IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧 ▶ ダイキョーニシカワ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両の前部構造 図1
  • 特許-車両の前部構造 図2
  • 特許-車両の前部構造 図3
  • 特許-車両の前部構造 図4
  • 特許-車両の前部構造 図5
  • 特許-車両の前部構造 図6
  • 特許-車両の前部構造 図7
  • 特許-車両の前部構造 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】車両の前部構造
(51)【国際特許分類】
   F02B 77/11 20060101AFI20220630BHJP
   F02B 77/13 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
F02B77/11 A
F02B77/11 E
F02B77/11 B
F02B77/13 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018103202
(22)【出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2019206948
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】岡村 和美
(72)【発明者】
【氏名】青木 基
(72)【発明者】
【氏名】三島 優太
(72)【発明者】
【氏名】水口 浩爾
(72)【発明者】
【氏名】大畦 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山下 陽士
【審査官】齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/169529(WO,A1)
【文献】特開2015-209771(JP,A)
【文献】実開昭59-067329(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 77/11
F02B 77/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンネットの下方に、エンジン上部から側周面にかけて覆う、上壁部、前壁部、後壁部、および左右両側の側壁部から構成されるカバー部材を備える車両の前部構造であって、
少なくとも左右何れか一方の上記側壁部の前方側を、後方側に対し、該後方側の主要部を成す高剛性部材よりも剛性の低い低剛性部材の占める割合を高く構成し
上記カバー部材は、上記上壁部と左右各側の開閉側壁部と開閉後壁部とを有する開閉可能な開閉カバーを備え、
上記左右各側の側壁部は、上記左右各側の開閉側壁部と、該左右各側の開閉側壁部の下端をシール部材を介し上端で支持する左右各側の固定側壁部とから構成され、
上記後壁部は、上記開閉後壁部と、該開閉後壁部をヒンジを介し回動可能に支持する固定後壁部とから構成され、
上記固定側壁部の前部を、上記高剛性部材と、該高剛性部材よりも上側に備えた上記低剛性部材とで構成した
車両の前部構造。
【請求項2】
上記高剛性部材は、PP材から形成されるとともに、上記低剛性部材は、上記PP材よりも剛性が低いエラストマー樹脂材から形成され、
上記側壁部は、その主要部が上記高剛性部材により構成されるとともに、該側壁部の前方部が、後方部よりも上記低剛性部材の占める割合が高くなるように構成された
請求項に記載の車両の前部構造。
【請求項3】
上記側壁部は上記高剛性部材と上記低剛性部材とが一体成形により構成された
請求項に記載の車両の前部構造。
【請求項4】
上記側壁部の内壁面側に保温部材が取付けられた
請求項に記載の車両の前部構造。
【請求項5】
上記側壁部の上部には、上記低剛性部材より剛性の高い車両部品を挿通する高剛性車両部品挿通用貫通部が設けられており、上記側壁部における該高剛性車両部品貫通用貫通部の下方は、上記低剛性部材が占める割合が他部より高く設けられた
請求項1~4のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
【請求項6】
上記側壁部の上部には、上記高剛性部材よりも剛性が低い車両部品を挿通する低剛性車両部品挿通用貫通部が設けられており、
上記低剛性車両部品挿通用貫通部に挿通した上記車両部品が上記低剛性部材を代用する構成とした
請求項1~5のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
【請求項7】
上記低剛性車両部品挿通用貫通部に挿通する上記車両部品が、蛇腹形状の吸気ホースである
請求項に記載の車両の前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボンネットの下方に、エンジンの上部から側周面にかけて覆う、上壁部、前壁部、後壁部、および左右両側の側壁部から構成されるカバー部材を備えた車両の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの次回運転時の暖機早期化等を目的とし、エンジンの熱を保温するためにエンジン上面から側周面にかけてカバー部材で覆う構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、車両と歩行者との衝突時に、ボンネットの衝撃吸収の底突きによる、歩行者に対する傷害値の上昇を抑制して歩行者を保護するために、歩行者が傾倒してくるボンネット上の衝撃吸収性能を高めておくことが重要となる。
【0004】
しかしながら、ボンネットの衝撃吸収性を高める上で、カバー部材の側壁の高さを十分確保しておくことが有効であるが、ボンネットは通常、前方程高さが低く形成されており、それに伴ってカバー部材の側壁の高さも低くなるため、ボンネット前部における上方からの衝撃吸収性能が悪化することが懸念される。
【0005】
特許文献1には、このような懸念についてや、その対策についての記載が何ら見受けられず、対策を講じる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-177966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、ボンネット前部の衝撃吸収性能を良好にできる車両の前部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、ボンネットの下方に、エンジン上部から側周面にかけて覆う、上壁部、前壁部、後壁部、および左右両側の側壁部から構成されるカバー部材を備える車両の前部構造であって、少なくとも左右何れか一方の上記側壁部の前方側を、後方側に対し、該後方側の主要部を成す高剛性部材よりも剛性の低い低剛性部材の占める割合を高く構成し、上記カバー部材は、上記上壁部と左右各側の開閉側壁部と開閉後壁部とを有する開閉可能な開閉カバーを備え、上記左右各側の側壁部は、上記左右各側の開閉側壁部と、該左右各側の開閉側壁部の下端をシール部材を介し上端で支持する左右各側の固定側壁部とから構成され、上記後壁部は、上記開閉後壁部と、該開閉後壁部をヒンジを介し回動可能に支持する固定後壁部とから構成され、上記固定側壁部の前部を、上記高剛性部材と、該高剛性部材よりも上側に備えた上記低剛性部材とで構成したものである。
【0009】
上記構成によれば、ボンネット前部の衝撃吸収性能を良好にできる。
【0010】
しかも、上記カバー部材は、上記上壁部と左右各側の開閉側壁部と開閉後壁部とを有する開閉可能な開閉カバーを備え、上記左右各側の側壁部は、上記左右各側の開閉側壁部と、該左右各側の開閉側壁部の下端をシール部材を介し上端で支持する左右各側の固定壁部とから構成され、上記後壁部は、上記開閉後壁部と、該開閉後壁部をヒンジを介し回動可能に支持する固定後壁部とから構成され、上記固定側壁部の前部を、上記高剛性部材と、該高剛性部材よりも上側に備えた上記低剛性部材とで構成したものであるから、開閉カバーの剛性を確保した上でボンネット前部の衝撃吸収性能を良好にできる。
【0011】
この発明の態様として、上記高剛性部材は、PP材から形成されるとともに、上記低剛性部材は、上記PP材よりも剛性が低いエラストマー樹脂材から形成され、上記側壁部は、その主要部が上記高剛性部材により構成されるとともに、該側壁部の前方部が、後方部よりも上記低剛性部材の占める割合が高くなるように構成されたものである。
【0012】
上記構成によれば、PP材により側壁部の基礎となる剛性を確保しつつ、エラストマー樹脂材により側壁部の前部の剛性を部分的に下げることができる。
【0013】
この発明の態様として、上記側壁部は上記高剛性部材と上記低剛性部材とが一体成形により構成されたものである。
【0014】
上記構成によれば、部品点数及び組立工数を削減できる。
【0015】
この発明の態様として、上記側壁部の内壁面側に保温部材が取付けられたものである。
【0016】
上記構成によれば、側壁部の内壁面側に保温部材を隙なく取り付けることができる。
【0017】
この発明の態様として、上記側壁部の上部には、上記低剛性部材より剛性の高い車両部品を挿通する高剛性車両部品挿通用貫通部が設けられており、上記側壁部における該高剛性車両部品貫通用貫通部の下方は、上記低剛性部材が占める割合が他部より高く設けられたものである。
【0018】
上記構成によれば、剛性の高い車両部品のカバー部材の内外各間の配索とボンネット前部の衝撃吸収性能とを両立できる。
【0019】
この発明の態様として、上記側壁部の上部には、上記高剛性部材よりも剛性が低い車両部品を挿通する低剛性車両部品挿通用貫通部が設けられており、上記低剛性車両部品挿通用貫通部に挿通した上記車両部品が上記低剛性部材を代用する構成としたものである。
【0020】
上記構成によれば、上記低剛性車両部品挿通用貫通部に挿通した車両部品を利用してボンネット前部の衝撃吸収性能を良好にできる。
【0021】
この発明の態様として、上記低剛性車両部品挿通用貫通部に挿通する上記車両部品が、蛇腹形状の吸気ホースである。
【0022】
上記構成によれば、蛇腹、かつ、中空形状の吸気ホースを利用してボンネット前部の衝撃吸収性能を良好にできる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、ボンネット前部の衝撃吸収性能を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態の車両の前部構造の要部を車両前側かつ右側から見た斜視図。
図2】本実施形態の車両の前部構造の要部を車両後側かつ左側から見た斜視図。
図3】本実施形態の車両の前部構造の平面図。
図4図1中の要部拡大図。
図5】本実施形態の車両の前部構造の要部を示す車両左側から見た側面図。
図6図3中のA-A線要部矢視断面図。
図7図4中のB-B線に沿った要部矢視断面図。
図8図5中のC-C線に沿った要部矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両右方を示し、矢印Lは車両左方を示し、矢印Uは車両上方を示すものとする。
【0026】
図1図3は、本発明の本実施形態のエンジンの保温構造を備えた車両の前部構造を示し、まず、エンジンの保温構造の説明に先立って、車両の前部構造について説明する。
図1図3に示すように、上述のエンジンルームの車両前方にはシュラウド8を設けている(図2参照)。
【0027】
図1図2に示すように、上述のシュラウド8は、熱交換器としてのラジエータやコンデンサを覆うように、アッパメンバ8Uとロアメンバ8Lと、これら上下の各メンバ8U,8Lを上下方向に連結する左右のサイドメンバ8S,8Sとを略方形枠状に一体形成したものである。
【0028】
シュラウド8は、各メンバ8U,8L,8S,8S間に車両前後方向に貫通する開口8aが設けられるとともに(図1参照)、該開口8aを開閉可能に塞ぐシャッタ(図示略)を備えている。シュラウド8は、シャッタにより開口8aを閉塞することにより、後述するカバー部材1の前壁部として構成される。
【0029】
また、車両の前部のエンジンルームの上方には、該エンジンルームを開閉可能に覆うボンネット6が配設されており(図5参照)、このボンネット6は、前方程下方へ緩やかに傾斜して延びている。
【0030】
図1図3に示すように、エンジンルームの左右両サイドにおいてダッシュロアパネル(ダッシュパネル)(図示略)から車両の前方に延びるフロントサイドフレーム7(車両右側のみ図示)を設けている。
このフロントサイドフレーム7は、フロントサイドフレームインナ7iとフロントサイドフレームアウタ7oとを接合固定して、車両の前後方向に延びる閉断面を備えた車体強度部材であって、当該フロントサイドフレーム7の前端部には、クラッシュカン取付け用のセットプレート9を設けている。
【0031】
図2に示すように、車両右側のフロントサイドフレーム7におけるフロントサイドフレームインナ7iは、エンジンマウントブラケット90を下側から支持している。
このエンジンマウントブラケット90は、図1に示すように、ボディ側ブラケット91とエンジン側ブラケット92と、両ブラケット91,92間に介設したマウントラバー93とを備えている。
【0032】
図1に示すように、ボディ側ブラケット91は、前後の脚部91a,91bと、これら前後の脚部91a,91bの下端に一体形成された取付け部としての取付け座91c,91dと(図1図2参照)、前後二箇所の取付け部間である取付け座91c,91d間を塞ぐ縦壁部91e,91f,91gとを備えている。
【0033】
上述のボディ側ブラケット91の前後の取付け座91c,91dが、ボルト120およびナット部材130を用いて、フロントサイドフレームインナ7iの上面に締結されるものである(図2図7参照)。
なお、上述のボディ側ブラケット91およびエンジン側ブラケット92は何れもアルミダイカストにより形成されている。
【0034】
次に、本実施形態の車両の前部構造に備えたエンジンの保温構造について図1図3に加えて図4図8を用いて詳述する。
なお、図4においては、エンジンマウントブラケット90の図示を省略している。
【0035】
図1図3に示すように、ボンネット6の下方に、エンジン上部から側方にかけて覆う、上壁部30、前壁部8、後壁部13、および左右両側の側壁部11,12から構成されるエンジンの保温構造としてのカバー部材1を備えている。
【0036】
上記カバー部材1は、カバー本体部2と、該カバー本体部2に対して開閉可能に取り付けられ、エンジンを覆う蓋部3とを備えている。
【0037】
カバー本体部2は、車両左右各側においてエンジンの側方を覆うカバー本体右側壁部21およびカバー本体左側壁部22と、エンジンの後方を覆うカバー本体後壁部23と、前壁部としてのシュラウド8を備えている。
【0038】
蓋部3は、上壁部30と、車両左右各側においてエンジンの側方上部を覆う蓋部右側壁部31および蓋部左側壁部32と、エンジンの後方上部を覆う蓋部後壁部33とを備えている。
【0039】
蓋部右側壁部31、蓋部左側壁部32および蓋部後壁部33は、夫々上壁部30の右縁、左縁、後縁から下方にスカート状に延びている。そして上壁部30は、その上面がボンネット6の形状に対応して、後部から前方に向けて徐々に程低くなるように緩やかに傾斜して形成し、これに対応して蓋部右側壁部31、蓋部左側壁部32は、共に前方程上下幅(上下方向の長さ)が短くなるように形成している(図1図2図5参照)。
【0040】
蓋部3の下端周縁、すなわち、上壁部30の前縁と、蓋部後壁部33、蓋部右側壁部31および蓋部左側壁部32の各下縁とには、これら下端から平面視で外側へ延びるフランジ部38(38f,38ri,38l,38r)が一体形成されている(図3参照)。
【0041】
ここで、右側壁部11は、図1図4図6図7に示すように、蓋部右側壁部31およびカバー本体右側壁部21によって、左側壁部12は、図2図5図8に示すように、蓋部左側壁部32およびカバー本体左側壁部22によって、後壁部13は、図2図5に示すように、蓋部後壁部33およびカバー本体後壁部23によって、何れも縦壁状に構成している。
【0042】
上述のカバー本体部2および蓋部3は、何れも合成樹脂製の外皮部材4(例えば、4u,4d,4f,4r)と、当該外皮部材4の内面に一体的に配設された保温部材5(例えば、5u,5d,5f,5r)とを備えている(図6図8参照)。
保温部材5は、保温効果に加えて吸音効果を有するように例えば、グラスウール材やウレタン材等から形成されており、配設対象の外皮部材4の内面の適宜の部位にクリップ等により取り付けられている。
【0043】
図1図3図4に示すように、蓋部右側壁部31の前部には、車幅方向外側へ延び、フランジ部38riに対して上方へ突出した半円筒状のガイド部35が一体形成されている。
【0044】
ガイド部35により囲まれた空間は、下方に開口するとともに右側壁部11を車幅方向に貫通し、金属パイプ61の挿通を許容する金属パイプ挿通用貫通部35aとして形成されている。
【0045】
金属パイプ61は、エンジンの駆動によって作動するようにカバー部材1の内部に配設された冷媒圧縮用のコンプレッサ620(図1図2参照)と、車室側に備えた空調装置のエバポレータ(図示略)とを接続する冷媒パイプであって、カバー本体右側壁部21の主要部を成す、後述するPP材から形成された高剛性部41および外皮部材4d(図4図7参照)よりも高剛性としている。
【0046】
また図2図3図5に示すように、蓋部左側壁部32の前部にも、車幅方向外側へ延び、フランジ部38lに対して上方へ突出した半円筒状のガイド部37が一体形成されている。
【0047】
ガイド部37により囲まれた空間は、下方に開口するとともに左側壁部12を車幅方向に貫通し、蛇腹形状の吸気ホース62の挿通を許容する吸気ホース挿通用貫通部37aとして形成されている。
【0048】
図3に示すように、吸気ホース62は、カバー部材1の外側に配設されたエアクリーナ64と、該カバー部材1の内側に配設され、且つエンジン側に備えたインテークマニホールド(図示略)とを接続するものであり、これらの間の吸気通路を形成している。
吸気ホース62は、ゴム等の弾性(可撓性)素材により中空かつ蛇腹状に形成され、カバー本体左側壁部22の主要部を成す、後述するPP材から形成された高剛性部43,45(図5参照)よりも低剛性としている。
【0049】
図1図2に示すように、蓋部3の周縁、すなわち、蓋部3の下縁部に設けた各フランジ部38の下面、金属パイプ挿通用のガイド部35の下部、および左右各側の蓋部側壁部31,32の上下方向に延びる後縁辺31a,32a等には、ラバー部材から成るシール部材70(71,72)を備えている。このうち、蓋部3の下縁部に設けた各フランジ部38の下面に備えたシール部材71は、下方へ舌片状に取り付けられている。また図1図4に示すように、金属パイプ挿通用のガイド部35の下面(内面)に取り付けられたシール部材72は、金属パイプ挿通用貫通部35aの上半分を占めるように配設される。
【0050】
蓋部3は、カバー本体後壁部23の上端から車幅方向に間隔を隔てて配設された左右一対のヒンジ24(図2参照)を介して開閉可能に枢着されている。
【0051】
蓋部3が閉時においては、蓋部後壁部33は、カバー本体後壁部23によって、これらの間に備えたシール部材71を介して弾性支持される(図2参照)。さらに蓋部3の前縁は、シュラウド8の上面に載置した状態で、これらの間に備えたシール部材71を介して弾性支持され(図1参照)、蓋部右側壁部31は、エンジンマウントブラケット90およびカバー本体右側壁部21によって、これらの間に備えたシール部材71を介して弾性支持され(図1参照)、蓋部左側壁部32は、カバー本体左側壁部22によって、これらの間に備えたシール部材71を介して弾性支持される(図2参照)。
【0052】
特に上述したように、蓋部3が閉時においては、カバー部材1は、例えば、左右各側の蓋部側壁部31,32を、フランジ部38に備えたシール部材71が、左右各側のカバー本体側壁部21,22の各上端に圧接するように、これら左右各側のカバー本体側壁部21,22によって直下から支持することで、カバー本体部2による蓋部3の支持剛性を高めつつ、蓋部3の自重による、シール部材71を介したカバー本体部2側への押圧力を利用して蓋部3とカバー本体部2との間のシール性を高めている。
【0053】
続いてカバー本体右側壁部21について主に図1図4図6図7を用いて詳述する。
カバー本体右側壁部21は、エンジンの右側方(車両右側におけるエンジンの側方)の全体を覆うように配設しておらず、エンジンの右側方の車両前後方向の前側略半分に相当する領域に配設されている。
【0054】
すなわち、エンジンの右側方は、その後側略半分に相当する領域に、エンジンマウントブラケット90を配設している。このエンジンマウントブラケット90によって、後壁部13の右側の前縁辺と、カバー本体右側壁部21の後縁辺との間に相当する領域を塞ぐことでカバー部材1を代用している。これにより、カバー本体右側壁部21をコンパクト化してその重量およびコストの低減を図るよう構成している。
【0055】
カバー本体右側壁部21は、カバー本体右側壁上部21uとカバー本体右側壁下部21dとを上下各側に配設することで縦壁を成すパネル状に構成されている。このようにカバー本体右側壁部21は、1枚のパネル等により上下方向に一体に形成せずにカバー本体右側壁上部21uとカバー本体右側壁下部21dとの分割構造とすることで、カバー本体右側壁部21の上下各側21u,21dのうち、必要に応じて一方の壁部のみを取り外すことができ、カバー本体右側壁部21全体を取り外す構成と比してカバー部材1内部のサービス性(メンテナンス等の作業性)を高めている。
【0056】
カバー本体右側壁上部21uの下端とカバー本体右側壁下部21dの上端とは、共に車両前後方向の略全体に亘って水平に形成され、カバー本体右側壁上部21uの下端部が、その直下からカバー本体右側壁下部21dの上端部によって支持される(図7参照)。これによりカバー本体右側壁上部21uとカバー本体右側壁下部21dとは、夫々上下各側に略隙間なく配設された状態でクリップおよび係合構造25(図4参照)を利用して互い結合されている。
【0057】
なお図4に示すように、係合構造25は、カバー本体右側壁上部21uの車両前後方向に水平に延びる下端の後部からカバー本体右側壁下部21dに向けて舌片状に突出する係合突起25aと、カバー本体右側壁下部21dの車両前後方向に水平に延びる上端における、該係合突起25aに対応する部位を下方に凹状に形成した被係合溝部25bとで構成され、係合突起25aは、カバー本体右側壁上部21uとカバー本体右側壁下部21dとをパネル状に一体構成した状態において被係合溝部25bに係合される。
【0058】
カバー本体右側壁部21は、カバー本体右側壁上部21uとカバー本体右側壁下部21dとに対応して、夫々独立して外皮部材4u,4d(図1図4図6図7参照)と、これら外皮部材4u,4dの内面に一体的に配設される保温部材5u,5d(図6図7参照)とを備えている。
【0059】
カバー本体右側壁下部21dの外皮部材4dは、その全体を高剛性部材としてのPP材から形成しており、該外皮部材4dの内面には、カバー本体右側壁上部21uに備えた保温部材5uとは別部材から成る保温部材5dを備えている(図6図7参照)。
【0060】
また図1図4図6図7に示すように、カバー本体右側壁上部21uの外皮部材4uは、高剛性部41と、該高剛性部41よりも上側に位置する低剛性部42とで一体成形により縦壁状に構成されている。
【0061】
ここで当例では高剛性部41は、カバー本体右側壁下部21dの外皮部材4dと同様にPP材から成り、低剛性部42は、PP部材よりも剛性が低い低剛性部材としてのエラストマー樹脂材から成る。
なお、カバー部材1は、カバー本体右側壁部21以外についても、外皮部材4を適宜、PP材から形成しているが、例えば、カバー本体後壁部23や蓋部後壁部33等、エキゾーストマニホールドや触媒装置等の排気系部品(図示略)からの熱害の影響が懸念される部位においては、必要に応じてガラス繊維を含有してもよい。
【0062】
カバー本体右側壁上部21uの外皮部材4uを、上述したように高剛性部41と低剛性部42とで一体成形により構成することで、高剛性部41と低剛性部42との間に、両部41,42間に、互いを連結するための連結構造や隙間等が介在することがなく、両部材の少なくとも各内面(エンジンを臨む側の面)が上下方向に連続するように平坦に形成することができる(図6図7の特に図7中のX部拡大部分参照)。
【0063】
よって、カバー本体右側壁上部21uの外皮部材4uを、上述したように高剛性部41と低剛性部42とで一体成形により構成することで、保温部材5uは、カバー本体右側壁上部21uの高剛性部41と低剛性部42とに対応して別々に形成することがなく(図6図7参照)、カバー本体右側壁上部21uの略全体に亘って連続して一体に形成したものを、高剛性部41と低剛性部42との間(境界部)を跨ぐようにしてカバー本体右側壁上部21uの外皮部材4uの内面に配設することができる(同図参照)。
【0064】
なお図7中のX部拡大部分に示すように、低剛性部42の下端部と高剛性部41の上端部とには、それぞれ車幅方向に互い違いになるように相手側に向けて突き出す段部42t,41tを設けることで、低剛性部42と高剛性部41とを上下各側に配置した状態において、互いの段部42t,41tが係合し合うことで車幅方向のズレを抑制している。
【0065】
図1図4に示すように、高剛性部41は、カバー本体右側壁上部21uの外皮部材4uの下部において、低剛性部42は、カバー本体右側壁上部21uの外皮部材4uの上部において、夫々カバー本体右側壁上部21uの車両前後方向の全体に亘って形成されている。
【0066】
すなわち、カバー本体右側壁上部21uの外皮部材4uの上下方向の少なくとも下端部は、その車両前後方向全体に亘って高剛性部41が形成されるとともに、カバー本体右側壁上部21uの外皮部材4uの上端部は、該カバー本体右側壁上部21uの車両前後方向全体に亘って低剛性部42が形成される。
【0067】
上記構成により、カバー本体右側壁部21は、縦壁を成すパネル状に構成されており、該カバー本体右側壁部21の外皮部材4(4u,4d)は、その略全体(詳しくは、カバー本体右側壁上部21uの高剛性部41およびカバー本体右側壁下部21dの外皮部材4dに相当する部位)が高剛性部材としてのPP材によって形成される一方、該カバー本体右側壁部21の上端部に車両前後方向の全体に亘って低剛性部材としてのエラストマー樹脂材によって形成される。
【0068】
特に本実施形態の右側壁部11(カバー本体右側壁部21)は、その車両前後方向における、低剛性部42の占有率が、該右側壁部11の後方側よりも前方側が高くなるように構成されている。
【0069】
具体的に図4に示すように、カバー本体右側壁部21の上下方向の少なくとも上端部において、車両前後方向に沿って延びる低剛性部42は、低剛性幅小部42rと、低剛性傾斜状拡幅部42mと、低剛性直線状拡幅部42fとで、該カバー本体右側壁部21の後端から前端に亘ってこの順に一体に構成される。
低剛性幅小部42rは、右側壁部11の後端から金属パイプ挿通用のガイド部35の後縁手前まで右側壁部11の上端部に沿って延びており、その車両前後方向に亘って、蓋部右側壁部31の下縁のフランジ部38riの下面に沿って取り付けた舌片状のシール部材71と略同じ上下幅(上下方向の長さ)を有している。
【0070】
低剛性傾斜状拡幅部42mは、ガイド部35の後縁から前縁まで車両前後方向に沿って延びている。すなわち、この低剛性傾斜状拡幅部42mはガイド部35の直下に配設されている。低剛性傾斜状拡幅部42mは、その下端部が車両前方程下方へ傾斜状に延びている。
【0071】
これにより、低剛性傾斜状拡幅部42mは、カバー本体右側壁上部21uの上端部に沿って配設される低剛性幅小部42rの上下幅と略同じ上下幅を有する後端部から車両前方程徐々に上下幅が長くなり、前端がカバー本体右側壁上部21uの下部を除く上下幅となるまで拡幅される。
【0072】
低剛性傾斜状拡幅部42mの上端には、車両右側から見てガイド部35に囲まれた内部領域(金属パイプ挿通用貫通部35a)のうち、略下半分に相当する領域に達するまで延出する低剛性上方延出部42aが一体形成されている(図4参照)。
【0073】
そして、低剛性上方延出部42aと、金属パイプ挿通用貫通部35aの略上半分に備えたシール部材72とで、該金属パイプ挿通用貫通部35aに挿通された金属パイプ61を上下両側から挟み込むようにして弾性支持している(図4図6参照)。
【0074】
低剛性直線状拡幅部42fは、低剛性傾斜状拡幅部42mの前端の上下幅、すなわち、カバー本体右側壁上部21uの下部を除いた上下幅を維持しつつ、低剛性傾斜状拡幅部42mの前端からカバー本体右側壁上部21uの前端まで前方に延びている。
【0075】
上述したように、カバー本体右側壁部21は、その車両前後方向における、低剛性幅小部42rを備えた後部が、金属パイプ挿通用貫通部35aに対して後方に配設されるとともに、低剛性傾斜状拡幅部42mを備えた中間部が、金属パイプ挿通用貫通部35aの直下に配設され、さらに低剛性直線状拡幅部42fを備えた前部が金属パイプ挿通用貫通部35aに対して前方に配設される。これにより、カバー本体右側壁部21は、後方よりも前方において低剛性部42(低剛性部材)の占有率が高くなるように構成されている。
【0076】
さらに、カバー本体右側壁部21は、上述したように、その車両前後方向における、特に、中間部に、後部に備えた低剛性幅小部42rよりも上下幅を有する低剛性傾斜状拡幅部42mを(低剛性上方延出部42aも含めて)備えることで、金属パイプ挿通用貫通部35aの直下に位置する中間部を、金属パイプ挿通用貫通部35aに対して後方に位置する後部と比して低剛性部42が占める割合を高めた構成、すなわち上下方向に撓み易い構成としている。
【0077】
これにより、高剛性の金属パイプ61を金属パイプ挿通用貫通部35aに挿通することにより、ボンネット6上方からの衝撃吸収性能が低下することが懸念される当該部位における衝撃吸収性を担保する構成としている。
【0078】
また図3に示すように、カバー本体右側壁部21の後側かつ車両右側にはサブタンク63が隣接配置されている。
【0079】
サブタンク63は、不図示のラジエータと、配管を介して接続され、ラジエータ内の冷却水の温度上昇に伴うオーバーフロー分が流入して貯留する一方、ラジエータ内の冷却水が蒸発等により損失すると、貯留する冷却水をラジエータ側へ戻すことで、ラジエータ内の冷却水を所定量に保つものである。
【0080】
カバー本体右側壁部21は、その少なくともカバー本体右側壁下部21dがラジエータサブタンク63に取り付けられ、該ラジエータサブタンク63を介してカバー本体右側壁部21の下方に配設された車両右側のフロントサイドフレーム7等によって下側から支持されている。
【0081】
続いてカバー本体左側壁部22について主に図2図5図8を用いて詳述する。
カバー本体左側壁部22は、エンジンの左側方(車両左側におけるエンジンの側方)の両前後方向の前側略半分に相当する領域に配設されるカバー本体左側壁前部22fと、後側略半分に相当する領域に配設されるカバー本体左側壁後部22rとで構成され、夫々外皮部材4f,4rと、当該外皮部材4f,4rの内面に配設された保温部材5f,5r(図8参照)とを備えている。
【0082】
カバー本体左側壁前部22fの外皮部材4fは、高剛性部43と、該高剛性部43よりも上側に位置する低剛性部前側部分44とで構成されている(図2図5参照)。カバー本体左側壁後部22rの外皮部材4rは、高剛性部45と、該高剛性部45よりも上側に位置する低剛性部後側部分46とで構成されている(図2図5図8参照)。
【0083】
ここで、カバー本体左側壁前部22fの上縁に備えた上記の低剛性部前側部分44と、カバー本体左側壁後部22rの上縁に備えた上記の低剛性部後側部分46とでもって車両前後方向に連続する低剛性部47が一体に形成されている。
【0084】
そして、カバー本体左側壁部22においてもカバー本体右側壁部21と同様に、高剛性部43,45はPP材から成り、低剛性部47は、PP部材よりも剛性が低いエラストマー樹脂材から成る。
【0085】
また当例のカバー本体左側壁部22においては、カバー本体右側壁部21と同様に、吸音効果を有する保温部材5f,5rを備えているが、該保温部材5f,5rは、前後各側の壁部22f,22rの高剛性部43,45の内面にのみ備え、低剛性部47の内面には備えずに構成している(図8参照)。
但し、本発明は、言うまでもなく保温部材5を低剛性部47の内面に備えた構成を排除せず、また、その場合には、高剛性部43,45と低剛性部47との夫々に備えた保温部材5を一体に形成してもよい。
【0086】
また図2図5に示すように、カバー本体左側壁前部22fの上端かつ、車両前後方向の中間位置は、吸気ホース挿通用貫通部37aの略下半分に対応して、下方に半円状に凹んだ逃げ部22aが形成され、この逃げ部22aは、上方に半円状に突出したガイド部37と共に略円形状の上記吸気ホース挿通用貫通部37aを形造っている。
【0087】
吸気ホース62における、吸気ホース挿通用貫通部37aへの挿通部分には、弾性体から成る鍔状のシールリップ62aが一体形成されている。そして、このシールリップ62aがガイド部37の下面およびカバー本体左側壁前部22fの逃げ部22aの上面に圧接することで、吸気ホース挿通用貫通部37aにおける、ガイド部37およびカバー本体左側壁前部22fとの隙間を閉塞している。
【0088】
また、カバー本体左側壁前部22fの高剛性部43の後端と、カバー本体左側壁後部22rの高剛性部45の前端とは、車両前後方向にオーバーラップしており、該オーバーラップ部分においてクリップによって互いに連結している。
【0089】
さらにまた、上記の低剛性部47は、カバー本体左側壁前部22fの逃げ部22aの後縁からカバー本体左側壁後部22rの車両前後方向の中間位置まで車両前後方向に延びている。すなわち、低剛性部47は、カバー本体左側壁前部22fとカバー本体左側壁後部22rとを跨ぐように配設されている(図2図5参照)。
【0090】
カバー本体左側壁部22においては、蓋部左側壁部32を、その直下側から低剛性部47を含めた上端によって、シール部材71を介して支持している。
【0091】
特に、カバー本体左側壁部22のカバー本体左側壁前部22fは、車両前後方向の吸気ホース挿通用貫通部37aに対応する部位に、該吸気ホース挿通用貫通部37aに挿通された吸気ホース62がシールリップ62aを含めて介在するため、該吸気ホース62によって蓋部3のガイド部37を、その直下から支持する構成を採用している。
【0092】
このように吸気ホース62によって蓋部3のガイド部37を支持することで、カバー本体左側壁前部22fの車両前後方向の吸気ホース挿通用貫通部37aに対応する部位おいては、上述したように低剛性部47を設けずに高剛性部材としてのPP材よりも低剛性である(上下方向の弾性に優れた)吸気ホース62によって代用している。
【0093】
また図3に示すように、カバー本体左側壁前部22fの前部外側には、吸気系部品としてのエアクリーナ64とフレッシュエアダクト65とが隣接配置されている。
【0094】
カバー本体左側壁部22のカバー本体左側壁前部22fは、その少なくとも下側に位置する高剛性部43がエアクリーナ64に取り付けられ、該エアクリーナ64を介してカバー本体左側壁前部22fよりも下方に配設された車両左側のフロントサイドフレーム(図示省略)等によって下側から支持されている。
【0095】
カバー本体左側壁部22のカバー本体左側壁後部22rは、その後縁がカバー本体後壁部23の左縁にクリップ等によって取り付けられるとともに、その前縁が上述したように、カバー本体左側壁前部22fの後縁にクリップ等によって取り付けられている。すなわち、カバー本体左側壁部22のカバー本体左側壁後部22rは、カバー本体後壁部23やカバー本体左側壁前部22f等を介して車両左側のフロントサイドフレーム(図示省略)等によって下側から支持されている。
【0096】
図1図3に示すように、上述した本実施形態の車両の前部構造は、ボンネット6の下方に、エンジン上部から側方にかけて覆う、上壁部30、前壁部としてのシュラウド8、後壁部13、および左右各側の側壁部11,12から構成されるカバー部材1を備える車両の前部構造であって、右側壁部11の前方側に、該前方側が後方側に対し剛性が低い低剛性部材としてのエラストマー樹脂から形成される低剛性部42を備えるとともに(図1図4図6図7参照)、左側壁部12の前方側に、該前方側が後方側に対し剛性が低い低剛性部材としてのエラストマー樹脂から形成される低剛性部47(44および46)、62を備えたものである(図2図5図8参照)。
【0097】
上記構成によれば、ボンネット6前部の衝撃吸収性能を高めることで、車両と歩行者との衝突時に、ボンネット6に上方から傾倒する歩行者が該ボンネット6前部から受ける衝撃を緩和して歩行者の保護に寄与することができる。
【0098】
この発明の態様として、カバー部材1は、上壁部30と左右各側の蓋部側壁部31,32(開閉側壁部)と蓋部後壁部33(開閉後壁部)とを有する開閉可能な蓋部3(開閉カバー)を備え(図1図3参照)、左右各側の側壁部11,12は、左右各側の蓋部側壁部31,32と、該左右各側の蓋部側壁部31,32の下端をシール部材70(71,72)を介し上端で支持する左右各側のカバー本体側壁部21,22(左右各側の固定側壁部)とから構成され(図1図2等参照)、後壁部13は、蓋部後壁部33(開閉後壁部)と、該蓋部後壁部33をヒンジ24を介し回動可能に支持するカバー本体後壁部23(固定後壁部)とから構成され(図2参照)、左右各側のカバー本体側壁部21,22の前部の上側部を下側部に対し剛性の低い低剛性部42,47(44,46),62によって構成したものである(図1図2等参照)。
【0099】
上記構成によれば、カバー部材1にカバー本体部2(左右各側のカバー本体側壁部21,22およびカバー本体後壁部23)に対して開閉可能な蓋部3を備え、カバー本体部2と蓋部3との間のシール性を確保するために蓋部3の下端部をカバー本体部2の上端部によって下側から支持する構成において、カバー本体部2による、蓋部3の支持剛性を確保した上でボンネット6前部の衝撃吸収性能を良好にできる。
【0100】
詳しくは、カバー部材にカバー本体部に対して開閉可能な蓋部を備えたものとして、例えば、上述した特許文献1(特開2017-177966号公報)のカバー部材が開示されている。
【0101】
この特許文献1のカバー部材(30)は、蓋部(33)が閉時に、カバー本体部(34)の上部にシール部材(37)を介して車両側方から当接するようになっている。
【0102】
この構成においては、蓋部(33)を、その下側からカバー本体部(34)によってダイレクトに受け止めて支持する構成ではないことから、上方からの衝撃に対して蓋部(33)の下方へのズレを許容し易くなり、結果的にボンネット前部の衝撃吸収性能を確保し易い構成といえるものの、カバー本体部(34)による蓋部(33)の支持剛性や、これら両部材(33,34)間のシール性について懸念される。
【0103】
その一方で、カバー部材は、蓋部の下端部をカバー本体部の上端によってシール部材を介して直接下側から支持する構造とした場合に、蓋部からの自重による押圧をカバー本体部によってダイレクトに受け止めることが可能となるため、蓋部とカバー本体との間のシール性確保の点からは有効である。
【0104】
しかしながら、単純にこの構造を採用した場合には、蓋部のカバー本体部に対する下方へのズレに伴う下方への衝撃吸収性が減滅するとともに、カバー本体部には、このように蓋部を下側から支持できる程度の剛性が必要となる。加えて、ボンネットの前部は後方よりも降下した形状であるが故にカバー本体部の上下幅を確保することが困難となるため、ボンネット前部における衝撃吸収性能を確保し難くなることが懸念される。
【0105】
これに対して本実施形態においては、左右各側のカバー本体側壁部21,22(固定側壁部)の全体を低剛性部42,47により構成せずに、該カバー本体側壁部21,22の前部の上側部を下側部に対し剛性が低くなるように低剛性部42,47を配設したため、蓋部3の支持剛性を確保した上でボンネット6前部の衝撃吸収性能を良好にできる。
【0106】
特に、左右各側のカバー本体側壁部21,22(固定側壁部)の前部の上側部を下側部に対し剛性が低くなるように低剛性部42,47を配設することで、該低剛性部42,47の下方に、高剛性部41や高剛性部材(PP材)により形成した外皮部材4dを配設することができ、これら低剛性部42,47と高剛性部41等とを上下逆に配設した構成と比して低剛性部42,47に加わる上方からの荷重を低減してカバー本体側壁部21,22の前部においても、蓋部3の支持剛性を極力確保することができる。
【0107】
この発明の態様として、高剛性部41,43,45および外皮部材4dは、PP材から形成されるとともに、低剛性部42,47(44,46),62は、PP材よりも剛性が低いエラストマー樹脂材やゴム等から形成され、右側壁部11に備えたカバー本体右側壁部21はその主要部が外皮部材4dおよび高剛性部41により構成され、カバー本体側壁部21の前部は、後部と比して低剛性部42の占める割合が高くなるように構成されたものであり(図1図4図6図7参照)、また、左側壁部12に備えたカバー本体左側壁部22はその主要部が高剛性部43,45により構成され、カバー本体左側壁部22の前部は、後部と比して低剛性部47(44,46),62の占める割合が高くなるように構成されたものである(図2図5図8参照)。
【0108】
上記構成によれば、PP材により側壁部11,12の基礎となる剛性を確保しつつ、エラストマー樹脂材により側壁部11,12の前部の剛性を部分的に下げることができる。
【0109】
この発明の態様として、右側壁部11に備えたカバー本体右側壁上部21uの外皮部材4uは、高剛性部41と低剛性部42とが一体成形により構成されたものであり(図1図4図6図7参照)、また、左側壁部12に備えたカバー本体左側壁前部22fの外皮部材4fは、高剛性部43と低剛性部前側部分44とが一体成形により構成されるとともに(図2図5参照)、左側壁部12に備えたカバー本体左側壁後部22rの外皮部材4rは、高剛性部45と低剛性部後側部分46とが一体成形により構成されたものである(図2図5図8参照)。
【0110】
上記構成によれば、例えば、高剛性部材から成る側壁部と低剛性部材から成る側壁部とを別々に構成し、互いに連結する場合のように連結部材や連結作業が不要となるため、部品点数および組立工数を削減できる。
【0111】
この発明の態様として、右側壁部11に備えたカバー本体右側壁上部21uの外皮部材4uの内壁面側に、保温部材5uが取付けられるとともに、高剛性部41と低剛性部42とを一体形成されたものである(図1図4図6図7参照)。
【0112】
上述したように、カバー本体右側壁上部21uは高剛性部41と低剛性部42とが一体成形されたものであるため、これら41,42の間において略隙間なく滑らかに連続する面状に形成することができる(図7中のX部分拡大図参照)。
【0113】
このため、高剛性部41と低剛性部42とが一体成形により構成されたカバー本体右側壁上部21uの内壁面側に対して、上下各側に保温部材5uを、これら41,42の間を跨ぐようにして隙なく取り付けることができる(図6図7参照)。
【0114】
この発明の態様として、右側壁部11の上部には、低剛性部42より剛性の高い車両部品としての金属パイプ61を挿通する金属パイプ挿通用貫通部35a(高剛性車両部品挿通用貫通部)が設けられており(図1図4図6参照)、右側壁部11における金属パイプ挿通用貫通部35aの下方に有するカバー本体右側壁部21は、低剛性部42が占める割合が車両前後方向の他部(特に車両後部)より高く設けられたものである(図1図4参照)。
【0115】
上記構成によれば、剛性の高い金属パイプ61の、カバー部材1の右側壁部11に対して内外各側を跨ぐ配索と、ボンネット6前部の衝撃吸収性能とを両立できる。
【0116】
この発明の態様として、左側壁部12の上部には、高剛性部43,45よりも剛性が低い車両部品としての吸気ホース62を挿通する吸気ホース挿通用貫通部37a(低剛性車両部品挿通用貫通部)が設けられており(図2図5参照)、吸気ホース挿通用貫通部37aに挿通した吸気ホース62が低剛性部後側部分46を代用する構成としたものである。
【0117】
上記構成によれば、吸気ホース挿通用貫通部37aに挿通した吸気ホース62は、蛇腹かつ中空形状であり、上方からの衝撃に対して上下方向に圧縮変形(弾性変形)可能であるため、この吸気ホース62を利用してボンネット6前部の衝撃吸収性能を良好にできる。
【0118】
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
【符号の説明】
【0119】
1…カバー部材
3…蓋部(開閉カバー)
5u…保温部材
6…ボンネット
8…シュラウド(前壁部)
13…後壁部
11,12…左右各側の側壁部
21,22…左右各側のカバー本体側壁部(左右各側の固定側壁部)
23…カバー本体後壁部(固定後壁部)
24…ヒンジ
30…上壁部
31,32…左右各側の蓋部側壁部(左右各側の開閉側壁部)
33…蓋部後壁部(開閉後壁部)
35a…金属パイプ挿通用貫通部(高剛性車両部品挿通用貫通部)
37a…吸気ホース挿通用貫通部(低剛性車両部品挿通用貫通部)
41,43,45…(高剛性部材によって形成される)高剛性部(高剛性部材、PP材)
47(44および46)、62…(低剛性部材によって形成される)低剛性部(低剛性部材、エラストマー樹脂材)
42…高剛性車両部品貫通用貫通部の下方に設けられる低剛性部材
43…低剛性車両部品挿通用貫通部に挿通した車両部品に代用される低剛性部材
61…金属パイプ(低剛性部材より剛性の高い車両部品)
62…吸気ホース(高剛性部材よりも剛性が低い車両部品)
70(71,72)…シール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8