(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】高層建物
(51)【国際特許分類】
E04H 1/04 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
E04H1/04 B
(21)【出願番号】P 2018092025
(22)【出願日】2018-05-11
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】長阪 太郎
(72)【発明者】
【氏名】坂井 和秀
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-209593(JP,A)
【文献】特開昭51-127548(JP,A)
【文献】特開2006-045933(JP,A)
【文献】特開2004-218239(JP,A)
【文献】特開昭61-183570(JP,A)
【文献】米国特許第04656799(US,A)
【文献】特開2004-211495(JP,A)
【文献】特開2002-121924(JP,A)
【文献】建築と社会,日本建築協会,1999年06月01日,1999年6月号,66,71
【文献】火災時のエレベーター利用避難のための設計・運用ガイドライン(案),日本防火技術者協会,2016年11月,3,49,http://www.jafpe.or.jp/pdf/20170202_JAFPE_EVhinan.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/00,1/04,1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層を有する高層建物において、
上部側の層を除く連続する複数の層を貫通する下部側シャフト
と、
下部側の層から前記上部側の層までの全体を連続して貫通する全体貫通シャフトと、を有し、
前記下部側シャフトは、前記高層建物の外周領域に設けられ、
前記全体貫通シャフトは、前記高層建物における前記外周領域よりも中央側となる中央領域に設けられ、
前記下部側シャフトよりも上側の
各層には、前記下部側シャフトの鉛直方向の上側となる領域に床が設けら
れ、
前記下部側シャフトは、前記上部側の層を除く連続する複数の層を貫通する第1下部側シャフトと、
前記第1下部側シャフトに隣接して設けられ前記上部側の層を除く連続する複数の層を貫通し前記第1下部側シャフトよりも上側の層まで達する第2下部側シャフトと、を有し、
前記第1下部側シャフト、前記第2下部側シャフトおよび前記全体貫通シャフトは、上下方向から見た平面視において前記第1下部側シャフト、前記第2下部側シャフト、前記全体貫通シャフトの順に、前記外周領域側から前記中央領域側に向かって並んで設けられ、
前記第1下部側シャフトは、
低層階用エレベータおよび低層階用エレベータホールが設けられる低層階用エレベータバンクであり、
前記低層階用エレベータホールは、上下方向から見た平面視において前記低層階用エレベータバンクの外部から前記第1下部側シャフト、前記第2下部側シャフトおよび前記全体貫通シャフトが並ぶ方向に交差する第1方向からアクセス可能であり、
前記第2下部側シャフトは、
中層階用エレベータおよび中層階用エレベータホールが設けられる中層階用エレベータバンクであり、
前記中層階用エレベータホールは、上下方向から見た平面視において前記中層階用エレベータバンクの外部から前記第1方向からアクセス可能であり、
前記全体貫通シャフトは、
高層階用エレベータおよび高層階用エレベータホールが設けられる高層階用エレベータバンクであり、
前記高層階用エレベータホールは、上下方向から見た平面視において前記高層階用エレベータバンクの外部から前記第1方向からアクセス可能であり、
前記低層階用エレベータホール、前記中層階用エレベータホール、前記高層階用エレベータホールは、上下方向から見た平面視において平行に設けられ、
前記中央領域には、前記複数の層に上下方向に連続して設けられた耐震要素および制振要素の少なくとも一方を有する構造コア部が設けられ、
前記構造コア部には、前記高層階用エレベータバンクが設けられていることを特徴とする高層建物。
【請求項2】
前記高層階用エレベータホールと、前記低層階用エレベータホールとが設けられる層には、前記高層階用エレベータホールおよび前記低層階用エレベータホールのいずれにもアプローチ可能なロビーが設けられ、
前記ロビーは、前記高層建物の外周領域に設けられていることを特徴とする
請求項1に記載の高層建物。
【請求項3】
災害時の避難経路には、
前記中層階用エレベータホールが含まれていないことを特徴とする
請求項1または2に記載の高層建物。
【請求項4】
前記中層階用エレベータバンクと前記高層階用エレベータバンクとは、前記耐震要素および前記制振要素の少なくとも一方を介して隣接している請求項1から3のいずれか一項に記載の高層建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高層建物に関する。
【背景技術】
【0002】
高層建物の連続する複数の層を貫通するシャフトには、エレベータバンク、階段室、設備配管スペース、制振装置が設置された構造部などが設けられている。このようなシャフトは、平面計画において高層建物の内側に設けられ、その周りに各層の居室や廊下などが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
高層建物においては、高層階用のエレベータと低層階用のエレベータとが設けられることがある。低層階のエレベータバンクが高層建物の上部まで達していない場合、その低層階のエレベータバンクの鉛直方向の上側の領域には、連続する層を貫通する吹き抜けが設けられたり、層ごとに居室や廊下などが設けられたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低層階のエレベータバンクの鉛直方向の上側の領域に吹き抜けを設けた場合では、この領域に層ごとに居室や廊下などが設けた場合と比べると、高層建物における居室として利用可能な有効面積が小さくなってしまうという問題がある。このため、高層建物の有効面積を広く確保しようとすると、建物の層数(階数)を増やしたり、平面積を大きくしたりしなければならず、高層建物の構築や管理にかかるコストが嵩み経済性が低下するという問題がある。
【0005】
これに対し、低層階のエレベータバンクの鉛直方向の上側の領域を層ごとに居室として使用すれば、高層建物における有効面積を広く確保することができる。
しかしながら、低層階のエレベータバンクの鉛直方向の上側の領域に設けられた居室は、高層建物の内側に配置されるため、平面視における外周部の領域となる外周領域に配置され窓が設けられた居室と比べると眺望が良くなく、採光を十分に得られないなど、その価値が低くなることがある。
これにより、高層建物が例えば賃貸ビルの場合では、低層階のエレベータバンクの上部の居室は、価値が低くなる分、その賃料を下げなければならないこともあり、賃貸事業の事業性が低下する虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、高層建物の上部まで達しない低層階用エレベータバンクなどのシャフトの鉛直方向の上側に設けられる居室の価値を高めることができる高層建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る高層建物は、複数の層を有する高層建物において、上部側の層を除く連続する複数の層を貫通する下部側シャフトと、下部側の層から前記上部側の層までの全体を連続して貫通する全体貫通シャフトと、を有し、前記下部側シャフトは、前記高層建物の外周領域に設けられ、前記全体貫通シャフトは、前記高層建物における前記外周領域よりも中央側となる中央領域に設けられ、前記下部側シャフトよりも上側の各層には、前記下部側シャフトの鉛直方向の上側となる領域に床が設けられ、前記下部側シャフトは、前記上部側の層を除く連続する複数の層を貫通する第1下部側シャフトと、前記第1下部側シャフトに隣接して設けられ前記上部側の層を除く連続する複数の層を貫通し前記第1下部側シャフトよりも上側の層まで達する第2下部側シャフトと、を有し、前記第1下部側シャフト、前記第2下部側シャフトおよび前記全体貫通シャフトは、上下方向から見た平面視において前記第1下部側シャフト、前記第2下部側シャフト、前記全体貫通シャフトの順に、前記外周領域側から前記中央領域側に向かって並んで設けられ、前記第1下部側シャフトは、低層階用エレベータおよび低層階用エレベータホールが設けられる低層階用エレベータバンクであり、前記低層階用エレベータホールは、上下方向から見た平面視において前記低層階用エレベータバンクの外部から前記第1下部側シャフト、前記第2下部側シャフトおよび前記全体貫通シャフトが並ぶ方向に交差する第1方向からアクセス可能であり、前記第2下部側シャフトは、中層階用エレベータおよび中層階用エレベータホールが設けられる中層階用エレベータバンクであり、前記中層階用エレベータホールは、上下方向から見た平面視において前記中層階用エレベータバンクの外部から前記第1方向からアクセス可能であり、前記全体貫通シャフトは、高層階用エレベータおよび高層階用エレベータホールが設けられる高層階用エレベータバンクであり、前記高層階用エレベータホールは、上下方向から見た平面視において前記高層階用エレベータバンクの外部から前記第1方向からアクセス可能であり、前記低層階用エレベータホール、前記中層階用エレベータホール、前記高層階用エレベータホールは、上下方向から見た平面視において平行に設けられ、前記中央領域には、前記複数の層に上下方向に連続して設けられた耐震要素および制振要素の少なくとも一方を有する構造コア部が設けられ、前記構造コア部には、前記高層階用エレベータバンクが設けられ、前記中層階用エレベータバンクと前記高層階用エレベータバンクとは、前記耐震要素および前記制振要素の少なくとも一方を介して隣接していることを特徴とする。
【0008】
本発明では、下部側シャフトよりも上側の層には、下部側シャフトの鉛直方向の上側となる領域に床が設けられていることにより、上部側の層の下部側シャフトの鉛直方向の上側の領域に居室を設けることができる。
下部側シャフトよりも上側の層における下部側シャフトの鉛直方向の上側の領域に設けられた居室は、高層建物の外周領域に位置するため、窓を設けることができる。これにより、下部側シャフトよりも上側の層における下部側シャフトの鉛直方向の上側の領域に設けられた居室は、眺望がよく、採光を十分に得ることができ、その価値を高めることができる。外周領域とは、平面視における外周部となる領域を示している。
【0010】
また、本発明に係る高層建物では、前記高層建物における前記外周領域よりも中央側となる中央領域には、高層階用エレベータが設置される高層階用エレベータバンクが設けられ、前記高層階用エレベータの高層階用エレベータホールと、前記低層階用エレベータの低層階用エレベータホールとが設けられる層では、前記高層階用エレベータホールと、前記低層階用エレベータホールとが平行に設けられていてもよい。
このような構成とすることにより、高層階用エレベータバンクおよび低層階用エレベータバンクを、建物の計画に合わせて配置することができる。中央領域とは、平面視における中央部となる領域を示している。
【0011】
また、本発明に係る高層建物では、前記高層階用エレベータホールと、前記低層階用エレベータホールとが設けられる層には、前記高層階用エレベータホールおよび前記低層階用エレベータホールのいずれにもアプローチ可能なロビーが設けられ、前記ロビーは、前記高層建物の外周領域に設けられていてもよい。
このような構成とすることにより、ロビーからの高層階用エレベータホールおよび低層階用エレベータホールへのアクセスが良いとともに、高層階用エレベータホールおよび低層階用エレベータホールを開放的なスペースとすることができる。また、ロビーに窓が設けられている場合には、高層階用エレベータホールおよび低層階用エレベータホールがロビーを介して高層建物の外部から採光および眺望を得ることができる。
【0013】
また、本発明に係る高層建物では、前記下部側シャフトは、上部側の層を除く連続する複数の層を貫通する第1下部側シャフトと、前記第1下部側シャフトに隣接して設けられ上部側の層を除く連続する複数の層を貫通し前記第1下部側シャフトよりも上側の層まで達する第2下部側シャフトと、を有し、前記第1下部側シャフトは、前記第2下部側シャフトよりも前記高層建物の外周側に設けられていてもよい。
このような構成とすることにより、異なる高さの第1下部側シャフトおよび第2下部側シャフトが設けられている場合でも、その両方の鉛直方向の上側の領域に高層建物の外周領域に窓が設けられた居室を設けることができる。
【0014】
また、本発明に係る高層建物では、災害時の避難経路には、前記中層階用エレベータホールが含まれていない構成としてもよい。
このような構成とすることにより、低層階における中層階用エレベータの乗降が無い階では、中層階用エレベータのエレベータホールを設置する必要がなく、その領域に吹き抜けを設けたり、倉庫などを設けたりすることができる。
【0015】
また、本発明に係る高層建物では、前記複数の層に上下方向に連続して設けられた耐震要素および制振要素の少なくとも一方を有する構造コア部を有し、前記構造コア部は、前記高層建物における前記外周領域よりも中央側となる中央領域に設けられ、前記下部側シャフトは、前記構造コア部よりも前記高層建物の外周側となる前記高層建物の外周領域に設けられていてもよい。
このような構成とすることにより、下部側シャフトを、構造コア部の構造と分けて設計することができる。
また、本発明に係る高層建物では、前記中層階用エレベータバンクと前記高層階用エレベータバンクとは、前記耐震要素および前記制振要素の少なくとも一方を介して隣接していてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高層建物の上部まで達しない下部側シャフトの鉛直方向の上側に設けられる居室の価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態による高層建物の一例を示す鉛直断面図である。
【
図2】本発明の実施形態による高層建物の一例を示す低層階の平面図である。
【
図3】本発明の実施形態による高層建物の一例を示す中層階の平面図である。
【
図4】本発明の実施形態による高層建物の一例を示す高層階の平面図である。
【
図5】(a)は本発明の実施形態の変形例による高層建物の一例を示す低層階の平面図、(b)は本発明の実施形態の変形例による高層建物の一例を示す中層階の平面図、(c)は本発明の実施形態の変形例による高層建物の一例を示す高層階の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態による高層建物について、
図1乃至
図4に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態による高層建物1は、例えばオフィスビルなどで、1階に外部からのアクセスに主に使用される出入口11が設けられている。高層建物1の各階は、下部側の低層階12、中間部の中層階13および上部側の高層階14の3つに区分されている。低層階12には、低層階用エレベータ2が設けられ、中層階13には中層階用エレベータ3が設けられ、高層階14には、高層階用エレベータ4が設けられている。いずれのエレベータ2,3,4も1階から使用可能となっている。
高層建物1には、低層階用エレベータ2が設けられた低層階用エレベータバンク(下部側シャフト、第1下部側シャフト)21と、中層階用エレベータ3が設けられた中層階用エレベータバンク(下部側シャフト、第2下部側シャフト)31と、高層階用エレベータ4が設けられた高層階用エレベータバンク41と、が設けられている。
【0019】
平面視において高層建物1の外壁15に沿った部分を外周領域16とし、外周領域16よりも中央側の部分を中央領域18とする。
図2乃至
図4では、外周領域16と中央領域18との境界部分を一点鎖線で示している。
本実施形態では、高層建物1の中央領域18には、耐震壁、ブレース、制振部材などの耐震要素や制振要素が設けられた構造コア部19が構築されている。本実施形態の耐震要素や制振要素(以下、耐震制振要素191とする)は、高層建物1の中央領域18の外周(外周領域16と中央領域18との境界)に沿って設けられている。
また、高層建物1の中央領域18には、高層建物1の全体にわたって上下方向に貫通する階段室や設備配管スペースなどのシャフトが設けられている。
【0020】
図1および
図2に示すように、低層階用エレベータバンク21は、高層建物1の低層階12を貫通するように設けられている。低層階用エレベータバンク21は、中層階13は貫通していない。なお、低層階用エレベータ2の機械設備が中層階13のうちの下部側の層に設けられていて、中層階13のうちの下部側の層を貫通している場合も含む。
低層階用エレベータバンク21は、高層建物1の外周領域16に外壁15寄りに設けられている。
【0021】
図1および
図3に示すように、中層階用エレベータバンク31は、高層建物1の低層階12および中層階13を連続して貫通するように設けられている。中層階用エレベータバンク31は、高層階14に達していない。なお、中層階用エレベータ3の機械設備が高層階14のうちの下部側の層に設けられていて、高層階14のうちの下部側の層を貫通している場合も含む。
中層階用エレベータバンク31は、高層建物1の外周領域16に中央領域18寄りに設けられている。中層階用エレベータバンク31は、低層階用エレベータバンク21よりも高層建物1の中央側に配置され、低層階用エレベータバンク21に隣接して設けられている。
【0022】
図1および
図4に示すように、高層階用エレベータバンク41は、高層建物1の低層階12から高層階14までの全体を連続して貫通するように設けられている。
高層階用エレベータバンク41は、高層建物1の中央領域18に設けられている。高層階用エレベータバンク41は、中層階用エレベータバンク31よりも高層建物1の中央側に配置され、中層階用エレベータバンク31に隣接して設けられている。本実施形態では、高層階用エレベータバンク41と中層階用エレベータバンク31とは、耐震制振要素191を介して隣接している。
【0023】
中層階13における低層階用エレベータバンク21の鉛直方向の上側の領域131は、吹き抜けとならずに、各階に第1床132が設けられ、居室や廊下などとして使用可能となっている。
中層階13の各階における低層階用エレベータバンク21の鉛直方向の上側の領域131は、高層建物1の外周領域16に位置し、外壁15に沿った空間となる。外壁15には窓17が設けられているため、中層階13の各階における低層階用エレベータバンク21の鉛直方向の上側の領域131は、窓17が設けられた空間とすることができる。
【0024】
高層階14における中層階用エレベータバンク31の鉛直方向の上側の領域141は、吹き抜けとならずに、各階に第2床142が設けられ、居室や廊下などとして使用可能となっている。高層階14における中層階用エレベータバンク31の鉛直方向の上側の領域141は、高層建物1の外周領域16に位置している。
高層階14における低層階用エレベータバンク21の鉛直方向の上側の領域143(中層階13における低層階用エレベータバンク21の鉛直方向の上側の領域131の鉛直方向上側の領域)は、吹き抜けとならずに、各階に第3床144が設けられ、居室や廊下などとして使用可能となっている。高層階14における低層階用エレベータバンク21の鉛直方向の上側の領域143は、外周領域16に位置している。
本実施形態では、高層階14の各階における中層階用エレベータバンク31の鉛直方向の上側の領域141は、低層階用エレベータバンク21の鉛直方向の上側の領域143と連続した空間となり、高層階14の各階における中層階用エレベータバンク31の鉛直方向の上側の領域141に設けられた第2床142は、低層階用エレベータバンク21の鉛直方向の上側の領域143に設けられた第3床144と連続している。
高層階14の各階における中層階用エレベータバンク31の鉛直方向の上側の領域141は、高層階14の各階における低層階用エレベータバンク21の鉛直方向の上側の領域143よりも中央領域18寄りに設けられている。
【0025】
高層階14の各階における中層階用エレベータバンク31の鉛直方向の上側の領域141と低層階用エレベータバンク21鉛直方向の上側の領域143とを合わせた空間は、高層建物1の外周領域16に位置し、外壁15に沿った空間となる。このため、高層階14の各階における中層階用エレベータバンク31の鉛直方向の上側の領域141と低層階用エレベータバンク21鉛直方向の上側の領域143とを合わせた空間は、窓17が設けられた空間とすることができる。
【0026】
低層階用エレベータ2、中層階用エレベータ3、高層階用エレベータ4は、それぞれ6基ずつ設けられている。低層階用エレベータ2のエレベータホール(低層階用エレベータホール)22、中層階用エレベータ3のエレベータホール(中層階用エレベータホール)32、および高層階用エレベータ4のエレベータホール(高層階用エレベータホール)42は、それぞれ平面視において第1方向(
図2乃至
図4における縦方向)に長く形成され、第1方向に直交する第2方向(
図2乃至
図4における横方向)の両側に第1方向に3基ずつ配列されたエレベータが設けられている。
【0027】
本実施形態では、低層階用エレベータ2のエレベータホール22、中層階用エレベータ3のエレベータホール32、および高層階用エレベータ4のエレベータホール42は、平面視において平行に設けられている。
図2に示すように、1階においては、低層階用エレベータ2のエレベータホール22、中層階用エレベータ3のエレベータホール32、および高層階用エレベータ4のエレベータホール42それぞれの第1方向の一方側(
図2乃至
図4における上側)にロビー20が設けられている。ロビー20は、低層階用エレベータ2のエレベータホール22、中層階用エレベータ3のエレベータホール32、および高層階用エレベータ4のエレベータホール42のいずれとも連通しており、いずれにもアクセスできるように設計されている。
【0028】
本実施形態では、ロビー20は、高層建物の外周領域16に配置されていて、窓17に面した開放的な空間に設計されている。1階における低層階用エレベータ2のエレベータホール22、中層階用エレベータ3のエレベータホール32、および高層階用エレベータ4のエレベータホール42は、いずれもロビー20を介して採光や外部の眺望を得ることができるように設計されている。
【0029】
次に、上述した高層建物1の作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した本実施形態による高層建物1では、中層階13の各階における低層階用エレベータバンク21の鉛直方向の上側の領域131に第1床132が設けられ、高層階14の各階における中層階用エレベータバンク31の鉛直方向の上側の領域141に第2床142が設けられ、低層階用エレベータバンク21の鉛直方向の上側の領域143に第3床144が設けられている。
このため、低層階用エレベータバンク21の鉛直方向の上側の領域131,143および中層階用エレベータバンク31の鉛直方向の上側の領域141を吹き抜けとして使用する場合と比べて、高層建物1における居室として利用可能な有効面積を大きくすることができる。
その結果、高層建物1の階数や床面積を増大させなくても所望の有効面積を確保することができ、経済性をよくすることができる。さらに、高層建物1が賃貸オフィスビルの場合は、床面積に対する有効面積の割合(レンタブル比)を向上させることができるため、賃貸事業の事業性を向上させることができる。
【0030】
また、中層階13の各階における低層階用エレベータバンク21の鉛直方向の上側の領域131、および高層階14の各階における中層階用エレベータバンク31の鉛直方向の上側の領域141および低層階用エレベータバンク21の鉛直方向の上側の領域143は、高層建物の外周領域16に配置されて外壁15に沿った空間とすることができるため、窓17を設けることができる。これにより、中層階13の各階における低層階用エレベータバンク21の鉛直方向の上側の領域131、および高層階14の各階における中層階用エレベータバンク31の鉛直方向の上側の領域141および低層階用エレベータバンク21の鉛直方向の上側の領域143に設けられた居室は、眺望がよく、窓17から採光を得ることができるため、その価値を高めることができる。
その結果、高層建物1が賃貸オフィスビルの場合は、賃貸事業の事業性を向上させることができる。
また、低層階用エレベータバンク21は、高層建物1の外周領域16に設けられていることにより、低層階12からの眺望が期待される場合は、低層階用エレベータ2をシースルーエレベータにすることができ、低層階12についてもその価値を高めることができる。
【0031】
近年、WELL認証など、建物の経済合理性の他に、建物空間の健康性、快適性、生産性についての配慮が求められている。本実施形態では、高層階ほど外壁15に設けられた窓17から採光が得られる部分が増加するため、建物空間の健康性、快適性、生産性を向上させることができる。また、ロビー階(1階)において、ロビー20から各エレベータホール22,32,42までの経路から採光、眺望が得られ、開放的なアプローチが可能になるため、建物空間の健康性、快適性を向上させることができる。
【0032】
以上、本発明による高層建物1の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、高層建物1は、その階が下部側の低層階12、中間部の中層階13および上部側の高層階14の3つに区分され、低層階用エレベータ2が設けられた低層階用エレベータバンク21、中層階用エレベータ3が設けられた中層階用エレベータバンク31、および高層階用エレベータ4が設けられた高層階用エレベータバンク41が設けられている。
【0033】
これに対し、高層建物1は、低層階12および高層階14の2つに区分され、低層階用エレベータバンク21および高層階用エレベータバンク41が設けられていてもよい。このような場合は、低層階用エレベータバンク21が高層建物1の外周領域16に設けられ、高層階用エレベータバンク41が高層建物1の中央領域18に設けられていてもよい。また、高層建物1に高さ別に4つ以上のエレベータバンクが設けられていてもよい。このような場合も、鉛直方向の上側の領域に居室が設けられるエレベータバンクの少なくとも一つが高層建物1の外周領域16に設けられ、鉛直方向の上側の領域に居室に窓17が設けられるように構成されていればよい。
【0034】
また、上記の実施形態では、高層建物1の中央領域18に構造コア部19が構築されて耐震制振要素191が設けられているが、高層建物の耐震要素や制振要素の形態や配置は適宜設定されてよい。
また、上記の実施形態では、1階がエントランス階となり、外部からのアクセスに主に使用される出入口11が設けられているが、2階や地下階などにエントランス階が設けられていてもよいし、2以上の階にエントランス階が設けられていてもよい。
また、上記の実施形態では、耐震制振要素191は、高層建物1の中央領域18の外周(外周領域16と中央領域18との境界)に沿って設けられているが、中央領域18に設けられていてもよいし、中央領域18および中央領域18の外周それぞれに設けられていてもよい。
【0035】
また、高層建物1において、建築基準法により2以上の直通階段を設ける場合に、階段に至る歩行距離と、2方向避難の重複距離の規定を満たすための廊下、避難扉の配置は高層階の構造コア部19において成立するようにしてもよい。
【0036】
また、上記の実施形態では、高層建物1の外周領域16に低層階用エレベータ2、中層階用エレベータ3が設けられ、高層建物1の中央領域18に高層階用エレベータ4が設けられている。低層階用エレベータ2のエレベータホール22および中層階用エレベータ3のエレベータホール32は、建築基準法によって定められた避難経路としなくてもよい。
このようにすることにより、低層階における中層階用エレベータ3の乗降が無い階では、中層階用エレベータ3のエレベータホール32を設置せずにその領域に吹き抜けを設けたり、倉庫などを設けたりすることができる。
また、避難階以外の各階における避難経路は、中央領域18に設けられていてもよい。
【0037】
近年、大規模な再開発において、オフィスビルの下部(下層階)に都市再生のための貢献機能や育成用途として、文化施設、交流施設、ビジネスサポート機能、商業施設などを設けることがある。また、オフィスビルの上部にホテルや住宅などを設けることがある。このような場合に、オフィスビルにロビー階から所定の階(例えばスカイロビーなどが設けられた階)まで直通となるシャトルエレベータが設けられることがある。このようなシャトルエレベータについても、高層建物の下部側に設けられ上部まで到達しない場合は、高層建物の外周領域16に設け、その鉛直方向の上側の領域に居室などを設けるようにしてもよい。
【0038】
また、上記の実施形態では、低層階用エレベータ2のエレベータホール22、中層階用エレベータ3のエレベータホール32、および高層階用エレベータ4のエレベータホール42は、平面視において平行に設けられている。
これに対し、
図5に示す高層建物1Bのように、低層階用エレベータ2Bのエレベータホール22B、中層階用エレベータ3Bのエレベータホール32B、および高層階用エレベータ4Bのエレベータホール42Bは、平面視において、高層建物1Bの中央領域18から外周領域16に向かう方向に連通するように設けられていてもよい。
【0039】
このような場合、低層階用エレベータ2Bのエレベータホール22Bおよび中層階用エレベータ3Bのエレベータホール32Bが窓17に面していると、低層階用エレベータ2Bのエレベータホール22Bおよび中層階用エレベータ3Bのエレベータホール32Bにおいて、窓17からの直接眺望、採光を得ることができる。また、高層階用エレベータ4Bのエレベータホール42Bが低層階用エレベータ2Bのエレベータホール22Bおよび中層階用エレベータ3Bのエレベータホール32Bの少なくとも一方と連通する階では、高層階用エレベータ4Bのエレベータホール42Bは、連通する低層階用エレベータ2Bのエレベータホール22Bおよび中層階用エレベータ3Bのエレベータホール32Bの少なくとも一方を介して眺望、採光を得ることができる。
【0040】
また、上記の実施形態による高層建物1では、中層階13における低層階用エレベータバンク21の鉛直方向の上側の領域131に設けられた第1床132の奥行き寸法(中央領域18と外周領域16とを結ぶ方向の寸法、
図1における左右方向の寸法)が、高層階14における中層階用エレベータバンク31および低層階用エレベータバンク21の鉛直方向の上側の領域141,143に設けられた床(第2床142および第3床144を合わせた部分)の奥行き寸法よりも小さくなる。
これに対し、
図5に示す高層建物1Bでは、
図5(b)に示す中層階13における低層階用エレベータバンク21Bの鉛直方向の上側の領域131Bに設けられた第1床132Bの奥行き寸法(
図5における左右方向の寸法)と、
図5(c)に示す高層階14における中層階用エレベータバンク31Bおよび低層階用エレベータバンク21Bの鉛直方向の上側の領域141B,143Bに設けられた床(第2床142Bおよび第3床144Bを合わせた床)の奥行き寸法とを統一することができる。
【符号の説明】
【0041】
1,1B 高層建物
2,2B 低層階用エレベータ
3,3B 中層階用エレベータ
4,4B 高層階用エレベータ
12 低層階
13 中層階
14 高層階
16 外周領域
17 窓
18 中央領域
19 構造コア部
20 ロビー
21,21B 低層階用エレベータバンク(下部側シャフト、第1下部側シャフト)
22,22B エレベータホール(低層階用エレベータホール)
31,31B 中層階用エレベータバンク(下部側シャフト、第2下部側シャフト)
32,32B エレベータホール(中層階用エレベータホール)
41 高層階用エレベータバンク
42,42B エレベータホール(高層階用エレベータホール)
132,132B 第1床
142,142B 第2床
144,144B 第3床
131,141,143,131B,141B,143B 領域
191 耐震制振要素(耐震要素、制振要素)