(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】遠心送風機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/46 20060101AFI20220630BHJP
F04D 29/70 20060101ALI20220630BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20220630BHJP
B60H 3/06 20060101ALI20220630BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
F04D29/46 C
F04D29/70 L
B60H1/32 613R
B60H3/06 611Z
B60H1/00 102E
(21)【出願番号】P 2018097283
(22)【出願日】2018-05-21
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2017146679
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 久善
(72)【発明者】
【氏名】荒木 大助
(72)【発明者】
【氏名】林 直人
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0683566(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-0739467(KR,B1)
【文献】特開2005-067402(JP,A)
【文献】特表2017-505397(JP,A)
【文献】特開2000-203235(JP,A)
【文献】特開2009-208540(JP,A)
【文献】特表2014-505633(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1199795(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0066176(KR,A)
【文献】国際公開第2017/103358(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44 ー 29/46
F04D 29/70
F04D 29/28
B60H 1/00
B60H 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の片吸込型の遠心送風機(1)であって、
モータ(13)と、
周方向翼列(3A)を形成する複数の翼(3)を有し、前記モータによって回転軸線(Ax)周りに回転駆動されて、軸方向の一端側から前記翼列(3A)の半径方向内側の空間に吸入した空気を、半径方向外側に向けて吹き出す羽根車(2)と、
前記羽根車を収容する内部空間と、前記軸方向の一端側に開口する吸込口(22)と、周方向に開口する吐出口(170)と、を有するスクロールハウジング(17)と、
前記スクロールハウジング(17)の前記内部空間のうちの前記スクロールハウジング(17)の内周面と前記羽根車(2)の外周面との間の領域、並びに前記吐出口(170)の内部空間を、前記軸方向に分割して第1空気流路(18)及び第2空気流路(19)を形成する仕切壁(20)と、
前記スクロールハウジング(17)の外側に位置する入口側端部(24)と、前記羽根車(2)の前記翼列の半径方向内側に位置する出口側端部(16)を有し、前記入口側端部(24)から前記吸込口(22)の半径方向内側を通って出口側端部(16)まで延びる分離筒(14)であって、前記スクロールハウジング(17)内に吸入される空気の流れを、前記分離筒の外側を通る第1空気流と、前記分離筒の内側を通る第2空気流とに分割し、かつ、前記出口側端部(16)が、前記第1空気流を前記第1空気流路(18)に案内するとともに、前記第2空気流を前記第2空気流路(19)に案内するように構成された、前記分離筒(14)と、
車両の外気(AE)を取り込むための外気導入口(25)と、車両の内気(AR)を取り込むための少なくとも1つの内気導入口(26A;26A,26B)と、を有する空気取入ハウジング(21A;21B;21C)と、
を備え、
前記分離筒の入口側端部(24)を含む前記空気取入ハウジング(21A;21B;21C)の断面を、仮想分割線(DL)によって、前記入口側端部(24)で囲まれた開口領域(240)よりも後側となる第1領域(211)と前記開口領域(240)と一致する第2領域(212)とに分割したとき、前記第1領域(211)を通過した空気が前記分離筒(14)の外側および前記吸込口(22)を通って前記スクロールハウジング(17)内に流入し、前記第2領域(212)を通過した空気が前記分離筒(14)の内側を通って前記スクロールハウジング(17)内に流入するようになっており、
前記少なくとも1つの内気導入口は、前記遠心送風機が二層流モードで運転されるときに前記空気取入ハウジング(21A;21B;21C)内に内気を導入する第1内気導入口(26A)を含み、前記外気導入口(25)は前記第1内気導入口(26A)よりも上方に位置し、前記遠心送風機が二層流モードで運転されるときに、前記外気導入口(25)から前記第1領域(211)に外気(AE)が流れ、前記第1内気導入口(26A)から前記第2領域(212)に内気(AR)が流れる
ようになっており、
前記遠心送風機が二層流モードで運転されるときに、前後方向に延びかつ前記回転軸線を通る鉛直面で前記空気取入ハウジング(21A;21B;21C)を切断した断面で見ると、前記外気導入口(25)から前記第1領域(211)に至る外気(AE)の空気流路は、下流側にゆくに従って下方かつ後方に向かうように傾斜して延び、前記第1内気導入口(26A)から前記第2領域(212)に至る内気(AR)の空気流路の上方かつ後方に延びており、
前記遠心送風機が二層流モードで運転されるときの前記外気(AE)の前記空気流路と前記内気(AR)の前記空気流路とを隔てるハウジング隔壁(40)が、前記空気取入ハウジング(21A;21B;21C)内に設けられており、
前記ハウジング隔壁(40)に開口(41)が形成され、
前記空気取入ハウジング(21A;21B;21C)内に第1切換ドア(42)が設けられ、この第1切換ドアは、
前記外気導入口(25)と前記第2領域(212)が前記ハウジング隔壁の前記開口を介して連通するとともに前記第1内気導入口(26A)と前記第2領域(212)との連通が絶たれる第1状態と、
前記第1内気導入口(26A)と前記第2領域(212)とが連通するとともに前記外気導入口(25)と前記第2領域(212)との連通が絶たれる第2状態と、
の間で切り換えることができる、遠心送風機。
【請求項2】
前記外気導入口(25)及び前記第1内気導入口(26A)はともに前方に向けて開口する、請求項1記載の遠心送風機。
【請求項3】
前記外気導入口(25)から前記第1領域(211)に至る前記外気(AE)の前記空気流路の水平面に対する傾斜角度(θ)は、下流側にゆくに従って大きくなる、請求項
1または2記載の遠心送風機。
【請求項4】
前記空気取入ハウジング(21A;21B;21C)を前後方向に延びかつ前記回転軸線(Ax)を通る鉛直面で切断した断面で見ると、前記分離筒(14)の後側の輪郭線(14P)は、下側にゆくに従ってより後方にあるように傾斜している、請求項1から
3のうちのいずれか一項に記載の遠心送風機。
【請求項5】
前記吸込口(22)内における、前記吸込口(22)を画定する前記スクロールハウジングの周縁(22e)と前記分離筒(14)の外周面との間の隙間は、後側の隙間(G1)の方が前側の隙間(G2)よりも大きい、請求項1から
4のうちのいずれか一項に記載の遠心送風機。
【請求項6】
前記少なくとも1つの内気導入口は前記遠心送風機が内気モードで運転されるときに前記空気取入ハウジング(21B;21C)内に内気を導入する第2内気導入口(26B)をさらに含み、
前記空気取入ハウジング(21B;21C)内に第2切換ドア(43;44)が設けられ、この第2切換ドアは、
前記外気導入口(25)と前記空気取入ハウジングの前記第1領域(211)とが連通し、かつ前記第2内気導入口(26B)と前記第1領域(211)との連通が絶たれる第1状態と、
前記外気導入口(25)と前記空気取入ハウジングの前記第1領域(211)との連通が絶たれ、かつ前記第2内気導入口(26B)と前記第1領域(211)とが連通する第2状態と、
の間で切り換えることができる、請求項1から
5のうちのいずれか一項に記載の遠心送風機。
【請求項7】
前記空気取入ハウジング(21B;21C)を、前後方向に延びかつ前記回転軸線(Ax)を通る鉛直面で切断した断面で見て、前記第2切換ドア(43;44)は、上方かつ後方に向けて凸となるように湾曲した空気案内面(43g;44g)を有している、請求項
6記載の遠心送風機。
【請求項8】
前記分離筒(14)の入口側端部(24)の近傍上方にフィルタ(35)が設けられ、空気の流れ方向に関して上流側から前記フィルタ(35)を見ると、前記フィルタは、前記第1領域(211)及び前記第2領域(212)を覆っており、前記第1領域及び前記第2領域を通過する空気中の汚染物質を濾過する、請求項1から
7のうちのいずれか一項に記載の遠心送風機。
【請求項9】
車両用の片吸込型の遠心送風機(1)であって、
モータ(13)と、
周方向翼列(3A)を形成する複数の翼(3)を有し、前記モータによって回転軸線(Ax)周りに回転駆動されて、軸方向の一端側から前記翼列(3A)の
半径方向内側の空間に吸入した空気を、半径方向外側に向けて吹き出す羽根車(2)と、
前記羽根車を収容する内部空間と、前記軸方向の一端側に開口する吸込口(22)と、周方向に開口する吐出口(170)と、を有するスクロールハウジング(17)と、
前記スクロールハウジング(17)の前記内部空間のうちの前記スクロールハウジング(17)の内周面と前記羽根車(2)の外周面との間の領域、並びに前記吐出口(170)の内部空間を、前記軸方向に分割して第1空気流路(18)及び第2空気流路(19)を形成する仕切壁(20)と、
前記スクロールハウジング(17)の外側に位置する入口側端部(24)と、前記羽根車(2)の前記翼列の半径方向内側に位置する出口側端部(16)を有し、前記入口側端部(24)から前記吸込口(22)の半径方向内側を通って出口側端部(16)まで延びる分離筒(14)であって、前記スクロールハウジング(17)内に吸入される空気の流れを、前記分離筒の外側を通る第1空気流と、前記分離筒の内側を通る第2空気流とに分割し、かつ、前記出口側端部(16)が、前記第1空気流を前記第1空気流路(18)に案内するとともに、前記第2空気流を前記第2空気流路(19)に案内するように構成された、前記分離筒(14)と、
車両の外気(AE)を取り込むための外気導入口(25)と、車両の内気(AR)を取り込むための少なくとも一つの内気導入口(26A,26B)と、を有する空気取入ハウジング(21B,21D,21E,21F)と、
前記空気取入ハウジング(21B,21D,21E,21F)に設けられたロータリードア(43)及び片持ちドア(42)と、
を備え、
前記分離筒の入口側端部(24)を含む前記空気取入ハウジング(21B,21D,21E,21F)の断面は、前記入口側端部(24)により、前記入口側端部(24)で囲まれた開口領域(240)以外の第1領域(211)と、前記開口領域(240)と一致する第2領域(212)とに分割されており、前記第1領域(211)を通過した空気が前記分離筒(14)の外側および前記吸込口(22)を通って前記スクロールハウジング(17)内に流入し、前記第2領域(212)を通過した空気が前記分離筒(14)の内側を通って前記スクロールハウジング(17)内に流入するようになっており、
前記ロータリードア(43)は、少なくとも前記外気導入口(25)と前記第1領域(211)との連通を遮断することができるように設けられ、
前記片持ちドア(42)は、少なくとも前記内気導入口(26A)と前記第2領域(212)との連通を遮断することができるように設けられ、
前記ロータリードア(43)は、第1扇柱(430)の形を有する旋回軌跡を描くように、第1旋回軸(43a)を中心として旋回し、
前記片持ちドア(42)は、第2扇柱(420)の形を有する旋回軌跡を描くように、前記第1旋回軸(43a)と平行な第2旋回軸(42a)を中心として旋回し、
前記第1扇柱(430)の2つの平坦な側面(431,432)の一方(431)と、前記第2扇柱(420)の2つの平坦な側面(421,422)の一方(421)とが互いに近接し、かつ、第1扇柱(430)の湾曲した側面(433)と前記第1扇柱(430)の前記一方の平坦な側面(431)とが接続される第1接続部(434)における前記第1扇柱(430)の前記湾曲した側面(433)の湾曲の方向と、前記第2扇柱(420)の湾曲した側面(423)と前記第2扇柱(420)の前記一方の平坦な側面(421)とが接続される第2接続部(424)における前記第2扇柱(420)の前記湾曲した側面(423)の湾曲の方向とが互いに逆となるように、前記ロータリードア(43)及び前記片持ちドア(42)が設置されている、遠心送風機。
【請求項10】
前記第1扇柱の前記一方の平坦な側面(431)と前記第2扇柱の前記一方の平坦な側面(421)が互いに隙間を空けて対面している、請求項
9記載の遠心送風機。
【請求項11】
前記第1扇柱(430)と前記第2扇柱(420)とが部分的に重なっている、請求項
9記載の遠心送風機。
【請求項12】
前記第1接続部(434)から前記第2旋回軸(42a)までの距離は、前記第1接続部(434)から、前記第2接続部(424)までの距離よりも小さく、かつ、前記第2接続部(424)から前記第1旋回軸(43a)までの距離は、前記第2接続部から(424)前記第1接続部(434)までの距離よりも小さい、請求項
9から11のうちのいずれか一項に記載の遠心送風機。
【請求項13】
前記第1扇柱(430)は前記第1旋回軸(43a)よりも低くない領域内にあり、前記第2扇柱(420)は前記第2旋回軸(42a)よりも高くない領域内にある、請求項
9から12のうちのいずれか一項に記載の遠心送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二層流式の車両用空調装置のための遠心送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
二層流式の車両用空調装置に適した遠心送風機として、例えば特許文献1に記載されたものがある。この遠心送風機は、互いに分離された上側通路及び下側通路を有するスクロールハウジングと、スクロールハウジング内に挿入された分離筒を有する。車両用空調装置が内外気二層流モードで運転されるとき、内外気切換ドアの位置を調整することにより、内気吸込口及び外気吸込口からそれぞれ内気及び外気が同時に空気取入ハウジングに吸い込まれる。外気は分離筒の外側を通過した後に羽根車の上半部を通ってスクロールハウジングの上側通路に吹き出され、内気は分離筒の内側を通過した後に羽根車の下半部を通ってスクロールハウジングの下側通路に吹き出される。このようにして、内外気二層流モードにおいて、空気取入ハウジングに吸い込まれた後にスクロールハウジングから吹き出されるまでの間、内気と外気とが互いに混合されることを可能な限り回避しようとしている。
【0003】
しかし、特許文献1に開示される遠心送風機では、車両前方から後ろ向きに空気取入ハウジングに吸い込まれた外気の主流は、分離筒の外側の空間を下向きに通過した後に、分離筒により車両前方に向かって転向される。このように外気の主流の流れ方向が大きく変更されると、外気に対する通気抵抗が上昇し、その結果として、外気吸込口を通って空気取入ハウジング内に吸い込まれる外気の流量が低下するおそれがある。内外気二層流モードにおいて外気を十分に吸引できないと、十分な流量で吸引された内気が、例えば羽根車からスクロールハウジングの下側通路に吹き出されるときに外気用の上側通路に侵入する可能性がある。これでは、内外気二層流モードを採用する主たる目的である暖房時における窓ガラスの防曇を、十分に達成することができないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、内外気二層流モードのときに、空気取入ハウジングの外気導入口からスクロールハウジングに至るまでの外気の通気抵抗を低く抑えることができる遠心送風機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好適な一実施形態によれば、車両用の片吸込型の遠心送風機であって、モータと、周方向翼列を形成する複数の翼を有し、前記モータによって回転軸線周りに回転駆動されて、軸方向の一端側から前記翼列の半径方向内側の空間に吸入した空気を、半径方向外側に向けて吹き出す羽根車と、前記羽根車を収容する内部空間と、前記軸方向の一端側に開口する吸込口と、周方向に開口する吐出口と、を有するスクロールハウジングと、前記スクロールハウジングの前記内部空間のうちの前記スクロールハウジングの内周面と前記羽根車の外周面との間の領域、並びに前記吐出口の内部空間を、前記軸方向に分割して第1空気流路及び第2空気流路を形成する仕切壁と、前記スクロールハウジングの外側に位置する入口側端部と、前記羽根車の前記翼列の半径方向内側に位置する出口側端部を有し、前記入口側端部から前記吸込口の半径方向内側を通って出口側端部まで延びる分離筒であって、前記スクロールハウジング内に吸入される空気の流れを、前記分離筒の外側を通る第1空気流と、前記分離筒の内側を通る第2空気流とに分割し、かつ、前記出口側端部が、前記第1空気流を前記第1空気流路に案内するとともに、前記第2空気流を前記第2空気流路に案内するように構成された、前記分離筒と、車両の外気を取り込むための外気導入口と、車両の内気を取り込むための少なくとも1つの内気導入口と、を有する空気取入ハウジングと、を備え、前記分離筒の入口側端部を含む前記空気取入ハウジングの断面を、仮想分割線によって、前記入口側端部で囲まれた開口領域よりも後側となる第1領域と前記開口領域と一致する第2領域とに分割したとき、前記第1領域を通過した空気が前記分離筒の外側および前記吸込口を通って前記スクロールハウジング内に流入し、前記第2領域を通過した空気が前記分離筒の内側を通って前記スクロールハウジング内に流入するようになっており、前記少なくとも1つの内気導入口は、前記遠心送風機が二層流モードで運転されるときに前記空気取入ハウジング内に内気を導入する第1内気導入口を含み、前記外気導入口は前記第1内気導入口よりも上方に位置し、前記遠心送風機が二層流モードで運転されるときに、前記外気導入口から前記第1領域に外気が流れ、前記第1内気導入口から前記第2領域に内気が流れる、遠心送風機が提供される。
【発明の効果】
【0007】
上記実施形態によれば、少なくとも空気取入ハウジングの外気導入口からスクロールハウジングの吸込口までの区間において、外気の転向を小さく抑えることができる。このため、上記区間内における通気抵抗を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る遠心送風機の子午断面図であって、前後方向に延びかつ回転軸線を通る鉛直面で遠心送風機を切断することにより得た子午断面図である。
【
図4】他の実施形態(第2実施形態)に係る遠心送風機の子午断面図であり、
図1と同様の鉛直面で遠心送風機を切断することにより得た子午断面図である。
【
図5】さらに他の実施形態(第3実施形態)に係る遠心送風機の子午断面図であり、
図1と同様の鉛直面で遠心送風機を切断することにより得た子午断面図である。
【
図6A】第2実施形態における切換ドア同士の位置関係について説明する遠心送風機の上部の断面図である。
【
図6B】第2実施形態における切換ドア同士の位置関係について説明する遠心送風機の上部の斜視図である。
【
図7A】第2実施形態の一変形例における切換ドア同士の位置関係について説明する遠心送風機の上部の断面図である。
【
図7B】第2実施形態の一変形例における切換ドア同士の位置関係について説明する遠心送風機の上部の斜視図である。
【
図8A】第4実施形態における切換ドア同士の位置関係について説明する遠心送風機の上部の断面図である。
【
図8B】第4実施形態に係る遠心送風機の概略斜視図である。
【
図8C】第4実施形態の一変形例における切換ドア同士の位置関係について説明する遠心送風機の上部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して本発明の車両用の遠心送風機の実施形態について説明する。各図では、Rが車両の右方、Lが車両の左方、Frが車両の前方、Rrが車両の後方、Uが車両の上方、Dが車両の下方をそれぞれ意味している。遠心送風機は図示された向きで車両に設置される場合が多いが、遠心送風機の設置方向は図示例に限定されるものではなく、例えば図示方向に対して多少傾斜していてもよい。
【0010】
図1に示す遠心送風機1は、片吸込型の遠心送風機である。遠心送風機1は、羽根車2を有する。羽根車2は、その外周部分に、周方向に並んだ翼列3Aを形成する複数の翼3を有している。羽根車2は、モータ13により回転軸線Ax周りに回転駆動され、軸方向上側(軸方向一端側)から羽根車2の翼列の半径方向内側の空間に吸入した空気を、半径方向外側に向けて吹き出す。
【0011】
なお、本明細書において、説明の便宜上、回転軸線Axの方向を軸方向または上下方向と呼び、
図1、
図4及び
図5の上側及び下側をそれぞれ「軸方向上側」及び「軸方向下側」と呼ぶ。しかしながら、このことによって、空調装置が実際に車両に組み込まれた場合に回転軸線Axの方向が鉛直方向に一致するものと限定されるわけではない。また、本明細書においては、特別な注記が無い限り、回転軸線Ax上の任意の点を中心として回転軸線Axと直交する平面上に描かれた円の半径の方向を半径方向と呼び、当該円の円周方向を周方向または円周方向と呼ぶ。
【0012】
羽根車2は、当該羽根車2と一体成形された内側偏向部材9を含む。内側偏向部材9は、コーン部と呼ばれることもある。この内側偏向部材9は、幾何学的な意味における回転体であり、側周部10と、円板形の中央部11とを有している。中央部11において、モータ13の回転軸12が羽根車2に連結される。この例では、側周部10は、この側周部10の外周面の子午断面における輪郭線が、中央部11に近づくに従って急勾配となるように湾曲している。図示しない他の例では、側周部10は、この側周部10の外周面の子午断面における輪郭線が、中央部11から翼列3Aに向けて湾曲しない(断面が直線状である)場合もある。
【0013】
羽根車2は、スクロールハウジング17の内部空間に収容される。スクロールハウジング17は、軸方向上側に開口する吸込口22と、吐出口170(
図2を参照)とを有している。
図2に示すように、スクロールハウジング17を軸方向から見た場合、吐出口170はスクロールハウジング17の外周面の概ね接線方向に延びている。吐出口170は
図1では見えない。
【0014】
スクロールハウジング17は、当該スクロールハウジング17の外周壁17Aから半径方向内側に向けて延びる仕切壁20を有している。この仕切壁20は、スクロールハウジング17の内部空間のうちのスクロールハウジング17の内周面と羽根車2の外周面との間の領域を軸方向に(上下に)分割して、スクロールハウジング17の外周壁17Aに沿って周方向に延びる上側の第1空気流路18及び下側の第2空気流路19を形成する。
【0015】
スクロールハウジング17内には、吸込口22を介して、分離筒14が挿入されている。
図3よりわかるように、分離筒14の上端部24(入口側端部)の断面(回転軸線Axに直交する断面を意味する)は概ね長方形である。
図2よりわかるように分離筒14の中央部15の断面は円形(又は概ね円形)である。分離筒14の断面形状は、上端部24から中央部15に近づくに連れて、長方形から円形に滑らかに推移する。分離筒14の中央部15から下部16に至るまで、分離筒14の断面形状は円形(又は概ね円形)であり、円の半径が下部16に近づくに従って徐々に大きくなる。つまり、分離筒14の下部16は、下端に近づくに従って拡径するフレア形状を有している。分離筒14の断面中心の位置は、上端部24から下部16(出口側端部)に至るまで滑らかに推移し、下部16の最下端(出口側端部)において回転軸線Ax上に位置している。
【0016】
分離筒14の中央部15から下部16は、吸込口22の半径方向内側の空間を通り、羽根車2の内部空間まで延びている。分離筒14の上端部24は、スクロールハウジング17の外側(吸込口22よりも軸方向上側)に位置している。分離筒14の下端は、羽根車2の翼3の近傍において、スクロールハウジング17の仕切壁20とほぼ同じ軸方向高さ位置に位置している。
【0017】
図示された形状を有する分離筒14を、樹脂射出成形技術により一体成形することは不可能であるか、可能だとしても非常に困難である。従って、別々に射出成形された2つまたはそれ以上のピースを例えば接着または嵌め込み等の手法により連結することによって、分離筒14を製造することが好ましい。
【0018】
分離筒14は、スクロールハウジング17内に吸入される空気の流れを、分離筒14の外側を通る第1空気流と、分離筒14の内側を通る第2空気流とに分割する。第1空気流は、スクロールハウジング17の吸込口22のうちの分離筒14の外周面より外側のリング状領域を通り、羽根車2の翼列の上半部(吸込口22に近い部分)に流入する。第2空気流は、分離筒14の上端から分離筒14の内側に入り、羽根車2の翼列の下半部(吸込口22から遠い部分)に流入する。従って、スクロールハウジング17の吸込口22のうちの分離筒14の外周面より外側のリング状領域がスクロールハウジング17の第1吸入口、分離筒14の上端の開口がスクロールハウジング17の第2吸入口、と見なすこともできる。
【0019】
スクロールハウジング17には、空気取入ハウジング21Aが連結されている。スクロールハウジング17と空気取入ハウジング21Aとは、一体成形されていてもよいし、別々に作製された後にネジ止め、接着、嵌め込み等の手法により連結されてもよい。スクロールハウジング17及び空気取入ハウジング21は空調装置ケーシングの一部を成す。
【0020】
空気取入ハウジング21Aは、外気導入口25と、内気導入口(第1内気導入口)26Aとを有している。外気導入口25及び内気導入口26Aは、ともに概ね前方に向けて開口している。外気導入口25は、内気導入口26Aよりも上方にある。
【0021】
外気導入口25は、車両のエンジンルームと車室とを仕切る車両隔壁27に設けられた外気導入路の出口28と連結されているかあるいは当該出口28の近傍にある。従って、外気導入口25を介して外気AE(車両外部から取り入れた空気)を空気取入ハウジング21A内に導入することができる。
【0022】
内気導入口26Aは、車両隔壁27によってエンジンルームと仕切られた車室の空間内に開口する。従って、内気導入口26Aを介して内気AR(車室内空気)を空気取入ハウジング21A内に導入することができる。
【0023】
図3には、分離筒14の上端(入口側端部)を含む空気取入ハウジング21Aの断面(回転軸線Axに直交する断面)が示されている。この断面は、仮想分割線DLによって、前側領域212(第2領域)と後側領域211(第1領域)とに分割することができる。軸方向上側から見たときに、前側領域212は、分離筒14の上端部24の端縁により囲まれた開口領域240と概ね一致する。後側領域211は、空気取入ハウジング21Aの上記断面のうちの開口領域240よりも後側の領域である。
【0024】
前側領域212と後側領域211との面積比は5:5とすることができる。しかしながら、外気AEの導入を促進するため、後側領域211の面積を前側領域212よりも大きくしても構わない。
【0025】
図1に示すように、空気取入ハウジング21A内には、ハウジング隔壁40が設けられている。このハウジング隔壁40により、外気導入口25と後側領域211(
図3も参照)とを結ぶ第1の通路T1と、内気導入口26Aと前側領域212とを結ぶ第2の通路T2とが互いに分離される。第1の通路T1及び第2の通路T2は左右方向に延びる長辺とこれに直交する短辺とを有する概ね長方形の断面を有している。第1の通路T1は(第2の通路T2も)、
図3の後側領域211(前側領域212)の長辺と短辺の長さ比率を維持するように、あるいは上記比率を変化させながら、概ね長方形の外気導入口25(内気導入口26A)から後側領域211(前側領域212)まで延びている。
【0026】
遠心送風機が二層流モードで運転されるときに、上記第1の通路T1は外気AEが流れる空気流路となり、上記第2の通路T2は内気ARが流れる空気流路となる。
図1の断面で見ると、外気導入口25から後側領域211に至る外気AEの空気流路は、外気導入口25から下流側にゆくに従って下方かつ後方に向かうように傾斜して延びており、かつ、内気導入口26Aから前記第2領域212に至る内気ARの空気流路の上方かつ後方に延びている。
【0027】
図1の断面で見ると、空気取入ハウジング21Aの後壁29は、上方かつ後方に向けて凸となるように湾曲している。このため、外気導入口25から後側領域211に至る外気AEの空気流路の水平面に対する傾斜角度θ(
図1参照)は、下流側にゆくに従って徐々に大きくなっている。つまり、外気AEの流れる方向は下流側にゆくに従って徐々に向きを変え、外気AEの急激な方向転換は生じない。つまり、方向転換に起因する外気AEの通気抵抗の増大は非常に小さく、このため、特に二層流モード時において、十分な量の外気AEをスクロールハウジング17内に導入することができる。
【0028】
ハウジング隔壁40には開口41が形成されている。この開口41のところに、図示しないアクチュエータにより駆動され、左右方向に延びる旋回軸42aを中心として旋回する第1切換ドア42が設けられている。
図1には、遠心送風機を二層流モードで運転するために、第1切換ドア42が中立位置(二層流モード位置)に位置している状態が示されている。第1切換ドア42が中立位置に位置しているとき、上述したように、外気導入口25と
図3の後側領域211とが連通しかつ外気導入口25と前側領域212との連通が絶たれ、また、内気導入口26Aと
図3の前側領域212とが連通しかつ内気導入口26Aと後側領域211との連通が絶たれる。
【0029】
遠心送風機が二層流モードで運転されているときには、後側領域211(
図3も参照)に流入した外気AEは、分離筒14の外側を通ってスクロールハウジング17に流入し、羽根車2の上半部を通過して、第1空気流路18に吹き出される。なお、このとき、後側領域211を通過した外気AEの主流はスクロールハウジング17の吸込口22の後側領域に向かって流れるため(
図1を参照)、外気AEの多くはスクロールハウジング17の吸込口22の後側領域からスクロールハウジング17内に流入する。但し、外気AEの一部は、分離筒14の周囲を通って前側に流れ、吸込口22の前側領域からスクロールハウジング17内に流入する。
【0030】
一方、
図3の前側領域212に流入した内気ARは、分離筒14の内側を通ってスクロールハウジング17に流入し、羽根車2の下半部を通過して、第2空気流路19に吹き出される。
【0031】
第1切換ドア42は、上述した中立位置の他に、遠心送風機を外気モードで運転するための外気モード位置(
図1において中立位置から時計回りに約80度回転して内気導入口26Aを塞ぐ一点鎖線で示す位置)と、内気モードで運転するための内気モード位置(
図1において中立位置から反時計回りに約100度回転して外気導入口25を塞ぐ一点鎖線で示す位置)と、をとることもできる。
【0032】
外気モード位置では、外気導入口25と
図3の後側領域211及び前側領域212が連通する一方、内気導入口26Aと後側領域211及び前側領域212との連通は絶たれる。内気モード位置では、内気導入口26Aと
図3の後側領域211及び前側領域212が連通する一方、外気導入口25と後側領域211及び前側領域212との連通は絶たれる。
【0033】
図1に示すように、分離筒14の上端部24の近傍上方にフィルタ35が設けられている。空気の流れ方向に関して上流側からフィルタ35を見ると、フィルタ35は、前述した
図3の断面の前側領域212及び後側領域211を覆い、これらの領域を通過しようとする空気に含まれるダスト、パーティクル等の汚染物質や異臭を除去する。
【0034】
好ましくは、フィルタ35は、上述した仮想分割線DLと平行に延びる仕切板35Sを有している。この仕切板35Sにより、フィルタ35を通過するときにフィルタ35の中央付近で内気と外気が混合されることを防止ないし抑制することができる。
【0035】
図1に示す断面で見ると、分離筒14の後側の輪郭線14Pは、上端から下端に向けて下側にゆくに従ってより後方にあるように傾斜している。これにより、分離筒14の上端部24(入口側端部)付近からスクロールハウジング17内に向かって流れる外気AEが滑らかに徐々に羽根車2の半径方向外側を向くように転向される。これによっても、外気AEの流れがスムーズになり、このことは十分な量の外気AEをスクロールハウジング17内に導入する上で有利である。
【0036】
軸線Axと直交し、吸込口22の内周縁である周縁22eを含む断面である
図2に示すように、周縁22eと分離筒14の外周面との間の隙間は、後側の隙間G1の方が前側の隙間G2よりも大きくなっている。遠心送風機が二層流モードで運転されているときには、吸込口22の後側部分により多くの量の外気AEが流れてくる。上述したように後側の隙間G1をより大きくすることにより、より多量の外気AEをスクロールハウジング17に取り込むことができる。
【0037】
上記の実施形態(第1実施形態)によれば、上述した遠心送風機の構成部品の様々な幾何学的特徴により、外気AEを効率良くスクロールハウジング17内に向けて流すことができる。このため、遠心送風機が二層流モードで運転されているときに、外気AEに内気ARが混入することを防止ないし抑制することができる。このため、例えば暖房時における窓ガラスの防曇を確実に達成することができる。
【0038】
次に、他の実施形態(第2実施形態)について、
図4を参照して説明する。
図4において、
図1に示した部材と同一または類似の部材については、同一または類似の符号を付して、重複説明は省略する。
【0039】
図4の第2実施形態では、空気取入ハウジング21Aに代わって、空気取入ハウジング21Bが設けられている。空気取入ハウジング21Bの後壁29には、第2内気導入口26Bが形成されている。この第2内気導入口26Bのところに、図示しないアクチュエータにより駆動され、左右方向に延びる旋回軸43aを中心として旋回する第2切換ドア43が設けられている。
【0040】
第2切換ドア43は、
図4に示す位置(第1位置)と、
図4に示す位置から反時計回りに約60度回転した位置(第2位置)との間で移動することができる。第2切換ドア43が第1位置にあるとき、外気導入口25と後側領域211とが連通し、かつ第2内気導入口26Bと後側領域211との連通が絶たれる。第2切換ドア43が第2位置にあるとき、外気導入口25と後側領域211との連通が絶たれ、かつ第2内気導入口26Bと後側領域211とが連通する。
【0041】
第2実施形態では、第1切換ドア42は、第1内気導入口26Aを開くとともにハウジング隔壁40の開口41を閉じる第1位置(第1実施形態における中立位置に相当)と、第1内気導入口26Aを閉じるとともにハウジング隔壁40の開口41を開く第2位置(第1実施形態における外気モード位置に相当)と、の間で移動することができる。第1実施形態と異なり、第2実施形態の第1切換ドア42は第1実施形態における内気モード位置に相当する位置に位置することはできない。
【0042】
第2実施形態では、遠心送風機が二層流モードで運転されるときには、
図4に示されるように、第1切換ドア42が第1位置に位置し、第2切換ドア43が第1位置に位置する。すなわちこのとき、第1内気導入口26Aから導入された内気ARが前側領域212に流れ、外気導入口25から導入された外気AEが後側領域211に流れる。
【0043】
また、遠心送風機が内気モードで運転されるときには、第1切換ドア42が第1位置に位置し、第2切換ドア43が第2位置に位置する。すなわちこのとき、第1内気導入口26Aから導入された内気ARが前側領域212に流れ、第2内気導入口26Bから導入された内気ARが後側領域211に流れる。
【0044】
また、遠心送風機が外気モードで運転されるときには、第1切換ドア42が第2位置に位置し、第2切換ドア43が第1位置に位置する。すなわちこのとき、外気導入口25から導入された外気AEが前側領域212及び後側領域211に流れる。
【0045】
図4の断面で見て、第2切換ドア43は、第1位置にあるときに上方かつ後方に向けて凸となるように湾曲した空気案内面43gを有している。第2切換ドア43が第1位置に位置しているとき、
図4の断面で見て、空気取入ハウジング21Bの後壁と第2切換ドア43の組み合わせの輪郭は、第1実施形態における空気取入ハウジング21Aの後壁の輪郭と概ね同じである。従って、遠心送風機が二層流モードで運転されるときには、外気導入口25から導入された外気AEは、滑らかに向きを変えながら流れる。このため、方向転換に起因する外気AEの通気抵抗の増大は非常に小さく抑えることができる。従って、この第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、十分な量の外気AEをスクロールハウジング17内に導入することができる。
【0046】
第2切換ドア43の空気案内面43gは、旋回軸43aを中心軸とする円柱の側面の一部に相当する形状を有している。言い換えれば、空気案内面43gは、旋回軸43aから所定の間隔で離れた位置に設けられた面である。
【0047】
次に、さらに他の実施形態(第3実施形態)について、
図5を参照して説明する。
図5において、
図1に示した部材と同一または類似の部材については、同一または類似の符号を付して、重複説明は省略する。
【0048】
図5の第3実施形態では、空気取入ハウジング21Aに代わって、空気取入ハウジング21Cが設けられている。空気取入ハウジング21Cの後壁29には、第2実施形態と同様の第2内気導入口26Bが形成されている。この第2内気導入口26Bのところに、図示しないアクチュエータにより駆動され、左右方向に延びる旋回軸44aを中心として旋回する第2切換ドア44が設けられている。
【0049】
第2切換ドア44は、
図5に示す位置(第1位置)と、
図5に示す位置から時計回りに約50度回転した位置(第2位置)との間で移動することができる。第2切換ドア44が第1位置にあるとき、外気導入口25と後側領域211とが連通し、かつ第2内気導入口26Bと後側領域211との連通が絶たれる。第2切換ドア44が第2位置にあるとき、外気導入口25と後側領域211との連通が絶たれ、かつ第2内気導入口26Bと後側領域211とが連通する。
【0050】
第3実施形態における第1切換ドア42は、
図1に示した第1切換ドア42と同一の構成を有し、かつ、
図1に示した第1切換ドア42と同様に、二層流モード位置、内気モード位置、外気モード位置の三位置をとることができる。
【0051】
第3実施形態では、遠心送風機が二層流モードで運転されるときには、
図5に示されるように、第1切換ドア42が中立位置に位置し、第2切換ドア43が第1位置に位置する。すなわちこのとき、第1内気導入口26Aから導入された内気ARが前側領域212に流れ、外気導入口25から導入された外気AEが後側領域211に流れる。
【0052】
また、遠心送風機が内気モードで運転されるときには、第1切換ドア42が内気モード位置に位置し、第2切換ドア43が第2位置に位置する。すなわちこのとき、第1内気導入口26Aから導入された内気ARが前側領域212に流れ、第2内気導入口26Bから導入された内気ARが後側領域211に流れる。なお、第1切換ドア42は、中立位置に位置していてもよい。
【0053】
また、遠心送風機が外気モードで運転されるときには、第1切換ドア42が外気モード位置に位置し、第2切換ドア44が第1位置に位置する。すなわちこのとき、外気導入口25から導入された外気AEが前側領域212及び後側領域211に流れる。
【0054】
図5の断面で見て、第1位置にある第2切換ドア44も、第2実施形態における第2切換ドア43と同様に、上方かつ後方に向けて凸となるように湾曲した空気案内面44gを有している。つまり、第2切換ドア44が第1位置に位置しているとき、
図5の断面で見て、空気取入ハウジング21Bの後壁と第2切換ドア44の組み合わせの輪郭は、第1実施形態における空気取入ハウジング21Aの後壁の輪郭と概ね同じである。従って、第2切換ドア44も第2切換ドア43と同様の役割を果たす。
【0055】
上記の第2、第3実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を達成することができる。また、第2、第3実施形態によれば、第1内気導入口26Aに加えて第2内気導入口26Bを設けることにより、内気モードのときに十分な量の内気を後側領域211を介してスクロールハウジング17に取り込むことができる。さらに、第2実施形態によれば、第1切換ドア42は第1、第3実施形態のように内気モード位置に位置させる必要がないため、内外気二層流モードのときの第1位置において、第1切換ドア42がハウジング隔壁40の開口41を確実に塞ぐようにすることができる。これにより、内外気二層流モードのときに内気が外気に混合されることをより確実に防止することができる。
【0056】
次に、
図6A及び
図6Bを参照して、
図4に示す第2実施形態における第1切換ドア42と第2切換ドア43、特にこれらの位置関係についてさらに詳細に説明する。
図6Aは、説明のための参照符号が追加されている点を除き、
図4の上半分と実質的に同一である。
【0057】
第1切換ドア42は片持ちドア(cantilever door)として形成されている。本明細書において、用語「片持ちドア」は、回転軸(旋回軸42a)から一方向に延びる、空気導入口の開閉に関与する一つの壁体を備えたドアを意味する。なお、旋回軸から互いに反対方向に延びる空気導入口の開閉に関与する二つの壁体を備えたドアは「バタフライドア」と呼ばれ、片持ちドアとは異なる。
【0058】
第2切換ドア43はロータリードアとして形成されている。用語「ロータリードア」は、回転軸(旋回軸43a)から離れた湾曲した壁体(43b)(空気導入口の開閉に関与する壁面)を有するドアを意味する。
【0059】
以下、本明細書においては、第1切換ドア42を「片持ちドア42」と呼び、第2切換ドア43を「ロータリードア43」と呼ぶこととする。
【0060】
第2実施形態において、ロータリードア43は、それ自体が、全体として扇柱の形状を有している。ロータリードア43は、旋回軸43aに接続された一対の扇形の側壁(これは扇柱にとっての幾何学用語としての底面に相当する)と、側壁43cに接続された周壁43b(これは扇柱にとっての幾何学用語としての3つの側面のうちの1つの湾曲した側面に相当する)とを有している。ロータリードア43において、扇柱にとっての幾何学用語としての2つの平坦な側面に相当する部分には、壁体は存在しない。
【0061】
前述した第2実施形態の説明から理解できるように、ロータリードア43は、少なくとも外気導入口25と第1領域211との連通を遮断することができるように設けられており、片持ちドア42は、少なくとも内気導入口26Aと第2領域212との連通を遮断することができるように設けられている。
【0062】
ロータリードア43は、第1扇柱430の形を有する旋回軌跡を描くように、第1旋回軸43aを中心として旋回する。第1扇柱430の底面(幾何学用語としての底面)の中心角が
図6Aにおいてθ43で示されている。片持ちドア42は、第2扇柱420の形を有する旋回軌跡を描くように、第1旋回軸43aと平行な第2旋回軸42aを中心として旋回する。第2扇柱420の底面(幾何学用語としての底面)の中心角が
図6Aにおいてθ42で示されている。
【0063】
本明細書において用語「扇柱」とは、扇形の底面を有する直柱体を意味する。すなわち、扇柱は、互いに平行な扇形(円の2本の半径とその間にある円弧により囲まれた図形を意味する)の2つの底面と、平坦な2つの側面(これは長方形または正方形である)と、湾曲した1つの側面(これは円柱の側面の一部に相当する形状を有する)とを有する。
【0064】
ロータリードア43により形成される第1扇柱430と、片持ちドア42により形成される第2扇柱420とは下記の関係1及び関係2を満足する。
(関係1)第1扇柱430の2つの平坦な側面431,432の一方431と、第2扇柱420の2つの平坦な側面421,422の一方421とが互いに近接している。
(関係2)第1扇柱430の湾曲した側面433と第1扇柱430の一方の平坦な側面431とが接続される第1接続部434における第1扇柱430の湾曲した側面433の湾曲の方向と、第2扇柱420の湾曲した側面423と第2扇柱420の一方の平坦な側面421とが接続される第2接続部424における第2扇柱420の湾曲した側面423の湾曲の方向とが互いに逆である。
【0065】
第2実施形態において上記関係1についてより詳細に述べると、「第1扇柱430の一方の平坦な側面431と第2扇柱420の一方の平坦な側面421とが、互いに近接し、かつ、互いに(小さな)隙間を空けて対面している。」という関係が成立している。この場合、第1扇柱430と第2扇柱420とは離れている。
【0066】
上記の関係1及び関係2を満足するようにロータリードア43及び片持ちドア42を配置することにより、ロータリードア43及び片持ちドア42を設置するために空気取入ハウジング21B内に確保すべきスペース(以下、「ドア設置スペース」と呼ぶ)を小さくすることができる。ここで、ドア設置スペースは、第1旋回軸43a(または第2旋回軸42a)の方向で見て、第1扇柱430の扇形の底面及び第2扇柱420の扇形の底面を包含する最短の閉じた線によって囲まれた領域の面積に概ね比例する空間のサイズとして把握することができる。
【0067】
第1扇柱430と第2扇柱420とがさらに下記の関係3を満足していることが好ましい。
(関係3)第1扇柱430の湾曲した側面433と第1扇柱430の一方の平坦な側面431とが接続される第1接続部434から前記第2旋回軸42aまでの距離は、第1接続部434から、第2扇柱420の湾曲した側面423と第2扇柱420の一方の平坦な側面421とが接続される第2接続部424までの距離よりも小さく、かつ、第2接続部424から第1旋回軸43aまでの距離は、第2接続部424から第1接続部434までの距離よりも小さい。
【0068】
上記関係3が成立することは、側面431(または側面421)の法線方向から見た場合に、側面431と側面421とが十分に大きなオーバーラップ代を持って重なり合っているということを意味している。このことにより、ドア設置スペースを一層小さくすることができる。
【0069】
第1扇柱430と第2扇柱420とがさらに下記の関係を満足していることが好ましい。
(関係4)第1扇柱430が第1旋回軸43aよりも低くない領域内にあり、第2扇柱420が第2旋回軸42aよりも高くない領域内にある。このように、第1扇柱430及び第2扇柱420の旋回範囲を規定することにより、ドア設置スペースをより一層小さくすることができる。
【0070】
関係4は、フィルタ35の空気流入面(図示された実施形態ではフィルタ35の上面)との関係で定義することもでき、この場合、関係4は下記の通りに書き直すことができる。
(関係4’)第1扇柱430が第1旋回軸43aよりもフィルタ35の空気流入面に近くない領域内にあり、第2扇柱420が第2旋回軸42aよりもフィルタ35の空気流入面から遠くない領域内にある。
【0071】
図7A及び
図7Bは、第2実施形態の変形例を示している。この変形例においては、第1扇柱430の一方の平坦な側面431と第2扇柱420の一方の平坦な側面421とが近接し(関係1)、かつ、第1扇柱430と前記第2扇柱420とが部分的に重なっている。関係2に関しては
図6A及び
図6Bに示す第2実施形態と同一である。
【0072】
具体的には、
図7A及び
図7Bの変形例では、片持ちドア42の先端が第1扇柱430の内部に入り込む位置まで片持ちドア42が旋回できるようになっている。前述したように、ロータリードア43において、扇柱の幾何学用語としての2つの平坦な側面に相当する部分には、壁体は存在しない。このため、
図7A及び
図7Bに示すように、空気取入ハウジング21Dのハウジング隔壁40Dの部分401をロータリードア43の旋回軌跡である第1扇柱43の内部に入り込むように突出させることができる。なお、第1及び第2旋回軸42a,43aの方向に測定した部分401の長さ及び片持ちドア42の長さは、同方向に測定した第1扇柱43の長さすなわちロータリードア43の周壁43bの長さより小さい。
【0073】
上述した第2実施形態の第1変形例によれば、ドア設置スペースをより小さくすることができ、かつ、外気モード時に分離筒14の内部にも外気を流しやすくすることができる。
【0074】
次に、
図8A及び
図8Bを参照して、第4実施形態について説明する。
図8A及び
図8Bにおいて、第2実施形態と同一の役割を果たす部材については同一符号を付けてある。
【0075】
第4実施形態では、第2実施形態とは異なり、空気取入ハウジング21Eには、前方から順に、外気導入口25、第2内気導入口26B及び第1内気導入口26Aが設けられている。第2実施形態においてはフィルタ35の後部の下方に位置していた分離筒14の上端部24は、この第4実施形態ではフィルタ35の後部の下方に位置している。
【0076】
第4実施形態では、遠心送風機が二層流モードで運転されるときには、
図8Aに示されるように、ロータリードア43が外気導入口25を開放するとともに第2内気導入口26Bを閉鎖し、片持ちドア42がハウジング隔壁40の開口41を閉鎖するとともに第1内気導入口26Aを開放する。内気モード時には、ロータリードア43が外気導入口25を閉鎖するとともに第2内気導入口26Bを開放し、片持ちドア42がハウジング隔壁40の開口41を閉鎖するとともに第1内気導入口26Aを開放する。外気モード時には、ロータリードア43が外気導入口25を開放するとともに第2内気導入口26Bを閉鎖し、片持ちドア42がハウジング隔壁40の開口41を開放するとともに第1内気導入口26Aを閉鎖する。
【0077】
図8A及び
図8Bに示す第4実施形態では、ロータリードア43より形成される第1扇柱430と、片持ちドア42により形成される第2扇柱420との前後方向に関する位置関係が前述した第2実施形態と逆転しているが、前述した関係1~関係4については前述した第2実施形態と同様である。従って、
図8Aに示す第4実施形態においても、第2実施形態と同様の有利な効果が得られる。
【0078】
また、
図8Cに示す第4実施形態の変形例では、ロータリードア43より形成される第1扇柱430と、片持ちドア42により形成される第2扇柱420との前後方向に関する位置関係が前述した第2実施形態の変形例と逆転しているが、前述した関係1~関係4については前述した第2実施形態の変形例と同様である。従って、
図8Cに示す第4実施形態の変形例においても、第2実施形態と同様の有利な効果が得られる。
【符号の説明】
【0079】
1 遠心送風機
2 羽根車
3 翼
3A 周方向翼列
Ax 回転軸線
13 モータ
14 分離筒
14P 分離筒の後側の輪郭線
16 分離筒の下部(出口側端部)
17 スクロールハウジング
18 第1空気流路
19 第2空気流路
20 仕切壁
21A,21B,21C,21D,21E,21F 空気取入ハウジング
211 後側領域(第1領域)
212 前側領域(第2領域)
22 吸込口
22e 周縁
24 分離筒の上端部(入口側端部)
240 開口領域
25 外気導入口
26A,26B 内気導入口
26A 第1内気導入口
26B 第2内気導入口
35 フィルタ
40,40D,40E ハウジング隔壁
41 開口
42 第1切換ドア
420 第2扇柱
43,44 第2切換ドア
43g、44g 空気案内面
DL 仮想分割線
θ 傾斜角度
G1 後側の隙間
G2 前側の隙間
AE 外気
AR 内気
T1 第1の通路(外気導入口から第1領域に至る外気の空気通路)
T2 第2の通路(第1内気導入口から第2領域に至る内気の空気通路)
43 ロータリードア
43a 第1旋回軸
430 第1扇柱
431,432 第1扇柱の平坦な側面
433 第1扇柱の湾曲した側面
434 第1接続部
42 片持ちドア
420 第2扇柱
421,422 第2扇柱の平坦な側面
423 第2扇柱の湾曲した側面
424 第2接続部