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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
E04H9/14 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018131483
(22)【出願日】2018-07-11
(65)【公開番号】P2020007844
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100088041
【氏名又は名称】阿部 龍吉
(72)【発明者】
【氏名】原田 洋
(72)【発明者】
【氏名】坂口 都
(72)【発明者】
【氏名】米山 佳伸
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 晃一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 浩利
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 澄
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-136991(JP,A)
【文献】実開昭49-035150(JP,U)
【文献】特開昭57-173572(JP,A)
【文献】特開昭59-126875(JP,A)
【文献】特開平06-212836(JP,A)
【文献】特開平07-139222(JP,A)
【文献】特開平08-218683(JP,A)
【文献】特開2014-214521(JP,A)
【文献】社団法人日本建築学会,集合住宅 高層化,建築設計資料集成[住居],日本,丸善株式会社 村田 誠四郎,2001年10月30日,第136頁-第139頁
【文献】社団法人日本建築学会,地域とエコロジー 地域環境,建築設計資料集成[総合編],日本,丸善株式会社 村田 誠四郎,2001年06月30日,第634頁-第649頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/04
E04H 9/00-9/16
E04H 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において多角形の外形を有し、所定の方向から風を受ける多層階の建物であって、
前記多角形の各辺に対応する複数の側壁部と、
前記多角形の各頂点に対応する複数の角部と、
前記側壁部及び前記角部に対して前記建物の外周方向に沿って凸状に延設された複数の整風部と、を備え、
前記複数の角部は、
前記風の風上側に配置された風上側角部と、
前記風の風下側に配置された風下側角部と、
前記風上側角部及び前記風下側角部を除く前記角部に対して前記建物の高さ方向に隅切りした隅切り角部と、を含み、
前記複数の整風部は、前記建物の高さ方向に所定の間隔で並設された、
ことを特徴とする建物。
【請求項2】
前記角部に延設された前記整風部の前記角部に対する段差は、前記側壁部に延設された前記整風部の前記側壁部に対する段差よりも大きい、
ことを特徴とする請求項に記載の建物。
【請求項3】
前記整風部は、前記建物の外周方向に垂直な断面形状として、方形状の断面形状を有する、
ことを特徴とする請求項又は請求項に記載の建物。
【請求項4】
前記整風部は、前記整風部の下面に形成された水切り部を備える、
ことを特徴とする請求項乃至請求項のいずれか一項に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面視において多角形の外形を有し、所定の方向から風を受ける多層階の建物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市化の進展に伴って、都市部では、ヒートアイランド現象が顕著になっている。ヒートアイランド現象を緩和するための対策の1つとして、例えば、海岸沿いの都市部では、海から内陸に吹き込む海風の流れを建物で遮らないように、いわゆる、風の道を確保することが重要である。また、都市部では、高層建築物が密集することにより、ビル風と呼ばれる突風が発生しやすく、風環境(風害)の改善が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ビル風の発生を抑制し、風通しを良くするために、吹抜け空間を有するブロックを井桁状に積み上げることによって建物の構造体を構成する高層建築物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-173473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された高層建築物は、吹抜け空間の内側に風を流すため、吹抜け空間を居室空間として利用できず、居室空間が制限される、という問題点があった。また、特許文献1に開示された高層建築物は、ブロックを積み上げることで建物の構造体を構成するものであるため、他の建築構造に適用することが難しく、建築構造が制限される、という問題点があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するために、居室空間や建築構造に対する制限を緩和し、風の道を確保するとともに、風環境を改善することができる建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであって、本発明の一実施形態に係る建物は、
平面視において多角形の外形を有し、所定の方向から風を受ける多層階の建物であって、
前記多角形の各辺に対応する複数の側壁部と、
前記多角形の各頂点に対応する複数の角部と、を備え、
前記複数の角部は、
前記風の風上側に配置された風上側角部と、
前記風の風下側に配置された風下側角部と、
前記風上側角部及び前記風下側角部を除く前記角部に対して前記建物の高さ方向に隅切りした隅切り角部と、を含む、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一実施形態に係る建物は、
前記側壁部及び前記角部に対して前記建物の外周方向に沿って凸状に延設された複数の整風部を備え、
前記複数の整風部は、前記建物の高さ方向に所定の間隔で並設された、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一実施形態に係る建物は、
前記角部に延設された前記整風部の前記角部に対する段差は、前記側壁部に延設された前記整風部の前記側壁部に対する段差よりも大きい、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一実施形態に係る建物は、
前記整風部は、前記建物の外周方向に垂直な断面形状として、方形状の断面形状を有する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一実施形態に係る建物は、
前記整風部は、前記整風部の下面に形成された水切り部を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態に係る建物によれば、複数の角部は、風上側角部と、風下側角部と、風上側角部及び風下側角部を除く角部に対して建物の高さ方向に隅切りした隅切り角部と、を含む。そのため、建物が、所定の方向から風を受けると、その風は、風上側角部によって2方向の風に分流され、その分流された風が、側壁部に沿って隅切り角部及び風下側角部の順にそれぞれ通過して、建物1の風下側で合流する。このとき、隅切り角部は、建物の高さ方向に隅切りされているため、風が隅切り角部から乖離しにくくなるので、風が隅切り角部を通過するときの空気抵抗が低減される。また、建物が上記のような複数の角部を備えるようにするために、建物の居室空間や建築構造が大きく制限されることもない。したがって、建物は、居室空間や建築構造を大きく制限することなく、上記のような複数の角部を備えることで、建物が平面視において流線形の形状とみなすことができるので、居室空間や建築構造に対する制限を緩和し、風の道を確保するとともに、風環境を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る建物1を示す斜視図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る建物1を示す縦断面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る建物1を示すA-A線断面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る整風部5を示し、(a)は第1の実施例、(b)は第2の実施例、(c)は第3の実施例、(d)は第4の実施例を示すB部拡大断面図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係る建物1を示し、(a)は第1の実施例、(b)は第2の実施例を示すA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照しつつ説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る建物1を示す斜視図である。図2は、本発明の第1の実施の形態に係る建物1を示す縦断面図である。図3は、本発明の第1の実施の形態に係る建物1を示すA-A線断面図である。
【0016】
建物1は、複数の階層を有する多層階の建物であって、例えば、タワーマンション等の集合住宅、オフィスビル、ホテル、商業施設ビル等の用途で使用される。また、建物1は、例えば、鉄筋コンクリート造、鉄骨造や、鉄骨鉄筋コンクリート造、プレキャストコンクリート造等の建築構造が採用される。
【0017】
建物1は、所定の方向から風Wを受ける。「所定の方向」とは、建物1が建築される敷地において、風Wが吹く時間帯が長い又は頻度が高い風向、すなわち、主風向を示すものである。例えば、建物1が、南側に海が位置する海岸沿いの敷地に建築されている場合には、建物1は、海から吹き寄せる南風を受ける時間帯が長い又は頻度が高いことから、所定の方向としては、「南」が相当する。このとき、建物1は、所定の方向として南から風Wを受けるものであるが、南以外の方向から風を全く受けないことを示すものではない。
【0018】
建物1は、平面視において多角形の外形を有し、多角形の各辺に対応する複数の側壁部2と、角形の各頂点に対応する複数の角部3と、側壁部2の内部を各階に仕切る複数の床部4と、を備える。
【0019】
なお、図1は、建物1の外形の形状を示すものであり、その他の構成要素(例えば、窓、バルコニー等)の詳細は省略している。また、図2及び図3では、側壁部2、角部3及び床部4の断面を示すものであり、その他の構成要素(例えば、窓、バルコニー、鉄骨、鉄筋、間仕切壁、柱、梁、階段、エレベータ等)の詳細は省略している。
【0020】
側壁部2及び角部3は、例えば、コンクリート壁や、ALC板、タイル等の外壁材で構成されている。
【0021】
複数の角部3は、風Wの風上側に配置された風上側角部30と、風Wの風下側に配置された風下側角部31と、風上側角部30及び風下側角部31を除く角部3に対して建物1の高さ方向に隅切りした隅切り角部32A、32Bと、を含む。
【0022】
ここで、「多角形」とは、すべての内角が180度未満である凸多角形である。本実施の形態では、多角形の一例として、正方形の場合について説明する。したがって、側壁部2は、正方形の4辺に対応するものである。また、複数の角部3は、正方形の4つの各頂点に対応するものであるから、建物1は、4つの角部3を備え、4つの角部3は、風上側角部30と、風下側角部31と、2つの隅切り角部32A、32Bと、を含む。
【0023】
隅切り角部32A、32Bは、直角二等辺三角形の形状で隅切りしたものである。なお、隅切り角部32A、32Bは、直角部分を挟む二辺の長さが異なる直角三角形の形状で隅切りしてもよい。
【0024】
また、建物1は、側壁部2及び角部3に対して建物1の外周方向に沿って凸状に延設された複数の整風部5を備える。複数の整風部5は、建物1の高さ方向に所定の間隔H1で並設される。
【0025】
本実施の形態では、複数の整風部5は、図1及び図2に示すように、各階に1つずつ設けられおり、所定の間隔H1として、階高に相当する間隔で並設される。なお、各階に複数の整風部5を設けてもよいし、複数階に1つの整風部5を設けてもよい。また、建物1の高さ方向に応じて、所定の間隔H1を変化させてもよく、高層階における間隔を、低層階における間隔よりも広くしてもよいし、その反対に狭くしてもよい。
【0026】
整風部5は、建物1の外周方向に沿って凸状に延設されており、その凸状部分は、側壁部2に対して段差をなすものである。本実施の形態では、図3に示すように、角部3に延設された整風部5の角部3に対する段差L1は、側壁部2に延設された整風部5の側壁部2に対する段差L2と等しくなっている。したがって、整風部5は、凸状部分の段差が建物1の外周方向に沿って一定((L1=L2))になるように、延設されている。
【0027】
本実施の形態では、整風部5の段差L1、L2は、例えば、100mmとし、高さH2は、例えば、100mmとしたが、これらの寸法は適宜変更してもよい。また、建物1の高さ方向に応じて、整風部5の段差L1、L2及び高さH2を変化させてもよく、高層階における整風部5の段差L1、L2及び高さH2を、低層階における整風部5の段差L1、L2及び高さH2よりも大きくしてもよいし、その反対に小さくしてもよい。
【0028】
整風部5は、側壁部2及び角部3を構成するコンクリート壁や外壁材に一体的に形成されている。なお、整風部5は、側壁部2及び角部3とは別体の部材で形成し、側壁部2及び角部3に取り付けるようにしてもよい。
【0029】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る整風部5を示し、(a)は第1の実施例、(b)は第2の実施例、(c)は第3の実施例、(d)は第4の実施例を示すB部拡大断面図である。
【0030】
整風部5は、建物1の外周方向に沿って凸状に延設されており、建物1の外周方向に垂直な断面形状として、図4(a)に示す第1の実施例のように、方形状の断面形状を有する。すなわち、整風部5は、凸状を構成する上面50、側面51及び下面52を備え、上面50及び下面52が水平方向に配置されるとともに、側面51が鉛直方向(高さ方向)に配置される。また、整風部5は、下面52に形成された水切り部53を備える。
【0031】
整風部5は、方形状の断面形状に代えて、図4(b)、(c)及ぶ(d)に示すように、台形状の断面形状を有するものでもよい。
【0032】
図4(b)に示す第2の実施例の整風部5では、上面50が水平方向に配置され、下面52が水平方向に対して側壁部2から離れるほど上方に向かう斜め上方向に配置され、側面51が鉛直方向に配置される。
【0033】
図4(c)に示す第3の実施例の整風部5では、上面50が水平方向に対して側壁部2から離れるほど下方に向かう斜め下方向に配置され、下面52が水平方向に配置され、側面51が鉛直方向に配置される。
【0034】
図4(d)に示す第4の実施例の整風部5では、上面50が水平方向に対して側壁部2から離れるほど下方に向かう斜め下方向に配置され、下面52が水平方向に対して側壁部2から離れるほど上方に向かう斜め上方向に配置され、側面51が鉛直方向に配置される。
【0035】
なお、整風部5の断面形状は、上記実施例に限定されず、側面51を鉛直方向に対して斜め方向に配置してもよいし、上面50、側面51及び下面52の少なくともいずれか一面を曲線状に配置してもよい。
【0036】
(シミュレーションによる評価)
次に、建物1の性能を評価するためにシミュレーションを行った。以下、シミュレーションの条件及び結果について説明する。
【0037】
評価対象となる建物1は、外形が44.2m×34.4mの長方形、高さが117.65mであり、地上32階建てで31個の整風部5を各階に1つずつ並設するものとした。また、風の流入条件としては、地上44mで5.1m/sをべき乗則(地表面粗度区分IV)により、地上50m高さの風速に換算するものとした。
【0038】
また、評価方法としては、建物1の風下側に位置する後背地評価エリアを、幅が敷地幅の1倍、奥行きが建物1の高さの2倍のエリアとしたときに、当該後背地評価エリアの面積に対して、風速が1.5m/s以上となるエリアの面積の比率(%)を計算することにより評価した。
【0039】
シミュレーションの評価結果として、
(1)隅切り角部32A、32Bが「無し」、整風部5が「無し」の場合には、74.5%、
(2)隅切り角部32A、32Bが「有り」、整風部5が「無し」の場合には、77.6%、
(3)隅切り角部32A、32Bが「有り」、整風部5が「有り」の場合には、78.9%、
であった。
【0040】
したがって、上記(1)と(2)とを比較すると、建物1が、隅切り角部32A、32Bを備えることにより、建物1の風下側に位置する後背地評価エリアにおいて、風速が1.5m/s以上となるエリアの面積が、3.1%増加することが分かった。
【0041】
また、上記(1)と(3)とを比較すると、建物1が、隅切り角部32A、32Bと、整風部5とを備えることにより、建物1の風下側に位置する後背地評価エリアにおいて、風速が1.5m/s以上となるエリアの面積が、4.4%増加することが分かった。さらに、上記(2)と(3)とを比較すると、建物1が、隅切り角部32A、32Bだけでなく、整風部5をさらに備えることにより、建物1の風下側に位置する後背地評価エリアにおいて、風速が1.5m/s以上となるエリアの面積が、1.3%増加することが分かった。
【0042】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、図3に示すように、整風部5の凸状部分の段差が、側壁部2及び角部3に対して建物1の外周方向に沿って一定(L1=L2)であるものとして説明したが、第2の実施の形態では、整風部5の凸状部分の段差が、側壁部2と角部3との間で異なるものとした。第2の実施の形態のその他の構成は、第1の実施の形態と同様としたため、説明を省略する。
【0043】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る建物1を示し、(a)は第1の実施例、(b)は第2の実施例を示すA-A線断面図である。
【0044】
図5(a)に示す第1の実施例では、2つの隅切り角部32A、32Bに延設された整風部5の2つの隅切り角部32A、32Bに対する段差L3は、側壁部2に延設された整風部5の側壁部2に対する段差L5よりも大きくなっている。また、風上側角部30及び風下側角部31に延設された整風部5の風上側角部30及び風下側角部31に対する段差L4は、側壁部2に延設された整風部5の側壁部2に対する段差L5よりも大きくなっている。
【0045】
本実施の形態では、整風部5の2つの隅切り角部32A、32Bに対する段差L3、及び、整風部5の風上側角部30及び風下側角部31に対する段差L4は、例えば、500mmとし、整風部5の側壁部2に対する段差L5は、例えば、100mmとしたが、これらの寸法は適宜変更してもよい。また、段差L3と段差L4の寸法を異なるようにしてもよい。
【0046】
なお、本実施の形態に係る建物1の角部3は、整風部5の段差L3及び段差L4を段差L5よりも大きくするために、第1の実施の形態に係る建物1の角部3に比べて、建物1の内側に切り欠くように形成されているが、角部3を建物1の内側に切り欠くように形成することに代えて、整風部5の凸状部分を建物1の外側に張り出すように形成してもよい。
【0047】
図5(b)に示す第2の実施例の整風部5では、2つの隅切り角部32A、32Bは、曲線状に隅切りしたものである。そして、整風部5は、2つの隅切り角部32A、32Bの曲線状の外形形状に沿って曲線状に延設されている。
【0048】
また、2つの隅切り角部32A、32Bに延設された整風部5の2つの隅切り角部32A、32Bに対する段差L6は、側壁部2に延設された整風部5の側壁部2に対する段差L7よりも大きくなっている。本実施の形態では、整風部5の2つの隅切り角部32A、32Bに対する段差L6は、例えば、500mmとし、整風部5の側壁部2に対する段差L7は、例えば、100mmとしたが、これらの寸法は適宜変更してもよい。
【0049】
以上のように、第1及び第2の実施の形態に係る建物1によれば、複数の角部3は、風上側角部30と、風下側角部31と、風上側角部30及び風下側角部31を除く角部3に対して建物1の高さ方向に隅切りした隅切り角部32A、32Bと、を含む。
【0050】
そのため、建物1が、所定の方向から風Wを受けると、その風Wは、風上側角部30によって2方向の風Wa、Wbに分流され、その分流された風Wa、Wbが、側壁部2に沿って隅切り角部32A、32B、風下側角部31の順にそれぞれ通過して、建物1の風下側で合流し、風Wcとなる。このとき、隅切り角部32A、32Bは、建物1の高さ方向に隅切りされているため、風Wa、Wbが隅切り角部32A、32Bから乖離しにくくなり、風Wa、Wbが隅切り角部32A、32Bを通過するときの空気抵抗が低減される。また、建物1が上記のような複数の角部3を備えるようにするために、建物1の居室空間や建築構造が大きく制限されることもない。
【0051】
したがって、建物1は、居室空間や建築構造を大きく制限することなく、上記のような複数の角部3を備えることで、建物1が平面視において流線形の形状とみなすことができるので、居室空間や建築構造に対する制限を緩和し、風の道を確保するとともに、風環境を改善することができる。
【0052】
また、第1及び第2の実施の形態に係る建物1によれば、複数の整風部5は、側壁部2及び角部3に対して建物1の外周方向に沿って凸状に延設されており、建物1の高さ方向に所定の間隔で並設されたものである。そのため、建物1の高さ方向に隣接する整風部5が、風Wの流れを誘導する誘導手段となるとともに、建物1の高さ方向に隣接する整風部5の中間部分が、風Wの流路となるので、風Wが、風上側から風下側に向けて建物1の外周方向に沿うように、すなわち、水平方向に流れることになる。したがって、建物1は、居室空間や建築構造を大きく制限することなく、上記のような複数の整風部5を備えることで、風Wが風上側から風下側に向けて水平方向に流れることにより、側壁部2に沿って吹き降ろしの風が発生することを抑制することができるので、居室空間や建築構造に対する制限を緩和し、風の道を確保するとともに、風環境を改善することができる。
【0053】
また、第2の実施の形態に係る建物1によれば、角部3に延設された整風部5の角部3に対する段差は、側壁部2に延設された整風部5の側壁部2に対する段差よりも大きい。そのため、角部3において、風Wが水平方向により流れるように誘導されるので、居室空間や建築構造に対する制限を緩和し、風の道を確保するとともに、風環境を改善することができる。
【0054】
また、第1及び第2の実施の形態に係る建物1によれば、整風部5は、建物1の外周方向に垂直な断面形状として、方形状の断面形状を有する。そのため、整風部5を簡易な方法で形成することができるので、建物1の建築コストの上昇を抑制することができる。
【0055】
また、第1及び第2の実施の形態に係る建物1によれば、整風部5は、整風部5の下面52に水切り部53を備える。そのため、水切り部53により整風部5に付着した雨水の雨だれが抑制されるので、側壁部2及び角部3の汚れを防止することができる。
【0056】
以上、本発明の第1及び第2の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
1・・・建物
2・・・側壁部
3・・・角部
4・・・床部
5・・・整風部
30・・・風上側角部
31・・・風下側角部
32A・・・隅切り角部
32B・・・隅切り角部
50・・・上面
51・・・側面
52・・・下面
53・・・水切り部
図1
図2
図3
図4
図5