッジ式工具Tcとしての増速スピンドル(図示せず)は、変速ギヤを備え、工具回転機構70による回転工具の回転速度(例えば、5,000(回転/分))よりも大きい回転速度(例えば、20,000(回転/分))で工具を回転させる。増速スピンドルが保持し、回転させる工具としては、ドリル、タップ、エンドミル等であればよい。
【0072】
(1)以上に説明した工作機械1は、基台41と、基台41に対してB軸(回転軸線の一例)を中心に回転可能に設けられ、B軸が延びる方向において互いに間隔を空けて位置する複数の工具を保持可能なB軸回転工具部50(工具保持部の一例)と、B軸回転工具部50を基台41に対してB軸を中心に回転させることで、ワークWに対する複数の工具の向きを調整する回転駆動部(例えば、制御部90、B軸回転機構60等)と、を備える。
B軸回転工具部50は、複数の工具の各々を回転駆動することが可能であり、複数の工具は、B軸回転工具部50に対して着脱可能なカートリッジ式工具Tcを含む。
【0073】
上記(1)に記載の構成によれば、B軸回転工具部50の工具把持部52、53に予め設けられた回転工具Tb以外の種類のカートリッジ式工具Tcを、B軸回転工具部50の工具取付部54、55に容易に着脱可能であるため、多様な加工を簡便に行うことができる。
なお、B軸回転工具部50に対して着脱可能なカートリッジ式工具Tcは、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、B軸回転工具部50によって回転駆動される回転工具の全てをカートリッジ式工具Tcとしてもよい。
【0074】
(2)また、工作機械1は、工具を回転可能に保持する工具台34を備え、カートリッジ式工具Tcは、工具台34に対しても着脱可能である。
【0075】
上記(2)に記載の構成によれば、B軸回転工具部50と工具台34との一方に装着したカートリッジ式工具Tcを他方に付け替えることができるため、工具本数を削減し、コストを削減することができる。また、B軸回転工具部50だけでなく、工具台34においても簡便に着脱可能な種々のカートリッジ式工具Tcを使用することができるため、簡便に、より多様な加工を行うことができる。
【0076】
(3)また、カートリッジ式工具Tcとして、少なくとも、回転工具T、ワーリング加工ユニットTc3、又は増速スピンドルがB軸回転工具部50に対して着脱可能である。
【0077】
上記(3)に記載の構成によれば、B軸回転工具部50にワーリング加工ユニットTc3を装着することができるため、ワークWに対してのワーリング加工ユニットTc3のB軸周りの傾き(リード角)も、NC指令に応じた制御部90の制御により自動調整することができる。これにより、従来の手動でリード角を調整する方式より、飛躍的にリード角の調整が容易となる。また、B軸回転工具部50にカートリッジ式工具Tcとして増速スピンドルを装着すれば、工作機械1の構造に依存するB軸回転工具部50の回転工具の回転速度(例えば、5,000(回転/分))を増やすことができ、例えば、20,000(回転/分)の回転速度によるワークWへの小径穴あけ加工などが可能となる。これらのカートリッジ式工具Tcによれば、B軸回転工具部50の工具把持部52、53に予め設けられた回転工具Tbだけでは、限られていた回転速度や加工種類(穴あけ加工、タップ加工、エンドミル加工等)を簡便な着脱と制御で拡張することができる。
【0078】
(4)また、ワーリング加工ユニットTc3は、ワークWを挿通させることができるため、ワークWの長手方向に渡ってワーリング加工を施こすことができる。
【0079】
(5)また、工作機械1は、基台41を挟んで互いに対向し、ワークWを回転可能に保持する第1ワーク保持部11及び第2ワーク保持部21を備える。B軸回転工具部50は、保持している工具によって少なくとも第1ワーク保持部11に保持されたワークWを加工可能であり、工具台34は、保持している工具によって第2ワーク保持部21に保持されたワークWを加工可能である。
【0080】
上記(5)に記載の構成によれば、カートリッジ式工具Tcを、第1ワーク保持部11に保持されたワークWにも、第2ワーク保持部21に保持されたワークWにも使用することができるため、より多様な加工を行うことができる。
【0081】
(6)また、基台41と第1ワーク保持部11とは、互いに直交する三軸方向(X、Y、Z軸)に相対的に移動可能であり、三軸方向は、B軸に沿う方向(Y軸方向)と、第1ワーク保持部11に保持されたワークWの回転軸線に沿う方向(Z軸方向)とを含む。
【0082】
上記(6)に記載の構成によれば、第1ワーク保持部11に保持されたワークWと、B軸回転工具部50に保持された所望の工具との相対的位置関係を、X軸、Y軸、Z軸、B軸、ワークWの回転軸の5軸において制御可能であるため、あらゆる位置及び角度において、ワークWを多様に加工することができる。
【0083】
なお、回転工具であるカートリッジ式工具Tcをタレットの外周部に設ける構成(以下、タレット工具台と言う。)も想定されるが、B軸回転工具部50に対してカートリッジ式工具Tcを着脱可能に構成した本実施形態に係る工作機械1は、タレット工具台に比べて、以下に記す利点を有する。
【0084】
タレット工具台では、工具交換や工具選択をする際にタレットを回転させる必要があるため、その回転精度が工具の位置決め精度に影響を与える。例えば、タレット工具台が比較的重い部材であることに加えて、工具交換に伴うタレット工具台全体の重心の変化などが、タレットの回転による工具の位置決めの精度に影響を与える。
一方で、本実施形態に係る工作機械1では、工具交換に伴うB軸回転工具部50の重さの変化は主にY軸方向(鉛直方向)に沿ったものであり、また、工具選択もB軸回転工具部50をY軸方向に移動させればよく、Y軸移動機構32により容易に制御可能であるため、タレット工具台に比べて工具の位置決め精度を確保することができる。
【0085】
タレット工具台では、工具交換する際にタレットを回転させる必要があるため、工具交換に時間及び手間がかかる。一方で、本実施形態に係る工作機械1では、B軸回転工具部50に着脱可能なカートリッジ式工具Tcは、Y軸方向において隣り合っているため、タレット工具台に比べて容易且つ素早く工具交換することができる。
【0086】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、実施形態及び図面に変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0087】
第1機構10と工具機構30との構成及び関係は、上記例に限られず、第1ワーク保持部11とB軸回転工具部50とが相対的に三軸方向(X、Y、Z方向)に移動可能な構成であれば、任意である。同様に、第2機構20と工具機構30との構成及び関係は、上記例に限られず、第2ワーク保持部21とB軸回転工具部50とが相対的に三軸方向(X、Y、Z方向)に移動可能な構成であれば、任意である。また、これらの三軸方向の制御軸は、互いに直交するX、Y、Z軸に限られない。第1ワーク保持部11とB軸回転工具部50とが相対して三次元移動可能であり、第2ワーク保持部21とB軸回転工具部50とが相対して三次元移動可能であれば、制御軸の設定は任意である。
【0088】
以上では、工具回転用モータMtをB軸回転工具部50の筐体51外に設けた例を示したが、これに限られず、筐体51内にモータを設けたインナーモータの構成としてもよい。インナーモータは、同期電動機や誘導電動機などの周知のモータで構成することができ、例えば、出力軸72に直接ロータを設けるとともに、ステータを筐体51の内周面に設けることで実現できる。
【0089】
ワークWの保持は、オペレータが手動により第1ワーク保持部11又は第2ワーク保持部21にワークWを配置して、保持させてもよいし、工作機械1がワークを自動で供給及び排出する装置をさらに備え、ワークの保持や解放を自動で行うようにしてもよい。
【0090】
また、工具台34は、カートリッジ式工具Tcが着脱可能に構成されているだけでなく、予め取り付けられた回転工具を備えていてもよい。また、工具台34は、非駆動工具が取り付け可能に構成されていてもよい。また、回転工具部43を、カートリッジ式工具Tcが着脱可能に構成してもよい。
【0091】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【符号の説明】
【0092】
1…工作機械
S…ベッド
10…第1機構
11…第1ワーク保持部
12…Z軸移動部、13…Z軸移動機構、Mz1…Z軸用モータ
20…第2機構
21…第2ワーク保持部
22…Z軸移動部、23…Z軸移動機構、Mz2…Z軸用モータ
24…X軸移動機構、25…X軸移動部
30…工具機構
31…固定台、32…Y軸移動機構、My…Y軸用モータ、33…X軸移動部
34…工具台
40…Y軸移動部
41…基台
42…非駆動工具部、43…回転工具部
45…第1支持部、46…第2支持部
50…B軸回転工具部(工具保持部の一例)
50a…軸部
51…筐体
52、53…工具把持部
54、55…工具取付部
Tc…カートリッジ式工具
Tc1、Tc2…回転工具、Tc3…ワーリング加工ユニット
60…B軸回転機構
Mb…B軸回転用モータ、R1…回転軸、A1…回転軸線
61…入力軸、62…出力軸
70…工具回転機構
Mt…工具回転用モータ、R2…回転軸、A2…回転軸線
71…平歯車、72…出力軸、73…第1伝達軸、74…第2伝達軸
90…制御部