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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】難燃性スチレン系樹脂組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/14 20060101AFI20220630BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20220630BHJP
   C08K 5/16 20060101ALI20220630BHJP
   C08K 3/016 20180101ALI20220630BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20220630BHJP
   C08K 5/5333 20060101ALI20220630BHJP
   C08K 5/5399 20060101ALI20220630BHJP
   C08F 212/08 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
C08L25/14
C08L51/04
C08K5/16
C08K3/016
C08K5/521
C08K5/5333
C08K5/5399
C08F212/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018080558
(22)【出願日】2018-04-19
(65)【公開番号】P2019189682
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】500199479
【氏名又は名称】PSジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】野寺 明夫
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0284535(US,A1)
【文献】特開2007-191618(JP,A)
【文献】特開2009-120723(JP,A)
【文献】特開2009-102556(JP,A)
【文献】国際公開第2008/010553(WO,A1)
【文献】特開2008-143976(JP,A)
【文献】特開2017-190467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 25/14
C08L 51/04
C08K 5/16
C08K 3/016
C08K 5/521
C08K 5/5333
C08K 5/5399
C08F 212/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)メタクリル酸単量体単位、メタクリル酸アルキル単量体単位、及び無水マレイン酸単量体単位からなる群から選ばれるモノマー単位を1つ以上含むスチレン共重合樹脂を5.0~99質量%と、(B)ゴム変性スチレン系樹脂を0~94.8質量%と、(C)NOR型ヒンダードアミン系化合物を0.2~5.0質量%と、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、帯電防止剤及び充填剤からなる群から選択される1種以上の添加剤又は加工助剤0.05~5質量%と、を含有し、
前記(A)成分のスチレン共重合樹脂が、スチレン単量体単位、前記メタクリル酸単量体単位、前記メタクリル酸アルキル単量体単位、及び前記無水マレイン酸単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、前記メタクリル酸単量体単位、前記メタクリル酸アルキル単量体単位、及び前記無水マレイン酸単量体単位の合計含有量が2~30質量%であることを特徴とする、難燃性スチレン系樹脂組成物であって、
必要により、(D)リン系難燃剤及びブロム系難燃剤からなる群から選ばれる1つ以上の難燃剤を含有し、
かつ前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、前記(D)成分及び前記添加剤又は前記加工助剤の合計含有量は、前記難燃性スチレン系樹脂組成物の95~100質量%を占める、難燃性スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
更に、(D)リン系難燃剤及びブロム系難燃剤からなる群から選ばれる1つ以上の難燃剤を、前記(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して1~20質量部含む、請求項1に記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)成分のリン系難燃剤が、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、及びホスホン酸エステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項2に記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)NOR型ヒンダードアミン系化合物がオリゴマー状又はポリマー状である、請求項1~3のいずれか一項に記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の難燃性スチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性スチレン系樹脂組成物及び該難燃性スチレン系樹脂組成物を含む成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂は、成形性、寸法安定性に加え、耐衝撃性に優れていることから、広範囲な用途に使用されている。中でも難燃性を付与したポリスチレン系樹脂組成物は、家電機器、OA機器を始め多岐にわたり使用されており、現在、リデュースや軽量化から製品の薄肉化が求められている。
従来から、スチレン系樹脂に難燃性を付与するために、種々の難燃剤が提案されており、中でも安価で物性バランスに優れているブロム系難燃剤が多く使用されている。しかしながら、近年ハロゲン含有有機化合物を規制する動きが欧州を中心に活発化していること等から、ブロム元素を含まない難燃樹脂、難燃樹脂組成物の需要が高まっている。
【0003】
こうしたブロム系難燃剤の代替難燃剤として、例えば、特許文献1には、特定のNOR型ヒンダードアミン系化合物を添加する技術が開示されている。NOR型ヒンダードアミン系化合物を添加したポリスチレンについて、難燃性を示し、事務機器のためのハウジングに適用が見いだされる(実施例16)との記載はあるものの、0.125インチ(約3.2mm)の厚さで難燃性が得られるものであり、高い難燃性が必要な肉厚の薄い事務機器や家電のハウジング、シートやフィルムへの適用は困難である。また、実施例15では、一般的に難燃性に有効なスチレン系樹脂のABSに特定のNOR型ヒンダードアミン化合物を添加しているが、この特定のNOR型ヒンダードアミン化合物のみだけでは、顕著な難燃性向上は見られず、既存のブロム系難燃剤が必要であることがわかる。また、特許文献1では、単に一般的なゴム変性ポリスチレン系樹脂に対して実施したにすぎず、メタクリル酸、メタクリル酸アルキル、無水マレイン酸のモノマーを含むスチレン共重合樹脂をNOR型ヒンダードアミン化合物と用いたときの難燃性に対する有効性については全く開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2002-507238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した従来技術では、肉厚0.125インチ未満の製品においても十分な難燃性を示す樹脂組成物を得ることができず、また、難燃性を高めるために他の難燃剤を併用したとしても多くの量を添加する必要があり、耐熱性や耐衝撃性が低下してしまい、製品化が困難である。
そこで、本発明の目的は、薄肉成形でも高い難燃性を示し、耐熱性、耐油性、及び成形性に優れた難燃性スチレン系樹脂組成物、及び該難燃性スチレン系樹脂組成物を含む成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、メタクリル酸単量体単位、メタクリル酸アルキル単量体単位、及び無水マレイン酸単量体単位からなる群から選ばれる1つ以上のモノマー単位を特定量含むスチレン共重合樹脂と、ゴム変性スチレン系樹脂と、NOR型ヒンダードアミン系化合物とを特定の割合で含有することにより、驚くべきことに非常に高い難燃性を示し、耐熱性、耐油性が高く、成形性も良好である難燃性スチレン系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1](A)メタクリル酸単量体単位、メタクリル酸アルキル単量体単位、及び無水マレイン酸単量体単位からなる群から選ばれるモノマー単位を1つ以上含むスチレン共重合樹脂を5.0~99.8質量%と、(B)ゴム変性スチレン系樹脂を0~94.8質量%と、(C)NOR型ヒンダードアミン系化合物を0.2~5.0質量%とを含有し、前記(A)成分のスチレン共重合樹脂が、スチレン単量体単位、前記メタクリル酸単量体単位、前記メタクリル酸アルキル単量体単位、及び前記無水マレイン酸単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、前記メタクリル酸単量体単位、前記メタクリル酸アルキル単量体単位、及び前記無水マレイン酸単量体単位の合計含有量が2~30質量%であることを特徴とする、難燃性スチレン系樹脂組成物。
[2]更に、(D)リン系難燃剤及びブロム系難燃剤からなる群から選ばれる1つ以上の難燃剤を、前記(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して1~20質量部含む、[1]に記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
[3]前記(D)成分のリン系難燃剤が、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、及びホスホン酸エステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、[2]に記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
[4]前記(C)NOR型ヒンダードアミン系化合物がオリゴマー状又はポリマー状である、[1]~[3]のいずれかに記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の難燃性スチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄肉成形でも高い難燃性を示し、耐熱性、耐油性、及び成形性に優れた難燃性スチレン系樹脂組成物、及び該難燃性スチレン系樹脂組成物を含む成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
[難燃性スチレン系樹脂組成物]
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物は、(A)メタクリル酸単量体単位、メタクリル酸アルキル単量体単位、及び無水マレイン酸単量体単位からなる群から選ばれるモノマー単位を1つ以上含むスチレン共重合樹脂を5.0~99.8質量%と、(B)ゴム変性スチレン系樹脂を0~94.8質量%と、(C)NOR型ヒンダードアミン系化合物を0.2~5.0質量%とを含有し、前記(A)成分のスチレン共重合樹脂が、スチレン単量体単位、前記メタクリル酸単量体単位、前記メタクリル酸アルキル単量体単位、及び前記無水マレイン酸単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、前記メタクリル酸単量体単位、前記メタクリル酸アルキル単量体単位、及び前記無水マレイン酸単量体単位の合計含有量が2~30質量%であることを特徴とする、難燃性スチレン系樹脂組成物である。
【0011】
<メタクリル酸単量体単位、メタクリル酸アルキ単量体単位ル、及び無水マレイン酸単量体単位からなる群から選ばれるモノマーを1つ以上含むスチレン共重合樹脂(A)>
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物に含まれる(A)成分のスチレン共重合樹脂の構造単位をなすモノマーとして、スチレンと、メタクリル酸、メタクリル酸アルキル、及び無水マレイン酸からなる群から選ばれる1つ以上とを含む。
【0012】
上記メタクリル酸アルキルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは単独で又は組み合わせて使用することができる。上記メタクリル酸アルキルとしては、難燃性や剛性の観点から、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0013】
(A)成分のスチレン共重合樹脂は、スチレン単量体単位、メタクリル酸単量体単位、メタクリル酸アルキル単量体単位、及び無水マレイン酸単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、メタクリル酸単量体単位、メタクリル酸アルキル単量体単位、及び無水マレイン酸単量体単位の合計含有量が2~30質量%であり、好ましくは3~25質量%、更に好ましくは5~20質量%である。それら3種の単量体単位の合計含有量が2質量%より少ないとNOR型ヒンダードアミン化合物(C)との難燃性相乗効果がなく、高い難燃性を得ることができず、30質量%より多いと、難燃性や流動性が低下する。
なお本開示で、スチレン単量体単位、メタクリル酸単量体単位、メタクリル酸アルキル単量体単位、及び無水マレイン酸単量体単位の含有量は、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から求めることができる。
【0014】
また、本実施形態の(A)メタクリル酸単量体単位、メタクリル酸アルキル単量体単位、及び無水マレイン酸単量体単位からなる群から選ばれるモノマー単位を1つ以上含むスチレン共重合樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲において、スチレン及びメタアクリル酸と共重合可能な追加モノマーを更に共重合したものでもかまわない。
共重合可能な追加モノマーとしては、例えば、α-メチルスチレン、o-、m-、p-メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン等のスチレン以外の芳香族ビニル類、マレイン酸、フマル酸等の不飽和脂肪酸類、無水イタコン酸等の不飽和ジ脂肪酸無水物類、N-フェニルマレイミド等の不飽和ジ脂肪酸イミド類等が挙げられる。これらのモノマー類は1種類又は2種類以上併用してもかまわない。
追加モノマーの単量体単位の含有量は、(A)成分100質量%中、本発明の所期の効果を良好に得る観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。一方、追加モノマーによる効果を良好に得る観点から、上記追加モノマーの単量体単位の含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。
【0015】
(A)成分の重量平均分子量は、100,000~350,000であることが好ましく、より好ましくは120,000~300,000、更に好ましくは140,000~240,000である。重量平均分子量が100,000~350,000である場合、機械的強度と流動性とのバランスにより優れる樹脂組成物が得られ、また、ゲル物の混入も少ない。
なお本開示で、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、標準ポリスチレン換算で得られる値である。
【0016】
(A)成分のメルトフローレート(MFR)は、0.3~10g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.5~8g/10分である。
なお本開示で、メルトマスフローレートは、ISO 1133に準拠して、200℃、荷重49Nにて測定される値である。
【0017】
(A)成分の含有量は、難燃性スチレン系樹脂組成物100質量%に対して、5.0~99.8質量%であり、好ましくは10~99.5質量%、更に好ましくは20~99.5質量%である。5.0質量%より少ないと、NOR型ヒンダードアミン化合物(C)との組み合わせで発現する高い難燃性が得られず、また、耐熱性、耐油性が低下する。また、99.8質量%より多いと、難燃性や耐衝撃性が低下する。
【0018】
<(A)成分の製造方法>
本実施形態の(A)メタクリル酸単量体単位、メタクリル酸アルキル単量体単位、及び無水マレイン酸単量体単位からなる群から選ばれるモノマー単位を1つ以上含むスチレン共重合樹脂は、熱重合によって、又は有機過酸化物を重合開始剤として用いて重合することができる。
【0019】
上記重合開始剤の有機過酸化物の具体例としては、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジミリスチルパーオキシジカーボネート等のパーオキシエステル類、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、p-メンタハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、2,2-ビス(4,4-ジターシャリーブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジターシャリーアミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジターシャリーブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジクミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等の多官能開始剤を挙げることができる。
これらの有機過酸化物は、スチレン単量体単位、メタクリル酸単量体単位、メタクリル酸アルキル単量体単位、及び無水マレイン酸単量体単位との共重合のいずれかの工程にて重合系(重合原料溶液又は重合途中の溶液)に添加される。これらの有機過酸化物は、重合原料溶液に加えられても、重合途中の溶液に必要に応じて複数回に分割して添加されても良い。
上記有機過酸化物の添加量は、重合原料溶液100質量部に対して、好ましくは0.0005~0.2質量部であり、より好ましい添加量は、0.01~0.1質量部である。上記有機過酸化物の添加量が0.0005質量部以上の場合は開始剤添加の目的の効果が良好に得られる。又、0.2質量部以下の場合は重合時に大量の反応熱が発生することを回避して重合を容易に制御できる。
【0020】
本実施形態において、(A)メタクリル酸単量体単位、メタクリル酸アルキル単量体単位、及び無水マレイン酸単量体単位からなる群から選ばれるモノマー単位を1つ以上含むスチレン共重合樹脂を得るための重合方法には、特に制約はなく、通常の塊状重合、溶液重合、懸濁重合等が用いられる。生産性の観点から連続塊状重合が好ましい。
【0021】
また、本実施形態においては分子量調整のために、溶媒及び連鎖移動剤を使用することも可能である。
溶媒としては、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等が使用できる。溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、重合系の全成分の0質量%~30質量%の範囲の使用が好ましい。
連鎖移動剤としてはn-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマー等が用いられ、重合系の全成分の0質量%~1質量%の範囲の使用が好ましい。
【0022】
反応温度は、好ましくは80~160℃、より好ましくは90~150℃の範囲である。反応温度が80℃以上の場合、生産性が良好で、工業的に有利である。また、160℃以下の場合、低分子量重合体が多量に生成することを回避でき好ましい。
【0023】
本実施形態のスチレン共重合樹脂の分子量は、典型的には主に重合時の重合温度で制御することができるが、目標分子量が重合温度のみで調整できない場合は、開始剤量、溶媒量、連鎖移動剤量等で制御できる。反応時間は一般に0.5~20時間、より好ましくは2~10時間である。反応時間が0.5時間以上の場合反応が良好に進行する。また、20時間以下の場合は生産性が高く、工業的に有利である。
【0024】
<ゴム変性スチレン系樹脂(B)>
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物は、更に衝撃強度を高めるために、ゴム変性スチレン系樹脂(B)を含有してもよい。ゴム変性スチレン系樹脂(B)の含有量は、難燃性スチレン系樹脂組成物100質量%に対して、0~94.8質量%であり、好ましくは5~90質量%、より好ましくは20~80質量%である。94.8質量%を超えると難燃性が低下する。
【0025】
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂(B)とは、スチレン系樹脂のマトリクス中にゴム状重合体(a)の粒子が分散されたものであり、ゴム状重合体(a)の存在下でスチレン系単量体を重合させることにより製造することができる。
【0026】
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂(B)を構成するスチレン系単量体としては、スチレンの他に、例えば、α-メチルスチレン、α-メチルp-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン、クロロスチレン、及びインデン等が挙げられる。特に、スチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種若しくは2種以上使用することができる。
【0027】
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂(B)に含まれるゴム状重合体(a)は、内側にスチレン系樹脂を内包し、かつ、外側にスチレン系樹脂がグラフトされたものであってよい。
【0028】
前記ゴム状重合体(a)としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体等を使用できるが、ポリブタジエン又はスチレン-ブタジエン共重合体が好ましい。ポリブタジエンには、シス含有率の高いハイシスポリブタジエン及びシス含有率の低いローシスポリブタジエンの双方を用いることができる。また、スチレン-ブタジエン共重合体の構造としては、ランダム構造及びブロック構造の双方を用いることができる。これらのゴム状重合体(a)は1種若しくは2種以上使用することができる。また、ブタジエン系ゴムを水素添加した飽和ゴムを使用することもできる。
【0029】
このようなゴム変性スチレン系樹脂(B)の例としては、HIPS(高衝撃ポリスチレン)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル-エチレンプロピレンゴム-スチレン共重合体)等が挙げられる。
【0030】
ゴム変性スチレン系樹脂(B)がHIPS系樹脂である場合、これらのゴム状重合体(a)の中で特に好ましいのは、シス1,4結合が90モル%以上で構成されるハイシスポリブタジエンである。該ハイシスポリブタジエンにおいては、ビニル1,2結合が6モル%以下で構成されることが好ましく、3モル%以下で構成されることが特に好ましい。
なお、該ハイシスポリブタジエンの構成単位に関する異性体としてシス1,4、トランス1,4、又はビニル1,2構造を有するものの含有率は、赤外分光光度計を用いて測定し、モレロ法によりデータ処理することにより算出できる。
また、該ハイシスポリブタジエンは、公知の製造法、例えば有機アルミニウム化合物とコバルト又はニッケル化合物を含んだ触媒を用いて、1,3ブタジエンを重合して容易に得ることができる。
【0031】
ゴム変性スチレン系樹脂(B)中に含まれるゴム状重合体(a)の含有量は、3~20質量%が好ましく、更に好ましくは5~20質量%である。ゴム状重合体(a)の含有量が3質量%より少ないとスチレン系樹脂の耐衝撃性が低下する。また、ゴム状重合体(a)の含有量が20質量%を超えると難燃性が低下する。
なお本開示で、ゴム変性スチレン系樹脂(A)中に含まれるゴム状重合体(a)の含有量は、熱分解ガスクロマトグラフイーを用いて算出される値である。
【0032】
ゴム変性スチレン系樹脂(A)中に含まれるゴム状重合体(a)の平均粒子径は、耐衝撃性や難燃性の観点から、0.5~4.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.8~3.5μmである。
なお本開示で、ゴム変性スチレン系樹脂(A)中に含まれるゴム状重合体(a)の平均粒子径は、後述の[実施例]の項で説明する手順で測定される値である。
【0033】
ゴム変性スチレン系樹脂(B)の還元粘度(これは、ゴム変性スチレン系樹脂(B)の分子量の指標となる)は、0.50~0.85dL/gの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.55~0.80dL/gの範囲である。0.50dL/gより小さいと衝撃強度が低下し、0.85dL/gを超えると流動性の低下により成形性が低下する。
なお本開示で、ゴム変性スチレン系樹脂(A)の還元粘度は、トルエン溶液中で30℃、濃度0.5g/dLの条件で測定される値であり、より詳細には、後述の[実施例]の項で説明する手順で測定される値である。
【0034】
ゴム変性スチレン系樹脂(B)の製造方法は、特に制限されるものではないが、ゴム状重合体(a)の存在下、スチレン系単量体(及び溶媒)を重合する塊状重合(若しくは溶液重合)、又は反応途中で懸濁重合に移行する塊状-懸濁重合、又はゴム状重合体(a)ラテックスの存在下、スチレン系単量体を重合する乳化グラフト重合にて製造することができる。塊状重合においては、ゴム状重合体(a)とスチレン系単量体、並びに必要に応じて有機溶媒、有機過酸化物、及び/又は連鎖移動剤を添加した混合溶液を、完全混合型反応器又は槽型反応器と複数の槽型反応器とを直列に連結し構成される重合装置に連続的に供給することにより製造することができる。
【0035】
<NOR型ヒンダードアミン系化合物(C)>
NOR型ヒンダードアミン系化合物(C)の含有量は、難燃性スチレン系樹脂組成物100質量%に対して、0.2~5.0質量%であり、好ましくは0.5~3.0質量%であり、より好ましくは1.0~2.0質量%である。0.2質量%以上であれば、薄い肉厚の成形品で難燃性が得られる。また、5.0質量%を超えて添加しても、難燃性の向上は見られず、耐衝撃性や耐熱性が大きく低下する。
また、NOR型ヒンダードアミン系化合物(C)は、光安定化剤としてよく知られるものであり、添加することにより耐光性を付与することもできる。
【0036】
NOR(アルコキシイミノ基)型ヒンダードアミン系化合物(C)のアルコキシイミノ基とは、ピペリジン環のイミノ基(>N-H)の部分が、NHのままであるN-H型、Hがメチル基で置き換わったN-メチル型に対して、N-アルコキシル基(>N-OR)の構造を有するものであり、N-アルコキシル基はアルキルパーオキシラジカル(RO2・)を捕捉して容易にラジカルとなり難燃効果を発揮する。一方、N-メチル型ヒンダードアミン系化合物又はN-H型ヒンダードアミン系化合物の場合は、難燃性が低下するおそれがある。
上記のアルコキシル基(-OR)は、アルキル基に酸素が結合したアルコキシル基に限定されず、Rは、アルキル基以外に、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基等を含む。
これらアルコキシル基の具体的な例としては、メトキシ基、プロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基が好ましく、特に、プロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等が、分子量が大きくなることでシート及びフィルムからのブリードアウトを抑制できる点から、好ましい。
【0037】
本実施形態で用いるNOR型ヒンダードアミン系化合物としては、N-アルコキシル基(>N-OR)の構造を有するものであれば特に限定されない。具体例として、例えば、特表2002-507238号公報、国際公開第2005/082852号、国際公開第2008/003605号等に記載されているNOR型ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
【0038】
また、(C)NOR型ヒンダードアミン系化合物は、特に高分子タイプのものが好ましい。高分子タイプとは、一般に、オリゴマー状又はポリマー状化合物である。高分子タイプであると、成形加工のモールドデポジットが低減でき、難燃性と耐熱性の点に優れる。
上記高分子タイプのオリゴマー状又はポリマー状化合物は、繰り返し単位数としては、2~100が好ましく、より好ましくは5~80である。
【0039】
NOR型ヒンダードアミン系化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる:1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-オクタデシルアミノピペリジン;ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケート;2,4-ビス[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ブチルアミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-s-トリアジン;ビス(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アジペート;4,4’-ヘキサメチレンビス(アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)と、2-クロロ-4,6-ビス(ジブチルアミノ)-s-トリアジンで末端キャップされた2,4-ジクロロ-6-[(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ブチルアミノ]-s-トリアジンとの縮合生成物であるオリゴマー性化合物;4,4’-ヘキサメチレンビス(アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)と、2-クロロ-4,6-ビス(ジブチルアミノ)-s-トリアジンで末端キャップされた2,4-ジクロロ-6-[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ブチルアミノ]-s-トリアジンとの縮合性生成物であるオリゴマー性化合物;2,4-ビス[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-ピペリジン-4-イル)-6-クロロ-s-トリアジン;過酸化処理した4-ブチルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジンと、シクロヘキサンと、N,N’-エタン-1,2-ジイルビス(1,3-プロパンジアミン)との反応生成物(N,N’,N’’’-トリス{2,4-ビス[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)n-ブチルアミノ]-s-トリアジン-6-イル}-3,3’-エチレンジイミノジプロピルアミン);ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート;1-ウンデシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オン;
ビス(1-ステアリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート。
【0040】
市販品としては、BASF社製FlamestabNOR116FF、TINUVIN NOR371、TINUVIN XT850FF、TINUVIN XT855FF、TINUVIN PA123、株式会社ADEKA製LA-81等を例示することができる。
(C)NOR型ヒンダードアミン系化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
<リン系難燃剤、ブロム系難燃剤(D)>
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物は、(D)リン系難燃剤及びブロム系難燃剤からなる群から選ばれる1つ以上の難燃剤を含んでいてもよい。リン系難燃剤及び/又はブロム系難燃剤を使用すると、NOR型ヒンダードアミン化合物(C)との相乗効果により、更に高い難燃性を得ることができる。
リン系難燃剤とブロム系難燃剤は、単一化合物であっても混合物であってもかまわず、リン系難燃剤とブロム系難燃剤の両方を使うこともできる。
(D)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して1~20質量部であることが好ましく、より好ましくは2~15質量部であり、更に好ましくは3~10質量部である。1質量部より少ないと難燃性の向上は見られず、20質量部より多いと衝撃強度や耐熱性が低下する。
【0042】
-リン系難燃剤-
リン系難燃剤は、特に制限されず、従来公知の方法によって得られるもの、又は市販品を用いることができる。好ましくは、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、又はホスホン酸エステル化合物であり、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でもゴム変性スチレン系樹脂(B)との相溶性の良いリン酸エステル化合物、又はホスホン酸エステル化合物が最も好ましい。
【0043】
リン系難燃剤は、特にリン含有量が3.0質量%以上のものであると、NOR型ヒンダードアミン系化合物(C)との難燃性の相乗効果が発現し、少ない添加量で高い難燃性を得ることができる。リン含有量が3.0質量%以上とは、リン系難燃剤中にリン元素が3.0質量%以上含まれるリン化合物のことをいう。
リン系難燃剤は、リン含有量が3.0質量%以上であると好ましく、7.0質量%以上であるとより好ましい。リン含有量が3.0質量%以上であると、NOR型ヒンダードアミン系化合物(C)と難燃性に対し相乗効果を発現するため、高い難燃性、すなわち、UL94垂直燃焼試験(UL94-V試験)において0.8mm厚みでV-2を得ることができる。
なお、リン含有量は、吸光光度法にて測定することができる。
【0044】
また、リン系難燃剤としては、スチレン系樹脂中での分散が良好となる150℃~300℃で液体、即ち、融点が300℃以下である難燃剤が好ましい。溶融混錬時に固体であるリン系難燃剤(例えば、融点を有さないリン系難燃剤)を用いると、溶融混練時にリン系難燃剤が液体状ではないため、(A)成分及び(B)成分に均一に分散せず、物性低下を起こしたり、難燃性が低下したりするおそれがある。
【0045】
--リン酸エステル化合物--
リン酸エステル化合物としては、例えば、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)等のモノマー型リン酸エステル系化合物、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス-ジフェニルホスフェート(BADP)、ビスフェノールAビス-ジクレジルホスフェート、ビフェノールビス-ジフェニルホスフェート、ビフェノールビス-ジキシレニルホスフェート等の、オキシ塩化リンと二価のフェノール系化合物とフェノール(又はアルキルフェノール)との反応生成物である芳香族縮合リン酸エステル系化合物等が挙げられる。
【0046】
これらの中でも好ましくは、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス-ジフェニルホスフェート(BADP)、ビフェノールビス-ジフェニルホスフェート、ビフェノールビス-ジキシレニルホスフェートであり、より好ましくは、トリフェニルホスフェート(TPP)、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェートであり、更に好ましくは、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェートである。
【0047】
また、リン酸エステル化合物は、耐熱性、成形加工時のモールドデポジットの低減等の観点で、縮合タイプである縮合リン酸エステル系化合物であることが好ましく、特に下記式(1)で表される芳香族縮合リン酸エステル系化合物が好ましい。
【化1】
式(1)中、R1~R5は水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、R1~R5は同一でも異なっていてもよい。nは1~30の整数であり、好ましくは0~10の整数である。
アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第2ブチル、第3ブチル、アミル、第3アミル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、n-オクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。
シクロアルキル基としてはシクロヘキシル等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル、クレジル、キシリル、2,6-キシリル、2,4,6-トリメチルフェニル、ブチルフェニル、ノニルフェニル等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0048】
更に、上記リン酸エステル化合物の中でも、(D)成分のリン系難燃剤としては、難燃性と透明性の両立という観点から、下記の化合物No.1、2、又は3のリン酸エステル化合物が好ましく、化合物No.2又は3がより好ましく、化合物No.2が更に好ましい。
化合物No.2(レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート)としては、例えば、大八化学工業株式会社のPX-200等が、化合物No.3(レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート)としては、例えば、大八化学工業株式会社のCR-733S等が使用できる。
【化2】
【0049】
-ホスファゼン化合物-
ホスファゼン化合物としては、例えば、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(メトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(エトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(n-プロポキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(イソ-プロポキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(n-ブトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(イソ-ブトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(m-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(o-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(4-エチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(4-n-プロピルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(4-イソ-プロピルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(4-t-ブチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(4-t-オクチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(2,3-ジメチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(2,4-ジメチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(2,5-ジメチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(2,6-ジメチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(エトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-プロポキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(イソ-プロポキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-ブトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(イソ-ブトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(m-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(o-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(エトキシ)-1,3,5-トリス(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(エトキシ)-1,3,5-トリス(m-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(エトキシ)-1,3,5-トリス(o-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-プロポキシ)-1,3,5-トリス(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-プロポキシ)-1,3,5-トリス(m-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-プロポキシ)-1,3,5-トリス(o-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(イソ-プロポキシ)-1,3,5-トリス(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-ブトキシ)-1,3,5-トリス(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(イソ-ブトキシ)-1,3,5-トリス(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(4-t-ブチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(4-t-オクチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-プロポキシ)-1,3,5-トリス(4-t-ブチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-プロポキシ)-1,3,5-トリス(4-t-オクチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン等が挙げられる。
【0050】
この中でも好ましくは、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(メトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(エトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(エトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼンであり、より好ましくは、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(エトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(エトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼンであり、更に好ましくは、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(フェノキシ)シクロトリホスファゼンである。
【0051】
-ホスホン酸エステル-
ホスホン酸エステルとしては、例えば、下記式(2)で表されるものが挙げられる。
【化3】
式(2)中、R1~R5は、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、R1~R5はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
炭化水素基としては、鎖状(直鎖及び分岐鎖のいずれでもよい)及び環状(単環、縮合多環、架橋環及びスピロ環のいずれでもよい)のいずれであってもよく、例えば、側鎖を有する環状炭化水素基が挙げられる。また、炭化水素基は、飽和及び不飽和のいずれでもよい。
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。
【0052】
上記式(2)で表されるホスホン酸エステルの具体例としては、下記式(2)-1~(2)-8で表される化合物が挙げられる。
【化4】
【0053】
-ブロム系難燃剤-
本実施形態のブロム系難燃剤は、通常この分野で使用されるブロム系難燃剤(臭素系難燃剤)を限定なく使用することができ、これらの中でも汎用されるものとして、ブロム化ビスフェノールA類又はブロム化ビスフェノールS類、ブロム化フェニルエーテル類、ブロム化ビスフェノールA系カーボネートオリゴマー、ブロム化ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ブロム化スチレン系、ブロム化フタルイミド系、ブロム化ベンゼン類、ブロム化シクロアルカン系、ブロム化イソシアヌレート類等の各難燃剤を挙げることができる。これらのブロム系難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
ブロム化ビスフェノールA類又はブロム化ビスフェノールS類は、1~8個のブロム原子がビスフェノールA残基又はビスフェノールS残基のベンゼン環に結合した化合物を挙げることができ、その例としては、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノールAビス(アリルエーテル)、テトラブロムビスフェノールAビス(2-ブロムエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノールAビス(3-ブロムプロピルエーテル)、テトラブロムビスフェノールAビス(2,3-ジブロムプロピルエーテル)、テトラブロムビスフェノールS、テトラブロムビスフェノールSビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)及びテトラブロムビスフェノールSビス(2,3-ジブロムプロピルエーテル)等を挙げることができる。
【0055】
市販されているブロム化ビスフェノールA類又はブロム化ビスフェノールS類としては、ブロモケム・ファーイースト(株)の「FR-1524」、グレート・レークス・ケミカル(株)の「Great Lakes BA-50」、「Great Lakes BA-50P」、「Great Lakes BA-59」、「Great Lakes BA-59P」及び「Great Lakes PE-68」、アルベマール(株)の「Saytex RB-100」、帝人化成(株)の「ファイヤガード2000」、「ファイヤガード3000」、「ファイヤガード3100」及び「ファイヤガード3600」、丸菱油化工業(株)の「ノンネンPR-2」、東ソー(株)の「フレームカット121R」、(株)鈴裕化学の「ファイアカットP-680」等を挙げることができる。
【0056】
ブロム化フェニルエーテル類は、1個以上のブロム原子がフェニルエーテル基に結合した化合物であって、例えば、ビス(トリブロムフェノキシ)エタン、ヘキサブロムジフェニルエーテル、オクタブロムジフェニルエーテル、デカブロムジフェニルエーテル及びポリジブロムフェニレンオキサイド等を挙げることができる。
【0057】
市販されているブロム化フェニルエーテル類難燃剤としては、ブロモケム・ファーイースト(株)の「FR-1210」及び「FR-1208」、グレート・レークス・ケミカル(株)の「Great Lakes FF-680」、「Great Lakes DE-83」、「Great Lakes DE-83R」及び「Great Lakes DE-79」、アルベマール(株)の「Saytex 102E」及び「Saytex 111」を挙げることができる。
【0058】
ブロム化ビスフェノールA系カーボネートオリゴマーは、下記式(3)
【化5】
で示される基の重合物であって、オリゴマーとは、重合度(n)が1~10のものをいう。
【0059】
上記式(3)で示される基の重合物としては、例えば、下記式(4)又は(5)で示される難燃剤を挙げることができる。
【化6】
【化7】
【0060】
上記式(4)の市販されている難燃剤としては、帝人化成(株)の「ファイヤガード7000」及び「ファイヤガード7500」を挙げることができる。
また、上記式(5)の市販されている難燃剤としては、グレート・レークス・ケミカル(株)の「Great Lakes BC-52」及び「Great Lakes BC-58」等を挙げることができる。
【0061】
ブロム化ビスフェノールA系エポキシ樹脂としては、下記式(6)で示される化合物を挙げることができる。
【化8】
【0062】
上記式(6)の市販されている難燃剤としては、重合度(n)に応じて種々の製品があり、ブロモケム・ファーイースト(株)の「F-2300」、「F-2300H」、「F-2400」及び「F-2400H」、大日本インキ化学工業(株)の「プラサームEP-16」、「プラサームEP-30」、「プラサームEP-100」及び「プラサームEP-500」、阪本薬品工業(株)の「SR-T1000」、「SR-T2000」、「SR-T5000」及び「SR-T20000」等を挙げることができる。
【0063】
また、ブロム化ビスフェノールA系エポキシ樹脂の例として、上記式(6)の両末端のエポキシ基がブロック化剤で封鎖された化合物及び片側の末端エポキシ基がブロック化剤で封鎖された化合物を挙げることができる。そのブロック化剤としては、エポキシ基を開環付加する化合物であれば限定されないが、フェノール類、アルコール類、カルボン酸類、アミン類及びイソシアネート類等にブロム原子を含有するものを挙げることができ、その中でも難燃効果を向上させる点でブロム化フェノール類が好ましく、ジブロムフェノール、トリブロムフェノール、ペンタブロムフェノール、エチルジブロムフェノール、プロピルジブロムフェノール、ブチルジブロムフェノール及びジブロムクレゾール等を挙げることができる。
【0064】
当該重合物の両末端のエポキシ基がブロック化剤で封鎖された難燃剤の例としては、下記式(7)又は(8)で示される難燃剤を挙げることができる。
【化9】
【0065】
上記式(7)又は(8)の市販されている難燃剤としては、大日本インキ化学工業(株)の「プラサームEC-14」、「プラサームEC-20」及び「プラサームEC-30」、東都化成(株)の「TB-60」及び「TB-62」、阪本薬品工業(株)の「SR-T3040」及び「SR-T7040」等を挙げることができる。
【0066】
また、当該重合物の片側の末端エポキシ基のみがブロック化剤で封鎖された難燃剤の例としては、下記式(9)又は(10)で示される難燃剤を挙げることができる。
【化10】
【化11】
【0067】
上記式(9)又は(10)の市販されている難燃剤としては、大日本インキ化学工業(株)の「プラサームEPC-15F」、油化シェルエポキシ(株)の「E5354」等を挙げることができる。
【0068】
ブロム化スチレン系難燃剤としては、スチレン骨格のベンゼン環に1~5個のブロム原子が結合した下記式(11)のブロム化スチレンモノマー
【化12】
及び下記式(12)のその重合体(ポリマー)
【化13】
が挙げられ、好ましくは重合体である。
ブロム化スチレン系の具体例としては、例えば、ブロムスチレン及びブロム化ポリスチレンを挙げることができ、市販されているブロム化ポリスチレン系難燃剤としては、グレート・レークス・ケミカル(株)の「Great Lakes PDBS-10」及び「Great Lakes PDBS-80」等を挙げることができる。また、前記の難燃剤と製法は異なるが、フェロ(株)の「パイロチェック68PB」もブロム化ポリスチレン系難燃剤の例として挙げることができる。
【0069】
ブロム化フタルイミド系難燃剤としては、フタルイミド基のベンゼン環に1~4個のブロム原子が結合した化合物であって、例えば、モノブロムフタルイミド、ジブロムフタルイミド、トリブロムフタルイミド、テトラブロムフタルイミド、エチレンビス(モノブロムフタルイミド)、エチレンビス(ジブロムフタルイミド)、エチレンビス(トリブロムフタルイミド)及び下記式(13)のエチレンビス(テトラブロムフタルイミド)
【化14】
を挙げることができ、市販されている難燃剤としては、アルベマール(株)の「Saytex BT-93」及び「Saytex BT-93W」を挙げることができる。
【0070】
ブロム化ベンゼン類としては、1個以上のブロム原子がベンゼン環に結合した基からなる化合物であって、テトラブロムベンゼン、ペンタブロムベンゼン、ヘキサブロムベンゼン、ブロムフェニルアリルエーテル、ペンタブロムトルエン、ビス(ペンタブロムフェニル)エタン及びポリ(ペンタブロムベンジルアクリレート)等を挙げることができ、市販されている難燃剤としては、アルベマール(株)の「Saytex 8010」を挙げることができる。
【0071】
ブロム化シクロアルカン系としては、1~6個のブロム原子が炭素数6~12のシクロアルカン(環状脂肪族炭化水素)に結合したブロム化炭化水素類が挙げられる。該シクロアルカンの例としては、シクロヘキサン及びシクロドデカンを挙げることができ、ブロム化シクロアルカンの例としては、ペンタブロムシクロヘキサン、ヘキサブロムシクロヘキサン、テトラブロムシクロドデカン、ペンタブロムシクロドデカン及びヘキサブロムシクロドデカン等を挙げることができる。
市販されているヘキサブロムシクロドデカンとしては、ブロモケム・ファーイースト(株)の「FR-1206」、アルベマール(株)の「Saytex HBCD」、グレート・レークス・ケミカル(株)の「Great LakesCD-75P」、(株)鈴裕化学の「ファイアカットP-880M」及び第一工業製薬(株)の「ピロガード SR-103」等を挙げることができる。
【0072】
ブロム化イソシアヌレート類としては、炭素数2~6のアルキル基(鎖状脂肪族炭化水素基)にブロム原子が結合したブロム化アルキル基とイソシアヌル酸残基が結合した化合物並びに1~5個のブロム原子がフェノキシ基に結合したブロム化フェノキシ基とイソシアヌル酸残基が結合した化合物を挙げることができる。その具体例としては、トリス(モノブロムプロピル)イソシアヌレート、トリス(2,3-ジブロムプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリブロムプロピル)イソシアヌレート、トリス(テトラブロムプロピル)イソシアヌレート、トリス(ペンタブロムプロピル)イソシアヌレート、トリス(ヘプタブロムプロピル)イソシアヌレート、トリス(オクタブロムブチル)イソシアヌレート、トリス(モノブロムフェノキシ)イソシアヌレート、トリス(ジブロムフェノキシ)イソシアヌレート、トリス(トリブロムフェノキシ)イソシアヌレート、トリス(ペンタブロムフェノキシ)イソシアヌレート、トリス(エチルモノブロムフェノキシ)イソシアヌレート及びトリス(プロピルジブロムフェノキシ)イソシアヌレート等を挙げることができる。
市販されているブロム化イソシアヌレート類としては、日本化成(株)の「タイク-6B」及び(株)鈴裕化学の「ファイアカットP-660」等を挙げることができる。
【0073】
前記のような汎用されるブロム系難燃剤以外に、文献にも示され、ブロム系難燃剤メーカーのカタログ等にも示されているものも勿論使用することができる。それらのブロム系難燃剤としては、ブロム化フェノール類、ブロム化フェノキシトリアジン系、ブロム化アルカン系、ブロム化マレイミド系及びブロム化フタル酸類等を挙げることができる。
【0074】
ブロム化フェノール類としては、1~5個のブロム原子がフェノール基に結合した化合物であって、例えば、モノブロムフェノール、ジブロムフェノール、トリブロムフェノール、テトラブロムフェノール及びペンタブロムフェノール等を挙げることができる。
【0075】
ブロム化フェノキシトリアジン系としては、1~5個のブロム原子がフェノキシ基に結合し、そのブロム化フェノキシ基の1~3個がトリアジン環に結合した化合物であって、例えば、モノ(トリブロムフェノキシ)トリアジン、ビス(モノブロムフェノキシ)トリアジン、ビス(トリブロムフェノキシ)トリアジン、トリス(ジブロムフェノキシ)トリアジン及びトリス(トリブロムフェノキシ)トリアジン等を挙げることができ、市販されている難燃剤としては、第一工業製薬(株)の「ピロガード SR-245」を挙げることができる。
【0076】
ブロム化アルカン系としては、炭素数2~6のアルカン(鎖状脂肪族炭化水素)にブロム原子が結合した化合物である。該アルカンの例としては、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン及びヘキサンを挙げることができ、ブロム化アルカンの例としては、ジブロムエタン、テトラブロムエタン、モノブロムプロパン、トリブロムプロパン、ヘキサブロムプロパン、オクタブロムプロパン、テトラブロムブタン、ヘキサブロムブタン、オクタブロムブタン、トリブロムペンタン、ペンタブロムペンタン、オクタブロムペンタン、ジブロムヘキサン、トリブロムヘキサン、テトラブロムヘキサン、ヘキサブロムヘキサン及びオクタブロムヘキサン等を挙げることができる。
【0077】
ブロム化マレイミド系としては、1~5個のブロム原子がフェニルマレイミド基に結合した化合物であって、例えば、モノブロムフェニルマレイミド、ジブロムフェニルマレイミド、トリブロムフェニルマレイミド及びペンタブロムフェニルマレイミド等を挙げることができる。
【0078】
ブロム化フタル酸類としては、1~4個のブロム原子が無水フタル酸に結合した化合物を挙げることができ、その例としては、モノブロム無水フタル酸、ジブロム無水フタル酸、トリブロム無水フタル酸及びテトラブロム無水フタル酸等を挙げることができる。
【0079】
また、難燃性を更に高める目的で、三酸化アンチモン等の難燃助剤を併用することはよく行なわれることであるが、この難燃助剤の添加によって、本発明の効果に何ら影響を与えるものではない。
当該難燃助剤の添加量は、通常、ポリスチレン100質量部に対して、0.5~10質量部使用されるが、物性等との関係で、好ましい使用量は1~7質量部である。
【0080】
<任意添加成分>
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物は、上記(A)~(C)成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて従来公知の添加剤、加工助剤等の任意添加成分を添加することができる。これら添加剤、加工助剤等としては、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤等が挙げられる。
【0081】
酸化防止剤としては、フェノール系化合物、リン系化合物、チオエーテル系化合物等が挙げられる。
【0082】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ第3ブチル-p-クレゾール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’-チオビス(6-第3ブチル-m-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-第3ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-第3ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-第3ブチル-m-クレゾール)、2,2’-エチリデンビス(4,6―ジ第3ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4-第2ブチル-6-第3ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-第3ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-第3ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、2-第3ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-第3ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、ステアリル〔3-(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、テトラキス〔3-(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、チオジエチレングリコールビス〔(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-第3ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2-第3ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-第3ブチル-5-メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{(3-第3ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3-第3ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0083】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4-ジ第3ブチルフェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2-第3ブチル-4-(3-第3ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ第3ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ第3ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ第3ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-n-ブチリデンビス(2-第3ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-第3ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ第3ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、2,2’-メチレンビス(4,6-第3ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-第3ブチルフェニル)-オクタデシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ第3ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2-〔(2,4,8,10-テトラキス第3ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ〕エチル)アミン、2-エチル-2-ブチルプロピレングリコールと2,4,6-トリ第3ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0084】
チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類、及びペンタエリスリトールテトラ(β-アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0085】
耐候剤としては、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤等を用いることができる。
【0086】
紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)等の2-ヒドロキシベンゾフェノン類;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ第3ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’-第3ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-5’-第3オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-第3オクチル-6-(ベンゾトリアゾリル)フェノール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-第3ブチル-5’-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等の2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジ第3ブチルフェニル-3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2,4-ジ第3アミルフェニル-3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2-エチル-2’-エトキシオキザニリド、2-エトキシ-4’-ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル-α-シアノ-β、β-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ第3ブチルフェニル)-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシ-5-メチルフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ第3ブチルフェニル)-s-トリアジン等のトリアリールトリアジン類が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0087】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノ-ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-第3オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8-12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0088】
滑剤としては、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸、脂肪酸金属塩系等を用いることができる。
【0089】
脂肪族アミド系滑剤としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド等が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0090】
脂肪族エステル系滑剤としては、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、エルカ酸メチル、ベヘニン酸メチル、ラウリル酸ブチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ヤシ脂肪酸オクチルエステル、ステアリン酸オクチル、牛脂脂肪酸オクチルエステル、ラウリル酸ラウリル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、ミリスチン酸セチル、炭素数28~30の直鎖状で分岐がない飽和モノカルボン酸(以下モンタン酸と略記する)とエチレングリコールのエステル、モンタン酸とグリセリンのエステル、モンタン酸とブチレングリコールのエステル、モンタン酸とトリメチロールエタンのエステル、モンタン酸とトリメチロールプロパンのエステル、モンタン酸とペンタエリスリトールのエステル、グリセリンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスクイオレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0091】
脂肪酸系滑剤のうち飽和脂肪酸としては、具体的には、ラウリン酸(ドデカン酸)、イソデカン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデシル酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、イソステアリン酸、ツベルクロステアリン酸(ノナデカン酸)、2-ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸(イコサン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、リグノセリン酸(テトラドコサン酸)、セロチン酸(ヘキサドコサン酸)、モンタン酸(オクタドコサン酸)、メリシン酸等が挙げられ、特に、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、12-ヒドロキシステアリン酸及びモンタン酸等が挙げられる。
脂肪酸系滑剤のうち不飽和脂肪酸としては、具体的には、ミリストレイン酸(テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(ヘキサデセン酸)、オレイン酸(cis-9-オクタデセン酸)、エライジン酸(trans-9-オクタデセン酸)、リシノール酸(オクタデカジエン酸)、バクセン酸(cis-11-オクタデセン酸)、リノール酸(オクタデカジエン酸)、リノレン酸(9,11,13-オクタデカトリエン酸)、エレステアリン酸(9,11,13-オクタデカトリエン酸)、ガドレイン酸(イコサン酸)、エルカ酸(ドコサン酸)、ネルボン酸(テトラドコサン酸)等が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0092】
脂肪酸金属塩系滑剤としては、上記脂肪酸系滑剤の脂肪酸のリチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩等が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0093】
帯電防止剤としては、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系、グリセリン脂肪酸モノエステル等の脂肪酸部分エステル類等を用いることができる。
具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-(3-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)メチルアンモニウムメソスルフェート、(3-ラウリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ステアロアミドプロピルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウム硝酸塩、ステアロアミドプロピルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムリン酸塩、カチオン性ポリマー、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキル硝酸エステル塩、リン酸アルキルエステル塩、アルキルホスフェートアミン塩、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ジグリセリン脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミン脂肪酸モノエステル、アルキルジエタノールアミド、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリエーテルブロックコポリマー、セチルベタイン、ヒドロキシエチルイミダゾリン硫酸エステル等が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0094】
充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭素繊維、マイカ、ワラストナイト、ウィスカ等を用いることができる。
【0095】
その他、ブロッキング防止剤、着色剤、ブルーミング防止剤、表面処理剤、抗菌剤、目ヤニ防止剤(特開2009-120717号公報に記載のシリコーンオイル、高級脂肪族カルボン酸のモノアミド化合物、及び高級脂肪族カルボン酸と1価~3価のアルコール化合物とを反応させてなるモノエステル化合物等の目ヤニ防止剤)等を添加してもよい。
【0096】
添加剤及び加工助剤等の任意添加成分の合計含有量は、難燃性スチレン系樹脂組成物中、0.05~5質量%としてよい。
【0097】
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物は、実質的に(A)成分~(D)成分及び任意添加成分のみからなっていてもよい。また、(A)成分~(D)成分のみ、又は(A)成分~(D)成分及び任意添加成分のみからなっていてもよい。
「実質的に(A)成分~(D)成分及び任意添加成分のみからなる」とは、難燃性スチレン系樹脂組成物の95~100質量%(好ましくは98~100質量%)が(A)成分~(D)成分であるか、又は(A)成分~(D)成分及び任意添加成分であることを意味する。
尚、本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で(A)成分~(D)成分及び任意添加成分の他に不可避不純物を含んでいてもよい。
【0098】
[難燃性スチレン系樹脂組成物の物性]
<難燃性>
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物の難燃性は、UL94垂直燃焼試験(UL94-V試験)において、規格内である、即ち、V-0~V-2の難燃性クラスであることが好ましい。
なお本開示で、難燃性は、後述の[実施例]の項に記載の方法で評価することができる。
【0099】
<シャルピー衝撃強さ>
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物のシャルピー衝撃強度は、1.2kJ/m2以上であることが好ましく、より好ましくは6kJ/m2以上である。1.2kJ/m2未満であると、OA製品内部部品等の用途では使用中に破損する懸念がある。
なお本開示で、シャルピー衝撃強度は、ISO 179に準拠して測定される値である。
【0100】
<ビカット軟化温度>
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は、86℃以上であることが好ましく、より好ましくは88℃以上である。86℃未満であると、使用中、温度が上昇し、製品が変形してしまう恐れがある。
なお本開示で、ビカット軟化温度は、ISO 306に準拠して、荷重49N、昇温速度50℃/時間の条件により測定される値である。
【0101】
[難燃性スチレン系樹脂組成物の製造方法]
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物は、各成分を任意の方法で溶融混練することによって製造することができる。例えば、ヘンシェルミキサーに代表される高速撹拌機、バンバリーミキサーに代表されるバッチ式混練機、単軸又は二軸の連続混練機、ロールミキサー等を単独で、又は組み合わせて用いる方法が挙げられる。混練の際の加熱温度は、通常、180~260℃の範囲で選択される。
【0102】
[成形品]
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物は、上記の溶融混練成形機により、あるいは、得られた難燃性スチレン系樹脂組成物のペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法、及び発泡成形法等により、成形品を製造することができる。
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物を含む成形品、好ましくは射出成形品(射出圧縮を含む)は、複写機、ファックス、テレビ、ラジオ、テープレコーダー、ビデオデッキ、パソコン、プリンター、電話機、情報端末機、冷蔵庫、電子レンジ等のOA機器、家庭電化製品、電気・電子機器のハウジングや各種部品、発泡断熱材、絶縁フィルム等に好適に用いられる。
【実施例
【0103】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明の実施形態を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0104】
<測定及び評価方法>
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の物性の測定及び評価は、次の方法に基づいて行った。
【0105】
(1)スチレン共重合樹脂のスチレン単量体単位、メタクリル酸単量体単位、及びメタクリル酸メチル単量体単位の含有量
プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から、樹脂組成を定量した。
・試料調製:樹脂ペレット30mgをd6-DMSO 0.75mLに60℃で4~6時間加熱溶解した。
・測定機器:日本電子(株)製 JNM ECA-500
・測定条件:測定温度 25℃、観測核 1H、積算回数 64回、繰り返し時間 11秒。
(スペクトルの帰属)
ジメチルスルホキシド重溶媒中で測定されたスペクトルの帰属について、0.5~1.5ppmのピークは、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、及び六員環酸無水物のα-メチル基の水素、1.6~2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(-COOCH3)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素である。また、6.5~7.5ppmのピークはスチレンの芳香族環の水素である。なお、本実施例及び比較例の樹脂では六員環酸無水物の含有量が少ないため、本測定方法では通常定量化は難しい。
【0106】
(2)スチレン共重合樹脂の重量平均分子量
スチレン共重合樹脂の重量平均分子量を、下記の条件や手順で測定した。
・試料調製:テトラヒドロフランに樹脂を約0.05質量%で溶解させた。
・測定条件
機器:TOSOH HLC-8220GPC(ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー)
カラム :super HZM-H
温度 :40℃
キャリア :THF 0.35mL/min
検出器 :RI、UV:254nm
検量線 :TOSOH製の標準PSを使用して作成。
【0107】
(3)スチレン共重合樹脂のメルトフローレート(MFR)
スチレン共重合樹脂のメルトマスフローレート(g/10分)は、ISO 1133に準拠して測定した(200℃、荷重49N)。
【0108】
(4)ゴム変性スチレン系樹脂中に含まれるゴム状重合体(a)の含有量
ブタジエンセグメントの結合様式を踏まえた上で、熱分解ガスクロマトグラフイーを用いてブタジエンセグメント量を測定し、ブタジエンセグメント量からゴム状重合体(a)の含有量を算出した。単位は質量%である。
【0109】
(5)ゴム変性スチレン系樹脂中に含まれるゴム状重合体(a)の平均粒子径
四酸化オスミウムで染色したゴム変性スチレン樹脂から厚さ75nmの超薄切片を作製し、電子顕微鏡を用いて倍率10000倍の写真を撮影した。写真中、黒く染色された粒子がゴム状重合体(a)である。写真から、下記数式(N1):
平均粒子径=ΣniDri3 /ΣniDri2 (N1)
(式中、niは、粒子径Driのゴム状重合体(a)粒子の個数であり、粒子径Driは、写真中の粒子の面積から円相当径として算出した粒子径である。)
により面積平均粒子径を算出し、ゴム状重合体(a)の平均粒子径とした。本測定は、写真を200dpiの解像度でスキャナーに取り込み、画像解析装置IP-1000(旭化成社製)の粒子解析ソフトを用いて測定した。
【0110】
(6)ゴム変性スチレン系樹脂の還元粘度
還元粘度はゴム変性スチレン系樹脂の分子量の指標となる。ゴム変性スチレン系樹脂1gをメチルエチルケトン/メタノール混合溶媒(混合質量比90/10)20mLに加え、振とう機で60分かけて溶解させた。次に、R20A2型ローターを備えた日立製作所製himacCR20型遠心分離機を用い、0℃、20,000rpmで60分、遠心分離した後、上澄み液にメタノールを添加し、スチレン系樹脂を析出させた。析出物を濾過後に、乾燥させて試料とし、トルエン溶液中で30℃、濃度0.5g/dLの条件で還元粘度(dL/g)を測定した。
【0111】
(7)難燃性
後述の方法で作製した試験片(b)(大きさ:127mm×12.7mm、厚み:1.5mm又は0.8mm)を用いて、50W試験炎によるUL94垂直燃焼試験(UL94-V試験)に準拠する方法で難燃性を評価した。
上記試験片(b)にガスバーナーの炎を当てて、その燃焼の程度を評価した。
なお、難燃等級には、UL94-V試験によって分類される難燃性のクラスを示した。全ての試験片で試験は5本行い、判定した。分類方法の概要は以下のとおりである。
V-0:5本の合計燃焼時間50秒以下、最大燃焼時間10秒以下、滴下綿着火なし
V-1:5本の合計燃焼時間250秒以下、最大燃焼時間30秒以下、滴下綿着火なし
V-2:5本の合計燃焼時間250秒以下、最大燃焼時間30秒以下、滴下綿着火あり
Not V:UL94の規格外
【0112】
(8)シャルピー衝撃強さ
後述の方法で作製した試験片(b)について、ISO 179に準拠して、シャルピー衝撃強度(kJ/m2)をノッチ有りで測定した。
【0113】
(9)ビカット軟化温度
ISO 306に準拠して、樹脂組成物のビカット軟化温度(℃)を測定した。荷重は49N、昇温速度は50℃/時間とした。
【0114】
(10)耐油性
後述の方法で作製した試験片(b)を熱風乾燥器で80℃にて2時間加熱した後、室温雰囲気下で、日清サラダ油(日清オイリオグループ株式会社製)を試験片(b)の中央部に2g塗布し、6時間後の状態を観察した。外観に変化のないものを◎(優れる)、試験片の表面にクラックが発生したものを○(良好)、試験片が破断に至ったものを×(不良)とした。
【0115】
(11)モールドデポジット
後述の射出成形方法にて試験片(b)を10ショット作製後、金型への付着物を目視にて確認した。
後述の表において、目視で付着物が確認できなかったものを「無」、油滴、油膜状の付着物が確認できたものを「有」と表記した。
【0116】
実施例で用いた各材料は下記の通りである。
【0117】
[(A)成分]
[樹脂a]
スチレン(ST)71.3質量部、メタクリル酸(MAA)7.3質量部、メタクリル酸メチル(MMA)6.4質量部、エチルベンゼン15.0質量部、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.025質量部から成る重合原料組成液を、1.1リットル/時の速度で、容量が4リットルの完全混合型反応器に、次いで、2リットルの層流型反応器から成る重合装置に、次いで、未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置に、連続的に順次供給し、樹脂を調製した。
重合工程における重合反応条件は、完全混合反応器は重合温度122℃、層流型反応器は重合温度120~142℃とした。脱揮された未反応ガスは、-5℃の冷媒を通した凝縮器で凝縮し、未反応液として回収した。
最終重合液中のポリマー分は、重合液を215℃、2.5kPaの減圧下で30分間乾燥後、式[(乾燥後の試料質量/乾燥前の試料質量)×100%]により測定したところ、65.6質量%であり、重量平均分子量は214,000(21.4万)であった。
得られた樹脂aの組成比、物性を表1に示す。
[樹脂b~d]
表1に示す樹脂の性状になるように組成や重合温度条件等を調整し、樹脂aと同様の方法で樹脂b~dを得た。
得られた樹脂b~dの組成比、物性を表1に示す。
【0118】
[スチレン共重合樹脂]
[樹脂e]
表1に示す樹脂の性状になるように組成や重合温度条件等を調整し、樹脂aと同様の方法で樹脂eを得た。
得られた樹脂eの組成比、物性を表1に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
[(B)成分]
・スチレン系樹脂(HIPS):
高衝撃ポリスチレン(HIPS)であるゴム変性スチレン系樹脂を用いた。該HIPSは、ゴム状重合体としてポリブタジエンを使用しており、上記分析方法による該HIPSの分析値は、ゴム状重合体(a)の含有量8.6質量%、ゴム状重合体(a)粒子の平均粒子径1.9μm、還元粘度0.64dL/gであった。
【0121】
[(C)成分]
・NOR型ヒンダードアミン系化合物A(NOR型-A)[BASF社製、FlamestabNOR116FF、高分子タイプ]
・NOR型ヒンダードアミン系化合物B(NOR型-B)[BASF社製、TINUVIN PA123]
【0122】
[(D)成分]
・ホスホン酸エステル化合物[丸菱油化工業株式会社製、ノンネン73、融点100℃、リン含有量10質量%]
・リン酸エステル(化合物No.2):レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート[大八化学工業株式会社製、PX-200、融点92℃、リン含有量9.0質量%、縮合タイプ]
・ブロム系難燃剤:ビス(ペンタブロムフェニル)エタン[アルベマール株式会社、Saytex8010]
【0123】
[添加剤]
(フェノール系酸化防止剤)
・3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル[BASF社製、Irganox1076]
(リン系酸化防止剤)
・トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト[BASF社製、Irgafos168]
【0124】
[実施例1~14]
表2、3に示す組成比で各成分と(A)~(C)成分100質量部に対して、Irganox1076とIrgafos168を0.2質量部ずつ添加後、予備混合した。得られた予備混合物を一括混合し、二軸押出機(東芝機械社製、TEM-26SS)を用い、180℃~230℃の範囲で溶融押出を行い、混練物として難燃性スチレン系樹脂組成物のペレットを得た。この際、スクリュー回転数は150rpm、吐出量は10kg/hrであった。
このようにして得られたペレットを、寸法127mm×12.7mm×厚み1.5mm又は0.8mmのピンゲート平板金型を備え付けた日本製鋼所社製の射出成形機を用い、シリンダー温度220℃、金型温度50℃、射出圧力(ゲージ圧40-60MPa)、射出速度(パネル設定値)50%、射出時間/冷却時間=5sec/20secで成形して試験片(b)を作製し、各物性の測定及び評価を実施した。結果を表2に示す。
【0125】
[比較例1~5]
比較例1~5は、表3に示すように組成を変更したこと以外は実施例と同様にして、樹脂組成物のペレットを得た。各物性の測定及び評価の結果を表3に示す。
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
表2に示すように、実施例1~14は、高い難燃性(0.8mm厚又は1.5mm厚でV-2)を有し、耐熱性と耐油性に優れることがわかる。更に、高分子タイプのNOR型ヒンダードアミン系化合物(C)を使用することにより、モールドデポジットの無い射出成形が可能となり、連続生産性に優れる。
【0129】
比較例1、2について、表3に示すように、NOR型ヒンダードアミン系化合物(C)が所定量より少ないと難燃性は得られず、所定量より多いと衝撃強度と耐油性の低下が大きいことがわかる。
比較例3について、表3に示すように、(A)成分の量が少ないと難燃性は得られないことがわかる。
比較例4、5について、表3に示すように、(A)成分のメタクリル酸単量体単位、メタクリル酸メチル単量体単位の含有量が多いと難燃性が得られず、難燃剤であるホスホン酸エステルを添加しても難燃性は得られないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の樹脂組成物を含む成形品は、デスクトップパソコンやノート型パソコン等のコンピューター部品、携帯電話部品、電気・電子機器、携帯情報端末、家電製品部品、自動車部品、産業資材、及び建築材等の肉厚の薄い製品、シート、フィルム等に好適に使用することができる。