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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】施工管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20220630BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20220630BHJP
【FI】
G01C15/00 103E
G01C15/00 103A
G06T19/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018129623
(22)【出願日】2018-07-09
(65)【公開番号】P2020008423
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100088041
【氏名又は名称】阿部 龍吉
(72)【発明者】
【氏名】岩田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】加藤 登
(72)【発明者】
【氏名】松澤 健志
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-204222(JP,A)
【文献】特開2006-349578(JP,A)
【文献】特開2014-194434(JP,A)
【文献】特表2010-540796(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107729707(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
5/00-15/14
G06T 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元CADデータ中の仮想空間において仮想建築構造物の設計上の設計位置座標データが予め決められており、
現実空間における現実建築構造物の現実位置座標データを、設計位置座標データに近づけるように施行を行う際の施工管理を行う施工管理システムであって、
現実空間に配される現実測量機械と、
現実測量機械が追尾する現実ターゲットと、
前記3次元CADデータを記憶すると共に、現実空間における現実測量機械に対して制御指令を発し、現実測量機械から測量データ(現実ターゲットの座標)を取得する情報処理装置と、を有し、
情報処理装置が、
現実測量機械に対して、現実空間における現実ターゲットを追尾し座標取得するように制御指令を発する工程と、
現実測量機械で取得された現実ターゲットの座標を受信する工程と、
受信した現実ターゲットの座標に基づいて、現実建築構造物の現実位置座標データを算出する工程と、
算出された現実建築構造物の前記現実位置座標データを、前記3次元CADデータ中の仮想空間における仮想建築構造物の位置座標データとして用いる工程と、
を実行することを特徴とする施工管理システム。
【請求項2】
前記3次元CADデータには、仮想建築構造物のデータと共に、
仮想測量機械のデータと、
仮想測量機械がターゲットとする仮想ターゲットのデータと、が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の施工管理システム。
【請求項3】
現実空間における現実測量機械が、予め設定されている仮想空間における仮想測量機械の設置位置に基づいて設置され、
現実空間における現実ターゲットの現実建築構造物への取り付けが、予め設定されている仮想空間における仮想ターゲットの仮想建築構造物への取り付け位置に基づいて取り付けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の施工管理システム。
【請求項4】
現実測量機械が、前記情報処理装置から現実空間における現実ターゲットを追尾し座標取得するよう制御指令を受信すると、
当該現実測量機械は、複数回の測量に基づく座標を取得することが特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の施工管理システム。
【請求項5】
当該現実測量機械による複数回の測量には正位による測量と反位による測量とが含まれることを特徴とする請求項4に記載の施工管理システム。
【請求項6】
前記3次元CADデータが、BIMデータであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の施工管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BIMなどを含む3次元CADを用いた建築物の施工における管理を行う施工管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の設計・施工・施工後の修繕管理等にBIM(Building Information Modeling)を用いることが多くなってきた。例えば、特許文献1(特開2017-4227号公報)には、構成要素の集合として三次元モデルで表される建築物の維持管理に関する記録である管理履歴情報に基づいて、当該管理履歴情報が存在することを示し、且つ、前記三次元モデルと共に表示するためのオブジェクトを生成する生成ステップと、生成された前記オブジェクトを出力するステップとをコンピューターが実行する建築物管理支援方法が開示されている。
【文献】特開2017-4227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようなBIMを用いた施工管理を行ったとしても、現場においては、施工管理担当者は、施工状況の検証と記録とを行なうため、従来のようにカメラ、黒板等を現場に持参し、図面との照合確認を行い、黒板に所定事項を記載し、検査目的に応じて写真撮影を行うなどの作業を行っており、施行が仕様通りに行われているかを確認するための労力や時間がかかると共に、人手に基づく確認に依るため、施行確認の精度も高くはない、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を解決するものであって、本発明に係る施工管理システムは、3次元CADデータ中の仮想空間において仮想建築構造物の設計上の設計位置座標データが予め決められており、現実空間における現実建築構造物の現実位置座標データを、設計位置座標データに近づけるように施行を行う際の施工管理を行う施工管理システムであって、現実空間に配される現実測量機械と、現実測量機械が追尾する現実ターゲットと、前記3次元CADデータを記憶すると共に、現実空間における現実測量機械に対して制御指令を発し、現実測量機械から測量データ(現実ターゲットの座標)を取得する情報処理装置と、を有し、情報処理装置が、現実測量機械に対して、現実空間における現実ターゲットを追尾し座標取得するように制御指令を発する工程と、現実測量機械で取得された現実ターゲットの座標を受信する工程と、受信した現実ターゲットの座標に基づいて、現実建築構造物の現実位置座標データを算出する工程と、算出された現実建築構造物の前記現実位置座標データを、前記3次元CADデータ中の仮想空間における仮想建築構造物の位置座標データとして用いる工程と、を実行することを特徴とする。
【0005】
また、本発明に係る施工管理システムは、前記3次元CADデータには、仮想建築構造物のデータと共に、仮想測量機械のデータと、仮想測量機械がターゲットとする仮想ターゲットのデータと、が含まれていることを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る施工管理システムは、現実空間における現実測量機械が、予め設定されている仮想空間における仮想測量機械の設置位置に基づいて設置され、現実空間における現実ターゲットの現実建築構造物への取り付けが、予め設定されている仮想空間における仮想ターゲットの仮想建築構造物への取り付け位置に基づいて取り付けられることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る施工管理システムは、現実測量機械が、前記情報処理装置から現実空間における現実ターゲットを追尾し座標取得するよう制御指令を受信すると、当該現実測量機械は、複数回の測量に基づく座標を取得することが特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る施工管理システムは、当該現実測量機械による複数回の測量には正位による測量と反位による測量とが含まれることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る施工管理システムは、前記3次元CADデータが、BIMデータであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る施工管理システムは、現実測量機械で取得された現実ターゲットの座標を受信する工程と、受信した現実ターゲットの座標に基づいて、現実建築構造物の現実位置座標データを算出する工程と、算出された現実建築構造物の前記現実位置座標データを、前記3次元CADデータ中の仮想空間における仮想建築構造物の位置座標データとして用いる工程と、が実行されるので、このような施工管理システムによれば、前記3次元CADデータ中の仮想空間に自動的にしかも高い精度で、現実建築構造物の現実位置座標データが反映されることとなり、施工管理に係る労力や手間を省くことができ、さらに高い精度の施工管理履歴を保存することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1で用いる仮想空間と現実空間の概念を説明する図である。
図2】本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1における仮想空間の一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1における仮想空間と現実空間との対比関係を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1の自動計測機能の動作の概略を説明する図である。
図5】本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1で用いられるGUI(Graphical User Interface)画面の一例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1の基準点設定機能の動作の概略を説明する図である。
図7】本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1の機械点設定機能の動作の概略を説明する図である。
図8】本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1のシステム概要を説明する図である。
図9】本発明の実施形態で用いる自動正対器100の斜視図である。
図10】本発明の実施形態で用いる自動正対器100のシステム構成を示すブロック図である。
図11】本発明の実施形態で用いる自動正対器100の動作例を示す図である。
図12】本発明の実施形態で用いる自動正対器100による反射プリズム130の姿勢制御を説明する図である。
図13】本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1の運用例を説明する図である。
図14】本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1の運用例を説明する図である。
図15】本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1の運用例を説明する図である。
図16】本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1の自動計測処理(自動計測機能)のフローチャートを示す図である。
図17】本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1の自動計測処理(自動計測機能)による動作・処理イメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1で用いる仮想空間と現実空間の概念を説明する図であり、本発明における用語や概念を説明する図である。
【0013】
本発明に係る施工状況確認システム1では、「仮想空間」と「現実空間」の2つの空間を分けて考える。
【0014】
「仮想空間」は、コンピューターなどの情報処理装置の中で処理されるデータによって表現・構築される空間である。このような「仮想空間」は、例えば情報処理装置の表示手段であるディスプレイなどに表示し得るものである。本発明に係る施工状況確認システム1では、特に「仮想空間」は、3次元CADデータのデータ形式に基づいて記述されていることが想定されている。また、本発明では、BIM(Building Information Modeling)は、3次元CADの1種であり、BIMは3次元CADの下位概念であるものとして定義する。
【0015】
一方、「現実空間」は、上記のような3次元CADデータに基づいて施行される建物が存在する実空間のことを言う。
【0016】
なお、以下、本明細書では「仮想空間」の中で扱われるオブジェクトに対しては、「仮想」の接頭語を付する一方で、「仮想空間」と区別するために実際の「現実空間」で扱う対象物に対しては「現実」の接頭語を付することで、互いを区別することがある。
【0017】
3次元CADデータ中には、施工予定の建物の設計データに含まれている部材である建築構造物のデータが含まれている。このような3次元CADデータ中の建築構造物については、前述の通り「仮想」建築構造物と称する。なお、仮想建築構造物のデータは、例えば、天井を構成する部材のデータや、壁を構成する部材のデータなどである。
【0018】
3次元CADデータには、最終的に仮想建築構造物が取り付けられる位置座標データが少なくとも含まれており、現実空間では、このような3次元CADデータに基づいて、仮想建築構造物に対応する現実建築構造物が施工されていくことが想定される。
【0019】
現実空間において、現実建築構造物が、3次元CADデータの位置座標データ通り正しく施工されたか否かを、例えば、現実建築構造物にターゲットを取り付け、ターゲット(より詳しくは、ターゲットが備えるプリズム)をトータルステーションなどの測量機器で視準して座標を求めることが行われる。前述の通り、現実空間におけるターゲットを「現実」ターゲット、測量機器を「現実」測量機器とも称する。
【0020】
本発明に係る施工状況確認システム1では、仮想空間において、現実ターゲットに対応する仮想ターゲット、現実測量機器に対応する仮想測量機器を、3次元CADデータの中に仮想建築構造物のデータと共に、データとして記述することを大きな特徴としている。
【0021】
図2は本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1における仮想空間の一例を示す図である。図2は、情報処理装置によって表示手段によって表示される3次元CADの画面データ例である。図2に示すように、3次元CADデータの基本的なデータである仮想建築構造物のデータに加えて、当該仮想建築構造物に取り付けられる仮想ターゲットのデータ、及び、仮想測量機器のデータもデータ化され、3次元CADで取り扱い得るようにされている。
【0022】
このように本発明に係る施工状況確認システム1では、現実空間における「現実建築構造物」、「現実ターゲット」、「現実測量機器」が、仮想空間においてそれぞれ「仮想建築構造物」、「仮想ターゲット」、「仮想測量機器」として対応し、データ化される構成となっている。図3は、本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1における仮想空間と現実空間との対比関係を示す図である。
【0023】
本発明に係る施工状況確認システム1における主要な目的・意義は、現実建築構造物を設計通り施工した際、現実建築構造物の位置座標データが、3次元CADデータ中の仮想建築構造物の設計上の設計位置座標データと等しくなったか(或いは、ほぼ等しくなったか)に係る情報を取得することにある。
【0024】
このために、本発明に係る施工状況確認システム1で具体的にどのような流れでこれを行うかについて図4を参照して説明する。図4は本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1の自動計測機能の動作の概略を説明する図である。図4において、左欄は情報処理装置200によって再現される仮想空間を示しており、右欄は実際に建物が施工される現実空間を示している。
【0025】
左欄において「仮想空間」の表示がある枠内は、情報処理装置200の表示手段による画面表示であるとも捉えることができる。この「仮想空間」の表示がある枠内において、点線で示すものが、3次元CADデータにおける仮想建築構造物VMの取り付け設計位置である。すなわち、現実建築構造物RMも、施行において最終的にこの位置に取り付けられることが求められる。なお、現実建築構造物RMは、不図示の吊り上げ手段でリフトアップされつつ、当該設計位置とされる状況に基づいて以下説明を行う。
【0026】
本発明に係る施工状況確認システム1では、現実建築構造物RMを設計位置にリフトアップにより移動する最中に、当該現実建築構造物RMの現在位置を、現実建築構造物RMに取り付けた自動正対器100(現実ターゲット)をトータルステーション10(現実測量機器)によって逐次測量することで把握し、この把握した情報を情報処理装置200の3次元CADデータに反映させるようにしている。これにより、現実建築構造物RMの正確な位置を自動的に、3次元CADデータに取り込むことができるようになっている。
【0027】
より具体的な手順について説明する。図4において、ステップS100では、ユーザーは情報処理装置200の画面上の仮想測量機器に対して、自動計測制御指令を発する。本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1においては、このような自動計測制御指令は、GUI形式でユーザーからの入力を受けるつけることができるように構成されている。図5は本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1で用いられるGUI(Graphical User Interface)画面の一例を示す図である。 ユーザーは情報処理装置200の画面上で仮想測量機器の操作入力部を模擬する図5(B)に示すGUI画面の「計測開始」から自動計測制御指令を発することが可能である。
【0028】
上記のように自動計測制御指令を受けて、ステップS101では、情報処理装置200は現実測量機器であるトータルステーション10に対して、現実建築構造物RMに取り付けられている自動正対器100(現実ターゲット)の位置座標を計測するよう制御指令を発する。
【0029】
ステップS102では、トータルステーション10(現実測量機器)は、現実建築構造物RMに取り付けられている3つの自動正対器100(現実ターゲット)の位置座標を計測して、これを情報処理装置200に送信する。なお、トータルステーション10(現実測量機器)は、自動正対器100(現実ターゲット)の位置座標を複数回計測して、この平均を取ることもできる。このような平均処理の詳細については後述する。
【0030】
一方、情報処理装置200においてステップS103で、自動正対器100(現実ターゲット)の位置座標を受信すると、ステップS104では、3つの自動正対器100(現実ターゲット)の位置座標から、現実建築構造物RMの位置座標データを算出する。なお、現実建築構造物RMに対する3つの自動正対器100(現実ターゲット)の取り付け位置は既知であることを想定している。
【0031】
ステップS105では、算出された現実建築構造物RMの位置座標データが、現在の仮想建築構造物VMの位置であるものとする。そして、例えば、情報処理装置200の表示手段による画面表示における仮想建築構造物VMの表示位置を、当該位置座標データに基づいて変更する。
【0032】
このように本発明に係る施工状況確認システム1では、現実建築構造物RMの現実位置座標データを算出し、算出された現実建築構造物RMの現実位置座標データを、3次元CADデータ中の仮想空間における仮想建築構造物VMの位置座標データとして用いる。このような施工管理システム1によれば、3次元CADデータ中の仮想空間に自動的にしかも高い精度で、現実建築構造物RMの現実位置座標データが反映されることとなり、施工管理に係る労力や手間を省くことができ、さらに高い精度の施工管理履歴を保存することが可能となる。
【0033】
本発明に係る施工状況確認システム1における主要な目的・意義は、このように、3次元CADデータ中の仮想空間内に現実建築構造物RMの現実位置座標データを反映させることが、究極の目的であるがこれを現場において、より簡便に行うための、本発明に係る施工状況確認システム1が備える2つの機能―基準点設定機能、機械点設定機能―について説明する。
【0034】
まず、基準点設定機能について説明する。図6は本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1の基準点設定機能の動作の概略を説明する図である。図6における左欄、右欄の定義は図4のものに準ずる。
【0035】
この基準点設定機能は、現実空間に取り付けられ、座標の位置が不明である自動正対器100(現実ターゲット)の位置座標データを取得して、これを情報処理装置200の3次元CADデータに反映させる機能である。なお、この基準点設定機能を用いる際には、トータルステーション10(現実測量機器)の位置座標は既知であるものとする。
【0036】
図6において、ステップS200では、ユーザーは情報処理装置200の画面上の仮想測量機器に対して、基準点設定測制御指令を発する。本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1においては、このような基準点設定測制御指令についても、GUI形式でユーザーからの入力を受けるつけることができるように構成されている。図5は本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1で用いられるGUI(Graphical User Interface)画面の一例を示す図である。ユーザーは情報処理装置200の画面上で仮想測量機器の操作入力部を模擬する図5(A)に示すGUI画面の「基準点設定」から自動計測制御指令を発することが可能である。
【0037】
上記のように自動計測制御指令を受けて、ステップS201では、情報処理装置200は現実測量機器であるトータルステーション10に対して、自動正対器100(現実ターゲット)の位置座標を計測するよう制御指令を発する。
【0038】
ステップS202では、トータルステーション10は、自動正対器100(現実ターゲット)の位置座標を計測して、これを情報処理装置200に送信する。なお、トータルステーション10は、自動正対器100(現実ターゲット)の位置座標を複数回計測して、この平均を取ることもできる。
【0039】
情報処理装置200においてステップS203で、自動正対器100(現実ターゲット)の位置座標データを受信する。
【0040】
ステップS204では、受信された自動正対器100(現実ターゲット)が、現在の仮想ターゲットの位置であるものとする。そして、例えば、情報処理装置200の表示手段による画面表示における仮想ターゲットの表示位置を、当該位置座標データに基づいたものにする。
【0041】
次に、機械点設定機能について説明する。図7は本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1の機械点設定機能の動作の概略を説明する図である。図7における左欄、右欄の定義は図4のものに準ずる。
【0042】
この機械点設定機能は、現実空間に取り付けられている2つ以上の、座標の位置が既知である自動正対器100(現実ターゲット)の位置座標データを取得して、未知のトータルステーション10(現実測量機器)自体の位置座標(自己位置)を確定し、さらに、これを情報処理装置200の3次元CADデータに反映させる機能である。
【0043】
現場においては、トータルステーション10(現実測量機器)の位置を、現場の作業内容に応じて適宜変更する必要がある。これには、トータルステーション10(現実測量機器)が計測対象とする建築構造物に対するトータルステーション10(現実測量機器)からの光路の確保のためなどの理由がある。本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1においては、このようなトータルステーション10(現実測量機器)の自己位置を割り出す機械点設定機能を備えるために、既知の自動正対器100(現実ターゲット)を複数現場に設けるようにしておくことで、種々の計測の基礎となるトータルステーション10(現実測量機器)の位置座標を速やかに求めることが可能となる。
【0044】
さて、図7において、ステップS300では、ユーザーは情報処理装置200の画面上の仮想測量機器に対して、基準点設定測制御指令を発する。本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1においては、このような基準点設定測制御指令についても、GUI形式でユーザーからの入力を受けるつけることができるように構成されている。図5は本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1で用いられるGUI(Graphical User Interface)画面の一例を示す図である。ユーザーは情報処理装置200の画面上で仮想測量機器の操作入力部を模擬する図5(A)に示すGUI画面の「機械点設定」から自動計測制御指令を発することが可能である。
【0045】
上記のように自動計測制御指令を受けて、ステップS301では、情報処理装置200は現実測量機器であるトータルステーション10に対して、複数の(本例では2つの)自動正対器100(現実ターゲット)の位置座標を計測するよう制御指令を発する。
【0046】
ステップS302では、トータルステーション10(現実測量機器)は、2つの自動正対器100(現実ターゲット)の位置座標を計測して、これを情報処理装置200に送信する。なお、トータルステーション10は、自動正対器100(現実ターゲット)の位置座標を複数回計測して、この平均を取ることもできる。
【0047】
情報処理装置200においてステップS303で、自動正対器100(現実ターゲット)の2つの位置座標データを受信する。
【0048】
ステップS304では、今回取得された2つの自動正対器100(現実ターゲット)の位置座標と、既に既知である2つの自動正対器100(現実ターゲット)の位置座標とから、トータルステーション10(現実測量機器)の自己位置の位置座標データを算出する。
【0049】
ステップS305では、算出されたトータルステーション10(現実測量機器)が、現在の仮想測量機器の位置であるものとする。そして、例えば、情報処理装置200の表示手段による画面表示における仮想測量機器の表示位置を、当該位置座標データに基づいたものにする。
【0050】
次に、以上のような各機能を有する本発明に係る本発明に係る施工状況確認システム1の構成について説明する。図8は本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1のシステム概要を説明する図である。
【0051】
図8において、例えばパーソナルコンピューターなどの情報処理装置200であり、BIMなどを含む3次元CADのプログラムが動作する汎用のものを用いることができるが、負荷の高い処理をこなす必要があるため、処理能力が高いものを用いることが望ましい。
【0052】
本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1では、トータルステーション10としては、ターゲットに含まれるプリズムを自動的に追尾する機能を有するものが用いられる。これにより、ターゲットである自動正対器100の設置位置が、予定の設置位置から若干ずれていたとしても、トータルステーション10は自動正対器100のプリズムを捕捉することが可能となる。
【0053】
また、トータルステーション10は情報処理装置200とデータ通信可能であるものが用いられる。このようなデータ通信としては、有線方式、無線方式は問わないが現場における利便性を考慮すると無線方式が好ましい。情報処理装置200はこのようなデータ通信によりトータルステーション10に対して制御指令を発すると共に、トータルステーション10からの計測データなどを受信する。
【0054】
本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1では、自動正対器100は、トータルステーション10が計測する、プリズムを含むターゲットとして用いられるものである。このような自動正対器100は、自動計測機能(図4の場合)の際の計測点ターゲットとしても用いられるし、基準点設定機能(図6の場合)、機械点設定機能(図7の場合)の際の基準点ターゲットとしても用いられる。
【0055】
本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1で用いる自動正対器100は、特にターゲットが移動する計測点ターゲットとして用いる図4のような場合に、精度の高い測量を実現するためのものであり、例えば、基本的に移動に伴わない基準点ターゲットに用いる場合には、必ずしもターゲットして自動正対器100を用いる必要はない。
【0056】
自動正対器100は、情報処理装置200とデータ通信可能に構成されている。このようなデータ通信としては、有線方式、無線方式は問わないが現場における利便性を考慮すると無線方式が好ましい。情報処理装置200はこのようなデータ通信により自動正対器100に対して制御指令を発することが可能となる。
【0057】
ここで、本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1で用いる自動正対器100についてより詳しく説明する。なお、自動正対器100の補足説明については、本発明者らによる特願2017-99409号に記載の内容を参照して援用する。
【0058】
図9は本発明の実施形態で用いる自動正対器100の斜視図である。また、図10は本発明の実施形態で用いる自動正対器100のシステム構成を示すブロック図である。
【0059】
本発明で用いる自動正対器100は、反射プリズム130が装着され、現実建築構造物RMに取り付けられて用いられるものである。自動正対器100は、内部に反射プリズム130を収容可能なプリズム収容胴部131を有している。プリズム収容胴部131の先端側には、光の入射口である反射プリズム130の開口132が設けられている。
【0060】
自動正対器100に設けられている反射プリズム130には、例えば、トータルステーション10によって出射されたレーザー光が入射される。反射プリズム130の開口132に入射された光は、反射プリズム130内で、入射光と平行な反射光とされ、反射プリズム130から出射される。入射光が反射光として折り返される仮想の点を、反射プリズム130の反射点Cとして定義する。この反射点Cは、トータルステーション10が反射プリズム130の位置座標を計測する際の基準点となる。また、反射プリズム130の開口132の中心をSとして定義する。
【0061】
本発明で用いる自動正対器100においては、反射プリズム130の姿勢を変更することで、反射プリズム130の開口132が、常に、トータルステーション10のレーザー光出射口(不図示)と正しく正対するようにしている。このような反射プリズム130の姿勢を変更するためのプリズム姿勢変更機構部108と称する。
【0062】
以下、本実施形態に係る自動正対器100においては、基台105に対して、第1軸111を中心に回転する第1ブラケット115と、第1ブラケット115に対して、第2軸121を中心に回転し、反射プリズム130が取り付けられている第2ブラケット125と、からなるプリズム姿勢変更機構部108を例に挙げ説明を行うが、反射プリズム130の開口132を任意の方向に向けさせるように反射プリズム130の姿勢を変更させることを可能とする構成であれば、その他の任意の構成を用いることができる。
【0063】
本発明で用いる自動正対器100の基台105は、自動正対器100を計測対象物に取り付ける際の部材として機能する。また、基台105の中には、制御部150などを構成する電子回路や、この電子回路に給電を行うバッテリーなどがパッケージングされている。
【0064】
ここで、基台105の中には、基台105自体の姿勢を検知する姿勢検知部160が設けられていることが好ましい。姿勢検知部160としては、ジャイロセンサーと加速度センサーと地磁気センサーを組み合わせたセンサーなどを利用することができる。
【0065】
姿勢検知部160により、基台105が計測対象物に対して、どのような姿勢で取り付けられているかを把握することができる。姿勢検知部160で検知される姿勢情報は、制御部150に入力される。
【0066】
制御部150は、姿勢検知部160より得られる姿勢情報に基づいて、第1ブラケット115の回転角と、第2ブラケット125の回転角と決定することで、反射プリズム130の開口132を所望とする方向に向けさせるように反射プリズム130の姿勢を変更させることが可能となる。
【0067】
ただし、上記のような姿勢検知部160は、必須の構成要件ではない。例えば、計測対象物に対して必ず定まった姿勢で自動正対器100が取り付けられるような用途であれば、姿勢検知部160は不要である。
【0068】
さて、上記のような基台105からは第1回転駆動部110が延在するように設けられている。第1回転駆動部110内には、第1モーター112と、第1モーター112の回転軸(不図示)の回転角度を検出する第1エンコーダー113とが設けられている。本発明で用いる自動正対器100においては、第1エンコーダー113によって検出される第1モーター112の回転角度によって、第1モーター112を高い精度で回転制御する。
【0069】
第1モーター112に対する制御指令θ1は、制御部150から出力されると共に、第1エンコーダー113によって検出される第1モーター112の回転角度データは、制御部150に入力されることで、第1モーター112の回転制御が実行される。
【0070】
ここで、制御部150は、CPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理装置である。
【0071】
第1モーター112の回転軸(不図示)には、第1ブラケット115が取り付けられており、第1モーター112の回転に伴い、θ1=0のホームポジションから任意の回転角で、第1軸111を中心として第1ブラケット115が回転するようになっている。
【0072】
また、第1ブラケット11の一端には、第2回転駆動部120が設けられている。第2回転駆動部120内には、第2モーター122と、第2モーター122の回転軸(不図示)の回転角度を検出す第2エンコーダー123とが設けられている。本発明で用いる自動正対器100においては、第2エンコーダー123によって検出される第2モーター122の回転角度によって、第2モーター122を高い精度で回転制御する。
【0073】
第2モーター122に対する制御指令θ2は、制御部150から出力されると共に、第2エンコーダー123によって検出される第2モーター122の回転角度データは、制御部150に入力されることで、第2モーター122の回転制御が実行される。
【0074】
第2モーター122の回転軸(不図示)には、第2ブラケット125が取り付けられており、第2モーター122の回転に伴い、θ2=0のホームポジションから任意の回転角で、第2軸121を中心として第2ブラケット125が回転するようになっている。
【0075】
なお、反射プリズム130の反射点Cは、第1軸111と第2軸121の交点に配されるように設定されると、種々の演算が簡単となり好ましいが、このことは必須の要件ではない。
【0076】
第2ブラケット125には、反射プリズム130が取り付けられており、本発明で用いる自動正対器100においては、第1ブラケット115及び第2ブラケット125が回転することで、反射プリズム130の開口132を所望とする任意の方向に向けさせるように反射プリズム130の姿勢を変更させることが可能となる。
【0077】
例えば、制御部150から、第1モーター112に対する第1の回転制御指令θ1=φが出力され、第2モーター122に対する第2の回転制御指令θ2=ψが出力されることで、自動正対器100においては、反射プリズム130の姿勢を図11に示すようなものとすることができる。
【0078】
本発明で用いる自動正対器100においては、書き換え可能な記憶部180が、制御部150とデータ通信可能に設けられている。このような記憶部180には、少なくとも、トータルステーション10の測定の際の基準点となる座標である測定中心Tの座標を記憶させておく。
【0079】
本発明で用いる自動正対器100においては、外部の情報処理装置200と通信を行う通信部170が設けられている。通信部170は、外部の情報処理装置200から受信したデータを制御部150に転送すると共に、制御部150から転送されたデータを外部の情報処理装置200に送信する。
【0080】
なお、通信部170は有線によるもの無線によるもののいずれも用いることができるが、無線によるものの方がより利便性が高い。
【0081】
次に、以上のように構成される自動正対器100が、反射プリズム130の姿勢をどのように変更していくのかを、図12を参照して説明する。図12は本発明で用いる自動正対器100による反射プリズム130の姿勢制御を説明する図である。自動正対器100については、反射プリズム130を抜き出して、模式的に示している。
【0082】
図12において、トータルステーション10の基準点の座標(xt,yt,zt)は既知点であり、当該座標情報については自動正対器100の記憶部180に記憶されており、制御部150によって参照されるようになっている。
【0083】
現実建築構造物RMの移動に伴い、移動する反射プリズム130の反射点Cの座標(xc,yc,zc)は、時々刻々トータルステーション10によって計測され、情報処理装置200、通信部170を介して制御部150が取得する。
【0084】
制御部150では、トータルステーション10によって計測される反射プリズム130の反射点Cの座標(xc,yc,zc)と、トータルステーション10の基準点Tの座標(xt,yt,zt)と、を結ぶ線分上に、開口中心Sの座標(xs,ys,zs)が配されるように、第1回転駆動部110に対して第1回転制御指令θ1を出力し、第2回転駆動部120に対して第2回転制御指令θ2を出力する。
【0085】
自動正対器100においては、制御部150が上記のような反射プリズム130の姿勢制御を行うことで、反射プリズム130の開口132を、トータルステーション10のレーザー光出射口と正しく正対させることが可能となり、計測対象物の位置座標を正確に計測することが可能となる。
【0086】
なお、本実施形態においては、自動正対器100の制御部150で種々の演算を行うような構成としているが、このような演算の一部は、情報処理装置200やトータルステーション10側の演算手段(不図示)で行うようにしてもよい。
【0087】
次に、以上のように構成される、本発明に係る施工状況確認システム1の運用形態の概略について説明する。図13乃至時15は本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1の運用例を説明する図である。これらの図面において、自動正対器100などの現実ターゲットについては、□に×印を重ねた表記で略記する。また、以下の図面においては、建築物の所定の施行エリアで自動計測機能により、現実建築構造物RMの位置座標を仮想空間に反映させることが最終目的となる。
【0088】
図13乃至時15において、施行される建築物の平面図において一方の壁に沿った方向にx軸をとり、この壁と垂直の関係にある壁に沿った方向にy軸をとる。また、z軸は、鉛直方向の上方に向かうと正の値となるように、鉛直方向に沿ってとられる。
【0089】
図13においては、設置したトータルステーション10(現実測量機器)の自己位置(機械点)を設定する工程を実施する。このために、図13では、まず墨出しされた線の直上であって、xy座標が既知である位置にトータルステーション10(現実測量機器)を設置する。ここで、トータルステーション10(現実測量機器)のz軸の値については未だ不明である。
【0090】
そこで、例えば、トータルステーション10(現実測量機器)からx軸方向に真っ直ぐ進んだ壁面に、z軸の値が既知である自動正対器100(現実ターゲット)を設置する。そして、トータルステーション10(現実測量機器)から、壁面上の自動正対器100(現実ターゲット)を視準することで、トータルステーション10(現実測量機器)のz軸の値が分かり、xyz座標が確定する。確定したxyz座標は、情報処理装置200に入力される。
【0091】
施行エリアにおいては、現場の作業内容に応じてトータルステーション10(現実測量機器)の位置を、適宜変更する必要があることは述べた。このために、当該施行エリアで作業が実施される間に、適宜設置位置が変更されるトータルステーション10(現実測量機器)の自己位置を割り出すための基準となる基準点の設定を行う。
【0092】
図14では、2つの自動正対器100を基準点(1及び2)として壁面に取り付けて、施工状況確認システム1による基準点設定機能(図6参照)を実行する。ここで、壁面に取り付ける自動正対器100(現実ターゲット)の数は2つ以上であれば任意であるが、複雑な施行を行う予定でトータルステーション10(現実測量機器)の光路が、例えば足場などの障害物で邪魔されることが想定される場合は、3つより多くの基準点を設定することが好ましい。上記のように本発明に係る施工状況確認システム1による基準点設定機能を実施することで、基準点1及び基準点2それぞれのxyz座標が既知となる。
【0093】
トータルステーション10(現実測量機器)の設置位置は、現場の作業内容に応じて適宜変更される。図15では、図14と異なる場所にトータルステーション10(現実測量機器)が設置された状態を示している。このようにトータルステーション10(現実測量機器)の設置位置が変更されたとしても、基準点1及び基準点2それぞれのxyz座標が既知であるので、トータルステーション10(現実測量機器)で、基準点1及び基準点2を視準することで、トータルステーション10(現実測量機器)の自己位置を把握することができる。これには、施工状況確認システム1による機械点設定機能(図7参照)が実行される。
【0094】
以上のような運用でトータルステーション10(現実測量機器)の自己位置を求めると、続いて、本発明に係る施工状況確認システム1においては、現実建築構造物RMの施行がモニターされる。
【0095】
図16は本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1の自動計測処理(自動計測機能)のフローチャートを示す図である。また、図17は本発明の実施形態に係る施工状況確認システム1の自動計測処理(自動計測機能)による動作・処理イメージを示す図である。
【0096】
図17において、斜線で示すものが、3次元CADデータにおける仮想建築構造物VMの取り付け設計位置である。すなわち、現実空間では、現実建築構造物RMの4隅が、それぞれA(x10,y10,z10)、B(x20,y20,z20)、C(x30,y30,z30)、D(x40,y40,z40)の位置にあるとき、現実建築構造物RMが設計位置であり、規定の取り付け位置となる。
【0097】
現実建築構造物RMも、施行において最終的にこの位置に取り付けられることが求められる。現実建築構造物RMは、当該設計位置となるように、リフトアップされる間、本発明に係る施工状況確認システム1によって、現実建築構造物RMの4隅、A'(x10',y10',z10')、B'(x20',y20',z20')、C'(x30',y30',z30')、D'(x40',y40',z40')の現在位置がモニターされると共に、モニターされた値が情報処理装置200に入力され、仮想空間のデータとして反映されるようにする。
【0098】
なお、現実建築構造物RMには、3つの自動正対器100(現実ターゲット)が取り付けられるが、これら3つの自動正対器100のプリズムの基準位置となる反射点C(現実建築構造物RMの4隅Cとは異なる)と、A、B'、C'、D'との相対位置関係は予め把握されている。これを実現するために、現実建築構造物RMに対して、3つの自動正対器100(現実ターゲット)を取り付ける位置は、3次元CADデータの仮想空間内で予め設定しておくことが好ましい。
【0099】
本発明に係る施工状況確認システム1では、リフトアップによって現実建築構造物RMの4隅の位置が、限りなくA'→A、B'→B、C'→C、D'→Dとなることを確認し、さらに、仮想空間を構成する情報処理装置200にフィードバックし、情報処理装置200でその履歴を残しておくようにするものである。
【0100】
このような本発明に係る施工状況確認システム1による現実建築構造物RMの自動計測処理(自動計測機能)がどのような流れで実行されるのかを図16のフローチャートに基づいて説明する。
【0101】
ステップS400において、ユーザーによって情報処理装置200に対して自動計測処理(自動計測機能)開始されると、続いて、ステップS401に進み、自動正対器100のプリズムを追尾、計測を実行するよう指令をトータルステーション10に送信する。
【0102】
トータルステーション10は、ステップS501で、上記のような指令を受信すると、続くステップS502において、自動正対器100のプリズムの追尾を実行し、ステップS503で、追尾した自動正対器100のプリズム座標を複数回(例、10回)計測し、それぞれの計測値を記憶する。
【0103】
続いて、ステップS504では、トータルステーション10が正位の場合は反位とする。(トータルステーション10が反位の場合は、逆に正位とする。)本実施形態では、トータルステーション10を正位の状態で複数回プリズム座標の計測を行うと共に、トータルステーション10を反位の状態として複数回プリズム座標の計測を行い、複数の計測値の平均値によって最終的なプリズム座標を決定するようにしているので、非常に高い精度のプリズム座標を得ることが可能となる。
【0104】
ステップS505では、正位(又は反位)とされたトータルステーション10によって、さらに、自動正対器100のプリズム座標を複数回(例、10回)計測し、それぞれの計測値を記憶する。
【0105】
ステップS506では、予め決められた板規定回数の計測が完了したか否かが判定される。ステップS506の判定結果がNOであればステップ504に戻る。一方、ステップS506の判定結果がYESであれば、ステップS507に進む。
【0106】
ステップS507では、取得された計測値のうち特異な計測値(他の計測値から大幅にずれた計測値(すなわち、所定値以上の乖離がある計測値)であり、明らかに誤計測が明らかな計測値)を除去する。続いて、ステップS508においては、記憶された複数の計測値に基づき、プリズム座標の平均値を算出する。
【0107】
なお、本実施形態では、プリズム座標の平均値を算出する処理をトータルステーション10側で実行する例で説明したが、このような処理は情報処理装置200側で実行させるようにしても構わない。
【0108】
さて、ステップS509では、算出された自動正対器100のプリズム座標平均値が情報処理装置200側に送信される。
【0109】
値が情報処理装置200側がステップS402で、自動正対器100のプリズム座標の平均値を受信すると、続いて、ステップS403で、現実建築構造物RMの4隅A、B'、C'、D'の位置座標データが算出される。
【0110】
ステップS404では、仮想空間における3次元CADデータに、現実建築構造物RMの現在の位置座標データが反映され、ステップS405で処理が終了される。
【0111】
以上のように、本発明に係る施工管理システム1は、現実測量機械で取得された現実ターゲットの座標を受信する工程と、受信した現実ターゲットの座標に基づいて、現実建築構造物の現実位置座標データを算出する工程と、算出された現実建築構造物の前記現実位置座標データを、前記3次元CADデータ中の仮想空間における仮想建築構造物の位置座標データとして用いる工程と、が実行されるので、このような施工管理システム1によれば、前記3次元CADデータ中の仮想空間に自動的にしかも高い精度で、現実建築構造物の現実位置座標データが反映されることとなり、施工管理に係る労力や手間を省くことができ、さらに高い精度の施工管理履歴を保存することが可能となる。
【符号の説明】
【0112】
1・・・施工状況確認システム
10・・・トータルステーション
90・・・取り付け部材
100・・・自動正対器
105・・・基台
108・・・プリズム姿勢変更機構部
110・・・第1回転駆動部
111・・・第1軸
112・・・第1モーター
113・・・第1エンコーダー
115・・・第1ブラケット
120・・・第2回転駆動部
121・・・第2軸
122・・・第2モーター
123・・・第2エンコーダー
125・・・第2ブラケット
130・・・反射プリズム
131・・・プリズム収容胴部
132・・・開口
150・・・制御部
160・・・姿勢検知部
170・・・通信部
180・・・記憶部
200・・・情報処理装置
C・・・反射点
S・・・開口中心
T・・・測定中心(トータルステーション基準点)
RM・・・現実建築構造物
VM・・・仮想建築構造物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17